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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179807
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】窓付きキャビティ、光源パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20231213BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01S5/022
H01L23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181837
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】高田 雅章
(72)【発明者】
【氏名】榎本 聡洋
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC03
5F173ME02
5F173ME22
5F173ME31
5F173ME72
5F173ME86
(57)【要約】
【課題】水平方向に光を出射する発光素子を封止でき、発光素子の光軸と発光素子からの光を取り出す面との成す角度を設計通りに正確に調整できる窓付きキャビティを提供することを目的とする。
【解決手段】対向する2枚の平板と、
前記2枚の平板の間に配置され、前記2枚の平板と直接接合された側壁と、
前記2枚の平板と前記側壁とで囲まれた空間部と、を有し、
前記側壁は、前記空間部と接続された開口部を備え、
前記2枚の平板の表面は透明であり、
前記2枚の平板がガラス製である窓付きキャビティを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2枚の平板と、
前記2枚の平板の間に配置され、前記2枚の平板と直接接合された側壁と、
前記2枚の平板と前記側壁とで囲まれた空間部と、を有し、
前記側壁は、前記空間部と接続された開口部を備え、
前記2枚の平板の表面は透明であり、
前記2枚の平板がガラス製である窓付きキャビティ。
【請求項2】
前記側壁が、複数の板状のガラス板の積層体である請求項1に記載の窓付きキャビティ。
【請求項3】
前記空間部が四角柱形状であり、
前記開口部は、四角柱形状の前記空間部の一側面であり、
前記側壁の内周面のうち、前記開口部と対向する面を空間部上面、
前記空間部上面と前記開口部との間に配置された面を空間部側面とした場合に、
四角柱形状の前記空間部の中心軸と垂直な断面において、
前記空間部上面と、前記空間部側面との間の角部の曲率半径が0.5mm未満である請求項1または請求項2に記載の窓付きキャビティ。
【請求項4】
前記2枚の平板、および前記側壁のうち、前記開口部を囲む部分に封止材が配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の窓付きキャビティ。
【請求項5】
前記封止材が半田である請求項4に記載の窓付きキャビティ。
【請求項6】
絶縁基材と、
前記絶縁基材上に設置された発光素子と、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の窓付きキャビティと、を有し、
前記窓付きキャビティは、前記空間部内に前記発光素子が位置し、かつ前記発光素子からの光が、前記2枚の平板のいずれか一方の面に入射する位置となるように、前記絶縁基材と接合された光源パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓付きキャビティ、光源パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザーダイオード等の各種発光素子を搭載した電子装置が、各種分野で用いられている。発光素子の種類によっては、気密封止することが求められるため、発光素子を封止する各種封止構造が従来から検討されてきた。
【0003】
また、レーザーダイオードにおいては"上面発光"と"端面発光"の二つのタイプがあり、出力が高いため後者が良く用いられる。しかし、上記端面発光のタイプは発光素子の表面と平行に、すなわち水平方向(横方向)に光が出射する構造となっている。そこで、上記端面発光のタイプのレーザーダイオードから出射した光を上方に導き利用するために、封止領域内に矩形反射鏡を配して、光を直角に曲げる構造の光源パッケージ等についても従来から検討がされていた。
【0004】
例えば特許文献1には、セラミックスによって構成され、少なくとも1箇所を開口部とする深底型の空間部を内部に有し、該空間部の内壁が発光素子の搭載部となる基体を有している、発光素子収納用部材が開示され、開口部にガラス窓を装着して発光装置とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/183638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光素子を封止する場合、発光素子を封止した封止構造から取り出した光を所望の位置に照射するため、発光素子の光軸と、封止構造のうち発光素子からの光が通る窓部の表面との間の角度が所定の範囲にあることが求められる。
【0007】
しかし、特許文献1に開示された発光装置のように、セラミックスの部材に設けた開口部にガラス窓を装着する場合、セラミックスの部材とガラス窓とを接合する接合材の厚みのばらつきや、ガラス窓の取り付け位置のばらつき等が生じる。その結果、セラミックスの部材に設置された発光素子の光軸と、ガラス窓の表面との間の角度がばらつきやすかった。このため、発光装置から取り出した光を所望の位置に照射させることが困難な場合があった。
【0008】
上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明は水平方向に光を出射する発光素子を封止でき、発光素子の光軸と発光素子からの光を取り出す面との成す角度を設計通りに正確に調整できる窓付きキャビティを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の一態様では、対向する2枚の平板と、
前記2枚の平板の間に配置され、前記2枚の平板と直接接合された側壁と、
前記2枚の平板と前記側壁とで囲まれた空間部と、を有し、
前記側壁は、前記空間部と接続された開口部を備え、
前記2枚の平板の表面は透明であり、
前記2枚の平板がガラス製である窓付きキャビティを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、水平方向に光を出射する発光素子を封止でき、発光素子の光軸と発光素子からの光を取り出す面との成す角度を設計通りに正確に調整できる窓付きキャビティを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一の構成例に係る窓付きキャビティの構成説明図である。
図2図1のブロック矢印Aに沿って見た窓付きキャビティの底面図である。
図3】平板の好適な形状についての説明図である。
図4】空間部の内周面の形状の一構成例の説明図である。
図5】封止材の好適な配置の説明図である。
図6】窓付きキャビティの製造方法の説明図である。
図7】本発明の一の構成例に係る光源パッケージの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[窓付きキャビティ]
本実施形態の窓付きキャビティの一構成例について説明を行う。なお、本実施形態の窓付きキャビティは、後述するように、絶縁基材と接合することで、絶縁基材上に設置された発光素子を封止し、光源パッケージとなる。このため、本実施形態の窓付きキャビティは、発光素子をその内部に収容、封止するための部材であり、発光素子封止部材、発光素子パッケージ等と呼ぶこともできる。
【0013】
本実施形態の窓付きキャビティの構成例について、以下の図1図5を用いながら説明する。図1は、本実施形態の窓付きキャビティの一構成例になる。図2は、図1の窓付きキャビティ10をブロック矢印Aに沿って見た底面図に当たる。図3は、図1の窓付きキャビティ10のB-B´線における断面図に当たる。図4は、図1の窓付きキャビティ10のC-C´線における断面図に当たる。図5は、封止材の配置についての説明図である。なお、同じ部材には同じ番号を付して説明を省略する場合がある。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の窓付きキャビティ10は、対向する2枚の平板11と、2枚の平板11の間に配置され、かつ2枚の平板11と直接接合された側壁12と、2枚の平板11と側壁12とで囲まれた空間部13とを有する。
【0015】
そして、側壁12は、空間部13と接続された開口部14を備え、2枚の平板11の表面は、透明である。また、2枚の平板11はガラス製となる。
【0016】
本実施形態の窓付きキャビティ10の外形は特に限定されないが、以下、図1に示した外形が四角柱形状の場合を例に以下、本実施形態の窓付きキャビティについて説明を行う。
【0017】
本実施形態の窓付きキャビティ10を用いて発光素子を封止し、光源パッケージとする場合、側面を構成する2枚の平板11の一方が、該窓付きキャビティ10内に封止した発光素子から出射した光を外部に取り出す窓となる。すなわち、本実施形態の窓付きキャビティは、発光素子から出射した光を外部に取り出す窓と、発光素子を収容するキャビティとが一体となっている。このため、特許文献1の発光装置のように、窓材とキャビティを構成する他の部材とを接合材により接合する必要がなく、発光素子から出射した光を外部に取り出す窓と、窓付きキャビティを構成する側壁12等の他の部材との角度等を設計通りに正確に再現できる。
【0018】
また、本実施形態の窓付きキャビティは、2枚の平板11と、側壁12とが直接接合されている。すなわち、2枚の平板11と側壁12とが接合材等を介することなく接合されている。このため、特許文献1の発光装置の場合のように、接合材の厚み等により生じる各部材間の角度等のばらつきを抑制できる。
【0019】
従って、本実施形態の窓付きキャビティは構成する部材間の角度等、特に平板11と側壁12との間の角度を精度良く再現できる。その結果、該窓付きキャビティにより発光素子を封止する際、例えば発光素子の光軸と窓付きキャビティの所定の部分との位置を合わせることで、発光素子の光軸と、発光素子からの光を取り出す面である平板の表面との成す角度を設計通りに正確に調整できる。
【0020】
また、本実施形態の窓付きキャビティは、側面に発光素子からの光を取り出す窓が設けられている。このため、本実施形態の窓付きキャビティは、端面発光のタイプの発光素子、すなわち水平方向に光を出射する発光素子からの光を、鏡等の光学部材を介することなく、外部に取り出すことができる。さらに、本実施形態の窓付きキャビティは、窓付きキャビティから外部に取り出した光を精度よく所望の位置に照射できる。また、鏡等の光学部材が不要となるため、光源パッケージとする際の部品点数を抑制できる。
【0021】
本実施形態の窓付きキャビティは、上述のように、2枚の平板11と、側壁12とが直接接合されている。すなわち、2枚の平板11と側壁12とが接合材等を介することなく接合されている。このため、各部材間に微細な隙間等が生じることを抑制でき、気密封止性を高めることができる。
【0022】
本実施形態の窓付きキャビティを構成する各部材について説明する。
(平板)
本実施形態の窓付きキャビティ10は、対向する2枚の平板11を有する。
【0023】
本実施形態の窓付きキャビティ10は、2枚の平板11として、第1の平板111と、第2の平板112とを有することができ、既述のように、第1の平板111と、第2の平板112とはいずれも、表面を透明にできる。なお、ここでいう表面とは、光源パッケージとした場合に、光学素子からの光が入射し、外部に取り出される面を意味する。
【0024】
ここで、透明とは、表面での光の散乱を抑制できるように構成されている、すなわち光散乱抑制面であることを意味する。平板11の表面を透明にする手段としては鏡面加工、コーティング、ファイヤポリッシュなど複数の手法がある。なお、図2や、図3(A)等に示すように、例えば第1の平板111は、外表面111Aと、空間部13側に位置する内表面111Bとを有するが、外表面111Aと、内表面111Bとが共に透明であることが好ましい。また、第2の平板112についても、外表面112Aと、内表面112Bとが共に透明であることが好ましい。
【0025】
平板11の表面が透明である場合、平板11の表面は表面粗さRaが0.60μm以下であることが好ましく、0.06μm以下であることがより好ましく、0.006μm以下であることがさらに好ましい。なお、平板11の表面が透明である場合、平板11の表面の表面粗さRaの下限値は特に限定されないが、過度に平滑にすることは困難であることから、生産性の観点から、例えば0.0001μm以上であることが好ましい。本実施形態の窓付きキャビティ10は、第1の平板111について、外表面111A、内表面111Bが、第2の平板112について、外表面112A、内表面112Bがあり、上述のようにそれぞれが透明であることが好ましい。この場合、各平板の表面は、それぞれ表面粗さRaが上記範囲を充足していることが好ましいが、同じ表面粗さRaである必要は無い。
【0026】
上記表面粗さは、JIS B 0601(2001)で規定する算術平均粗さを意味する。
【0027】
第1の平板111と、第2の平板112とのうち、一方の平板は、発光素子を封止した場合に、発光素子からの光が入射する面となる。このため、一方の平板について表面を透明とすることで、発光素子からの光を平板の表面で散乱させることなく、外部に効率よく取り出すことができる。また、他方の平板についても表面を透明とすることで、本実施形態の窓付きキャビティ10により発光素子を封止して光源パッケージとした後や、封止する際に、窓付きキャビティ10の内部の状態を容易に観察できる。このため、光源パッケージの品質管理等を容易に行うことができる。
【0028】
また、第1の平板111、第2の平板112の両方について表面を透明とすることで、発光素子を封止して光源パッケージとする際に、いずれの面も発光素子からの光を入射させる面にできる。このため、光源パッケージの組み立て時に第1の平板111、第2の平板112のいずれであるかを確認する必要がなくなり、光源パッケージの生産性を高めることができる。
【0029】
既述のように、各平板11は、内表面と、外表面とを有している、発光素子から平板に入射した光を、取り出し、特に精度よく目的とする位置に光を照射する観点から、平板11は、内表面と、外表面との平行度が優れていることが好ましい。
【0030】
図3(A)に、図1のB-B´線における断面図を示す。図1のB-B´線における断面図は、四角柱形状を有する空間部13の中心軸CAと平行であり、光源パッケージとした場合に、発光素子からの光の通過が予想される、平板11の内表面111Bの重心を通る面での断面図になる。
【0031】
図3(A)中に一点鎖線で示した様に、第1の平板111の内表面111Bと外表面111Aとが完全に平行である場合、発光素子からの光は直進する。このため、第1の平板111の外表面111Aから取り出した光は、例えば外表面111Aからの距離L311が10mmの平面P上において、点311に入射する。
【0032】
一方、内表面111Bに対して、外表面111Aが傾いていると、光は外表面111Aから出る際に屈折し、図3(A)中の直線に沿って進行し、平面P上において、点312に入射する。
【0033】
ただし、係るずれの発生を特に抑制する観点から、点311と、点312との距離L312は0.1mm以下に抑制されることが好ましい。このため、例えば第1の平板111の場合、内表面111Bをデータム平面とした時の、外表面111Aの平行度が0.05mm以下であることが好ましい。
【0034】
なお、ここでは第1の平板111について説明したが、第2の平板112についても内表面112Bと、外表面112Aとが同様の平行度を充足することが好ましい。
【0035】
上記平行度は、JIS B 0621(1984)の規定によるものである。
【0036】
窓付きキャビティの製造方法で後述するが、側壁12および空間部13となる壁用板状体の上下面に、平板11となる平板用ガラス板を接合した後、所定の切断線に沿って切断することで、本実施形態の窓付きキャビティを製造できる。そして、平板は、平板用ガラス板に由来するため、壁用板状体に貼り合わせる平板用ガラス板について、予め研磨等を行い、表面粗さRaや、平行度を調整しておくことで、上記平板の表面の表面粗さRaや平行度を所望の範囲に調整できる。
【0037】
また、図2に示すように、平板11の内表面111B、112Bと、空間部側面132との間の角部21、22や、図3(A)に示すように、平板11の内表面と空間部上面131との間の角部23は直角が好ましい。空間部上面131、空間部側面132は、側壁12の空間部13に露出した面、すなわち内周面になる。空間部上面131は開口部14と対向する面、空間部側面132は、空間部上面131と開口部14との間に配置された面となる。すなわち平板11の内表面と、側壁12の空間部13側に露出した内表面との間の角度は、直角が好ましい。ここでいう直角は幾何学的に厳密な意味での直角ではなく、製造上の誤差等を含めて直角とみなせる場合を含む。
【0038】
上記角部21、22、23を直角とすることで、曲率半径がゼロ、またはゼロに限りなく近いので、空間部13を最大限に活用することができ、光源パッケージ内の空間利用効率を最大限に高められる。
【0039】
また、平板11は、窓付きキャビティ10を絶縁基材71に接合した際に、絶縁基材71の表面と、平板11の内表面との間で形成する角度が所定の範囲内であることが好ましい。
【0040】
図3(B)に、図1に示した窓付きキャビティ10を絶縁基材71上に設置した場合の、B-B´線における断面図に相当する断面図を示す。絶縁基材71の表面と、内表面111Bとの間の角度θが90°の場合、発光素子からの光は、図3(B)中、点線321のように直進する。これに対して、角度θが90°からずれると、発光素子からの光が、直線322に沿って進み、第1の平板111の内表面111Bに達した際、および第1の平板111の外表面111Aに達した際に屈折する。その結果、第1の平板111の外表面111Aから出射した光は、点線321と比較して、高さ方向にずれ幅L322だけずれることになる。
【0041】
ずれ幅L322は、要求される精度等にもよるため特に限定されないが、例えば5μm以下であることが好ましい。そして、例えば第1の平板111の厚さを0.3mm、ガラスの屈折率を1.452とすると、ずれ幅L322を5μm以下とする観点から、絶縁基材71の表面と、第1の平板111の内表面111Bとで形成する角度θが90°±3°以内であることが好ましい。上記角度θは、90°±1°以内であることがより好ましく、90°±0.5°以内であることがさらに好ましい。
【0042】
なお、ここでは第1の平板111について説明したが、第2の平板112についても絶縁基材71の表面と、第2の平板112の内表面112Bとで形成する角度θが同様の範囲を充足することが好ましい。
【0043】
窓付きキャビティの製造方法で後述するが、側壁12および空間部13となる壁用板状体の上下面に、平板11となる平板用ガラス板を接合した後、所定の切断線に沿って切断することで、本実施形態の窓付きキャビティを製造できる。そして、平板の絶縁基材と対向する面は切断により生じるため、例えば切断時の精度を調整することにより、また必要に応じて切断後に研磨等を行うことで、窓付きキャビティを絶縁基材に接合した際の、絶縁基材の表面と、平板の内表面との間の角度を調整できる。
【0044】
平板11の材料は特に限定されず、各種ガラスを用いることができる。本明細書においてガラスとはアモルファス状の材料を意味する。平板11の材料は、発光素子で用いる光の波長等に応じて選択でき、例えば発光素子が出射する光の波長の透過性に優れる材料を用いることが好ましい。平板11には、例えばホウケイ酸ガラス、石英、多成分系光学ガラス、サファイアガラス、透光性アルミナガラス等から選択された1種類以上の材料を用いることができる。
【0045】
なお、第1の平板111と、第2の平板112とは同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。ただし、生産性等の観点から、第1の平板111と、第2の平板112とは同じ材料であることが好ましい。
(側壁、開口部)
側壁12は、2枚の平板11の間に配置され、2枚の平板11の間を接続できる。
【0046】
側壁12は、既述の2枚の平板11と直接接合できる。すなわち、側壁12と、2枚の平板11とは、接合材等を介することなく、直接接合できる。
【0047】
側壁12は、2枚の平板11を支持し、空間部13を形成するための部材であるため、その表面性状等は特に限定されない。
【0048】
窓付きキャビティの製造方法で後述するが、側壁12および空間部13となる壁用板状体の上下面に、平板11となる平板用ガラス板を接合した後、所定の切断線に沿って切断することで、本実施形態の窓付きキャビティを製造できる。この際、側壁12および空間部13となる壁用板状体について、側壁12の長さに対応した厚さを備えた壁用板状体を準備することがコスト等の観点から困難な場合がある。なお、ここでいう側壁12の長さとは、図1における空間部13の中心軸CAに沿った側壁12の長さを意味する。
【0049】
側壁12の材料は後述するようにガラスや、各種セラミックスを用いることができる。そして、側壁12がガラス製の場合、側壁12は、複数の板状のガラス板の積層体であってもよい。具体的には、図1に示した様に、側壁12は、ガラス板12A、ガラス板12B、ガラス板12C、ガラス板12Dの積層体であってもよい。このように、側壁12を、複数の板状のガラス板の積層体により形成することで、例えば側壁12の長さ、すなわち平板11間の距離が長い場合でも、容易に製造できる。
【0050】
側壁12を複数の板状のガラス板の積層体とする場合、構成するガラス板間についても、接合材等を介することなく、直接接合できる。
【0051】
側壁は、図1図2に示すように、開口部14を有する。開口部14は空間部13と接続されており、開口部14を介して、空間部13内に光学素子等を挿入できる。
【0052】
開口部14は、図2に示すように2枚の平板11と、側壁12とで囲まれた空間となり、2枚の平板11の間に渡って形成されていることが好ましい。なお、開口部14は、光源パッケージとする際に、絶縁基材と対向する面になり、通常下方を向くことになるため、底面側に設けられているといえ、図2は本実施形態の窓付きキャビティの底面図といえる。
【0053】
側壁12の材料は特に限定されず、熱膨張率が平板11と近ければ良い。例としてはガラスやセラミックスなどがある。
(空間部)
空間部13は、2枚の平板11と、側壁12とで囲まれた領域であり、本実施形態の窓付きキャビティを絶縁基材と接合した際に、発光素子を収容する空間(空隙)となる。
【0054】
空間部13は、2枚の平板11間に渡って形成されることになる。
【0055】
空間部13の形状は特に限定されないが、空間部13は例えば各種柱状形状にできる。このため、空間部13は、その形状を例えば半円柱形状や、多角柱形状にできる。
【0056】
窓付きキャビティの製造方法で後述するが、側壁12および空間部13となる壁用板状体の上下面に、平板11となる平板用ガラス板を接合した後、所定の切断線に沿って切断することで、本実施形態の窓付きキャビティを製造できる。そして、空間部13は、予めガラス板に形成した貫通孔の形状に対応する。このため、加工の容易性等の観点から、空間部13は、四角柱形状、すなわち六面体形状か、半円柱形状であることが好ましい。
【0057】
なお、窓付きキャビティの外形形状と、空間部の形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
上述のように、空間部13は例えば四角柱形状にできる。この場合、開口部14は、図1図2から明らかなように、四角柱形状の空間部13の一側面となる。
【0059】
ここで、図4に、図1のC-C´線での断面図を模式的に示す、C-C´線での断面図は、空間部13の中心軸CAと垂直な面であり、かつ側壁12の一部を含む面での断面図となる。
【0060】
図4に示すように、側壁12の内周面のうち、開口部14と対向する面を空間部上面131、空間部上面131と開口部14との間に配置された面を空間部側面132とする。この場合に、図4に示すように四角柱形状の空間部13の中心軸CAと垂直な断面において、空間部上面131と、空間部側面132との間の角部133の曲率半径が0.5mm未満であることが好ましい。これは、係る角部133の曲率半径を0.5mm未満とすることで、空間部13の容積を十分に確保し、発光素子等のデバイスを収容しやすくなるからである。角部133の曲率半径は、より好ましくは0.3mm未満である。
【0061】
なお、上記角部133の曲率半径の下限値は特に限定されないが、角部133への応力集中を抑制する観点から、例えば0.03mm以上であることが好ましい。
(封止材)
本実施形態の窓付きキャビティは、さらに絶縁基材と接合するために開口部の周囲に封止材を配置することもできる。
【0062】
封止材は、本実施形態の窓付きキャビティの、絶縁基材と接合する面に配置しておくことができ、具体的には、図5に示すように、2枚の平板11、および側壁12のうち、開口部14を囲む部分に封止材51を配置できる。封止材51は、図5に示すように開口部14を囲むように連続して配置されることが好ましい。なお、図5は、図2と同じ、窓付きキャビティ10の底面図に当たる。封止材51の配置の位置決めは、平板11を基準として利用することが好ましい。具体的には、封止材51の四辺のうちの一辺が、平板11と揃うように封止材51の位置と方向を調整する。このことにより、完成した光源パッケージの出射光軸と平板11の垂直度が十分担保される。
【0063】
封止材の材料は特に限定されず、接合する絶縁基材の種類用に応じて選択でき、例えば無機材料や、樹脂等が挙げられる。封止材としては、例えば無機材料の1種である半田を好ましく用いることができる。
【0064】
封止材として好適に用いることができる半田の種類は特に限定されないが、例えば、金(Au)-スズ(Sn)系の半田、スズ(Sn)-アンチモン(Sb)系の半田、スズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系の半田等から選択された1種類以上を挙げることができる。
【0065】
封止材に好適に用いることができる半田の構成例について説明したが、封止材に用いる半田は係る半田に限定されるものではないのは既述のとおりである。
【0066】
なお、封止材を配置していない窓付きキャビティ、すなわち平板11、側壁12、空間部13、開口部14を有する窓付きキャビティを特に指す場合には、蓋体部と記載する場合もある。
[窓付きキャビティの製造方法]
本実施形態の窓付きキャビティの製造方法の一構成例について説明する。
【0067】
本実施形態の窓付きキャビティの製造方法によれば、既述の窓付きキャビティを製造できるため、既に説明した事項については説明を一部省略する。
【0068】
本実施形態の窓付きキャビティの製造方法は、例えば以下の工程を有する。
【0069】
側壁12および空間部13となる板状体である壁用板状体を準備する壁用板状体準備工程。
【0070】
上記壁用板状体の上下面に、平板11となる平板用ガラス板を接合し、接合体を形成するガラス板接合工程。
【0071】
接合体を切断線に沿って切断する切断工程。
【0072】
以下、各工程について説明する。
(壁用板状体準備工程)
壁用板状体準備工程では、側壁12および空間部13となる壁用板状体60を準備できる。
【0073】
具体的には、図6(A)に示した様に、側壁12となるリブ部61と、空間部13となる貫通孔62とを備えた壁用板状体60を準備できる。
【0074】
後述する切断工程において、例えば切断線L611~L613、L621、L622に沿って切断でき、切断線で囲まれた領域が1つの窓付きキャビティとなる。このため、図6(A)の切断線L611~L613の位置から明らかなように、貫通孔62は、2つの窓付きキャビティの空間部13を接合した形状を有しており、図6(A)の紙面と垂直な貫通孔にできる。
【0075】
壁用板状体60は、例えば貫通孔62が形成されていない板状体に、貫通孔62を形成することで製造できる。貫通孔62の形成方法は特に限定されず、機械的に研削する方法や、エッチング等により化学的に形成する方法が挙げられる。
【0076】
また、壁用板状体60がセラミックス製の場合、焼成前の原料の成形品について、成形、もしくは加工により、貫通孔62等に対応した貫通孔等を設けておくこともできる。
【0077】
壁用板状体60がガラス製の場合、壁用板状体60は1枚のガラス板から構成することもできるが、複数の板状のガラス板の積層体を用いることもできる。図6(C)、図6(D)に壁用板状体60として、複数の板状のガラス板の積層体を用いた例を示す。具体的には図6(D)に示すように、壁用板状体60を、複数枚の板状のガラス板601~603で構成できる。なお、図6(D)の壁用板状体60の部分は、図6(C)のE-E´線での断面図に当たる。図6(D)では3枚の板状のガラス板601~603を積層した例を示しているが係る形態に限定されない。この場合、積層体は、複数枚の板状のガラス板を接合することで形成できる。複数枚の板状のガラス板は、接合材等を介さずに直接接合されていることが好ましく、後述するガラス板接合工程の場合と同様の接合方法により接合できる。
【0078】
なお、壁用板状体60として、複数枚の板状のガラス板の積層体を用いる場合、積層した複数枚の板状のガラス板の位置を合わせるために、貫通孔62に加えて、図6(C)に示した様に、各板状のガラス板601~603に位置決め孔63を設けても良い。位置決め孔63にピン等を挿入することで、容易に複数枚の板状のガラス板の水平方向の位置合わせを行うことができる。
【0079】
図6(C)、図6(D)は、上述のように壁用板状体60として複数の板状のガラス板の積層体を用いている点、および位置決め孔63を有する点以外は、それぞれ図6(A)、図6(B)と同様に構成できる。このため、以下、図6(A)、図6(B)を用いて説明を続ける。
(ガラス板接合工程)
ガラス板接合工程では、図6(B)に示すように、壁用板状体60の上下面に、平板11となる平板用ガラス板631、632を接合できる。図6(B)の壁用板状体60の部分は、図6(A)のD-D´線での断面図に相当する。
【0080】
平板用ガラス板631、632は、例えば表面粗さRa等が所望の値となるように、予め表面を研磨しておくことができる。
【0081】
壁用板状体60と、平板用ガラス板631、632とは、接合材等を介さずに直接接合できる。具体的な接合方法は特に限定されないが、例えば、加熱加圧法、超音波接合、レーザー加熱による接合、オプティカルコンタクトを用いた接合等の圧力を用いた接合方法等が挙げられる。
(切断工程)
切断工程では、ガラス板接合工程で得られた接合体を切断線に沿って切断できる。
【0082】
切断方法は特に限定されないが、例えばレーザー光を用いた切断方法や、複数の切断方法を組み合わせて切断できる。
【0083】
切断工程では、例えば、図6(A)や、図6(B)に示した切断線L611~L613、L621、L622に沿って切断できる。なお、図6(A)、図6(B)では一部の切断線のみを示しており、切断線を示していない部分でも、窓付きキャビティを個片化できるように、同様に切断線を設定し、切断できる。
【0084】
本実施形態の窓付きキャビティの製造方法は、さらに任意の工程を有することもできる。
(封止材配置工程)
既述のように、窓付きキャビティは、2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分に封止材が配置されていてもよい。このため、本実施形態の窓付きキャビティの製造方法は、さらに封止材を配置する封止材配置工程を有してもよい。
【0085】
封止材として半田を用いる場合を例に説明すると、封止材を配置する方法は特に限定されず、例えば印刷法や、ディスペンサーを使った塗布法、プリフォームを載せ加熱する方法、ディップ法、レーザーメタルデポジション法、半田ワイヤをコテで加熱する方法等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0086】
印刷法は、2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分に対してペースト状にした半田を印刷し、封止材を配置する方法である。なお、印刷後必要に応じて熱処理を行うこともできる。
【0087】
ディスペンサーを用いた塗布法は、例えばシリンジが接続されたディスペンサーから、2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分に溶融した半田を供給し、封止材を配置する方法である。
【0088】
プリフォーム法は封止材の箔を打ち抜いて枠状にしたものを2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分に載せておき加熱することにより封止材を溶融させる方法である。
【0089】
ディップ法は、槽内で半田を溶融させておき、2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分を浸し、またはその噴流に接触させることで、封止材を塗布する方法である。
レーザーメタルデポジション法は、2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分に対して粉体状の半田を供給し、レーザーで半田を溶融後、冷却することで封止材を配置する方法である。
【0090】
半田ワイヤを用いた方法は、ワイヤ状、すなわち線状に加工した半田を用い、例えば自動半田付けロボット等により、2枚の平板、および側壁のうち、開口部を囲む部分に対して溶融した半田を供給し、封止材を配置する方法である。
[光源パッケージ]
本実施形態の光源パッケージの構成例について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態の光源パッケージ70の発光素子72を通り、窓付きキャビティ10の2枚の平板11と垂直な断面における断面図を模式的に示している。
【0091】
本実施形態の光源パッケージは、図7に示すように、絶縁基材71と、絶縁基材71上に設置された発光素子72と、既述の窓付きキャビティ10と、を含有できる。
【0092】
そして、窓付きキャビティ10は、空間部13内に発光素子72が位置し、かつ発光素子72からの光が、2枚の平板11のいずれか一方の面に入射する位置となるように、絶縁基材71と接合されている。
【0093】
絶縁基材71の材料は特に限定されず、例えば各種セラミックス材料を用いることができる。係るセラミックス材料としては、例えばアルミナ(酸化アルミニウム、Al)や、窒化アルミニウム(AlN)、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0094】
なお、絶縁基材71は、発光素子72が実装されるため、必要に応じてその表面等に、発光素子72と接続する、図示しない配線を設けておくことができる。
【0095】
発光素子72としては特に限定されず、レーザーダイオード等の各種発光素子を用いることができる。発光素子72は既述のように端面発光のタイプ、すなわち水平方向に光を出射する発光素子であることが好ましい。
【0096】
窓付きキャビティ10は既に説明したため、ここでは説明を省略する。窓付きキャビティ10は、空間部13内に発光素子72が位置し、かつ発光素子72からの光が、2枚の平板11のいずれか一方の面に入射する位置となるように、絶縁基材71と接合されている。具体的には、図7に示すように、発光素子72の光軸721と、2枚の平板11のいずれか一方の面とが設計通りの角度、例えば直交するように配置されていることが好ましい。ただし、ここでいう直交とは幾何学的に厳密な意味を示すものではなく、例えば、窓付きキャビティ10から取り出した光が、許容される所定の範囲内に照射できるように、光軸721と、平板11との間の角度を選択できる。
【0097】
本実施形態の光源パッケージは、例えば発光素子を設置した絶縁基材に、空間部内に係る発光素子が位置するように、窓付きキャビティを接合することで製造できる。
【0098】
絶縁基材に、窓付きキャビティを接合する方法は特に限定さないが、例えば既述の封止材により接合できる。
【0099】
絶縁基材に窓付きキャビティを接合する際、絶縁基材に設置した発光素子の光軸と、窓付きキャビティの2枚の平板のうち少なくとも一方の表面とが成す角度が設計通りの角度、例えば直交するように、窓付きキャビティを配置し、接合することが好ましい。
【0100】
そして、既述の窓付きキャビティは、各部材間の角度が精度良く再現されている。このため、例えば発光素子の光軸と、窓付きキャビティの側壁の長手方向や、空間部13の中心軸CAとが一致するように、絶縁基材71上に窓付きキャビティ10を配置することで、平板11と、発光素子72の光軸との角度を容易に設計通りの角度に調整できる。
【実施例0101】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限りにおいて実施形態を適宜変更できる。
【0102】
以下の例1から例3が実施例であり、例4が比較例となる。
[例1]
(窓付きキャビティの製造)
以下の手順により、窓付きキャビティを製造した。
【0103】
側壁12および空間部13となるガラス板である壁用板状体を準備した(壁用板状体準備工程)。
【0104】
具体的には、図6(A)に示すように、厚さが6mmのホウケイ酸ガラス製のガラス板に、一辺が4mmの正方形の開口部を備えた貫通孔62を、その厚さ方向に沿って形成して、壁用板状体60を作製した。
【0105】
なお、貫通孔62の開口部の正方形の角部は、曲率半径が0.2mmとなるように研削、研磨した。
【0106】
次いで、図6(B)に示すように、壁用板状体60の上下面に、平板11となる平板用ガラス板631、632を接合し、接合体を形成した(ガラス板接合工程)。加熱加圧法で、接合材を用いることなく直接接合した。
【0107】
平板用ガラス板631、632としては、ホウケイ酸ガラス製の厚さが0.5mmのガラス板を用いた。平板用ガラス板631、632は、予め表面が研磨されており、平板用ガラス板631、632はいずれも、両表面の表面粗さRaが0.001μmであった。また、各平板用ガラス板について、壁用板状体60と接合する側の面をデータム平面とした場合の、他方の面の平行度は0.048mmであった。
【0108】
そして、得られた接合体について、切断線に沿って切断し、個片化することで、本実験例の窓付きキャビティを得た(切断工程)。
【0109】
得られた窓付きキャビティは、図1に示す構造を有し、外形が四角柱形状であり、対向する2枚の平板11と、2枚の平板の間に配置され、2枚の平板と直接接合された側壁12と、2枚の平板11と側壁12とで囲まれた空間部と、を有する。そして、側壁12は、空間部13と接続された開口部14を備え、2枚の平板11の表面、すなわち外表面111A、112A、内表面111B、112Bはいずれも表面粗さRaが0.001μmであり、透明となっていた。また、第1の平板111、第2の平板112について、それぞれ内表面111B、112Bをデータム平面とした場合の外表面111A、112Aの平行度は、用いた平板用ガラス板と同じであることを確認できた。なお、ここで製造した、2枚の平板11と、側壁12とを有する部材である蓋体部は、ホウケイ酸ガラスのみから構成されている。
【0110】
次に、以下の手順で、封止材を備えた窓付きキャビティを作製した。
【0111】
上記蓋体部の2枚の平板11、および側壁12のうち、開口部14を囲む部分に封止材を配置した(封止材配置工程)。封止材に用いる半田は以下の手順により準備し、配置した。
【0112】
半田に含まれる成分について、Snが81~83質量%、Auが約17~19質量%である、半田プリフォームを入手した。半田プリフォームは、前記開口部14の形状に適合するよう、矩形の枠形状をなし、その線幅は0.3mm、厚みは30μmであるものを選択した。
【0113】
封止材は、以下の光源パッケージを作製する際にあわせて窓付きキャビティに配置した。
(光源パッケージの製造)
次に、得られた窓付きキャビティを用いて、光源パッケージを作製した。
【0114】
まず、絶縁基材として窒化アルミニウム(AlN)の基体(京セラ社製、KD-LB7248、縦3.45mm×横3.45mm×厚み0.8mm、熱膨張係数4.6ppm)を用意した。
【0115】
絶縁基材の上面には配線と、配線に接続されたレーザーダイオードを設置しておいた。レーザーダイオードとしては、端面発光のタイプ、すなわち水平方向に光を出射するものを用いた。
【0116】
次に、封止材である半田プリフォームを、上記セラミック基板の表面、かつ窓付きキャビティの開口部が設置される場所に合致するよう配置した。
【0117】
そして、上記半田プリフォームの直上に、作製した窓付きキャビティを配置した。窓付きキャビティは、窓付きキャビティの空間部内にレーザーダイオードが位置するように、かつレーザーダイオードの光軸と、窓付きキャビティの側壁の長手方向、すなわち空間部13の中心軸CAとが一致するように配置した。レーザーダイオードから出射した光が、第1の平板111に入射するように、第2の平板112側からも目視で確認しながら、窓付きキャビティ10を配置した。この際、窓付きキャビティ、半田プリフォームと絶縁基材とがこの順番で接している。
【0118】
そして、窓付きキャビティ上に錘を配置して、押圧しながら、加熱することで封止材の少なくとも一部を溶融させ、その後冷却した。
【0119】
これにより、窓付きキャビティを絶縁基材に接合し、光源パッケージを作製した。
【0120】
得られた光源パッケージは、発光素子であるレーザーダイオードから出射した光と、第1の平板111の表面とが、設計通りの角度となるように、すなわち直交するように配置できていた。このため、第1の平板111の側から外部の所望の位置に光を取り出せることを確認できた。
【0121】
なお、得られた光源パッケージの、図3(B)に示した断面において、セラミック基板の表面と、第1の平板111の内表面111Bとが形成する角度θは89.5°であることを確認できた。
【0122】
[例2]
以下の手順により、窓付きキャビティを製造した。
【0123】
例1と同じ部材および手順により、壁用板状体を準備し、次いで接合体を製造した。ただし、ガラス板接合工程において、壁用板状体60の上下面に、平板用ガラス板631、632を接合する際に(図6(B)を参照)、レーザー加熱法を用いた。
【0124】
具体的には、壁用板状体60の上下面と、平板用ガラス板631、632との接合対象面が十分加熱されるようにレーザーの出力と焦点を調整し、レーザーを照射することで加熱し、両部材を、接合材を用いることなく接合した。
【0125】
そして、得られた接合体について、例1と同様な手順で切断し、個片化することで、本実験例の窓付きキャビティを得た。
【0126】
得られた窓付きキャビティは、図1に示す構造を有していた。そして、2枚の平板11の表面、すなわち外表面111A、112A、内表面111B、112Bはいずれも表面粗さRaが0.001μmであり、透明となっていた。また、第1の平板111、第2の平板112について、それぞれ内表面111B、112Bをデータム平面とした場合の外表面111A、112Aの平行度は、用いた平板用ガラス板と同じであることを確認できた。製造した、2枚の平板11と、側壁12とを有する部材である蓋体部は、ホウケイ酸ガラスのみから構成されている。
(光源パッケージ)
さらに、得られた窓付きキャビティを用いて、光源パッケージを作製した。窓付きキャビティ以外の使用した部材および作製手順は、例1と同様である。
【0127】
得られた光源パッケージは、例1と同様、発光素子であるレーザーダイオードから出射した光と、第1の平板111の表面とが、設計通りの角度となるように、すなわち直交するように配置できていた。このため、第1の平板111の側から外部の所望の位置に光を取り出せることを確認できた。
【0128】
なお、図3(B)に示した断面において、セラミック基板の表面と、第1の平板111の内表面111Bとが形成する角度θは89°であることを確認できた。
[例3]
(窓付きキャビティの製造)
以下の手順により、窓付きキャビティを製造した。
【0129】
側壁12および空間部13となるガラス板である壁用板状体を準備した(壁用板状体準備工程)。
【0130】
具体的には、図6(C)、図6(D)に示すように、厚さが2mmのホウケイ酸ガラス製の板状のガラス板601~603の3枚に、一辺が4mmの正方形の開口部を備えた貫通孔62を、その厚さ方向に沿って形成した。また、2つの角部に位置決め孔63を形成した。
【0131】
なお、貫通孔62の開口部の正方形の角部は、曲率半径が0.2mmとなるように研削、研磨した。
【0132】
次いで、図6(C)、図6(D)に示すように、各板状のガラス板601~603の位置決め孔63にピンを差し込み、位置決めを実施し、積層体である壁用板状体60とした。
【0133】
壁用板状体60の上下面に、平板11となる平板用ガラス板631、632を配置した後、壁用板状体60を構成する板状のガラス板601~603、および平板用ガラス板631、632を接合し、接合体を形成した(ガラス板接合工程)。壁用板状体60に含まれる板状のガラス板601~603の間や、壁用板状体60と、平板用ガラス板631、632との接合には、超音波接合法を用いた。具体的には、壁用板状体60と、平板用ガラス板631、632に熱を加えながら超音波振動を印可し、接合材を用いることなく接合した。
【0134】
平板用ガラス板631、632には、厚さが0.5mmのホウケイ酸ガラス板を用いた。平板用ガラス板631、632は、予め表面が研磨されており、平板用ガラス板631、632はいずれも、両表面の表面粗さRaが0.001μmであった。また、各平板用ガラス板について、壁用板状体60と接合する側の面をデータム平面とした場合の、他方の面の平行度は0.02mmであった。
【0135】
そして、得られた接合体について、切断線に沿って切断し、個片化することで、本実験例の窓付きキャビティを得た(切断工程)。
【0136】
得られた窓付きキャビティは、図1に示す構造を有していた。そして、2枚の平板11の表面、すなわち外表面111A、112A、内表面111B、112Bはいずれも表面粗さRaが0.001μmであり、透明となっていた。また、第1の平板111、第2の平板112について、それぞれ内表面111B、112Bをデータム平面とした場合の外表面111A、112Aの平行度は、用いた平板用ガラス板と同じであることを確認できた。製造した、2枚の平板11と、側壁12とを有する部材である蓋体部は、ホウケイ酸ガラスのみから構成されている。
(光源パッケージの製造)
さらに、上記で得られた窓付きキャビティを用いて、光源パッケージを作製した。窓付きキャビティ以外の使用した部材および作製手順は、例1と同様である。
【0137】
得られた光源パッケージは、例1と同様、発光素子であるレーザーダイオードから出射した光と、第1の平板111の表面とが、設計通りの角度となるように、すなわち直交するように配置できていた。このため、第1の平板111の側から外部の所望の位置に光を取り出せることを確認できた。
【0138】
なお、図3(B)に示した断面において、セラミック基板の表面と、第1の平板111の内表面111Bとが形成する角度θは88°であることを確認できた。
[例4]
(窓付きキャビティの製造)
以下の手順により、窓付きキャビティを製造した。
【0139】
例1と同じ部材をおよび手順により、壁用板状体を準備し、次いで接合体を製造した。ただし、ガラス板接合工程において、壁用板状体と、平板用ガラス板の接合は、ガラス系接合材を用いて行った。
【0140】
そして、得られた接合体について、例1と同様な手順により個片化し、本実験例の窓付きキャビティを得た。
【0141】
得られた窓付きキャビティは、2枚の平板11と、側壁12とが接合材を介して接合されていた。このため、係る窓付きキャビティ(蓋体部)は、ホウケイ酸ガラスと、接合材とから構成されていた。
(光源パッケージの製造)
さらに、得られた窓付きキャビティを用いて、光源パッケージを作製した。窓付きキャビティ以外の使用した部材および作製手順は、例1と同様である。
【0142】
得られた光源パッケージは、発光素子であるレーザーダイオードから出射した光が、第1の平板111の表面に入射するものの、レーザーダイオードの光軸と、第1の平板111の表面との間の角度が設計範囲からずれていることを確認できた。
【0143】
また、図3(B)に示した断面において、セラミック基板の表面と、第1の平板111の内表面111Bとが形成する角度θは86°であった。
【0144】
得られた光源パッケージをさらに調査したところ、壁用板状体と平板用ガラス板の接合に用いたガラス系接合材の厚みが、均一になっておらず、約70μmの厚み差による傾斜が生じていることを確認できた。
【符号の説明】
【0145】
10 窓付きキャビティ
11 平板
111 第1の平板
112 第2の平板
12 側壁
13 空間部
131 空間部上面
132 空間部側面
14 開口部
133、21、22、23 角部
51 封止材
70 光源パッケージ
71 絶縁基材
72 発光素子
721 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7