(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179928
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する樹脂組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08F 22/40 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C08F22/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092872
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀篭 洋希
(72)【発明者】
【氏名】長田 将一
(72)【発明者】
【氏名】川村 訓史
(72)【発明者】
【氏名】横田 竜平
(72)【発明者】
【氏名】萩原 健司
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AM55P
4J100BC04P
4J100BC67P
4J100CA23
4J100DA52
4J100DA55
4J100JA46
(57)【要約】
【課題】半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する用途に好適であり、低反り性、研削性に優れる封止樹脂組成物の提供。
【解決手段】
半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する樹脂組成物であって、
(A)1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物
(B)反応開始剤
及び
(C)シランカップリング剤で表面処理した無機充填材
を含み、前記(C)成分の最大粒径が40μm以下である封止樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する樹脂組成物であって、
(A)1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物
(B)反応開始剤
及び
(C)シランカップリング剤で表面処理した無機充填材
を含み、前記(C)成分の最大粒径が40μm以下である封止樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が少なくとも下記式(1)及び/又は(2)で表されるマレイミド化合物である請求項1に記載の封止樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Bは独立して炭素数6~60の2価の脂環式炭化水素基であり、Dは独立して炭素数6~200の2価の炭化水素基であり、Dの少なくとも1つはダイマー酸骨格由来の炭化水素基であり、mは1~100であり、lは1~200である。m及びlで括られた各繰り返し単位の順序は限定されず、結合様式は、交互であっても、ブロックであっても、ランダムであってもよい。)
【化2】
(式(2)中、Aは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Dは独立して炭素数6~60の2価の炭化水素基であり、Dの少なくとも1つはダイマー酸骨格由来の炭化水素基である。nは0~100である。
【請求項3】
式(1)及び式(2)中のAが下記構造式で示される4価の有機基のいずれかである請求項2に記載の封止樹脂組成物。
【化3】
【請求項4】
(C)成分の無機充填材の表面処理するシランカップリング剤が、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)―8-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及び2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタンから選ばれる1種以上のアミノシランである請求項1~3のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量が組成物全体の30~95質量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が熱ラジカル重合開始剤及び/又はアニオン重合開始剤である請求項1~5のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物。
【請求項7】
封止樹脂組成物の形状が顆粒状、シート状またはフィルム状である請求項1~6のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物。
【請求項8】
封止樹脂組成物がウエハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、ファンアウトウエハレベルパッケージ、ファンアウトパネルレベルパッケージ又はアンテナインパッケージ用である請求項1~7のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物の硬化物を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する樹脂組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等のモバイル機器の小型化、軽量化、高機能化に伴いウエハレベルパッケージ及びパネルレベルパッケージが注目されている。ウエハレベルパッケージでは、半導体素子を搭載した8インチ又は12インチサイズの基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を熱硬化性樹脂で封止し、研削、再配線層形成、はんだボール搭載等を経た後、個片化されパッケージが完成する。パッケージの小型化や軽量化に加えて、TSV(Through Silicon Via)やCoC(Chip on Chip)技術を用いて半導体素子を多層接続し、シリコンインターポーザーなどの基板に搭載することで高密度化も可能となる。またウエハを加工した後に個々のチップに切断しパッケージングしていた従来の方式とは異なり、ウエハの状態でパッケージ加工まで行い、その後個々のチップに切断し製品として完成させるため、製造コスト削減のメリットもある。
【0003】
ウエハレベルパッケージ及びパネルレベルパッケージでは封止後の反りが問題となる。小径ウエハ等の基板であれば大きな問題もなく成形封止できるが、8インチ以上の12インチウエハや、更に大面積のパネルレベルの成形では、基板と熱硬化性樹脂の熱膨張係数の違いから基板に大きな反りが発生する。この反りが、その後の搬送、研削、検査、個片化等の各工程で問題となっており、デバイスによっては素子特性に変動が生じる可能性がある。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1ではダイマー酸骨格由来の2価の炭化水素基を有する液状のビスマレイミド化合物を含有した組成物が開示されているが、反応性希釈剤として添加したアリル化合物により硬化後の弾性率が高くなるため、12インチウエハ以上の大面積では反りが大きくなることがわかった。また、特許文献2ではダイマー酸骨格由来の炭化水素基を有する固形のビスマレイミド化合物を含有した組成物が開示されているが、研削後の表面粗さの点で更なる改善の余地があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-1289号公報
【特許文献2】特開2019-203122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、低反り性が要求される電子部品に適用した場合でも反りが小さく抑えられ、かつ研削後の表面粗さが小さい硬化物となる封止樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記封止樹脂組成物が、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記の封止樹脂組成物及び該組成物の硬化物を有する半導体装置を提供するものである。
【0008】
<1>
半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する樹脂組成物であって、
(A)1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物
(B)反応開始剤
及び
(C)シランカップリング剤で表面処理した無機充填材
を含み、前記(C)成分の最大粒径が40μm以下である封止樹脂組成物。
<2>
(A)成分が少なくとも下記式(1)及び/又は(2)で表されるマレイミド化合物である<1>に記載の封止樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Bは独立して炭素数6~60の2価の脂環式炭化水素基であり、Dは独立して炭素数6~200の2価の炭化水素基であり、Dの少なくとも1つはダイマー酸骨格由来の炭化水素基であり、mは1~100であり、lは1~200である。m及びlで括られた各繰り返し単位の順序は限定されず、結合様式は、交互であっても、ブロックであっても、ランダムであってもよい。)
【化2】
(式(2)中、Aは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Dは独立して炭素数6~60の2価の炭化水素基であり、Dの少なくとも1つはダイマー酸骨格由来の炭化水素基である。nは0~100である。)
<3>
式(1)及び式(2)中のAが下記構造式で示される4価の有機基のいずれかである<2>に記載の封止樹脂組成物。
【化3】
<4>
(C)成分の無機充填材の表面処理するシランカップリング剤が、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)―8-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及び2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタンから選ばれる1種以上のアミノシランである<1>~<3>のいずれか1項に記載の封止樹脂組成物。
<5>
(C)成分の含有量が組成物全体の30~95質量%である<1>~<4>のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
<6>
(B)成分が熱ラジカル重合開始剤及び/又はアニオン重合開始剤である<1>~<5>のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
<7>
封止樹脂組成物の形状が顆粒状、シート状またはフィルム状である<1>~<6>のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
<8>
封止樹脂組成物がウエハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、ファンアウトウエハレベルパッケージ、ファンアウトパネルレベルパッケージ、アンテナインパッケージ用であることを特徴とする<1>~<7>のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
<9>
<1>~<8>のいずれかに記載の封止樹脂組成物の硬化物を有する半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の封止樹脂組成物は低反り性が要求される電子部品に適用した場合でも反りが小さく抑えられ、かつ研削後の表面粗さが小さい硬化物となる。したがって本発明の封止樹脂組成物は半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する際に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関して更に詳しく説明する。
【0011】
[(A)1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物]
本発明の封止樹脂組成物は、(A)1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物を含有するものである。ダイマー酸とはオレイン酸やリノール酸等の植物系油脂を原料とする炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することで得られる炭素数36のジカルボン酸の液状脂肪酸である。ダイマー酸は単一の骨格ではなく、複数の構造を有し、何種類かの異性体が存在する。ダイマー酸の代表的なものは直鎖型(a)、単環型(b、c)、芳香族環型(d)、多環型(e)という名称で分類される。
本明細書において、ダイマー酸骨格とは、このようなダイマー酸のカルボキシ基を1級アミノメチル基で置換した構造を有するダイマージアミンから誘導される基をいう。すなわち、(A)成分は、ダイマー酸骨格として、下記(a)~(e)で示される各ダイマー酸において、2つのカルボキシ基がメチレン基で置換された基を有するものが好ましい。また、(A)成分が有するダイマー酸骨格に由来する二価の炭化水素基は、水添反応により、該ダイマー酸骨格由来の炭化水素基中の炭素-炭素二重結合が低減した構造を有するものが、硬化物の耐熱性や信頼性の観点からより好ましい。
【化4】
【0012】
本発明の封止樹脂組成物に含まれる(A)成分は下記式(1)で表されるマレイミド化合物及び/または下記式(2)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化5】
(式(1)中、Aは独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Bは独立して炭素数6~60の2価の脂環式炭化水素基であり、Dは独立して炭素数6~200の2価の炭化水素基であり、Dの少なくとも1つはダイマー酸骨格由来の炭化水素基であり、mは1~100であり、lは1~200である。m及びlで括られた各繰り返し単位の順序は限定されず、結合様式は、交互であっても、ブロックであっても、ランダムであってもよい。)
【化6】
(式(2)中、Aは上記式(1)中と同じく、独立して環状構造を有する4価の有機基であり、Dは上記式(1)中と同じく、独立して炭素数6~60の2価の炭化水素基であり、Dの少なくとも1つはダイマー酸骨格由来の炭化水素基である。nは0~100である。)
【0013】
前記式(1)で表されるマレイミド化合物は他のダイマー酸骨格由来の炭化水素基を有するマレイミド化合物に比べて、硬化後のガラス転移温度が高いため、これを含む場合は信頼性の高い組成物となる。また、式(1)で示されるマレイミド化合物を含む組成物は、他の一般的な芳香族マレイミド化合物を含む組成物よりも硬化後の弾性率が低く、封止後の基板の反りが低減したり、信頼性試験における耐クラック性が向上したりする。
【0014】
前記式(1)中、Aは独立して環状構造を有する4価の有機基を示し、中でも下記構造式で示される4価の有機基のいずれかであることが好ましい。
【化7】
(上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、式(1)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)
【0015】
前記式(1)中、Dは独立して炭素数6~200、好ましくは8~100、より好ましくは10~50の2価炭化水素基である。中でも、前記2価炭化水素基中の水素原子の1個以上が、炭素数6~200、好ましくは8~100、より好ましくは10~50のアルキル基又はアルケニル基で置換されている分岐状2価炭化水素基であることが好ましい。分岐状2価炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和炭化水素基のいずれでもよく、分子鎖の途中に脂環式構造又は芳香族環構造を有していてもよい。
前記分岐状2価炭化水素基として、具体的には、ダイマージアミンと呼ばれる両末端ジアミン由来の2価炭化水素基が挙げられ、従って、Dは、上記(a)~(e)で示される各ダイマー酸において、2つのカルボキシ基がそれぞれメチレン基で置換された基が特に好ましく、1分子中に少なくとも1つはこのダイマー酸骨格由来の炭化水素基を有する。
【0016】
また、前記式(1)中、Bは独立して炭素数6~60の2価の脂環式炭化水素基であり、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは6~30の2価の脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基としてはシクロヘキサン骨格を有するものが好ましく、該シクロヘキサン骨格を有する様態としては、シクロヘキサン環を1つ有する例えば下記式(3)で示されるものであっても、複数のシクロヘキサン環がアルキレン基を介して結合したもの又は橋掛け構造を有する多環式のものであってもよい。
【化8】
(式(3)中、R
1は独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であって、x1及びx2はそれぞれ独立に0~4の数である。)
【0017】
ここで、R1の具体例は、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。中でも水素原子及びメチル基が好ましい。なお、各R1は同じであっても異なっていてもよい。
また、前記x1及びx2はそれぞれ独立に0~4の数であり、好ましくは0~2の数である。なお、x1及びx2は同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
前記Bの具体例としては、以下のような構造式で表される2価の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【化9】
(上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、式(1)において環状イミド構造を形成する窒素原子と結合するものである。)
【0019】
前記式(1)において、mは1~100であり、好ましくは1~60であり、より好ましくは2~50であり、lは1~200であり、好ましくは1~50であり、より好ましくは3~40である。mやlが大きすぎると流動性が低下し、成形性に劣るおそれがある。
m及びlで括られた各繰り返し単位の順序は限定されず、結合様式は、交互であっても、ブロックであっても、ランダムであってもよいが、高Tg化しやすいという観点からブロックの方が好ましい。
【0020】
前記式(2)で表されるマレイミド化合物を含む組成物は硬化後の弾性率が低く、封止後の基板の反りが低減したり、信頼性試験における耐クラック性が向上したりする。また、式(2)で表されるマレイミド化合物を含む組成物は高周波での誘電特性にも優れる。
【0021】
前記式(2)中、Aは前記式(1)中のAと同様であり、独立して環状構造を有する4価の有機基を示し、好ましいものも同様、下記構造式で示される4価の有機基のいずれかであることが好ましい。
【化10】
(上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、式(2)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)
【0022】
また、前記式(2)中、Dは前記式(1)中のDと同じく、独立して炭素数6~200、好ましくは8~100、より好ましくは10~50の2価炭化水素基である。前記式(1)中のDと同様に、前記式(2)中のDは、前記2価炭化水素基中の水素原子の1個以上が、炭素数6~200、好ましくは8~100、より好ましくは10~50のアルキル基又はアルケニル基で置換されている分岐状2価炭化水素基であることが好ましい。分岐状2価炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和炭化水素基のいずれでもよく、分子鎖の途中に脂環式構造又は芳香族環構造を有していてもよい。
前記分岐状2価炭化水素基として、具体的には、ダイマージアミンと呼ばれる両末端ジアミン由来の2価炭化水素基が挙げられ、従って、Dは、上記(a)~(e)で示される各ダイマー酸において、2つのカルボキシ基がそれぞれメチレン基で置換された基が特に好ましく、1分子中に少なくとも1つはこのダイマー酸骨格由来の炭化水素基を有する。
【0023】
前記式(2)において、nは0~100であり、好ましくは0~60であり、より好ましくは0~50である。nが大きすぎると溶解性や流動性が低下し、成形性に劣るおそれがある。
【0024】
(A)成分のマレイミド化合物はハンドリング性や封止後の反りが小さいことから25℃で固体であるものが好ましい。
【0025】
(A)成分のマレイミド化合物の数平均分子量は特に制限はないが、組成物のハンドリング性の観点から800~50,000が好ましく、より好ましくは900~30,000である。また、(A)成分は前記式(1)及び/又は(2)で表されるマレイミド化合物だけでなく、他の1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物を含んでいても構わないし、1種単独で使用しても複数種を併用しても構わない。
なお、本発明中で言及する数平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした数平均分子量を指すこととする。
【0026】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0027】
[(B)反応開始剤]
本発明に用いられる反応開始剤は、(A)成分のマレイミド基又は(A)成分と反応しうる官能基を有した他の成分との反応を促進するために添加されるものである。(B)成分としては硬化反応を促進するものであれば特に制限されるものではないが、良好な硬化性を示すことから熱ラジカル重合開始剤及び/又はアニオン重合開始剤が好ましい。
【0028】
熱ラジカル重合開始剤は、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の有機過酸化物が好ましい。保存安定性の観点からより好ましくは10時間半減期温度が70~170℃の有機過酸化物である。熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシベンゾエート、ジベンゾイルパーオキシド、ジウラロイルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0029】
アニオン重合開始剤はイミダゾール化合物、リン系化合物、アミン化合物及び尿素系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン等のジアミノトリアジン環を有するイミダゾール及びこれらをマイクロカプセル化したもの等が挙げられる。
リン系化合物の具体例としては、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート及びこれらをマイクロカプセル化したもの等が挙げられる。
アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール及びこれらをマイクロカプセル化したもの等が挙げられる。
尿素系化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N’-フェニル-N,N-ジメチルウレア、N,N-ジエチルウレア、N’-[3-[[[(ジメチルアミノ)カルボニル]アミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロへキシル]-N,N-ジメチルウレア、N,N”-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチルウレア)等が挙げられる。
【0030】
これらの反応開始剤は、種類に関わらず1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記反応開始剤の配合量は、(A)成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.1~8質量部であり、より好ましくは0.2~6質量部であり、さらに好ましくは0.3~4質量部である。反応開始剤の配合量が0.1質量部以上であれば十分に硬化反応が進行し、8質量部以下であれば封止樹脂組成物の保存安定性が良好である。
【0031】
[(C)無機充填材]
(C)無機充填材は、本発明の封止樹脂組成物の硬化物の熱膨張率低下や機械特性向上のために添加されるものであり、本発明においては最大粒径が40μm以下であり、シランカップリング剤で表面処理したものを使用する。無機充填材としては、例えば、球状シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維、酸化マグネシウム等が挙げられる。さらに誘電特性向上のためにフッ素樹脂含有フィラー又はフッ素樹脂コーティングフィラーも挙げられる。これらの無機充填材の平均粒径や形状は、用途に応じて選択することができる。
【0032】
(C)無機充填材の最大粒径はレーザー回折散乱式測定法で測定した体積粒度分布測定値においての最大値であり、該最大粒径は40μm以下であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。最大粒径が40μm以下であれば封止後の硬化物表面を研削した際に充填材の脱落が起きたとしても表面粗さを小さくすることができる。
【0033】
(C)無機充填材の平均粒径D50はレーザー回折散乱式測定法で測定した体積粒度分布測定値において0.1~20μmが好ましく、より好ましくは0.15~10μmであり、さらに好ましくは0.2~8μmである。
【0034】
(C)無機充填材は必要に応じてトップカットされたものを使用してよい。ここでいうトップカットとは、製造された無機充填材を湿式篩法により分級することである。分級に用いられた篩の目開きをトップカット径といい、トップカット径は該目開きよりも大きい粒子の割合がレーザー回折散乱式測定法により測定した体積粒度分布測定値において2体積%以下となる値を指す。トップカット径は湿式篩法において1~40μmが好ましく、より好ましくは1.5~30μmであり、さらに好ましくは2~20μmである。
【0035】
無機充填材は、樹脂成分と無機充填材との結合強度を強くするために、シランカップリング剤で予め表面処理されたものを用いる。シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)―8-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン等のアミノシラン;3-メルカプトシラン、3-エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリルシラン等の、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、スチリル基又はメタクリル基含有シランカップリング剤が挙げられる。強度向上の観点から、アミノ基、メタクリル基、ビニル基又はスチリル基を有するシランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、シランカップリング剤による処理方法は特に制限なく従来公知の方法で行えばよい。シランカップリング剤による表面処理量は、所望の特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、無機充填材100質量部に対して、シランカップリング剤の量が、0.1~5質量部であることが好ましく、0.15~4質量部であることがより好ましく、0.2~3質量部であることがさらに好ましい。
【0036】
無機充填材の配合量は、上記(A)成分の合計100質量部に対して、10~2,000質量部が好ましく、より好ましくは20~1,200質量部であり、さらに好ましくは40~1,000質量部である。また、組成物中の無機充填材の配合量は、組成物全体を100質量%として、30~95質量%が好ましく、より好ましくは40~92質量%であり、さらに好ましくは50~90質量%である。この範囲内であれば成形時の粘度が高くなりすぎず、成形不良を防ぐことができる。
【0037】
<その他の添加剤>
本発明の封止樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。その他の添加剤を以下に例示する。
【0038】
[マレイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂]
本発明ではさらに、マレイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂を添加してもよい。
熱硬化性樹脂としてはその種類を限定するものではなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、(A)成分以外のマレイミド化合物を始めとする環状イミド樹脂、ユリア樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂など(A)成分以外の各種樹脂が挙げられる。また、マレイミド基と反応しうる反応性基としては、エポキシ基、マレイミド基、水酸基、酸無水物基、アリル基やビニル基のようなアルケニル基、(メタ)アクリル基、チオール基などが挙げられる。ただし、エポキシ基のように例えばイミダゾールと反応して活性種を作り、マレイミド基と反応してアニオン重合するようなものも含んでいる。上記マレイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂の配合量は、特に限定されないが例えば熱硬化性樹脂の総和中、0~60質量%である。
【0039】
[難燃剤]
本発明では難燃性を付与させるために難燃剤を添加してもよい。難燃剤としては、ハロゲン化エポキシ樹脂、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン等が挙げられる。これらの難燃剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、環境負荷や流動性確保の観点からホスファゼン化合物、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好適に用いられる。
【0040】
[イオントラップ剤]
本発明では電気特性を改善するためにイオントラップ剤を添加してもよい。イオントラップ剤としては、ハイドロタルサイト化合物、ビスマス化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられ、これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
[可撓性付与剤]
本発明では可撓性を付与するために可撓性付与剤を添加してもよい。可撓性付与剤としては、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂等のシリコーン化合物や、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
[着色剤]
本発明では封止後の外観の色味安定のために着色剤を添加してもよい。着色剤としてはカーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン等が挙げられ、これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記以外に、接着助剤、離型剤、反応性希釈剤、光安定剤等を添加してもよい。
【0044】
本発明の封止樹脂組成物の製造方法としては、従来公知の方法を適宜用いることができる。製造方法としては、例えば、プラネタリーミキサー、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等が挙げられる。得られた熱硬化性樹脂組成物が固体の場合、粉砕することで粉末状にしてもよく、粉砕後に打錠することでタブレット状にしてもよく、粉砕後に篩を用いて粗粒と微粉を除去することで顆粒状にしてもよく、又はプレス装置やTダイを用いてシート状にしてもよい。また有機溶剤に溶解した該封止樹脂組成物(ワニス)を支持シートに塗工した後、通常80℃以上、好ましくは100℃以上の温度で1~60分間加熱することにより有機溶剤を除去した未硬化のフィルム状でもよい。使用時のハンドリング性や粉塵による汚染の影響を小さくするために、顆粒状、シート状及びフィルム状がより好ましい。
【0045】
<封止樹脂組成物の用途>
本発明の封止樹脂組成物は半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する用途であれば特に限定されないが、ウエハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、ファンアウトウエハレベルパッケージ、ファンアウトパネルレベルパッケージ用の封止樹脂組成物として有効である。また本発明の封止樹脂組成物は高周波での誘電特性が低いことからアンテナインパッケージにも好適である。本発明の封止樹脂組成物による半導体装置の封止方法は特に制限されるものでなく、従来の成形法、例えばトランスファー成形、インジェクション成形、コンプレッション成形、注型法、ラミネーション等を利用すればよいが、コンプレッション成形がより好ましい。
【実施例0046】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例に使用した各成分を以下に示す。なお、平均粒径、最大粒径は上述の方法により求めた値である。
【0047】
(A)1分子中にダイマー酸骨格由来の炭化水素基を1個以上有するマレイミド化合物
(A-1):下記式で示されるダイマー酸骨格由来の炭化水素基含有ビスマレイミド化合物(商品名:SLK-3000、信越化学工業(株)製、数平均分子量:8000)
【化11】
-C
36H
70-はダイマー酸骨格由来の構造を示す。
n≒5(平均値)
(A-2):下記式で示されるダイマー酸骨格由来の炭化水素基含有ビスマレイミド化合物(商品名:SLK-2600、信越化学工業(株)製、数平均分子量:5000)
【化12】
-C
36H
70-はダイマー酸骨格由来の構造を示す。
m≒2、l≒2(平均値)
比較例用マレイミド化合物
(A’-3):フェニルメタンマレイミド(商品名:BMI-2300、大和化成工業(株)製)
【0048】
(B)反応開始剤
(B-1):ジクミルパーオキサイド(商品名:パークミルD、日油(株)製)
(B-2):2-エチル-4-メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業(株)製)
【0049】
(C)無機充填材
(C-1):平均粒径4μm、最大粒径20μmの溶融球状シリカ(商品名:MUF-4、龍森(株)製)100質量部に対して、0.3質量部のN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-573、信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
(C-2):平均粒径4μm、最大粒径20μmの溶融球状シリカ(商品名:MUF-4、龍森(株)製)100質量部に対して、0.3質量部の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-903、信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
(C-3):平均粒径0.5μm、最大粒径5μmの球状シリカ(商品名:SO-25H、(株)アドマテックス製)100質量部に対して、0.3質量部のN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-573、信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
比較例用無機充填材
(C’-4):平均粒径4μm、最大粒径20μmの溶融球状シリカ(商品名:MUF-4、龍森(株)製)
(C’-5):平均粒径13μm、最大粒径53μmの溶融球状シリカ100質量部に対して、0.3質量部のN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-573、信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ(商品名:RS-8225H/53C、龍森(株)製)
(C’-6):平均粒径27μm、最大粒径55μmの溶融球状シリカ(商品名:FB-5604FC、デンカ(株)製)100質量部に対して、0.3質量部のN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-573、信越化学工業(株)製)で乾式表面処理されたシリカ
【0050】
(D)その他の熱硬化性樹脂
(D-1):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:HP-7200、DIC(株)製)
【0051】
(E)シランカップリング剤
(E-1):N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-573、信越化学工業(株)製)
【0052】
[実施例1~9、比較例1~5]
表1に示す配合(質量部)で各成分を溶融混合し、冷却、粉砕した後、目開き2mm及び0.5mmの篩を用いて粗粒と微粉を除去することで顆粒状の樹脂組成物を得た。各組成物を以下に示す方法に従い評価し、その結果を表1に示した。
【0053】
<反り>
12インチ/775μm厚のシリコンウエハ上に、成形後の樹脂厚みが400μmになるように上記樹脂組成物をコンプレッション成形装置(アピックヤマダ製)で成形した。成形温度と成形時間は表1に記載の条件で行った。180℃で2時間ポストキュアした後、該ウエハの反りをシャドウモアレ式反り測定装置(akrometrix製)により測定した。
【0054】
<研削後表面粗さ>
12インチ/775μm厚のシリコンウエハ上に、成形後の樹脂厚みが400μmになるように上記樹脂組成物をコンプレッション成形装置(アピックヤマダ製)で成形した。成形温度と成形時間は表1に記載の条件で行った。180℃で2時間ポストキュアした後、該ウエハの封止樹脂面をグラインド装置(DISCO製)にて下記条件で20μm研削した。
・ホイール:#1500のレジンボンドホイール
・スピンドル回転数:1300rpm
・チャックテーブル回転数:300rpm
・送り速度:0.3μm/s
研削後の封止樹脂面の算術平均粗さRaをレーザー顕微鏡(キーエンス製)にて下記条件で測定し、平均値を求めた。
・測定箇所:研削後12インチウエハ中心から75cmの2箇所
・倍率:20倍
・長さ:500μm
【0055】
<耐クラック性>
12インチ/775μm厚のシリコンウエハ上に、ダイアタッチフィルム(50μm厚)付きのシリコンチップ(2cm×2cm×150μm厚)をフリップチップボンダー(パナソニック製)により搭載した。該ウエハ上に、成形後の樹脂厚みが400μmになるように上記樹脂組成物をコンプレッション成形装置(アピックヤマダ製)で成形した。成形温度と成形時間は表1に記載の条件で行った。180℃で2時間ポストキュアした後、該ウエハの封止樹脂面をグラインド装置(DISCO製)でシリコンチップ表面が露出するまで研削した。その後、2.2cm×2.2cmにダイシング装置(DISCO製)で個片化することで試験片を得た。該試験片を温度サイクル試験(-65℃~150℃、1000サイクル)に供し、温度サイクル試験後に樹脂部にクラックが見られた場合を×、樹脂部にクラックが見られなかった場合を〇とした。
【0056】
<耐湿性>
上記樹脂組成物を真空プレス機(ニッコー・マテリアルズ製)で表1に記載の成形温度と成形時間で熱硬化させることで50mmΦ×3mmtの硬化物を得た。該硬化物を180℃で2時間ポストキュアした後、85℃、85%RHの恒温恒湿器に168時間保管し、保管後の質量を測定した。[(保管後の硬化物の質量-保管前の硬化物の質量)/保管前の硬化物の質量]×100(%)を吸湿率として評価した。
【0057】
<誘電特性>
上記樹脂組成物を真空プレス機(ニッコー・マテリアルズ製)により表1に記載の成形温度と成形時間で熱硬化させることで5cm×5cm×200μmtの硬化樹脂フィルムを得た。該硬化樹脂フィルムを180℃で2時間ポストキュアした後、ネットワークアナライザー(キーサイト製)とストリップライン(キーコム製)を接続して周波数10GHzにおける比誘電率と誘電正接を測定した。
【0058】
【0059】
表1に示すように、本発明の樹脂組成物は、成形後の反りが小さく抑えられ、かつ研削後の表面粗さも小さく、耐クラック性、耐湿性、誘電特性に優れる。したがって、本発明の封止樹脂組成物は半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止する用途に好適である。