(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179940
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】液晶光学素子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231213BHJP
B32B 27/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092897
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 絢香
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB01
2H149AB03
2H149BA05
2H149EA17
2H149EA22
2H149FA01Z
2H149FA21W
2H149FA27W
2H149FA39W
2H149FA40W
2H149FA42Z
2H149FA51W
2H149FA56W
2H149FA61
2H149FD01
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK41H
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00
4F100BA05
4F100GB90
4F100JN08
4F100JN10
(57)【要約】
【課題】反射帯域を拡大することが可能な液晶光学素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、液晶光学素子は、透明基板と、前記透明基板に重なり、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、を備え、前記第1コレステリック液晶及び前記第2コレステリック液晶の各々の螺旋ピッチは、連続的に変化し、前記第1コレステリック液晶は、前記透明基板に近接し、第1螺旋ピッチを有する第1部分と、前記第1部分と前記第2液晶層との間に位置し、前記第1螺旋ピッチとは異なる第2螺旋ピッチを有する第2部分と、を有し、前記第2コレステリック液晶は、前記第1液晶層に近接し、第3螺旋ピッチを有する第3部分と、前記第3部分よりも前記第1液晶層から離れて位置し、前記第3螺旋ピッチとは異なる第4螺旋ピッチを有する第4部分と、を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板に重なり、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、
前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、を備え、
前記第1コレステリック液晶及び前記第2コレステリック液晶の各々の螺旋ピッチは、連続的に変化し、
前記第1コレステリック液晶は、
前記透明基板に近接し、第1螺旋ピッチを有する第1部分と、
前記第1部分と前記第2液晶層との間に位置し、前記第1螺旋ピッチとは異なる第2螺旋ピッチを有する第2部分と、を有し、
前記第2コレステリック液晶は、
前記第1液晶層に近接し、第3螺旋ピッチを有する第3部分と、
前記第3部分よりも前記第1液晶層から離れて位置し、前記第3螺旋ピッチとは異なる第4螺旋ピッチを有する第4部分と、を有している、液晶光学素子。
【請求項2】
前記第1螺旋ピッチは、前記第2螺旋ピッチより小さく、
前記第3螺旋ピッチは、前記第4螺旋ピッチより大きい、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記第1部分によって形成される第1反射面の傾斜角度は、前記第2部分によって形成される第2反射面の傾斜角度より小さく、
前記第3部分によって形成される第3反射面の傾斜角度は、前記第4部分によって形成される第4反射面の傾斜角度より大きい、請求項2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
さらに、前記透明基板と前記第1液晶層との間に介在する配向膜を備えている、請求項3に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記第1液晶層及び前記第2液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を含んでいる、請求項4に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記第1螺旋ピッチは、前記第2螺旋ピッチより小さく、
前記第3螺旋ピッチは、前記第4螺旋ピッチより小さい、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
前記第1部分によって形成される第1反射面の傾斜角度は、前記第2部分によって形成される第2反射面の傾斜角度より小さく、
前記第3部分によって形成される第3反射面の傾斜角度は、前記第4部分によって形成される第4反射面の傾斜角度より小さい、請求項6に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
さらに、前記透明基板と前記第1液晶層との間に介在する配向膜を備えている、請求項7に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
前記第1液晶層及び前記第2液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を含んでいる、請求項8に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
前記第1螺旋ピッチは、前記第2螺旋ピッチより大きく、
前記第3螺旋ピッチは、前記第4螺旋ピッチより大きい、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
前記第1部分によって形成される第1反射面の傾斜角度は、前記第2部分によって形成される第2反射面の傾斜角度より大きく、
前記第3部分によって形成される第3反射面の傾斜角度は、前記第4部分によって形成される第4反射面の傾斜角度より大きい、請求項10に記載の液晶光学素子。
【請求項12】
さらに、前記透明基板と前記第1液晶層との間に介在する配向膜を備えている、請求項11に記載の液晶光学素子。
【請求項13】
前記第1液晶層及び前記第2液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を含んでいる、請求項11に記載の液晶光学素子。
【請求項14】
前記第1螺旋ピッチは、前記第2螺旋ピッチより大きく、
前記第3螺旋ピッチは、前記第4螺旋ピッチより小さい、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項15】
前記第1部分によって形成される第1反射面の傾斜角度は、前記第2部分によって形成される第2反射面の傾斜角度より大きく、
前記第3部分によって形成される第3反射面の傾斜角度は、前記第4部分によって形成される第4反射面の傾斜角度より小さい、請求項14に記載の液晶光学素子。
【請求項16】
前記第1液晶層及び前記第2液晶層の各々は、液晶性を示す添加剤を含んでいる、請求項15に記載の液晶光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子では、所望の反射性能を得る観点で、格子周期T、液晶層の屈折率異方性Δn(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、液晶層の厚さdといった各種パラメータの調整が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、反射帯域を拡大することが可能な液晶光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、液晶光学素子は、
透明基板と、前記透明基板に重なり、第1コレステリック液晶を有する第1液晶層と、前記第1液晶層に重なり、第2コレステリック液晶を有する第2液晶層と、を備え、前記第1コレステリック液晶及び前記第2コレステリック液晶の各々の螺旋ピッチは、連続的に変化し、前記第1コレステリック液晶は、前記透明基板に近接し、第1螺旋ピッチを有する第1部分と、前記第1部分と前記第2液晶層との間に位置し、前記第1螺旋ピッチとは異なる第2螺旋ピッチを有する第2部分と、を有し、前記第2コレステリック液晶は、前記第1液晶層に近接し、第3螺旋ピッチを有する第3部分と、前記第3部分よりも前記第1液晶層から離れて位置し、前記第3螺旋ピッチとは異なる第4螺旋ピッチを有する第4部分と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1液晶層3に含まれる第1コレステリック液晶31の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施例1を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施例2を説明するための図である。
【
図6】
図6は、液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施例3を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施例4を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施例5を説明するための図である。
【
図10】
図10は、液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0009】
(基本構成)
図1は、液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、透明基板1と、第1液晶層3と、第2液晶層4と、を備えている。
図1には示していないが、液晶光学素子100は、透明基板1と第1液晶層3との間に介在する配向膜を備える場合がある。また、液晶光学素子100は、第1液晶層3と第2液晶層4との間に接着層を備える場合がある。
【0010】
透明基板1は、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。透明基板1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。透明基板1は、任意の形状を取り得る。例えば、透明基板1は、湾曲していてもよい。
【0011】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0012】
透明基板1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、主面(外面)F1と、主面(内面)F2と、側面S1と、を有している。主面F1及び主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。側面S1は、第1方向A1に沿って延びた面である。
図1に示す例では、側面S1は、X-Z平面と略平行な面であるが、側面S1は、Y-Z平面と略平行な面を含んでいる。
【0013】
第1液晶層3は、第1方向A1において、透明基板1に重なっている。
第2液晶層4は、第1方向A1において、第1液晶層3に重なっている。
第1液晶層3は、拡大して模式的に示すように、第1コレステリック液晶31を有している。第1コレステリック液晶31は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX1を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP3を有している。
第2液晶層4は、拡大して模式的に示すように、第2コレステリック液晶41を有している。図示した例では、第1コレステリック液晶31及び第2コレステリック液晶41は、ともに同一方向に旋回しているが、互いに逆回りに旋回していてもよい。第2コレステリック液晶41は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX2を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP4を有している。螺旋軸AX1は、螺旋軸AX2に平行である。螺旋ピッチP3及びP4は、螺旋の1周期(液晶分子が360度回転するのに要する螺旋軸に沿った層厚)を示す。
【0014】
このような第1液晶層3及び第2液晶層4は、透明基板1を介して入射した光LTiのうち、螺旋ピッチ及び屈折率異方性に応じて決定する選択反射帯域の円偏光を反射する。なお、本明細書において、各液晶層における「反射」とは、液晶層の内部における回折を伴うものである。
【0015】
第1液晶層3において、第1コレステリック液晶31は、選択反射帯域のうち、第1コレステリック液晶31の旋回方向に対応した円偏光を反射する反射面32を有している。
第2液晶層4において、第2コレステリック液晶41は、選択反射帯域のうち、第2コレステリック液晶41の旋回方向に対応した円偏光を反射する反射面42を有している。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0016】
次に、
図1に示す液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0017】
図示した例では、第1液晶層3及び第2液晶層4が透明基板1の側から入射した光LTiの少なくとも一部を透明基板1に向けて反射する場合について説明する。なお、第1液晶層3及び第2液晶層4は、第2液晶層4の側から入射した光の一部も反射するが、ここでは説明を省略する。
【0018】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光、紫外線、及び、赤外線を含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、透明基板1に対して略垂直に入射するものとする。なお、透明基板1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。
【0019】
光LTiは、主面F1から透明基板1の内部に進入し、主面F2から出射して、第1液晶層3に入射する。そして、第1液晶層3は、反射面32において光LTiの一部を透明基板1に向けて反射し、その他の光を透過する。反射された光LTr1は、波長λ1の円偏光である。
【0020】
第1液晶層3を透過した光LTtは、第2液晶層4に入射する。そして、第2液晶層4は、反射面42において光LTtの一部を透明基板1に向けて反射し、その他の光を透過する。反射された光LTr2は、波長λ2の円偏光である。第2液晶層4を透過した光LTtは、例えば可視光Vを含んでいる。
【0021】
第1液晶層3で反射された光LTr1の透明基板1への進入角θa、及び、第2液晶層4で反射された光LTr2の透明基板1への進入角θbは、透明基板1における光導波条件を満足するように設定される。ここでの進入角θa、θbとは、透明基板1と空気との界面で全反射を起こす臨界角θc以上の角度に相当する。進入角θa、θbは、透明基板1の主面F1に直交する垂線に対する角度を示す。
【0022】
透明基板1、第1液晶層3、及び、第2液晶層4が同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の光導波体となり得る。この場合、光LTr1、LTr2は、透明基板1と空気との界面、及び、第2液晶層4と空気との界面において、反射を繰り返しながら、側面S1に向けて導光される。
【0023】
図2は、第1液晶層3に含まれる第1コレステリック液晶31の一例を説明するための図である。
なお、
図2では、第1液晶層3を第1方向A1に拡大して図示している。また、簡略化のため、第1コレステリック液晶31を構成する液晶分子LM1として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LM1を図示している。図示した液晶分子LM1の配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0024】
点線で囲んだ1つの第1コレステリック液晶31に着目すると、第1コレステリック液晶31は、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM1によって構成されている。複数の液晶分子LM1は、第1コレステリック液晶31の一端側の液晶分子LM11と、第1コレステリック液晶31の他端側の液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は、透明基板1に近接している。液晶分子LM12は、第2液晶層4に近接している。
【0025】
図2に示す例の第1液晶層3において、第2方向A2に沿って隣接する第1コレステリック液晶31の配向方向は、互いに異なっている。また、第2方向A2に沿って隣接する第1コレステリック液晶31の空間位相は、互いに異なっている。
第2方向A2に沿って隣接する液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。複数の液晶分子LM11の配向方向は、第2方向A2に沿って連続的に変化している。
第2方向A2に沿って隣接する液晶分子LM12の配向方向も、互いに異なっている。複数の液晶分子LM12の配向方向も、第2方向A2に沿って連続的に変化している。
【0026】
図中に一点鎖線で示す第1液晶層3の反射面32は、X-Y平面に対して傾斜している。反射面32とX-Y平面とのなす角度θは、鋭角である。反射面32は、液晶分子LM1の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0027】
このような第1液晶層3は、液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶光学素子100は、第1液晶層3に電界を形成するための電極を備えていない。
【0028】
一般的に、コレステリック液晶を有する液晶層において、垂直入射した光に対する選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶の螺旋ピッチP、液晶層の屈折率異方性Δn(異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)に基づいて、次の式(1)で示される。
Δλ=Δn*P …(1)
選択反射帯域Δλの具体的な波長範囲は、(no*P)以上、(ne*P)以下の範囲である。
【0029】
選択反射帯域Δλの中心波長λmは、コレステリック液晶の螺旋ピッチ、液晶層の平均屈折率nav(=(ne+no)/2)に基づいて、次の式(2)で示される。
λm=nav*P …(2)
図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図3には、第1コレステリック液晶31の空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、第1コレステリック液晶31に含まれる液晶分子LM1のうち、透明基板1の近傍に位置する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0030】
第2方向A2に沿って並んだ第1コレステリック液晶31の各々について、液晶分子LM11の配向方向は互いに異なる。つまり、第1コレステリック液晶31の空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだ第1コレステリック液晶31の各々について、液晶分子LM11の配向方向は略一致する。つまり、第1コレステリック液晶31の空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0031】
特に、第2方向A2に並んだ第1コレステリック液晶31に着目すると、各液晶分子LM11の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第2方向A2に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ第1コレステリック液晶31の空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、
図2に示した第1液晶層3のように、X-Y平面に対して傾斜する反射面32が形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子LM11の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子LM11の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子LM11の長軸方向に相当する。
【0032】
ここで、一平面内において、第2方向A2に沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の間隔を周期Tと定義する。なお、
図3においてDPは、液晶分子LM11の旋回方向を示している。
図2に示した反射面32の傾斜角度θは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。
【0033】
ここでは、詳細な説明を省略するが、第2液晶層4においても、第1コレステリック液晶31と同様に形成された第2コレステリック液晶41により、X-Y平面に対して傾斜した反射面42が形成される。
【0034】
(実施例1)
図4は、実施例1を説明するための図である。
【0035】
液晶光学素子100は、透明基板1と第1液晶層3との間に配向膜2を備えている。第2液晶層4は、第1液晶層3に密着している。
【0036】
第1液晶層3は、領域3A及び領域3Bを有している。領域3Aは、透明基板1に近接する領域であり、透明基板1と領域3Bとの間に位置している。
第2液晶層4は、領域4A及び領域4Bを有している。領域4Aは、第1液晶層3に近接する領域であり、第1液晶層3と領域4Bとの間に位置している。
【0037】
第1液晶層3において、第1コレステリック液晶31は、領域3A及び領域3Bに亘って形成されている。第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって拡大している。第1コレステリック液晶31は、領域3Aに位置する部分31Aと、領域3Bに位置する部分31Bと、を有している。換言すると、部分31Aは透明基板1と部分31Bとの間に位置し、部分31Bは部分31Aと第2液晶層4との間に位置している。部分31Aは螺旋ピッチP3Aを有し、部分31Bは螺旋ピッチP3Bを有している。螺旋ピッチP3A及び螺旋ピッチP3Bは、互いに異なる。実施例1では、螺旋ピッチP3Aは、螺旋ピッチP3Bより小さい(P3A<P3B)。
【0038】
領域3Aにおいて、第1コレステリック液晶31の部分31Aは、反射面32Aを形成する。領域3Bにおいて、第1コレステリック液晶31の部分31Bは、反射面32Bを形成する。反射面32Aの傾斜角度θ3Aは、反射面32Bの傾斜角度θ3Bより小さい(θ3A<θ3B)。
【0039】
第2液晶層4において、第2コレステリック液晶41は、領域4A及び領域4Bに亘って形成されている。第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって縮小している。第2コレステリック液晶41は、領域4Aに位置する部分41Aと、領域4Bに位置する部分41Bと、を有している。換言すると、部分41Aは第1液晶層3と部分41Bとの間に位置し、部分41Bは部分41Aよりも第1液晶層3から離れて位置している。部分41Aは螺旋ピッチP4Aを有し、部分41Bは螺旋ピッチP4Bを有している。螺旋ピッチP4A及び螺旋ピッチP4Bは、互いに異なる。実施例1では、螺旋ピッチP4Aは、螺旋ピッチP4Bより大きい(P4A>P4B)。
【0040】
領域4Aにおいて、第2コレステリック液晶41の部分41Aは、反射面42Aを形成する。領域4Bにおいて、第2コレステリック液晶41の部分41Bは、反射面42Bを形成する。反射面42Aの傾斜角度θ4Aは、反射面42Bの傾斜角度θ4Bより大きい(θ4A>θ4B)。
【0041】
次に、液晶光学素子100の製造方法について説明する。
【0042】
まず、透明基板1の上に配向膜2を形成する。その後、配向膜2の配向処理を行う。
そして、配向膜2の上に第1液晶材料(第1コレステリック液晶31を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点(nematic-isotropic転移温度)付近の温度で第1液晶材料を3分ベークする。ベークにより第1液晶材料に含まれる液晶分子は、配向膜2の配向処理方向に応じて所定の方向に配向する。その後、第1液晶材料に紫外線を照射して第1液晶材料を硬化する。これにより、第1コレステリック液晶31を有する第1液晶層3が形成される。このとき、第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチP3は、ほぼ均一である。
【0043】
続いて、第1液晶層3の上に第2液晶材料(第2コレステリック液晶41を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点よりも約10℃低い温度で第2液晶材料を15分ベークする。ベークにより第2液晶材料に含まれる液晶分子は、第1液晶層3の表面付近の液晶分子の配向方向に応じて所定の方向に配向する。その後、第2液晶材料に紫外線を照射して第2液晶材料を硬化する。これにより、第2コレステリック液晶41を有する第2液晶層4が形成される。
【0044】
このとき、先行して形成された第1液晶層3には、第2液晶材料が浸透する。そして、領域3Bが領域3Aよりも膨潤する。この状態で第1液晶層3が乾燥することにより、第1コレステリック液晶31のうち、領域3Bに位置する部分31Bの螺旋ピッチP3Bは、領域3Aに位置する部分31Aの螺旋ピッチP3Aよりも拡大する。
【0045】
一方、第2液晶層4においては、表層側の領域4Bの乾燥が促進され、領域4Aが領域4Bよりも膨潤した状態が形成される。この状態で第2液晶層4を硬化することにより、第2コレステリック液晶41のうち、領域4Aに位置する部分41Aの螺旋ピッチP4Aは、領域4Bに位置する部分41Bの螺旋ピッチP4Bよりも拡大する。
【0046】
これにより、
図4に示した液晶光学素子100が製造される。
【0047】
一例では、第1液晶層3での選択反射帯域の中心波長λmを530nmに設定するために、第1液晶材料として、平均屈折率navが1.65の材料を適用し、螺旋ピッチP3が320nmとなるようにカイラル剤で調整した。部分31Aにおける螺旋ピッチP3Aは約340nmであり、部分31Bにおける螺旋ピッチP3Bは約380nmであった。
【0048】
また、第2液晶層4での選択反射帯域の中心波長λmを920nmに設定するために、第2液晶材料として、平均屈折率navが1.63の材料を適用し、螺旋ピッチP4が530nmとなるようにカイラル剤で調整した。部分41Aにおける螺旋ピッチP4Aは約560nmであり、部分41Bにおける螺旋ピッチP4Bは約440nmであった。
【0049】
このように、第1液晶層3は、螺旋ピッチP3が連続的に変化する第1コレステリック液晶31を有し、第2液晶層4は、螺旋ピッチP4が連続的に変化する第2コレステリック液晶41を有している。これにより、液晶光学素子100における反射帯域を拡大することができる。
【0050】
(実施例2)
図5は、実施例2を説明するための図である。
【0051】
液晶光学素子100は、透明基板1と第1液晶層3との間に配向膜2を備えている。第2液晶層4は、図示を省略した接着剤により、第1液晶層3に接着されている。
実施例2は、実施例1と比較して、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々が液晶性を示す添加剤5を含む点で相違している。
【0052】
図5では図示を省略するが、
図4に示した実施例1と同様に、領域3Aは傾斜角度θ3Aの反射面32Aを有し、領域3Bは傾斜角度θ3Bの反射面32Bを有し、領域4Aは傾斜角度θ4Aの反射面42Aを有し、領域4Bは傾斜角度θ4Bの反射面42Bを有している。
【0053】
次に、液晶光学素子100の製造方法について
図6を参照しながら説明する。
【0054】
まず、透明基板1の上に配向膜2を形成する。その後、配向膜2の配向処理を行う。
そして、配向膜2の上に第1液晶材料(第1コレステリック液晶31を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点付近の温度で第1液晶材料を3分ベークする。ベークにより第1液晶材料に含まれる液晶分子は、配向膜2の配向処理方向に応じて所定の方向に配向する。その後、第1液晶材料に紫外線を照射して第1液晶材料を硬化する。これにより、第1コレステリック液晶31を有する第1液晶層3が形成される。このとき、第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチP3は、ほぼ均一である。
【0055】
一方で、支持基板SUBの上に配向膜ALを形成し、この配向膜ALの配向処理を行う。そして、配向膜ALの上に第2液晶材料(第2コレステリック液晶41を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点付近の温度で第2液晶材料を3分ベークする。ベークにより第2液晶材料に含まれる液晶分子は、配向膜ALの配向処理方向に応じて所定の方向に配向する。その後、第2液晶材料に紫外線を照射して第2液晶材料を硬化する。これにより、第2コレステリック液晶41を有する第2液晶層4が形成される。このとき、第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチP4は、ほぼ均一である。
【0056】
その後、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々に、添加剤5を含む液晶溶液を塗布する。液晶溶液は、溶媒に添加剤5を溶かしたものである。溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、トルエン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などの有機溶媒が適用可能である。添加剤5としては、第1液晶材料及び第2液晶材料の各々とは濃度が異なる液晶材料、4-Cyano-4’’-pentyl-p-terphenyl(別名:5CT)、4’-pentyl-4-biphenylcarbonitrile(別名:5CB)などが適用可能である。
【0057】
その後、ni点よりも10℃低い温度で第1液晶層3及び第2液晶層4の各々を3分ベークする。その後、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々に紫外線を照射して、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々を硬化する。これにより、第1液晶層3については、表層側に領域3Bが形成され、透明基板1と領域3Bとの間に領域3Aが形成され、また、第2液晶層4については、表層側に領域4Aが形成され、支持基板SUBと領域4Aとの間に領域4Bが形成される。領域3A及び領域3Bに亘って形成された第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、透明基板1から離れるほど拡大する。また、領域4A及び領域4Bに亘って形成された第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチは、支持基板SUBから離れるほど拡大する。
【0058】
つまり、第1コレステリック液晶31のうち、領域3Bに位置する部分31Bの螺旋ピッチP3Bは、領域3Aに位置する部分31Aの螺旋ピッチP3Aよりも大きい。また、第2コレステリック液晶41のうち、領域4Aに位置する部分41Aの螺旋ピッチP4Aは、領域4Bに位置する部分41Bの螺旋ピッチP4Bよりも大きい。
【0059】
その後、第2液晶層4を支持基板SUBから剥離し、第2液晶層4の表裏を反転して、領域4Aを領域3Bに接着する。これにより、
図5に示した液晶光学素子100が製造される。
【0060】
このような実施例2においても、実施例1と同様に、液晶光学素子100における反射帯域を拡大することができる。
【0061】
上記の実施例1及び実施例2においては、部分31Aが第1部分に相当し、螺旋ピッチP3Aが第1螺旋ピッチに相当する。部分31Bが第2部分に相当し、螺旋ピッチP3Bが第2螺旋ピッチに相当する。部分41Aが第3部分に相当し、螺旋ピッチP4Aが第3螺旋ピッチに相当する。部分41Bが第4部分に相当し、螺旋ピッチP4Bが第4螺旋ピッチに相当する。
領域3Aは第1領域に相当し、反射面32Aは第1反射面に相当する。領域3Bは第2領域に相当し、反射面32Bは第2反射面に相当する。領域4Aは第3領域に相当し、反射面42Aは第3反射面に相当する。領域4Bは第4領域に相当し、反射面42Bは第4反射面に相当する。
【0062】
(実施例3)
図7は、実施例3を説明するための図である。
【0063】
液晶光学素子100は、透明基板1と第1液晶層3との間に配向膜2を備えている。第2液晶層4は、図示を省略した接着剤により、第1液晶層3に接着されている。
実施例3は、実施例2と比較して、第2液晶層4の領域4Bが第1液晶層3の領域3Bに接着された点で相違している。第1液晶層3及び第2液晶層4の各々は、
図7では図示を省略するが、
図5に示した実施例2と同様に、液晶性を示す添加剤5を含んでいる。
【0064】
第1液晶層3において、領域3A及び領域3Bに亘って形成された第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって拡大している。つまり、領域3Aに位置する部分31Aの螺旋ピッチP3Aは、領域3Bに位置する部分31Bの螺旋ピッチP3Bより小さい(P3A<P3B)。
領域3Aに位置する反射面32Aの傾斜角度θ3Aは、領域3Bに位置する反射面32Bの傾斜角度θ3Bより小さい(θ3A<θ3B)。
【0065】
第2液晶層4において、領域4A及び領域4Bに亘って形成された第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって拡大している。つまり、領域4Bに位置する部分41Bの螺旋ピッチP4Bは、領域4Aに位置する部分41Aの螺旋ピッチP4Aより小さい(P4A>P4B)。
領域4Bに位置する反射面42Bの傾斜角度θ4Bは、領域4Aに位置する反射面42Aの傾斜角度θ4Aより小さい(θ4A>θ4B)。
【0066】
実施例3の液晶光学素子100の製造方法については、
図6を参照して説明した実施例2の液晶光学素子100の製造方法と同様である。以下簡単に説明する。
【0067】
まず、透明基板1の上に配向膜2を形成した後に、配向膜2の配向処理を行い、配向膜2の上に第1液晶材料を塗布する。その後、第1液晶材料をベークし、第1液晶材料に紫外線を照射して、第1液晶層3が形成される。
その後、第1液晶層3に、添加剤5を含む液晶溶液を塗布する。その後、第1液晶材料をベークし、第1液晶材料に紫外線を照射する。これにより、透明基板1から離れるほど螺旋ピッチが拡大した第1コレステリック液晶31が形成される。
【0068】
一方で、支持基板SUBの上に配向膜ALを形成した後に、配向膜ALの配向処理を行い、配向膜ALの上に第2液晶材料を塗布する。その後、第2液晶材料をベークし、第2液晶材料に紫外線を照射して、第2液晶層4が形成される。
その後、第2液晶層4に、添加剤5を含む液晶溶液を塗布する。その後、第2液晶材料をベークし、第2液晶材料に紫外線を照射する。これにより、支持基板SUBから離れるほど螺旋ピッチが拡大した第2コレステリック液晶41が形成される。
【0069】
その後、第2液晶層4を支持基板SUBから剥離し、第2液晶層4の領域4Bを第1液晶層3の領域3Bに接着する。これにより、
図7に示した液晶光学素子100が製造される。
【0070】
このような実施例3においても、実施例1と同様に、液晶光学素子100における反射帯域を拡大することができる。
【0071】
上記の実施例3においては、部分31Aが第1部分に相当し、螺旋ピッチP3Aが第1螺旋ピッチに相当する。部分31Bが第2部分に相当し、螺旋ピッチP3Bが第2螺旋ピッチに相当する。部分41Bが第3部分に相当し、螺旋ピッチP4Bが第3螺旋ピッチに相当する。部分41Aが第4部分に相当し、螺旋ピッチP4Aが第4螺旋ピッチに相当する。
領域3Aは第1領域に相当し、反射面32Aは第1反射面に相当する。領域3Bは第2領域に相当し、反射面32Bは第2反射面に相当する。領域4Bは第3領域に相当し、反射面42Bは第3反射面に相当する。領域4Aは第4領域に相当し、反射面42Aは第4反射面に相当する。
【0072】
(実施例4)
図8は、実施例4を説明するための図である。
【0073】
液晶光学素子100は、透明基板1と第1液晶層3との間に配向膜2を備えている。第2液晶層4は、第1液晶層3に密着している。
【0074】
第1液晶層3は、領域3A及び領域3Bを有している。領域3Bは、透明基板1に近接する領域であり、透明基板1と領域3Aとの間に位置している。
第2液晶層4は、領域4A及び領域4Bを有している。領域4Aは、第1液晶層3に近接する領域であり、第1液晶層3と領域4Bとの間に位置している。
【0075】
第1液晶層3において、領域3A及び領域3Bに亘って形成された第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって縮小している。つまり、領域3Bに位置する部分31Bの螺旋ピッチP3Bは、領域3Aに位置する部分31Aの螺旋ピッチP3Aより大きい(P3A<P3B)。
領域3Bに位置する反射面32Bの傾斜角度θ3Bは、領域3Aに位置する反射面32Aの傾斜角度θ3Aより大きい(θ3A<θ3B)。
【0076】
第2液晶層4において、領域4A及び領域4Bに亘って形成された第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって縮小している。つまり、領域4Aに位置する部分41Aの螺旋ピッチP4Aは、領域4Bに位置する部分41Bの螺旋ピッチP4Bより大きい(P4A>P4B)。
領域4Aに位置する反射面42Aの傾斜角度θ4Aは、領域4Bに位置する反射面42Bの傾斜角度θ4Bより大きい(θ4A>θ4B)。
【0077】
次に、液晶光学素子100の製造方法について説明する。
【0078】
まず、透明基板1の上に配向膜2を形成する。その後、配向膜2の配向処理を行う。
そして、配向膜2の上に第1液晶材料(第1コレステリック液晶31を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点(nematic-isotropic転移温度)付近の温度で第1液晶材料を3分ベークする。その後、第1液晶材料に紫外線を照射して第1液晶材料を硬化する。これにより、第1コレステリック液晶31を有する第1液晶層3が形成される。このとき、第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチP3は、ほぼ均一である。
【0079】
続いて、第1液晶層3の上に第2液晶材料(第2コレステリック液晶41を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点よりも低い温度で第2液晶材料を15分ベークする。このとき、ベークする温度は、実施例1よりもさらに低い温度であり、一例では、ni点よりも約20℃低い温度である。その後、第2液晶材料に紫外線を照射して第2液晶材料を硬化する。これにより、第2コレステリック液晶41を有する第2液晶層4が形成される。
【0080】
このとき、先行して形成された第1液晶層3には、第2液晶材料が浸透する。実施例1よりもさらに低い温度でベークすることにより、第1液晶層3のうち、透明基板1に近接する領域3Bへの第2液晶材料の浸透が促進される。そして、領域3Bが領域3Aよりも膨潤する。この状態で第1液晶層3が乾燥することにより、第1コレステリック液晶31のうち、領域3Bに位置する部分31Bの螺旋ピッチP3Bは、領域3Aに位置する部分31Aの螺旋ピッチP3Aよりも拡大する。
【0081】
一方、第2液晶層4においては、表層側の領域4Bの乾燥が促進され、領域4Aが領域4Bよりも膨潤した状態が形成される。この状態で第2液晶層4を硬化することにより、第2コレステリック液晶41のうち、領域4Aに位置する部分41Aの螺旋ピッチP4Aは、領域4Bに位置する部分41Bの螺旋ピッチP4Bよりも拡大する。
【0082】
これにより、
図8に示した液晶光学素子100が製造される。
【0083】
このような実施例4においても、実施例1と同様に、液晶光学素子100における反射帯域を拡大することができる。
【0084】
(実施例5)
図9は、実施例5を説明するための図である。
【0085】
液晶光学素子100において、第1液晶層3は、図示を省略した接着剤により、透明基板1に接着されている。第2液晶層4は、図示を省略した接着剤により、第1液晶層3に接着されている。
実施例5は、実施例4と比較して、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々が液晶性を示す添加剤5を含む点で相違している。
【0086】
図9では図示を省略するが、
図8に示した実施例4と同様に、領域3Aは傾斜角度θ3Aの反射面32Aを有し、領域3Bは傾斜角度θ3Bの反射面32Bを有し、領域4Aは傾斜角度θ4Aの反射面42Aを有し、領域4Bは傾斜角度θ4Bの反射面42Bを有している。
【0087】
次に、液晶光学素子100の製造方法について
図10を参照しながら説明する。
【0088】
まず、支持基板SUB1の上に配向膜AL1を形成する。その後、配向膜AL1の配向処理を行う。
そして、配向膜AL1の上に第1液晶材料(第1コレステリック液晶31を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点付近の温度で第1液晶材料を3分ベークする。その後、第1液晶材料に紫外線を照射して第1液晶材料を硬化する。これにより、第1コレステリック液晶31を有する第1液晶層3が形成される。このとき、第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチP3は、ほぼ均一である。
【0089】
一方で、支持基板SUB2の上に配向膜AL2を形成し、この配向膜AL2の配向処理を行う。そして、配向膜AL2の上に第2液晶材料(第2コレステリック液晶41を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する。その後、ni点付近の温度で第2液晶材料を3分ベークする。その後、第2液晶材料に紫外線を照射して第2液晶材料を硬化する。これにより、第2コレステリック液晶41を有する第2液晶層4が形成される。このとき、第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチP4は、ほぼ均一である。
【0090】
その後、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々に、添加剤5を含む液晶溶液を塗布する。液晶溶液の詳細については実施例1で説明した通りである。
【0091】
その後、ni点よりも10℃低い温度で第1液晶層3及び第2液晶層4の各々を3分ベークする。その後、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々に紫外線を照射して、第1液晶層3及び第2液晶層4の各々を硬化する。これにより、第1液晶層3については、表層側に領域3Bが形成され、支持基板SUB1と領域3Bとの間に領域3Aが形成され、また、第2液晶層4については、表層側に領域4Aが形成され、支持基板SUB2と領域4Aとの間に領域4Bが形成される。領域3A及び領域3Bに亘って形成された第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、支持基板SUB1から離れるほど拡大する。また、領域4A及び領域4Bに亘って形成された第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチは、支持基板SUB2から離れるほど拡大する。
【0092】
その後、第1液晶層3を支持基板SUB1から剥離し、第1液晶層3の表裏を反転して、領域3Bを透明基板1に接着する。その後、第2液晶層4を支持基板SUB2から剥離し、第2液晶層4の表裏を反転して、領域4Aを領域3Aに接着する。これにより、
図9に示した液晶光学素子100が製造される。
【0093】
このような実施例5においても、実施例1と同様に、液晶光学素子100における反射帯域を拡大することができる。
【0094】
上記の実施例4及び実施例5においては、部分31Bが第1部分に相当し、螺旋ピッチP3Bが第1螺旋ピッチに相当する。部分31Aが第2部分に相当し、螺旋ピッチP3Aが第2螺旋ピッチに相当する。部分41Aが第3部分に相当し、螺旋ピッチP4Aが第3螺旋ピッチに相当する。部分41Bが第4部分に相当し、螺旋ピッチP4Bが第4螺旋ピッチに相当する。
領域3Bは第1領域に相当し、反射面32Bは第1反射面に相当する。領域3Aは第2領域に相当し、反射面32Aは第2反射面に相当する。領域4Aは第3領域に相当し、反射面42Aは第3反射面に相当する。領域4Bは第4領域に相当し、反射面42Bは第4反射面に相当する。
【0095】
(実施例6)
図11は、実施例6を説明するための図である。
【0096】
液晶光学素子100において、第1液晶層3は、図示を省略した接着剤により、透明基板1に接着されている。第2液晶層4は、図示を省略した接着剤により、第1液晶層3に接着されている。
実施例6は、実施例5と比較して、第2液晶層4の領域4Bが第1液晶層3の領域3Aに接着された点で相違している。第1液晶層3及び第2液晶層4の各々は、
図11では図示を省略するが、
図9に示した実施例5と同様に、液晶性を示す添加剤5を含んでいる。
【0097】
第1液晶層3において、領域3A及び領域3Bに亘って形成された第1コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって縮小している。つまり、領域3Bに位置する部分31Bの螺旋ピッチP3Bは、領域3Aに位置する部分31Aの螺旋ピッチP3Aより大きい(P3A<P3B)。
領域3Bに位置する反射面32Bの傾斜角度θ3Bは、領域3Aに位置する反射面32Aの傾斜角度θ3Aより大きい(θ3A<θ3B)。
【0098】
第2液晶層4において、領域4A及び領域4Bに亘って形成された第2コレステリック液晶41の螺旋ピッチは、連続的に変化し、透明基板1から離れるにしたがって拡大している。つまり、領域4Bに位置する部分41Bの螺旋ピッチP4Bは、領域4Aに位置する部分41Aの螺旋ピッチP4Aより小さい(P4A>P4B)。
領域4Bに位置する反射面42Bの傾斜角度θ4Bは、領域4Aに位置する反射面42Aの傾斜角度θ4Aより小さい(θ4A>θ4B)。
【0099】
実施例6の液晶光学素子100の製造方法については、
図10を参照して説明した実施例5の液晶光学素子100の製造方法と同様である。以下簡単に説明する。
【0100】
まず、支持基板SUB1の上に配向膜AL1を形成した後に、配向膜AL1の配向処理を行い、配向膜AL1の上に第1液晶材料を塗布する。その後、第1液晶材料をベークし、第1液晶材料に紫外線を照射して、第1液晶層3が形成される。
その後、第1液晶層3に、添加剤5を含む液晶溶液を塗布する。その後、第1液晶材料をベークし、第1液晶材料に紫外線を照射する。これにより、支持基板SUB1から離れるほど螺旋ピッチが拡大した第1コレステリック液晶31が形成される。
【0101】
一方で、支持基板SUB2の上に配向膜AL2を形成した後に、配向膜AL2の配向処理を行い、配向膜AL2の上に第2液晶材料を塗布する。その後、第2液晶材料をベークし、第2液晶材料に紫外線を照射して、第2液晶層4が形成される。
その後、第2液晶層4に、添加剤5を含む液晶溶液を塗布する。その後、第2液晶材料をベークし、第2液晶材料に紫外線を照射する。これにより、支持基板SUB2から離れるほど螺旋ピッチが拡大した第2コレステリック液晶41が形成される。
【0102】
その後、第1液晶層3を支持基板SUB1から剥離し、第1液晶層3の表裏を反転して、領域3Bを透明基板1に接着する。その後、第2液晶層4を支持基板SUB2から剥離し、第2液晶層4の領域4Bを第1液晶層3の領域3Aに接着する。これにより、
図11に示した液晶光学素子100が製造される。
【0103】
このような実施例6においても、実施例1と同様に、液晶光学素子100における反射帯域を拡大することができる。
【0104】
上記の実施例6においては、部分31Bが第1部分に相当し、螺旋ピッチP3Bが第1螺旋ピッチに相当する。部分31Aが第2部分に相当し、螺旋ピッチP3Aが第2螺旋ピッチに相当する。部分41Bが第3部分に相当し、螺旋ピッチP4Bが第3螺旋ピッチに相当する。部分41Aが第4部分に相当し、螺旋ピッチP4Aが第4螺旋ピッチに相当する。
領域3Bは第1領域に相当し、反射面32Bは第1反射面に相当する。領域3Aは第2領域に相当し、反射面32Aは第2反射面に相当する。領域4Bは第3領域に相当し、反射面42Bは第3反射面に相当する。領域4Aは第4領域に相当し、反射面42Aは第4反射面に相当する。
【0105】
上記の実施例1乃至実施例6においては、第1液晶層3が透明基板1と第2液晶層4との間に位置する場合について説明したが、第2液晶層4が透明基板1と第1液晶層3との間に位置していてもよい。
【0106】
以上説明したように、本実施形態によれば、反射帯域を拡大することができ、所望の反射性能を得ることが可能な液晶光学素子を提供することができる。
【0107】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
100…液晶光学素子
1…透明基板 2…配向膜
3…第1液晶層 31…第1コレステリック液晶 32…反射面
4…第2液晶層 41…第2コレステリック液晶 42…反射面
5…添加剤