(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179963
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】マイクロ波プラズマCVD装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/511 20060101AFI20231213BHJP
C30B 29/04 20060101ALI20231213BHJP
C01B 32/26 20170101ALI20231213BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231213BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C23C16/511
C30B29/04 E
C01B32/26
H01L21/205
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092952
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】山田 英明
(72)【発明者】
【氏名】茶谷原 昭義
(72)【発明者】
【氏名】杢野 由明
【テーマコード(参考)】
2G084
4G077
4G146
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB07
2G084BB13
2G084BB14
2G084BB28
2G084CC06
2G084CC33
2G084DD18
2G084DD44
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2G084DD51
2G084DD56
2G084DD62
4G077AA03
4G077BA03
4G077DB07
4G077DB19
4G077HA06
4G077HA14
4G077TA04
4G146AA04
4G146AB07
4G146DA03
4G146DA16
4G146DA26
4G146DA50
4K030AA10
4K030AA16
4K030AA17
4K030BA28
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4K030EA04
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4K030FA01
4K030GA02
4K030JA14
4K030JA18
4K030KA30
4K030KA45
4K030KA46
4K030KA47
5F045AA09
5F045AB07
5F045AC00
5F045AC11
5F045AC16
5F045AC19
5F045BB02
5F045DP03
5F045DP05
5F045DQ10
5F045EB03
5F045EH03
5F045EJ04
5F045EJ09
5F045EJ10
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】大電力マイクロ波の導入時においても異常放電を抑制し、また、バルクの品質低下を防止することができ、更には装置の大型化を抑制しつつ大型バルクを製造することが可能となるマイクロ波プラズマCVD装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波プラズマCVD装置1は、チャンバ10Aと、チャンバ10Aの平面視においてチャンバ10Aの中心部に設けられた載置台110Aと、チャンバ10Aの平面視においてチャンバ10Aの中心部に位置し、且つチャンバ10Aの内部共振モードの対称軸の軸方向に平行な中心導体81及び中心導体81の周囲に位置する外部導体82を含む同軸構造部80Aと、チャンバ10Aの同軸構造部80Aに設けられ、チャンバ10Aの内部共振モードに合うように結合された複数のマイクロ波導入ポート20,20,…と、チャンバ10Aと導波部40Aとを圧力隔壁しつつマイクロ波を透過するマイクロ波導入窓30Aとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの平面視において前記チャンバの中心部に設けられた載置台と、
前記チャンバに原料ガスを導入する原料ガス導入部と、
前記チャンバからガスを排出するガス排出部と、
前記チャンバの内部共振モードに合うように結合された複数のマイクロ波導入ポートと、
前記チャンバと導波部とを圧力隔壁しつつマイクロ波を透過する1又は複数のマイクロ波導入窓と、
前記複数のマイクロ波導入ポートに接続された導波部と、
前記導波部に接続されたマイクロ波発振源と、
を備える、マイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項2】
前記チャンバの平面視において前記チャンバの中心部に位置し、且つ前記チャンバの内部共振モードの対称軸の軸方向に平行な中心導体及び前記中心導体の周囲に位置する外部導体を含む同軸構造部を更に備え、
前記複数のマイクロ波導入ポートが、前記チャンバの前記同軸構造部に設けられる、請求項1に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項3】
前記複数のマイクロ波導入ポートから導入されるマイクロ波の導入方向が、前記チャンバの前記内部共振モードの対称軸の軸方向又は前記中心導体の軸方向と平行である、請求項1又は2に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項4】
前記複数のマイクロ波導入ポートから導入されるマイクロ波の導入方向が、前記チャンバの内部共振モードの対称軸の軸方向又は前記中心導体の軸方向と垂直である、請求項2に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項5】
前記複数のマイクロ波導入ポートの開口面が、前記チャンバの平面視において前記中心導体の周りに配置され、且つ前記中心導体の軸方向に平行に設けられる、請求項2に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項6】
前記複数のマイクロ波導入ポートの開口面が、前記チャンバの平面視において前記中心導体の周りに配置され、且つ前記中心導体の軸方向に対して垂直に設けられる、請求項2に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項7】
前記複数のマイクロ波導入ポートの開口面が、前記チャンバの平面視において当該チャンバの前記内部共振モードの対称軸又は前記中心導体の中心軸を基準として前記チャンバの周方向に沿って配置される、請求項1又は2に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【請求項8】
前記導波部が、方形形状の導波管と、前記方形形状の導波管と結合され、前記チャンバの前記同軸構造部に設けられたリング形状の共振器と、を有し、
前記リング形状の共振器が、該共振器に設けられた前記複数のマイクロ波導入ポートを介して前記同軸構造部と結合され、
前記方形形状の導波管を伝送するマイクロ波のTEモードが、前記リング形状の共振器を介して、前記同軸構造部を伝送するTEMモードに変換される、請求項2に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマCVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工工具素材や研磨粒子として産業利用されている人工ダイヤモンドは、そのほとんどが超高圧合成法によって製造されてきたが、近年では、気相合成法の利用が盛んになってきた。気相合成法を用いて製造されるダイヤモンドは、主に窓材、ヒートシンク、半導体、量子応用に用いられる。これらの用途には、大面積および/または高純度であることが要求される。
【0003】
気相合成用の装置としては、主に熱フィラメントCVD(Chemical Vapor Deposition)装置とマイクロ波プラズマCVD装置が産業上使用されている。このうち、マイクロ波プラズマCVD装置では、周波数2.45GHzまたは915MHzのマイクロ波を用いて、圧力(真空度)10~300Torrにてメタンと水素を主とするガス中でマイクロ波放電を起こし、プラズマを形成して基板上にダイヤモンドを成長することができる。マイクロ波プラズマCVD装置をダイヤモンド合成に用いた場合、熱フィラメントCVD装置と比べ、10倍程度の高速成長が可能で、製造コスト低減が期待できることに加え、膜中へのフィラメント材料の混入がないことから、半導体用途等に要求される高純度膜の成長が可能になる。
【0004】
マイクロ波プラズマCVD装置には様々な方式のものがあり、放電容器としてのチャンバの形状や、マイクロ波の導入方法を工夫することにより、プラズマ形状を制御している。主要なチャンバ形状には、旧無機材質研究所(現国立研究開発法人物質・材料研究機構)で考案されたNIRIM型(非特許文献1)、米国ASTeX社によって開発されたASTeX型(特許文献1)、ドイツのiPlas社から商品化されているCYRANNUSと呼ばれる装置(特許文献2)、ドイツのフランフォーファー研究所で開発されたAIXTRONと呼ばれる装置(非特許文献2)およびその変形(非特許文献3~5)などがある。その他のマイクロ波導入方式として、複数の導波管から照射タイミングをずらしてマイクロ波をチャンバに供給する方法(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3483147号公報
【特許文献2】特表2000-515296号公報
【特許文献3】特開平4-144992号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Crystal Growth, 62 (1983), 642-644.
【非特許文献2】Applied Physics Letters, 72, 1149, 1998
【非特許文献3】Diamond & Related Materials, 30, (2012), 15-19
【非特許文献4】Diamond & Related Materials, 51, (2015), 24-29
【非特許文献5】Vacuum, 117, (2015), 112-120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロ波プラズマCVD装置は、少なくともマイクロ波を発生させるマイクロ波電源、ダイヤモンドを合成するチャンバ、およびマイクロ波電源からチャンバにマイクロ波を導入する導波管からなる。マイクロ波プラズマCVD装置を用いた大面積ダイヤモンドの高速成長には、大電力マイクロ波の導入が必要となる。しかし、その場合に導波管内で異常放電が発生する場合がある。特に、高湿度環境下において、チャンバにマイクロ波を導入する導波管内や、上記マイクロ波プラズマCVD装置のうちASTeX型等に採用されている方形導波管と円筒導波管とが連結してなるアプリケータ内等で、異常放電の発生が顕著となる。
【0008】
また、大型な宝石や半導体ダイヤモンドのインゴットを製造する場合においては、被処理体(結晶)の冷却、自動昇降、温度分布管理などを行える機構を設置する十分なスペースが結晶の近傍に必要となる。具体的には、結晶を載置台に置く場合、その下方にはマイクロ波導入部など上記機構の設置に障害となるものがないことが望ましい。
【0009】
さらに、上記マイクロ波プラズマCVD装置のうち、NIRIM型、CYRANNUS、AIXTRONでは、結晶上面(成長面)に対して面内方向の延長線上或いはその近傍においてチャンバと外部との真空隔壁として設置される石英製などのマイクロ波導入窓があるため、それがプラズマによってエッチングされ、エッチングによって浮遊した石英成分が基板上のダイヤモンドに混入してバルクなどの被処理体の品質低下を招く虞がある。このような現象は、大電力のマイクロ波を投入するとプラズマが広がりマイクロ波導入窓に近づくため、より顕著になると考えられる。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、大電力マイクロ波の導入時においても異常放電を抑制し、また、結晶への良好なアクセスを確保することにより結晶品質を向上させることができ、更には高純度ダイヤモンドを製造することが可能となるマイクロ波プラズマCVD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]チャンバと、
前記チャンバの平面視において前記チャンバの中心部に設けられた載置台と、
前記チャンバに原料ガスを導入する原料ガス導入部と、
前記チャンバからガスを排出するガス排出部と、
前記チャンバの内部共振モードに合うように結合された複数のマイクロ波導入ポートと、
前記チャンバと導波部とを圧力隔壁しつつマイクロ波を透過する1又は複数のマイクロ波導入窓と、
前記複数のマイクロ波導入ポートに接続された導波部と、
前記導波部に接続されたマイクロ波発振源と、
を備える、マイクロ波プラズマCVD装置。
【0012】
[2]前記チャンバの平面視において前記チャンバの中心部に位置し、且つ前記チャンバの内部共振モードの対称軸の軸方向に平行な中心導体及び前記中心導体の周囲に位置する外部導体を含む同軸構造部を更に備え、
前記複数のマイクロ波導入ポートが、前記チャンバの前記同軸構造部に設けられる、上記[1]に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【0013】
[3]前記複数のマイクロ波導入ポートから導入されるマイクロ波の導入方向が、前記チャンバの前記内部共振モードの対称軸の軸方向又は前記中心導体の軸方向と平行である、上記[1]又は[2]に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【0014】
[4]前記複数のマイクロ波導入ポートから導入されるマイクロ波の導入方向が、前記チャンバの前記内部共振モードの対称軸の軸方向又は前記中心導体の軸方向と垂直である、上記[2]に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【0015】
[5]前記複数のマイクロ波導入ポートの開口面が、前記チャンバの平面視において前記中心導体の周りに配置され、且つ前記中心導体の軸方向に平行に設けられる、上記[2]に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【0016】
[6]前記複数のマイクロ波導入ポートの開口面が、前記チャンバの平面視において前記中心導体の周りに配置され、且つ前記中心導体の軸方向に対して垂直に設けられる、上記[2]に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【0017】
[7]前記複数のマイクロ波導入ポートの開口面が、前記チャンバの平面視において当該チャンバの前記内部共振モードの対称軸又は前記中心導体の中心軸を基準として前記チャンバの周方向に沿って配置される、上記[1]~[6]のいずれかに記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【0018】
[8]前記導波部が、方形形状の導波管と、前記方形形状の導波管と結合され、前記チャンバの前記同軸構造部に設けられたリング形状の共振器と、を有し、
前記リング形状の共振器が、該共振器に設けられた前記複数のマイクロ波導入ポートを介して前記同軸構造部と結合され、
前記方形形状の導波管を伝送するマイクロ波のTEモードが、前記リング形状の共振器を介して、前記同軸構造部を伝送するTEMモードに変換される、上記[2]に記載のマイクロ波プラズマCVD装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大電力マイクロ波の導入時においても異常放電を抑制し、また、結晶への良好なアクセスを確保することにより結晶品質を向上させることができ、更には高純度ダイヤモンドを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るマイクロ波プラズマCVD装置の構成の一例を示す部分断面斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のマイクロ波プラズマCVD装置の構成を示す側面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図1のマイクロ波プラズマCVD装置の構成の一例を概略的に示す断面図であり、
図3(B)は、線A-Aに沿う断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の同軸構造部に設けられるマイクロ波モード変換器の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、
図4のマイクロ波モード変換器の平面図であり、
図5(B)は、線B-Bに沿う断面図である。
【
図6】
図6(A)及び
図6(B)は、
図3(A)のマイクロ波プラズマCVD装置の変形例を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図7(A)~
図7(C)は、
図3(A)のマイクロ波プラズマCVD装置のその他の変形例を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、
図7(A)のリング形状の共振器を複数の導波管に変えた例を概略的に示す側面図であり、
図8(B)は、線C-Cに沿う断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1のシミュレーションによる電界強度の分布を示す図である。
【
図10】
図10(A)は、実施例2のシミュレーションによる電界強度の分布を示す図であり、
図10(B)は、線D-Dに沿う断面における磁場強度の分布を示す図である。
【
図11】
図11は、従来のマイクロ波プラズマCVD装置におけるマイクロ波モード変換器の構成を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、比較例1のシミュレーションによる電界強度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るマイクロ波プラズマCVD装置の構成の一例を示す部分断面斜視図であり、
図2は、
図1のマイクロ波プラズマCVD装置の構成を示す側面図である。マイクロ波プラズマCVD装置1は、プラズマを生成して基板などのワーク上にダイヤモンドなどの物質を析出或いは堆積させる装置である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、マイクロ波プラズマCVD装置1は、チャンバ10Aと、チャンバ10Aの平面視においてチャンバ10Aの中心部に設けられた載置台110Aと、チャンバ10Aの平面視においてチャンバ10Aの中心部に位置し、且つチャンバ10Aの内部共振モードの対称軸Z1の軸方向に平行な中心導体81及び中心導体81の周囲に位置する外部導体82を含む同軸構造部80Aと、チャンバ10Aの同軸構造部80Aに設けられ、チャンバ10Aの内部共振モードに合うように結合された複数のマイクロ波導入ポート20,20,…と、チャンバ10Aと後述する導波部とを圧力隔壁しつつマイクロ波を透過するマイクロ波導入窓30Aと、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…に接続された導波部40Aと、導波部40Aに接続されたマイクロ波発振源50と、を備える。
【0025】
載置台110Aは、中心導体81の軸線方向上端部に設けられてもよいし、例えば、中心導体81の軸線方向上端部に対向するチャンバ10Aの上面に設置することもできる。中心導体81の軸線方向上端部は、マイクロ波導入窓30Aがプラズマに晒されない観点から、チャンバ10Aの底面より上部に位置することが望ましい。載置台110Aは、ワークWを安定的に載置可能であれば特に制限されないが、導電性材料および耐熱材料であってプラズマにエッチングされ難い観点からは、モリブデン(Mo)などで構成されるのが好ましい。また、載置台110Aは、異なる材料からなる層の複数で構成される多層構造を有していてもよい。多層構造としては、特に限定されないが、例えば2層構造であって、下層が銅(水冷用)、上層がモリブデンからなるものであってもよい。また、3層構造であって、最下層が銅(水冷用)、中間層がSUS、最上層がモリブデンからなるものであってもよい。
【0026】
チャンバ10Aは、少なくとも
図2及び
図3に示す底壁11及び側壁12を有しており、内部に
図1~
図3に示す密閉空間S1を有する密閉容器である。チャンバ10Aは、ステンレスまたはアルミ合金などの金属でできており、必要に応じて、のぞき窓(石英、耐熱ガラス)を備えている。本実施形態では、チャンバ10Aは1軸対称形状を有しており、z方向に平行な対称軸Z1を基準として回転対称な形状である。チャンバ10Aは、例えば平面視で略円筒状であるが、これに限定されるものではない。
【0027】
マイクロ波プラズマCVD装置1は、チャンバ10Aに原料ガスを導入する原料ガス導入部60と、チャンバ10Aからガスを排出するガス排出部70とを備えている。原料ガス導入部60は、ワークWに成膜する被膜の原料となる原料ガスをチャンバ10Aの密閉空間S1内に供給する。原料ガスは、例えばメタン(CH4)及び水素(H2)を主成分とする混合ガスである。上記原料ガスは、アルゴン(Ar)、酸素(O2)、また、不純物として意図的にドーピングする目的で、窒素(N2)、リン(P)、ホウ素(B)等を含む化合物などを更に含有してもよい。ガス排出部70は、密閉空間S1内のガスを排気するポンプおよび不図示の排気抵抗制御器を有しており、ポンプを駆動することにより、密閉空間S1を一定圧力の減圧状態(好ましくは真空状態)に保つことができる。
【0028】
図3(A)は、
図1のマイクロ波プラズマCVD装置の構成の一例を概略的に示す断面図であり、
図3(B)は、線A-Aに沿う断面図である。
【0029】
本実施形態では、チャンバ10Aの底壁11に、同軸構造部80Aに設けられた複数のマイクロ波導入ポート20,20,…と連通する同軸開口部13が設けられている。同軸開口部13の開口面は、チャンバ10Aの平面視において中心導体81の周りに配置され、且つ中心導体81の軸方向(z方向)に対して垂直に設けられている。同軸開口部13は、例えばリング形状を有しており、軸線方向が中心導体81の軸方向(z方向)に平行となるように設けられる。
【0030】
同軸開口部13の開口面は、チャンバ10Aの平面視においてチャンバ10Aの中心導体81の中心軸を基準として同軸となるように配置される。同軸開口部13は、周方向及び径方向を有しており、周方向がチャンバ10Aの周方向に沿うように設けられている。
【0031】
マイクロ波導入窓30Aは、本実施形態では同軸開口部13を覆うようにチャンバ10Aの底壁11上に載置されている。マイクロ波導入窓30Aは、チャンバ10A(減圧領域)と導波部40A(大気圧領域)(
図1および
図2参照)との間に設置される。マイクロ波導入窓30Aは、マイクロ波を損失させること無く透過させる材料(誘電体)で構成されるのが好ましく、例えば石英で構成されている。
【0032】
マイクロ波導入窓30Aも、同軸開口部13と同様、チャンバ10Aの平面視においてチャンバ10Aの内部共振モードの対称軸の軸方向又は中心導体81の軸方向に平行に設けられる。マイクロ波導入窓30Aは、軸対称であって同軸開口部13を閉塞可能であれば、リング形状に限定されず、リング形状以外の他の形状を有していてもよい。
【0033】
図2に示す導波部40Aは、マイクロ波発振源50からのマイクロ波を複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を介してチャンバ10Aに伝送する。本実施形態では、導波部40Aは、
図3に示すように、方形形状の導波管411と結合され、チャンバ10Aの同軸構造部80Aに設けられたリング形状の共振器412を有する。同軸構造部80Aとリング形状の共振器412は、マイクロ波モード変換器41を構成する。リング形状の共振器412は、該共振器に設けられた複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を介して同軸構造部80Aと結合されている。
【0034】
図3に示す構成では、内部共振モードが軸対称であって、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…から導入されるマイクロ波の導入方向が、チャンバ10Aの内部共振モードの対称軸の軸方向又は中心導体81の軸方向と垂直である。換言すれば、複数のマイクロ波導入ポート20,20,の開口面の中心での法線が、上記対称軸と垂直である。また、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面は、チャンバ10Aの平面視において中心導体81の周りに配置され、且つ中心導体81の軸方向に平行に設けられておいる。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…から後述の同軸構造部80Aに、上記対称軸と垂直な方向にマイクロ波が導入されると、その後、マイクロ波は、同軸開口部13のマイクロ波導入窓30Aを透過して、チャンバ10A内の上部に進行する。
【0035】
図4は、
図1の同軸構造部80Aに設けられるマイクロ波モード変換器41の構成を示す斜視図であり、
図5(A)は、
図4のマイクロ波モード変換器41の平面図、
図5(B)は、線B-Bに沿う断面図である。
マイクロ波モード変換器41は、方形形状の導波管411と、導波管411と結合されたリング形状の共振器412と、共振器412に結合された同軸構造部413とを有している。マイクロ波モード変換器41は、方形形状の導波管411及び同軸構造部413を有していることから、モード変換継ぎ手であるアプリケータと称することもできる。但し、本実施形態のアプリケータは、リング形状の共振器を有している点で、従来のアプリケータとは大きく異なる。
【0036】
導波管411は、その一端部411aがサーキュレータ90(マイクロ波発振源50側)に接続されており、他端部411bが共振器412に接続されている。導波管411は、マイクロ波の伝搬方向に対して垂直な方向の断面視において矩形形状であって、平面視においてストレート形状を有している。
【0037】
共振器412は、外周側壁412A及び内周側壁412Bを有しており、導波管411の他端部411bが外周側壁412Aに接続されている。共振器412は、マイクロ波の伝搬方向に対して垂直な方向の断面視において矩形形状であって、平面視において真円形状を有している。また、共振器412は、内周側壁412Bの円周方向に沿って並べて配置された複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…を有している。本実施形態では、複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…が、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を構成しているが、これに限らず、複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…と、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…が別々に設けられ、これらが直接接続されてもよい。
【0038】
複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…の開口面は、共振器412の対称軸の軸方向(z方向)、例えば中心導体81の軸方向に平行に設けられており、共振器412の対称軸を基準として内周側壁412Bの円周方向に沿って回転対称となるように並べて配置されている。例えば、4つのマイクロ波導入ポート412C,412Cの開口面が、内周側壁412Bの円周方向に沿って、90°回転対称となるように並べて配置されている。複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…の開口面は、例えば長辺及び短辺を有しており、長辺が内周側壁412Bの円周方向に沿うように設けられ、短辺は中心導体81の軸方向に沿って設けられている。複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…の開口面は、同一形状であるのが好ましいが、マイクロ波の放射に影響しない範囲で、異なる形状であってもよい。
【0039】
マイクロ波導入ポート412Cは、典型的には線状又は矩形のスリットである。スリットは、共振器412内の共振モードに対応して、その長辺がスリット又はスリット近傍での磁界方向と平行となるように、かつスリットによって同軸構造部413内に形成される磁場方向が同軸構造部413内の磁場方向と同じになるように配置される。スリットは、例えば矩形形状であるが、長穴形状等を有していてもよい。
【0040】
同軸構造部413は、外周側壁413A及び内周側壁413Bを有しており、チャンバ10Aの同軸構造部80Aを形成している。同軸構造部413の一端部413aは、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を介して共振器412に接続されており、他端部413bがチャンバ10Aの同軸開口部13となる(
図3(A)参照)。本実施形態では、内周側壁413Bが、中心導体81を構成し、外周側壁413Aが、外部導体82を構成している。同軸構造部413は、マイクロ波の伝搬方向に対して垂直な方向の断面視においてリング形状を有している。また、本実施形態では同軸構造部413の外周側壁413Aと、共振器412の内周側壁412Bが同一面を形成している。よって換言すれば、複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…は、同軸構造部413の外周側壁413Aに設けられ、且つその円周方向に沿って並べて配置されているとも言える。
【0041】
上記のように構成されるマイクロ波モード変換器41では、導波管411の一端部411aから導入されたマイクロ波を、他端部411bから共振器412に導入し、更に、共振器412の内周側壁412Bに設けられた複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…から同軸構造部413に伝送する。これにより、方形形状の導波管411を伝送するマイクロ波のTE(Transverse Electric)モードが、リング形状の共振器412を介して、同軸構造部413を伝送するTEM(Transverse Electromagnetic)モードに変換される。尚、TEモードとは、一般に、電界方向が電磁波の進行方向と直交している伝搬モードであり、TEMモードとは、一般に、電界方向及び磁界方向の両方が電磁波の進行方向と直交する伝播モードである。本実施形態の場合、TEモードは、例えば基本モードTE10を指す。この場合、チャンバ10A内の磁界分布は軸対称(円形)となる。
【0042】
このように、マイクロ波モード変換器41はリング形状の共振器412を有しており、共振器412が、内周側壁412Bの円周方向に沿って並べて配置された複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…を有しているので、共振モードのマイクロ波が複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…から同軸構造部413に導入される。これにより、マイクロ波モード変換器41内での電界強度の集中を抑制して、導波管内での異常放電の発生確率を低減することができる。また、マイクロ波モード変換器41の構成を既存のマイクロ波モード変換器と比較して簡素化、小型化することができる。更には、マイクロ波モード変換器41はリング形状の共振器412を有しているため、同軸構造部413(特に内周側壁413B)を大口径化することができ、その結果、大型バルクなどの被処理体を製造する場合に必要とされる被処理体(結晶)の冷却、自動昇降、温度分布管理などを行える機構を設置する十分なスペースを被処理体下方に確保することが可能となる。
【0043】
また、マイクロ波プラズマCVD装置1は、導波部40Aに設けられたサーキュレータ90及びE-Hチューナ100を備えている。サーキュレータ90は、マイクロ波発振源50側に結合された第1ポート91と、チャンバ10A側に結合された第2ポート92と、第1ポート91、第2ポート92とは異なる第3ポート93とを有する。サーキュレータ90は、マイクロ波発振源50からのマイクロ波を第1ポート91で受けて、このマイクロ波を第2ポート92に伝搬させる。また、サーキュレータ90は、第2ポート92で受けたマイクロ波、すなわち第2ポート92に接続されたマイクロ波伝搬構成要素から反射してきたマイクロ波を第3ポート93に伝搬させる。第3ポート93には、ダミー負荷と呼ばれる無反射吸収端が接続されており、第3ポート93に伝搬してきたマイクロ波は、完全に吸収されて熱に変換される。これにより第2ポート92に接続されたマイクロ波伝搬構成要素から反射してきたマイクロ波は、ダミー負荷で完全に吸収され、このマイクロ波をマイクロ波発振源50側に戻らないようにしている。このようなサーキュレータ90およびダミー負荷の使用方法としては、マイクロ波発振源(マグネトロンなど)が反射マイクロ波により熱的に損傷を受けることを防止するための一般的な方法を用いることができる。これにより、マイクロ波発振源50で発生したマイクロ波が一方向的に導波部40Aに供給される。E-Hチューナ100は、Eチューナ部101及びHチューナ部102を有しており、Eチューナ部101及びHチューナ部102のプランジャを出し入れすることで、インピーダンスを調整する。E-Hチューナ100は、インピーダンスを調整する方法の一例であり、他の方法、たとえば3スタブチューナーを使用することができる。
【0044】
マイクロ波発振源50は、所定周波数、例えばISMバンドである周波数2.45GHz又は915MHzのマイクロ波を発振する。マイクロ波発振源50としては、例えばマグネトロンや半導体発振器が用いられる。また、本実施形態のマイクロ波プラズマCVD装置1において、チャンバ10Aの上方、側方及び下方に冷却水または空気などの媒体を用いた冷却経路が設けられてもよい。
【0045】
上記のように構成されるマイクロ波プラズマCVD装置1では、マイクロ波発振源50から供給されたマイクロ波をチャンバ10Aの同軸構造部80Aに設けられる複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を通してチャンバ10A内に導入する。このマイクロ波をチャンバ10A内の原料ガスに照射して放電させることにより、チャンバ10A内にプラズマが生成される。そしてプラズマにより分解された原料ガスから、プラズマ付近に設置したワークWの表面にダイヤモンド等の被膜を形成する。
【0046】
上述したように、本実施形態によれば、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…が、チャンバ10Aの同軸構造部80Aに設けられており、同軸構造部80Aを含むチャンバ10Aの内部共振モードに合うように結合されているので、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…からチャンバ10Aにマイクロ波を導入することにより、導波部40A(
図2)および同軸構造部80Aにおける電界集中が緩和され、大電力マイクロ波の導入時においても異常放電やそれに伴う加熱等を抑制し、電力効率を改善することができる。
【0047】
また、ワークW下部の中心導体81を必要に応じて太くすることができるため、大面積のワークWの昇降や冷却・加熱などの温度(分布)制御など、結晶成長環境の管理に必要な機構を基板電極下部に組み込むことができ、結晶品質を向上させるとともに大面積基板の均一合成や厚いバルク結晶の合成を実現することができる。
【0048】
また、プラズマは載置台110Aの上方に生成し、マイクロ波導入窓30Aがチャンバ10A内に生成されるプラズマに晒されない位置に設けられるので、マイクロ波導入窓30Aがプラズマによってエッチングされるのを抑制することができる。その結果、ワークWへのシリコン等のマイクロ波導入窓を構成する元素の混入が抑制され、例えばダイヤモンド等の高純度薄膜の合成が可能となってバルクなどの被処理体の品質向上を実現することができる。更に、大電力マイクロ波を供給してもプラズマがマイクロ波窓に近づかないため、大電力マイクロ波の供給が可能になり、ワークWにおける成膜面積を拡大できるので、装置の大型化を抑制しつつ大型バルクなどの被処理体を製造することが可能となる。
【0049】
図6(A)及び
図6(B)は、
図3(A)のマイクロ波プラズマCVD装置1の変形例を概略的に示す断面図である。
図7(A)~
図7(C)は、
図3(A)のマイクロ波プラズマCVD装置1のその他の変形例を概略的に示す断面図である。
図6(A)及び
図6(B)の構成におけるマイクロ波導入方法は、
図1~
図5の構成におけるマイクロ波導入方法と同じであり、すなわち、同軸構造部80B又は同軸構造部80Cに設けたリング状の共振器412からのマイクロ波導入方向が各同軸構造部の軸に垂直である構成を示す。また、
図7(A)~
図7(C)は、同軸構造部80D、同軸構造部80E又は同軸構造部80Fに設けたリング状の共振器412からのマイクロ波導入方向が各同軸構造部の軸に平行である構成を示す。
【0050】
図6(A)に示すように、マイクロ波導入窓30Aが、載置台110Bの下方に配置される。すなわち、チャンバ10Bの対称軸の軸方向(z軸方向)に関して、載置台110Bの載置面、すなわちワークWの載置位置と、マイクロ波導入窓30Aの設置位置とがオフセットされていることが好ましい。
【0051】
また、
図6(B)に示すように、載置台110Cが、チャンバ10Cの同軸構造部80Cの中心導体81の外径よりも大きい外径を有しており、マイクロ波導入窓30Bが、載置台110Cの下方に配置され、且つチャンバ10Cの対称軸の軸方向に沿って延在していてもよい。この場合、マイクロ波導入窓30Bは、例えば円筒形状を有しており、マイクロ波導入窓30Bによって、チャンバ10Cの密閉空間S1と載置台110Cの下側空間S2とが圧力隔壁される。プラズマは載置台110Cの上方に生成され、マイクロ波導入窓30Bは載置台110Cの下方であって、かつ載置台110Cに遮られて前記プラズマに晒されない位置に設けられるので、マイクロ波導入窓30Bがプラズマによってエッチングされるのを抑制することができる。
【0052】
図7(A)では、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…が、チャンバ10Dの同軸構造部80Dに設けられ、チャンバ10Dの内部共振モードに合うように結合されている。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…から導入されるマイクロ波の導入方向は、チャンバ10Dの内部共振モードの対称軸の軸方向又は中心導体81の軸方向と平行である。このとき、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面が、チャンバ10Dの平面視において中心導体81の周りに配置され、且つ中心導体81の軸方向に対して垂直に設けられる。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…は、同軸構造部80の一部、すなわちチャンバ10Dの底壁11に設けられている。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…は、リング形状の共振器412に設けられた複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…の直上に設けられている。中心導体81の上端部には載置台110Dが設けられている。
【0053】
また、リング形状の共振器412は、チャンバ10Dの直下に配置されている。リング形状の共振器412は、リング形状の共振器412上面に設けられた複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…を有している。複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…は、複数のマイクロ波導入ポート20に直接接続されている。リング形状の共振器412のマイクロ波導入ポート412Cの開口面及びマイクロ波導入ポート20の開口面は、中心導体81の軸方向(z方向)に対して垂直に設けられている。本実施形態では、複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…と、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…は別々に設けられるが、複数のマイクロ波導入ポート412C,412C,…が複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を構成してもよい。
【0054】
また、
図7(B)に示すように、載置台110Eが、中心導体81の外径よりも大きい外径を有しており、マイクロ波導入窓30Bが、チャンバ10Eの下方に配置され、且つチャンバ10Eの対称軸の軸方向に沿って延在していてもよい。この場合、マイクロ波導入窓30Bは、例えば円筒形状を有しており、マイクロ波導入窓30Bによって、チャンバ10Eの密閉空間S1と載置台110Eの下側空間S2とが圧力隔壁される。プラズマは載置台110Eの上方に生成し、マイクロ波導入窓30Bは載置台110Eの下方かつ載置台に遮られて前記プラズマに晒されない位置に設けられるので、マイクロ波導入窓30Bがプラズマによってエッチングされるのを抑制することができる。
【0055】
また、
図7(C)に示すように、載置台110Fを支持する中心導体81が、チャンバ10Fの下方に延在していてもよい。この場合、リング形状の共振器412は、チャンバ10Fの下部に配置されており、マイクロ波導入ポート20は、中心導体81の径方向(x方向)側方に設けられる。下方に延在した同軸構造部80Fの長さを変えることにより、チャンバ10F内の共振モードを調整することができる。
【0056】
このように、上記
図7(A)に示した実施形態によれば、プラズマは載置台110Dの上方に生成し、マイクロ波導入窓30Aは載置台110Dの下方に設けられるので、マイクロ波導入窓30Bがプラズマによってエッチングされるのを抑制することができる。また、上記
図7(B)及び
図7(C)に示した実施形態によれば、プラズマは載置台110Eの上方に生成し、マイクロ波導入窓30Bは載置台110Eの下方かつ載置台110Eに遮られて前記プラズマに晒されない位置に設けられるので、マイクロ波導入窓30Bがプラズマによってエッチングされるのをさらに抑制することができる。また、これと同様に、プラズマは載置台110Fの上方に生成し、マイクロ波導入窓30Bは載置台110Fの下方かつ載置台110Fに遮られて前記プラズマに晒されない位置に設けられるので、マイクロ波導入窓30Bがプラズマによってエッチングされるのをさらに抑制することができる。
【0057】
図3~
図6に示すマイクロ波プラズマCVD装置において、マイクロ波を複数ポートから導入するためのリング形状の共振器に変えて、それぞれのマイクロ波導入ポートに個別に導波管を接続してもよい。
【0058】
図8に、例えば
図7(A)のリング形状の共振器を複数の導波管に変えた例を示す。
【0059】
図8(A)は、
図6(A)のマイクロ波プラズマCVD装置の変形例を概略的に示す側面図であり、
図8(B)は、線C-Cに沿う断面図である。
図8(A)及び
図8(B)のマイクロ波プラズマCVD装置の構成は、
図6(A)のマイクロ波プラズマCVD装置の構成と基本的に同じであり、共通する部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。
【0060】
図8(A)及び
図8(B)に示すように、マイクロ波プラズマCVD装置1は、チャンバ10Gの同軸構造部80Gに設けられ、チャンバ10Gの内部共振モードに合うように結合された複数のマイクロ波導入ポート20,20,…と、チャンバ10Gと導波部40Bとを圧力隔壁しつつマイクロ波を透過する複数のマイクロ波導入窓30C,30C,…と、を備える。導波部40Bは、例えば複数の方形導波管で構成されており、本実施形態では4つの方形導波管がチャンバ10Gの対称軸周りに配置されている。
図8(A)及び
図8(B)に示す構成では、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…からチャンバ10Gの内部共振モードの対称軸の軸方向と平行にマイクロ波が導入される。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面の近傍において、チャンバ10Gの内部共振モードの磁場の向きMと、TEモードの導波部40Bの各方形導波管内の磁場の向きMが合うように、導波部40Bがチャンバ10Gに結合される。
【0061】
本実施形態では、チャンバ10Gの内部共振モードが軸対称であって、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…から導入されるマイクロ波の導入方向が、チャンバ10Gの内部共振モードの対称軸と平行である。換言すれば、複数のマイクロ波導入ポート20,20,の開口面の中心での法線が、対称軸と平行である。このとき、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面は、チャンバ10Gの平面視においてチャンバ10Gの内部共振モードの対称軸の軸方向(z方向)に対して垂直に設けられている。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面は、例えば長辺及び短辺を有しており、長辺及び短辺で画定される開口面の面内方向が、上記内部共振モードの対称軸の軸方向(z方向)に対して垂直に設けられる。複数のマイクロ波導入ポート20,20,…は、同一形状であるのが好ましいが、マイクロ波の放射に影響しない範囲で、異なる形状であってもよい。
【0062】
複数のマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面は、チャンバ10Gの平面視においてチャンバ10Gの内部共振モードの対称軸を基準としてチャンバ10Gの周方向に沿って配置される。例えば、4つのマイクロ波導入ポート20,20,…の開口面が、チャンバ10Gの円周方向に沿って、90°回転対称となるように並べて配置されている。マイクロ波導入ポート20の開口面は、例えば、長辺及び短辺を有しており、長辺方向がチャンバ10Gの周方向に沿うように設けられ、短辺は上記内部共振モードの対称軸の軸方向に沿って設けられている。
【0063】
マイクロ波導入ポート20は、典型的には線状又は矩形のスリットである。スリットの長辺は、スリット付近の磁界Mの方向と平行となるように配置される。これにより、スリットの短辺に平行な電界が発生し、スリットはその開口部から電磁波を放射するアンテナとして機能する。スリットは、例えば円弧形状であるが、矩形形状や、長穴形状等を有していてもよい。
【0064】
複数のマイクロ波導入窓30C,30C,…は、本実施形態では複数のマイクロ波導入ポート20,20,…を覆うようにチャンバ10Gの底壁11上に載置されている。複数のマイクロ波導入窓30C,30C,…は、チャンバ10G(減圧領域)と導波部40B(大気圧領域)との間に設置される。
【0065】
複数のマイクロ波導入窓30C,30C,…も、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…と同様、チャンバ10Gの平面視においてチャンバ10Gの内部共振モードの対称軸を基準としてチャンバ10Gの周方向に沿って配置される。例えば、4つのマイクロ波導入窓30C,30C,…が、チャンバ10Gの円周方向に沿って、90°回転対称となるように並べて配置されている。マイクロ波導入窓30Cは、マイクロ波導入ポート20を閉塞可能であれば円弧形状に限定されず、矩形形状や、長穴形状等を有していてもよいし、分割しないで1個のリング状であってもよい。
【0066】
このように、マイクロ波プラズマCVD装置1は、例えば複数の方形形状の導波管からなる導波部40Bによってマイクロ波がチャンバ10Gに導入される構成であってもよい。この場合、各マイクロ波導入ポートにマイクロ波を同じ位相で導入する。本構成によっても、導波部40Bでの異常放電を抑制し、また、結晶への良好なアクセスを確保することにより結晶品質を向上させることができ、大型バルクなどの被処理体を製造することができる。
【0067】
図9は、実施例1のシミュレーションによる電界強度の分布を示す図であ
る。
図10(A)は、実施例2のシミュレーションによる電界強度の分布を示す図であり、
図10(B)は、線D-Dに沿う断面における磁場強度の分布を示す図である。
図11は、従来のマイクロ波プラズマCVD装置におけるマイクロ波モード変換器の構成を示す斜視図である。
図12は、比較例1のシミュレーションによる電界強度の分布を示す図である。
【0068】
実施例1として、シミュレーションにて
図6(A)に示す構成と同等の構造を設計し、数値計算を実施し、電界強度分布を計算した。シミュレーションソフトウェアは、JMAG-Studio(JSOL社製)を使用した。計算手法としては有限要素法、反復法を用い、要素数は100万程度(テトラメッシュ)、モデルサイズは1m×0.4m×0.3m、投入マイクロ波は周波数2.45GHz,モードはTE10、境界条件は、マイクロ波を投入する入出力ポート(矩形導波管端)とマイクロ波導入窓以外は、完全導体とした。
図9では、シミュレーションによって計算された電界強度をグレースケールの濃淡として示している。また、電界強度の測定領域として、基板設置部に対応する
図9中の領域Aでの電界強度と、導波管または同軸構造部に対応する領域Bでの電界強度とを算出した。
【0069】
実施例2として、同軸構造部の径方向幅を実施例1よりも大きくした構造(
図10(A))を設計し、実施例1と同様にして数値計算を実施し、電界強度分布を計算した。
また、
図10(B)に、
図10(A)のリング形状の共振器のD-D断面における磁場強度分布の計算結果と、リング共振器および同軸構造部内のおおまかな磁力線の向きを矢印で示す。リング形状の共振器の内周部に設けられるマイクロ波導入ポートは、リング形状の共振器と同軸構造部の境界部において、それぞれの磁力線の向きが合うよう複数配置される。これにより、方形形状の導波管を伝送するマイクロ波のTEモードが、リング形状の共振器を介して、同軸構造部を伝送するTEMモードに変換される。
【0070】
また、比較例1として、従来のマイクロ波プラズマCVD装置に設けられるマイクロ波モード変換器を用いた。従来のASTeX6500型マイクロ波プラズマCVD装置では、マイクロ波がチャンバ下方のマイクロ波モード変換器300(
図11)を経由して共振器型のチャンバに導入され、基板設置部で所定の電界強度を得ている。すなわち、従来のマイクロ波モード変換器は、方形形状の導波管と同軸線路とを有し、リング形状の共振器を有さない構造である。比較例1としてこの従来のマイクロ波モード変換器に対応する構造(
図12)を設計し、数値計算を実施し、電界強度分布を計算した。
実施例1~2および比較例1の領域Aおよび領域Bでの電界強度と、領域Bの電界強度に対する領域Aの電界強度の比(比強度)の計算結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
表1の結果から、実施例1では、方形形状の導波管から、側壁に複数のスリットが設けられたリング形状の共振器を介してマイクロ波をチャンバに導入すると、領域A、すなわち基板設置部で比較例1と同等の高い電界強度を得ることができた。また、領域Bの電界強度に対する領域Aの電界強度の比(比強度)が0.2~0.3であり、比較例1と比べて領域B、すなわち導波管での異常放電の発生確率を低減できることが分かった。
【0073】
また、実施例2では、同軸構造部の径方向幅を実施例1よりも大きくしても、領域A、すなわち基板設置部で比較例1と同等の高い電界強度を得ることができた。また、領域Bの電界強度に対する領域Aの電界強度の比(比強度)が0.7~2.5であり、実施例1の比強度よりも格段に大きくなり、領域B、すなわち導波管での異常放電の発生確率を更に低減できることが分かった。
【0074】
一方、比較例1では、方形形状の導波管から共振器を経由せずにマイクロ波を同軸線路に導入すると、領域Bの電界強度に対する領域Aの電界強度の比(比強度)が0.05~0.3であり、実施例1,2のいずれよりも異常放電の発生確率が高くなることが分かった。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0076】
例えば本実施形態では、
図3の構成において、同軸構造部80Aが、チャンバ10Aの底壁11上に設けられるが、これに限らず、同軸構造部がチャンバ10Aの内部共振モードに合うように結合されており、且つマイクロ波導入窓30Aが、チャンバ10内に生成されるプラズマに晒されない位置に設けられていれば、同軸構造部及びマイクロ波導入窓30Aの設置位置は特に制限されない。マイクロ波導入窓30Aは、例えばワークWの面内方向の延長線上及びその近傍以外の位置に設けられてもよい。また、マイクロ波導入窓30Aは、底壁11のワークWから視覚的に望めない位置或いは底壁11のワークWから見えない位置に設置されると表現することもできる。これにより、ワークW上に生成するプラズマによるマイクロ波導入窓のエッチングを抑制しつつ、ワークW上に堆積或いは成長するダイヤモンドを高純度化することができる。
【0077】
また、導波部40Aは、同軸構造部413を有さず、方形形状の導波管411と、導波管411と結合されたリング形状の共振器412とを有していてもよい。この場合、共振器412は、該共振器412の上面に1又は複数のマイクロ波導入ポートを有し、同軸形状の導波管としての機能を兼ね備えてもよい。より具体的には、
図7(A)の構成において、マイクロ波プラズマCVD装置1は、同軸構造部80Dを有さず、載置台110Dがチャンバ10Dの底壁11に設けられてもよい。この場合、マイクロ波プラズマCVD装置1は、チャンバ10Dに原料ガスを導入する原料ガス導入部60(
図1,2参照)と、チャンバ10Dの内部共振モードに合うように結合された複数のマイクロ波導入ポート20,20,…と、チャンバ10Dと導波部とを圧力隔壁しつつマイクロ波を透過するマイクロ波導入窓30A(
図1,2参照)と、複数のマイクロ波導入ポート20,20,…に接続された導波部40A(
図1,2参照)と、導波部40Aに接続されたマイクロ波発振源50(
図1,2参照)と、を備えていてもよい。
【0078】
更に、ワークWは、チャンバ10Aの底壁及び上壁の双方に設置されているが、これに限らず、チャンバ10Aの底壁及び上壁のうちのいずれかに設置されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 マイクロ波プラズマCVD装置
10A チャンバ
10B チャンバ
10C チャンバ
10D チャンバ
10E チャンバ
10F チャンバ
10G チャンバ
11 底壁
12 側壁
13 同軸開口部
20 マイクロ波導入ポート
30A マイクロ波導入窓
30B マイクロ波導入窓
30C マイクロ波導入窓
40A 導波部
40B 導波部
41 マイクロ波モード変換器
50 マイクロ波発振源
60 原料ガス導入部
70 ガス排出部
80A 同軸構造部
80B 同軸構造部
80C 同軸構造部
80D 同軸構造部
80E 同軸構造部
80F 同軸構造部
80G 同軸構造部
81 中心導体
82 外部導体
90 サーキュレータ
91 第1ポート
92 第2ポート
93 第3ポート
100 E-Hチューナ
101 Eチューナ部
102 Hチューナ部
110A 載置台
110B 載置台
110C 載置台
110D 載置台
110E 載置台
110F 載置台
110G 載置台
411 導波管
411a 一端部
411b 他端部
412 共振器
412A 外周側壁
412B 内周側壁
412C マイクロ波導入ポート
413 同軸構造部
413A 外周側壁
413B 内周側壁