IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金化学株式会社の特許一覧

特開2023-180018感光性樹脂組成物、硬化膜、ディスプレイ構成要素および表示装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180018
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、ディスプレイ構成要素および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231213BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20231213BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231213BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20231213BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231213BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231213BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/027 515
G03F7/027
H01L27/32
H05B33/22 A
H05B33/02
G09F9/00 313
G09F9/30 349C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093056
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 航平
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠樹
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD06
2H225AE06P
2H225AE12P
2H225AN02P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AN57P
2H225AN61P
2H225AN62P
2H225AN94P
2H225AP03P
2H225AP08P
2H225AP11P
2H225AP15P
2H225BA02P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225BA35P
2H225CA18
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107CC14
3K107CC32
3K107EE26
3K107EE27
3K107FF06
3K107FF14
5C094AA06
5C094ED15
5C094FB01
5C094FB02
5C094JA11
5G435AA02
5G435DD11
5G435FF13
(57)【要約】
【課題】高遮光性および低反射率を有し、さらに低明度を有する硬化膜を得ることが可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1)と、少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物(A2)と、熱硬化性エポキシ化合物(A3)とを含む樹脂成分、(B)黒色顔料(B1)と、フッ化マグネシウム及び/又は氷晶石微粒子(B2)と、を含む遮光成分、および(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1)と、少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物(A2)と、熱硬化性エポキシ化合物(A3)とを含む樹脂成分、
(B)黒色顔料(B1)と、フッ化マグネシウム及び/又は氷晶石微粒子(B2)と、を含む遮光成分、および
(C)光重合開始剤
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
黒色顔料(B1)が、単位OD:1[/μm]かつ膜厚1μmの塗膜を作製した際、850nmの透過率が80%以上の黒色顔料(B1a)を含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
黒色顔料(B1a)が、有機黒色顔料であることを特徴とする請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
遮光成分(B)の全質量に対する、フッ化マグネシウム及び/又は氷晶石微粒子(B2)の割合が、1~30質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化膜を有するディスプレイ構成要素。
【請求項7】
請求項6に記載のディスプレイ構成要素を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜、ディスプレイ構成要素および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の液晶表示素子に対し、薄型化、フレキシブル化に有利であって、光利用効率の高い有機EL表示素子(OLED)が注目され実用化されている。
【0003】
このようなOLEDは、外光の反射等による視認性の低下を防ぐため、反射防止膜として円偏光板を備えている。しかしながら、円偏光板を備えていると、外光のみならず有機ELが発光する光もカットしてしまうため、光の利用効率が大きく低下する。そのため、円偏光板を用いなくても、視認性が良好で低消費電力で使用可能なOLEDの開発が望まれていた。
【0004】
ここで、カラーフィルター(CF)と光の共振効果を利用することで、有機ELが発光する光をカットしないだけでなく、さらにスペクトルを急峻かつ高強度にし、輝度と色純度を向上させることができる。これにより、OLEDの透過率向上・消費電力改善が期待される。また、CFは、円偏光板と比べ膜厚が薄く、デバイスの薄膜化が可能である。そのため、円偏光板をCFに代替する試みがなされている。一方で、CFにおいては、ブラックマトリックスは反射防止機能が十分にあるとは言えず、更なる低反射効果が強く求められている。
【0005】
これまで、ブラックレジストなどの感光性樹脂組成物に更なる低反射特性を付与した例として、特許文献1では、疎水性のシリカ微粒子および特定の分散剤(ウレタン系分散剤)を含むことを特徴とする黒色感光性樹脂組成物が開示されている。そして、疎水性シリカ微粒子および特定の分散剤を用いることにより高遮光性および低反射率を両立するブラックマトリックスを形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-161815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載のようにシリカフィラーを添加した場合、シリカの偏析層が光の拡散源となり、塗膜の漆黒度が下がってしまい、見た目が悪化することが懸念された。
【0008】
このため、低反射率、特にはSCI方式で取得した反射率が低いことと漆黒性との両方を有するブラックレジスト用感光性樹脂組成物およびこれを硬化してなる遮光膜並びにカラーフィルターが要望されている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高遮光性および低反射率を有し、さらに低明度を有する硬化膜を得ることが可能な感光性樹脂組成物およびこれを硬化してなる硬化膜、当該硬化膜を有するディスプレイ構成要素、当該ディスプレイ構成要素を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、添加するフィラーとしてより屈折率の低いフッ化マグネシウムフィラーを添加することで、更なる低反射効果を付与できるとともに、漆黒性の高い遮光膜を得るものである。なお、漆黒度と明度は相関があり、漆黒度が高いほど、明度は低い遮光膜となる。
【0011】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1](A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1)と、少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物(A2)と、熱硬化性エポキシ化合物(A3)とを含む樹脂成分、
(B)黒色顔料(B1)と、フッ化マグネシウム及び/又は氷晶石微粒子(B2)と、を含む遮光成分、および
(C)光重合開始剤
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]黒色顔料(B1)が、単位OD:1[/μm]かつ膜厚1μmの塗膜を作製した際、850nmの透過率が80%以上の黒色顔料(B1a)を含有することを特徴とする[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]黒色顔料(B1a)が、有機黒色顔料であることを特徴とする[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]遮光成分(B)の全質量に対する、フッ化マグネシウム及び/又は氷晶石微粒子(B2)の割合が、1~30質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
[5][1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
[6][5]に記載の硬化膜を有するディスプレイ構成要素。
[7][6]に記載のディスプレイ構成要素を有する表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高遮光性、低反射率および低明度を有する硬化膜を得ることが可能な感光性樹脂組成物およびこれを硬化してなる硬化膜、当該硬化膜を有するカラーフィルターおよびタッチパネル、当該カラーフィルターおよびタッチパネルを有する表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本実施の形態に係る(A1)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、1分子中に重合性不飽和基とカルボキシ基との両方を含有している。上記樹脂であれば、特に限定されることなく、広く使用することができる。
【0015】
上記不飽和基含有感光性樹脂の例には、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(以下、「一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物」ともいう)に、(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に多塩基カルボン酸またはその無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物がある。ビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物とは、ビスフェノール類とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物またはこれと同等物を意味する。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、これらの一方または両方を意味する。
【0016】
(A1)成分である不飽和基含有感光性樹脂は、一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物であることが好ましい。一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物を採用することにより、良好な現像特性を得ることができる。
【0017】
【化1】
【0018】
式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基またはハロゲン原子のいずれかであり、Xは-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、一般式(2)で表されるフルオレン-9,9-ジイル基または単結合であり、lは、0~10の整数である。
【0019】
【化2】
【0020】
一般式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。
【0021】
この反応に用いられるビスフェノール類の例には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノールなどが含まれる。この中でも、フルオレン-9,9-ジイル基を有するビスフェノール類が好ましい。
【0022】
また、このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート分子中のヒドロキシ基とを反応させる(a)ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等も含まれる。また、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0023】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(b)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物または芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物等が含まれる。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物等が含まれる。また、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物等が含まれる。
【0024】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物と(b)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01以上10.0以下であることが好ましく、0.02以上3.0未満であることがより好ましい。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向にある。
【0025】
また、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応、およびこの反応で得られたエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基カルボン酸またはその酸無水物との反応は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、上記反応で合成される不飽和基含有感光性樹脂は、その重量平均分子量(Mw)は2000~10000が好ましく、酸価は30~200mg/KOHであることが好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)を用いて測定することができる。また、酸価は、例えば、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定することができる。
【0026】
(A1)成分である不飽和基含有感光性樹脂として好ましい樹脂の別の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000~50000、酸価30~200mg/KOHの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0027】
(A1)成分の不飽和基含有感光性樹脂については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
本実施の形態に係る(A2)成分における少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジフェニルフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールアラルキル型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート;エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。これらの光重合性化合物の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、当該少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには不飽和結合を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、光重合性化合物の分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50~300であることが好ましく、アクリル当量は80~200であることがより好ましい。なお、(A2)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0029】
(A2)成分の光重合性化合物については、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
(A3)成分における熱硬化性エポキシ化合物としては、公知のエポキシ化合物を制限なく用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jERYX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えばNC-7000L:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、リカレジンHBE-100:新日本理化株式会社製、「リカレジン」は同社の登録商標)などのグリシジル基を有するエポキシ化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール-ビス3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,1-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-m-ジオキサン(例えば、アラルダイトCY175:ハンツマン社製、「アラルダイト」は同社の登録商標)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、CYRACURE UVR-6128:ダウ・ケミカル社製)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ化合物(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えばHP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばEHPE3150:株式会社ダイセル製)などの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン(例えばNISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。なお、これらの熱硬化性エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(A1)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、12質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。(A1)成分の上記含有量が5質量%以上であると、高解像度のパターンを形成することが可能となる。
【0032】
(A1)成分と、(A2)成分との配合割合は、重量比(A1)/(A2)で、40/60~90/10であることが好ましく、50/50~80/20であることがより好ましい。(A1)成分の配合割合が40/60以上であると、光硬化後の硬化物が脆くなりにくく、また、未露光部において塗膜の酸価が低くなりにくいためにアルカリ現像液に対する溶解性の低下を抑制できる。よって、パターンエッジがギザつくことや、シャープにならないといった不具合が生じにくい。また、(A1)成分の配合割合が90/10以下であると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価度が高過ぎないので、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなりにくいことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0033】
(A3)成分は、感光性樹脂組成物中の固形分に対して1~15質量%であることが好ましく、2~9質量%であることがより好ましい。(A3)成分が1質量%以上であると、熱硬化後の硬化物が脆くなりにくい。よって、ポストベーク温度85℃のような低温硬化時でも、薬品への曝露により硬化膜が基板から剥がれるといった不具合が生じにくい。また、(A3)成分の固形分の質量%が15%以下であると、本来の他のバインダー樹脂であるアルカリ可溶性樹脂の配合量が圧迫されることなく、現像性を担保することができる。
【0034】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、(A1)成分~(A3)成分以外の樹脂を配合することができる。(A1)成分~(A3)成分以外の樹脂としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、およびメラミン樹脂等が含まれる。
【0035】
本実施の形態に係る(B)成分である黒色顔料、混色有機顔料および遮光材等の遮光成分は、1~1000nmの平均二次粒子径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒子径)で分散されたものであれば、公知の遮光成分を特に制限なく使用することができる。より好ましい平均二次粒子径は、10~300nmである。
【0036】
(B1)成分である黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック、カーボンブラック、チタンブラック、混色有機顔料などが含まれる。
【0037】
(B1)成分である混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色を混合して、疑似黒色化された顔料が含まれる。
【0038】
上記(B1)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
なお、(B1)成分として混色有機顔料を用いる場合に使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0040】
(B1)成分としては、IR透過性を持たせるため、単位ODが1[/μm]かつ膜厚1μmの塗膜を作製した際、850nmの透過率が80%以上となるような黒色顔料(B1a)を含有することが好ましい。
【0041】
(B1a)成分の例としては、有機黒色顔料であるペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、およびラクタムブラックや、無機黒色顔料である硫化ビスマス、混色有機顔料であるアゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合された疑似黒色顔料などが挙げられる。
【0042】
(B1a)成分としては、有機黒色顔料であるペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、およびラクタムブラックであることがより好ましい。有機黒色顔料とすることで、重金属を使用せずに遮光できるため、安全性の高い硬化膜にすることができる。
【0043】
(B1)成分の黒色顔料の配合割合については、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形分に対して20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。(B1)成分の黒色顔料の一部として、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラック等の有機顔料またはカーボンブラック等のカーボン系遮光成分を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の固形分に対して25~60質量%であることが好ましく、30~50%であることが特に好ましい。黒色顔料が、感光性樹脂組成物中の固形分に対して25質量%以上であると、遮光性を十分に得ることができる。黒色顔料が、感光性樹脂組成物中の固形分に対して60質量%以下であると、本来のバインダーとなる感光性樹脂((A1)+(A2))の含有量が減少することがないため、所望する現像特性および膜形成能を得ることができる。
【0044】
(B1a)成分と(B1a)以外の(B1)成分を併用する場合のこれらの割合は、((B1a)成分)/((B1a)以外の(B1)成分)が、50/50~99/1であることが好ましく、80/20~95/5であることがより好ましい。(B1a)成分の配合割合が50/50~99/1であると、IR領域の透過率と高遮光度を両立できる。
【0045】
上記(B1)成分は溶剤に分散させた黒色顔料分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、その際には分散剤を添加することができる。分散剤は、顔料(黒色顔料)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0046】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1~100mgKOH/g、数平均分子量(Mn)が1000~100000の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、(B1)成分に対して1~40質量部であることが好ましく、2~25質量部であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0047】
(B2)成分は、フッ化マグネシウム微粒子及び/又は氷晶石微粒子である。大気の屈折率は約1.0であるのに対し、黒色顔料となるラクタムブラックやカーボンブラックの屈折率は約1.7~2.0であるため、黒色顔料の屈折率よりも低い屈折率の微粒子を使用することで、当該微粒子を含む硬化膜の屈折率を低くすることができる。フッ化マグネシウム微粒子の屈折率は1.38(文献値)であり、また氷晶石の屈折率は1.34(文献値)であり、いずれも屈折率が大気中と(B1)成分および(B3)成分との中間付近に位置するため、当該微粒子を使用することで、大気と硬化膜の屈折率差が小さくなり、反射率が低減するものと考えられる。また、フッ化マグネシウム微粒子及び/又は氷晶石微粒子は硬化膜内で多少は凝集することもあるが、シリカ等とは異なり、凝集した後も周りの樹脂との屈折率差が低いために、凝集による明度上昇が生じにくく、硬化膜の明度を低減させる効果が高いと考えられる。
【0048】
本発明で使用する(B2)成分の平均一次粒子径は、10~100nmが好ましい。10nm以上であると、表面エネルギーがさほど高すぎないため、膜内で凝集しにくく、凝集した(B2)成分が光の拡散源となることによる明度の上昇が生じにくい。100nm以下であると、平均一次粒子径が適度に小さいため、粒子単体が拡散源となることによる明度の上昇が生じにくい。
【0049】
本発明で使用する(B2)成分の一次粒子径の平均値は、透過型電子顕微鏡により粒径観察を行ない、無作為に100個の粒子を選定して粒子の長軸長と短軸長を計測し、これらの相加平均により求めた値である。なお、(B2)成分が凝集塊やアグリゲイトを構成している場合、一次粒子とはこれらを構成する粒子を指す。
【0050】
本発明で使用するフッ化マグネシウム粒子及び/または氷晶石微粒子は、気相反応または液相反応といった製造方法や、形状(球状、非球状)は特に制限されない。
【0051】
(B2)成分の配合割合については、(B)遮光成分の全質量に対して1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、12~25質量%であることがさらに好ましい。(B2)成分の含有量が1質量%以上であると、硬化膜の屈折率を十分に低めて、反射率低減効果が高まる。(B2)成分の含有量が30質量%以下であると、(B1)成分の相対的な含有量を高め、硬化膜の光学濃度を高めることができる。(B2)成分の含有量が25質量%以下であると、(B2)成分による密着性の低下を生じさせにくくすることができる。なお、(B2)成分の相対量を上記程度にまで少なくしても、(B2)成分による反射率の低減効果は十分に奏される。
【0052】
さらに、可視光帯の光のうち(B1)成分の黒色顔料の吸収量が低い波長の吸収性を補填できたり、遮光性を補填できるような(B3)その他の有機顔料成分を添加してもよい。特に、(B1)成分として上述した(B1a)成分、特に有機黒色顔料を使用したとき、(B3)成分による吸収性補填による低反射化効果や、遮光性の向上効果、および低反射性や遮光性を維持しながらのIR透過性向上効果が顕著にみられる。
【0053】
(B3)成分としては、(B1)にて例示した黒色以外の有機顔料を加えて良い。黒色顔料が遮光しきれない透過する可視光帯の光を吸収できるような(B3)成分を添加することで、硬化膜の遮光度ODを向上させ、かつ、透過領域の高い反射率を抑制し、反射率を下げることができる。
【0054】
(B1)成分と(B3)成分を併用する場合のこれらの割合は、((B1)成分)/((B3)成分)が、50/50~90/10であることが好ましい。この配合割合が50/50~90/10であると、低反射化効果および遮光性の向上効果が良好できる。(B1)成分として(B1a)成分を用いるときは、((B1a)成分)/((B3)成分)が、50/50~90/10であることが好ましい。
【0055】
また、(B2)成分および(B3)成分も、溶剤に分散させた遮光成分の分散体として他の配合成分と混合してもよい。これらの成分を分散させるための分散剤としては、(B1)成分について例示したものを適宜使用することができる。また、分散剤の配合量も、(B1)成分に対する分散剤の配合量と同様とすることができる。
【0056】
(B)成分の配合割合については、感光性樹脂組成物中の固形分に対して20~80質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が20質量%以上であると、硬化膜の遮光性をより高めることができる。(B)成分の含有量が80質量%以下であると、高精細なパターン形成が可能となる。
【0057】
(C)成分である光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシム等のO-アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等のイオウ化合物;2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が含まれる。これらの光重合開始剤は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
好ましく用いることができるO-アシルオキシム系化合物類の例としては、一般式(3)および一般式(4)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤がある。これらの化合物群の中においても、遮光成分を高濃度で用いる場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000以上であるO-アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0059】
【化3】
【0060】
式(3)中、R、Rは、それぞれ独立に、C1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基であり、RはC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基またはC7~C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0061】
【化4】
【0062】
式(4)中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R10は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR~R10の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0063】
(C)成分の光重合開始剤の使用量は、(A1)成分と(A2)成分との合計量に対して2~35質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。(C)成分の配合割合が2質量部以上の場合には、感度が良好であり、十分な光重合の速度を有することができる。(C)成分の配合割合が25質量部以下の場合には、適度な感度を有することができるので、所望するパターン線幅および所望するパターンエッジを得ることができる。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)~(C)の成分の他に(D)成分である溶剤を使用することが好ましい。溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独または2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0065】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。
【0066】
硬化剤の例には、熱硬化性エポキシ化合物の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。これらのうち、基板への硬化膜の密着性を高める観点からは、ジシアンジアミドが好ましい。
【0067】
硬化促進剤の例には、熱硬化性エポキシ化合物の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0068】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。レベリング剤や消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)成分である溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となる光重合性化合物を含む)中に、(A)成分である樹脂成分、(B)成分である遮光成分、(C)成分である光重合開始剤が合計で80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれることがより好ましい。(D)成分である溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して40~90質量%であることが好ましい。
【0070】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、例えば、感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、溶剤を乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射して硬化させることで得られる。フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンが得られる。パターン形成せずに使用することも可能である。
【0071】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、膜厚1μmの硬化膜の遮光度OD[μm-1]が1.5以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、(B1a)成分を含むときは、SCI方式で取得した反射率が6.5%未満であることが好ましく、6.0%未満であることがより好ましく、5.5%未満であることがさらに好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、IR透過性を必要とせず、(B1a)成分を含まないときは、SCI方式で取得した反射率が6.0%未満であることが好ましく、5.5%未満であることがより好ましく、5.0%未満であることがさらに好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜は、SCE方式で所得した明度が6.9未満であることが好ましく、6.0未満であることがより好ましく、3.0未満であることがさらに好ましい。明度が抑制されることにより、視認性に極めて優れ、かつ漆黒性の高い硬化膜(遮光膜)を有する表示装置を得ることが可能となる。
【0072】
本発明の硬化膜(遮光膜)は、カラーフィルターやタッチパネルに用いるブラックマトリクス、あるいは、有機EL素子に代表される電界発光装置、カラー液晶表示装置、イメージセンサー等の各種の多色表示体における各色分画用または遮光用の隔壁材や画素定義層、さらにはディスプレイの表示部分を囲むベゼル等のディスプレイ構成要素に使用することが可能である。本発明によれば、着色層(ブラックレジスト層を含む)と基板の界面での外光の反射や、例えば、有機EL素子に用いた際に素子からの発光の反射を低減することができる。つまり、外光の反射の低減による視認性の向上や、発光側からの光取り出し効率改善による低消費電力化を実現することができる。
【0073】
また、本発明の硬化膜(遮光膜)をブラックマトリックスとして有する、カラーフィルターまたはタッチパネルは、例えば、膜厚が1.0~2.0μmである硬化膜を透明基材上に形成し、遮光膜形成後にレッド、ブルーおよびグリーン各画素をフォトリソグラフィーにより形成すること、また、遮光膜中にインクジェットプロセスでレッド、ブルーおよびグリーンのインクを打ち込むこと等により作製される。
【0074】
なお、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜(遮光膜)は、液晶表示装置のブラックカラムスペーサーとして使用することもできる。たとえば、単一のブラックレジストを用いて、膜厚の異なる部分を複数作製して、一方をスペーサーとして機能させ、他方をブラックマトリックスとして機能させることもできる。
【0075】
感光性樹脂組成物の塗布・乾燥による硬化膜の成膜方法の各工程について、具体的に例示する。
【0076】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択されうるが、例えば、60~120℃で、1~10分間行われることが好ましい。
【0077】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250~450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20~35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0078】
このようにして現像した後、80~150℃で、20~100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた硬化膜(遮光膜)と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化膜(遮光膜)は、フォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。そして、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある)を完結させ、所望のパターンを有する遮光膜を得ることができる。
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物は、前述の通り、露光、アルカリ現像等の操作によって微細なパターンを形成するのに適しているだけでなく、従来のスクリーン印刷によりパターンを形成しても、同様の遮光性、密着性、電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性に優れた遮光膜を得ることができる。
【実施例0080】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
まず、(A1)成分である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0082】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0083】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0084】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0085】
[一次粒子径測定]
粒子含有溶液を粒子濃度0.1wt%程度に溶剤で希釈し、得られた分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した測定用サンプルを、透過型電子顕鏡(TEM;日本電子社製、JEM-2000EX)により観測して得られた粒子径を一次粒子径とした。
【0086】
[平均二次粒子径測定]
遮光成分含有分散液について、動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径を測定した。(B1)あるいは(B3)成分含有分散液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)にて分散された粒子の濃度が0.1~0.5質量%となるように希釈して測定用サンプルとした。また、(B2)成分を含有する分散液では測定可能な散乱強度となるように、メタノールにて粒子濃度が1~10質量%に希釈して測定用サンプルとした。
【0087】
合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。一般式(1)の化合物において、Xがフルオレン-9,9-ジイル基、R~Rが水素の化合物。)
AA :アクリル酸
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PTMA :ペンタエリスリトールテトラ[メルカプトアセテート]
DPHA :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物)
HQ :ハイドロキノン
BzDMA:ベンジルジメチルアミン
【0088】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(50.0g、0.10モル)、AA(14.1g、0.20モル)、PGMEA(67g)およびTPP(0.26g)を仕込み、100~105℃で12時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(14.4g、0.05モル)、THPA(7.4g、0.05モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1)―1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56質量%、酸価(固形分換算)は96mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。
【0089】
[合成例2]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(50.0g、0.1モル)、AA(14.1g、0.2モル)、PGMEA(67g)およびTPP(0.26g)を仕込み、100~105℃で12時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(20.9g、0.07モル)、THPA(0.23g、0.015モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1)―2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56質量%、酸価(固形分換算)は102mgKOH/g、GPC分析によるMwは7000であった。
【0090】
[合成例3]
1Lの4つ口フラスコ内に、PTMA(20g、メルカプト基0.19モル))、DPHA(212g(アクリル基2.12モル))、PGMEA(58g)、HQ(0.1g)、およびBzDMA(0.01g)を加え、60℃で12時間反応させて、樹枝状ポリマー溶液(A2)-3を得た。樹枝状ポリマー溶液の固形分濃度は80質量%であり、GPC分析によるMwは10000であった。なお、得られた樹枝状ポリマーについては、ヨードメトリー法にてメルカプト基の消失を確認した。
【0091】
[合成例4]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(114.4g、0.23mol)、AA(33.2g、0.46mol)、PGMEA(156g)及びTEAB(0.48g)を仕込み、100~105℃で加熱下に20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(44.1g、0.15mol)、THPA(0.76g、0.005mol)を仕込み、120~125℃で加熱下に6時間撹拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1)―3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6質量%、酸価(固形分換算)は93mgKOH/g、GPC分析によるMwは8300であった。
【0092】
また、表面が染料により被覆されたカーボンブラックを、以下の方法により調製した。
【0093】
[調製例1]
カーボンブラック(TPX-1099:cabot社製)1000gを水と混合してスラリー10Lを調製し、95℃で1時間撹拌させ放冷した後水洗した。これを再び水と混合処理してスラリー10Lを調製し、70%の硝酸42.9gを添加して40℃で4時間撹拌した。これを放冷して水洗した後再び水と混合してスラリー10Lを調製し、13%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液769.2gを添加して40℃で6時間撹拌した。これを放冷して水洗した後再び水と混合してスラリー10Lを調製し、純度38.4%の染料(Direct Deep BLACK)38.1gを添加して40℃で1時間撹拌し、その後更に硫酸アルミニウム10.1gを添加して40℃で1時間撹拌した。これを放冷した後水洗し、ろ過乾燥させて、染料被覆カーボンブラックを得た。
【0094】
上記染料被覆カーボンブラックと、高分子分散剤と、PGMEAとを混合し、ビーズミルで分散して、染料被覆カーボンブラックの濃度が25.0質量%、高分子分散剤の濃度が10.0質量%の、カーボンブラック分散液(B1b)を得た。
【0095】
合成例1~3および調整例1で用意した成分と、下記の成分とを用いて、実験1~実験3を行った。
【0096】
(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A1)-1:上記合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A1)-2:上記合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
【0097】
(少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物)
(A2)-1:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリストールテトラアクリレートとの混合物(アロニックスM-450、東亜合成株式会社製)
(A2)-2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96~115)、日本化薬株式会社製)
(A2)-3:上記合成例3で得られた樹脂状ポリマー
【0098】
(エポキシ化合物)
(A3)-1: セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)
(A3)-2: EHPE3150P(株式会社ダイセル製)
【0099】
(黒色顔料分散液)
(B1a):黒色顔料(ラクタムブラック BASF社製IrgaphorS100CF)15.0質量%、高分子分散剤4.5質量%のPGMEA分散液(固形分19.5%、黒色顔料の平均二次粒径240nm)
(B1b):上記調製例1で得られた染料被覆カーボンブラック分散体
【0100】
(フッ化マグネシウム及び/又は氷晶石微粒子)
(B2):フッ化マグネシウム分散体(MgF20.0質量%、高分子分散剤6.2質量%(固形分26.2質量%)、平均二次粒子径47nm)
【0101】
(シリカ微粒子)
(B2’):シリカ分散体「YA010C」(MgF20.0質量%(固形分20.0質量%)、株式会社アドマテックス製、平均一次粒子径10nm)
【0102】
(青色顔料分散体)
(B3):ピグメント・ブルー15:6(有機顔料成分13.0質量%、高分子分散剤4.6質量%のPGMEA分散液(固形分17.6質量%)、平均一次粒子径90nm)
【0103】
(光重合開始剤)
(C)-1:アデカアークルズNCI-831、株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)
【0104】
(溶剤)
(D)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(D)-2:乳酸エチル(EL)
(D)-3:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)
【0105】
(硬化剤)
(その他成分)-1:無水トリメリット酸
(その他成分)-2:ジシアンジアミド
【0106】
(実験1)
(B1)成分の850nmの透過率の測定を以下の手順で行った。
【0107】
[評価]
評価に使用するための感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)を次のように作製した。
【0108】
((B1)成分の850nm透過率評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
合成例1で得られた樹脂と(B1)成分である顔料を用いた固形分13.5%のPGMEA溶液を調整した。(B1)成分の量は、加熱硬化処理後の塗膜が単位OD=1[/μm]かつ膜厚1μmとなるように調整した。得られたPGMEA溶液を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。ネガ型フォトマスクを被せず、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで40mJ/cmの紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0109】
次いで、露光した上記硬化膜(遮光膜)を23℃、0.05%水酸化カリウム溶液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、上記硬化膜(遮光膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて85℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、硬化膜(遮光膜)を得た。
【0110】
[850nm透過率評価]
(評価方法)
上記で作製した硬化膜(遮光膜)付き基板に対して、紫外可視赤外分光光度「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、C光源、入射角2°、波長範囲380~1000nmの条件で硬化膜(遮光膜)側の透過率を測定した。
【0111】
(850nm透過率の評価基準)
(B1)成分である顔料として(B1a)、(B1b)のそれぞれを使用したときの、作成した硬化膜の850nmにおける透過率が80%以上であるかどうかの評価結果を、表1に示す。
【表1】
【0112】
(実験2)
黒色顔料(B1)として(B1a)を使用した組成物について、各種特性を評価した。本実験で調製した組成物を表2に示す(単位は質量部)。なお、表2中、(D)成分以外は全て、固形分量のみを記載している。
【0113】
【表2】
【0114】
[評価]
評価に使用するための感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)を次のように作製した。
【0115】
(光学濃度(OD)評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
表2に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(「ガラス基板」)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。ネガ型フォトマスクを被せず、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで40mJ/cmの紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0116】
次いで、露光した上記硬化膜(遮光膜)を23℃、0.05%水酸化カリウム溶液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、上記硬化膜(遮光膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて85℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例11~17、比較例11~12に係る硬化膜(遮光膜)を得た。
【0117】
[膜厚測定]
(評価方法)
段差計(KLA-Tencor社製「テンコールP-17」)を用い、測定範囲500μm、走査速度50μm/秒、サンプリングレート20Hzの条件で、ガラス基板表面と硬化膜表面との段差を測定し、その平均値を硬化膜の平均厚さとした。
【0118】
[光学濃度(OD)評価]
(評価方法)
透過濃度計「X-rite社製「X-rite 361T(V)」」を用いて光学濃度(OD)を測定した。上記の測定した膜厚と光学濃度(OD)から膜厚1μmあたりの光学濃度(OD)を算出した。
【0119】
光学濃度(OD)は次の式(5)で算出した。
光学濃度(OD)=-log10T 式(5)
(Tは透過率を示す)
【0120】
[SCI方式の反射率評価]
(評価方法)
光学濃度(OD)評価用の硬化膜(遮光膜)と同様にして作製した硬化膜(遮光膜)付き基板に対して、紫外可視赤外分光光度「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、C光源、入射角2°、波長範囲380~780nmの条件で硬化膜(遮光膜)側の各々の反射率を測定した。
【0121】
(反射率特性の評価基準)
○:SCI方式の反射率5.5%未満
△:SCI方式の反射率5.5%以上6.5%未満
×:SCI方式の反射率6.5%以上
【0122】
[SCE方式の明度評価]
(評価方法)
光学濃度(OD)評価用の硬化膜(遮光膜)と同様にして作製した硬化膜(遮光膜)付き基板に対して、紫外可視赤外分光光度「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、C光源、入射角2°、波長範囲380~780nmの条件で硬化膜(遮光膜)側のSCE方式における明度を測定した。
【0123】
(SCE方式の明度の評価基準)
○:SCE方式の明度6.0未満
△:SCE方式の明度6.0以上6.9未満
×:SCE方式の明度6.9以上
【0124】
(現像密着性評価用の硬化膜(遮光膜)の作製)
表2に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(「ガラス基板」)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬膜(遮光膜)を作製した。次いで、露光ギャップが存在しないように、乾燥硬化膜の上にライン幅が1~20μmであるネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで40mJ/cmの紫外線を照射して、感光部分の光硬化反応を行った。
【0125】
次いで、露光した上記硬化膜(遮光膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から+20秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、上記硬化膜(遮光膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて85℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例11~17、および比較例11~12に係る硬化膜(遮光膜)を得た。
【0126】
上記で得られた実施例11~17、比較例11~12の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)について、以下の項目について評価した。
【0127】
[現像密着性評価]
(評価方法)
上記で得られた各幅のネガ型フォトマスクを用いて形成したパターンについて、光学顕微鏡を用いてパターンが残っているかを観察した。なお、△以上を合格とした。
【0128】
(現像密着性の評価基準)
◎:残ったパターンの最小線幅が5μm未満
○:残ったパターンの最小線幅が5μm以上、10μm未満
△:残ったパターンの最小線幅が10μm以上、20μm未満
×:残ったパターンの最小線幅が20μmのみ
【0129】
[850nm(IR)透過性の評価]
(評価方法)
光学濃度(OD)評価用の硬化膜(遮光膜)と同様にして作製した硬化膜(遮光膜)付き基板に対して、紫外可視赤外分光光度「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、C光源、入射角2°、波長範囲380~1000nmの条件で硬化膜(遮光膜)側の透過率を測定した。
【0130】
(IR透過性の評価基準)
○:850nmでの透過率80%以上
△:850nmでの透過率20%以上80%未満
×:850nmでの透過率20%未満
【0131】
上記評価結果を表3に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
実施例11~17の感光性樹脂組成物では、シリカ粒子を用いた系(比較例11)や無添加系(比較例12)と比較して、高い遮光率において塗膜面のSCI方式の反射率及びSCE方式の明度をどちらも低減できることが確認された。また、実施例11~17の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)は、いずれも現像密着性が良好であることが確認された。
【0134】
(実験3)
黒色顔料(B1)として(B1a)を使用せず、(B1b)のみを使用した組成物について、各種特性を評価した。本実験で調製した組成物を表4に示す(単位は質量部)。なお、表4中、(D)成分以外は全て、固形分量のみを記載している。
【0135】
【表4】
【0136】
[評価]
評価に使用するための感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)を次のように作製した。
【0137】
(光学濃度(OD)評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
オーバーコート(OC)剤を塗布した125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)を予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄し、その上に表1に示した感光性樹脂組成物を、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。ネガ型フォトマスクを被せず、i線照度30mW/cmの超高圧水銀ランプで40mJ/cmの紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0138】
(オーバーコート剤の作製)
上記のオーバーコート剤は重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物、光開始剤、溶剤、その他成分を任意の割合で含む樹脂組成物である。本実験で使用した組成を以下に示す。
【0139】
(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A1)-3:上記合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
【0140】
(少なくとも2個以上の不飽和結合を有する光重合性化合物)
(A2)-2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96~115)、日本化薬株式会社製)
【0141】
(光重合開始剤)
(C)-2:1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン 2-O-ベンゾイルオキシム(イルガキュアOXE01、BASF社製)
【0142】
(溶剤)
(D)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(D)-3:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)
【0143】
(シランカップリング剤)
(その他成分)-3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0144】
(界面活性剤)
(その他成分)-4:BYK-302(1質量%PGMEA溶液)(ビックケミー社製)
【0145】
【表5】
【0146】
(オーバーコート剤塗布基板の作製)
表5に示したオーバーコート剤組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(「ガラス基板」)上に、加熱硬化処理後の膜厚が0.3μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例21~24、比較例21に用いる下地基板を得た。
【0147】
[膜厚測定]
(評価方法)
段差計(KLA-Tencor社製「テンコールP-17」)を用い、測定範囲500μm、走査速度50μm/秒、サンプリングレート20Hzの条件で、ガラス基板表面とオーバーコート剤硬化膜表面との段差を測定し、その平均値をオーバーコート剤硬化膜の平均厚さとした。また、同様の条件で、ガラス基板表面と遮光膜表面との段差を測定し、その平均値をオーバーコート剤硬化膜と遮光膜を合わせた硬化膜の平均厚さとした。このオーバーコート剤硬化膜と遮光膜を合わせた硬化膜の平均厚さから前記オーバーコート剤硬化膜の平均厚さを差引くことによって遮光膜の平均厚さ(=オーバーコート剤硬化膜と遮光膜を合わせた硬化膜の平均厚さ-オーバーコート剤硬化膜の平均厚さ)を求めた。
【0148】
[光学濃度(OD)評価]
(評価方法)
ガラス基板の代わりにOC剤を塗布したガラス基板(下地基板)を用いた以外は、実験2と同様の方法で評価した。
【0149】
[SCI方式の反射率評価]
(評価方法)
実験2と同様の方法で評価した。
【0150】
(反射率特性の評価基準)
○:SCI方式の反射率5.0%未満
△:SCI方式の反射率5.0%以上6.0%未満
×:SCI方式の反射率6.0%以上
【0151】
[SCE方式の明度評価]
(評価方法)
実験2と同様の方法で評価した。
【0152】
(SCE方式の明度の評価基準)
○:SCE方式の明度3.0未満
×:SCE方式の明度3.0以上
【0153】
(現像密着性評価用の硬化膜(遮光膜)の作製)
ガラス基板の代わりにOC剤を塗布したガラス基板(下地基板)を用いた以外は、実験2と同様の方法で作製した。
【0154】
上記で得られた実施例21~24、比較例21の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)について、以下の項目について評価した。
【0155】
[現像密着性評価]
(評価方法)
実験2と同様の方法で評価した。なお、△以上を合格とした。
【0156】
(現像密着性の評価基準)
◎:残ったパターンの最小線幅が5μm未満
○:残ったパターンの最小線幅が5μm以上、10μm未満
△:残ったパターンの最小線幅が10μm以上、20μm未満
×:残ったパターンの最小線幅が20μmのみ
【0157】
上記評価結果を表6に示す。
【0158】
【表6】
【0159】
実施例21~24の感光性樹脂組成物では、無添加系(比較例21)と比較して、高い遮光率において塗膜面のSCI方式の反射率及びSCE方式の明度をどちらも低減できることが確認された。また、実施例21~24の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(遮光膜)は、いずれも現像密着性が良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、低反射率及び低明度を両立する感光性樹脂組成物およびこれを用いた硬化膜並びにカラーフィルター、タッチパネルを提供することができる。また、このカラーフィルターおよびタッチパネルによれば、視認性に優れた各種表示装置を提供することができる。