IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出装置 図10
  • 特開-液体吐出装置 図11
  • 特開-液体吐出装置 図12
  • 特開-液体吐出装置 図13
  • 特開-液体吐出装置 図14
  • 特開-液体吐出装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180034
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231213BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231213BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/165 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
D06B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093084
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】尾ヶ口 宗之
【テーマコード(参考)】
2C056
3B154
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056EA20
2C056EB12
2C056EB37
2C056EC12
2C056EC22
2C056EC35
2C056FA02
2C056FA10
2C056FB03
2C056HA29
2C056JA04
2C056JA13
2C056JB04
3B154AB27
3B154BA09
3B154BB33
3B154BB47
3B154BC08
3B154BC16
3B154BC28
3B154BD02
3B154CA02
3B154CA03
3B154CA39
3B154DA13
(57)【要約】
【課題】キャップ部材の装着作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】液体付与対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに対してノズル面を覆うように装着可能なキャップ部材10と、液体付与対象物を載置する載置部材40と、載置部材40を液体吐出ヘッドに接近離間させるように昇降させる昇降機構と、を備える液体吐出装置であって、載置部材40は、キャップ部材10を保持可能な保持部3と、キャップ保持部3によって保持されるキャップ部材10の位置を液体吐出ヘッドに対する載置部材の接近方向とは交差する方向X,Yに調整可能な位置調整部4と、を有し、キャップ部材10がキャップ保持部3によって保持される状態において、載置部材40は、キャップ部材10が液体吐出ヘッドから離れた位置と、キャップ部材10が液体吐出ヘッドに装着される位置との間で昇降可能である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体付与対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに対してノズル面を覆うように装着可能なキャップ部材と、
前記液体付与対象物を載置する載置部材と、
前記載置部材を前記液体吐出ヘッドに接近離間させるように昇降させる昇降機構と、
を備える液体吐出装置であって、
前記載置部材は、前記キャップ部材を保持可能な保持部と、前記キャップ保持部によって保持される前記キャップ部材の位置を前記液体吐出ヘッドに対する前記載置部材の接近方向とは交差する方向に調整可能な位置調整部と、を有し、
前記キャップ部材が前記キャップ保持部によって保持される状態において、前記載置部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れた位置と、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドに装着される位置との間で昇降可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記キャップ保持部は、前記キャップ部材を挟むように保持する複数の保持板を有し、
前記位置調整部は、前記保持板を前記液体吐出ヘッドに対する前記載置部材の接近方向とは交差する方向に変位可能に付勢する付勢部材を有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記載置部材は、前記液体付与対象物が載置される載置面に凹部を有し、
前記保持板と前記付勢部材は、前記凹部内に配置される請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記キャップ部材は、前記液体吐出ヘッドに対して接近する方向に向かって外側へ開くように傾斜するガイド部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記昇降機構は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドに対して所定距離まで接近した後は、前記載置部材の上昇速度が遅くなるように制御される請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドのノズルを保護したり、ノズルの乾燥を防止したりする目的で、ノズル面を覆うキャップ部材を備える液体吐出装置が知られている。
【0003】
例えば、用紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置においては、画像形成動作が終了すると、キャップ部材が自動的に液体吐出ヘッドに装着され、ノズル面がキャップ部材によって覆われることによりノズルの乾燥が抑制される。しかしながら、装置の故障などによりキャップ部材の装着動作が行われなくなると、ノズル面がキャップ部材によって覆われず露出したままの状態で放置される。その結果、ノズルが乾燥して、インクがノズル内に固着すると、インクの吐出不良が発生し、最悪の場合、液体吐出ヘッドの交換が必要になる。
【0004】
このような事態を防ぐ対策として、作業者が手作業で別のキャップ部材を液体吐出ヘッドに装着する方法がある。例えば、特許文献1(特開2013-136162号公報)には、メンテナンス時に作業者が手動でキャップ部材(メンテナンス治具)を液体吐出ヘッドに装着する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、作業者が手動でキャップ部材を装着する方法は、限られたスペース内で装着作業を行う必要があるため、作業が困難であり、業者の負担になる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、キャップ部材の装着作業を容易に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体付与対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対してノズル面を覆うように装着可能なキャップ部材と、前記液体付与対象物を載置する載置部材と、前記載置部材を前記液体吐出ヘッドに接近離間させるように昇降させる昇降機構と、を備える液体吐出装置であって、前記載置部材は、前記キャップ部材を保持可能な保持部と、前記キャップ保持部によって保持される前記キャップ部材の位置を前記液体吐出ヘッドに対する前記載置部材の接近方向とは交差する方向に調整可能な位置調整部と、を有し、前記キャップ部材が前記キャップ保持部によって保持される状態において、前記載置部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れた位置と、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドに装着される位置との間で昇降可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャップ部材の装着作業を容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である印刷装置の斜視図である。
図2】前記印刷装置の平面図である。
図3】前記印刷装置の正面図である。
図4】本実施形態に係るヘッドキャップ装置の全体構成及び動作を示す図である。
図5】前記ヘッドキャップ装置の全体構成及び動作を示す図である。
図6】本実施形態に係るキャップ部材の斜視図である。
図7】前記キャップ部材を図6と異なる方向から見た斜視図である。
図8】前記キャップ部材の断面図である。
図9】前記キャップ部材の断面斜視図である。
図10】本実施形態に係るプラテンの斜視図である。
図11】前記プラテン上に前記キャップ部材が保持された状態を示すプラテンの拡大平面図である。
図12】前記キャップ部材がキャリッジに係合される様子を示す図である。
図13】前記キャップ部材の装着方法及び前記ヘッドキャップ装置の動作のフローチャートである。
図14】前記キャップ部材の変形例を示す図である。
図15】他のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、液体吐出装置の一例である印刷装置を例に本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である印刷装置の斜視図、図2は、同印刷装置の平面図、図3は、同印刷装置の正面図である。
【0012】
本実施形態に係る印刷装置1は、液体を吐出する液体吐出手段である複数の液体吐出ヘッド20A~20D(図3参照)を搭載するキャリッジ11を備えている。各液体吐出ヘッド20A~20Dは、複数のノズル列を有し、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各色の液体、白インク、透明インクなどの液体を吐出する。また、キャリッジ11には、各液体吐出ヘッド20A~20Dに供給される液体を一時的に収容するサブタンクが搭載されている。サブタンクには、メインタンク32に貯留されている液体が供給される。
【0013】
キャリッジ11は、2本のガイド部材12,13(図1図2参照)によって主走査方向Xに往復移動可能に保持されている。また、キャリッジ11は、駆動プーリ15と従動プーリ16に掛け回されたタイミングベルト17(図3参照)に連結されている。駆動プーリ15は、主走査モータ14(図2参照)によって回転駆動されるように構成されており、主走査モータ14が駆動することによりキャリッジ11が主走査方向Xに往復移動する。
【0014】
また、印刷装置1は、キャリッジ11の位置を検出するエンコーダシート18(図1参照)と、各液体吐出ヘッド20A~20Dの液体吐出動作を制御するコントローラボード50(図1図2参照)を備えている。
【0015】
エンコーダシート18は、主走査方向Xに沿って配置されている。エンコーダシート18には周期的なスリットが設けられ、キャリッジ11は、エンコーダシート18のスリットを読み取る読み取りセンサを有している。キャリッジ11の読み取りセンサによってエンコーダシート18のスリットが読み取られることにより、その読み取り結果から主走査方向Xにおけるキャリッジ11の位置が検出される。
【0016】
コントローラボード50は、キャリッジ11の読み取りセンサの読み取り結果から得らえるキャリッジ位置に基づいて各液体吐出ヘッド20A~20Dの吐出動作(吐出タイミング)を制御する。
【0017】
また、印刷装置1は、印刷対象物(液体付与対象物)としての布地400(図3参照)が載置される載置部材であるプラテン40を備えている。プラテン40は、昇降機構41上に搭載されており、昇降機構41によって上下方向Zの高さを調整可能に構成されている。
【0018】
また、昇降機構41は、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに移動可能なスライダ42上に搭載されている。スライダ42は、副走査方向Yに延在するスライドレール43上に移動可能に載置され、タイミングベルト45を介して副走査駆動機構により副走査方向Yに往復移動される。これにより、スライダ42上に搭載されるプラテン40も副走査方向Yに往復移動される。
【0019】
印刷装置1の主走査方向Xの一端側には、各液体吐出ヘッド20A~20Dの維持回復を行うメンテナンス装置60が配置されている。メンテナンス装置60は、各液体吐出ヘッド20A~20Dのノズル面を覆い各ノズルからインクを吸引する吸引キャップ61と、各液体吐出ヘッド20A~20Dのノズル面を覆って保湿する保湿キャップ62と、各液体吐出ヘッド20A~20Dのノズル面を払拭する払拭部材であるワイパ63を備えている。吸引キャップ61には吸引ポンプが接続されている。
【0020】
印刷装置1の主走査方向Xの他端側には、吐出受け66が配置されている。印刷途中で、各液体吐出ヘッド20A~20Dから吐出受け66にインクを吐出させることにより、各液体吐出ヘッド20A~20Dの維持回復を行う。
【0021】
また、印刷装置1は、電源ボタン70、操作部71、電源ユニット72などを備えている(図1参照)。
【0022】
本実施形態に係る印刷装置1において、Tシャツなどの布地(印刷対象物)に印刷を行うときは、布地400をプラテン40上にセットする。その後、操作部71での操作により、副走査方向Yへ移動するスライダ42を介してプラテン40を装置内後方(図2における上方)へ引き込む動作を行う。
【0023】
プラテン40の引き込みが完了したとき、印刷データ待機状態となる。ここで、印刷装置1が外部の情報処理装置から印刷データを受信したときに印刷動作が開始される。あるいは、予めコントローラボード50に印刷データが蓄積されていた場合には、操作部71で当該印刷データを選択することによって印刷動作が開始される。
【0024】
印刷動作が開始されると、スライダ42を介してプラテン40が印刷開始位置まで移動される。その後、キャリッジ11の主走査方向Xの移動と各液体吐出ヘッド20A~20Dからのインク吐出が行われて、1行分の画像が印刷される。1行分の画像が印刷されると、スライダ42を介してプラテン40が1行分副走査方向Yへ移動される。その後、キャリッジ11の主走査方向Xの往復移動及び各液体吐出ヘッド20A~20Dのインク吐出と、スライダ42の副走査方向Yの間欠移動とが、繰り返し行われることにより、布地400の所望の領域に印刷が行われる。印刷完了後、プラテン40は装置手前(図2における下側)まで戻されて印刷終了となる。
【0025】
また、メンテナンス動作を行う場合は、キャリッジ11をメンテナンス装置60のメンテナンス位置まで移動させる。まず、メンテナンス装置60は、各液体吐出ヘッド20A~20Dのうち、メンテナンス対象ヘッドノズル面を吸引キャップ61で覆い、吸引ポンプを駆動させる吸引動作を行う。これにより、ノズルからインクが吸引され、吸引キャップ61内にインクが排出される。そして、吸引動作の完了後、吸引キャップ61をノズル面から離間させ、対象ヘッドのノズル面をワイパ63によってワイピング(払拭)するワイピング動作を行う。そして、全ての対象ヘッドに対する吸引動作とワイピング動作完了すると、各液体吐出ヘッド20A~20Dのノズル面が保湿キャップ62によって覆われた状態となり、メンテナンス動作を終了する。これにより、ノズル面の乾燥が抑制される。なお、保湿キャップ62は、液体吐出ヘッド20A~20Dの個数分設けられている。
【0026】
ところで、印刷装置1の故障などにより、メンテナンス装置60がメンテナンス動作を行えなくなる場合がある。この場合、保湿キャップ62によって各液体吐出ヘッド20A~20Dのノズル面を覆うことができない(キャッピング動作が行われなくなる)ため、サービスマンなどによる修理が終了するまでノズル面は大気に晒されることになる。その結果、ノズル内のインクの水分が蒸発することにより、インクが増粘すると、インクがノズル内で固着する虞がある。
【0027】
そのため、ユーザーなどの作業者が別のキャップ部材を手作業で液体吐出ヘッドに装着する方法も考えられるが、作業者が手作業によってキャップ部材を装着する作業は、限られたスペース内で行わなければならないため、作業が行いにくく、作業者の負担になる問題がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る印刷装置においては、メンテナンス装置によるキャッピング動作が行えなくなったとしても、作業者が液体吐出ヘッドのキャッピングを容易に行えるように、印刷装置に搭載されるプラテン40及びこれを昇降させる昇降機構41をヘッドキャップ装置として用いるようにしている。以下、本実施形態に係るヘッドキャップ装置の構成及びその動作について説明する。
【0029】
図4及び図5は、本実施形態に係るヘッドキャップ装置の全体構成及び動作を示す図である。なお、図4及び図5においては、上記各液体吐出ヘッド20A~20Dを識別するための符号A~Dは省略している。
【0030】
図4及び図5に示されるように、本実施形態に係るヘッドキャップ装置100は、プラテン40、昇降機構41のほか、プラテン40及び昇降機構41を副走査方向Yへ移動させるスライダ42及びスライドレール43を、主な構成要素としている。
【0031】
昇降機構41は、プラテン40を支持する支持部51と、送りねじ33及びガイドロッド34を収容するハウジング部52とを有している。昇降機構41の支持部51は、スライダ42上に鉛直方向に伸びる柱状の部分と、その柱状の部分の上端から水平方向に伸びる部分とを有し、その水平状に伸びる部分に、送りねじ33と係合する雌ねじ部53と、ガイドロッド34が挿入されるガイド孔54が設けられている。送りねじ33及びガイドロッド34は、上下方向に延在しており、これらの上端部はプラテン40の下面に連結されている。
【0032】
送りねじ33がモータなどの駆動源によって回転駆動されると、送りねじ33と雌ねじ部53との噛み合いにより送りねじ33が上昇又は下降する。これにより、プラテン40が昇降する。また、このとき、ガイドロッド34がガイド孔54に沿って移動することにより、プラテン40が上下方向へ案内される。
【0033】
また、プラテン40は、その上面にキャップ部材10を保持可能に構成されている。このキャップ部材10は、上記メンテナンス装置60が備える吸引キャップ61及び保湿キャップ62とは別のキャップ部材であり、メンテナンス装置60によるキャッピング動作が行えない異常時に作業者が使用するためにあらかじめ用意されているものである。
【0034】
続いて、図6図9に基づき、キャップ部材10の構成について説明する。
図6は、キャップ部材10の斜視図、図7は、キャップ部材10を図6と異なる方向から見た斜視図、図8は、キャップ部材10の断面図、図9は、キャップ部材10の断面斜視図である。
【0035】
図6及び図7に示されるように、キャップ部材10は、各液体吐出ヘッド20A~20Dのノズル面を覆ってキャッピングする複数のキャップ部21と、複数のキャップ部21を保持するホルダ部22とを備えている。キャップ部21は、液体吐出ヘッド20A~20Dの数と同数設けられている。
【0036】
図8及び図9に示されるように、ホルダ部22は、複数のキャップホルダ23を有しており、複数のキャップ部21は、2個ずつキャップホルダ23に保持されている。また、キャップ部21とキャップホルダ23との間にはバネなどの弾性部材24が設けられている。この弾性部材24によって各キャップ部21が図8及び図9における上方へ付勢されていることにより、キャップ部材10がキャッピングされたときに各キャップ部21がノズル面に押し付けられるようになっている。
【0037】
ホルダ部22は、各キャップ部21が並ぶ方向の両端部に、キャリッジ11の外装に設けられる係合部としての凸部11a(図12参照)に着脱可能に係合される係合部としての引っ掛け部(爪部)22aを有している。また、ホルダ部22は、キャリッジ11に装着されるときの案内及び位置決め部となるガイド部22bを四隅に有している。さらに、ホルダ部22は、キャップ部21の長手方向におけるキャップ部21とノズル面との位置関係を規制する位置決め部22cを有している。位置決め部22cは、キャップホルダ23に対して1つの割合で設けられている。
【0038】
また、ホルダ部22内のキャップホルダ23の下方側には、液体を吸収する吸収部材25(図8図9参照)が配置されている。これにより、キャップ部21内に充填された保湿液がキャッピング時にこぼれたとしても、吸収部材25によって保湿液を吸収し、装置内が保湿液によって汚されることを防ぐことができる。
【0039】
図10及び図11に、本実施形態に係るプラテン40の構成を示す。図10は、プラテン40の斜視図、図11は、プラテン40上にキャップ部材10が保持された状態を示すプラテン40の拡大平面図である。
【0040】
図10に示されるように、印刷対象物(布地400)が載置されるプラテン40の載置面(上面)40aには、キャップ部材10が収容される凹部2が設けられている。凹部2は、キャップ部材10の形状に倣って矩形に形成された底面を有する孔であり、載置面40aの中央に設けられている。また、凹部2は、載置面40aに印刷対象物が載置された際に印刷に影響を与えない程度の凹み(深さ)に形成されている。
【0041】
図10及び図11に示されるように、凹部2内には、4つの保持板3と、各保持板3に2つずつ設けられた合計8つの位置調整バネ4とが配置されている。各保持板3は、矩形状の開口縁を形成する凹部2の4つの側面2a~2dに対向するように配置されている。また、凹部2の各側面2a~2dと各保持板3との間には、複数の位置調整バネ4が配置されている。各保持板3は複数の位置調整バネ4を介して各側面2a~2dに連結されている。このため、各保持板3は、複数の位置調整バネ4によって主走査方向X又は副走査方向Yに変位可能に保持されている。言い換えれば、各保持板3は、液体吐出ヘッド20に対するプラテン40の接近方向(上昇方向)とは交差する方向に変位可能に構成されている。
【0042】
このように構成された保持板3同士の間にキャップ部材10を収容すると、図11に示されるように、各保持板3が位置調整バネ4によって付勢されることにより、キャップ部材10が各保持板3によって挟まれた状態で保持される。また、キャップ部材10が各保持板3によって保持された状態においては、各位置調整バネ4が伸縮することにより、キャップ部材10を主走査方向X及び副走査方向Yに自由に変位させることができる。すなわち、本実施形態において、各保持板3は、プラテン40上でキャップ部材10を保持するキャップ保持部46として機能し、各位置調整バネ4は、保持されるキャップ部材10の位置を主走査方向X及び副走査方向Yへ調整可能な位置調整部47として機能する。
【0043】
続いて、図13を参照しつつ、異常時におけるキャップ部材10の装着方法及びヘッドキャップ装置100の動作について説明する。
【0044】
故障などの異常により上記メンテナンス装置60のメンテナンス動作が行えなくなった場合は、作業者が、印刷装置の制御パネルなどの操作部を操作し、「異常時におけるキャップ装着動作」の実行を指示する(図13のStep1)。なお、ここでいう異常時とは、メンテナンス装置60のメンテナンス動作は行えないが、キャップ部材10を装着するための駆動系(ヘッドキャップ装置100など)の制御は可能である状態を意味する。
【0045】
「異常時におけるキャップ装着動作」が実行されると、キャリッジ11が、主走査方向Xに移動して、主走査方向Xにおけるプラテン40の中央位置に相当する位置に配置される(図13のStep2)。すなわち、キャリッジ11は、プラテン40上にセットされるキャップ部材10の位置(凹部2)に対応した所定のキャップ装着位置に配置される。また、プラテン40は、副走査方向Yの手前側(図2に示される位置)へ移動し、作業者がキャップ部材10をセット可能な所定のセット位置に配置される(図13のStep2)。
【0046】
プラテン40が所定のセット位置に配置されると、作業者は、キャップ部材10をプラテン20上の凹部2にセットする(図13のStep3)。すなわち、図11に示されるように、キャップ部材10が複数の保持板3によってプラテン40上で保持される状態にする。そして、作業者は、再び操作部を操作し、「異常時におけるキャップ装着動作」の再開を支持する(図13のStep4)。この指示により、プラテン40が、副走査方向Yの奥側へ移動し、キャップ部材10がキャリッジ11の真下に配置される位置(図4に示される位置)で停止する。そして、その位置において、図5に示されるように、昇降機構41の送りねじ33が回転を開始し、プラテン40を上昇させる(図13のStep5)。これにより、プラテン40上のキャップ部材10がキャリッジ11に接近し、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20のノズル面を覆うように装着される(図13のStep6)。詳しくは、キャップ部材10の引っ掛け部22a(図7参照)がキャリッジ11の凸部11a(図12参照)に係合することにより、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20に装着される。これにより、液体吐出ヘッド20に対するキャップ部材10の装着が完了する。また、キャップ部材10の装着が完了した後は、昇降機構41の送りねじ33が逆回転することにより、プラテン40が降下し、所定のホームポジションで停止する。
【0047】
以上のように、本実施形態においては、メンテナンス装置60によるキャップの装着動作が行えなくなったとしても、印刷装置に搭載されるプラテン40及びこれを昇降させる昇降機構41をヘッドキャップ装置として用いることにより、キャップ部材10の装着を容易に行えるようになる。すなわち、作業者は、プラテン40上へのキャップ部材10のセットと、操作パネルなどの操作を行うだけでよく、作業者が直接手作業でキャップ部材10を液体吐出ヘッド20に装着しなくてもよいので、装着作業を容易に行うことができる。また、メンテナンス装置60によるキャップの装着動作が行えなくなった場合に、アラーム(警告音)、あるいは操作パネルの表示などにより、作業者に「異常時におけるキャップ装着動作」の実行を促すことにより、キャップ部材10の装着し忘れも防止できるようになる。
【0048】
また、本実施形態においては、キャップ部材10がプラテン40上で主走査方向X及び副走査方向Yへ変位可能に保持されているので(図11参照)、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20に対して接近する際、キャップ部材10はその接近方向とは交差する方向に変位できる。このため、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20又はキャリッジ11に対して多少位置ずれしていたとしても、プラテン40の上昇に伴ってキャップ部材10のガイド部22b(図6参照)がキャリッジ11に接触した際に、キャップ部材10が接近方向とは交差する方向に変位することにより、位置ずれを修正できる。これにより、キャップ部材10を液体吐出ヘッド20に対して精度良く装着できる。
【0049】
また、図14に示される例のように、キャップ部材10のガイド部22bは、液体吐出ヘッド20に対してキャップ部材10が接近する方向Aに向かって外側へ開くように傾斜していてもよい。なお、ここでいう「外側」とは、キャップ部材10を液吐出ヘッド20に対して接近離間させる方向から見て、キャップ部材10の中央とは反対側の方向、すなわち、キャップ部材10の中央から放射状に広がる方向のうちの任意の方向を意味する。このように、ガイド部22bが外側へ開くように傾斜していることにより、液体吐出ヘッド20又はキャリッジ11に対するキャップ部材10の位置ずれが多少大きくても、ガイド部22bによってキャップ部材10を所定の装着位置へ案内できるため、キャップ部材10を精度良く装着できるようになる。
【0050】
また、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20に装着される際、プラテン40の上昇速度は同じ速度であってもよいし、変化してもよい。例えば、図15に示される例のように、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20に対して所定距離まで接近した場合は、その後のプラテン40の上昇速度が遅くなるように制御してもよい(図15のStep6、Step7参照)。このように、キャップ部材10と液体吐出ヘッド20との間の距離が近くなった場合は、その距離が遠い場合に比べて、プラテン40の上昇速度を遅くすることにより、キャップ部材10が液体吐出ヘッド20又はキャリッジ11に接触した際の衝撃を緩和できるので、キャップ部材10及び液体吐出ヘッド20又はキャリッジ11の損傷を抑制できる。
【0051】
上記実施形態においては、液体吐出ヘッド20に対するキャップ部材10の装着が、キャリッジ11に対するキャップ部材10の係合により行われているが、キャップ部材10はキャリッジ11に係合する場合に限らず、液体吐出ヘッド20に直接係合してもよい。また、キャップ部材10は、キャリッジ11を主走査方向Xへガイドするガイド部材12,13に係合してもよい。従って、本発明において、キャップ部材の「装着」とは、キャップ部材が、液体吐出ヘッドに直接係合して装着される場合のほか、液体吐出ヘッドを保持する部材、又は、その保持する部材を案内する部材などに係合して装着される場合も含む。すなわち、「装着」とは、液体吐出ヘッドのノズル面がキャップ部材によって覆われた状態で、キャップ部材の位置が固定される状態を意味する。
【0052】
また、上記実施形態においては、係合部としての引っ掛け部22aがキャップ部材10に設けられる構成としたが、係合部としての引っ掛け部をキャリッジ11、又は、ガイド部材12,13に設ける構成とすることもできる。さらに、係合部は、引っ掛け部(爪)以外の構成でもよく、磁石などを用いて着脱可能な構成としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、キャップ部材10が二対(4つ)の保持板3によって保持されるが、保持板3の数は、二対(4つ)に限らず一対(2つ)であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、キャップ部材10の位置を複数の位置調整バネ4によって変位可能にしているが、位置調整バネ4に代えて、ゴム又はスポンジなどの他の弾性部材を用いてもよい。その場合、ゴム又はスポンジなどの弾性部材によってキャップ部材10を直接挟んで保持し、これらの弾性部材が、キャップ部材10を保持するキャップ保持部46としての機能と、キャップ部材10の位置を調整する位置調整部47としての機能を兼ねるようにしてもよい。
【0055】
なお、キャップ保持部46及び位置調整部47を構成する各部材は、プラテン40の載置面40aに印刷対象物が載置された際に印刷に影響を与えないように、プラテン40の凹部2(開口縁)から上方へ突出しないように収容されることが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態においては、キャップ部材10を装着する際の副走査方向Yへのプラテン40の移動を、スライダ42の駆動により行っているが、このときの副走査方向Yへの移動を作業者が手動により行えるようにしてもよい。すなわち、ヘッドキャップ装置は、スライダ42などの副走査方向移動機構を備えず、プラテン40と昇降機構41のみ備えるものであってもよい。この場合でも、プラテン40の上昇機能により、キャップ部材10を液体吐出ヘッド20に自動で装着できるので、作業者が手動でキャップ部材10を装着する場合に比べて、作業負担を軽減できる。
【0057】
また、本発明において、「液体吐出装置」とは、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置を意味する。また、「液体吐出装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0058】
さらに、「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)が含まれる。
【0059】
また、「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものに対して液体吐出ヘッドが相対的に移動するものであってもよいし、液体吐出ヘッドが相対的に移動しないものであってもよい。具体例としては、「液体吐出装置」として、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0060】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも「液体吐出装置」に含まれる。従って、「液体吐出装置」には、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置なども含まれる。
【0061】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0062】
また、「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0063】
また、「液体吐出装置」によって吐出される「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料、顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、発光素子の構成要素、電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0064】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える液体吐出装置が含まれる。
【0065】
[第1の構成]
第1の構成は、液体付与対象物に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対してノズル面を覆うように装着可能なキャップ部材と、前記液体付与対象物を載置する載置部材と、前記載置部材を前記液体吐出ヘッドに接近離間させるように昇降させる昇降機構と、を備える液体吐出装置であって、前記載置部材は、前記キャップ部材を保持可能な保持部と、前記キャップ保持部によって保持される前記キャップ部材の位置を前記液体吐出ヘッドに対する前記載置部材の接近方向とは交差する方向に調整可能な位置調整部と、を有し、前記キャップ部材が前記キャップ保持部によって保持される状態において、前記載置部材は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドから離れた位置と、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドに装着される位置との間で昇降可能な液体吐出装置である。
【0066】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記キャップ保持部は、前記キャップ部材を挟むように保持する複数の保持板を有し、前記位置調整部は、前記保持板を前記液体吐出ヘッドに対する前記載置部材の接近方向とは交差する方向に変位可能に付勢する付勢部材を有する液体吐出装置である。
【0067】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第2の構成において、前記載置部材は、前記液体付与対象物が載置される載置面に凹部を有し、前記保持板と前記付勢部材は、前記凹部内に配置される液体吐出装置である。
【0068】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記キャップ部材は、前記液体吐出ヘッドに対して接近する方向に向かって外側へ開くように傾斜するガイド部を有する液体吐出装置である。
【0069】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれか1つの構成において、前記昇降機構は、前記キャップ部材が前記液体吐出ヘッドに対して所定距離まで接近した後は、前記載置部材の上昇速度が遅くなるように制御される液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷装置(液体吐出装置)
2 凹部
3 保持板
4 位置調整バネ(付勢部材)
10 キャップ部材
20A~20D 液体吐出ヘッド
22b ガイド部
40 プラテン(載置部材)
40a 載置面
41 昇降機構
46 キャップ保持部
47 位置調整部
100 ヘッドキャップ装置
400 布(液体付与対象物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2013-136162号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15