IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

特開2023-180167ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置
<>
  • 特開-ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置 図1
  • 特開-ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置 図2
  • 特開-ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180167
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/34 20060101AFI20231213BHJP
   F27B 7/32 20060101ALI20231213BHJP
   F27D 11/12 20060101ALI20231213BHJP
   C22B 23/02 20060101ALI20231213BHJP
   C22B 5/02 20060101ALI20231213BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20231213BHJP
【FI】
F27B7/34
F27B7/32
F27D11/12
C22B23/02
C22B5/02
C22C1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093323
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大志
【テーマコード(参考)】
4K001
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA09
4K001DA05
4K001GA07
4K001HA01
4K061AA08
4K061BA02
4K061EA00
4K061GA02
4K061HA00
4K063AA06
4K063BA03
4K063BA15
4K063CA01
4K063FA82
(57)【要約】
【課題】ロータリーキルンの途中で添加する添加材を加熱できるロータリーキルンの操業方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ロータリーキルンの長手方向の両端部間にスクープフィーダを有しており、前記スクープフィーダを介して前記ロータリーキルン内の原料に添加材を投入する添加材投入工程と、
前記添加材が、前記スクープフィーダを通過し、前記ロータリーキルン内の前記原料に投入されるまでの間に、前記添加材にマイクロ波を照射して加熱する添加材加熱工程と、を有するロータリーキルンの操業方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンの長手方向の両端部間にスクープフィーダを有しており、前記スクープフィーダを介して前記ロータリーキルン内の原料に添加材を投入する添加材投入工程と、
前記添加材が、前記スクープフィーダを通過し、前記ロータリーキルン内の前記原料に投入されるまでの間に、前記添加材にマイクロ波を照射して加熱する添加材加熱工程と、を有するロータリーキルンの操業方法。
【請求項2】
前記原料がニッケル酸化鉱であり、前記添加材が還元剤を含む請求項1に記載のロータリーキルンの操業方法。
【請求項3】
ロータリーキルンと、
前記ロータリーキルンの長手方向の両端部間に配置されたスクープフィーダと、
前記スクープフィーダを介して前記ロータリーキルン内に投入される添加材に対してマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、を有する熱処理装置。
【請求項4】
前記マイクロ波照射装置は、マイクロ波を発振する発振機と、前記発振機で発振したマイクロ波を、前記スクープフィーダ内を含む前記ロータリーキルン内に導波する導波路と、前記導波路の前記ロータリーキルン内に配置された端部の位置を変更する位置変更装置と、を有する請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記マイクロ波照射装置は、前記ロータリーキルンの外周に沿って配置された架線と、前記架線と接することで前記架線を介して電力を取得する集電装置と、を有する請求項3または請求項4に記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フェロニッケル製錬において、原料のニッケル酸化鉱を乾燥するとともに部分還元を行うロータリーキルンの操業方法であって、前記ロータリーキルンの途中にスクープフィーダを設け、該スクープフィーダを介して、水分が2~5重量%の石炭を該ロータリーキルン内に投入することを特徴とするロータリーキルンの操業方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-141719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリーキルンは略円筒形状を有しており、通常、一方の端部側から原料である被処理物を投入し、他方の端部側からバーナー等の加熱手段で加熱される。ロータリーキルンは他方の端部側が低くなるように配置され、中心軸を軸として回転することで、投入された被処理物は他方の端部側へと徐々に移動しながら加熱される。そして、他方の端部側に設けられた排出口から、熱処理を終え、得られた生成物が排出されることになる。
【0005】
例えば特許文献1に開示されているように、ロータリーキルンの途中にスクープフィーダを設け、該スクープフィーダを介してロータリーキルン内に添加材を添加することがなされていた。
【0006】
しかしながら、含有する水分量や揮発成分の多い添加材を、スクープフィーダを介してロータリーキルンの途中から添加した場合、添加材がロータリーキルン内の原料から熱を奪い、反応が十分に進行しない等の問題を生じる場合があった。
【0007】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、ロータリーキルンの途中で添加する添加材を加熱できるロータリーキルンの操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
ロータリーキルンの長手方向の両端部間にスクープフィーダを有しており、前記スクープフィーダを介して前記ロータリーキルン内の原料に添加材を投入する添加材投入工程と、
前記添加材が、前記スクープフィーダを通過し、前記ロータリーキルン内の前記原料に投入されるまでの間に、前記添加材にマイクロ波を照射して加熱する添加材加熱工程と、を有するロータリーキルンの操業方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ロータリーキルンの途中で添加する添加材を加熱できるロータリーキルンの操業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱処理装置の模式図である。
図2図2は、図1のA-A´線での断面図である。
図3図3は、図2のB-B´線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いながら説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[ロータリーキルンの操業方法]
本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、添加材投入工程と、添加材加熱工程と、を有することができる。
【0012】
添加材投入工程は、ロータリーキルンの長手方向の両端部間にスクープフィーダを有しており、該スクープフィーダを介してロータリーキルン内の原料に添加材を投入できる。
【0013】
添加材加熱工程は、添加材が、スクープフィーダを通過し、ロータリーキルン内の原料に投入されるまでの間に、添加材にマイクロ波を照射して加熱できる。
【0014】
本実施形態のロータリーキルンの操業方法によれば、ロータリーキルンの途中に設けたスクープフィーダを介してロータリーキルン内に添加材を投入できる。そして、添加材がスクープフィーダを通過し、ロータリーキルン内の原料に投入されるまでの間に、該添加材にマイクロ波を照射することで加熱できる。このため、ロータリーキルンの途中で原料に添加する添加材について、添加材が原料と接する前に加熱でき、添加材の温度を上昇させることができる。その結果、添加材が原料と接触する際に奪う熱量を低減できる。また、例えば添加材が揮発成分を含有する場合、該揮発成分を加熱により分離させ、分離した可燃性ガスはバーナーからの高熱排風と接触することで着火等して温度の上昇に寄与させることもできる。なお、上記揮発成分とは、石炭を加熱する際に発生するガス、油分、タール(コールタール)の総称である。また、ロータリーキルンの途中とは、ロータリーキルン内で処理される原料の搬送経路の途中を意味する。
【0015】
本実施形態のロータリーキルンの操業方法を好適に適用できる熱処理装置の構成を説明した後、本実施形態の融着防止剤添加工程について説明する。
(1)熱処理装置
本実施形態のロータリーキルンの操業方法を好適に実施できるロータリーキルンを含む熱処理装置の構成例について、図1図3を用いて説明する。図1は熱処理装置10の斜視図であり、図2図1のA-A´線での断面図であり、図3図2のB-B´線での断面図である。いずれも装置の構成を説明するための模式図であり、サイズ等を正確に示すものではない。また、図2図3では後述する架線1053の記載を省略している。
(1-1)ロータリーキルンについて
図1に示した熱処理装置10は、ロータリーキルン100を有している。ロータリーキルン100の炉体となる胴体部101は、略円筒形状を有しており、該胴体部101は、図中のX軸と平行な中心軸CAを回転軸として回転可能に構成されている。ロータリーキルン100は、長手方向の一方の端部である導入端102から、長手方向の他方の端部である排出端103に向かって下方に傾斜して設けられている。このため、導入端102側から導入した原料である被処理物は、回転する胴体部101の内部を排出端側へと移動する。後述するように、排出端103側にはバーナー104が設けられており、バーナー104で焚かれた化石燃料の燃焼熱が、被処理物の移動方向とは逆に、すなわち排出端103の側から導入端102の側へと移動することで、被処理物を向流加熱する。
【0016】
ロータリーキルン100は、長手方向の一方の端部である導入端102に、投入口1021を有しており、該投入口1021から胴体部101の内部に被処理物を投入できる。
【0017】
ロータリーキルン100の長手方向の他方の端部である排出端103には、排出口1031である排出用のシュートが設けられており、胴体部101の内部で熱処理を終えた被処理物を排出できるように構成できる。熱処理を終えた被処理物は必要に応じて他の処理を行う電気炉等の装置へと搬送できる。また、排出端103には、バーナー104が設けられており、重油等の化石燃料を燃焼させ、ロータリーキルン100の胴体部101の内部に投入した被処理物等を加熱できる。
(1-2)スクープフィーダについて
熱処理装置10は、ロータリーキルン100の途中、すなわち導入端102と、排出端103との間に、スクープフィーダを有することができる。図2にスクープフィーダが設けられた位置の断面、すなわちA-A´線での断面図を示す。
【0018】
図2に示すように、ロータリーキルン100は、回転する胴体部101と、胴体部101を覆う外殻部110とを有することができる。なお、外殻部110は、胴体部101の表面全体を覆うように設ける必要は無く、例えば図1に示すように、スクープフィーダを設ける箇所等、必要な箇所にのみ設けることもできる。
【0019】
胴体部101内には、投入口1021から投入された被処理物21が導入され、胴体部101の回転に伴って排出端103側へと移動できる。
【0020】
胴体部101と外殻部110との間に空間部120が形成されており、外殻部110に設けられた添加材供給口111を介して、空間部120に添加材を供給できる。添加材供給口111には、必要に応じて各種添加材を供給する添加材供給手段221を接続しておくことができる。
【0021】
添加材供給手段221により添加する添加材は特に限定されないが、例えば還元剤や、融着防止剤から選択された1種類以上が挙げられる。
【0022】
添加材供給手段221の構成は特に限定されず、添加材供給口111側に設けられた開口部の開度を添加材の供給量にあわせて調整可能に構成し、該開口部を介して自由落下する添加材の供給量を調整できるようにしてもよい。また、例えばスクリューコンベア等の搬送手段を有し、該搬送手段による添加材の搬送速度を調整可能とし、該搬送速度により添加材の供給量を調整できるように構成してもよい。
【0023】
スクープフィーダ130は、例えば先端部131と、直線部132との間が屈曲したL字形状の管で形成できる。スクープフィーダ130の材料は特に限定されないが、スクープフィーダ130内の添加材に対して、後述するマイクロ波照射装置によりマイクロ波を照射する場合には、マイクロ波を透過できる材料であることが好ましく、例えば各種セラミックス材料を用いることができる。 スクープフィーダ130は、胴体部101と共に、例えば図2中、矢印で示すように、時計回り(右回り)に回転できる。係る回転の際に、先端部131で空間部120に供給された添加材22を掬い上げ、掬い上げた添加材22を直線部132内に通過させて胴体部101内にフィードできる。
【0024】
ロータリーキルン100において、スクープフィーダを設ける箇所は特に限定されず、ロータリーキルン100の胴体部101内部の温度分布や、添加する添加材の種類等に応じて任意の場所に設けることができる。
【0025】
スクープフィーダを設ける箇所は特に限定されない。例えば排出端103からスクープフィーダを設けた外殻部110の導入端102側の端部までの距離L110は、ロータリーキルン100の胴体部101長手方向の長さL101の5%以上95%以下が好ましく、10%以上90%以下がより好ましい。
(1-3)マイクロ波照射装置について
マイクロ波照射装置105は、スクープフィーダ130から投入される添加材に対してマイクロ波を照射するように構成できる。マイクロ波照射装置105は、マイクロ波を発振する発振機1051と、発振機1051で発振したマイクロ波を、スクープフィーダ内を含むロータリーキルン内に導波する導波路23とを有することができる。
【0026】
発振機1051は、マイクロ波を発振できる装置であればよく、例えばジャイロトロンや、マグネトロン、クライストロン、進行波管等を用いることができる。本明細書において、マイクロ波とは周波数が300MHz以上30GHz以下の電磁波を意味するが、発振機1051が発振するマイクロ波の周波数は、電波法等の法規に沿って、加熱に用いることができ、かつ用いる添加材等に応じて選択した周波数のマイクロ波を用いることができる。発振機1051の出力は特に限定されず、添加材の種類や、加熱する温度等に応じて選択でき、例えば1kW以上の出力であることが好ましい。
【0027】
発振機1051は、図1等に示すようにロータリーキルン100の胴体部101の回転を阻害しないように設けることが好ましく、例えば図1に示すように胴体部101の外表面に設けることができる。なお、発振機1051や、導波路23については、ロータリーキルン100の熱により破損しないようにその表面に断熱材等を設けておくことが好ましい。
【0028】
導波路23は、一方の端部が発振機1051と接続され、他方の端部23Aは、ロータリーキルン100内に配置される。導波路23は、マイクロ波を導波できればよく、その構成は特に限定されないが、例えば管状の導波管や、電線とすることができる。導波路が導波管の場合、導波管内部に原料や添加材が入らないように、ロータリーキルン100内に配置された端部23Aには、マイクロ波透過板を配置することが好ましい。マイクロ波透過板の材料は特に限定されないが、例えば石英、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0029】
そして、導波路23のロータリーキルン100内に配置された端部23Aからは、該導波路23を通過したマイクロ波を照射できる。このため、導波路23のロータリーキルン100内に配置された端部23Aは、添加材22がスクープフィーダ130を通過し、ロータリーキルン100内の原料に投入されるまで間に、マイクロ波を照射できる位置に配置されることが好ましい。なお、添加材22がスクープフィーダ130を通過し、ロータリーキルン100内の原料に投入されるまで間とは、添加材22がスクープフィーダ130により掬い取られ、スクープフィーダ130内に収容されてから、原料と接するまでの間を意味する。
【0030】
マイクロ波照射装置105は、ロータリーキルン100内に配置された導波路23の端部23Aの位置を変更する位置変更装置24を有することもできる。位置変更装置24の構成は特に限定されない。例えばロータリーキルン100の胴体部101の外表面から端部23Aを支持する棒状体を有し、該棒状体の位置を変化させることで端部23Aの位置を変化させるように構成してもよい。この場合、導波路23は変形可能に構成されていることが好ましい。
【0031】
また、マイクロ波照射装置105の発振機1051に電力を供給するため、マイクロ波照射装置105は、架線1053と、集電装置1052とを有することもできる。架線1053は、ロータリーキルン100の外周に沿って配置でき、図示しない電力供給源と接続しておくことができる。集電装置1052は、架線1053と接することで架線1053を介して電力を取得できる。集電装置1052の構成は特に限定されないが、例えば架線1053と接する導電性の摺動部と、該摺動部の位置を変位させ、架線1053に押し当てる伸縮部とを有することができ、電車等で用いられるパンタグラフと同様の構成にできる。
【0032】
図1図3において、マイクロ波照射装置105を一方のスクープフィーダ130の近傍に1台配置した例を示しているが、もう一方のスクープフィーダ130の近傍にも同様にして配置することが好ましい。
(2)ロータリーキルンの運転条件について
ロータリーキルンの運転条件は特に限定されず、被処理物の種類や実施する処理等に応じて任意に選択できる。
【0033】
既述のように、熱処理装置10は還元処理等を行うこともできる。
【0034】
ロータリーキルン100の回転数、すなわちロータリーキルン100を構成する胴体部101の回転数についても特に限定されないが、例えば0.5rpm以上1.5rpm以下程度であることが好ましい。
【0035】
ロータリーキルン100の回転数を0.5rpm以上とすることで、ロータリーキルン100内の撹拌力を十分に高め、途中で投入した添加材等を露出させながら反応を十分に進行させることができる。また、ロータリーキルン100の回転数を0.5rpm以上とすることで、高温となるキルン本体が軟化した場合の自重変形を小さくすることができる。
【0036】
また、ロータリーキルンの回転数を1.5rpm以下とすることで、ロータリーキルン100内に導入された被処理物等がロータリーキルン100内に十分な時間留まることができ、所望の熱処置時間を確保できる。
(3)各工程について
(3-1)添加材投入工程
添加材投入工程では、既述のスクープフィーダを介してロータリーキルン内、具体的には被処理物の熱処理を行っている胴体部内の原料に添加材を投入できる。
【0037】
添加材投入工程は、添加する添加材の種類等に応じて任意のタイミングで実施できる。
(添加材について)
添加材投入工程で添加する添加材の種類は特に限定されず、既述のように還元剤や、融着防止剤から選択された1種類以上が挙げられる。添加材は特に還元剤を含むことが好ましい。
【0038】
還元剤としては、石炭や、木質ペレット、廃プラスチック等の炭素含有材料が挙げられる。特に、本実施形態のロータリーキルンの操業方法によれば、添加材加熱工程において、添加材にマイクロ波を照射し、加熱することができる。このため、従来であれば前処理等により水分や、揮発成分を除去する必要があった還元剤について、前処理を行うことなく用いることもでき、特に高い効果を発揮できる。このため、添加剤として、例えば木質ペレットや、廃プラスチック等を好適に用いることができる。
【0039】
通常、還元処理を行う場合には、ロータリーキルン100の胴体部101内の雰囲気を還元雰囲気に保つため、空気を供給することは行われていない。しかし、還元剤として揮発成分を多く含む材料を用いる場合には、例えば空気を、スクープフィーダ130を介して胴体部101内に供給し、加熱することで分離した可燃性ガスをロータリーキルン100の胴体部101内に供給するように構成しても良い。
【0040】
また、融着防止剤は、ロータリーキルン100の内壁に被処理物が付着し、リング状に成長することを抑制できる材料であればよく、例えば高融点のセラミックス材料を好適に用いることができる。高融点のセラミックス材料を融着防止剤として用いることで、例えば溶融状態の被処理物をコートし、被処理物が炉の内壁に付着し、リング状の付着物が成長することを抑制できる。
【0041】
融着防止剤は、被処理物の成分に悪影響を与えないように、被処理物に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムから選択された1種類以上を含むことが好ましい。
(原料について)
本実施形態のロータリーキルンの操業方法に供する原料である被処理物は特に限定されず、例えば各種金属成分を含む鉱石や、セラミックス原料を挙げることができる。
【0042】
特に、被処理物としては、各種鉱石を挙げることができる。特に、精錬を行うことが求められる金属の鉱石は一般的に水分を多く含み、酸化されている。そして、本実施形態のロータリーキルンの操業方法によれば、従来では使用することが困難であった各種還元剤を用い、乾燥と還元とを効率的に行うことができるため、被処理物としては、金属の鉱石を含むことが好ましい。なお、被還元物は金属の鉱石から構成されてもよい。
【0043】
金属の鉱石が含む金属は特に限定されないが、例えば非鉄金属を含む金属であることが好ましく、ニッケル、亜鉛等から選択された1種類以上の金属を含む鉱石であることがより好ましい。
【0044】
フェロニッケル精錬において、原料のニッケル酸化鉱に付着した水分の一部をドライヤーで除去した鉱石(乾燥鉱石)に対して、さらに乾燥処理と、還元処理とを施す場合がある。このため、本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、原料である被処理物としてニッケル酸化鉱を好適に用いることができる。
【0045】
ニッケル酸化鉱(酸化ニッケル鉱石)としては、特に限定されないが、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。このガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱換算でNi品位が2.1質量%以上2.5質量%以下、Fe品位が11質量%以上23質量%以下、MgO品位が20質量%以上28質量%以下、SiO品位が29質量%以上39質量%以下、CaO品位が0.5質量%未満、灼熱減量が10質量%以上15質量%以下、の例が挙げられる。
【0046】
なお、被処理物は事前に予備乾燥を行い、一部の付着水分を低減、除去しておくこともできる。
(3-2)添加材加熱工程
添加材加熱工程では、スクープフィーダを通過し、ロータリーキルン内に投入される間に、添加材にマイクロ波を照射して加熱できる。
【0047】
添加材加熱工程では、既述のマイクロ波照射装置105を用いて、導波路23の端部23Aからマイクロ波を照射できる。なお、図2図3では、スクープフィーダ130の途中に導波路23の端部23Aを配置した例を示しているが、係る形態に限定されず、例えばスクープフィーダ130の胴体部101側の端部近傍に配置し、スクープフィーダ130から排出される添加材に対してマイクロ波を照射しても良い。また、添加材だけではなく、ロータリーキルン内の気相部分にある原料等の微粉に対しても併せてマイクロ波を照射しても良い。
【0048】
また、図1図3では、マイクロ波照射装置105を一方のスクープフィーダ130の近傍に1台配置した例を示しているが、もう一方のスクープフィーダ130の近傍にも同様にして配置し、添加材に対してマイクロ波を照射できる。
【0049】
用いるマイクロ波の周波数は既述のように特に限定されず、電波法等の法規に沿って、加熱に用いることができ、かつ用いる添加材等に応じて選択できる。
【0050】
添加材加熱工程は、添加材投入工程を実施している間継続的に実施しても良く、間欠的に実施してもよい。
【0051】
また、材料によりマイクロ波の吸収特性は異なるため、添加材加熱工程では、添加材のうち、一部の成分のみがマイクロ波を吸収し、加熱されてもいい。
[熱処理装置]
本実施形態の熱処理装置は、ロータリーキルンと、ロータリーキルンの長手方向の両端部間に配置されたスクープフィーダと、スクープフィーダを介してロータリーキルン内に投入される添加材に対してマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、を有することができる。
【0052】
本実施形態の熱処理装置によれば、既述のロータリーキルンの操業方法を実施できる。このため、既に説明した事項については説明を省略する。
【0053】
本実施形態の熱処理装置は、図1図3を用いて説明したように、ロータリーキルンと、スクープフィーダと、マイクロ波照射装置とを有することができる。
【0054】
ロータリーキルン、スクープフィーダ、マイクロ波照射装置や、熱処理装置の好適な構成例については既に説明したので説明を省略する。
【0055】
以上に説明した本実施形態の熱処理装置によれば、スクープフィーダから投入される添加材に対して、マイクロ波照射装置によりマイクロ波を照射することで加熱できる。このため、ロータリーキルンの途中で添加した添加材を加熱できる。従って、添加材が揮発成分を多く含む場合や、水分を含有する場合でも、添加材を添加した際に、ロータリーキルン内の原料の熱を奪うことを抑制し、添加材と原料との反応を促進できる。
【符号の説明】
【0056】
10 熱処理装置
100 ロータリーキルン
101 胴体部
102 導入端
1021 投入口
103 排出端
1031 排出口
104 バーナー
105 マイクロ波照射装置
1051 発振機
1052 集電装置
1053 架線
110 外殻部
111 添加材供給口
120 空間部
130 スクープフィーダ
131 先端部
132 直線部
21 被処理物
22 添加材
221 添加材供給手段
23 導波路
24 位置変更装置
CA 中心軸
L110 距離
L101 長さ
図1
図2
図3