(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180211
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20231213BHJP
B42B 5/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
B65H37/04 D
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061670
(22)【出願日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2022093040
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 英治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 恵介
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108GA01
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA34
3F108HA36
3F108HA45
(57)【要約】
【課題】綴じ位置に液体付与してから圧着綴じする媒体処理装置において、製品バラツキや経年変化による液体付与量の変化を適切に補正する技術を提供する。
【解決手段】媒体処理装置は、媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、液体付与部において液体付与をされた前記媒体を含む媒体束を綴じる後処理部と、液体付与部及び後処理部の動作を制御する制御部とを備え、制御部は、記液体付与部に、媒体に設けられた複数のサンプル領域のそれぞれに、異なる液体付与量の液体を付与させる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、
前記液体付与部において液体付与をされた少なくとも一枚の前記媒体を含む媒体束を綴じる後処理部と、
前記液体付与部及び前記後処理部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体付与部に、前記媒体に設けられた複数のサンプル領域のそれぞれに、異なる液体付与量の液体を付与させることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記液体付与量の入力を受け付ける入力部を備え、
前記制御部は、
前記液体付与部に、前記入力部を通じて入力された前記液体付与量の液体を、前記媒体の液体付与位置に対して付与させ、
複数の前記媒体の液体付与位置からなる前記媒体束の綴じ位置を、前記後処理部に綴じさせることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記液体付与量の異なる複数の液体付与レベルの入力を受け付けるとともに、前記液体付与レベルに対応した液体付与量の入力を受け付け、
前記制御部は、前記液体付与部に、前記入力部が受け付けた前記液体付与レベルに対応した液体付与量の液体を、前記媒体の液体付与位置に付与させることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記液体付与量の異なる複数の液体付与レベルのうち、前記媒体の種類に対応する前記液体付与レベルの入力を受け付け、
前記制御部は、前記液体付与部に、前記入力部が受け付けた前記液体付与レベルに対応した液体付与量の液体を、前記媒体の液体付与位置に付与させることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記液体付与レベルに対応した液体付与量は、オペレータが前記入力部を介して任意に設定可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記液体付与部に、前記複数のサンプル領域のそれぞれに対して、複数の前記液体付与レベルのそれぞれに対応する前記液体付与量の液体を付与させ、
予め定められた基準レベル未満の前記液体付与レベルに対応する前記サンプル領域が濡れていることを表す入力を前記入力部を通じて受け付けた場合に、複数の前記液体付与レベルのそれぞれ対応する前記液体付与を第一液量ずつ減少させ、
前記基準レベルを超える前記液体付与レベルに対応する前記サンプル領域が濡れていないことを表す入力を前記入力部を通じて受け付けた場合に、複数の前記液体付与レベルのそれぞれ対応する前記液体付与を第二液量ずつ増加させることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された前記媒体の複数のサンプル領域のそれぞれに対して、異なる液体付与量の液体を前記液体付与部に付与させることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
前記画像形成装置は、複数の前記サンプル領域のそれぞれの位置を特定する画像を、前記媒体に形成することを特徴とする請求項7に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記画像形成装置は、複数の前記サンプル領域のそれぞれに付与される前記液体付与量を特定するための画像を形成することを特徴とする請求項7に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置によって画像が形成されたシート状の媒体を束にして綴じる処理を行う媒体処理装置が知られている。なお、シート状の媒体の例として用紙が広く知られているので、本明細書では、シート状の媒体の束に関しては複数の用紙を積層した「用紙束」を例に用いることとする。また、媒体処理装置には、省資源化や環境負荷の低減を鑑みる観点から、金属製の綴じ針を用いずに、凹凸状の綴じ歯で用紙束を挟持して加圧変形させる所謂「圧着綴じ」が可能な圧着処理部を備えるものがある。
【0003】
圧着綴じには、用紙束を構成する用紙の枚数が多いほど用紙束に綴じ歯が食い込みにくくなって、綴じた用紙が剥がれ落ちるなど、綴じ状態を適切に維持するのが困難であるという課題がある。そこで、圧着綴じを行う媒体処理装置には、綴じ歯を用紙束に食い込み易くするするために、綴じ枚数に応じた量の液体を綴じ歯が接触する位置(以下、「綴じ位置」と表記する。)に付与する液体付与処理部を備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体付与処理部の液体付与量は、媒体処理装置の製品バラツキや経年変化によって変化する。その結果、液体付与量に過不足が生じて、適切な綴じ強度を得ることができない可能性がある。しかしながら、特許文献1の技術では、綴じ枚数に応じて液体付与量を調整しているに過ぎず、前述した理由による液体付与量の変化を調整することができない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、綴じ位置に液体付与してから圧着綴じする媒体処理装置において、製品バラツキや経年変化による液体付与量の変化を 適切に補正する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、シート状の媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された複数の前記媒体を載置可能なトレイと、前記トレイに載置された前記媒体に液体を塗布する液体付与部と、前記液体付与部によって塗液された複数の前記媒体を加圧変形させて圧着綴じする圧着処理部と、前記搬送部、前記塗液処理部、及び前記圧着処理部の動作を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記トレイに載置された前記媒体の表面のうち、前記搬送方向に直交する主走査方向に離間した複数のサンプル領域それぞれに、異なる液体付与量の液体を前記液体付与部に塗布させ、複数の前記サンプル領域に液体が塗布された前記媒体を前記搬送部に排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、綴じ位置に塗液してから圧着綴じする媒体処理装置において、製品バラツキや経年変化による液体付与量の変化を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第一実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
【
図3】端綴じ処理部を搬送方向の上流側から見た模式図。
【
図4】端綴じ処理部を主走査方向の液体付与部側から見た模式図。
【
図7】端綴じ処理部の変形例に係る液体付与圧着部を示す図。
【
図8】
図7の液体付与圧着部による液体付与動作及び圧着綴じ動作を示す図。
【
図9】針綴じ処理部を搬送方向の上流側から見た模式図。
【
図10】針綴じ処理部の変形例を搬送方向の上流側から見た模式図。
【
図11】第一実施形態に係る後処理装置を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
【
図12】端綴じ処理部による綴じ処理理のフローチャート。
【
図13】端綴じ処理部による綴じ処理中における液体付与部及び圧着部の位置を示す図。
【
図14】液体付与レベル調整処理のフローチャート。
【
図15】液体付与レベル調整処理で画像形成装置によって形成される画像の例を示す図。
【
図16】液体付与レベル調整処理における端綴じ処理部の位置を示す図。
【
図20】第二実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
【
図21】第二実施形態に係る内部トレイを用紙の厚み方向から見た図。
【
図22】第二実施形態に係る圧着部を搬送方向の下流側から見た模式図。
【
図23】第二実施形態に係る液体付与部を用紙の厚み方向から見た図。
【
図26】第二実施形態に係る後処理装置の制御ブロックのハードウェア構成図。
【
図27】第二実施形態に係る後処理装置の後処理フローチャート。
【
図28】画像形成システムの変形例の全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像形成システム1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、用紙P(シート状の媒体)に画像を形成し、画像が形成された用紙Pに対して後処理を施す機能を有する。
図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、本発明に係る後処理装置3(媒体処理装置)とで構成される。
【0010】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する。画像形成装置2は、用紙Pが収容されたトレイと、トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部とを備える。画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0011】
[後処理装置3の第一実施形態]
図2は、第一実施形態に係る後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに後処理を施す。本実施形態に係る後処理の一つは、画像が形成された複数枚の用紙Pの束(シート束)を、綴じ針を用いずに綴じる「圧着綴じ処理」としての綴じ処理である。また、本実施形態に係る後処理の他の一つは、画像が形成された複数枚の用紙Pの束(シート束)を、綴じ針を用いて綴じる「針綴じ処理」としての綴じ処理である。以下、複数の用紙Pの束(媒体束)を「用紙束Pb」と表記する。
【0012】
なお、本実施形態に係る「圧着綴じ処理」とは、より詳細には、用紙束Pbの一部に相当する綴じ位置に対し圧力を加えて、当該綴じ位置を変形させて(加圧変形させて)綴じる処理であって、「圧着綴じ」と称される処理である。なお、後処理装置3において実行可能な綴じ処理は、用紙束Pbの端部を綴じる端綴じ処理と、用紙束Pbの中央部を綴じる中綴じ処理を含む。
【0013】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第一搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第二搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第三搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0014】
第一搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第二搬送路Ph2は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を通じて排出トレイ26に至る経路である。第三搬送路Ph3は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0015】
切替爪20は、第一搬送路Ph1及び第二搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第一搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第一位置と、第一搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第二搬送路Ph2に導く第二位置とに切り替え可能に構成されている。また、第二搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Pが第三搬送路Ph3に導かれる。また、後処理装置3は、各搬送路Ph1、Ph2、Ph3上の用紙Pの位置を検知する複数のセンサ(
図2に▲で示す)を備える。
【0016】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。第一搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pは、排出トレイ21に載置される。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される 用紙Pのうち、綴じ処理が施されない用紙Pが排出される。
【0017】
また、後処理装置3は、載置トレイとしての内部トレイ22(トレイ)と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、端綴じ処理部25と、針綴じ処理部155と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155は、第二搬送路Ph2を搬送される複数の用紙Pにより構成される用紙束Pbに端綴じ処理を施す。排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0018】
ここでいう「端綴じ処理」とは、用紙束Pbの主走査方向に平行な一辺に沿って綴じ処理を行う「平行綴じ処理」、用紙束Pbの角部に綴じ処理を行う「斜め綴じ処理」、用紙束Pbの搬送方向に平行な一辺に沿って綴じ処理を行う「垂直綴じ処理」が含まれる。
【0019】
以下、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かう方向を用紙Pの「搬送方向」と定義する。すなわち、本明細書における「搬送方向」とは、画像形成装置2から排出された用紙Pが、搬送ローラ対10等により、排出トレイ26の方向に移動した後に、搬送ローラ対15によってエンドフェンス23に向かう方向に相当する。また、用紙Pの厚み方向及び搬送方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0020】
第二搬送路Ph2を経由して順番に搬送される複数の用紙Pは、載置トレイとしての内部トレイ22に一時的に載置される。エンドフェンス23は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの搬送方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える。端綴じ処理部25及び針綴じ処理部155は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束Pbの端部に対して端綴じ処理を実行する。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0021】
さらに、後処理装置3は、エンドフェンス27と、中綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、中綴じ処理部28及び用紙折りブレード29は、第三搬送路Ph3を搬送される複数の用紙Pにより構成される用紙束Pbに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0022】
エンドフェンス27は、第三搬送路Ph3を順番に搬送される複数の用紙Pの搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束Pbの中央を、中綴じ処理部28に対面させる綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。中綴じ処理部28は、綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束Pbの中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に載置された用紙束Pbを半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ30に排出する。
【0023】
[端綴じ処理部25の詳細説明]
図3は、液体付与と圧着綴じ処理とを行う端綴じ処理部25を搬送方向の上流側から見た模式図である。
図4は、端綴じ処理部25を主走査方向の液体付与部31側から見た模式図である。
図3及び
図4に示すように、端綴じ処理部25は、液体付与に係る処理動作を実行する液体付与部31と、後処理手段の一例であって圧着綴じ処理を行う圧着部32とを備える。液体付与部31及び圧着部32は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。
【0024】
液体付与部31は、貯液タンク43に貯留された液体を、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに付与する。以下、用紙P又は用紙束Pbに対して液体を付与することを「液体付与」と表記し、液体付与を行うための処理を「液体付与処理」と表記する。
【0025】
ここで、液体付与するために、貯液タンク43に貯留される液体とは、さらに詳しくは、化学式「H2O」で表される水素と酸素の化合物の液体状態を主成分とするものである。液体状態であれば、その温度状態は問わず、いわゆる温水や熱水であってもよい。また、純水に限らず、精製水はもちろんのこと、イオン化した塩類が含まれていても良い。金属イオン含有量もいわゆる軟水から超硬水まで硬度は問わない。
【0026】
また主成分に加えて添加物が加えられていてもよい。水道水として用いられる残留塩素を含んでいてもよいし、着色剤・浸透剤・pH調整剤・フェノキシエタノールなどの防腐剤・グリセリンなどの乾燥防止剤等が添加されていることも望ましい。さらには、インクジェット方式の印刷装置で用いられるインクや、水性ペンに用いられるインクも成分として水を用いているので、これを「液体付与」として用いても良い。
【0027】
ここで具体的に挙げたものに限らず、次亜塩素酸水や消毒用に希釈したエタノール水溶液など広義の「水」であっても機能するが、綴じ処理後の綴じ強度を高める作用を発揮させるためだけの用途であれば入手・管理が容易な水道水を用いればよい。又、液体としては、上記に例示したような水を主成分とする液体を用いる方が、水を主成分としていない液体を用いるよりも用紙束Pbの綴じ強度を向上させることができる。
【0028】
[液体付与部31と圧着部32の構成]
液体付与部31と圧着部32は、共に、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が伝達されることによって主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与部31によって用紙P又は用紙束Pbに対して液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着部32による圧着綴じを行う予定である位置(圧着綴じ位置)に対応する。したがって、以下の説明では、液体付与位置と圧着綴じ位置には同一符号を付している。
【0029】
図3及び
図4に示すように、液体付与部31は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が伝達されることによって、圧着部32と共に主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与部31は、用紙P又は用紙束Pbの載置台としての下押圧板33と、上押圧板34と、液体付与部移動機構35と、液体付与機構36とを備える。液体付与部31の構成部品(下押圧板33、上押圧板34、液体付与部移動機構35、液体付与機構36)は、液体付与フレーム31a及びベース部材48により保持されている。
【0030】
下押圧板33及び上押圧板34は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbは、下押圧板33にも載置される。下押圧板33は、下押圧板保持体331上に設けられている。上押圧板34は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの対面する位置において、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に移動可能に構成されている。すなわち、下押圧板33及び上押圧板34は、これらが対向する空間において、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbを挟みこむように、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向において対向して配置されている。なお、以下、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向については、単に「厚み方向」と表記する。さらに、上押圧板34には、ベースプレート40に取り付けられたジョイント46を介して保持される液体付与部材44の先端部に対面する位置に、厚み方向に貫通する貫通口34aが形成されている。
【0031】
液体付与部移動機構35は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に移動させる。本実施形態に係る液体付与部移動機構35は、単一の液体付与部移動モータ37によって、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を連動して移動させる。液体付与部移動機構35は、例えば、液体付与部移動モータ3737と、台形ネジ38と、ナット39と、ベースプレート40と、柱状部材41a、41bと、コイルバネ42a、42bとを備える。
【0032】
液体付与部移動モータ37は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を移動させる駆動力を発生させる。台形ネジ38は、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に延設されると共に、液体付与フレーム31aに正逆方向に回転可能に取り付けられている。また、台形ネジ38は、プーリやベルト等を介して液体付与部移動モータ37の出力軸に接続されている。ナット39は、台形ネジ38に螺合されている。そして、液体付与部移動モータ37の駆動力が伝達されて台形ネジ38が正逆方向に回転することによってナット39が台形ネジ38上を往復移動する。
【0033】
また、ベースプレート40は、上押圧板34に対して離間した位置に配置されている。また、ベースプレート40は、液体付与部材44の先端部をベースプレート40から上押圧板34に向けて突出させた状態で、液体付与部材44を保持している。さらに、ベースプレート40は、ナット39を介して台形ネジ38に接続されており、台形ネジ38が正逆方向に回転することによって台形ネジ38に沿って往復移動可能に構成されている。そして、ベースプレート40の用紙P又は用紙束Pbの厚み方向の位置は、移動センサ40a(
図11参照)によって検知される。
【0034】
柱状部材41a、41bは、液体付与部材44の先端部の周囲において、ベースプレート40から上押圧板34に向かって突出している。また、柱状部材41a、41bは、ベースプレート40に対して厚み方向に相対移動可能に構成されている。さらに、柱状部材41a、41bは、下押圧板33側の先端部で上押圧板34を保持している。又、柱状部材41a、41bの下押圧板33と反対側の先端部には、柱状部材41a、41bがベースプレート40から外れるのを防止する抜け止めが設けられている。コイルバネ42a、42bは、ベースプレート40と上押圧板34との間において、柱状部材41a、41bに外挿されている。そして、コイルバネ42a、42bは、上押圧板34及び柱状部材41a、41bを、ベースプレート40に対して下押圧板33側に向かって付勢する。
【0035】
液体付与機構36は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに液体付与する。より詳細には、液体付与機構36は、液体付与部材44の先端部を用紙P又は用紙束Pbに接触させることによって、用紙束Pbを構成する少なくとも1枚の用紙Pに液体付与する。液体付与機構36は、貯液タンク43と、液体付与部材44と、液体供給部材45と、ジョイント46とを備える。
【0036】
貯液タンク43は、用紙P又は用紙束Pbに供給するための液体を貯留する。貯液タンク43に貯留された液体の量は、液量センサ43aによって検知される。液体付与部材44は、貯液タンク43に貯留された液体を用紙P又は用紙束Pbに付与する。液体付与部材44は、先端部を上押圧板34側に向けてベースプレート40に取り付けられている。また、液体付与部材44は、吸液率の高い多孔性の材料や、毛細管現象によって液体を吸い上げることができる繊維材により構成されている。液体付与部材44は、液体を吸い上げて保つことができる性質を有する素材であって、用紙Pに接触した状態で加えられる押圧力に応じて潰れる性質を備えるものであれば、その種類は問わない。例えば、スポンジのような発泡体でもよいし毛細管現象により液体を吸い上げることができる繊維でもよい。
【0037】
液体供給部材45は、基端が貯液タンク43に貯留された液体に浸漬され、先端部が液体付与部材44に接続された長尺の部材である。また、液体供給部材45は、例えば、液体付与部材44と同様に、吸水率の高い材料で構成されている。これにより、液体供給部材45の基端から吸収された液体が、毛細管現象によって液体供給部材45を伝わって液体付与部材44に供給される。尚、上述の説明では、液体付与部材44と液体供給部材45が別個に構成されている場合について説明したが、液体付与部材44と液体供給部材45が同様の性質をもった材料により一体的に構成されていてもよい。この場合でも、上述の説明と同様に毛細管現象によって貯液タンク43に貯留された液体を吸い上げることができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0038】
保護部材45aは、液体供給部材45に外挿される長尺の筒体(例えば、チューブ)である。保護部材45aは、液体供給部材45が吸収した液体が漏れることや、蒸発することを防止するための部材である。また、液体供給部材45及び保護部材45aは、可撓性を有する材料で形成されている。ジョイント46は、液体付与部材44をベースプレート40に固定するものである。これにより、液体付与部材44は、液体付与部移動機構35によって移動されても、ベースプレート40から上押圧板34側に向けて突出すると共に、先端が下方を向いた状態が維持される。
【0039】
また、液体付与部31の構成品を保持する液体付与フレーム31aは、その底面に駆動伝達ギヤ562aを備えた液体付与部回転軸562が固定されている。液体付与部回転軸562及び駆動伝達ギヤ562aは、液体付与フレーム31aが設けられるベース部材48に正逆方向に回転可能に保持されている。又、駆動伝達ギヤ562aは、液体付与部回動モータ563の出力ギヤ563aに噛み合っている。そして、液体付与部31は、液体付与部回動モータ563の駆動力が、出力ギヤ563a及び駆動伝達ギヤ562aを介して液体付与部回転軸562に伝達されることによって、ベース部材48上において、液体付与部回転軸562を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。
【0040】
圧着部32(後処理手段)は、用紙束Pbの液体付与部31で液体を付与された少なくとも一部分(すなわち、液体付与位置)を、凹凸状の上圧着歯32aと下圧着歯32bで挟持して加圧し変形させることによって、用紙束Pbを綴じる。以下、上圧着歯32aと下圧着歯32bによる挟持・加圧することで用紙束Pbの少なくとも一部を変形させて綴る処理及び動作を「圧着綴じ」と表記する。すなわち、圧着部32は、綴じ針などの綴じ部材を用いずに、用紙束Pbを綴じることができる。圧着部32の構成部品(上圧着歯32aと下圧着歯32b)は、圧着フレーム32cに設けられている。
【0041】
図5は、圧着部32の構成を示す模式図である。
図5に示すように、圧着部32は、一対の綴じ歯(上圧着歯32aと下圧着歯32b)を備える。上圧着歯32a及び下圧着歯32bは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbを挟むことができるように、用紙束Pbの厚み方向に対向して配置されている。上圧着歯32a及び下圧着歯32bの互いに対向する面は、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状に形成されている。また、上圧着歯32a及び下圧着歯32bは、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。そして、上圧着歯32a及び下圧着歯32bは、接離モータ32d(
図11参照)の駆動力によって接離する。
【0042】
用紙束Pbを構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、
図5(A)に示すように、上圧着歯32a及び下圧着歯32bは互いに離間している。そして、用紙束を構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に載置されると、
図5(B)に示すように、上圧着歯32a及び下圧着歯32bが噛み合って、用紙束Pbを厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に載置された用紙束Pbが圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束Pbは、搬送ローラ対15によって、排出トレイ26に排出される。
【0043】
尚、圧着部32の構成としては、圧着機構を構成する上圧着歯32a及び下圧着歯32bが噛み合えばよいので、上記にて説明をした実施形態の態様に限定されるものではない。例えば、正転のみ、又は正逆転する駆動源とリンク機構を使って上圧着歯32aと下圧着歯32bの圧着及び離間動作を行うリンク機構方式の圧着機構(例えば、特許6057167号に開示されているもの)であっても良いし、駆動源の正逆方向の回転運動を直線的な往復運動に変換するねじ機構により、上圧着歯32aと下圧着歯32bの圧着(接近)及び離間動作を直線的に行う直動方式の圧着機構であってもよい。
【0044】
また、圧着部32の構成品を保持する圧着フレーム32cは、その底面に駆動伝達ギヤ54aを備えた圧着部回転軸54が固定されている。圧着部回転軸54及び駆動伝達ギヤ54aは、圧着フレーム32cが設けられるベース部材48に正逆方向に回転可能に保持されている。又、駆動伝達ギヤ54aは、圧着部回動モータ56の出力ギヤ56aと噛み合っている。そして、圧着部32は、圧着部回動モータ56の駆動力が、出力ギヤ56a及び駆動伝達ギヤ54aを介して圧着部回転軸54に伝達されることによって、ベース部材48上において、圧着部回転軸54を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。
【0045】
また、
図3に示すように、綴じ処理部25は、端綴じ処理部移動機構47を備える。端綴じ処理部移動機構47は、内部トレイ22に載置された用紙Pの搬送方向の下流側の端部に沿って、綴じ処理部25(すなわち、液体付与部31及び圧着部32)を主走査方向に移動させる。端綴じ処理部移動機構47は、例えば、ベース部材48と、案内軸49と、端綴じ処理部移動モータ50と、駆動力伝達機構551とを備える。
【0046】
液体付与部31及び圧着部32は、主走査方向に隣接させた状態でベース部材48に取り付けられている。案内軸49は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に延設されている。また、案内軸49は、ベース部材48を主走査方向に移動可能に支持している。端綴じ処理部移動モータ50は、綴じ処理部25を移動させるための駆動力を発生させる。駆動力伝達機構551は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力を、プーリ551a、551bやタイミングベルト551cを介してベース部材48に伝達する。これにより、ベース部材48によって一体化された液体付与部31及び圧着部32は、案内軸49に沿って主走査方向に移動する。
【0047】
つまり、
図16(A)に示すように、待機位置HPは、内部トレイ22に載置された用紙Pから幅方向に外れた位置である。また、
図16(B)~
図16(D)に示すように、液体付与部31及び圧着部32は、用紙Pの厚み方向において、内部トレイ22に載置された用紙Pに対面し得る位置に、案内軸49に沿って移動することができる。
【0048】
本実施形態に係る端綴じ処理部移動モータ50は、例えば、移動の度に原点位置(例えば、後述する待機位置HP)に端綴じ処理部25を戻さなくても、端綴じ処理部25を目標位置(綴じ位置B1)に停止させることができるサーボモータである。
【0049】
また、後処理装置3は、端綴じ処理部25が待機位置HP(
図13、
図16参照)に到達したことを検知する端綴じ待機位置センサ51(例えば、遮光型の光学センサ。
図11参照。)と、端綴じ処理部移動モータ50の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサ541(
図11参照。)と、を備えている。そして、後述するコントローラ100は、端綴じ待機位置センサ44aの検知結果に基づいて、端綴じ処理部25が待機位置HPに到達したことを検知する。また、コントローラ100は、エンコーダセンサ541から出力されるパルス信号をカウントすることによって、待機位置HPから移動した端綴じ処理部25の現在位置を把握する。
【0050】
但し、端綴じ処理部25を原点位置に戻さずに目標位置に停止させる具体的な方法は、前述の例に限定されない。他の例として、後処理装置3は、予め定められた目標位置に端綴じ処理部25が到達したことを検知するセンサを備えてもよい。
【0051】
[端綴じ処理部25の変形例]
次に、
図6~
図8を参照して、後処理装置3が備える端綴じ処理部25の変形例である、後処理手段としての端綴じ処理部25´について説明する。すでに説明をした端綴じ処理部25との違いは、液体付与部31と圧着部32が一体的に構成されている点である。なお、すでに説明をした端綴じ処理部25と共通の構成要素には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【0052】
図6は、端綴じ処理部25´を搬送方向の上流側から見た模式図である。
図7(A)は、液体付与圧着部310の斜視図である。
図7(B)は、
図7(A)のA-A矢視断面図である。
図7(C)は、
図7(A)の上圧着歯32aを下圧着歯32bのある方向からみた平面図である。
図8(A)~(C)は、液体付与圧着部310による液体付与動作及び圧着綴じ動作を示す図で、搬送方向の下流側から見た模式図である。
【0053】
図6に示すように、端綴じ処理部25´は、第一実施形態に係る端綴じ処理部25の液体付与部31と圧着部32とを一体的に構成した液体付与圧着部310を備える。液体付与圧着部310は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。
【0054】
液体付与圧着部310は、貯液タンク43に貯留された液体LQを内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに付与する。液体付与圧着部310は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が駆動力伝達機構551によりベース部材48伝達されることによって、主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与圧着部310は、上押圧板34と、上圧着歯32aと、下圧着歯32bと、液体付与圧着部移動機構350と、液体供給機構360とを備える。液体付与圧着部310の各構成部品は、液体付与フレーム31a及びベース部材48により保持されている。又、液体付与フレーム31aは、その底面に駆動伝達ギヤ54a´を備えた液体付与圧着部回転軸54´が固定されている。液体付与圧着部回転軸54´及び駆動伝達ギヤ54a´は、液体付与フレーム31aが設けられるベース部材48に正逆方向に回転可能に保持されている。又、駆動伝達ギヤ54a´は、液体付与圧着部回動モータ56´の出力ギヤ56a´と噛み合っている。そして、液体付与圧着部310は、液体付与圧着部回動モータ56´の駆動力が、出力ギヤ56a´及び駆動伝達ギヤ54a´を介して液体付与圧着部回転軸54´に伝達されることによって、ベース部材48上において、液体付与圧着部回転軸54´を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。
【0055】
液体付与圧着部移動機構350は、電動シリンダ370によって、上押圧板34、ベースプレート40、及び上圧着歯32aを用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に連動して移動させる。ベースプレート40は、ジョイント46を介して上圧着歯保持部材32a1及び上圧着歯32aを保持する。又、ベースプレート40は、柱状部材41a、41bを介して上押圧板34を移動可能に保持している。そして、ベースプレート40は、連結部材401を介して電動シリンダ370のロッド371の先端部に取り付けられている。
【0056】
柱状部材41a、41bは、下端で上押圧板34を保持している。又、コイルバネ42a、42bは、ベースプレート40と上押圧板34との間において、柱状部材41a、41bに外挿されている。そして、コイルバネ42a、42bは、上押圧板34及び柱状部材41a、41bを、ベースプレート40から離間する方向に向かって付勢する。
【0057】
液体供給機構360は、貯液タンク43と、液体供給ポンプ431と、液体供給部材45を備える。液体供給ポンプ431は、液体供給部材45を介して、
図7(A)に示すように上圧着歯保持部材32a1に設けられた液溜まり部320に液体LQを供給する。液体供給部材45は、基端が液体供給ポンプ431に接続され、先端部が液溜まり部320に接続されており、長尺かつ伸縮性のある部材で構成させる。
【0058】
上圧着歯32aは、
図7(B)に示すように、上圧着歯保持部材32a1に一体的に設けられている。そして、上圧着歯保持部材32a1は、液溜まり部320と、液溜まり部320に溜められた液体LQを上圧着歯32aに供給する液体供給路321を備えている。又、上圧着歯32aの表面は、親水処理が施されており、液体供給路321から供給された液体LQが上圧着歯32aの表面に均一に行き渡るようになっている。一方、上圧着歯保持部材32a1の上圧着歯32a以外の部分は、疎水処理が施されており、液体LQが上圧着歯32aの表面に効率的に行き渡るようになっている。
【0059】
下圧着歯32bは、
図6に示すように、液体付与フレーム31aの一部である下圧着歯保持部材32b1に一体的に設けられていると共に、下圧着歯保持部材32b1を介してベース部材48上に取り付けられている。
【0060】
次に、
図8を用いて液体付与圧着部310による液体付与動作及び圧着綴じ動作について説明する。用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、
図8(A)に示すよう、上圧着歯32aと下圧着歯32bは離間している。そして、用紙Pが内部トレイ22に載置されると、電動シリンダ370を収縮させて上圧着歯32a及び上押圧板34を用紙Pに向かって移動させる。すると、
図8(B)に示すよう、上押圧板34が最初に用紙Pに当接し、その後、上圧着歯32aが上押圧板34の貫通口34aを通過して用紙Pに当接する。このとき、上圧着歯32aの表面には液体LQが行き渡っているため、上圧着歯32aを用紙Pに当接させることにより用紙Pの液体付与位置に液体が付与される。そして、液体付与位置への液体付与が完了すると、電動シリンダ370を伸長させて上圧着歯32a及び上押圧板34を用紙Pから離間する。以上説明した上圧着歯32a及び上押圧板34の用紙Pに対する接離動作が液体付与動作に相当するので、この液体付与動作を、用紙束Pbを構成する用紙Pに対して繰り返し実行する。
【0061】
その後、内部トレイ22に規定枚数の用紙Pから構成された用紙束Pbが載置されたら、電動シリンダ370を更に収縮させて上圧着歯32aを下圧着歯32bに向かって移動させる。すると、
図8(C)に示すように、上圧着歯32aと下圧着歯32bとの間に用紙束Pbが挟まれた状態で、上圧着歯32aが下圧着歯32bに向かって更に移動することになり、上圧着歯32a及び下圧着歯32bにより用紙束Pbを加圧して変形させることで用紙束Pbを圧着綴じする(圧着綴じ動作)。
【0062】
[針綴じ処理部155の説明]
次に、針綴じ処理を実行する機能を備える針綴じ処理部155の詳細について説明する。
図9は、針綴じ処理部155を搬送方向の上流側から見た模式図である。針綴じ処理部155は、綴じ針を用いて用紙束Pbを綴じる針綴じ手段62を備える。針綴じ手段62は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、端綴じ処理部25に対して主走査方向に離間して配置されている。
【0063】
後処理手段としての針綴じ手段62は、綴じ針を用いて用紙束Pbを綴じる、いわゆる「針綴じ処理」を行う構成を備えている。より詳細には、針綴じ手段62は、針綴じ部62aを駆動する針綴じ部駆動モータ62d(
図11参照)を備えている。そして、針綴じ部62aは、針綴じ部駆動モータ62dの駆動力により針綴じ部62aに装填された綴じ針を、用紙束Pbに貫通させることによって用紙束Pbを綴じる。針綴じ手段62の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0064】
また、
図9に示すように、針綴じ処理部155は、針綴じ処理部移動機構77を備える。針綴じ処理部移動機構77は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの搬送方向の下流側の端部に沿って、針綴じ処理部155を主走査方向に移動させる。針綴じ処理部移動機構77は、例えば、ベース部材78と、案内軸49と、針綴じ処理部移動モータ80と、駆動力伝達機構81とを備える。駆動力伝達機構81は、針綴じ処理部移動モータ80の駆動力を、プーリ81a、81bやタイミングベルト81cを介してベース部材78に伝達する。さらに、針綴じ手段62の構成品を保持する針綴じフレーム62bの底面には、駆動伝達ギヤ83aを備えた針綴じ手段回転軸83が固定されている。針綴じ手段回転軸83及び駆動伝達ギヤ83aは、針綴じフレーム62bが設けられるベース部材78に正逆方向に回転可能に保持されている。又、駆動伝達ギヤ83aは、針綴じ手段回動モータ82の出力ギヤ82aと噛み合っている。そして、針綴じ手段62は、針綴じ手段回動モータ82の駆動力が、出力ギヤ82a及び駆動伝達ギヤ83aを介して針綴じ手段回転軸83に伝達されることによって、ベース部材78上において、針綴じ手段回転軸83を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。
【0065】
なお、端綴じ処理部25及び針綴じ処理部155は、共通の案内軸49に支持されている。すなわち、端綴じ処理部移動機構47及び針綴じ処理部移動機構77は、共通の案内軸49に沿って端綴じ処理部25及び針綴じ処理部155を主走査方向に移動させる。さらに、端綴じ処理部移動機構47及び針綴じ処理部移動機構77は、端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155をそれぞれ独立して移動することができる。
【0066】
図10は、針綴じ処理部155の変形例としての針綴じ処理部155´を示したものであり、針綴じ処理部155´を搬送方向の上流側から見た模式図である。針綴じ処理部155´は、針綴じ手段62だけではなく、第二液体付与部612を備えている点で針綴じ処理部155と相違する。
図10に示すように、針綴じ処理部155´は、第二液体付与部612と、針綴じ手段62とを備える。第二液体付与部612及び針綴じ手段62は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。
【0067】
第二液体付与部612は、第二貯液タンク73に貯留された液体を、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbに付与する「液体付与」を実行する。第二液体付与部612によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置を含む所定の領域は、針綴じを行なう予定である綴じ位置に相当する。
図10に示すように、第二液体付与部612は、第二下押圧板63と、第二上押圧板64と、第二液体付与部移動機構65と、第二液体付与機構66とを備える。第二液体付与部移動機構65は、例えば、第二液体付与部移動モータ67と、第二台形ネジ68と、第二ナット69と、第二ベースプレート70と、第二柱状部材711(711a、711b)と、第二コイルバネ721(721a、721b)とを備える。第二液体付与機構66は、第二貯液タンク73と、第二液体付与部材74と、第三液体供給部75と、第二ジョイント76とを備える。第二液体付与機構66の構成は、液体付与機構36と共通するので、再度の説明は省略する。又、針綴じ手段62の構成は、
図9と同様なので詳細な説明は省略する。又、第二液体付与部612の回動機構は、
図3に示した液体付与部31の回動機構と共通するので再度の説明は省略する。
【0068】
図10で示した針綴じ処理部155´のように、針綴じ処理においても、用紙Pに液体付与処理を施すことで、綴じ位置をほぐして柔らかくし、綴じ針を貫通しやすくすることができる。これによって、液体付与をせずに針綴じ処理を施す場合と比較すると、用紙束Pbの一束当たりの綴じ枚数を増やすことができる。
【0069】
[後処理装置3の制御ブロック]
図11は、後処理装置3のハードウェア構成図である。
図11に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0070】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0071】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100(制御部に相当)を構成する。
【0072】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、圧着部回動モータ56、液体付与部移動モータ37、液体付与部回動モータ563、端綴じ処理部移動モータ50、針綴じ部駆動モータ62d、針綴じ手段回動モータ82、針綴じ処理部移動モータ80、移動センサ40a、液量センサ43a、待機位置センサ51、エンコーダセンサ541、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、圧着部回動モータ56、液体付与部移動モータ37、液体付与部回動モータ563、端綴じ処理部移動モータ50、針綴じ部駆動モータ62d、針綴じ手段回動モータ82、針綴じ処理部移動モータ80の動作を制御する。
【0073】
また、コントローラ100は、移動センサ40a、液量センサ43a、待機位置センサ51、エンコーダセンサ541の検知結果を取得する。なお、
図11には端綴じ処理を実行する端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155に関する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する中綴じ処理部28に関する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0074】
図1に示すように、画像形成装置2は、操作パネル110を備えている。操作パネル110は、オペレータからの入力操作を受け付ける操作部と、オペレータに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてオペレータから情報を取得し、ディスプレイを通じてオペレータに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。また、オペレータとは、後処理装置3の製造やメンテナンスを担う所謂「作業員」と、後処理装置3を使用する所謂「ユーザ」とを含む。又、後処理装置3に上記と同様の操作パネル110を備えるようにしてもよい。
【0075】
[綴じ処理の説明]
次に、後処理装置3が備える端綴じ処理部25において実行される綴じ処理の流れについて説明する。
図12は、綴じ処理のフローチャートである。
図13は、綴じ処理中における液体付与部31及び圧着部32の位置を示す図である。なお、
図10では、液体付与部31及び圧着部32の姿勢の変化については図示を省略している。又、液体付与部131によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着部32が用紙束Pbに対して圧着綴じを行う予定である綴じ位置に相当する。よって、以下において液体付与位置と綴じ位置には同一符号を付して説明する。
【0076】
コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から綴じ処理の実行指示(以下、「綴じ処理指示」と表記する。)を取得したタイミングで、
図12に示す綴じ処理を開始する。
【0077】
綴じ処理指示は、例えば、用紙Pの種類(素材や厚みなど液体の広がりに影響を与える情報)と、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数」と表記する。)と、綴じ処理を施すべき用紙束Pbの数(以下、「必要部数」と表記する。)と、用紙束Pbの綴じ位置と、端綴じ処理部25の綴じ姿勢とを含む。また、液体付与部31及び圧着部32は、綴じ処理の開始時点において、平行綴じ姿勢で、且つ内部トレイ22に載置された用紙Pから幅方向に外れた位置である待機位置HP(
図13(A))に位置しているものとする。
【0078】
まず、綴じ処理指示で指示された姿勢が「斜め綴じ姿勢」である場合は、コントローラ100は、液体付与部回動モータ563及び圧着部回動モータ56を駆動して、端綴じ処理部25を構成する液体付与部31及び圧着部32を斜め綴じ姿勢に回転させる。尚、「斜め綴じ姿勢」である場合には、圧着部32のみを斜め綴じ姿勢に回転させ、液体付与部31は回転させないようにしてもよい。これにより、液体付与部31及び圧着部32を共に正逆方向に回転させる場合に比べて駆動機構を簡素化することができるので、コストダウン、装置の小型化、及び機器の故障の低減という効果を奏する。
【0079】
一方、綴じ処理指示で指示された姿勢が「平行綴じ姿勢」である場合は、コントローラ100は、上述した端綴じ処理部25を構成する液体付与部31及び圧着部32を斜め綴じ姿勢に回転させる動作を省略する。また、コントローラ100は、
図13(B)に示すように、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、綴じ処理指示で指示された液体付与位置B1に液体付与部31が対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる(S1301)。なお、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって最初の用紙Pが内部トレイ22に搬送される前に、ステップS1301の処理を実行する。
【0080】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に収容する(S1302)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)(S1302)。
【0081】
次に、コントローラ100は、直前のステップS1302で内部トレイ22に載置された用紙Pの液体付与位置B1に対して、事前に調整された液体付与制御データに基づいて、液体付与位置B1に対面する液体付与部31に液体付与を実行させる(S1303)。すなわち、コントローラ100は、液体付与部移動モータ37を駆動して、内部トレイ22に載置された用紙Pの液体付与位置B1に液体付与部材44を接触させる(
図13(B))。
【0082】
より詳細には、コントローラ100は、綴じ処理指示で示される用紙Pの種類に対応する液体付与レベルで表される液体付与量を、HDD104から読み出す。そして、コントローラ100は、ステップS1303において、用紙Pの綴じ位置に対して、読み出した液体付与量の液体を液体付与部31に液体付与させる。すなわち、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの綴じ位置に対して、後述する液体付与量設定画面を通じて入力された液体付与量の液体を液体付与部31に液体付与させる。
【0083】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙Pの数が、綴じ処理指示で指示された所定枚数に達したか否かを判定する(S1304)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙Pの数が所定枚数に達していないと判定した場合に(S1304:No)、ステップS1302~S1303の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって内部トレイ22に用紙Pが搬送される度に、ステップS1302~S1303の処理を実行する。但し、液体付与部31による液体付与は、用紙束Pbを構成する複数の用紙Pの全てに行われる場合だけではなく、一部の用紙Pにのみ行ってもよい。例えば、コントローラ100は、n枚に1枚の間隔で、用紙Pに対して液体付与部31に液体付与させてもよい。
【0084】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙Pの数が所定枚数に達したと判定した場合に(S1304:Yes)、
図13(C)に示すように、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、圧着部32が綴じ位置B1に対面するように、綴じ処理部25を主走査方向に移動させる(S1305)。
【0085】
次に、コントローラ100は、圧着部32に、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに対して圧着綴じを実行させる(S1306)。そして、コントローラ100は、搬送ローラ対15により、圧着部32により圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する(S1307)。すなわち、コントローラ100は、接離モータ32dを駆動して、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの綴じ位置B1を、上圧着歯32a及び下圧着歯32bに挟持させる。これにより、上圧着歯32a及び下圧着歯32bの間で用紙束Pbを加圧変形させ圧圧着綴じを行う。その後、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0086】
なお、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上において、ステップS1306で上圧着歯32a及び下圧着歯32bが挟持する圧着領域(綴じ位置B1に相当)は、ステップS1303で液体付与部材44の先端部が接触した液体付与領域(液体付与位置B1に相当)に重なる。換言すれば、圧着部32は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbにおいて、液体付与部31によって液体が付与された領域を圧着綴じする。尚、上圧着歯32a及び下圧着歯32bが挟持する圧着領域は、液体付与部材44の先端部が接触した液体付与領域に完全に重なっている必要はなく、部分的に重なっている場合でも充分な綴じ強度を得ることができる。
【0087】
次に、コントローラ100は、排出された用紙束Pbの数が、綴じ処理指示で示された必要部数に達したか否かを判定する(S1308)。コントローラ100は、必要部数に達していないと判定した場合に(S1308:No)、ステップS1302以降の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、排出トレイ26に排出した用紙束Pbの数が、必要部数に達するまで、ステップS1302~S1307の処理を繰り返し実行する(S1308:No)。
【0088】
そして、コントローラ100は、排出トレイ26に排出された用紙束Pbの数が、必要部数に達したと判定した場合に(S1308:Yes)、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、
図13(A)に示すように端綴じ処理部25を待機位置HPに移動させる(S1309)。また、綴じ処理指示で指示された姿勢が「斜め綴じ姿勢」である場合に、コントローラ100は、液体付与部回動モータ563及び圧着部回動モータ56を駆動して、液体付与部31及び圧着部32を平行綴じ姿勢に回転させる(S1309)。一方、綴じ処理指示で指示された姿勢が「平行綴じ姿勢」である場合は、液体付与部31及び圧着部32を平行綴じ姿勢へ回転させる動作は省略される。これにより、液体付与部31及び圧着部32が
図13(A)の待機位置HPに戻る。なお、ステップS1301、S1309において、液体付与部31及び圧着部32の主走査方向の移動及び正逆方向の回転の実行順序は、前述の順序に限定されず、逆順であってもよい。
【0089】
[液体付与レベル調整処理の説明]
図14は、液体付与レベル調整処理のフローチャートである。
図15は、液体付与レベル調整処理で画像形成装置2によって形成される画像の例を示す図である。
図16は、液体付与レベル調整処理における綴じ処理部25の位置を示す図である。
図17は、液体付与量確認画面の画面例である。液体付与レベル調整処理は、液体付与部31によって用紙Pに付与される液体の量(以下、「液体付与量」と表記する。)を調整する処理である。液体付与レベル調整処理は、例えば、後処理装置3の製造過程やメンテナンス時などの任意のタイミングで実行される。
【0090】
HDD104には、各々に異なる液体付与量が設定された複数の液体付与レベル1~6(以下、「L1」~[L6]と表記することがある。)が記憶されている。本実施形態における液体付与量は、液体付与レベル1が最も少なく、液体付与レベル6に向かって徐々に増加し、液体付与レベル6が最も多い。但し、液体付与レベル1~6の数は、前述の例に限定されない。
【0091】
まず、コントローラ100は、液体サンプルを作成する(S701)。液体サンプルとは、複数の液体付与レベル1~6それぞれで示される液体付与量の液体が、主走査方向の異なる位置に液体付与された用紙Pを指す。換言すれば、液体サンプルは、用紙P上の主走査方向に離間した複数のサンプル領域それぞれに、複数の液体付与レベル1~6のいずれかで示される液体付与量の液体が付与されたものである。以下、
図15及び
図16を参照して、液体サンプルを作成する処理の詳細を説明する。
【0092】
コントローラ100は、液体サンプルに必要な画像を形成することを、画像形成装置2に指示する。
図15に示すように、用紙Pには、複数のサンプル領域の位置を特定するための画像(例えば、
図15(A)の長方形、
図15(B)の括弧)と、複数のサンプル領域それぞれに付与される液体の液体付与量を特定するための画像(
図15の「L1」~「L6」の文字)とが形成される。なお、サンプル領域を特定するための画像は、
図15の例に限定されず、枠、記号、図柄、またはこれらの組み合わせでよい。また、液体付与量を特定するための画像は、対応する液体付与レベルを表す文字に限定されず、数字、図柄、文字、記号、またはこれらの組み合わせでよい。
【0093】
そして、
図15(A)または
図15(B)に示す画像が形成された用紙Pが、画像形成装置2から後処理装置3に搬送される。コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に収容する。また、この時点において、綴じ処理部25は、
図16(A)に示す待機位置HPに位置しているものとする。
【0094】
次に、コントローラ100は、
図16(B)に示すように、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、液体付与部31が液体付与レベル1に対応するサンプル領域に対面するように、綴じ処理部25を主走査方向に移動させる。そして、コントローラ100は、液体付与部移動モータ37を駆動することによって、液体付与部31に、対面する液体付与レベル1に対応するサンプル領域に対して、液体付与レベル1で示される液体付与量の液体を付与させる。
【0095】
次に、コントローラ100は、
図16(C)に示すように、液体付与部31を液体付与レベル2に対応するサンプル領域に対面させ、液体付与部31に、液体付与レベル2に対応するサンプル領域に、液体付与レベル2で示される液体付与量の液体を付与させる。以下同様に、コントローラ100は、液体付与レベル3、4、5に対応するサンプル領域に、対応する液体付与レベル3、4、5で示される液体付与量の液体を液体付与部31に付与させる。さらに、コントローラ100は、
図16(D)に示すように、液体付与レベル6に対応するサンプル領域に液体付与部31を対面させ、液体付与レベル6で示される液体付与量の液体を液体付与部31に付与させる。
【0096】
すなわち、内部トレイ22に載置された用紙Pには、主走査方向に離間した複数のサンプル領域のそれぞれに対して、対応する液体付与レベルで示される液体付与量の液体が順番に付与される。これにより、液体サンプルが作成される。液体付与量を調整する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、液体付与部材44の接触回数、接触時間、または接触圧を調整することによって、液体付与量を調整することができる。そして、コントローラ100は、
図16(A)に示すように、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、綴じ処理部25を待機位置HPに移動させる。また、コントローラ100は、搬送ローラ対15によって液体サンプルとなった用紙Pを、排出トレイ26に排出させる。
【0097】
次に、コントローラ100は、変数Nを初期化(=1)する。変数Nは、液体付与レベル1~6それぞれに対応する値である(S702)。また、コントローラ100は、
図17に示す液体付与量確認画面を操作パネル110のディスプレイに表示させる(S703)。液体付与量確認画面は、例えば、「液体付与レベルNのサンプル領域は濡れていますか?」とのメッセージと、[Yes]ボタンと、[No]ボタンとを含む。
【0098】
すなわち、
図17に示すように、変数N=1のときの液体付与量確認画面は、液体付与レベル1のサンプル領域が濡れているか否かを、オペレータに確認するための画面である。オペレータは、排出トレイ26に排出された液体サンプルのうち、液体付与レベル1に対応するサンプル領域を指で触って、濡れているか否かを確認する。そして、オペレータは、液体付与レベル1に対応するサンプル領域が、濡れていると感じた場合に[Yes]ボタンを押下し、濡れていないと感じた場合に[No]ボタンを押下する。
【0099】
コントローラ100は、[Yes]ボタンまたは[No]ボタンのオペレータによる押下を、操作パネル110を通じて受け付ける(S704)。[Yes]ボタンの押下は、液体付与レベルNに対応するサンプル領域が濡れていることを表す入力の一例である。[No]ボタンの押下は、液体付与レベルNに対応するサンプル領域が濡れていないことを表す入力の一例である。
【0100】
次に、コントローラ100は、[No]ボタンの押下を受け付けた場合に(S704:No)、変数Nが6(すなわち、最大の液体付与レベル6に対応する値)に達したか否かを判定する(S705)。そして、コントローラ100は、変数Nが6未満の場合に(S705:No)、変数Nをインクリメント(+1)して(S706)、ステップS703以降の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、サンプル領域が濡れているとオペレータが判断するまで(S704:No)、液体付与量の少ないサンプル領域から順に、濡れているか否かを液体付与量確認画面を通じて確認する。一方、コントローラ100は、変数Nが6に達した場合に(S705:Yes)、後述するステップS710の処理を実行する。
【0101】
また、コントローラ100は、[Yes]ボタンの押下を受け付けた場合に(S704:Yes)、変数Nが3未満か(S707)、または変数Nが3より大きいか(S708)を判定する。N=3に対応する液体付与レベル3は、予め定められた基準レベルの一例である。なお、基準レベルは液体付与レベル3に限定されず、液体付与量が最も少ない液体付与レベル1と、液体付与レベルが最も多い液体付与レベル6以外の液体付与レベル2~5のいずれかであればよい。但し、基準レベルは、複数の液体付与レベル1~6のうちの中央に近い液体付与レベルが望ましい。
【0102】
そして、コントローラ100は、変数Nが3未満の場合、すなわち、基準レベル未満の液体付与レベル1~2に対応するサンプル領域が濡れていることを表す入力を操作パネル110を通じて受け付けた場合に(S707:Yes)、複数の液体付与レベル1~6それぞれで示される液体付与量を第一液量ずつ減少させる(S709)。一方、コントローラ100は、変数Nが3より大きい場合、すなわち、基準レベル以上の液体付与レベル3~6に対応するサンプル領域が濡れていないことを表す入力を操作パネル110を通じて受け付けた場合に(S707:No&S708:Yes)、複数の液体付与レベル1~6それぞれで示される液体付与量を第二液量ずつ増加させる(S710)。
【0103】
第一液量及び第二液量は、予め定められた液体の量(例えば、0.5ml)である。第一液量及び第二液量は、同一の値でもよいし、異なる値でもよい。そして、コントローラ100は、ステップS709、S710で更新された液体付与量を用いて、ステップS701以降の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、液体付与レベル1~6で示される新たな液体付与量の液体を、用紙Pのサンプル領域のそれぞれに付与して、新たな液体サンプルを排出トレイ26に排出する。
【0104】
そして、コントローラ100は、変数N=3のときに初めて濡れているとオペレータが判断した場合に(S708:No)、複数の液体付与レベル1~6それぞれの液体付与量をHDD104に登録して(S711)、液体付与レベル調整処理を終了する。すなわち、液体付与レベル調整処理では、液体付与レベルの低いサンプル領域から順に濡れているか否かをオペレータに確認させ、基準レベル未満のサンプル領域が濡れておらず、基準レベルのサンプル領域で初めて濡れていると判断されるまで、各液体付与レベル1~6の液体付与量を増減させて液体サンプルを作成する処理を繰り返す。
【0105】
[液体付与量設定処理の説明]
図18は、液体付与量設定処理のフローチャートである。
図19は、液体付与量設定画面の画面例である。液体付与量設定処理は、液体付与レベル1~6に対応する液体付与量をオペレータに設定させる処理と、画像が形成される用紙Pの種類と液体付与レベルとの対応関係をオペレータに設定させる処理とを含む。なお、HDD104は、画像形成装置2が画像を形成可能な用紙Pの種類(例えば、普通紙、コート紙、再生紙)のそれぞれに対して、液体付与量の異なる液体付与レベル1~6の1つを対応付けて記憶している。
【0106】
まず、コントローラ100は、
図19に示す液体付与量設定画面を、操作パネル110のディスプレイに表示させる。液体付与量設定画面は、[液体付与レベル設定]ボタンと、[液体付与量設定]ボタンとを少なくとも含む。そして、コントローラ100は、[液体付与レベル設定]ボタンまたは[液体付与量設定]ボタンの押下を、操作パネル110を通じて受け付ける(
図18のS1101/S1106)。
【0107】
次に、コントローラ100は、[液体付与レベル設定]ボタンが押下された場合に(
図18のS1101:Yes)、
図19(A)に示すように、液体付与レベルの選択を受け付ける[液体付与レベル1]~[液体付与レベル6]ボタンを、液体付与量設定画面に表示させる。次に、コントローラ100は、[液体付与レベル1]~[液体付与レベル6]ボタンの1つの選択を操作パネル110を通じて受け付けると(
図18のS1102)、選択された液体付与レベルに対応する液体付与量の設定を受け付ける領域(例えば、スピンボタン、テキストボックス)を、液体付与量設定画面に表示させる。また、コントローラ100は、例えば[液体付与レベル3]ボタンが押下された場合に、選択された液体付与レベル3に現時点で設定されている液体付与量(
図19(A)の例では、5.0ml)を、液体付与量設定画面に表示させる。また、現時点で設定されている液体付与量(
図19(A)の例では、5.0ml)は、オペレータが自らの要望に合わせて任意に液体付与量を増減させて再度設定することができるようになっている。
【0108】
次に、コントローラ100は、液体付与量の設定を操作パネル110を通じて受け付けると(
図18のS1103)、選定された液体付与量を選択された液体付与レベルに対応付けてHDD104に登録する(
図18のS1104)。そして、コントローラ100は、異なる液体付与レベルが選択された場合に(
図18のS1105:Yes)、新たに選択された液体付与レベルに対して
図18のステップS1102以降の処理を実行する。
【0109】
一方、コントローラ100は、[液体付与量設定]ボタンが押下された場合に(
図18のS1106:Yes)、用紙Pの種類(以下、「紙種」と表記する。)を選択するためのボタン(
図19の例では、[普通紙]ボタン、[コート紙]ボタン、[再生紙]ボタン)を、液体付与量選択画面に表示させる。次に、コントローラ100は、液体付与量選択画面を通じて紙種が選択されると(
図18のS1107)、液体付与レベルの選択を受け付ける[液体付与レベル1]~[液体付与レベル6]ボタンを、液体付与量設定画面に表示させる。また、コントローラ100は、例えば[普通紙]ボタンが押下された場合に、選択された紙種に現時点で対応付けられている液体付与レベル(
図19(B)の例では、液体付与レベル3)を、液体付与量選択画面に表示させる。
【0110】
次に、コントローラ100は、[液体付与レベル1]~[液体付与レベル6]ボタンの1つの選択を、操作パネル110を通じて受け付けると(
図18のS1108)、選択された紙種及び液体付与レベルを対応付けて、HDD104に登録する(
図18のS1109)。そして、コントローラ100は、異なる紙種が選択された場合に(
図18のS1110:Yes)、新たに選択された紙種に対してステップS1107以降の処理を実行する。
【0111】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0112】
上記の実施形態によれば、液体サンプルを作成することによって、液体付与レベル1~6それぞれの液体付与量をオペレータに確認させることができる。一例として、後処理装置3の製造工程で液体サンプルを作成すれば、媒体処理装置の製品バラツキを平準化することができる。他の例として、後処理装置3のメンテナンス時に液体サンプルを作成すれば、例えば液体付与部材44等の経年変化による液体付与量のバラツキを補正することができる。但し、液体サンプルを作成するタイミングは、前述の例に限定されない。
【0113】
また、上記の実施形態によれば、液体付与レベル1~6それぞれの液体付与量を、液体付与量設定画面を通じてオペレータに入力させることができる。これにより、液体サンプルを確認したオペレータの感覚で、液体付与レベル1~6毎に適切な液体付与量を設定することができる。また、後処理装置3のオペレータの好みに合わせて、液体付与レベル1~6毎の液体付与量をカスタマイズすることができる。
【0114】
なお、オペレータが主観的に液体付与量を判断する方法としては、サンプル領域の湿り気具合、液体で濡れたことによるサンプル領域の色合いの変化、着色された液体を付与した場合の色の濃さなどが考えられる。但し、液体付与量を判断する方法は、前述の例に限定されず、サンプル領域に光を照射した際の透過量に基づいて判断する方法、サンプル領域の液量をセンサで直接測定する方法なども考えられる。
【0115】
また、後処理装置3は、複数の液体付与レベル1~6を記憶していなくてもよい。すなわち、オペレータは、液体サンプル状の複数のサンプル領域のうちから液体付与量が適切なサンプル領域を選択し、選択したサンプル領域を操作パネル110を通じて入力する。そして、コントローラ100は、
図12のステップS1303において、液体付与部31に、操作パネル110を通じて入力されたサンプル領域に付与した液体付与量と同じ量の液体を、用紙Pに付与させればよい。
【0116】
また、上記の実施形態によれば、各サンプル領域が濡れているか否かをオペレータに入力させることによって、液体付与レベル1~6毎の液体付与量を増減させることができる。これにより、媒体処理装置の製品バラツキや経年変化を半自動で補正することができる。但し、
図14の液体付与レベル調整処理は、コントローラ100が実行することに限定されず、
図19(A)に示す液体付与量設定画面を通じてオペレータが手動で実行してもよい。
【0117】
また、上記の実施形態によれば、複数のサンプル領域のそれぞれの位置を特定するための画像を液体サンプルに形成することによって、液体サンプル上において液体が付与された領域の視認性が向上する。さらに、複数のサンプル領域のそれぞれに付与される液体の液体付与量を特定するための画像を液体サンプルに形成することによって、各サンプル領域に付与された液体の量の視認性が向上する。
【0118】
また、本発明は、端綴じ処理を実行する綴じ処理部25のみならず、中綴じ処理を実行する綴じ処理部28にも適用することができる。
【0119】
[後処理装置3の第二実施形態]
次に、
図20~
図28を参照して、第二実施形態に係る後処理装置3Aを説明する。なお、第一実施形態に係る後処理装置3と共通の構成要素には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【0120】
第二実施形態に係る後処理装置3Aの端綴じ処理部251は、液体付与部31と圧着部32が併設された第一実施形態に係る後処理装置3の端綴じ処理部25とは異なり、圧着部32´のみを備え、液体付与部131を搬送路の上流側に設けている。これにより、液体付与処理後に用紙Pを所定枚数プレスタックして、下流側に設けられた端綴じ処理部251の圧着部32´へ搬送することができるので、圧着部32´での綴じ処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0121】
又、搬送ローラ対10、11、14が用紙Pを搬送する方向は、上述で定義した「搬送方向」とは、逆方向であるため、「逆搬送方向」と定義する。また、逆搬送方向及び用紙Pの厚み方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。又、液体付与部131によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着部32´が用紙束Pbに対して圧着綴じを行う予定である綴じ位置に相当する。よって、以下において液体付与位置と綴じ位置には同一符号を付して説明する。
【0122】
図20は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの内部構造を示す図である。端綴じ処理部251は、
図21に示すように、圧着部32´のみを備えている。
図20に示すように、圧着部32´及び針綴じ処理部156は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。また、圧着部32´及び針綴じ処理部156は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの搬送方向の下流側の端部に対面し得る位置において、主走査方向に移動可能に構成されている。さらに、圧着部32´及び針綴じ処理部156は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの厚み方向に延びる圧着部回転軸340及び針綴じ手段回転軸84を中心に正逆方向に回転可能に構成されている。すなわち、圧着部32´及び針綴じ処理部156は、コーナー斜め綴じ、平行一箇所綴じ、平行二箇所綴じなどのように、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの主走査方向の任意の位置を、任意の角度で綴じることができる。
【0123】
また、圧着部32´は、凹凸状の上圧着歯32a、及び下圧着歯32bで用紙束Pbを加圧変形させることによって、用紙束Pbを綴じる(以下、「圧着綴じ」と表記する。)。一方、針綴じ処理部156は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの綴じ位置に綴じ針を貫通させることによって、当該用紙束Pbを針綴じすることができる。
【0124】
図21は、内部トレイ22を用紙束Pbの厚み方向から見た模式図である。
図22は、圧着部32´を搬送方向の下流側から見た模式図である。
図21に示すように、圧着部32´及び針綴じ処理部156は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。圧着部32´は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの表面に沿って主走査方向に移動可能で、且つ内部トレイ22に載置された用紙束Pbの厚み方向に延びる圧着部回転軸340を中心として、正逆方向に回転可能に構成されている。又、針綴じ処理部156についても同様に、用紙束Pbの主走査方向に移動可能で、且つ用紙束Pbの厚み方向に延びる針綴じ手段回転軸84を中心として、正逆方向に回転可能に構成されている。尚、針綴じ処理部156のその他の構成は、第一実施形態に係る後処理装置3の針綴じ処理部155(
図9参照)と同様なので詳細な説明は省略する。
【0125】
圧着部32´は、
図22に示すように、内部トレイ22より搬送方向の下流側には、ガイドレール337が主走査方向に延設されている。圧着部32´は、圧着部移動モータ238の駆動力が、プーリ240a、240b及びタイミングベルト240cを備える駆動伝達機構240により伝達されることによって、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの表面(換言すれば、ガイドレール337)に沿って、主走査方向に移動する。さらに、圧着部32´の構成品を保持する圧着フレーム32cは、その底面に駆動伝達ギヤ340aを備えた圧着部回転軸340が固定されている。圧着部回転軸340及び駆動伝達ギヤ340aは、圧着フレーム32cが設けられるベース部材48に正逆方向に回転可能に保持されている。又、駆動伝達ギヤ340aは、圧着部回動モータ239の出力ギヤ239aと噛み合っている。そして、圧着部32´は、圧着部回動モータ239の駆動力が、出力ギヤ239a及び駆動伝達ギヤ340aを介して圧着部回転軸340に伝達されることによって、内部トレイ22に載置された用紙Pの厚み方向に延びる圧着部回転軸340を中心として、ベース部材48上で正逆方向に回転する。ガイドレール337、圧着部移動モータ238、圧着部回動モータ239、圧着部回転軸340、及び駆動伝達機構240は、圧着部32´の駆動機構の一例を構成する。
【0126】
圧着部32´は、
図21(A)に示す待機位置HPと、
図21(B)及び
図21(C)に示す綴じ位置B1に対面する位置とに移動可能に構成されている。待機位置HPは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbから主走査方向の一方側に外れた位置である。綴じ位置B1は、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上の位置である。但し、綴じ位置B1の具体的な位置は、
図21の例に限定されず、用紙Pの搬送方向の下流側の端部における主走査方向の任意の位置で、かつ複数であってもよい。
【0127】
また、圧着部32´は、
図21(B)に示す平行綴じ姿勢と、
図21(C)に示す斜め綴じ姿勢とに姿勢が変化する。つまり、圧着部32´は、圧着部回転軸340を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。ここで、平行綴じ姿勢とは、上圧着歯32a及び下圧着歯32b(換言すれば、長方形の圧着綴じ痕)の長手方向が主走査方向を向く圧着部32´の姿勢である。又、斜め綴じ姿勢とは、上圧着歯32a及び下圧着歯32b(換言すれば、長方形の圧着綴じ痕)の長手方向が主走査方向に対して傾いた圧着部32´の姿勢である。
【0128】
なお、斜め綴じ姿勢における回転角度(主走査方向に対する上圧着歯32a及び下圧着歯32bの角度)は、
図21(C)の例に限定されず、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに上圧着歯32a及び下圧着歯32bが対面していれば、任意の角度でよい。
【0129】
後処理装置3Aは、液体付与部131と、パンチ孔穿設手段132(処理部)とを備える。液体付与部131及びパンチ孔穿設手段132は、内部トレイ22より逆搬送方向の上流側に配置されている。また、液体付与部131及びパンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10~19によって搬送される1枚の用紙Pに同時に対面し得る位置において、逆搬送方向にずれて配置されている。本実施形態に係る液体付与部131及びパンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10、11の間に配置されている。但し、液体付与部131及びパンチ孔穿設手段132の配置は、
図20の例に限定されない。例えば、
図28に示すように画像形成装置2と後処理装置3Aの間にインサーター6が配置されている場合は、液体付与部131を後処理装置3Aの上流側に位置するインサーター6内に設けることもできる。インサーター6としては、画像形成装置2から搬送された用紙Pとともに後処理装置3Aに搬送するプレプリント媒体を、表紙、挿入紙または仕切紙として、画像形成装置2を通さずに給紙することができる装置が挙げられる。
【0130】
又、搬送ローラ対11は、
図23(A)に示すように、液体付与部131の液体付与ヘッド146により液体が付与された用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置されている。これは、搬送ローラ対11が用紙Pを搬送する際に、複数のローラ対が、液体付与位置B1を押圧することにより液体付与位置B1の液量が減少することを防止するためである。その結果、用紙Pが、液体付与部131よりも逆搬送方向の下流側に設けられた圧着部32´に到達した時点で、液体付与位置B1の液量は、綴じ強度を維持するのに必要な液量を確保できているので、搬送過程で液体付与位置B1(綴じ位置B1に相当)の液量が減少することによる用紙束Pbの綴じ強度の低下を防止することができる。
【0131】
更に、搬送ローラ対11を構成する複数のローラ対を、用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置することにより、複数のローラ対に液体が付着して用紙Pの搬送性が悪化することや、搬送性の悪化が原因で生じる搬送ジャムを防止することができる。
【0132】
なお、以上では搬送ローラ対11についてのみ説明したが、搬送ローラ対14~15を構成する複数のローラ対も同様に、用紙Pの液体付与位置B1と主走査方向において重ならない位置に配置することが好ましい。
【0133】
液体付与部131は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに液体を付与(以下、「液体付与」と表記する。)する。パンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに、厚み方向に貫通するパンチ孔を穿つ。なお、液体付与部131に近接して設けられる処理部は、パンチ孔穿設手段132に限定されず、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pの傾き(スキュー)を補正する傾き補正部でもよい。
【0134】
図23は、第二実施形態に係る液体付与部131を用紙Pの厚み方向から見た図である。
図24は、
図23のXXV-XXVにおける断面図である。
図25は、
図23のXXVI-XXVIにおける断面図である。
図23~
図25に示すように、液体付与部131は、一対のガイド軸133a、133bと、一対のプーリ134a、134bと、無端環状ベルト135、136と、液体付与部移動モータ137と、待機位置センサ138(
図26参照)と、液体付与ユニット140とを備える。
【0135】
一対のガイド軸133a、133bは、逆搬送方向に離間した位置において、各々が主走査方向に延設されている。また、一対のガイド軸133a、133bは、後処理装置3Aの一対の側板4a、4bに支持されている。そして、一対のガイド軸133a、133bは、液体付与ユニット140を主走査方向に移動可能に支持する。
【0136】
一対のプーリ134a、134bは、逆搬送方向における一対のガイド軸133a、133bの間に配置されている。また、一対のプーリ134a、134bは、主走査方向に離間して配置されている。さらに、一対のプーリ134a、134bは、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸回りに正逆方向に回転可能に、後処理装置3Aのフレームに支持されている。
【0137】
無端環状ベルト135は、一対のプーリ134a、134bに掛け渡されている。また、無端環状ベルト135には、接続部35aによって液体付与ユニット140に接続されている。無端環状ベルト136は、プーリ134aと液体付与部移動モータ137の出力軸に固定された駆動プーリ137aとに掛け渡されている。液体付与部移動モータ137は、液体付与ユニット140を主走査方向に移動させるための駆動力を発生させる。
【0138】
液体付与部移動モータ137が回転することによって、プーリ134a及び駆動プーリ137aの間を無端環状ベルト136が周回し、プーリ134aを回転させる。また、プーリ134aが回転することによって、一対のプーリ134a、134bの間を無端環状ベルト135が周回する。これにより、液体付与ユニット140は、一対のガイド軸133a、133bに沿って主走査方向に移動する。また、液体付与部移動モータ137の回転方向を切り替えることによって、液体付与ユニット140は、主走査方向に往復移動する。
【0139】
待機位置センサ138は、液体付与ユニット140が主走査方向の待機位置に到達したことを検知し、検知結果を示す待機位置信号を後述する制御部としてのコントローラ100(
図26参照)に出力する。待機位置センサ138は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、待機位置の液体付与ユニット140は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、待機位置センサ138は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、待機位置信号を出力する。但し、待機位置センサ138の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0140】
図24に示すように、後処理装置3A内の搬送路は、用紙Pの厚み方向に離間して配置された上ガイド板5a及び下ガイド板5bによって画定される。そして、液体付与ユニット140は、上ガイド板5aに設けられた開口に対面する位置に配置されている。すなわち、液体付与ユニット140は、上ガイド板5aの開口を通じて搬送路(すなわち、用紙Pに対面し得る位置)に対面して配置されている。
【0141】
図23~
図25に示すように、液体付与ユニット140は、ベース部材141と、回転ブラケット142と、貯液タンク143と、移動手段144と、保持部材145と、液体付与ヘッド146と、柱状部材147a、147bと、押圧板148と、コイルバネ149a、149bと、付与ヘッド回動モータ150と、付与ヘッド移動モータ151(
図26参照)と、待機角度センサ152(
図26参照)とを備える。
【0142】
ベース部材141は、主走査方向にスライド可能に一対のガイド軸133a、133bに支持されている。また、ベース部材141は、接続部35aによって無端環状ベルト135に接続されている。さらに、ベース部材141は、液体付与ユニット140の構成部品142~152を支持している。
【0143】
回転ブラケット142は、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸回りに正逆方向に回転可能にベース部材141の下面に取り付けられている。また、回転ブラケット142は、付与ヘッド回動モータ150の駆動力が伝達されることによって、ベース部材141に対して正逆方向に回転する。さらに、回転ブラケット142は、貯液タンク143、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bを保持している。
【0144】
待機角度センサ152(
図26参照)は、回転ブラケット142が待機角度に到達したことを検知し、検知結果を示す待機角度信号をコントローラ100に出力する。待機角度とは、例えば、平行綴じするときの角度である。待機角度センサ152は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、待機角度の回転ブラケット142は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、待機角度センサ152は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、待機角度信号を出力する。但し、待機角度センサ152の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0145】
なお、
図23(A)に示した回転ブラケット142は、液体付与部131より下流側の圧着部32´が平行綴じする際の状態を示している。又、
図23(B)に示した回転ブラケット142は、液体付与部131より下流側の圧着部32´が斜め綴じ(角綴じ)する際の状態を示している。
【0146】
貯液タンク143は、用紙Pに付与するための液体を貯留する。移動手段144は、用紙Pの厚み方向に移動(例えば昇降)可能に貯液タンク143に取り付けられている。また、移動手段144は、付与ヘッド移動モータ151の駆動力が伝達されることによって、貯液タンク143に対して移動する。保持部材145は、移動手段144の下端に取り付けられている。液体付与ヘッド146は、保持部材145から搬送路に向けて(本実施形態では、下方)に突出している。また、液体付与ヘッド146には、貯液タンク143に貯留された液体が供給される。さらに、液体付与ヘッド146は、吸液率の高い材料(例えば、スポンジ、繊維)で構成されている。
【0147】
柱状部材147a、147bは、液体付与ヘッド146の周囲において、保持部材145から下方に突出している。また、柱状部材147a、147bは、保持部材145に対して厚み方向に相対的に移動可能に構成されている。さらに、柱状部材147a、147bは、下端で押圧板148を保持している。押圧板148には、液体付与ヘッド146に対面する位置に貫通口148aが形成されている。コイルバネ149a、149bは、保持部材145と押圧板148との間において、柱状部材147a、147bに外挿されている。そして、コイルバネ149a、149bは、柱状部材147a、147b及び押圧板148を、保持部材145から離間する方向に向かって付勢する。
【0148】
図24(A)及び
図25(A)に示すように、上ガイド板5aの開口に対面する位置に用紙Pが搬送される前の段階では、押圧板148は開口の位置または開口より上方に位置している。次に、搬送ローラ対10、11によって搬送された用紙Pの液体付与位置B1が開口に対面する位置で停止すると、付与ヘッド移動モータ151を第一の方向に回転させる。これにより、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bが一体となって下降して、押圧板148が用紙Pに当接する。なお、液体付与位置B1とは、端綴じ処理部251(すなわち圧着部32´)によって圧着綴じされる予定の位置(すなわち、綴じ位置B1)である。
【0149】
そして、押圧板148が用紙Pに当接した後も付与ヘッド移動モータ151を第一の方向に回転させることによって、コイルバネ149a、149bが圧縮されて、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、及び柱状部材147a、147bがさらに下降する。そして、
図24(B)及び
図25(B)に示すように、液体付与ヘッド146の下面が貫通口148aを通じて用紙Pに当接する。その結果、液体付与ヘッド146に含まれる液体が用紙Pに付与される。
【0150】
さらに、
図24(C)及び
図25(C)に示すように、付与ヘッド移動モータ151をさらに第一の方向に回転させることによって、液体付与ヘッド146を用紙Pにさらに強く押し付けることができる。これにより、用紙Pに対する液体付与量が増加する。すなわち、液体付与部131は、用紙Pに対する液体付与ヘッド146の押し付け力を変更することによって、液体付与量を調整することができる。
【0151】
一方、付与ヘッド移動モータ151を第一の方向と逆向きの第二の方向に回転させることによって、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bが一体となって上昇する。これにより、
図24(A)及び
図25(A)に示すように、液体付与ヘッド146及び押圧板148が用紙Pから離間する。すなわち、液体付与部131は、用紙Pに切離可能な液体付与ヘッド146を備える。
【0152】
図26は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図である。
図26に示すように、後処理装置3Aは、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0153】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3A全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0154】
後処理装置3Aは、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3Aの種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3Aに搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3Aの機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3Aの動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0155】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、圧着部移動モータ238、圧着部回動モータ239、接離モータ32d、液体付与部移動モータ137、付与ヘッド回動モータ150、付与ヘッド移動モータ151、待機位置センサ138、待機角度センサ152、パンチ孔穿設手段132、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、圧着部移動モータ238、圧着部回動モータ239、接離モータ32d、液体付与部移動モータ137、付与ヘッド回動モータ150、付与ヘッド移動モータ151、及びパンチ孔穿設手段132の動作を制御する。
【0156】
又、コントローラ100は、I/F105を通じて、待機位置センサ138、待機角度センサ152からの検知結果を取得する。なお、
図26には主に端綴じ処理を実行する端綴じ処理部251(圧着部32´)及び液体付与部131の構成部品を図示しているが、中綴じ処理を実行する中綴じ処理部28の構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0157】
操作パネル110は、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。
【0158】
図27は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの後処理のフローチャートである。具体的には、
図21に示す一箇所綴じを実行する際のフローチャートである。
【0159】
コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から後処理の実行指示(以下、「後処理指示」と表記する。)を取得したことに応じて、
図27に示す後処理を実行する。後処理指示は、例えば、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数N」と表記する。)と、綴じ処理を施すべき用紙束Pbの数(以下、「必要部数」と表記する。)と、綴じ位置B1(液体付与位置B1に相当)と、綴じ位置B1の角度(液体付与位置B1の角度に相当)と、綴じ処理の種類(平行綴じ処理、斜め綴じ処理)と、液体付与処理と並行して実行される処理(本実施形態では、パンチ孔の穿設)とを含む。なお、後処理の開始時点において、液体付与ユニット140は待機位置HP(
図21の待機位置HPに相当する位置)に位置し、回転ブラケット142は待機角度(「平行綴じ姿勢」に相当)に保持されているものとする。
【0160】
まず、コントローラ100は、液体付与部移動モータ137を駆動することによって、液体付与ユニット140(液体付与部に相当)を主走査方向に移動させることで、液体付与ヘッド146を待機位置HPから液体付与位置B1(
図21の綴じ位置B1に相当する位置)に対面し得る位置に移動させる。また、後処理指示で指示された綴じ処理の種類が「斜め綴じ処理」である場合は、コントローラ100は、付与ヘッド回動モータ150を駆動し、回転ブラケット142を回転させることで、液体付与ヘッド146を待機角度から「斜め綴じ姿勢」に対応する液体付与角度に回転させる(S801)。液体付与ヘッド146が液体付与位置B1に対面し得る位置及び液体付与角度に達したことは、液体付与部移動モータ137及び付与ヘッド回動モータ150のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。尚、後処理指示で指示された綴じ処理の種類が「平行綴じ処理」である場合は、コントローラ100は、上述した回転ブラケット142を回転させる動作を省略する。すなわち、液体付与ユニット140は、回転ブラケット142を待機角度に保持したまま主走査方向に移動する。
【0161】
又、コントローラ100は、圧着部移動モータ238を駆動することによって、
図21(A)、
図21(B)に示すように、圧着部32´を待機位置HPから綴じ位置B1に対面し得る位置に移動させる(S801)。また、後処理指示で指示された綴じ処理の種類が「斜め綴じ処理」である場合は、コントローラ100は、圧着部回動モータ239を駆動することにより、圧着部32´を待機角度から「斜め綴じ姿勢」に対応する圧着綴じ角度に回転させる(S801)。圧着部32´が、綴じ位置B1に対面し得る位置、及び圧着綴じ角度に達したことは、圧着部移動モータ238及び圧着部回動モータ239のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。尚、後処理指示で指示された綴じ処理の種類が「平行綴じ処理」である場合は、コントローラ100は、上述した圧着部32´を回転させる動作を省略する。すなわち、圧着部32´は、待機角度を保持したまま主走査方向に移動する。
【0162】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11を駆動することによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pの搬送を開始する(S802)。コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ユニット140(より詳細には、液体付与ヘッド146)に対面するまで、搬送ローラ対10、11の駆動を継続する(S803:No)。そして、コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ヘッド146に対面したことに応じて(S803:Yes)、搬送ローラ対10、11を停止する(S804)。用紙Pの液体付与位置B1が液体付与ヘッド146に対面したことは、搬送ローラ対10、11を駆動するモータのロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0163】
コントローラ100は、液体付与ユニット140によって用紙Pの液体付与位置B1に液体を付与する処理を実行する(S805)。より詳細には、コントローラ100は、付与ヘッド移動モータ151を第一の方向に回転させることによって、液体付与ヘッド146を用紙Pの液体付与位置B1に当接させる。また、コントローラ100は、用紙Pに対する液体付与量に応じて、液体付与ヘッド146の押し付け力(すなわち、付与ヘッド移動モータ151の回転量)を変更する。
【0164】
用紙Pに対する液体付与量は、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pに対して同一でもよいし、用紙P毎に異なっていてもよい。例えば、コントローラ100は、後に搬送される用紙Pほど液体付与量を減少させてもよい。また、付与ヘッド移動モータ151の回転量は、付与ヘッド移動モータ151のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0165】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を駆動することによって、用紙Pを内部トレイ22に載置する(S806)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)(S806)。
【0166】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が、後処理指示で指示された所定枚数Nに達したか否かを判定する(S807)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達していないと判定したことに応じて(S807:No)、ステップS802~S806の処理を再び実行する。
【0167】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達したと判定したことに応じて(S807:Yes)、圧着部32´に、液体付与ユニット140によって液体を付与された用紙束Pbの綴じ位置B1(液体付与位置B1に相当)を圧着綴じさせる(S808)。さらに、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する(S808)。
【0168】
そして、コントローラ100は、液体付与部移動モータ137を駆動して液体付与ユニット140を待機位置HPに移動させるとともに、圧着部移動モータ238を駆動して圧着部32´を待機位置HPに移動させる。
【0169】
また、後処理指示に複数の用紙束Pb(必要部数という)を形成する指示が含まれている場合は、
図12のステップS1308と同様に、コントローラ100は、排出トレイ26排出された用紙束Pbの数が、必要部数に達したか否かを判定する。そして、コントローラ100は、排出トレイ26排出された用紙束Pbの数が、必要部数に達していないと判定した場合には、ステップS802~S808の処理を繰り返し実行する。一方、コントローラ100は、排出トレイ26排出された用紙束Pbの数が、必要部数に達していると判断した場合には、上述したように液体付与ユニット140及び圧着部32´を待機位置HPに移動させる。
【0170】
また、上記に説明した制御方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0171】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0172】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、
前記液体付与部において液体付与をされた少なくとも一枚の前記媒体を含む媒体束を綴じる後処理部と、
前記液体付与部及び前記後処理部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体付与部に、前記媒体に設けられた複数のサンプル領域のそれぞれに、異なる液体付与量の液体を付与させることを特徴とする媒体処理装置である。
<2> 前記液体付与量の入力を受け付ける入力部を備え、
前記制御部は、
前記液体付与部に、前記入力部を通じて入力された前記液体付与量の液体を、前記媒体の液体付与位置に対して付与させ、
複数の前記媒体の液体付与位置からなる前記媒体束の綴じ位置を、前記後処理部に綴じさせることを特徴とする前記<1>に記載の媒体処理装置である。
<3> 前記入力部は、前記液体付与量の異なる複数の液体付与レベルの入力を受け付けるとともに、前記液体付与レベルに対応した液体付与量の入力を受け付け、
前記制御部は、前記液体付与部に、前記入力部が受け付けた前記液体付与レベルに対応した液体付与量の液体を、前記媒体の液体付与位置に付与させることを特徴とする前記<2>に記載の媒体処理装置である。
<4> 前記入力部は、前記液体付与量の異なる複数の液体付与レベルのうち、前記媒体の種類に対応する前記液体付与レベルの入力を受け付け、
前記制御部は、前記液体付与部に、前記入力部が受け付けた前記液体付与レベルに対応した液体付与量の液体を、前記媒体の液体付与位置に付与させることを特徴とする前記<2>または前記<3>に記載の媒体処理装置である。
<5> 前記液体付与レベルに対応した液体付与量は、オペレータが前記入力部を介して任意に設定可能であることを特徴とする前記<2>から前記<4>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<6> 前記制御部は、
前記液体付与部に、前記複数のサンプル領域のそれぞれに対して、複数の前記液体付与レベルのそれぞれに対応する前記液体付与量の液体を付与させ、
予め定められた基準レベル未満の前記液体付与レベルに対応する前記サンプル領域が濡れていることを表す入力を前記入力部を通じて受け付けた場合に、複数の前記液体付与レベルのそれぞれ対応する前記液体付与を第一液量ずつ減少させ、
前記基準レベルを超える前記液体付与レベルに対応する前記サンプル領域が濡れていないことを表す入力を前記入力部を通じて受け付けた場合に、複数の前記液体付与レベルのそれぞれ対応する前記液体付与を第二液量ずつ増加させることを特徴とする前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<7> 前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された前記媒体の複数のサンプル領域のそれぞれに対して、異なる液体付与量の液体を前記液体付与部に付与させることを特徴とする前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システムである。
<8> 前記画像形成装置は、複数の前記サンプル領域のそれぞれの位置を特定する画像を、前記媒体に形成することを特徴とする前記<7>に記載の画像形成システムである。
<9> 前記画像形成装置は、複数の前記サンプル領域のそれぞれに付与される前記液体付与量を特定するための画像を形成することを特徴とする前記<7>または前記<8>に記載の画像形成システムである。
【符号の説明】
【0173】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置(媒体処理装置)
10~19:搬送ローラ対(搬送部)
20 :切替爪
21,26,30 :排出トレイ
22 :内部トレイ
23,27 :エンドフェンス
24L,24R :サイドフェンス
25 :端綴じ処理部
28 :中綴じ処理部
29 :用紙折りブレード
31 :液体付与部
32 :圧着部
32a :上圧着歯
32b :下圧着歯
32d :接離モータ
33 :下押圧板
34 :上押圧板
34a :貫通口
35 :液体付与部移動機構
36 :液体付与機構
37 :液体付与部移動モータ
38 :台形ネジ
39 :ナット
40 :ベースプレート
40a :移動センサ
41a,41b :柱状部材
42a,42b :コイルバネ
43 :貯液タンク
43a :液量検知センサ
44 :液体付与部材
45 :液体供給部材
45a :保護部材
46 :ジョイント
47 :端綴じ処理部移動機構
48 :ベース部材
49 :案内軸
50 :端綴じ処理部移動モータ
51 :待機位置センサ
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
140 :HDD
【先行技術文献】
【特許文献】
【0174】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
また、後処理装置3は、端綴じ処理部25が待機位置HP(
図13、
図16参照)に到達したことを検知する端綴じ待機位置センサ51(例えば、遮光型の光学センサ。
図11参照。)と、端綴じ処理部移動モータ50の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサ541(
図11参照。)と、を備えている。そして、後述するコントローラ100は、端綴じ待機位置センサ
51の検知結果に基づいて、端綴じ処理部25が待機位置HPに到達したことを検知する。また、コントローラ100は、エンコーダセンサ541から出力されるパルス信号をカウントすることによって、待機位置HPから移動した端綴じ処理部25の現在位置を把握する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
第二液体付与部612は、第二貯液タンク73に貯留された液体を、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbに付与する「液体付与」を実行する。第二液体付与部612によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置を含む所定の領域は、針綴じを行なう予定である綴じ位置に相当する。
図10に示すように、第二液体付与部612は、第二下押圧板63と、
貫通口64aを備えた第二上押圧板64と、第二液体付与部移動機構65と、第二液体付与機構66とを備える。第二液体付与部移動機構65は、例えば、第二液体付与部移動モータ67と、第二台形ネジ68と、第二ナット69と、第二ベースプレート70と、第二柱状部材711(711a、711b)と、第二コイルバネ721(721a、721b)とを備える。第二液体付与機構66は、第二貯液タンク73と、第二液体付与部材74と、
保護部材75aが外挿された第三液体供給部75と、第二ジョイント76とを備える。第二液体付与機構66の構成は、液体付与機構36と共通するので、再度の説明は省略する。又、針綴じ手段62の構成は、
図9と同様なので詳細な説明は省略する。又、第二液体付与部612の回動機構は、
図3に示した液体付与部31の回動機構と共通するので再度の説明は省略する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、圧着部回動モータ56、液体付与部移動モータ37、液体付与部回動モータ563、端綴じ処理部移動モータ50、針綴じ部駆動モータ62d、針綴じ手段回動モータ82、針綴じ処理部移動モータ80、移動センサ40a、液量センサ43a、端綴じ待機位置センサ51、エンコーダセンサ541、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、圧着部回動モータ56、液体付与部移動モータ37、液体付与部回動モータ563、端綴じ処理部移動モータ50、針綴じ部駆動モータ62d、針綴じ手段回動モータ82、針綴じ処理部移動モータ80の動作を制御する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
また、コントローラ100は、移動センサ40a、液量センサ43a、
端綴じ待機位置センサ51、エンコーダセンサ541の検知結果を取得する。なお、
図11には端綴じ処理を実行する端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155に関する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する中綴じ処理部28に関する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
[綴じ処理の説明]
次に、後処理装置3が備える端綴じ処理部25において実行される綴じ処理の流れについて説明する。
図12は、綴じ処理のフローチャートである。
図13は、綴じ処理中における液体付与部31及び圧着部32の位置を示す図である。なお、図
13では、液体付与部31及び圧着部32の姿勢の変化については図示を省略している。又、液体付与
部31によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着部32が用紙束Pbに対して圧着綴じを行う予定である綴じ位置に相当する。よって、以下において液体付与位置と綴じ位置には同一符号を付して説明する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
次に、コントローラ100は、液体付与量の設定を操作パネル110を通じて受け付けると(
図18のS1103)、
設定された液体付与量を選択された液体付与レベルに対応付けてHDD104に登録する(
図18のS1104)。そして、コントローラ100は、異なる液体付与レベルが選択された場合に(
図18のS1105:Yes)、新たに選択された液体付与レベルに対して
図18のステップS1102以降の処理を実行する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0137
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0137】
無端環状ベルト135は、一対のプーリ134a、134bに掛け渡されている。また、無端環状ベルト135には、接続部135aによって液体付与ユニット140に接続されている。無端環状ベルト136は、プーリ134aと液体付与部移動モータ137の出力軸に固定された駆動プーリ137aとに掛け渡されている。液体付与部移動モータ137は、液体付与ユニット140を主走査方向に移動させるための駆動力を発生させる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
ベース部材141は、主走査方向にスライド可能に一対のガイド軸133a、133bに支持されている。また、ベース部材141は、接続部135aによって無端環状ベルト135に接続されている。さらに、ベース部材141は、液体付与ユニット140の構成部品142~152を支持している。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
操作パネル110は、オペレータからの入力操作を受け付ける操作部と、オペレータに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてオペレータから情報を取得し、ディスプレイを通じてオペレータに情報を提供する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】