(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180264
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20231214BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C03C27/12 N
C03C27/12 F
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093384
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】木村 里紗
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA03
4G061AA20
4G061AA33
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB20
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】機能フィルムを備える車両用合わせガラスの強度の低下を抑制すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる車両用合わせガラスは、第1ガラス板11と、第2ガラス板12と、第1および第2ガラス板11、12の間に設けられた中間接着層13と、中間接着層13の内部に設けられた機能フィルム15と、を有する。第1ガラス板11は、中間接着層13とは反対側の第1主面21と、中間接着層13と対向する第2主面22と、を含み、第2ガラス板12は、中間接着層13と対向する第3主面23と、中間接着層13とは反対側の第4主面24と、を含み、第4主面24に保護フィルム31を有し、保護フィルム31は、第4主面24の平面視で、少なくとも一部が機能フィルム15と重複する、または機能フィルム15の周縁との距離が0.6mm以内である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス板と、第2ガラス板と、前記第1および第2ガラス板の間に設けられた中間接着層と、前記中間接着層の内部に設けられた機能フィルムと、を有し、
前記第1ガラス板は、前記中間接着層とは反対側の第1主面と、前記中間接着層と対向する第2主面と、を含み、
前記第2ガラス板は、前記中間接着層と対向する第3主面と、前記中間接着層とは反対側の第4主面と、を含み、
前記第4主面に保護フィルムを有し、
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、少なくとも一部が前記機能フィルムと重複する、または前記機能フィルムの周縁との距離が0.6mm以内である、
車両用合わせガラス。
【請求項2】
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、少なくとも一部が前記機能フィルムと重複する、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項3】
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、全てが前記機能フィルムと重複する、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項4】
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、前記機能フィルムの端部を跨ぐように設けられている、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項5】
前記機能フィルムは、平面視で内側に凹む第1凹部を有する、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項6】
前記第1凹部の最大湾曲角度は90°以上である、請求項5に記載の車両用合わせガラス。
【請求項7】
前記機能フィルムの周縁において前記第1凹部を形成する始点と終点とを直線で結んだ寸法に対する前記保護フィルムの前記直線と平行な方向における寸法の比が0.2以上である、請求項5に記載の車両用合わせガラス。
【請求項8】
前記保護フィルムは、前記第1凹部において、前記第1ガラス板の周縁から5mm以上離間している、請求項5に記載の車両用合わせガラス。
【請求項9】
前記第1ガラス板および前記第2ガラス板の少なくとも一方は、平面視で内側に凹む第2凹部を有する、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項10】
前記保護フィルムの総厚が、0.06mm以上3.00mm以下である、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項11】
室温で引張速度が300mm/minの条件で測定した前記保護フィルムの90°はく離接着強さが15(N/25mm)である、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項12】
前記中間接着層の最薄部での総厚は1.10mm以下である、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項13】
平面視で、遮光領域と、前記遮光領域より内側の非遮光領域と、を有し、
前記保護フィルムは前記遮光領域と重複する、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項14】
前記保護フィルムは前記非遮光領域と重複する、請求項13に記載の車両用合わせガラス。
【請求項15】
前記保護フィルムは、前記遮光領域と前記非遮光領域のうち、前記遮光領域のみと重複する、請求項13に記載の車両用合わせガラス。
【請求項16】
前記機能フィルムの周縁は、前記第1ガラス板および前記第2ガラス板の少なくとも一方の周縁から10mm以上内側に位置する、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項17】
前記中間接着層は、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項18】
前記機能フィルムは、懸濁粒子デバイス、高分子分散型液晶、高分子ネットワーク液晶、ゲストホスト型液晶、フォトクロミックデバイス、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロキネティックデバイスからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の車両用合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印加電圧に応じて透過率が変化する調光ガラスの開発が進められている。このような調光ガラスは、車両用の窓ガラス等に用いることが期待されている。例えば、調光ガラスは、運転席のサンバイザー、リアドアガラスのカーテン、ルーフガラスの可動シェードの代替機能として実装が期待される。
【0003】
特許文献1には、光透過を変化させることが可能な窓ガラスに関する技術が開示されている。
【0004】
車両用合わせガラスは、2枚のガラス板と、当該2枚のガラス板の間に設けられた中間接着層と、を備える。調光ガラスは、車両用合わせガラスの中間接着層の内部に調光フィルムを設けることで構成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調光フィルム等の機能フィルムは基材を備えるため、車両用合わせガラスを平面視した際、機能フィルムが存在する領域では、車両用合わせガラスの耐衝撃性・耐貫通性が保たれる。しかしながら、機能フィルムのエッジ部分や平面視において機能フィルムが存在しない領域では、車両用合わせガラスの強度(耐衝撃性や耐貫通性など)が低下するおそれがある。
【0007】
上記課題に鑑み本発明の目的は、機能フィルムを備える車両用合わせガラスの強度の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる車両用合わせガラスは下記の構成を備える。
【0009】
[1]
第1ガラス板と、第2ガラス板と、前記第1および第2ガラス板の間に設けられた中間接着層と、前記中間接着層の内部に設けられた機能フィルムと、を有し、
前記第1ガラス板は、前記中間接着層とは反対側の第1主面と、前記中間接着層と対向する第2主面と、を含み、
前記第2ガラス板は、前記中間接着層と対向する第3主面と、前記中間接着層とは反対側の第4主面と、を含み、
前記第4主面に保護フィルムを有し、
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、少なくとも一部が前記機能フィルムと重複する、または前記機能フィルムの周縁との距離が0.6mm以内である、
車両用合わせガラス。
【0010】
[2]
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、少なくとも一部が前記機能フィルムと重複する、上記[1]に記載の車両用合わせガラス。
【0011】
[3]
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、全てが前記機能フィルムと重複する、上記[1]または[2]に記載の車両用合わせガラス。
【0012】
[4]
前記保護フィルムは、前記第4主面の平面視で、前記機能フィルムの端部を跨ぐように設けられている、上記[1]または[2]に記載の車両用合わせガラス。
【0013】
[5]
前記機能フィルムは、平面視で内側に凹む第1凹部を有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0014】
[6]
前記第1凹部の最大湾曲角度は90°以上である、上記[5]に記載の車両用合わせガラス。
【0015】
[7]
前記機能フィルムの周縁において前記第1凹部を形成する始点と終点とを直線で結んだ寸法に対する前記保護フィルムの前記直線と平行な方向における寸法の比が0.2以上である、上記[5]または[6]に記載の車両用合わせガラス。
【0016】
[8]
前記保護フィルムは、前記第1凹部において、前記第1ガラス板の周縁から5mm以上離間している、上記[5]~[7]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0017】
[9]
前記第1ガラス板および前記第2ガラス板の少なくとも一方は、平面視で内側に凹む第2凹部を有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0018】
[10]
前記保護フィルムの総厚が、0.06mm以上3.00mm以下である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0019】
[11]
室温で引張速度が300mm/minの条件で測定した前記保護フィルムの90°はく離接着強さが15(N/25mm)以上である、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0020】
[12]
前記中間接着層の最薄部での総厚は1.10mm以下である、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0021】
[13]
平面視で、遮光領域と、前記遮光領域より内側の非遮光領域と、を有し、
前記保護フィルムは前記遮光領域と重複する、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0022】
[14]
前記保護フィルムは前記非遮光領域と重複する、上記[13]に記載の車両用合わせガラス。
【0023】
[15]
前記保護フィルムは、前記遮光領域と前記非遮光領域のうち、前記遮光領域のみと重複する、上記[13]に記載の車両用合わせガラス。
【0024】
[16]
前記機能フィルムの周縁は、前記第1ガラス板および前記第2ガラス板の少なくとも一方の周縁から10mm以上内側に位置する、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0025】
[17]
前記中間接着層は、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【0026】
[18]
前記機能フィルムは、懸濁粒子デバイス、高分子分散型液晶、高分子ネットワーク液晶、ゲストホスト型液晶、フォトクロミックデバイス、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロキネティックデバイスからなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、機能フィルムを備える車両用合わせガラスの強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態にかかる車両用合わせガラスの構成例を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる車両用合わせガラスの構成例を示す断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる車両用合わせガラスの構成例を示す断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる車両用合わせガラスの構成例を示す断面図である。
【
図5】実施の形態にかかる車両用合わせガラスの構成例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態にかかる車両用合わせガラスの平面図である。
【
図9】凹部の最大湾曲角度を説明するための図である。
【
図10】実施例にかかる車両用合わせガラスの平面図である。
【
図11】車両用合わせガラスの試験方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる車両用合わせガラスの構成例を示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる車両用合わせガラス1は、第1ガラス板11、第2ガラス板12、第1および第2ガラス板11、12の間に設けられた中間接着層13_1、13_2、および中間接着層13_1、13_2の内部に設けられた機能フィルム15を有する。
【0030】
本実施の形態にかかる車両用合わせガラス1は、例えば車両窓として使用できる。車両窓としては、例えばルーフガラス、ウインドシールド、リアウインドウ、嵌め込み窓等を含む。車両用合わせガラス1は特に車両のルーフガラスに好適に適用できる。なお、以下では、「車両用合わせガラス」を単に「合わせガラス」とも記載する。また、以下では中間接着層13_1、13_2を総称して中間接着層13とも記載する。
【0031】
本実施の形態にかかる合わせガラス1は、平面状でもよく、曲面状でもよい。また、平面と曲面の両方を含む形状でもよい。第1ガラス板11と第2ガラス板12はそれぞれ平板でも湾曲板でもよいが、少なくとも一方は湾曲しているほうが車両用合わせガラスの強度を確保しやすいため好ましく、両方とも湾曲しているほうがより好ましい。湾曲板は、一方向に湾曲した単曲形状でもよく、二方向以上に湾曲した三次元形状でもよい。三次元形状は、例えば、直交する2方向に湾曲する複曲形状でもよい。以下の例では、第1ガラス板11および第2ガラス板12をともに平板で構成した場合について説明するが、少なくとも一方を湾曲板で構成した場合にも同様の説明が適用できる。
【0032】
第1ガラス板11と第2ガラス板12の平面視での外縁形状は、任意の形状として構わないが、例えば、矩形状や台形状、および三角形状が好ましい。なお、第1ガラス板11と第2ガラス板12の平面視での外縁形状は、部分的に後述する凹部を含んでもよい。
【0033】
第1ガラス板11は、中間接着層13とは反対側の第1主面21と、中間接着層13と対向する第2主面22と、を含む。第2ガラス板12は、中間接着層13と対向する第3主面23と、中間接着層13とは反対側の第4主面24と、を含む。例えば、第1ガラス板11の第1主面21は車外側に配置され、第2ガラス板12の第4主面24は車内側に配置される。
【0034】
第1および第2ガラス板11、12は、例えば、透明な無機ガラスを用いて構成できる。第1および第2ガラス板11、12には、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等を用いてもよい。また、第1および第2ガラス板11、12は、有機ガラス(樹脂)を用いてもよい。有機ガラスには、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等を用いてもよい。
【0035】
第1および第2ガラス板11、12の各々の厚さは、例えば、0.1mm~10mmであり、耐飛び石衝撃性の観点から0.3mm~3.0mmが好ましく、1.1mm~2.6mmがより好ましく、1.7mm~2.1mmが一層好ましい。第1および第2ガラス板11、12の厚さは互いに同じでもよく、また互いに異なっていてもよい。例えば、車外側に配置される第1ガラス板11の厚さを車内側に配置される第2ガラス板12の厚さよりも厚くしてもよい。このように車外側に配置される第1ガラス板11の厚さを厚くした場合は、合わせガラス1に向かって飛来してくる物体に対して、合わせガラス1の強度が向上する。
【0036】
中間接着層13_1、13_2は、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に挟持されるように配置されている。換言すると、第1ガラス板11と第2ガラス板12は中間接着層13_1、13_2を用いて接着されている。具体的には、合わせガラス1を形成する際、第1ガラス板11、中間接着層13_1、機能フィルム15、中間接着層13_2、第2ガラス板12の順に積層し、この積層体を加熱加圧して圧着することで合わせガラス1を形成する。このとき、中間接着層13_1、13_2は加熱されて溶融するので、完成後の合わせガラス1において、中間接着層13_1、13_2は1層構成になる。なお、中間接着層13_1、と中間接着層13_2の間に額縁状の中間接着層(不図示)を機能フィルム15の周囲を取り囲むように配置してもよい。その場合、合わせガラス1において、中間接着層13_1、13_2および額縁状の中間接着層は1層構成になる。
【0037】
中間接着層13_1は、第1ガラス板11の第2主面22と直接接していてもよい。また、第1ガラス板11の第2主面22と中間接着層13_1との間に他の部材(コーティング等)が設けられていてもよい。同様に、中間接着層13_2は、第2ガラス板12の第3主面23と直接接していてもよい。また、第2ガラス板12の第3主面23と中間接着層13_2との間に他の部材(コーティング等)が設けられていてもよい。
【0038】
例えば、中間接着層13の最薄部での総厚、つまり中間接着層13の機能フィルム15と重複する位置での総厚は、特に限定されないが1.10mm以下が好ましい。また、最薄部での中間接着層13の厚さは、0.50mm以上が好ましく、0.76mmを超えることが好ましく、0.80mm以上がより好ましい。ここで、中間接着層13の最薄部での総厚は、
図1に示す中間接着層13_1の機能フィルム15と重複する位置での厚さt1と、中間接着層13_2の機能フィルム15と重複する位置での厚さt2と、を加算した厚さである。中間接着層13の最薄部での総厚をこの範囲とすることで、合わせガラスの透明性を確保でき、合わせガラスの重量が過度に大きくなることを抑制できる。
【0039】
中間接着層13の厚さは、最厚部で3.00mm以下が好ましく、2.80mm以下でもよく、2.60mm以下でもよく、2.00mm以下でもよく、1.60mm以下でもよく、1.30mm以下でもよい。ここで、中間接着層13の最厚部での総厚は、
図1に示す中間接着層13_1の機能フィルム15と重複しない位置での厚さと、中間接着層13_2の機能フィルム15と重複しない位置での厚さと、を加算した厚さである。言い換えれば、第1ガラス板11と第2ガラス板12の間の距離である。以上より、中間接着層13の厚さは、0.50mm以上3.00mm以下程度が好ましい。
【0040】
中間接着層13は、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含んでもよい。好ましくは、中間接着層13は、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含んでもよい。更に好ましくは、中間接着層13は、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂を含んでもよい。
【0041】
機能フィルム15は、中間接着層13_1、13_2の内部に設けられている。上述のように、合わせガラス1を形成する際、中間接着層13_1と中間接着層13_2との間に機能フィルム15を配置して加熱加圧する。よって、溶融して1層構成となった中間接着層13_1、13_2の内部に、機能フィルム15が配置された状態となる。
【0042】
本実施の形態では、機能フィルム15の周縁は、第1ガラス板11および第2ガラス板12の少なくとも一方の周縁から10mm以上内側に位置してもよい。すなわち、
図1に示すように、機能フィルム15の端部と第1および第2ガラス板11、12の端部との距離d2を10mm以上としてもよい。このとき、距離d2は12mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上としてもよい。このように、距離d2を10mm以上とした場合は、第1および第2ガラス板11、12の端部から機能フィルム15を離すことができるので、第1および第2ガラス板11、12の端部から侵入した水分等による機能フィルム15の劣化を抑制できる。距離d2の上限は特に限定されないが、合わせガラスの強度を確保しやすくするため、例えば50mm以内程度になるようにするとよい。
【0043】
機能フィルム15は、懸濁粒子デバイス(SPD:Suspended Particle Device)、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、ゲストホスト型液晶(GHLC:Guest-Host Liquid Crystal)、フォトクロミックデバイス、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロキネティックデバイスからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。機能フィルム15が調光フィルムである場合、機能フィルム15は、SPD、PDLC、PNLC、GHLCからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0044】
SPDは、懸濁粒子を含む活性層を有する部材である。例えば、活性層は透明電極が形成された透明基材に挟持され、全体としてフィルム状である。そして、活性層による光の吸収は、電極に電圧を印加することで可変である。この光の吸収は、活性層中に分散している懸濁液滴内の粒子の配列状態に基づいている。光の吸収の程度は、例えば可視光線透過率で表せる。SPDは、例えば、国際公開第2005/102688や国際公開第2012/009399により公知である。
【0045】
PDLCは、ポリマーマトリックス中に液晶液滴を分散保持した活性層を有する部材である。例えば、活性層は透明電極が形成された透明基材に挟持され、全体としてフィルム状である。そして、活性層による光の散乱は、電極に電圧を印加することで可変である。この光の散乱は、液晶液滴の配列状態に基づいている。光の散乱の程度は、例えばヘーズで表せる。PDLCは、例えば、特開平07-239465号や米国特許第4688900号公報により公知である。なお、PNLCは、樹脂成分比が小さく、液晶材料が三次元網目状のポリマーネットワーク構造に沿って配置したものである。PNLCは、例えば、米国特許第5304323号公報により公知である。
【0046】
GHLCは、分子の長軸方向と短軸方向とで光の吸収に異方性をもつ二色性色素(ゲスト)を液晶材料(ホスト)に混ぜて形成される活性層を有する部材である。例えば、活性層は透明電極が形成された透明基材に挟持され、全体としてフィルム状である。そして、活性層による光の吸収は、電極に電圧を印加することで可変である。この光の吸収は、活性層中に含まれる液晶材料と二色性色素の配向状態に基づいている。GHLCは、例えば、特許第5729092号により公知である。
【0047】
機能フィルム15の厚さは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下であり、0.1mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0048】
保護フィルム31は、第2ガラス板12の第4主面24に設けられている。保護フィルム31は、第4主面24の平面視で、少なくとも一部が機能フィルム15と重複するように設けられている。
【0049】
例えば、
図1に示すように、保護フィルム31は、機能フィルム15の端部を跨ぐように設けてもよい。保護フィルム31を設けることで、機能フィルム15のエッジ部分や平面視において機能フィルム15が存在しない領域において、合わせガラス1の強度の低下を効果的に抑制できる。例えば、保護フィルム31と機能フィルム15とが重複する箇所32の寸法d1は、1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上である。
【0050】
また、保護フィルム31は、機能フィルム15の端部を跨がないように、つまり離間して設けてもよい。その場合、保護フィルム31は、第4主面24の平面視で、機能フィルム15の周縁との距離は0mmより大きい。保護フィルム31は、第4主面24の平面視で、機能フィルム15の周縁との距離が0.6mm以内となるように設けてもよく、0.5mm以内が好ましく、0.4mm以内がより好ましく、0.3mm以内が一層好ましい。具体的には
図2に示す合わせガラス1aのように、保護フィルム31の内側の端部と機能フィルム15の周縁との距離d3が0.6mm以内となるように、保護フィルム31を設けてもよい。この場合も、保護フィルム31を設けることで、機能フィルム15のエッジ部分や平面視において機能フィルム15が存在しない領域において、合わせガラス1aの強度の低下を効果的に抑制できる。
【0051】
また、保護フィルム31は、第4主面24の平面視で、全てが機能フィルム15と重複するように設けてもよい。具体的には
図3に示す合わせガラス1bのように、保護フィルム31の全てが機能フィルム15と重複するように保護フィルム31を設けてもよい。この場合も、保護フィルム31を設けることで、機能フィルム15のエッジ部分や平面視において機能フィルム15が存在しない領域において、合わせガラス1bの強度の低下を効果的に抑制できる。なお、
図3では一例として、平面視で機能フィルム15の周縁と保護フィルム31の端部とが一致している構成例を示した。しかしながら、保護フィルム31は、第4主面24の平面視で機能フィルム15の周縁よりも内側に配置してもよく、機能フィルム15の周縁と保護フィルム31の端部(外縁)との距離を10mm以内とすることが好ましい。
【0052】
保護フィルム31は、基材と粘着層とを備える部材で構成できる。基材を構成する材料には、例えば、ポリウレタン、アイオノマー、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)、ポリカーボネート(PC)などを使用できる。粘着層を構成する材料には、例えば、アクリル系材料を使用できる。
【0053】
基材の厚さは、例えば0.05mm~2.00mmである。基材の厚さは、0.10mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましい。また、基材の厚さは、1.00mm以下が好ましく、0.50mm以下がより好ましい。粘着層の厚さは、例えば0.01mm~1.00mmである。粘着層の厚さは、0.02mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。また、粘着層の厚さは、0.80mm以下が好ましく、0.50mm以下がより好ましい。保護フィルム31の総厚(基材と粘着層とを含む厚さ)は、例えば、0.06mm~3.00mmである。保護フィルム31の総厚が0.06mm以上であれば合わせガラスの強度を効果的に向上できる。また、保護フィルム31の総厚が3.00mmであれば、保護フィルム31による段差が大きくなりすぎず、引っかかりによる剥離を抑制しやすい。保護フィルム31の総厚は、0.10mm以上が好ましく、0.20mm以上がより好ましい。また、保護フィルム31の総厚は、2.00mm以下が好ましく、1.00mm以下がより好ましい。
【0054】
また、保護フィルム31の90°はく離接着強さ、つまり、引張速度が300mm/minの条件で室温にて測定した際の保護フィルム31の90°はく離接着強さは、15(N/25mm)以上が好ましい。なお室温は23℃とし、保護フィルムを張りつける試験板は一般的なソーダライムガラスを用い、その他の条件は1999年のJIS K 6854-1に準拠してよい。保護フィルム31の90°はく離接着強さは、18(N/25mm)以上がより好ましく、20(N/25mm)以上が一層好ましい。保護フィルム31の90°はく離接着強さの上限は、例えば100(N/25mm)である。
【0055】
また、保護フィルム31の、温度23℃、引張速度1000mm/min、ダンベル5号形での最大引張力は、20N以上が好ましく、25N以上がより好ましく、30N以上が一層好ましい。その他の条件は、2017年のJIS K 6251に準拠してよい。保護フィルム31の最大引張力の上限は、例えば50Nである。
【0056】
以上で説明したように、本実施の形態にかかる合わせガラス1、1aおよび1bは、第2ガラス板12の第4主面24に保護フィルム31を設けている。そして、第4主面24の平面視で、保護フィルム31の少なくとも一部が機能フィルム15と重複するように、または保護フィルム31と機能フィルム15の周縁との距離が0.6mm以内となるように、配置している。よって、機能フィルム15のエッジ部分や平面視において機能フィルム15が存在しない領域において、合わせガラス1、1aおよび1bの強度(耐衝撃性や耐貫通性など)の低下を抑制できる。
【0057】
図4は、本実施の形態にかかる合わせガラスの構成例を示す断面図であり、合わせガラスの他の構成例を示している。
図4に示すように、合わせガラス1cは、遮光領域16を備えてもよい。つまり、合わせガラス1cは、第4主面24の平面視で、遮光領域16と、遮光領域16より内側の非遮光領域17と、を備えてもよい。この場合、保護フィルム31は遮光領域16と重複するように設けてもよい。遮光領域16を設けた場合は、保護フィルム31への紫外線等の照射を抑制できるので、合わせガラス1cの強度を長期間維持できる。
【0058】
図4に示す構成例では、保護フィルム31は、遮光領域16と非遮光領域17のうち遮光領域16のみと重複している。この場合は、保護フィルム31が非遮光領域17と重複しないため、非遮光領域(透過領域)17において歪の発生を抑制できる。よって、非遮光領域(透過領域)17の透過率を所望の透過率にできる。
【0059】
また、本実施の形態では、
図5に示す合わせガラス1dのように、保護フィルム31が、遮光領域16および非遮光領域17と重複するようにしてもよい。保護フィルム31と非遮光領域17とが重複する幅d4は、5mm以下、好ましくは3mm以下である。このように、遮光領域16と非遮光領域17の境界を保護フィルム31で覆うことで、遮光領域16と非遮光領域17の境界での強度低下を抑制できる。
【0060】
遮光領域16は、例えば第2ガラス板12の第4主面24に黒色セラミックス膜をプリントして形成してもよい。具体的には、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストを塗布し、焼成することで遮光領域16を形成してもよい。
【0061】
なお、遮光領域16を設けた場合も、
図2に示したように、保護フィルム31と機能フィルム15の周縁との距離d3が0.6mm以内となるように、保護フィルム31を設けてもよい。また、
図3に示したように、保護フィルム31の全てが機能フィルム15と重複するように保護フィルム31を設けてもよい。
【0062】
図6は、本実施の形態にかかる合わせガラス1eの平面図である。
図6に示すように、本実施の形態において機能フィルム15は、平面視で内側に凹む凹部18を有してもよい。第1および第2ガラス板11、12が湾曲している場合、凹部18を設けることで、各部材を積層して加熱加圧して圧着する際にフィルムにしわが生じることを抑制できる。
【0063】
凹部とは、平面視で、対象物の周縁上の異なる2点を結んだとき、結んでできた線分と対象物とが重複しない領域である。例えば、対象物が平面視で凹多角形状であれば、凹角(180°より大きく360°より小さい内角)を形成する部分は凹部である。凹部の平面形状は特に限定されず、例えば矩形状、台形状、三角形状、半円状、それらを組み合わせた形状でもよい。なおこの平面形状は、厳密な直線、頂点および平面のみで構成されている必要はなく、曲線や曲面を含んでもよい。
【0064】
また、
図6に示すように、第1ガラス板11および第2ガラス板12は、平面視で内側に凹む凹部19を有してもよい。この場合、第1ガラス板11および第2ガラス板12の少なくとも一方のみに凹部19を設けるようにしてもよい。また、機能フィルム15の凹部18と、第1および第2ガラス板11、12の凹部19とが、平面視した際に重なるように(つまり、周縁部の辺が同じ辺となるように)してもよい。
【0065】
図7、
図8は、
図6の破線部分の拡大平面図である。
図7、
図8に示すように、本実施の形態では、機能フィルム15の凹部18の近傍において、平面視で機能フィルム15と重複するように保護フィルム31を設ける。
図7では、矩形状の保護フィルム31を設けている例を示している。また、
図8では、凹部18に沿うような形状を備える保護フィルム31を設けている例を示している。凹部18にはせん断応力が集中しやすいため、このように凹部18の近傍に保護フィルム31を設けることで、合わせガラスの強度低下を効果的に抑制できる。
【0066】
例えば、機能フィルム15の周縁において凹部18を形成する始点P1と終点P2とを直線で結んだ寸法をL1とし、この直線と平行な方向における保護フィルム31の寸法をL2とした場合、L2のL1に対する比(L2/L1)を0.2以上とするのが好ましい。L2のL1に対する比(L2/L1)を0.2以上とすることで、合わせガラスの凹部18において合わせガラスの強度の低下を効果的に抑制できる。L2/L1は、大きい方が効果的であり、0.4以上でもよく、0.6以上でもよく、0.8以上でもよく、1.0以上でもよい。L2/L1は、保護フィルム31が合わせガラスからはみ出さなければ特に限定されないが、2.0以下程度にとどめておくことで保護フィルム31による合わせガラスの意匠性低下を抑制できる。
【0067】
対象物の周縁のうち凹部を形成する部分は、平面視で、少なくとも一部に直線および曲線を含む連続線である。始点P1と終点P2とは、それぞれこの連続線の2つの端点の一方と他方としてよい。
【0068】
また、保護フィルム31は、凹部18において、第1ガラス板11(第2ガラス板12でもよい)の周縁から5mm以上離間しているのが好ましい。つまり、
図7、
図8において第1ガラス板11(第2ガラス板12でもよい)の周縁と保護フィルム31との距離d5を5mm以上とするのが好ましい。このような構成とした場合は、第2ガラス板12の第4主面24にウレタン等の接着剤を用いて合わせガラスを車体に接着する際に、接着剤が保護フィルム31に接触することを抑制できるので、保護フィルム31の種類に依存することなく、ウレタンの接着強度を確保できる。なお、保護フィルム31は、凹部18において、第1ガラス板11(第2ガラス板12でもよい)の周縁から8mm以上離間していれば、十分に上記効果が得られる。離間距離の上限は、例えば50mmでもよいが、これに限定されず、機能フィルム15との位置関係を考慮して発明の効果を損なわない範囲であればよい。
【0069】
例えば、機能フィルム15の凹部18の最大湾曲角度は90°以上である。また、機能フィルム15の凹部18の最大湾曲角度は100°以上でもよく、130°以上でもよく、150°以上でもよい。凹部18の最大湾曲角度が大きいほど、保護フィルム31を設けたことによる、合わせガラスの強度低下を抑制する効果が大きい。最大湾曲角度の上限は、180°未満であれば特に限定されないが、例えば170°以下でもよく、160°以下でもよい。
【0070】
ここで、最大湾曲角度は、
図9に示す凹部18を形成する始点をP1、終点をP2、凹部18が最も凹んでいる点をP3とした場合、始点P1と点P3とを結んだ線分と終点P2と点P3とを結んだ線分との成す角度αで定義される角度である。
【0071】
点P3は、凹部18を構成する面(平面視においては辺)上の点であって、始点P1と終点P2を結んだ線分から、当該線分に直交する方向に最も離れた点である。なお、この条件を満たす点P3が複数ある場合、始点P1と点P3とを結んだ線分と終点P2と点P3とを結んだ線分との成す角度αが最も小さくなる点P3を真の点P3としてよい。
【0072】
なお、保護が求められる領域において、複数枚の保護フィルムを並べて使用する場合、複数枚の保護フィルムは互いに隙間がないことが好ましく、1mm以上重複することがより好ましく、3mm以上重複することが更に好ましく、5mm以上重複することが最も好ましい。
【実施例0073】
次に、本発明の実施例について説明する。
実施例にかかるサンプルとして、
図10に示す平面形状、および
図11に示す断面形状を備える合わせガラス1fを作製した。
【0074】
サンプルの外板(第1ガラス板11に対応)には、1500mm(横)×1200mm(縦)×2mm(厚さ)のフロートガラス(複曲形状)を使用した。中間接着層13には、1500mm×1200mm×0.4mmのEVA(東ソー社製、メルセンG7055)を2枚使用した。機能フィルム15には、1200mm×1100mm×0.1mmの調光フィルムを使用した。内板(第2ガラス板12に対応)には、1500mm×1200mm×2.1mmのフロートガラス(複曲形状)を使用した。合わせガラス1fの凹部の変曲点間距離(
図9の始点P1と終点P2との距離に対応)は、260mmとした。合わせガラス1fの凹部の最大湾曲角度αは130°とした。各々のサンプルの第2ガラス板12の第4主面24に保護フィルム31を設けた。なお、機能フィルム15として、凹部を備える機能フィルム15aと凹部を備えない機能フィルム15b(
図10参照)を使用した。以下、各々のサンプルの詳細について説明する。
【0075】
例1にかかるサンプルでは、合わせガラス1fの端部から機能フィルム15の端部までの距離d2(
図1参照)を40mmとした。また、例1では凹部を備えない機能フィルム15b(
図10参照)を使用した。また、保護フィルム31として、長さ100mm、幅31.5mm、厚さ0.36mmの保護フィルムAを使用した。機能フィルム15と保護フィルム31のオーバーラップ量(寸法d1:
図1参照)は5mmとした。この場合、機能フィルム15と保護フィルム31の非オーバーラップ量は26.5mmとなる。
【0076】
なお、保護フィルムAの基材はポリウレタンであり、粘着層はアクリル系材料である。基材の厚さは0.31mmであり、粘着層の厚さは0.05mmであり、保護フィルムAの総厚は0.36mmである。保護フィルムAの90°はく離接着強さ、つまり、引張速度が300mm/minの条件で室温にて測定した際の保護フィルム31の90°はく離接着強さは、19(N/25mm)であった。
【0077】
例2にかかるサンプルでは、保護フィルム31として、長さ100mm、幅29.5mm、厚さ0.36mmの保護フィルムAを使用した。機能フィルム15と保護フィルム31のオーバーラップ量(寸法d1:
図1参照)を3mmとした。この場合、機能フィルム15と保護フィルム31の非オーバーラップ量は26.5mmとなる。これ以外は、例1にかかるサンプルと同様である。
【0078】
例3にかかるサンプルでは、保護フィルム31として、長さ100mm、幅27.5mm、厚さ0.36mmの保護フィルムAを使用した。機能フィルム15と保護フィルム31のオーバーラップ量(寸法d1:
図1参照)を1mmとした。この場合、機能フィルム15と保護フィルム31の非オーバーラップ量は26.5mmとなる。これ以外は、例1にかかるサンプルと同様である。
【0079】
例4にかかるサンプルでは、凹部を備える機能フィルム15a(
図10参照)を使用した。機能フィルム15aの凹部の最大湾曲角度αは130°とした。また、合わせガラス1fの端部から機能フィルム15aの端部までの距離d2(
図11参照)を15mmとした。また、保護フィルム31として、長さ100mm、幅10mm、厚さ0.36mmの保護フィルムAを使用した。保護フィルムAの合わせガラス1fの端部に面する端は、平面視で、合わせガラス1fの端部から26.5mm内側の地点とした。つまり、保護フィルムAの幅方向の中心位置は、平面視で、後述する鉄球の落下位置と一致させた。機能フィルム15aの凹部に対する保護フィルム31のカバー率、つまり、上述したL2/L1(
図7参照)は0.38であった。機能フィルム15aと保護フィルム31のオーバーラップ量(寸法d1:
図1参照)は10mmとした。つまり、この場合は、保護フィルム31の全てが機能フィルム15aとオーバーラップする。
【0080】
例5にかかるサンプルでは、保護フィルム31として、長さ200mm、幅10mm、厚さ0.36mmの保護フィルムAを使用した。機能フィルム15aの凹部に対する保護フィルム31のカバー率、つまり、上述したL2/L1(
図8参照)は0.77であった。これ以外は、例4にかかるサンプルと同様である。
【0081】
例6にかかるサンプルでは、機能フィルム15aの凹部の最大湾曲角度αを150°とした。これ以外は、例4にかかるサンプルと同様である。
【0082】
例7にかかるサンプルでは、機能フィルム15aの凹部の最大湾曲角度αを90°とした。これ以外は、例4にかかるサンプルと同様である。
【0083】
例8にかかるサンプルとして、例1にかかるサンプルに保護フィルム31を設けないサンプルを作製した。
【0084】
例9にかかるサンプルとして、例5にかかるサンプルに保護フィルム31を設けないサンプルを作製した。
【0085】
上述のようにして作製した例1~例9にかかるサンプルに対して、2015年のJIS R 3212で定められた耐衝撃性試験を実施し、貫通の有無を調べた。具体的には、
図10に示すように、一辺が300mmの正方形を試験領域40とし、この試験領域40の落下点41に鉄球45を落下させた。ただし本試験に限っては、鉄球45の落下点41は、例1~3、8では、合わせガラス1fの端部から機能フィルム15の端部までの距離d2と一致させた(
図1参照)。また、例4~7、9では、平面視で落球と試験枠が重複しないよう、鉄球45の落下点41は、合わせガラス1fの端部から31.5mm内側の地点とした(
図11参照)。耐衝撃性試験は、各々のサンプルを試験枠43で固定して実施した。落球高さは9.14mとした。
【0086】
耐衝撃性試験の評価は下記を基準とした。
◎:10回の耐衝撃性試験のうち10回全て貫通せず、かつ保護フィルム31の剥離が30mm未満の場合
○:10回の耐衝撃性試験のうち10回全て貫通せず、かつ保護フィルム31の剥離が30mm以上の場合
△:10回の耐衝撃性試験のうち貫通しない回数が7~8回の場合
×:10回の耐衝撃性試験のうち貫通しない回数が7回未満の場合
【0087】
表1に耐衝撃性試験の結果を示す。
【0088】
【0089】
表1に示すように、例1~例3では耐衝撃性試験の評価が「◎」または「○」となり良好な結果となった。特に、機能フィルム15と保護フィルム31のオーバーラップ量が5mmの例1、および機能フィルム15と保護フィルム31のオーバーラップ量が3mmの例2では、耐衝撃性試験の評価が「◎」であった。
【0090】
また、例4~例7では、例5および例6で耐衝撃性試験の評価が「◎」となり、例4および例7で耐衝撃性試験の評価が「△」となった。例4と例5を比べると、機能フィルムの凹部に対する保護フィルムのカバー率が高い例5で、耐衝撃性試験の評価が「◎」となった。また、例6と例7を比べると、機能フィルム15の凹部の最大湾曲角度αが90°である例7において、耐衝撃性試験の評価が「△」となった。よって、凹部の最大湾曲角度αが大きいほうが耐衝撃性試験の評価が良好であるといえる。
【0091】
なお、合わせガラスが割れる時の同心円状の変形エリアを考慮すると、保護フィルムの長さは100mmよりも長い方が好ましく、200mm以上がより好ましい。
【0092】
また、保護フィルムを設けなかった例8~例9では、耐衝撃性試験の評価が「×」であった。
【0093】
上記耐衝撃性試験では、保護フィルム31として上記で説明した保護フィルムAを使用した。以下では、他の保護フィルムB~Eの使用について検討した結果を示す。
【0094】
保護フィルムBとして、基材がアイオノマー、粘着層がアクリル系材料の保護フィルムを使用した。保護フィルムBの基材の厚さは0.15mmであり、粘着層の厚さは0.2mmであり、保護フィルムBの総厚は0.35mmであった。保護フィルムBの90°はく離接着強さ、つまり、引張速度が300mm/minの条件で室温にて測定した際の保護フィルムの90°はく離接着強さは、35(N/25mm)であった。保護フィルムBを用いて上記例1~例7にかかるサンプルを作製した場合も、耐衝撃性試験の評価が良好であった。
【0095】
保護フィルムCとして、基材がポリウレタン、粘着層がアクリル系材料の保護フィルムを使用した。保護フィルムCの基材の厚さは0.15mmであり、粘着層の厚さは0.06mmであり、保護フィルムCの総厚は0.21mmであった。保護フィルムCの90°はく離接着強さ、つまり、引張速度が300mm/minの条件で室温にて測定した際の保護フィルムの90°はく離接着強さは、21(N/25mm)であった。保護フィルムCを用いて上記例1~例7にかかるサンプルを作製した場合も、耐衝撃性試験の評価が良好であった。
【0096】
保護フィルムDとして、基材が熱可塑性ポリウレタン(TPU)の保護フィルムを使用した。保護フィルムDの基材の厚さは0.15mmであった。保護フィルムDの90°はく離接着強さ、つまり、引張速度が300mm/minの条件で室温にて測定した際の保護フィルムの90°はく離接着強さは、19(N/25mm)であった。保護フィルムDを用いて上記例1~例7にかかるサンプルを作製した場合も、耐衝撃性試験の評価が良好であった。
【0097】
保護フィルムEとして、基材がポリカーボネート(PC)の保護フィルムを使用した。保護フィルムEの基材の厚さは0.3mmであった。保護フィルムEの90°はく離接着強さ、つまり、引張速度が300mm/minの条件で室温にて測定した際の保護フィルムの90°はく離接着強さは、32(N/25mm)であった。保護フィルムEを用いて上記例1~例7にかかるサンプルを作製した場合も、耐衝撃性試験の評価が良好であった。
【0098】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。