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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180280
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】光バイパススイッチ
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/60 20220101AFI20231214BHJP
   H04B 10/038 20130101ALI20231214BHJP
【FI】
H04L45/60
H04B10/038
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093418
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】倉掛 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小山 智史
【テーマコード(参考)】
5K030
5K102
【Fターム(参考)】
5K030GA12
5K030HA08
5K030HD03
5K030JA14
5K030KX17
5K030KX20
5K102AA44
5K102LA08
5K102LA26
5K102LA43
5K102PD13
5K102PH11
5K102PH42
5K102PH49
(57)【要約】
【課題】バイパスモードから非バイパスモードへの切り戻し時にデータストリームが遮断される問題を回避する光バイパススイッチを提供する。
【解決手段】
ネットワークにおける特定経路上の各ルータに付加され、ルータに障害が発生しているときに上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続しルータをバイパスしたデータ通信を可能にするバイパスモードと、ルータに障害が発生していないときにルータの光入出力インターフェースに上流側及び下流側ネットワーク機器を接続しルータを介したデータ通信を可能にする非バイパスモードとを備えた光バイパススイッチにおいて、ルータが障害から回復するときに、バイパスモードから非バイパスモードに切り戻す前に上流側及び下流側ネットワーク機器を模擬してルートを再構築するための処理を行わせ、処理の完了後にバイパスモードから非バイパスモードに切り戻すことによりデータストリームの遮断を回避する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光スイッチを備え、ネットワークにおける特定経路上の各ルータの光入出力インターフェースに付加される光バイパススイッチであって、
前記ルータに障害が発生しているときに、前記光スイッチを制御して、前記特定経路上の上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続し、前記ルータをバイパスしたデータ通信を可能にするバイパスモードと、
前記ルータに障害が発生していないときに、前記光スイッチを制御して、前記ルータの光入出力インターフェースに前記特定経路上の上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を接続し、前記ルータを介したデータ通信を可能にする非バイパスモードと、
を備え、
前記ルータが障害から回復して前記特定経路上に復帰するときに、バイパスモードから非バイパスモードに切り戻す前に、前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を模擬して前記ルータにルートを再構築するための処理を行わせ、前記処理の完了後にバイパスモードから非バイパスモードに切り戻す、
光バイパススイッチ。
【請求項2】
前記特定経路は、マルチキャスト伝送を行う経路であり、
前記ルータが行うルートを再構築するための処理は、前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器との隣接関係の確立及びマルチキャストルーティングテーブルの構築のための処理である、請求項1に記載の光バイパススイッチ。
【請求項3】
前記バイパスモードにおいて、前記特定経路上の上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続するバイパス路を流れる光信号から前記ルートを再構築するための処理に必要な情報を取得し、前記情報に基づいて前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を模擬する、請求項1又は請求項2に記載の光バイパススイッチ。
【請求項4】
光スイッチ部と、
バイパス路と、
前記バイパス路に設けられた光分岐と、
前記光分岐で分岐した光信号を受信して電気信号に変換する受光部と、
前記受光部からの電気信号を受信する制御部と、
前記制御部からの電気信号を受信して光信号に変換する光インターフェースと、
を備え、
ネットワークにおける特定経路上の各ルータの光入出力インターフェースに付加される光バイパススイッチであって、
前記ルータに障害が発生しているときに、前記光スイッチ部を制御して、前記バイパス路を介して前記特定経路上の上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続し、
前記ルータに障害が発生していないときに、前記光スイッチ部を制御して、前記ルータの光入出力インターフェースに前記特定経路上の上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を接続し、
前記ルータが障害から回復して前記特定経路上に復帰するときに、前記光分岐が前記バイパス路に流れている光信号を分岐し、前記受光部が前記分岐した光信号を電気信号に変換し、前記制御部が前記変換した電気信号に基づいて前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を模擬して前記光インターフェースを介して前記ルータにルートを再構築するための処理を行わせ、前記処理の完了後に前記光スイッチ部を制御して前記ルータの光入出力インターフェースに前記特定経路上の上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を接続する、
光バイパススイッチ。
【請求項5】
前記特定経路は、マルチキャスト伝送を行う経路であり、
前記ルータが行うルートを再構築するための処理は、前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器との隣接関係の確立及びマルチキャストルーティングテーブルの構築のための処理である、請求項4に記載の光バイパススイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャスト伝送経路上の各ルータの光入出力インターフェースに光バイパススイッチを設置することで、ルータの停電や故障等の障害時に特定経路の伝送を確保することが可能となる障害時のバックアップ手法において、ルータの障害からの回復時に発生する処理による伝送断を回避し得るようにした光バイパススイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すような一般的な支線系ネットワークにおいて、ネットワーク機器(図1ではL2スイッチ)に故障や停電等の障害が発生し当該ネットワーク機器が停止すると、当該ネットワーク機器を経由するデータ通信ができなくなる。ネットワーク構成によっては、すべてのデータ通信が停止する可能性もあるが、何れのネットワーク機器に障害が発生した場合でも、特定の経路(例えば、図1において破線矢印で示したパス)のデータ通信だけは確保したい場合がある。
従来、上記のようなニーズに応えるために、データ通信を確保したいパスの各ネットワーク機器の当該パスに対応する光入出力インターフェースに光バイパススイッチを設置(付加)する技術が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“光バイパススイッチ Optical Bypass Switch”,[online],2008年10月,三菱電線工業時報,第105号,63頁,[令和4年3月30日検索],インターネット<URL:https://www.mitsubishi-cable.co.jp/jihou/pdf/105/t01.pdf>
【0004】
図2は、非特許文献1における光バイパススイッチ1´(従来技術)を概念的に示している。光バイパススイッチ1´は、特定パスの各ネットワーク機器(図1ではL2スイッチ)に設置(付加)して使用される。
なお、L2スイッチとは、OSI参照モデルのデータリンク層(レイヤ2)まで使用するネットワーク機器であり、接続された機器のMACアドレスを記憶しており、MACアドレスに基づいて送信相手の機器にのみ信号を流す機能を有する。
【0005】
光バイパススイッチ1´は、4連の光スイッチ(すなわち4つの同時に切り替わる光スイッチ)からなる光スイッチ部11´と、上流側(サーバ側)のネットワーク機器の送信部(TX)/受信部(RX)に繋がる光ファイバ2´が接続されるポートと、下流側(受信端末側)のネットワーク機器のTX/RXに繋がる光ファイバ3´が接続されるポートと、L2スイッチの下流側ネットワーク機器用光インターフェースに接続されるポートと、L2スイッチの上流側ネットワーク機器用光インターフェースに接続されるポートとを備えている。
【0006】
図2は、L2スイッチに故障や停電等の障害が発生しておらず、光バイパススイッチ1´の上流側(サーバ側)の光ファイバ2´が接続されるポートがL2スイッチの上流側ネットワーク機器用光インターフェースに繋げられ、下流側(受信端末側)の光ファイバ3´が接続されるポートがL2スイッチの下流側ネットワーク機器用光インターフェースに繋げられて、データ通信が正常に行われている状態(非バイパスモード)を表している。
【0007】
光スイッチ部11´の各光スイッチは、電力が供給されていないとき、図3の状態(バイパスモード)に固定されるようになっている。電力を供給することで各光スイッチを反対側(図2の状態、非バイパスモード)に倒す(切り替える)ことができる。この場合、光バイパススイッチ1´と当該光バイパススイッチ1´が付加されたL2スイッチに共通の電源から電力が供給されるようにしておくとよい。
また、光スイッチ部11´は、図示しない接点に信号を印加することでも切り替えることができ、例えば、当該接点にL2スイッチの故障あるいは停電に連動してレベルが変化する信号を印加しておくことにより、L2スイッチの故障に連動して光スイッチ部11´の各光スイッチを図3の状態(バイパスモード)に切り替えることができる。この場合は、必ずしも共通の電源から電力が供給されなくてもよい。
【0008】
このように、非バイパスモード時において、光バイパススイッチ1´への電源供給が途絶えるか、あるいは、L2スイッチが故障して接点信号のレベルが変化すると、光スイッチ部11´の各光スイッチが図2の状態(非バイパスモード)から図3の状態(バイパスモード)に切り替わり、当該光バイパススイッチ1´が付加されたL2スイッチ(故障又は停電したL2スイッチ)がバイパスされて、上流側のL2スイッチと下流側のL2スイッチが繋がるようになる。これにより、少なくとも図1の破線矢印で示したパスについてはデータ通信を確保することができる。
【0009】
ところで、従来から、テレビ番組の制作においては、例えば、CG加工等の画像処理や音声加工等のオーディオ処理などを分業することが行われていた。近年では、離れた場所にある複数の制作拠点(ノード)をネットワークで結んで番組データを送受信し、分業制で番組を制作することも多くなっている。
【0010】
このような場合、従来はノード間をピアツーピア(1対1)で結んで番組データを送受信していた。しかしながら、最近では、例えば4K/8K等の超高画質に対応する大量の番組データを送受信することが多くなっており、1つのデータを複数のノードに送信する場合、1対1の通信では、同じデータをノードの数に相当する回数だけ送信する必要があり効率が悪かった。
そこで、大量の番組データをより効率的に送信するために、IP(インターネットプロトコル)技術を用いて、ネットワークにおける特定の複数のノードに対して1つのデータを同時に送信するいわゆるマルチキャストを行うことが増えてきた。
【0011】
このようにIP技術を用いて番組データを離れた場所にある複数のノードに同時に送信(マルチキャスト)して分業制で番組を制作することをIP制作と称している。IP制作では、異なるネットワークに属するノード間でデータを送受信する場合があるため、ネットワーク機器としてL3機器(ルータ)を使用する。なお、L3機器(ルータ)とは、OSI参照モデルのネットワーク層(レイヤ3)まで使用するネットワーク機器であり、L2スイッチの機能に加えてIPアドレスのルーティング機能を有する。
【0012】
図4は、ネットワーク機器としてL3機器(ルータ)を用いるネットワークを示している。図4のネットワークの場合も、破線矢印で示した特定パスに対応する各ルータ(すなわちルータ#4、ルータ#3及びルータ#1)の光入出力インターフェースに従来技術の光バイパススイッチ1´を付加することで、パス上のルータに故障や停電等の障害が発生したときにも、データ通信を確保することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、ネットワーク機器としてルータを用いる場合、停電や故障等の障害からルータが復帰するときに、ルータが立ち上がった時点で光バイパススイッチ1´をバイパスモードから非バイパスモードに切り戻すと、当該ルータにおいて、ルートを再構築するための処理が開始され、当該処理が完了するまで数十秒から数分の間データ通信が遮断されるという問題があった。
このルートを再構築するための処理について、PIM(Protocol-Independent Multicast)-SSM(Source Specific Multicast)の場合を例にとって詳しく説明する。
【0014】
例えば、図4のネットワークにおけるルータ#3が停電したとする。ルータ#3に付加した光バイパススイッチ1´は自動的にバイパスモードに切り替わり、ルータ#1とルータ#4が繋げられてデータ通信が確保される。
その後、ルータ#3が停電から復帰すると、当該ルータ#3に付加された光バイパススイッチ1´はバイパスモードから非バイパスモードに切り戻され、それによりルータ#3がネットワークに再び参加することになる。このとき、破線矢印で示した特定パスに関し、ルータ#3は、まずルータ#1、#4とPIM Helloパケットを数十秒毎にやり取りしてルータ#1、#4との隣接関係を確立する。次に、ルータ#1からのPIM Join/Pruneメッセージをデータストリーム毎に処理し、新たにルータ#4にPIM Join/Pruneメッセージを送信することでマルチキャスト伝送が再開される。つまり、ルータ#1、#3及び#4において、これら一連の処理によるオーバヘッドが発生するので、その間はデータ通信が行われず受信端末にデータストリームが届かない。
【0015】
このため、ルータが停電や故障等の障害が発生した場合でも特定パスのデータ通信が確保されるように光バイパススイッチ1´を付加したにも関わらず、ルータの復帰時にデータストリームの遮断が発生するため、結局、サーバ側でデータの送信を一時中断するか、あるいは、遮断されたデータを再送しなければならなかった。
【0016】
上述したように、ルータに従来技術の光バイパススイッチ1´を付加してマルチキャスト伝送を行う場合は、光バイパススイッチ1´のバイパスモードから非バイパスモードへの切り戻し時にデータストリームが遮断されるという問題があった。本発明は、このようなデータストリームの遮断を回避することを目的とする。
なお、IP制作は本発明の好適な適用対象であるが、本発明は、IP制作に限らず、広くマルチキャスト伝送に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光バイパススイッチは、複数の光スイッチを備え、ネットワークにおける特定経路上の各ルータの光入出力インターフェースに付加され、前記ルータに障害が発生しているときに、前記光スイッチを制御して、前記特定経路上の上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続し、前記ルータをバイパスしたデータ通信を可能にするバイパスモードと、前記ルータに障害が発生していないときに、前記光スイッチを制御して、前記ルータの光入出力インターフェースに前記特定経路上の上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を接続し、前記ルータを介したデータ通信を可能にする非バイパスモードと、を備え、前記ルータが障害から回復して前記特定経路上に復帰するときに、バイパスモードから非バイパスモードに切り戻す前に、前記上流側及び下流側ネットワーク機器を模擬して前記ルータにルートを再構築するための処理を行わせ、前記処理の完了後にバイパスモードから非バイパスモードに切り戻す。
【0018】
前記特定経路は、マルチキャスト伝送を行う経路であってもよく、前記ルータが行うルートを再構築するための処理は、前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器との隣接関係の確立及びマルチキャストルーティングテーブルの構築のための処理であってもよい。
【0019】
前記バイパスモードにおいて、前記特定経路上の上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続するバイパス路を流れる光信号から前記ルートを再構築するための処理に必要な情報を取得し、前記情報に基づいて前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を模擬してもよい。
【0020】
本発明に係る他の光バイパススイッチは、光スイッチ部と、バイパス路と、前記バイパス路に設けられた光分岐と、前記光分岐で分岐した光信号を受信して電気信号に変換する受光部と、前記受光部からの電気信号を受信する制御部と、前記制御部からの電気信号を受信して光信号に変換する光インターフェースと、を備え、ネットワークにおける特定経路上の各ルータの光入出力インターフェースに付加される光バイパススイッチであって、前記ルータに障害が発生しているときに、前記光スイッチ部を制御して、前記バイパス路を介して前記特定経路上の上流側ネットワーク機器と下流側ネットワーク機器を接続し、前記ルータに障害が発生していないときに、前記光スイッチ部を制御して、前記ルータの光入出力インターフェースに前記特定経路上の上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を接続し、前記ルータが障害から回復して前記特定経路上に復帰するときに、前記光分岐が前記バイパス路に流れている光信号を分岐し、前記受光部が前記分岐した光信号を電気信号に変換し、前記制御部が前記変換した電気信号に基づいて前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を模擬して前記光インターフェースを介して前記ルータにルートを再構築するための処理を行わせ、前記処理の完了後に前記光スイッチ部を制御して前記ルータの光入出力インターフェースに前記特定経路上の上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器を接続する。
【0021】
前記他の光バイパススイッチにおいても、前記特定経路は、マルチキャスト伝送を行う経路であってもよく、前記ルータが行うルートを再構築するための処理は、前記上流側ネットワーク機器及び下流側ネットワーク機器との隣接関係の確立及びマルチキャストルーティングテーブルの構築のための処理であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光バイパススイッチを用いたマルチキャスト伝送系における特定経路の保護(特定経路中のルータの停電や故障等の障害からの特定経路の保護)について、障害からの回復時にルータを復帰させる際のマルチキャストストリームの遮断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来技術における支線系ネットワーク(L2スイッチを使用)を概念的に示す図である。
図2】従来技術の光バイパススイッチ(非バイパスモード時)を概念的に示す図である。
図3】従来技術の光バイパススイッチ(バイパスモード時)を概念的に示す図である。
図4】従来技術の光バイパススイッチを用いたマルチキャスト伝送系(ルータを使用)を概念的に示す図である。
図5】本発明の実施形態の一例の光バイパススイッチ(バイパスモード時)を概念的に示す図である。
図6】本発明の実施形態の一例の光バイパススイッチ(復帰時・切り戻し前)を概念的に示す図である。
図7】本発明の実施形態の一例の光バイパススイッチ(切り戻し後・非バイパスモード時)を概念的に示す図である。
図8】本発明の実施形態の一例の光バイパススイッチにおける状態の変化を概念的に示すフローチャートである。
図9】本発明の変形例の光バイパススイッチを概念的に示す図である。
図10】本発明の他の変形例の光バイパススイッチを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図5に示すように、本発明の光バイパススイッチ1は、光スイッチ部11の各光スイッチにサブスイッチ12が追加されるとともに、バイパス路に光分岐4,5が追加され、さらに受光部6,7、制御部8、光インターフェース9,10が追加されている。
【0025】
そして、ルータが停電や故障等の障害から回復し立ち上がったところで直ちに光スイッチ部11の各光スイッチを切り戻さず、制御部8が光分岐4,5及び受光部6,7を介して受信した信号に基づいて上流側のネットワーク機器及び下流側のネットワーク機器を模擬して光インターフェース9,10を介してルータと通信してルートを再構築するための処理を行わせ、ルートの再構築が完了した後に光スイッチ部11の各光スイッチを切り戻すようにする。
【0026】
以下、ルータ復帰時の処理をより詳細に説明する。
図5は、バイパスモード時の本発明の光バイパススイッチ1を示している。この光バイパススイッチは図4のルータ#3に設置(付加)されているものとする。
光スイッチ部11が図5の状態にあるとき、すなわちバイパスモード時には、ルータ#3がバイパスされて、光バイパススイッチ1を介して上流側のネットワーク機器(ルータ#4)と下流側のネットワーク機器(ルータ#1)が繋げられ、データ通信が行われている。
【0027】
図6は、復帰時・切り戻し前の本発明の光バイパススイッチ1を示している。
図6に示すように、光バイパススイッチ1を付加したルータ#3が停電や故障等の障害から回復し立ち上がったところで、バイパスモードでバイパス路に流れている光信号を光分岐4,5で分岐し、受光部6,7で受光して電気信号に変換し、制御部8において、上流側ルータ#4及び下流側ルータ#1のIPアドレス、MACアドレスを取得するとともに、下流側ルータ#1からのPIM JOINメッセージあるいはIGMP JOINメッセージを受信する。
【0028】
ルータ#3が立ち上がった時点で、光スイッチ部11内の各光スイッチ(サブスイッチ12を含む)は、ルータ#3の上流側ネットワーク機器用の光インターフェースが光インターフェース9に繋がり、ルータ#3の下流側ネットワーク機器用の光インターフェースが光インターフェース10に繋がるようなスイッチング状態となっている。なお、このときの各光スイッチの状態は、バイパスモード時のそれと同じであり、未だ切り戻されていない。
【0029】
制御部8は、取得したIPアドレス、MACアドレスを用いて、光インターフェース9を介して上流側機器を模擬し、また光インターフェース10を介して下流側機器を模擬することで、ルータ#3にPIM(Protocol-Independent Multicast)処理(PIM Helloメッセージを介しての隣接関係の確立、及び、受光部7経由で把握したPIM Joinメッセージを模擬したマルチキャストルーティングテーブルの構築)を行わせる。
【0030】
その後、ルータ#3が上流側機器を模擬した光インターフェース9に向けて必要なPIM Joinメッセージを出力した(PIM処理が完了した)ことを確認して、図7に示すように光スイッチ部11の各光スイッチ(サブスイッチ12を含む)を非バイパスモードに切り戻す。
各光スイッチを切り戻した時点で、ルータ#3におけるPIM処理は完了しており、直ちにルータ#3を介した正常なマルチキャスト伝送が再開されるので、データストリームの遮断は回避される。
【0031】
図7は、切り戻し後・非バイパスモード時の本発明の光バイパススイッチ1を示している。上流側ルータ#4のTX/RXに繋がる光ファイバ2とルータ#3の上流側ネットワーク機器用の光インターフェースが繋がり、また、下流側ルータ#1のTX/RXに繋がる光ファイバ3とルータ#3の下流側ネットワーク機器用の光インターフェースが繋がっており、正常にマルチキャスト伝送が行われている。
【0032】
図8は、実施形態の一例の光バイパススイッチ1における状態の変化を概念的に示すフローチャートである。
光バイパススイッチ1は、正常に起動されると非パイパスモードとなり、ルータに障害が発生するまで非バイパスモードが維持される。
ルータに障害が発生すると、バイパスモードに切り替えられ、ルータが障害から回復するまでバイパスモードが維持される。
ルータが障害から回復すると、ルータにルートを再構築するためのPIM処理を行わせ、当該処理が終わるまで引き続きバイパスモードが維持される。
ルータにおけるPIM処理が完了すると、非バイパスモードに切り戻され、次のルータ障害が発生するまで非バイパスモードが維持される。
【0033】
本実施形態の一例によれば、光バイパススイッチ1は、ルータ#3が停電や故障等の障害から回復し立ち上がったところで、上流側ルータ#4及び下流側ルータ#1のIPアドレス、MACアドレスを取得するとともに、下流側ルータ#1からのPIM JOINメッセージあるいはIGMP JOINメッセージを受信し、取得したIPアドレス、MACアドレスを用いて上流側機器及び下流側機器を模擬してルータ#3にPIM処理を行わせ、その後、PIM処理が完了したことを確認して、非バイパスモードに切り戻すことにより、各光スイッチを切り戻した時点で、直ちにルータ#3を介した正常なマルチキャスト伝送が再開されるので、データストリームの遮断は回避される。
【0034】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0035】
(変形例1)
光分岐4,5と受光部6,7の間に光増幅器を置いてもよい。図9は、本発明の変形例1の光バイパススイッチ1を概念的に示す図である。
変形例1の光バイパススイッチ1は、光分岐4,5で分岐した光信号を増幅するので、光分岐4,5で分岐する光信号の割合を小さくすることができ、バイパス路を通過する光信号に光分岐4,5が与える影響が小さくなり、信頼性が向上する。
【0036】
(変形例2)
また、光インターフェース9,10とサブスイッチ12の間に光アッテネータを介してもよい。図10は、本発明の変形例2の光バイパススイッチ1を概念的に示す図である。
変形例2の光バイパススイッチ1は、光インターフェース9,10とサブスイッチ12との間に光アッテネータを介して光信号のレベルを調整するようにしたので、光バイパススイッチ1が付加されるルータの上流側機器又は下流側機器に繋がるポート(光インターフェース)に適正なレベルの光信号を入出力することができ、信頼性が向上する。
【0037】
(変形例3)
受光部6,7、光インターフェース9,10は、ルータの仕様に合わせて変更することができるようにSFP(Small Form-factor Pluggable)などの差し替え可能なモジュールであってもよい(図示せず)。
変形例3の光バイパススイッチ1は、受光部6,7、光インターフェース9,10を差し替え可能なモジュールとしたので、ルータの仕様に合わせて受光部6,7、光インターフェース9,10を簡単に変更することができる。
【0038】
(変形例4)
制御部8、受光部6,7、光インターフェース9,10は、光スイッチ部11、各ポート、バイパス路、光分岐4,5とは別の筐体に収容されていてもよい(図示せず)。
変形例4の光バイパススイッチ1は、制御部8、受光部6,7、光インターフェース9,10が光スイッチ部11、各ポート、バイパス路、光分岐4,5とは別の筐体に収容されているので、メンテナンス性が向上する。
【0039】
なお、上記の変形例は適宜組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1,1´ 光バイパススイッチ
2,2´ 上流側ネットワーク機器のTX/RXに繋がる光ファイバ
3,3´ 下流側ネットワーク機器のTX/RXに繋がる光ファイバ
4,5 光分岐
6,7 受光部
8 制御部
9,10 光インターフェース
11,11´ 光スイッチ部
12 サブスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10