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特開2023-180320プラズマ処理装置及び共振周波数測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180320
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び共振周波数測定方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20231214BHJP
   H05H 1/00 20060101ALI20231214BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H05H1/46 B
H05H1/46 R
H05H1/00 A
H01L21/302 103
H01L21/302 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093512
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 和史
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 道
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA01
2G084BB02
2G084CC06
2G084CC09
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD19
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD42
2G084DD45
2G084DD47
2G084DD53
2G084DD56
2G084DD62
2G084DD66
2G084EE03
2G084EE04
2G084EE06
2G084FF14
2G084FF32
2G084HH02
2G084HH05
2G084HH07
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH42
5F004AA16
5F004BB14
5F004CA06
5F004CB20
(57)【要約】
【課題】共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うこと。
【解決手段】プラズマ処理装置は、処理容器と、電磁波発生器と、共振構造体と、測定部と、制御部とを備える。処理容器は、処理空間を提供する。電磁波発生器は、処理空間に供給される電磁波を発生させる。共振構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、処理容器内に位置する。測定部は、電磁波発生器から共振構造体へ進行する電磁波の電力と、共振構造体での電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力とを周波数ごとに測定する。制御部は、プラズマ処理の実行前に、電磁波の電力と、透過波、反射波又は散乱波の電力とを測定部により測定する測定処理と、電磁波の電力と透過波、反射波又は散乱波の電力とから算出される、共振構造体の特性値の周波数分布に基づいて、共振構造体の共振周波数を算出する算出処理とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理が行われる処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給される電磁波を発生させる電磁波発生器と、
前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、前記処理容器内に位置する共振構造体と、
前記電磁波発生器から前記共振構造体へ進行する前記電磁波の電力と、前記共振構造体での前記電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力とを周波数ごとに測定する測定部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記プラズマ処理の実行前に、前記電磁波の電力と、前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力とを前記測定部により測定する測定処理と、
前記電磁波の電力と前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力とから算出される、前記共振構造体の特性値の周波数分布に基づいて、前記共振構造体の共振周波数を算出する算出処理と
を実行する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記プラズマ処理中に、前記電磁波発生器を制御して前記共振周波数よりも高い目標周波数帯の周波数成分を含む前記電磁波を発生させることにより、当該電磁波と前記共振構造体とを共振させる共振処理を実行する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電磁波発生器を制御して、前記処理空間にプラズマが生成されないように前記プラズマ処理の実行時に発生させる電磁波よりも電力が低い電磁波を発生させ、前記処理空間にプラズマが生成されていない状態で、前記測定処理を実行する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電磁波発生器を制御して、前記プラズマ処理の実行時に発生させる電磁波よりも電力が低い電磁波であって、単一の周波数成分を含む前記電磁波を発生させ、前記電磁波の単一の周波数成分の周波数をスイープさせながら前記測定処理を実行する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電磁波発生器を制御して、前記プラズマ処理の実行時に発生させる電磁波よりも電力が低い電磁波であって、所定の周波数帯域幅に属する複数の周波数成分を含む前記電磁波を発生させ、前記電磁波の複数の周波数成分の各周波数に関して前記測定処理を実行する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記測定処理を実行する前に、前記電磁波発生器を制御して前記プラズマ処理の実行時に発生させる電磁波の電力以上の電力を有する電磁波を発生させることにより、前記処理空間にプラズマを生成し、生成された前記プラズマを用いて前記共振構造体を加熱する加熱処理を実行する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記電磁波発生器によって発生される前記電磁波を前記処理空間側へ導く導波管を備え、
前記測定部は、前記導波管を伝搬する前記電磁波の電力と、前記導波管を伝搬する前記反射波の電力とを周波数ごとに測定する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記共振構造体は、
第1面を前記処理空間に対向させて設けられた部材の前記第1面に沿って配置される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
第1面を前記処理空間に対向させて設けられた誘電体と、
前記誘電体を介して前記電磁波を前記処理空間に供給する電磁波供給部と
を備え、
前記共振構造体は、
前記誘電体の前記第1面に沿って配置される、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
プラズマ処理が行われる処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給される電磁波を発生させる電磁波発生器と、
前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、前記処理容器内に位置する共振構造体と、
前記共振構造体における前記電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力を周波数ごとに測定する測定部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記プラズマ処理の実行前に、前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力を前記測定部により測定する測定処理と、
前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力の周波数分布に基づいて、前記共振構造体の共振周波数を算出する算出処理と
を実行する、プラズマ処理装置。
【請求項11】
プラズマ処理が行われる処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給される電磁波を発生させる電磁波発生器と、
前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、前記処理容器内に位置する共振構造体と、
前記共振構造体における前記電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力を周波数ごとに測定する測定部と
を備えるプラズマ処理装置における前記共振構造体の共振周波数測定方法であって、
前記プラズマ処理の実行前に、前記電磁波の電力と前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力とを周波数ごとに前記測定部により測定する工程と、
前記電磁波の電力と前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力とから算出される、前記共振構造体の特性値の周波数分布に基づいて、前記共振構造体の共振周波数を算出する工程と
を含む、共振周波数測定方法。
【請求項12】
前記プラズマ処理中に、前記電磁波発生器を制御して前記共振周波数よりも高い目標周波数帯の周波数成分を含む前記電磁波を発生させることにより、当該電磁波と前記共振構造体とを共振させる工程をさらに含む、請求項11に記載の共振周波数測定方法。
【請求項13】
プラズマ処理が行われる処理空間を提供する処理容器と、
前記処理空間に供給される電磁波を発生させる電磁波発生器と、
前記電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが前記電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、前記処理容器内に位置する共振構造体と、
前記共振構造体における前記電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力を周波数ごとに測定する測定部と
を備えるプラズマ処理装置における前記共振構造体の共振周波数測定方法であって、
前記プラズマ処理の実行前に、前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力を周波数ごとに前記測定部により測定する工程と、
前記透過波、前記反射波又は前記散乱波の電力の周波数分布に基づいて、前記共振構造体の共振周波数を算出する工程と
を含む、共振周波数測定方法。
【請求項14】
前記プラズマ処理中に、前記電磁波発生器を制御して前記共振周波数よりも高い目標周波数帯の周波数成分を含む前記電磁波を発生させることにより、当該電磁波と前記共振構造体とを共振させる工程をさらに含む、請求項13に記載の共振周波数測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び共振周波数測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラズマ励起用のマイクロ波を処理容器内に供給してプラズマを生成するプラズマ処理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-245593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、処理容器と、電磁波発生器と、共振構造体と、測定部と、制御部とを備える。処理容器は、プラズマ処理が行われる処理空間を提供する。電磁波発生器は、処理空間に供給される電磁波を発生させる。共振構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、処理容器内に位置する。測定部は、電磁波発生器から共振構造体へ進行する電磁波の電力と、共振構造体での電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力とを周波数ごとに測定する。制御部は、プラズマ処理の実行前に、電磁波の電力と、透過波、反射波又は散乱波の電力とを測定部により測定する測定処理と、電磁波の電力と透過波、反射波又は散乱波の電力とから算出される、共振構造体の特性値の周波数分布に基づいて、共振構造体の共振周波数を算出する算出処理とを実行する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、第1実施形態におけるマイクロ波出力装置、測定器及びチューナの構成例を示す図である。
図3図3は、波形発生部の詳細の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る誘電体窓及び共振構造体を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る第1共振器の構成の一例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る第2共振器の構成の一例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る第3共振器の構成の一例を示す図である。
図8図8は、第1実施形態に係る第3共振器の構成の他の一例を示す図である。
図9図9は、検証に用いた共振構造体の共振器の寸法の一例を示す図である。
図10図10は、リング部材の外径と共振構造体に含まれる共振器の共振周波数の理論値との関係の一例を示す図である。
図11図11は、誘電体板の厚みと共振構造体に含まれる共振器の共振周波数の理論値との関係の一例を示す図である。
図12図12は、誘電体板の比誘電率と共振構造体に含まれる共振器の共振周波数の理論値との関係の一例を示す図である。
図13図13は、共振構造体の透過特性値(S21値)の周波数分布の一例を示す図である。
図14図14は、設計値に基づいて決定された共振周波数と、処理容器内での実際の共振周波数とのずれを説明するための図である。
図15図15は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図16図16は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置が実行する処理の手順の他の一例を示すフローチャートである。
図17図17は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置が実行する処理の手順の他の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、第2実施形態におけるマイクロ波出力装置、測定器及びチューナの構成例を示す図である。
図19図19は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図20図20は、第3実施形態におけるマイクロ波出力装置、測定器及びチューナの構成例を示す図である。
図21図21は、第3実施形態に係るプラズマ処理装置が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置及び共振周波数測定方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示するプラズマ処理装置及び共振周波数測定方法が限定されるものではない。また、各実施形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせることが可能である。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付する。
【0009】
ところで、プラズマ励起用のマイクロ波を用いたプラズマ処理装置では、プラズマの電子密度を高めるために処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させることがある。処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させるほど、プラズマの電子密度を高めることができる。
【0010】
ここで、処理容器内に供給されるマイクロ波の電力を上昇させることによりプラズマの電子密度がある上限値に到達すると、処理容器内の空間の誘電率が負となることが知られている。この電子密度の上限値を適宜「遮断密度」と呼ぶ。また、マイクロ波が空間を伝搬するか否かを示す指標として、屈折率が知られている。屈折率Nは、以下の式(1)により表される。
N=√ε√μ ・・・(1)
ただし、ε:誘電率、μ:透磁率
【0011】
透磁率は一般に正であるので、処理容器内の空間の誘電率が負となると、上記の式(1)により、処理容器内の空間の屈折率が純虚数となる。これにより、マイクロ波が減衰して処理容器内の空間を伝搬することができなくなる。このように、プラズマの電子密度が遮断密度に到達すると、処理容器内の空間においては、マイクロ波が伝搬できないため、マイクロ波の電力がプラズマに十分に吸収されない。結果として、処理容器内に生成されるプラズマの広範囲での高密度化が阻害されるという問題がある。
【0012】
これに対し、マイクロ波と共振可能な複数の共振器を配列して形成された共振構造体を処理容器内に設けることで、共振構造体とマイクロ波とを共振させて負の屈折率を利用したプラズマを高密度化する技術が検討されている。かかる技術では、共振構造体とマイクロ波との共振により、処理容器内の空間にマイクロ波を効率よく供給することができ且つ処理容器内の空間の透磁率を負にすることができる。透磁率が負である場合、処理容器内の空間で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達し且つ処理容器内の空間の誘電率が負である場合であっても、上記の式(1)により屈折率が負の実数となるため、処理容器内の空間においてマイクロ波が伝搬することができる。これによりプラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、プラズマの表皮深さを超えてマイクロ波の伝搬が可能でありプラズマにマイクロ波の電力が効率よく吸収される。その結果、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。
【0013】
共振構造体とマイクロ波との共振は、処理容器内に供給されるマイクロ波の周波数が共振構造体の共振周波数と一致する場合に発生する。また、共振構造体とマイクロ波との共振は、共振構造体の共振周波数よりも高い所定の周波数帯においても、維持される。したがって、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行う観点から、共振構造体の共振周波数を正確に測定することが重要である。
【0014】
しかしながら、共振構造体の共振周波数は、共振器構造体の機差(例えば、寸法誤差や組付け誤差等)や、共振器構造体の物性値(例えば、共振器構造体を構成する誘電体の誘電率等)の影響により、変化する。また、共振構造体の共振周波数は、共振構造体の使用環境(例えば、共振構造体の温度)によっても変化する。そのため、設計値に基づいて共振構造体の共振周波数が決定されたとしても、決定された共振周波数と、処理容器内での実際の共振構造体の共振周波数とがずれる場合がある。処理容器内に供給されるマイクロ波の周波数が共振周波数及び共振周波数よりも高い所定の周波数帯から逸脱すると、共振構造体とマイクロ波とが共振しないため、マイクロ波の電力がプラズマに十分には吸収されず、プラズマの高密度化が阻害される。
【0015】
そこで、実施形態では、処理容器内でのプラズマ処理の実行前に、処理容器内に設けられた実際の共振構造体の共振周波数を測定することとした。これにより、共振器構造体の機差等の影響を受けることなく、共振構造体の共振周波数を正確に測定することができるため、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる。
【0016】
(第1実施形態)
[プラズマ処理装置1の構成]
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1の構成の一例を示す概略断面図である。プラズマ処理装置1は、装置本体10及び制御装置(制御部の一例)11を備える。装置本体10は、処理容器12、ステージ14、マイクロ波出力装置(電磁波発生器の一例)16、アンテナ18、誘電体窓20及び共振構造体100を備える。
【0017】
処理容器12は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等によって略円筒状に形成されており、内部に略円筒形状の処理空間Sを提供している。処理容器12は、保安接地されている。また、処理容器12は、側壁12a及び底部12bを有する。側壁12aの中心軸線を、軸線Zと定義する。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられている。底部12bには、排気用の排気口12hが設けられている。また、側壁12aの上端部は開口している。
【0018】
側壁12aには、被処理体である基板WPの搬入及び搬出を行うための開口12cが形成されている。開口12cは、ゲートバルブGによって開閉される。
【0019】
側壁12aの上端部には誘電体窓20が設けられており、誘電体窓20は、側壁12aの上端部の開口を上方から塞いでいる。誘電体窓(誘電体の一例)20の下面(第1面の一例)20aは、処理空間Sに対向している。すなわち、誘電体窓20は、下面20aを処理空間Sに対向させて設けられる。誘電体窓20と側壁12aの上端部との間にはOリング19が配置されている。
【0020】
ステージ14は、処理容器12内に収容される。ステージ14は、軸線Zの方向において誘電体窓20と対面するように設けられている。ステージ14と誘電体窓20の間の空間が処理空間Sである。ステージ14の上には、基板WPが載置される。
【0021】
ステージ14は、基台14a及び静電チャック14cを有する。基台14aは、アルミニウム等の導電性の材料により略円盤状に形成されている。基台14aは、基台14aの中心軸線が軸線Zに略一致するように処理容器12内に配置されている。
【0022】
基台14aは、絶縁性の材料により形成され且つ軸線Z方向に延伸する筒状支持部48によって支持されている。筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられている。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿って処理容器12の底部12bから誘電体窓20へ向かって延びている。筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成されている。
【0023】
排気路51の上部には、厚さ方向に複数の貫通穴が形成された環状のバッフル板52が設けられている。バッフル板52の下方には上述した排気口12hが設けられている。排気口12hには、排気管54を介して、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプや自動圧力制御弁等を有する排気装置56が接続されている。排気装置56により、処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
【0024】
基台14aは、高周波電極として機能する。基台14aには、給電棒62及びマッチングユニット60を介して、RFバイアス用の高周波電源58が電気的に接続されている。高周波電源58は、基板WPに引き込まれるイオンのエネルギーを制御するのに適した所定周波数(例えば、13.56MHz)のバイアス電力をマッチングユニット60及び給電棒62を介して基台14aに供給する。
【0025】
マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。整合器の中には自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0026】
基台14aの上面には、静電チャック14cが設けられている。静電チャック14cは、静電チャック14cの中心軸線が軸線Zに略一致するように、基台14aの上面に配置されている。静電チャック14cは、基板WPを静電気力によって吸着保持する。静電チャック14cは、略円盤状の外形を有し、電極14d、絶縁膜(誘電体膜)14e、及び絶縁膜(誘電体膜)14fを有する。静電チャック14cの電極14dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜14eと絶縁膜14fの間に設けられている。電極14dには、被覆線68及びスイッチ66を介して直流電源64が電気的に接続されている。静電チャック14cは、直流電源64から印加される直流電圧により発生する静電気力によって、基板WPを上面に吸着保持することができる。また、基台14a上には、エッジリング14bが設けられている。エッジリング14bは、基板WP及び静電チャック14cを囲むように配置されている。エッジリング14bは、フォーカスリングと呼ばれることもある。
【0027】
基台14aの内部には、流路14gが設けられている。流路14gには、図示しないチラーユニットから配管70を介して冷媒が供給される。流路14gに供給された冷媒は、配管72を介してチラーユニットに戻される。チラーユニットによって温度が制御された冷媒が基台14aの流路14g内を循環することにより、基台14aの温度が制御される。基台14aの温度が制御されることにより、基台14a上の静電チャック14cを介して、静電チャック14c上の基板WPの温度が制御される。
【0028】
また、ステージ14には、Heガス等の伝熱ガスを、静電チャック14cの上面と基板WPの裏面との間に供給するための配管74が形成されている。
【0029】
マイクロ波出力装置16は、処理容器12内に供給される処理ガスを励起させるためのマイクロ波(電磁波の一例)を出力する。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波の周波数、電力及び帯域幅等の調整が可能である。マイクロ波出力装置16は、例えば、マイクロ波の帯域幅を略0に設定することによって、単一の周波数成分を含むマイクロ波(以下、適宜「SP(Single Peak)マイクロ波」と呼ぶ。)を発生することができる。また、マイクロ波出力装置16は、所定の周波数帯域幅に属する複数の周波数成分を含むマイクロ波(以下、適宜「BB(BroadBand)マイクロ波」と呼ぶ。)を発生することができる。これら複数の周波数成分の電力は同一の電力であってもよく、帯域内の中央周波数成分のみが他の周波数成分の電力よりも大きい電力を有していてもよい。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波の電力を、例えば0W~5000Wの範囲内で調整することができる。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波の周波数又はBBマイクロ波の中央周波数を、例えば2.3GHz~2.5GHzの範囲内で調整することができ、BBマイクロ波の帯域幅を例えば0MHz~100MHzの範囲で調整することができる。また、マイクロ波出力装置16は、BBマイクロ波の複数の周波数成分の周波数のピッチ(キャリアピッチ)を、例えば0~25kHzの範囲内で調整することができる。
【0030】
また、装置本体10は、導波管21、測定器(測定部の一例)22、チューナ26、モード変換器27、及び同軸導波管28を備える。マイクロ波出力装置16の出力部は、導波管21の一端に接続されている。導波管21の他端は、モード変換器27に接続されている。導波管21は、例えば矩形導波管である。
【0031】
測定器22は、導波管21に設けられた方向性結合器22aを介して導波管21に接続されている。方向性結合器22aは、マイクロ波出力装置16から処理容器12側へ進行するマイクロ波(すなわち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を測定器22へ出力する。測定器22は、方向性結合器22aから出力される進行波の一部に基づき、導波管21を伝搬する進行波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。また、測定器22は、共振構造体100を透過して後述の導波路22b(図2参照)によって処理容器12側から戻ってくるマイクロ波(すなわち、透過波)の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。
【0032】
チューナ26は、導波管21に設けられている。チューナ26は、可動板26a及び可動板26bを有する。導波管21の内部空間に対する可動板26a及び可動板26bの各々の突出量を調整することにより、マイクロ波出力装置16のインピーダンスと負荷のインピーダンスとを整合させることができる。
【0033】
モード変換器27は、導波管21から出力されるマイクロ波のモードを変換し、モード変換後のマイクロ波を同軸導波管28に供給する。同軸導波管28は、外側導体28a及び内側導体28bを含む。外側導体28a及び内側導体28bは、略円筒形状を有している。外側導体28a及び内側導体28bは、外側導体28a及び内側導体28bの中心軸線が軸線Zに略一致するようにアンテナ18の上部に配置されている。同軸導波管28は、モード変換器27によってモードが変換されたマイクロ波をアンテナ18に伝送する。
【0034】
アンテナ18は、処理容器12内にマイクロ波を供給する。アンテナ18は、電磁波供給部の一例である。アンテナ18は、誘電体窓20の上面20bに設けられており、誘電体窓20を介してマイクロ波を処理空間Sに供給する。アンテナ18は、スロット板30、誘電体板32、及び冷却ジャケット34を含む。スロット板30は、導電性を有する金属によって略円板状に形成されている。スロット板30は、スロット板30の中心軸線が軸線Zに一致するように誘電体窓20の上面20bに設けられている。スロット板30には、複数のスロット穴30aが形成されている。複数のスロット穴30aは、例えば複数のスロット対を構成している。複数のスロット対の各々は、互いに交差する方向に延びる長孔形状の二つのスロット穴30aを含む。複数のスロット対は、スロット板30の中心軸線周りの一以上の同心円に沿って配列されている。また、スロット板30の中央部には、後述する導管36が通過可能な貫通穴30dが形成されている。
【0035】
誘電体板32は、石英等の誘電体材料によって略円盤状に形成されている。誘電体板32は、誘電体板32の中心軸線が軸線Zに略一致するようにスロット板30上に設けられている。冷却ジャケット34は、誘電体板32上に設けられている。誘電体板32は、冷却ジャケット34とスロット板30との間に設けられている。
【0036】
冷却ジャケット34の表面は、導電性を有する。冷却ジャケット34の内部には、流路34aが形成されている。流路34aには、図示しないチラーユニットから冷媒が供給されるようになっている。冷却ジャケット34の上部表面には、外側導体28aの下端が電気的に接続されている。また、内側導体28bの下端は、冷却ジャケット34及び誘電体板32の中央部分に形成された開口を通って、スロット板30に電気的に接続されている。
【0037】
同軸導波管28内を伝搬したマイクロ波は、誘電体板32内を伝搬して、スロット板30の複数のスロット穴30aから誘電体窓20を介して処理空間Sに放射される。
【0038】
同軸導波管28の内側導体28bの内側には、導管36が設けられている。スロット板30の中央部には、導管36が通過可能な貫通穴30dが形成されている。導管36は、内側導体28bの内側を通って延在しており、ガス供給部38に接続されている。
【0039】
ガス供給部38は、基板WPを処理するための処理ガスを導管36に供給する。ガス供給部38は、ガス供給源38a、バルブ38b、及び流量制御器38cを含む。ガス供給源38aは、処理ガスの供給源である。バルブ38bは、ガス供給源38aからの処理ガスの供給及び供給停止を制御する。流量制御器38cは、例えばマスフローコントローラ等であり、ガス供給源38aから導管36へ供給される処理ガスの流量を制御する。
【0040】
誘電体窓20には、インジェクタ41が設けられている。インジェクタ41は、導管36からのガスを誘電体窓20に形成された貫通穴20hに供給する。誘電体窓20の貫通穴20hに供給されたガスは、処理空間S内に噴射され、誘電体窓20から処理空間S内に放射されたマイクロ波によって励起される。これにより、処理空間S内で処理ガスがプラズマ化され、プラズマに含まれるイオン及びラジカル等により、静電チャック14cの上の基板WPが処理される。
【0041】
共振構造体100は、マイクロ波の磁界成分と共振可能であり且つサイズがマイクロ波の波長よりも小さい複数の共振器を配列して形成され、処理容器12内に位置する。
【0042】
共振構造体100が処理容器12内に位置することにより、アンテナ18によって処理空間Sに供給されるマイクロ波と共振構造体100とを共振させることができる。マイクロ波と共振構造体100との共振により、処理容器12の処理空間Sにマイクロ波を効率よく供給することができ且つ処理空間Sの透磁率を負にすることができる。処理空間Sの透磁率が負である場合、処理空間S内で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達し且つ処理空間Sの誘電率が負である場合であっても、上記の式(1)により屈折率が実数となるため、処理空間Sにおいてマイクロ波が伝搬することができる。これにより、処理空間S内で生成されるプラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、プラズマの表皮深さを超えてマイクロ波の伝搬が可能でありプラズマにマイクロ波の電力が効率よく吸収され、結果として、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置1によれば、共振構造体100が処理容器12内に位置することにより、プラズマを広範囲で高密度化を実現することができる。共振構造体100の詳細な構成は、後述される。
【0043】
制御装置11は、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスを有する。メモリには、プログラム及びプロセスレシピ等が記憶されている。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出して実行することにより、メモリ内に記憶されたプロセスレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、装置本体10の各部を統括制御する。
【0044】
[マイクロ波出力装置16、測定器22及びチューナ26の詳細]
図2は、第1実施形態におけるマイクロ波出力装置16、測定器22及びチューナ26の構成例を示す図である。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波発生部16a、導波管16b、サーキュレータ16c、導波管16d、導波管16e、方向性結合器16f、測定器16g、方向性結合器16h、測定器16i、及びダミーロード16jを有する。マイクロ波発生部16aは、波形発生部161、電力制御部162、減衰器163、増幅器164、増幅器165、及びモード変換器166を有する。
【0045】
波形発生部161は、予め定められた周波数範囲(例えば2.4GHz~2.5GHz)において、SPマイクロ波又はBBマイクロ波を発生させる。SPマイクロ波は、指定された周波数において単一のピーク(周波数成分)を有する。BBマイクロ波は、指定された中心周波数において、指定された帯域幅を有する。また、波形発生部161は、指定された周波数から、指定された周波数まで、指定されたスイープ速度で、SPマイクロ波の単一の周波数成分の周波数をスイープさせることが可能である。
【0046】
図3は、波形発生部161の詳細の一例を示すブロック図である。波形発生部161は、例えば、マイクロ波を出力するPLL(Phase Locked Loop)発振器と、PLL発振器に接続されたIQデジタル変調器とを有する。波形発生部161は、PLL発振器から出力されるマイクロ波の周波数を制御装置11から指定された設定周波数範囲内の周波数に設定する。そして、波形発生部161は、PLL発振器から出力されたマイクロ波と、当該PLL発振器から出力されるマイクロ波とは90°の位相差を有するマイクロ波とを、IQデジタル変調器を用いて変調する。これにより、波形発生部161は、設定周波数範囲内の周波数のマイクロ波を生成する。
【0047】
波形発生部161は、例えば開始周波数から終了周波数までのN個の波形データを走査速度に応じて順次入力し、量子化及び逆フーリエ変換することにより、周波数変調されたマイクロ波を生成することが可能である。
【0048】
本実施形態において、波形発生部161は、予めデジタル化された符号の列で表された波形データを有している。波形発生部161は、波形データを量子化し、量子化したデータに対して逆フーリエ変換を適用することにより、IデータとQデータとを生成する。そして、波形発生部161は、デジタル信号であるIデータ及びQデータの各々を、アナログ信号に変換する。そして、波形発生部161は、LPF(Low Pass Filter)により、変換された各々のアナログ信号から低周波成分を抽出する。そして、波形発生部161は、I成分のアナログ信号とPLLから出力されたマイクロ波とをミキシングし、Q成分のアナログ信号とPLLから出力されるマイクロ波とは90°の位相差を有するマイクロ波とをミキシングする。そして、波形発生部161は、ミキシングされた2つのアナログ信号を合成することにより、周波数変調されたマイクロ波を生成する。
【0049】
なお、波形発生部161によるマイクロ波の発生方法は、図3に例示された方法に限定されず、DDS(Direct Digital Synthesizer)及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いてマイクロ波が生成されてもよい。
【0050】
図2に戻って説明を続ける。波形発生部161から出力されたマイクロ波は、減衰器163に入力される。減衰器163には、電力制御部162が接続されている。電力制御部162は、例えば、プロセッサであり得る。電力制御部162は、制御装置11から指定された電力を有するマイクロ波がマイクロ波出力装置16から出力されるように、減衰器163における減衰率を制御する。減衰器163から出力されたマイクロ波は、増幅器164及び増幅器165を介してモード変換器166へ出力される。増幅器164及び増幅器165は、マイクロ波を設定された増幅率で増幅する。モード変換器166は、増幅器165によって増幅されたマイクロ波のモードを変換する。
【0051】
マイクロ波発生部16aの出力端は、導波管16bの一端に接続されている。導波管16bの他端は、サーキュレータ16cの第1ポート261に接続されている。導波管16bには、方向性結合器16fが設けられている。なお、方向性結合器16fは、導波管16dに設けられていてもよい。方向性結合器16fは、マイクロ波発生部16aから出力されて、サーキュレータ16cに伝搬するマイクロ波(すなわち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を測定器16gへ出力する。測定器16gは、方向性結合器16fから出力された進行波の一部に基づき、導波管16dを伝搬する進行波の電力を測定し、測定結果を電力制御部162へ出力する。
【0052】
サーキュレータ16cは、第1ポート261、第2ポート262、及び第3ポート263を有する。サーキュレータ16cは、第1ポート261に入力されたマイクロ波を第2ポート262から出力し、第2ポート262に入力されたマイクロ波を第3ポート263から出力する。サーキュレータ16cの第2ポート262には、導波管16dの一端が接続されている。導波管16dの他端には、マイクロ波出力装置16の出力端16tが設けられている。
【0053】
サーキュレータ16cの第3ポート263には、導波管16eの一端が接続されており、導波管16eの他端には、ダミーロード16jが接続されている。導波管16eには、方向性結合器16hが設けられている。なお、方向性結合器16hは、導波管16dに設けられていてもよい。方向性結合器16hは、導波管16eに伝搬するマイクロ波(すなわち、反射波)の一部を分岐させて、当該反射波の一部を測定器16iへ出力する。測定器16iは、方向性結合器16hから出力された反射波の一部に基づき、導波管16dを伝搬する反射波の電力を測定し、測定結果を電力制御部162へ出力する。
【0054】
ダミーロード16jは、導波管16eを伝搬するマイクロ波を受けて、当該マイクロ波を吸収する。ダミーロード16jは、例えば、マイクロ波を熱に変換する。
【0055】
電力制御部162は、測定器16gによって測定される進行波の電力と、測定器16iによって測定される反射波の電力との差が、制御装置11によって指定される電力となるように、波形発生部161及び減衰器163を制御する。測定器16gによって測定される進行波の電力と、測定器16iによって測定される反射波の電力との差は、処理容器12に供給される電力である。
【0056】
チューナ26は、導波管21に設けられており、制御装置11からの制御信号に基づいて、マイクロ波出力装置16側のインピーダンスと処理容器12側のインピーダンスとを整合するように可動板の突出位置を調整する。チューナ26は、図示しないドライバ回路及びアクチュエータにより、可動板を動作させる。なお、可動板の突出位置の調整はスタブ構造で実現されてもよい。
【0057】
測定器22は、導波管21に設けられた方向性結合器22aを介して導波管21に接続されている。方向性結合器22aは、マイクロ波出力装置16から処理容器12側へ進行するマイクロ波(すなわち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を測定器22へ出力する。測定器22は、方向性結合器22aから出力される進行波の一部に基づき、導波管21を伝搬する進行波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。
【0058】
また、測定器22は、導波路22bを介して処理容器12内の給電棒62に接続されている。導波路22bは、共振構造体100を透過してステージ14及び給電棒62に伝搬するマイクロ波(すなわち、透過波)の一部を分岐させて、当該透過波の一部を処理容器12側から測定器22へ戻す。測定器22は、導波路22bから戻された透過波の一部に基づき、共振構造体100を透過する透過波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。
【0059】
導波路22bには、フィルタ22cと、減衰器22dとが設けられる。フィルタ22cは、導波路22bを伝搬するマイクロ波からノイズ成分を除去する。減衰器22dは、導波路22bを伝搬するマイクロ波を設定された減衰率で減衰する。
【0060】
[共振構造体100の詳細]
図1及び図4を参照して、共振構造体100の詳細な構成について説明する。図4は、第1実施形態に係る誘電体窓20及び共振構造体100を下方向から見た構成の一例を示す平面図である。図4には、誘電体窓20の下面20aが円板状に示されている。
【0061】
図1及び図4に示すように、共振構造体100は、誘電体窓20の下面20aに沿って配置される。
【0062】
共振構造体100は、マイクロ波の磁界成分と共振可能であり且つサイズがマイクロ波の波長よりも小さい複数の共振器101を格子状に配列して形成される。具体的には、複数の共振器101は、図5図7に示す第1共振器101A、第2共振器101B及び第3共振器101Cの少なくともいずれか一つ共振器を含む。複数の共振器101の各々は、コンデンサ等価素子及びコイル等価素子からなる直列共振回路を構成する。直列共振回路は、平面上に導体をパターニングすることで、実現される。
【0063】
図5は、第1実施形態に係る第1共振器101Aの構成の一例を示す図である。図5に示す第1共振器101Aは、導体からなる互いに逆向き且つ同心円状の2枚のC字状のリング部材111Aが誘電体板112Aの一面上に積層された構造を有する。内側のリング部材111Aと外側のリング部材111Aの対向面や、各リング部材111Aの両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、各リング部材111Aに沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、第1共振器101Aは、直列共振回路を構成することができる。
【0064】
図6は、第1実施形態に係る第2共振器101Bの構成の一例を示す図である。図6に示す第2共振器101Bは、導体からなるC字状のリング部材111Bの両端によって誘電体板112Bが挟まれた構造を有する。リング部材111Bの両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、リング部材111Bに沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、第2共振器101Bは、直列共振回路を構成することができる。なお、図6に示す第2共振器101Bにおいて、リング部材111Bの一面上に誘電体板112Bとは異なる他の誘電体板が接合されてもよい。
【0065】
図7は、第1実施形態に係る第3共振器101Cの構成の一例を示す図である。図7に示す第3共振器101Cは、導体からなる2枚のC字状のリング部材111Cであって、互いに逆向きに隣接して配置されるリング部材111Cの間に誘電体板112Cが配置された構造を有する。すなわち、第3共振器101Cにおいては、互いに逆向きの2枚のC字状のリング部材111Cによって誘電体板112Cが挟まれている。2枚のC字状のリング部材111Cの対向面や、各リング部材111Cの両端部においてコンデンサ等価素子が形成され、各リング部材111Cに沿ってコイル等価素子が形成される。これにより、第3共振器101Cは、直列共振回路を構成することができる。
【0066】
なお、図7に示す第3共振器101Cにおいては、リング部材111Cの配置数(以下、適宜「積層数」とも言う。)が2であるが、リング部材111Cの積層数が2よりも大きくてもよい。図8は、第1実施形態に係る第3共振器101Cの構成の他の一例を示す図である。図8に示す第3共振器101Cは、導体からなるn(n≧2)枚のC字状のリング部材111Cであって、互いに逆向きに隣接して配置されるリング部材111Cの間に誘電体板112Cが配置された構造を有する。このような構造によっても、第3共振器101Cは、直列共振回路を構成することができる。
【0067】
[共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数の変化]
次に、共振構造体100の共振周波数の変化について図9図12を参照して説明する。上述の通り、共振構造体100の共振周波数は、共振構造体100の機差(例えば、寸法誤差や組付け誤差等)や、共振構造体100の物性値(例えば、共振構造体100を構成する誘電体の誘電率等)の影響により、変化する。これは、共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数が該共振器の機差や物性値の影響により変化するためであると考えられる。本発明者らは、共振構造体100に含まれる共振器の機差及び物性値を変化させた場合の共振周波数の理論値の変化を、理論式を用いて検証した。
【0068】
図9は、検証に用いた共振構造体100の共振器の寸法の一例を示す図である。検証に用いた共振器は、図7に示す第3共振器101Cである。第3共振器101Cの各種寸法及び物性値は、以下のように、定義される。
w:リング部材111Cの幅
g:リング部材111Cの両端部どうしの間隔
r:リング部材111Cの半径
out:リング部材111Cの外径
in:リング部材111Cの内径
d:誘電体板112Cの厚み
ε:誘電体板112Cの比誘電率
【0069】
第3共振器101Cの共振周波数の理論値fr0は、以下の式(2)により表される。
r0=1/(2π√LC) ・・・ (2)
ただし、L:第3共振器101Cのインダクタンス、C:第3共振器101Cのキャパシタンス
【0070】
また、第3共振器101CのインダクタンスLは、以下の式(3)により表される。
L=μr(log(4π)-1) ・・・ (3)
ただし、μ:真空の透磁率
【0071】
また、第3共振器101CのキャパシタンスCは、以下の式(4)、(5)により表される。
C=1/(1/Chalf+1/Chalf) ・・・ (4)
half=εε(π(rout -rin )-gw)/(2d) ・・・ (5)
ただし、ε:真空の誘電率
【0072】
図10は、リング部材111Cの外径と共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数の理論値との関係の一例を示す図である。図10に示すように、共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数は、リング部材111Cの外径の変化に応じて、変化する。
【0073】
図11は、誘電体板112Cの厚みと共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数の理論値との関係の一例を示す図である。図11に示すように、共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数は、誘電体板112Cの厚みの変化に応じて、変化する。
【0074】
図12は、誘電体板112Cの比誘電率と共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数の理論値との関係の一例を示す図である。図12に示すように、共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数は、誘電体板112Cの比誘電率の変化に応じて、変化する。
【0075】
図10図12の検証結果から、共振構造体100に含まれる共振器の共振周波数は、該共振器の機差や物性値の影響により変化することが確認された。すなわち、共振構造体100の共振周波数は、共振構造体100の機差や物性値の影響により、変化することが確認された。
【0076】
[共振構造体100の透過特性値の周波数分布]
図13は、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布の一例を示す図である。図13は、SPマイクロ波を処理容器12内の処理空間Sに供給した場合の共振構造体100のS21値を、SPマイクロ波の周波数ごとにプロットしたものである。共振構造体100のS21値は、進行波の電力をP1とし、透過波の電力をP2とすると、log(P2/P1)により算出される。
【0077】
図13の例では、処理空間Sに供給されるマイクロ波の周波数が共振構造体100の共振周波数f(=約2.35GHz)と一致する場合に、共振構造体100のS21値が極小値となり、マイクロ波と共振構造体100との共振が発生する。マイクロ波と共振構造体100との共振は、共振構造体100の共振周波数fよりも高い所定の周波数帯(例えば、共振周波数fから約0.1GHzの範囲)においても、維持される。共振構造体100の共振周波数fよりも高い所定の周波数帯においては、マイクロ波と共振構造体100との共振により処理空間Sの誘電率と透磁率をともに負にすることができ、上記の式(1)から分かる通り、処理空間Sでのマイクロ波の伝搬が可能となる。
【0078】
したがって、共振構造体100の共振周波数fよりも高い目標周波数帯(例えば、約0.1GHzの範囲)の周波数成分を含むマイクロ波を処理容器12内の処理空間Sに供給すれば、マイクロ波と共振構造体100とを共振させることができる。そして、マイクロ波と共振構造体100との共振により、処理空間Sの誘電率と透磁率をともに負にすることができる。このため、プラズマの電子密度が遮断密度に到達する場合であっても、マイクロ波の伝搬がプラズマの表皮深さを越えて可能となり、プラズマにマイクロ波の電力を効率よく吸収させることができる。その結果、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる。
【0079】
しかしながら、共振構造体100の共振周波数fは、共振構造体100の機差(例えば、寸法誤差や組付け誤差等)や、共振構造体100の物性値(例えば、共振構造体100を構成する誘電体の誘電率等)の影響により、変化する。これにより、共振構造体100の共振周波数は、異なるプラズマ処理装置1どうしで異なる場合がある。また、同一のプラズマ処理装置1においても、共振構造体100の使用環境(例えば、共振構造体100の温度)の影響により共振構造体100における各共振器の熱膨張・熱収縮が生じ、共振構造体100の共振周波数fが変化する。そのため、設計値に基づいて共振構造体100の共振周波数fが決定されたとしても、決定された共振周波数fと、処理容器内での実際の共振構造体100の共振周波数fとがずれる場合がある。
【0080】
図14は、設計値に基づいて決定された共振周波数fr1と、処理容器12内での実際の共振周波数fr2とのずれを説明するための図である。図14のグラフ501は、設計値に基づいて決定された共振周波数fr1を含む共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布を示すグラフである。図14のグラフ502は、処理容器12内での実際の共振周波数fr2を含む透過特性値(S21値)の周波数分布を示すグラフである。図14に示すように、共振構造体100の機差、物性値及び使用環境に応じて、処理容器12内での実際の共振周波数fr2は、設計値に基づいて決定された共振周波数fr1からずれる。そして、共振周波数fr1と共振周波数fr2とがずれることにより、共振周波数fr1に対応する目標周波数帯B1と共振周波数fr2に対応する目標周波数帯B2とがずれる。かかる目標周波数帯の変化によりマイクロ波の周波数が目標周波数帯から逸脱すると、マイクロ波と共振構造体100とが共振しない。そのため、マイクロ波の電力がプラズマに十分には吸収されず、プラズマの高密度化が阻害される。
【0081】
これに対し、本実施形態のプラズマ処理装置1は、処理容器12内でのプラズマ処理の実行前に、処理容器12内に設けられた実際の共振構造体100の共振周波数を測定する。これにより、プラズマ処理装置1は、共振構造体100の機差等の影響を受けることなく、共振構造体100の共振周波数を正確に測定することができることから、共振周波数に対応する目標周波数帯を正確に決定することができる。その結果、プラズマ処理装置1は、処理容器12内の処理空間Sに供給されるマイクロ波の周波数が目標周波数帯から逸脱する事態を回避できる。このため、プラズマ処理中に、マイクロ波と共振構造体100との共振により処理空間Sの誘電率と透磁率をともに負に維持できるので、プラズマの高密度化を安定的に行うことができる。
【0082】
[プラズマ処理装置1の具体的動作]
次に、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1の具体的動作について図15を参照して説明する。図15は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1が実行する処理の手順を示すフローチャートである。なお、図15に示す各処理は、制御装置11が装置本体10の各部を制御することにより実現される。
【0083】
まず、制御装置11は、バルブ38bを開き、予め定められた流量の処理ガスが処理容器12内に供給されるように流量制御器38cを制御することにより、処理容器12内の処理空間Sへのガスの供給を開始する(ステップS101)。そして、制御装置11は、排気装置56を制御し、処理容器12内の圧力を調整する(ステップS102)。
【0084】
次に、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、第1マイクロ波を発生させ、アンテナ18を介して処理容器12内の処理空間Sに第1マイクロ波を供給する(ステップS103)。第1マイクロ波は、プラズマ処理用のマイクロ波よりも電力が低いマイクロ波であって、単一の周波数成分を含むマイクロ波(つまり、SPマイクロ波)である。制御装置11は、処理空間Sにプラズマが生成されないようにプラズマ処理用のマイクロ波よりも電力が低いSPマイクロ波を発生させる。
【0085】
次に、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、SPマイクロ波の単一の周波数成分の周波数のスイープを開始する(ステップS104)。
【0086】
次に、制御装置11は、進行波の電力と、透過波の電力とを測定器22により測定する(ステップS105、測定処理)。制御装置11は、処理空間Sにプラズマが生成されていない状態で、測定処理を実行する。また、制御装置11は、SPマイクロ波の単一の周波数成分の周波数をスイープさせながら測定処理を実行する。
【0087】
次に、制御装置11は、進行波の電力と、透過波の電力とから算出される、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布に基づいて、共振構造体100の共振周波数fを算出する(ステップS106、算出処理)。制御装置11は、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布において共振構造体100のS21値が極小値となる周波数を共振構造体100の共振周波数fとして算出する。
【0088】
共振構造体100の機差、物性値及び使用環境に応じて、処理容器12内での実際の共振周波数fr2は、設計値に基づいて決定された共振周波数fr1からずれる(図14参照)。そして、共振周波数fr1と共振周波数fr2とがずれることにより、共振周波数fr1に対応する目標周波数帯B1と共振周波数fr2に対応する目標周波数帯B2とがずれる(図14参照)。かかる目標周波数帯の変化によりマイクロ波の周波数が目標周波数帯から逸脱している状態で、プラズマ処理用のマイクロ波を発生させて基板WPに対するプラズマ処理を開始すると、マイクロ波と共振構造体100とが共振しない。そのため、マイクロ波の電力がプラズマに十分には吸収されず、プラズマの高密度化が阻害される。
【0089】
そこで、本実施形態に係るプラズマ処理装置1では、処理容器12内でのプラズマ処理の実行前に、測定処理及び算出処理を行って、処理容器12内に設けられた実際の共振構造体100の共振周波数fを測定する。これにより、プラズマ処理装置1は、共振構造体100の機差等の影響を受けることなく、共振構造体100の共振周波数fを正確に測定することができる。
【0090】
次に、制御装置11は、ステップS106の算出処理により算出された共振周波数fよりも高い所定の周波数帯を目標周波数帯として決定する(ステップS107)。これにより、プラズマ処理装置1は、処理容器12内に設けられた実際の共振構造体100の共振周波数fに対応する目標周波数帯を正確に決定することができる。
【0091】
次に、処理容器12内への処理ガスの供給を一時的に停止し、処理容器12内に残留する処理ガスが排気される。その後、ゲートバルブGが開かれ、図示しないロボットアームにより未処理の基板WPが開口12cを介して処理容器12内に搬入され、静電チャック14cの上に載置される(S108)。そして、ゲートバルブGが閉じられる。そして、制御装置11は、バルブ38bを開き、予め定められた流量の処理ガスが処理容器12内に供給されるように流量制御器38cを制御することにより、処理容器12内へのガスの供給を再開する。そして、制御装置11は、排気装置56を制御し、処理容器12内の圧力を調整する。
【0092】
次に、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、第2マイクロ波を発生させ、処理容器12内の処理空間Sに第2マイクロ波を供給する(ステップS109)。第2マイクロ波は、第1マイクロ波よりも電力が大きい、プラズマ処理用のマイクロ波である。第2マイクロ波は、SPマイクロ波およびBBマイクロ波のいずれであってもよい。処理容器12内の処理空間Sに第2マイクロ波が供給されることにより、処理ガスのプラズマが生成され、基板WPに対するプラズマ処理が開始される。このとき、プラズマの電子密度が遮断密度に到達するものとする。プラズマの電子密度が遮断密度に到達すると、処理容器12内の処理空間Sにおいては、マイクロ波が伝搬できない。
【0093】
そこで、制御装置11は、プラズマ処理中に、マイクロ波出力装置16を制御して共振周波数fよりも高い目標周波数帯の周波数成分を含む第2マイクロ波を発生させることにより、当該第2マイクロ波と共振構造体100とを共振させる共振処理を実行する。ここで、目標周波数帯は、処理容器12内に設けられた実際の共振構造体100の共振周波数fに対応している。そのため、共振周波数fよりも高い目標周波数帯の周波数成分を含む第2マイクロ波を発生させることにより、第2マイクロ波と共振構造体100とを確実に共振させることができる。結果として、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる。
【0094】
すなわち、第2マイクロ波と共振構造体100との共振により、処理空間Sのプラズマの誘電率と透磁率をともに負にすることができ、上記の式(1)から分かる通り、処理空間Sでの第2マイクロ波の伝搬が可能となる。その結果、処理容器12内の処理空間Sにおいては、第2マイクロ波の伝搬がプラズマの表皮深さを越えて可能となり、プラズマに第2マイクロ波の電力が効率よく注入され、結果として、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマが生成される。
【0095】
次に、制御装置11は、第2マイクロ波の供給が開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS110)。ここでの所定時間は、第2マイクロ波の供給が開始されてから基板WPに対してエッチング等のプラズマ処理が完了するまでの時間である。所定時間が経過していない場合(ステップS110:No)、再びステップS109に示された処理が実行される。
【0096】
一方、所定時間が経過した場合(ステップS110:Yes)、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、第2マイクロ波の供給を停止する(ステップS111)。そして、制御装置11は、バルブ38bを閉じ、処理容器12内への処理ガスの供給を停止する(ステップS112)。そして、制御装置11は、排気装置56を制御し、処理容器12内の処理ガスを排気する。そして、ゲートバルブGが開かれ、図示しないロボットアームにより処理済みの基板WPが処理容器12内から搬出される(ステップS113)。基板WPの搬出を終えると、制御装置11は、プラズマ処理装置1における一連の動作を終了する。
【0097】
次に、図15に示したプラズマ処理装置1の具体的動作の変形例について図16及び図17を参照して説明する。図16は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1が実行する処理の手順の他の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、図16に例示された処理において、図15と同じ符号が付された処理は、図15を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0098】
ステップS102の後、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、第3マイクロ波を発生させ、アンテナ18を介して処理容器12内の処理空間Sに第3マイクロ波を供給する(ステップS103a)。第3マイクロ波は、プラズマ処理用のマイクロ波(つまり、第2マイクロ波)よりも電力が低いマイクロ波であって所定の周波数帯域幅に属する複数の周波数成分を含むマイクロ波(つまり、BBマイクロ波)である。制御装置11は、処理空間Sにプラズマが生成されないようにプラズマ処理用のマイクロ波よりも電力が低いBBマイクロ波を発生させる。
【0099】
次に、制御装置11は、進行波の電力と、透過波の電力とを測定器22により測定する(ステップS105、測定処理)。制御装置11は、処理空間Sにプラズマが生成されていない状態で、測定処理を実行する。また、制御装置11は、BBマイクロ波の複数の周波数成分の各周波数に関して測定処理を実行する。そして、ステップS106以降の処理が実行される。
【0100】
本例によれば、BBマイクロ波を用いることで、周波数をスイープすることなく測定処理を実行することができ、プラズマ処理装置1の処理速度を向上させることができる。
【0101】
図17は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1が実行する処理の手順の他の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、図17に例示された処理において、図15と同じ符号が付された処理は、図15を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0102】
ステップS102の後、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、第4マイクロ波を発生させ、アンテナ18を介して処理容器12内の処理空間Sに第4マイクロ波を供給する(ステップS121、加熱処理)。第4マイクロ波は、プラズマ処理用のマイクロ波(つまり、第2マイクロ波)の電力以上の電力を有するマイクロ波である。第4マイクロ波は、SPマイクロ波およびBBマイクロ波のいずれであってもよい。処理容器12内の処理空間Sに第4マイクロ波が供給されることにより、処理ガスのプラズマが生成される。そして、生成されたプラズマにより、共振構造体100が加熱される。
【0103】
次に、制御装置11は、加熱処理が開始されてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS122)。ここでの所定時間は、加熱処理が開始されてから共振構造体100における各共振器の熱膨張が完了するまでの時間であり、予め実験やシミュレーションにより測定される。所定時間が経過していない場合(ステップS122:No)、再びステップS121に示された処理が実行される。
【0104】
一方、所定時間が経過した場合(ステップS122:Yes)、制御装置11は、マイクロ波出力装置16を制御して、第4マイクロ波に代えて、第1マイクロ波を発生させる(ステップS103)。そして、測定処理(ステップS105)を含むステップS104以降の処理が実行される。
【0105】
このように、測定処理を実行する前に、加熱処理を実行することで、共振構造体100における各共振器が熱膨張した状態で共振周波数fの測定処理を行うことができる。このため、処理容器12内の処理空間Sに第2マイクロ波を供給する際に共振構造体100における各共振器の熱膨張が生じたとしても、共振構造体100の共振周波数fが測定時の値から変化することを抑制することができる。その結果、本例によれば、共振構造体100における各共振器の熱膨張の影響を抑制しつつ、共振構造体100の共振周波数fを高精度に測定することができる。
【0106】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出した。これに対し、第2実施形態では、共振構造体100の反射特性値(S11値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出する。
【0107】
図18は、第2実施形態におけるマイクロ波出力装置16、測定器22及びチューナ26の構成例を示す図である。なお、以下に説明する点を除き、図18に例示された構成において、図2と同じ符号が付された部位は、図2を用いて説明された部位と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0108】
第2実施形態に係るプラズマ処理装置1において、測定器22は、導波管21に設けられた方向性結合器22aを介して導波管21に接続されている。方向性結合器22aは、マイクロ波出力装置16から処理容器12側へ進行するマイクロ波(すなわち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を測定器22へ出力する。また、方向性結合器22aは、処理容器12側からマイクロ波出力装置16の出力端16tに戻るマイクロ波(すなわち、反射波)の一部を分岐させて、当該反射波の一部を測定器22へ出力する。測定器22は、方向性結合器22aから出力される進行波の一部に基づき、導波管21を伝搬する進行波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。また、測定器22は、方向性結合器22aから出力される反射波の一部に基づき、導波管21を伝搬する反射波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。
【0109】
ここで、共振構造体100の反射特性値(S11値)の周波数分布について説明する。共振構造体100のS11値は、進行波の電力をP1とし、反射波の電力をP3とすると、log(P3/P1)により算出される。共振構造体100のS11値の周波数分布は、図13に例示した共振構造体100のS21値の周波数分布と同様である。すなわち、処理空間Sに供給されるマイクロ波の周波数が共振構造体100の共振周波数f(=約2.35GHz)と一致する場合に、共振構造体100のS11値が極小値となり、マイクロ波と共振構造体100との共振が発生する。マイクロ波と共振構造体100との共振は、共振構造体100の共振周波数fよりも高い所定の周波数帯(例えば、共振周波数fから約0.1GHzの範囲)においても、維持される。
【0110】
次に、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1の具体的動作について図19を参照して説明する。図19は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、図19に例示された処理において、図15と同じ符号が付された処理は、図15を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0111】
ステップS104の後、制御装置11は、進行波の電力と、反射波の電力とを測定器22により測定する(ステップS105a、測定処理)。制御装置11は、処理空間Sにプラズマが生成されていない状態で、測定処理を実行する。また、制御装置11は、SPマイクロ波の単一の周波数成分の周波数をスイープさせながら測定処理を実行する。
【0112】
次に、制御装置11は、進行波の電力と、反射波の電力とから算出される、共振構造体100の反射特性値(S11値)の周波数分布に基づいて、共振構造体100の共振周波数fを算出する(ステップS106a、算出処理)。制御装置11は、共振構造体100の反射特性値(S11値)の周波数分布において共振構造体100のS11値が極小値となる周波数を共振構造体100の共振周波数fとして算出する。そして、ステップS107以降の処理が実行される。
【0113】
このように、第2実施形態では、共振構造体100の反射特性値(S11値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出する。これにより、プラズマ処理装置1は、共振構造体100の機差等の影響を受けることなく、共振構造体100の共振周波数fを正確に測定することができる。
【0114】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、進行波の電力と、透過波の電力とから算出される、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出した。これに対し、第3実施形態では、共振構造体100から側方に散乱する散乱波の電力を測定し、進行波の電力と、散乱波の電力とから算出される、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出する。
【0115】
図20は、第3実施形態におけるマイクロ波出力装置16、測定器22及びチューナ26の構成例を示す図である。なお、以下に説明する点を除き、図20に例示された構成において、図2と同じ符号が付された部位は、図2を用いて説明された部位と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0116】
第3実施形態に係るプラズマ処理装置1において、測定器22は、導波管21に設けられた方向性結合器22aを介して導波管21に接続されている。方向性結合器22aは、マイクロ波出力装置16から処理容器12側へ進行するマイクロ波(すなわち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を測定器22へ出力する。測定器22は、方向性結合器22aから出力される進行波の一部に基づき、導波管21を伝搬する進行波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。
【0117】
また、処理容器12の側壁には、アンテナ23が設けられており、測定器22は、導波路22bを介してアンテナ23に接続されている。アンテナ23は、処理容器12内に突出している。アンテナ23は、共振構造体100から側方に散乱するマイクロ波(すなわち、散乱波)を受信する。導波路22bは、アンテナ23によって受信された散乱波を処理容器12側から測定器22へ戻す。測定器22は、導波路22bから戻された散乱波に基づき、共振構造体100から側方に散乱する散乱波の電力を周波数ごとに測定し、測定結果を制御装置11へ出力する。
【0118】
ここで、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布について説明する。共振構造体100のS21値は、進行波の電力をP1とし、散乱波の電力をP4とすると、log(P4/P1)により算出される。共振構造体100のS21値の周波数分布は、図13に例示した共振構造体100のS21値の周波数分布と同様である。すなわち、処理空間Sに供給されるマイクロ波の周波数が共振構造体100の共振周波数f(=約2.35GHz)と一致する場合に、共振構造体100のS21値が極小値となり、マイクロ波と共振構造体100との共振が発生する。マイクロ波と共振構造体100との共振は、共振構造体100の共振周波数fよりも高い所定の周波数帯(例えば、共振周波数fから約0.1GHzの範囲)においても、維持される。
【0119】
次に、第3実施形態に係るプラズマ処理装置1の具体的動作について図21を参照して説明する。図21は、第3実施形態に係るプラズマ処理装置1が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、図21に例示された処理において、図15と同じ符号が付された処理は、図15を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0120】
ステップS104の後、制御装置11は、進行波の電力と、散乱波の電力とを測定器22により測定する(ステップS105b、測定処理)。制御装置11は、処理空間Sにプラズマが生成されていない状態で、測定処理を実行する。また、制御装置11は、SPマイクロ波の単一の周波数成分の周波数をスイープさせながら測定処理を実行する。
【0121】
次に、制御装置11は、進行波の電力と、散乱波の電力とから算出される、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布に基づいて、共振構造体100の共振周波数fを算出する(ステップS106b、算出処理)。制御装置11は、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布において共振構造体100のS21値が極小値となる周波数を共振構造体100の共振周波数fとして算出する。そして、ステップS107以降の処理が実行される。
【0122】
このように、第3実施形態では、共振構造体100から側方に散乱する散乱波の電力を測定し、進行波の電力と、散乱波の電力とから算出される、共振構造体100の透過特性値(S21値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出する。これにより、プラズマ処理装置1は、共振構造体100の機差等の影響を受けることなく、共振構造体100の共振周波数fを正確に測定することができる。
【0123】
(その他の変形例)
上記実施形態では、測定器22は、進行波の電力と、透過波、反射波又は散乱波の電力とを周波数ごとに測定する場合を例に説明した。開示技術はこれに限らず、進行波の電力の測定は、省略されてもよい。すなわち、測定器22は、透過波、反射波又は散乱波の電力を周波数ごとに測定してもよい。かかる場合、制御装置11は、プラズマ処理の実行前に、測定処理において、透過波、反射波又は散乱波の電力を測定器22により測定する。そして、制御装置11は、透過波、反射波又は散乱波の電力の周波数分布に基づいて、共振構造体100の共振周波数fを算出する。具体的には、制御装置11は、透過波、反射波又は散乱波の電力の周波数分布において透過波、反射波又は散乱波の電力が極小値となる周波数を共振構造体100の共振周波数fとして算出する。
【0124】
ここで、進行波の電力が周波数に対してほぼ変化しない場合、透過波、反射波又は散乱波の電力の周波数分布は、共振構造体100の透過特性値(S21値)又は反射特性値(S11値)の周波数分布とほぼ同様の分布となる。かかる場合、制御装置11は、進行波の電力の測定を測定することなく、透過波、反射波又は散乱波の電力の周波数分布を用いて共振周波数fを算出することができる。これにより、共振構造体100の透過特性値(S21値)又は反射特性値(S11値)の周波数分布を用いて共振周波数fを算出する場合と比べて、処理負荷を低減することができる。
【0125】
上述してきたように、実施形態に係るプラズマ処理装置(例えば、プラズマ処理装置1)は、処理容器(例えば、処理容器12)と、電磁波発生器(例えば、マイクロ波出力装置16)と、共振構造体(例えば、共振構造体100)と、測定部(例えば、測定器22)と、制御部(例えば、制御装置11)とを備える。処理容器は、プラズマ処理が行われる処理空間(例えば、処理空間S)を提供する。電磁波発生器は、処理空間に供給される電磁波(例えば、マイクロ波)を発生させる。共振構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器(例えば、共振器101)を配列して形成され、処理容器内に位置する。測定部は、電磁波発生器から共振構造体へ進行する電磁波の電力と、共振構造体での電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力とを周波数ごとに測定する。制御部は、プラズマ処理の実行前に、電磁波の電力と、透過波、反射波又は散乱波の電力とを測定部により測定する測定処理と、電磁波の電力と透過波、反射波又は散乱波の電力とから算出される、共振構造体の特性値(例えば、透過特性値(S21値)又は反射特性値(S11値))の周波数分布に基づいて、共振構造体の共振周波数(例えば、共振周波数f)を算出する算出処理とを実行する。したがって、実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる。
【0126】
また、制御部は、プラズマ処理中に、電磁波発生器を制御して共振周波数よりも高い目標周波数帯の周波数成分を含む電磁波を発生させることにより、当該電磁波と共振構造体とを共振させる共振処理を実行してもよい。これにより、プラズマの表皮深さを越えた広範囲で高密度なプラズマを生成することができる。
【0127】
また、制御部は、電磁波発生器を制御して、処理空間にプラズマが生成されないようにプラズマ処理の実行時に発生させる電磁波よりも電力が低い電磁波を発生させ、処理空間にプラズマが生成されていない状態で、測定処理を実行してもよい。これにより、プラズマの影響を排除しながら測定処理を実行することができる。
【0128】
また、制御部は、電磁波発生器を制御して、プラズマ処理の実行時に発生させる電磁波よりも電力が低い電磁波であって、単一の周波数成分を含む電磁波(例えば、SPマイクロ波)を発生させ、電磁波の単一の周波数成分の周波数をスイープさせながら測定処理を実行してもよい。これにより、予め指定された周波数帯において、電磁波の電力と、透過波、反射波又は散乱波の電力とを迅速に測定することができる。
【0129】
また、制御部は、電磁波発生器を制御して、プラズマ処理の実行時に発生させる電磁波よりも電力が低い電磁波であって、所定の周波数帯域幅に属する複数の周波数成分を含む電磁波(例えば、BBマイクロ波)を発生させ、電磁波の複数の周波数成分の各周波数に関して測定処理を実行してもよい。これにより、周波数をスイープすることなく測定処理を実行することができ、プラズマ処理装置の処理速度を向上させることができる。
【0130】
制御部は、測定処理を実行する前に、電磁波発生器を制御してプラズマ処理の実行時に発生させる電磁波の電力以上の電力を有する電磁波を発生させることにより、処理空間にプラズマを生成し、生成されたプラズマを用いて共振構造体を加熱する加熱処理を実行してもよい。これにより、共振構造体における各共振器の熱膨張の影響を抑制しつつ、共振構造体の共振周波数を高精度に測定することができる。
【0131】
実施形態に係るプラズマ処理装置は、電磁波発生器によって発生される電磁波を処理空間側へ導く導波管(例えば、導波管21)を備えていてもよい。かかる場合、測定部は、導波管を伝搬する電磁波の電力と、導波管を伝搬する反射波の電力とを周波数ごとに測定してもよい。これにより、処理空間側により近い位置において、電磁波の電力と反射波の電力とを高精度に測定することができる。
【0132】
共振構造体は、第1面(例えば、下面20a)を処理空間に対向させて設けられた部材の第1面に沿って配置されてもよい。これにより、処理容器内の任意の位置に位置する共振構造体を用いて、プラズマの広範囲での高密度化を実現することができる。
【0133】
実施形態に係るプラズマ処理装置は、第1面(例えば、下面20a)を処理空間に対向させて設けられた誘電体(例えば、誘電体窓20)と、誘電体を介して電磁波を処理空間に供給する電磁波供給部(例えば、アンテナ18)とをさらに備えてもよい。そして、共振構造体は、誘電体の第1面に沿って配置されてもよい。これにより、電磁波の電力をプラズマに効率よく吸収することができることから、プラズマの広範囲での高密度化を促進することができる。
【0134】
また、実施形態に係るプラズマ処理装置(例えば、プラズマ処理装置1)は、処理容器(例えば、処理容器12)と、電磁波発生器(例えば、マイクロ波出力装置16)と、共振構造体(例えば、共振構造体100)と、測定部(例えば、測定器22)と、制御部(例えば、制御装置11)とを備える。処理容器は、プラズマ処理が行われる処理空間(例えば、処理空間S)を提供する。電磁波発生器は、処理空間に供給される電磁波(例えば、マイクロ波)を発生させる。共振構造体は、電磁波の磁界成分と共振可能であり且つサイズが電磁波の波長よりも小さい複数の共振器(例えば、共振器101)を配列して形成され、処理容器内に位置する。測定部は、共振構造体での電磁波の透過波、反射波又は散乱波の電力を周波数ごとに測定する。制御部は、プラズマ処理の実行前に、透過波、反射波又は散乱波の電力を測定部により測定する測定処理と、透過波、反射波又は散乱波の電力の周波数分布に基づいて、共振構造体の共振周波数(例えば、共振周波数f)を算出する算出処理とを実行する。したがって、実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、共振によるプラズマの高密度化を安定的に行うことができる。また、実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、共振構造体の透過特性値(S21値)又は反射特性値(S11値)の周波数分布を用いて共振周波数を算出する場合と比べて、処理負荷を低減することができる。
【0135】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 プラズマ処理装置
10 装置本体
11 制御装置
12 処理容器
14 ステージ
14a 基台
14b エッジリング
14c 静電チャック
16 マイクロ波出力装置
18 アンテナ
20 誘電体窓
20a 下面
20b 上面
21 導波管
22 測定器
22a 方向性結合器
22b 導波路
22c フィルタ
22d 減衰器
23 アンテナ
26 チューナ
27 モード変換器
28 同軸導波管
30 スロット板
32 誘電体板
34 冷却ジャケット
38 ガス供給部
100 共振構造体
101 共振器
101A 第1共振器
101B 第2共振器
101C 第3共振器
111A~111C リング部材
112A~112C 誘電体板
S 処理空間
WP 基板
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