(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180347
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ハイブリッド型化合物又はその塩
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20231214BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20231214BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20231214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C07D471/04 117N
C07D471/04 CSP
C07D519/00 311
A61K31/519
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093574
(22)【出願日】2022-06-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 良広
(72)【発明者】
【氏名】國嶋 崇隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 光
(72)【発明者】
【氏名】矢野 聖二
(72)【発明者】
【氏名】新井 祥子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 郁巳
(72)【発明者】
【氏名】荒川 大
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 泰英
【テーマコード(参考)】
4C065
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065BB09
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ04
4C065KK09
4C065LL07
4C065PP03
4C065PP04
4C065PP06
4C065PP07
4C065PP09
4C065PP11
4C072MM02
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】Ras変異がんに対して有効に作用し得る抗がん剤の提供。
【解決手段】トラメチニブと、Akt阻害薬とをリンカーを介して連結してなるハイブリッド型化合物又はその塩を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラメチニブと、Akt阻害薬とをリンカーを介して連結してなるハイブリッド型化合物又はその塩。
【請求項2】
Akt阻害薬がアフレセルチブ、MK2206、1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン又は2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカンである、請求項1記載のハイブリッド型化合物又はその塩。
【請求項3】
リンカーが脂肪族鎖、オキシエチレン基、フラン環、及びトリアジン環から選択される少なくとも1種の構造を有するリンカーである、請求項1記載のハイブリッド型化合物又はその塩。
【請求項4】
前記トラメチニブと、Akt阻害薬との間のリンカー長が、原子数で2~25個である、請求項1記載のハイブリッド型化合物又はその塩。
【請求項5】
下記式(I)で表されるトラメチニブ部と、下記式(II-1)~(II-4)から選択されるAkt阻害薬部と、下記式(III-1)~(III-4)から選択されるリンカー部とを有するハイブリッド型化合物又はその塩。
【化1】
(式(I)において、*はリンカー部との結合部位である。)
【化2】
(式(II-1)~(II-4)において、**はリンカー部との結合部位である。)
【化3】
(式(III-1)~(III-4)において、*はトラメチニブ部との結合部位であり、**はAkt阻害薬部との結合部位であり、
式(III-1)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはなく、
式(III-2)において、qは0又は1であり、
式(III-3)において、rは1~4の整数である。)
【請求項6】
下記式(1)~(14)から選択される構造を有する、ハイブリッド型化合物又はその塩。
【化4】
[式(1)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化5】
[式(2)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化6】
[式(3)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化7】
[式(4)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化8】
[式(5)において、qは0又は1である。]
【化9】
[式(6)において、qは0又は1である。]
【化10】
[式(7)において、rは1~4の整数である。]
【化11】
[式(8)において、rは1~4の整数である。]
【化12】
[式(9)において、rは1~4の整数である。]
【化13】
[式(10)において、rは1~4の整数である。]
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のハイブリッド型化合物又はその塩を有効成分とする、Ras変異癌の治療剤。
【請求項8】
請求項7記載の治療剤を含有する医薬組成物。
【請求項9】
Ras変異癌の治療のための更なる薬剤を含有する、請求項8記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の薬剤をリンカーを介して連結してなるハイブリッド型化合物又はその塩に関し、より具体的には、トラメチニブとAkt阻害薬とを連結してなるハイブリッド型化合物又はその塩に関する。本発明はまた、上記ハイブリッド型化合物を有効成分とする治療剤及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Rasタンパク質(本明細書において以下「Ras」と記載する)は、細胞表面に存在するタンパク質であって、細胞増殖の制御に関与することが知られている。Rasが変異したがん細胞では、Ras下流のシグナルが異常に活性化して、細胞の異常な増殖がもたらされる。このようなRas変異に起因するがんは、がん全体の約3割を占める頻度の高いがんであり、例えば膵臓がんでのRas変異率は約9割、甲状腺がんでは約6割、大腸がんでは約5割、非小細胞肺がんでは約3割がRas変異を有することが知られている。
【0003】
Ras変異及びその活性化は強力ながん化ドライバーであり、そのため、Ras分子を標的とする抗がん剤の開発が試みられてきた。しかしながら、Rasタンパク質にはこれ自身を標的とするための低分子ポケットがないことが知られており、Rasを標的とすることは困難であると考えられている。
【0004】
そこで、Ras阻害のために、Rasの下流シグナル、すなわち細胞増殖促進及びアポトーシス抑制のいずれか又は双方を阻害することが有効と考えられ、種々検討されている。その中で、2種の薬剤をリンカーを介して連結した化合物の合成についても報告されている(例えば特許文献1~5及び非特許文献1)。
【0005】
一方、Rasの下流にあるMEKタンパク質(本明細書において以下「MEK」と記載する)の阻害剤であるトラメチニブは、MEKといわゆる「誘導適合(Induced fit)」型の結合をし、安定な複合体を形成することが報告されている(非特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016-516702号
【特許文献2】特表2019-519593号
【特許文献3】特表2017-513862号
【特許文献4】国際公開第2019/041733号
【特許文献5】特表2017-531624号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ACS Med Chem. Lett. 2017, 8, 808-813
【非特許文献2】PNAS, 2006, 102, 18908-13
【非特許文献3】PNAS, 2008, 105, 11182-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
Ras変異がんに対する化学療法としては、現在主として代謝拮抗薬の使用が選択されており、近年では免疫チェックポイント阻害剤の併用も検討されつつあるが、上記の通り、Ras自体を標的とする有効な治療薬は存在していない。
また、Ras下流シグナル分子を標的とする薬剤の併用は、薬剤同士の薬物動態が異なること等から、意図する併用効果をもたらすことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記の課題に鑑み、MEKと安定な複合体を形成するトラメチニブに着目して、MEK阻害とは異なる作用を有する薬剤と連結することで、MEK阻害作用に加えてPI3K/Akt/mTOR経路の阻害作用も併せ持つハイブリッド型化合物又はその塩の取得を検討した。
【0010】
その結果、本発明者等は、トラメチニブをAkt阻害薬と適切なリンカー構造を用いて連結した新規のハイブリッド型化合物又はその塩を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は例えば以下を提供するものである。
[1] トラメチニブと、Akt阻害薬とをリンカーを介して連結してなるハイブリッド型化合物又はその塩。
[2] Akt阻害薬がアフレセルチブ、MK2206、1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン又は2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカンである、[1]記載のハイブリッド型化合物又はその塩。
[3] リンカーが脂肪族鎖、オキシエチレン基、フラン環、及びトリアジン環から選択される少なくとも1種の構造を有するリンカーである、[1]又は[2]記載のハイブリッド型化合物又はその塩。
[4] 前記トラメチニブと、Akt阻害薬との間のリンカー長が、原子数で2~25個である、[1]~[3]のいずれか記載のハイブリッド型化合物又はその塩。
[5] 下記式(I)で表されるトラメチニブ部と、下記式(II-1)~(II-4)から選択されるAkt阻害薬部と、下記式(III-1)~(III-4)から選択されるリンカー部とを有するハイブリッド型化合物又はその塩。
【化1】
(式(I)において、*はリンカー部との結合部位である。)
【化2】
(式(II-1)~(II-4)において、**はリンカー部との結合部位である。)
【化3】
(式(III-1)~(III-4)において、*はトラメチニブ部との結合部位であり、**はAkt阻害薬部との結合部位であり、
式(III-1)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはなく、
式(III-2)において、qは0又は1であり、
式(III-3)において、rは1~4の整数である。)
【0012】
[6] 下記式(1)~(14)から選択される構造を有する、ハイブリッド型化合物又はその塩。
【化4】
[式(1)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化5】
[式(2)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化6】
[式(3)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化7】
[式(4)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【化8】
[式(5)において、qは0又は1である。]
【化9】
[式(6)において、qは0又は1である。]
【化10】
[式(7)において、rは1~4の整数である。]
【化11】
[式(8)において、rは1~4の整数である。]
【化12】
[式(9)において、rは1~4の整数である。]
【化13】
[式(10)において、rは1~4の整数である。]
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
[7] [1]~[6]のいずれか記載のハイブリッド型化合物又はその塩を有効成分とする、Ras変異癌の治療剤。
[8] [7]記載の治療剤を含有する医薬組成物。
[9] Ras変異癌の治療のための更なる薬剤を含有する、[8]記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、新規なハイブリッド型化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例26におけるMK2206及びトラメチニブ混合物1、MK2206及びトラメチニブ混合物2、アフレセルチブ及びトラメチニブ混合物1、アフレセルチブ及びトラメチニブ混合物2のトラメチニブの血中濃度推移を示す。
【
図2】実施例26におけるアフレセルチブ及びトラメチニブ混合物1、アフレセルチブ及びトラメチニブ混合物2のアフレセルチブの血中濃度推移を示す。
【
図3】実施例26における(II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の血中濃度推移を示す。
【
図4】実施例26における(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の血中濃度推移を示す。
【
図5】実施例26における(II-1)-(III-3(r=1))-(I)の血中濃度推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.ハイブリッド型化合物又はその塩]
本発明は、トラメチニブと、Akt阻害薬とをリンカーを介して連結してなるハイブリッド型化合物又はその塩を提供する。ハイブリッド型化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0016】
<トラメチニブ>
トラメチニブ(tramethnib)は、MEK阻害効果により、細胞の増殖に寄与するMAPK/ERKシグナル伝達経路を阻害して抗腫瘍効果を発揮することが知られる抗がん剤であり、その分子量は約615である。
【0017】
本発明のハイブリッド型化合物は、特に限定するものではないが、例えばトラメチニブのアセチルアミノ基を改変することによって、リンカー分子と連結して合成することができる。アセチルアミノ基の改変は、限定するものではないが、例えば脱アセチル化であってよい。
【0018】
<Akt阻害薬>
Ras下流シグナルを構成するAktタンパク質(本明細書において以下「Akt」とも記載する)は、セリン/スレオニンキナーゼであり、プロテインキナーゼBと称されることもある。Aktの活性化はアポトーシス誘導を抑制し、従ってAkt阻害薬は、アポトーシスを誘導し得る。
Akt阻害薬としては、例えばアフレセルチブ(Afuresertib)、MK2206、ミランセルチブ(Miransertib)、カピバセルチブ(Capivasertib)、イパタセルチブ(Ipatasertib)、GSK690693、1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン(1-(7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)piperidin-4-amine)又は2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン(2-(5-chloro-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)-2,8-diazaspiro[4.5]decane)等が挙げられる。Akt阻害薬としては、アフレセルチブ、MK2206、1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン又は2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカンであることが好ましい態様の一つである。
【0019】
<アフレセルチブ>
アフレセルチブ(Afuresertib、CAS: 1047644-62-1)は、約427の分子量を有する抗がん剤である。
【0020】
アフレセルチブとトラメチニブとをリンカーを介して連結してなる本発明のハイブリッド型化合物では、特に限定するものではないが、例えばアフレセルチブ中のアミノ基を改変することによって、リンカー分子と連結することができる。アミノ基の改変は、限定するものではないが、例えばアシル化又はアルキル化であってよい。あるいは、アフレセルチブは、アミノ基の改変なしでリンカーと連結することができる。
【0021】
<MK2206>
MK2206(CAS: 1032350-13-2)は、アロステリックAkt阻害薬として知られ、通常二塩酸塩として供給されている。MK2206の分子量は約407である。
【0022】
MK2206とトラメチニブとをリンカーを介して連結してなる本発明のハイブリッド型化合物では、特に限定するものではないが、例えばMK2206中のアミノ基を改変することによって、リンカー分子と連結することができる。あるいは、MK2206は、アミノ基の改変なしでリンカーと連結することができる。
【0023】
<1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン>
1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンは、約217の分子量を有するAkt阻害薬であり、下記式(X)で表される。
【0024】
【0025】
1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンとトラメチニブとをリンカーを介して連結してなる本発明のハイブリッド型化合物では、特に限定するものではないが、例えば1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン中のアミノ基を改変することによって、リンカー分子と連結することができる。あるいは、1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミンは、アミノ基の改変なしでリンカーと連結することができる。
【0026】
<2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン>
2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカンは、約292の分子量を有するAkt阻害薬であり、下記式(Y)で表される。
【0027】
【0028】
2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカンとトラメチニブとをリンカーを介して連結してなる本発明のハイブリッド型化合物では、特に限定するものではないが、例えば2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン中の2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン環に含まれるNH部分をリンカーと連結することができる。
【0029】
<リンカー>
本発明のハイブリッド型化合物又はその塩において使用できるリンカーとしては、当分野で使用されるリンカーのいずれも使用することができ、例えば親水性を有するリンカー、疎水性を有するリンカー、親水性部と疎水性部とを有するリンカーのいずれでも好適に使用することができる。
【0030】
リンカーが脂肪族鎖、オキシエチレン基、フラン環、及びトリアジン環から選択される少なくとも1種の構造を有するリンカーであることが好ましい。前記構造は、リンカー中に複数含まれていてもよい。リンカー中に、オキシエチレン基(-OCH2CH2-)が複数連続して含まれている場合、リンカー中にPEG(ポリエチレングリコール)を有すると言える。
【0031】
前記トラメチニブと、Akt阻害薬との間のリンカー長が、原子数で2~25個であることが好ましい。リンカー長は、前記トラメチニブと、Akt阻害薬との間に存在する原子数を意味する。なお、リンカーが環構造を有する場合には、リンカー長は、前記トラメチニブと、Akt阻害薬との間に存在する最小の原子数を意味する。例えば後述の実施例で得た(II-1)-(III-1(m=1, n=0))-(I)のリンカー長は原子数が2であり、(II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)のリンカー長は原子数が6であり、(II-1)-(III-2(q=1))-(I)のリンカー長は原子数が25であり、(II-1)-(III-3(r=1))-(I)のリンカー長は原子数が9であり、(II-1)-(III-3(r=3))-(I)のリンカー長は原子数が17であり、(II-3)-(III-4)-(I)のリンカー長は原子数が7である。なお、(II-1)-(III-3(r=1))-(I)においては、Akt阻害薬部である(II-1)とトラメチニブ部である(I)との間に存在する原子数はその数え方により、9の場合と、10が考えられるが、リンカー長は最小の原子数である9である。また、(II-3)-(III-4)-(I)においては、Akt阻害薬部である(II-3)とトラメチニブ部である(I)との間に存在する原子数はその数え方により、7の場合と、9が考えられるが、リンカー長は最小の原子数である7である。
【0032】
本発明のハイブリッド型化合物又はその塩としては、下記式(I)で表されるトラメチニブ部と、下記式(II-1)~(II-4)から選択されるAkt阻害薬部と、下記式(III-1)~(III-4)から選択されるリンカー部とを有するハイブリッド型化合物又はその塩であることが好ましい態様の一つである。なお、本発明において、ハイブリッド型化合物の構造を、上記式番号((I)、(II-1)~(II-4)、(III-1)~(III-4))をハイフンで繋いで表すことがある。例えば、式(I)で表されるトラメチニブ部と、式(II-1)で表されるAkt阻害薬部と、式(III-1)(但しm=1,n=0)で表されるリンカー部とを有するハイブリッド型化合物は、(II-1)-(III-1(m=1, n=0))-(I)と表すことがある。
【0033】
【化20】
(式(I)において、*はリンカー部との結合部位である。)
【0034】
【化21】
(式(II-1)~(II-4)において、**はリンカー部との結合部位である。)
【0035】
【0036】
(式(III-1)~(III-4)において、*はトラメチニブ部との結合部位であり、**はAkt阻害薬部との結合部位であり、
式(III-1)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはなく、
式(III-2)において、qは0又は1であり、
式(III-3)において、rは1~4の整数である。)
【0037】
式(III-1)において、nが0である時、mは1~15の整数であり、nが1~3の整数である時、mは好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数である。また、nは0~2の整数であることが好ましい態様の一つである。
【0038】
式(III-2)において、qは0又は1であり、qは0であることが好ましい態様の一つである。また、式(III-3)において、rは1~4の整数であり、1~3の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0039】
本発明のハイブリッド型化合物又はその塩としては、より具体的には下記式(1)~(14)から選択される構造を有する、ハイブリッド型化合物又はその塩が好ましい。なお、下記式(1)~(14)において、m、n、q又はrが存在する場合には、その好適範囲は上述の式(III-1)におけるm、n、式(III-2)におけるq、式(III-3)におけるrと同様である。
【0040】
【化23】
[式(1)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【0041】
【化24】
[式(2)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【0042】
【化25】
[式(3)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【0043】
【化26】
[式(4)において、mは0~15の整数であり、nは0~3の整数であり、mとnとが同時に0になることはない。]
【0044】
【化27】
[式(5)において、qは0又は1である。]
【0045】
【化28】
[式(6)において、qは0又は1である。]
【0046】
【化29】
[式(7)において、rは1~4の整数である。]
【0047】
【化30】
[式(8)において、rは1~4の整数である。]
【0048】
【化31】
[式(9)において、rは1~4の整数である。]
【0049】
【化32】
[式(10)において、rは1~4の整数である。]
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
本発明のハイブリッド型化合物又はその塩は、Ras変異がん細胞の増殖を阻害する活性を有し、かつトラメチニブとMEKとの持続的な結合性を有し、細胞内において安定してAkt阻害薬の作用を発揮させることができると考えられる。ハイブリッド型化合物又はその塩とすることで、複数の薬剤を併用する場合に観察される薬物動態のズレがなくなり、MEK阻害作用とAkt阻害作用の双方の増強が期待される。
【0055】
[2.治療剤及び医薬組成物]
本発明はまた、本発明のハイブリッド型化合物又はその塩を有効成分とする、Ras変異がんの治療剤を提供する。
本発明の治療剤による治療の対象としては、限定するものではないが、例えば膵臓がん、甲状腺がん、大腸がん、肺がん等のRas変異がんが挙げられる。
【0056】
上記の本発明の治療剤はまた、単独又は他の有効成分と組み合わせて、医薬組成物の形態とすることができる。すなわち、本発明の一態様として、上記の本発明の治療剤を含有する医薬組成物が挙げられる。また、本発明の医薬組成物は、Ras変異癌の治療のための更なる薬剤(他の有効成分)を含有することが好ましい態様の一つである。医薬組成物には、本発明の治療剤及び他の有効成分の他に、投与形態に応じて、当分野で通常使用される担体、賦形剤、緩衝剤、安定化剤等を含めることができる。
【0057】
本発明の治療剤又は医薬組成物は、限定するものではないが、例えば患部若しくは患部の近辺に注射又は注入により投与する局所投与又は全身投与とすることができる。本発明の治療剤の投与量は、患者の体重、年齢、疾患の重篤度等に応じて変動するものであり、特に限定するものではないが、例えば0.0001~1mg/kg体重の範囲で1日1回~数回、2日毎、3日毎、1週間毎、2週間毎に投与することが可能である。
【0058】
本発明の治療剤又は医薬組成物は、単独で使用することもできるが、異なるメカニズムの抗がん剤及び抗がん治療と組み合わせて使用することもできる。異なるメカニズムの抗がん剤としては、限定するものではないが、例えば分子標的薬、代謝拮抗薬、免疫チェックポイント阻害剤、ホルモン治療、放射線治療等が挙げられる。
【0059】
[3.ハイブリッド型化合物又はその塩の製造方法]
本発明のハイブリッド型化合物又はその塩は、当分野において通常用いられる手順や、後述の実施例に記載の方法に従って製造することが可能であり、その製造方法は特に限定されるものではない。ハイブリッド型化合物の塩としては、ハイブリッド型化合物を製造した後に塩にしてもよく、原料の少なくとも一部に塩を使用し、直接ハイブリッド型化合物の塩を製造してもよい。トラメチニブとAkt阻害薬をリンカーで結合させてハイブリッド型化合物を合成する場合、次の条件を満たすことが好ましい。
【0060】
(1)双方の化合物分子(トラメチニブ、Akt阻害薬)が誘導体化の足がかりとなる官能基を含むこと。このような官能基を含まない場合には、有機合成的な修飾を施しやすいように予め官能基変換を行う必要がある。
(2)リンカーの連結により、薬物活性が大きく損なわれないこと。
トラメチニブにリンカーを連結する際は上記(1)について、アフレセルチブの場合は上記(2)について、それぞれ解決すべき課題があった。以下に詳細を説明する。
【0061】
トラメチニブへのリンカー連結について
トラメチニブのN-アセチル基部位からリンカーを伸張した化合物JTP-74100はMEK阻害活性を保持することが報告されている(Yoshida, T.等, Identification and Characterization of a Novel Chemotype MEK Inhibitor Able to Alter the Phosphorylation State of MEK1/2. Oncotarget 2012, 3, 1533-1545)。従って、トラメチニブのN-脱アセチル化体である下記の化合物(本明細書においてH-(I)と表記する)を合成原料とし、そのアミノ基をアシル化またはアルキル化反応により修飾すれば、MEK阻害活性を損なうことなく幅広い種類のリンカーを効率的に付与できると考えられる。
【0062】
しかしながら、トラメチニブを脱アセチル化した下記の化合物(本明細書においてH-(I)と表記する)の既知の合成法は、いずれも低分子ビルディングブロックを合成原料としており、長い工程数を要する(Abe, H.等, Discovery of a Highly Potent and Selective MEK Inhibitor: GSK1120212 (JTP-74057 DMSO Solvate). ACS Med. Chem. Lett. 2011, 2, 320-324; WO 2005121142; CN 109320513; IN 2014CH05116; CN 103819471)。そこで、本発明者等は、容易に入手可能な試薬を用いたトラメチニブのN-脱アセチル化によるH-(I)の合成について検討を行った。
【0063】
アミド結合は化学的安定性が高く、その切断は一般的に過酷な反応条件を必要とするため、多数の官能基を含む分子中のN-アセチル基の選択的な除去は容易ではない(Wuts, P. G. M. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 5th ed.; John Wiley & Sons, 2014, 993)。そこで塩基、還元剤、酸など様々な反応条件を検討した結果、HClを用いた酸性条件下にてトラメチニブのN-脱アセチル化が首尾よく進行し、収率86%でH-(I)が得られることが見出された。このH-(I)の新規合成法は、本発明のハイブリッド型化合物を効率的に合成するために特に有用なステップとなり得る。
【0064】
【0065】
アフレセルチブへのリンカー連結について
アフレセルチブは、分子構造中のアミノ基を起点とする誘導体化が有機合成的には容易である一方、このアミノ基の修飾がAkt阻害活性に与える影響に関する知見は知られていなかった。そこで本発明者等は、アフレセルチブへのリンカー結合法を検討すべく、アミノ基のアセチル化誘導体(本明細書において(II-1)-CO-CH3と表記する)とメチル化誘導体(本明細書において(II-1)-CH3と表記する)をそれぞれ合成し、Akt阻害活性の評価を行った。その結果、アフレセルチブと比較して、(II-1)-CO-CH3ではAkt活性が大きく減弱する一方、(II-1)-CH3では活性が保持されることが分かった。この結果を受け、アフレセルチブとリンカーを結合させる際は、アミノ基のアシル化ではなくアルキル化を利用することとした。
【0066】
MK2206においても、1つのアミノ基を分子の末端に有するAkt阻害薬である点がアフレセルチブと共通していることから、アミノ基のアシル化は活性を減弱させる可能性があると考え、リンカーの結合には同様にアミノ基のアルキル化を利用することとした。
【0067】
【0068】
ハイブリッド型化合物の合成法
従って、本発明のハイブリッド型化合物の合成は、以下のスキームに従って行うことが好適であり得る。すなわちH-(I)、アミノ基を有するAkt阻害薬、両末端に脱離基LG1, LG2を有するリンカー化合物を合成原料に用いて、H-(I)とAkt阻害薬のアミノ基を、リンカー化合物の2つの脱離基とそれぞれ反応させることができる。この際の反応として、アミノ基のアシル化またはアルキル化反応を利用することができる。ただし、Akt阻害薬とリンカーの結合には、上記した通り、Akt阻害活性維持の点からアルキル化反応を用いることが望ましい。またリンカーに両化合物を結合させる順序は前後可能だが、Akt阻害薬に多様性を与える目的では、H-(I)にリンカーを先に結合させることが望ましい。
【0069】
従って、本発明のハイブリッド型化合物の製造方法の一例としては、以下:
(i)トラメチニブを脱アセチル化してトラメチニブ誘導体を形成するステップ、
(ii)上記トラメチニブ誘導体とリンカーを連結してトラメチニブ-リンカー連結体を形成するステップ、
(iii)上記トラメチニブ-リンカー連結体とAkt阻害薬をAkt阻害薬のアルキル化を介して連結するステップ
を含む。
【実施例0070】
以下に本発明を実施例によって更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[合成例1:トラメチニブ誘導体の合成]
以下のようにして下記構造を有するトラメチニブのN-脱アセチル化誘導体(H-(I))を合成した。
【0072】
【0073】
トラメチニブ(196.4 mg, 0.300 mmol)、HCl水溶液(1.6 M, 1.2 mL)、及び EtOH (4.8 mL)の混合物を80 ℃で46時間加熱し、その後0 ℃に冷却した。NH3水溶液(28 wt%) を添加して反応混合物を中和後、CH2Cl2 (40 mL)を用いて抽出した。有機層をH2O (40 mL) と飽和食塩水(40 mL) で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/EtOAc = 1:1)で精製し、白色固体(147.1 mg,86%)を得て、トラメチニブのN-脱アセチル化誘導体(H-(I))であることを確認した。前記操作を複数回行い、下記実施例1~実施例22を実施する際に必要な量のH-(I)を合成した。1H NMR [400 MHz, (CD3)2SO]: δ 11.07 (s, 1H), 7.78 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.06 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.88 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 6.70-6.50 (m, 2H), 6.46 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.27 (br s, 2H), 3.07 (s, 3H), 2.74-2.52 (m, 1H), 1.41 (s, 3H), 1.13-0.85 (m, 2H), 0.75-0.55 (m, 2H); LRMS (ESI): m/z 574 ([M + H]+)。
【0074】
[実施例1:(II-1)-(III-1(m=1, n=0))-(I)の合成]
<1.Br-(III-1(m=1, n=0))-(I)>
下記構造を有するBr-(III-1(m=1, n=0))-(I)を合成した。
【0075】
【0076】
合成例1で合成したH-(I) (34.3 mg, 0.0600 mmol)とEt3N (12.5 μL, 0.0900 mmol)のCH2Cl2(1.20 mL) 懸濁液に対し、2-ブロモアセチルブロミド(11.0 μL, 0.130 mmol)を0 ℃ で添加した。反応混合物を室温に昇温し2時間撹拌した後、シリカのパッドに通過させた(EtOAc)。溶離液を減圧下で濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc= 1:1)により精製し、Br-(III-1(m=1, n=0))-(I)を白色固体として得た(37.4 mg, 90%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 8.36 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.54-7.35 (m, 4H), 7.07 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.71 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 3.99 (s, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.74 (tt, J = 6.8, 4.0 Hz, 1H), 1.41 (s, 3H), 1.23-1.03 (m, 2H), 0.90-0.70 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 164.8, 164.1, 164.0, 156.4, 153.9, 152.1, 151.9, 144.9, 140.4, 138.1, 134.12, 134.08, 129.4, 128.2, 128.1, 126.0, 125.8, 125.24, 125.19, 120.7, 119.5, 103.7, 89.9, 88.39, 88.33, 34.8, 29.4, 25.4, 13.6, 8.5; LRMS (ESI): m/z 716 ([M + Na]+)。
【0077】
<2.(II-1)-(III-1(m=1, n=0))-(I)>
上記で得られたBr-(III-1(m=1, n=0))-(I) (13.9 mg, 0.0200 mmol)及びアフレセルチブ (12.8 mg, 0.0300 mmol)のDMSO (100 μL)溶液に対し、室温でiPr2EtN (5.2 μL, 0.030 mmol)及びNaI (1.5 mg, 0.010 mmol)を添加した。20分後、反応混合物をCH2Cl2で希釈し濾過した。濾液を減圧下で濃縮後、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、EtOAc/MeOH = 19:1)、続いてカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-1(m=1, n=0))-(I)を白色固体として得た(12.8 mg, 62%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 9.21-9.00 (m, 1H), 7.84-7.62 (m, 1H), 7.55-7.16 (m, 7H), 7.07-6.85 (m, 4H), 6.82-6.50 (m, 2H), 4.51-4.35 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.33 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 3.16 (s, 3H), 3.01-2.60 (m, 5H), 1.95-1.56 (m, 1H), 1.37 (s, 3H), 1.16-0.95 (m, 2H), 0.90-0.64 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 170.11, 170.06, 164.9, 164.2, 164.0, 161.8, 160.8, 156.5, 153.9, 152.1, 151.8, 145.0, 139.7, 138.4, 137.3, 136.0, 134.2, 134.1, 132.2, 130.5, 130.4, 129.4, 128.4, 128.2, 128.1, 126.5, 126.0, 125.8, 125.3, 124.91, 124.88, 120.1, 119.0, 116.3, 116.1, 114.2, 114.0, 110.6, 103.6, 90.0, 88.4, 88.3, 53.5, 53.2, 51.6, 38.7, 38.5, 34.8, 29.8, 25.4, 13.6, 8.5; LRMS (ESI): m/z 1062 ([M + Na]+)。
【0078】
【0079】
[実施例2:(II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の合成]
<1.Br-(III-1(m=5, n=0))-(I)>
下記構造を有するBr-(III-1(m=5, n=0))-(I)を合成した。
【0080】
【0081】
合成例1で合成したH-(I) (57.3 mg, 0.100 mmol)、6-ブロモヘキサン酸(29.3 mg, 0.150 mmol)、及びN-メチルモルホリン(22.0 μL, 0.200 mmol)のTHF (1.00 mL)懸濁液に対し、室温でDMT-MM (4-(4,6-dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride)(41.5 mg, 0.150 mmol)を添加した。反応混合物を50 ℃で22時間加熱した後、室温に冷却した。EtOAc (5 mL)で希釈した後、クエン酸水溶液(10 wt%, 5 mL)、飽和NaHCO3水溶液(5 mL)、及び飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:1 (AcOHを1%含有)]、続いて分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/EtOAc = 4:1)で精製し、Br-(III-1(m=5, n=0))-(I)を白色固体として得た(60.4 mg, 81%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.52 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.42-7.22 (m, 3H), 7.00 (s, 1H), 6.70 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 3.43 (t, J = 6.9 Hz , 2H), 3.19 (s, 3H), 2.73 (tt, J= 6.9, 4.1 Hz, 1H), 2.35 (t, J= 7.3 Hz, 2H), 1.97-1.83 (m, 2H), 1.80-1.67 (m, 2H), 1.65-1.46 (m, 2H), 1.42 (s, 3H), 1.20-1.03 (m, 2H), 0.87-0.70 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 171.3, 171.2, 164.9, 164.0, 156.4, 153.9, 152.1, 152.0, 144.9, 140.3, 139.1, 134.1, 129.2, 129.0, 128.3, 128.1, 126.01, 125.98, 125.80, 125.76, 125.7, 125.2, 124.3, 124.2, 120.5, 119.1, 103.8, 90.0, 88.4, 88.3, 37.3, 34.8, 33.8, 32.6, 27.9, 26.6, 25.4, 24.5, 13.5, 8.5; LRMS (ESI): m/z 772 ([M + Na]+)。
【0082】
<2.(II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)>
上記で得られたBr-(III-1(m=5, n=0))-(I) (16.7 mg, 0.0223 mmol)のDMSO (80 μL)溶液に対し、室温でアフレセルチブ (28.5 mg, 0.0668 mmol)及びNaI (10.0 mg, 0.0668 mmol)を添加した。67時間後、反応混合物をCH2Cl2で希釈し濾過した。濾液を減圧下で濃縮後、残渣を分取薄層クロマトグラフィー[シリカ、EtOAc/MeOH = 9:1 (Et3Nを1%含有)]、続いてカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)を白色固体として得た(10.1 mg, 41%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ11.29 (s, 1H), 7.75-7.59 (m, 1H), 7.55-7.18 (m, 8H), 7.05-6.82 (m, 5H), 6.70 (t, J = 8.3, 1H), 4.40-4.25 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 3.10-2.99 (m, 1H), 2.88-2.55 (m, 6H), 2.29 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.80-1.34 (m, 9H), 1.16-1.05 (m, 2H), 0.82-0.73 (m, 2H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 171.5, 164.9, 164.2, 164.0, 161.8, 160.5, 156.5, 154.0, 152.1, 145.0, 140.4, 140.3, 139.1, 137.7, 137.3, 135.6, 134.2, 134.1, 132.4, 130.23, 130.15, 129.3, 128.3, 128.2, 126.4, 126.0, 125.8, 125.3, 125.1, 125.0, 120.3, 119.0, 116.4, 116.2, 113.8, 113.6, 110.7, 103.8, 90.0, 88.4, 88.3, 50.7, 49.5, 38.5, 37.3, 34.8, 29.5, 26.6, 25.4, 25.0, 13.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C48H47Cl2F2IN9O5S [M + H]+ 計算値: 1096.1811; 実測値: 1096.1827。
【0083】
【0084】
[実施例3:(II-1)-(III-1(m=9, n=0))-(I)の合成]
<1.Br-(III-1(m=9, n=0))-(I)>
下記構造を有するBr-(III-1(m=9, n=0))-(I)を合成した。
【0085】
【0086】
合成例1で合成したH-(I) (57.3 mg, 0.100 mmol)、10-ブロモデカン酸(37.7 mg, 0.150 mmol)、及びN-メチルモルホリン(16.5 μL, 0.150 mmol)のTHF (2.0 mL)懸濁液に対し、室温でDMT-MM (41.5 mg, 0.150 mmol)を添加した。反応混合物を50 ℃で15時間加熱した後、室温に冷却した。EtOAc (7 mL)で希釈し、続いてクエン酸水溶液(10 wt%, 7 mL)、飽和NaHCO3水溶液(7 mL)、及び飽和食塩水(7 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[3回、1回目はアミン修飾シリカ(EtOAc)、2回目はシリカ(ヘキサン/EtOAc = 2:3)、3回目はシリカ(ヘキサン/アセトン= 4:1)]で精製し、Br-(III-1(m=9, n=0))-(I)を黄色固体として得た(66.2 mg, 82%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.54-7.49 (m, 1H), 7.48-7.43 (m, 1H), 7.40-7.28 (m, 3H), 7.03-6.99 (m, 1H), 6.70 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 3.41 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.73 (tt, J = 7.3, 3.7 Hz, 1H), 2.33 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.85 (tt, J = 7.3, 6.9 Hz, 2H), 1.75-1.64 (m, 2H), 1.47-1.25 (m, 13H), 1.15-1.09 (m, 2H), 0.83-0.76 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 164.8, 163.9, 156.4, 153.8, 152.0, 151.9, 144.9, 140.2, 139.2, 134.1, 134.0, 129.1, 128.2, 128.1, 125.9, 125.7, 125.2, 124.0, 120.4, 119.0, 103.7, 89.9, 88.3, 88.2, 37.5, 34.8, 34.2, 32.8, 29.34, 29.30, 28.9, 28.8, 28.2, 25.33, 25.30, 13.4, 8.5; LRMS (ESI): m/z 828 ([M + Na]+)。
【0087】
<2.(II-1)-(III-1(m=9, n=0))-(I)>
上記で得られたBr-(III-1(m=9, n=0))-(I) (32.3 mg, 0.0400 mmol)とアフレセルチブ (51.3 mg, 0.120 mmol)のDMSO (200 μL)懸濁液に対し、室温でiPr2EtN (13.9 μL, 0.080 mmol)とNaI (3.0 mg, 0.020 mmol)を添加した。72時間後、反応混合物をCH2Cl2で希釈し、シリカのパッドに通過させた(EtOAc/MeOH = 9:1)。濾液を減圧下で濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー[2回、1回目はシリカ(EtOAc/MeOH = 9:1)、2回目はアミン修飾シリカ(CHCl3/MeOH = 9:1)]で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-1(m=9, n=0))-(I)を黄色固体として得た(24.6 mg, 53%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 7.69 (br s, 1H), 7.55-7.48 (m, 2H), 7.48-7.36 (m, 2H), 7.36-7.20 (m, 4H), 7.05-6.78 (m, 5H), 6.69 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 4.35-4.22 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 3.11-3.01 (m, 1H), 2.87-2.77 (m, 1H), 2.78-2.63 (m, 3H), 2.57 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.32 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.68 (tt, J = 7.2, 7.1 Hz, 2H), 1.47-1.37 (m, 5H), 1.37-1.18 (m, 10H), 1.16-1.05 (m, 2H), 0.82-0.72 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 171.7, 164.9, 164.2, 164.0, 161.8, 160.3, 156.5, 153.9, 152.1, 151.8, 145.0, 140.4, 140.3, 139.1, 137.8, 137.3, 135.5, 134.13, 134.10, 132.4, 130.2, 130.1, 129.3, 128.3, 128.2, 128.1, 126.4, 126.0, 125.8, 125.2, 125.1, 125.0, 124.5, 120.3, 119.0, 116.4, 116.2, 113.8, 113.6, 110.8, 103.8, 90.0, 88.3, 88.2, 50.9, 50.8, 50.0, 38.5, 37.7, 34.8, 30.0, 29.4, 29.3, 29.2, 27.2, 25.42, 25.36, 13.5, 8.5; LRMS (ESI): m/z 1152 ([M + H]+)。
【0088】
【0089】
[実施例4:(II-1)-(III-1(m=15, n=0))-(I)の合成]
<1.Br-(III-1(m=15, n=0))-(I)>
下記構造を有するBr-(III-1(m=15, n=0))-(I)を合成した。
【0090】
【0091】
合成例1で合成したH-(I) (28.7 mg, 0.0500 mmol)、16-ブロモヘキサデカン酸(25.2 mg, 0.0750 mmol)、及びN-メチルモルホリン(11.0 μL, 0.100 mmol)のTHF (500 μL)懸濁液に対し、室温でDMT-MM (20.8 mg, 0.0750 mmol)を添加した。18時間後、反応混合物を50 ℃に加熱した。1.5時間後、16-ブロモヘキサデカン酸(8.4 mg, 0.025 mmol)とDMT-MM (7.0 mg, 0.025 mmol)を室温で添加した。反応混合物を50 ℃で9.5時間加熱した後、室温に冷却した。EtOAc(2 mL)で希釈し、クエン酸(10 wt%, 2 mL)、飽和NaHCO3水溶液(2 mL)、及び飽和食塩水(2 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 21:29)、続いて分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/MeOH = 97:3)で精製し、Br-(III-1(m=15, n=0))-(I)を白色固体として得た(32.2 mg, 72%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 7.68(s, 1H), 7.57-7.42 (m, 2H), 7.41-7.25 (m, 3H), 7.02 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.70 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 3.41 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.73 (tt, J = 6.9, 4.1 Hz, 1H), 2.33 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.85 (tt, J = 7.8, 6.8 Hz, 2H), 1.78-1.66 (m, 2H), 1.50-1.19 (m, 25H), 1.19-1.05 (m, 2H), 0.84-0.74 (m, 2H); 13C NMR (100MHz, CDCl3): δ 171.7, 164.9, 164.0, 156.4, 153.9, 152.1, 151.9, 144.9, 140.3, 139.1, 134.11, 134.07, 129.2, 128.3, 128.2, 126.0, 125.8, 125.2, 124.3, 120.4, 119.0, 103.8, 90.0, 88.3, 88.2, 37.7, 34.8, 34.2, 32.9, 29.74, 29.72, 29.63, 29.59, 29.5, 29.4, 28.9, 28.3, 25.5, 25.3, 13.5, 8.5; LRMS (ESI): m/z 912 ([M + Na]+)。
【0092】
<2.(II-1)-(III-1(m=15, n=0))-(I)>
上記で得られたBr-(III-1(m=15, n=0))-(I) (19.2 mg, 0.0216 mmol)とアフレセルチブ (27.6 mg, 0.0647 mmol)のDMSO/CHCl3(1:2, 135 μL)溶液に対し、室温でEt3N (9.0 μL, 0.065 mmol)とNaI (9.7 mg, 0.065 mmol)を添加した。6日後、NaI (6.5 mg, 0.043 mmol)を添加した。4日後、反応混合物をCH2Cl2で希釈し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、EtOAc)、続いてカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-1(m=15, n=0))-(I)を黄色固体として得た(4.2 mg, 16%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.28 (s, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.55-7.20 (m, 7H), 7.07-6.87 (m, 5H), 6.80 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 6.69 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 4.36-4.24 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 3.12-3.03 (m, 1H), 2.87-2.63 (m, 4H), 2.57 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.33 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.85-1.17 (m, 29H), 1.15-1.07 (m, 2H), 0.82-0.75 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 171.6, 165.0, 164.2, 164.0, 161.8, 160.3, 156.5, 154.0, 152.1, 151.8, 145.0, 140.5, 140.4, 140.3, 139.0, 137.7, 137.3, 135.5, 134.13, 134.10, 132.3, 130.2, 130.1, 129.4, 128.4, 128.2, 128.1, 126.5, 126.0, 125.8, 125.2, 125.10, 125.07, 124.6, 120.2, 119.0, 116.5, 116.2, 113.9, 113.6, 110.8, 103.9, 90.1, 88.3, 88.2, 50.9, 50.8, 50.1, 38.5, 37.9, 34.8, 30.2, 29.7, 29.6, 29.54, 29.48, 29.4, 27.3, 25.5, 25.4, 13.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C58H67Cl2F2IN9O5S [M + H]+ 計算値: 1236.3376; 実測値: 1236.3426。
【0093】
【0094】
[実施例5:(II-2)-(III-1(m=1, n=0))-(I)の合成]
実施例1と同様の方法で得られたBr-(III-1(m=1, n=0))-(I) (17.2 mg, 0.0248 mmol)、MK2206二塩酸塩(13.1 mg, 0.0273 mmol)、モレキュラーシーブ4A(4.1 mg)、及びDMSO (82 μL)の混合物に対し、室温でiPr2EtN (17.3 μL, 0.0991 mmol)及びNaI (1.9 mg, 0.012 mmol)を添加した。反応混合物を80 ℃で8時間加熱した後、室温に冷却し、シリカのパッドに通過させた(EtOAc/MeOH = 19:1)。溶離液を減圧下で濃縮後、残渣を分取薄層クロマトグラフィー[2回、1回目はシリカ(EtOAc/MeOH = 19:1)、2回目はアミン修飾シリカ(CHCl3/MeOH = 9:1)]で精製し、下記構造を有する(II-2)-(III-1(m=1, n=0))-(I)を黄色固体として得た(13.1 mg, 52%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 9.38 (s, 1H), 8.51 (s, 1H), 7.78 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.70-7.63 (m, 1H), 7.57-7.33 (m, 6H), 7.33-7.14 (m, 8H), 7.12-7.00 (m, 2H), 6.69 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 3.19 (s, 3H), 3.08 (s, 2H), 2.71 (tt, J= 6.9, 4.1 Hz, 1H), 2.53-2.40 (m, 2H), 2.27-2.05 (m, 3H), 1.91-1.77 (m, 1H), 1.40 (s, 3H), 1.18-1.05 (m, 2H), 0.84-0.73 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 170.3, 165.0, 164.0, 160.1, 156.4, 153.9, 152.0, 151.7, 151.0, 148.0, 146.0, 145.0, 141.4, 140.5, 138.6, 138.5, 138.2, 136.3, 134.10, 134.06, 132.8, 130.3, 129.6, 129.4, 128.7, 128.3, 128.2, 128.1, 126.0, 125.8, 125.7, 125.2, 124.8, 123.3, 119.8, 118.9, 116.6, 113.9, 103.8, 90.1, 88.23, 88.17, 63.2, 47.5, 34.8, 33.1, 25.3, 15.2, 13.5, 8.5; LRMS (ESI): m/z 1021 ([M + H]+)。
【0095】
【0096】
[実施例6:(II-2)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の合成]
実施例2と同様の方法で得られたBr-(III-1(m=5, n=0))-(I) (15.0 mg, 0.0200 mmol)、MK2206二塩酸塩 (14.4 mg, 0.0300 mmol)、モレキュラーシーブ4A (5.0 mg)、及びDMSO (100 μL)の混合物に対し、室温でiPr2EtN (13.9 μL, 0.0800 mmol)とNaI (6.0 mg, 0.040 mmol)を添加した。反応混合物を80 ℃で4日間加熱した後、室温に冷却した。EtOAc (5 mL)で希釈し、水(5 mL)と飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)、続いてカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-2)-(III-1(m=5, n=0))-(I)を黄色固体として得た(2.8 mg, 13%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.27 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 7.79 (d, J= 7.6 Hz, 1H), 7.67 (s, 1H), 7.60-7.49 (m, 2H), 7.46-7.37 (m, 4H), 7.36-7.22 (m, 9H), 7.10-7.05 (m, 1H), 7.04-6.98 (m, 1H), 6,69 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 3.18 (s, 3H), 2.72 (tt, J = 7.2, 3.4 Hz, 1H), 2.45-2.37 (m, 2H), 2.30 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.25-2.14 (m, 4H), 2.05-1.94 (m, 1H), 1.79-1.70 (m, 1H), 1.70-1.62 (m, 2H), 1.43-1.37 (m, 5H), 1.35-1.27 (m, J = 7.2 Hz, 2H), 1.13-1.07 (m, 2H), 0.80-0.75 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 171.4, 165.0, 164.0, 160.7, 156.1, 154.4, 152.1, 151.8, 150.7, 148.1, 145.0, 141.6, 140.5, 139.0, 138.9, 137.5, 136.4, 134.1, 132.8, 129.9, 129.7, 129.4, 128.6, 128.4, 128.3, 128.0, 126.2, 126.0, 125.8, 125.2, 124.6, 123.4, 120.3, 119.0, 116.5, 113.9, 103.9, 90.1, 88.3, 88.2, 63.9, 63.0, 42.9, 37.5, 34.8, 33.9, 30.2, 29.9, 27.0, 25.4, 25.2, 14.8, 13.6, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C55H51FIN10O5[M + H]+計算値: 1077.3073; 実測値: 1077.3061。
【0097】
【0098】
[実施例7:(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の合成]
<1.(II-3)-H・2TFA>
下記構造を有する(II-3)-H・2TFAを合成した。
【0099】
【0100】
tert-ブチル(1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-イル)カルバマート(50.0 mg, 0.157 mmol, Caldwell, J. J.等, JMedChem 2008, 51, 2147-2157に記載の方法により合成)をCH2Cl2 (1.58 mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(1.21 mL)を室温で添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、減圧下で濃縮し、(II-3)-H・2TFAを白色固体として得た(64.7 mg, 99%)。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 8.37 (s, 1H), 7.40 (d, J = 3.7 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.86 (d, J = 13.8 Hz, 2H), 3.65-3.50 (m, 1H), 3.50-3.40 (m, 2H), 2.31 (dd, J = 6.3, 2.5 Hz, 2H), 1.77 (ddd, J = 24.5, 12.6, 4.4 Hz, 2H); 13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ163.4, 163.1, 162.9162.7, 154.9, 145.42, 145.40, 144.1, 125.0, 119.1, 117.1, 104.7, 103.5, 46.4, 30.7; HRMS (DART-TOF): C11H16N5[M + H]+ 計算値: 218.1401; 実測値: 218.1400。
【0101】
<2.(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)>
実施例2と同様の方法で得られたBr-(III-1(m=5, n=0))-(I) (10.7 mg, 0.0143 mmol)、(II-3)-H・2TFA (6.2 mg, 0.029 mmol)、iPr2EtN (2.5 μL, 0.014 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (7.0 mg) をN,N-ジメチルホルムアミド(70 μL)中に懸濁させた。反応混合物を70 ℃で9時間加熱した後、室温に冷却した。次に、反応混合物をアミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 12:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー[シリカ、CHCl3/MeOH = 12:1 (Et3Nを0.5%含有)]で精製し、下記構造を有する(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)を白色アモルファスとして得た(6.2 mg, 48%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.28 (s, 1H), 10.50 (br s, 1H), 8.30 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.51 (dd, J = 9.6, 1.7 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.32 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 7.2 Hz,1H), 6.69 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 6.50 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 4.70 (br d, J = 13.0 Hz, 2H), 3.30-3.10 (m, 5H), 2.95-2.75 (m, 1H), 2.75-2.65 (m, 3H), 1.73 (quin, J = 7.5 Hz, 2H), 1.55 (quin, J = 7.4 Hz, 2H), 1.50-1.35 (m, 6H), 1.20-1.08 (m, 2H), 0.85-0.75 (m, 2H) ; 13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 171.5, 165.0, 164.0, 157.2, 156.0, 154.4, 152.2, 152.1, 151.8, 151.3, 145.0, 140.4, 139.1, 134.12, 134.1, 129.3, 128.3, 128.2, 126.0, 125.8, 125.2, 124.5, 120.4, 120.3, 119.0, 103.8, 103.0,101.8, 90.0, 88.3, 88.2, 55.3, 46.6, 46.3, 44.9, 37.5, 34.8, 32.7, 31.7, 30.0, 27.0, 25.4, 25.2, 22.8, 14.3, 13.5, 11.4, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C41H45FIN10O4[M + H]+ 計算値: 887.2654; 実測値: 887.2659。
【0102】
【0103】
[実施例8:(II-4)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の合成]
<1.(II-4)-Boc>
下記構造を有する(II-4)-Bocを合成した。
【0104】
【0105】
tert-ブチル2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン-8-カルボキシラート(150.0 mg, 0.6241 mmol)と4,5-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(129.1 mg, 0.6865 mmol)のEtOH (1.25 mL)懸濁液に対し、Et3N (260 μL, 1.87 mmol)を室温で添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、続いて60 ℃で2.5時間加熱した後、室温へ冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、(II-4)-Bocを黄色固体として得た(238.4 mg, 97%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.26 (s, 1H), 8.29 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 3.97 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 3.76 (s, 2H), 3.65-3.45 (m, 2H), 3.45-3.30 (m, 2H), 1.91 (t, J = 7.11.75-1.55 (m, 2H), 1.47 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 155.5, 154.9, 150.8, 150.3, 119.8, 102.6, 100.9, 79.7, 59.9, 48.8, 41.3, 40.2, 35.8, 34.5, 28.6; HRMS (DART-TOF): C19H27Cl2N5O2[M + H]+ 計算値: 392.1853; 実測値: 392.1842。
【0106】
<2.(II-4)-H (2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン)>
下記構造を有する(II-4)-Hを合成した。
【0107】
【0108】
(II-4)-Boc (161.8 mg, 0.4136 mmol)をCH2Cl2(4.14 mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(3.17 mL)を室温で添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した後、減圧下で濃縮した。残渣をCH2Cl2に溶解し、アミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 17:3)に通過させた。溶離液を減圧下で濃縮し、(II-4)-Hを黄色固体として得た(107.4 mg, 89%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.29 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 3.95 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 3.76 (s, 2H), 3.00-2.80 (m, 4H), 1.91 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 1.70-1.50 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 155.6, 150.9, 150.7, 119.4, 103.0, 100.9, 48.9, 44.1, 40.5, 35.9; HRMS (DART-TOF): C14H19ClN5[M + H]+ 計算値: 292.1329; 実測値: 292.1333。
【0109】
<3.(II-4)-(III-1(m=5, n=0))-(I)>
実施例2と同様の方法で得られたBr-(III-1(m=5, n=0))-(I) (9.9 mg, 0.013 mmol)、(II-4)-H (7.7 mg, 0.026 mmol)、iPr2EtN (4.6 μL, 0.026 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (13.2 mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(132 μL)中に懸濁させた。反応混合物を60 ℃で22時間、さらに90 ℃で23時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物にiPr2EtN (4.6 μL, 0.026 mmol)を添加し、90 ℃で24時間加熱した後、室温に冷却した。次に、反応混合物をアミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 1:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー[シリカ、CHCl3/MeOH = 17:3 (Et3Nを0.5%含有)]で精製し、下記構造を有する(II-4)-(III-1(m=5, n=0))-(I)を暗褐色固体として得た(6.4 mg, 50%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.28 (s, 1H), 10.64 (br s, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.56 (br s, 1H), 7.51 (dd, J = 9.6, 1.7 Hz, 1H), 7.50-7.40 (m, 2H), 7.34 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.69 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 3.94 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.72 (s, 2H), 3.19 (s, 3H), 2.73 (tt, J = 6.9, 3.7 Hz, 1H), 2.62 (br s, 1H), 2.41 (br t, J= 7.4 Hz, 4H), 2.36 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 1.80-1.65 (m, 6H), 1.59 (br quin, J = 7.6 Hz, 2H), 1.50-1.35 (m, 5H), 1.20-1.00 (m, 2H), 0.85-0.75 (m, 2H) ; 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 171.4, 165.0, 164.2, 156.1, 155.6, 154.4, 152.1, 151.8, 151.1, 150.9, 145.0, 140.5, 139.0, 134.1, 129.3, 128.4, 128.3, 125.99, 125.97, 125.85, 125.83, 125.2, 124.7, 120.3, 119.15, 119.13, 119.0, 103.9, 103.3, 100.9, 90.1, 88.2, 58.7, 51.2, 48.9, 39.9, 37.5, 34.8, 34.6, 27.2, 26.6, 25.4, 25.3, 13.5, 8.5 ; HRMS (ESI-TOF): C44H48ClFIN10O4 [M + H]+ 計算値: 961.2577; 実測値: 961.2591。
【0110】
【0111】
[実施例9:(II-4)-(III-1(m=2, n=1))-(I)の合成]
<1.TsO-(III-1(m=2, n=1))-(I)>
tert-ブチル3-(2-(トシルオキシ)エトキシ)プロパノアート(243.0 mg, 0.706 mmol)のCH2Cl2 (7.0 mL)溶液にトリフルオロ酢酸(540 μL)を室温で添加した。反応混合物を室温で2.5時間撹拌した後、減圧下で濃縮し、3-(2-(トシルオキシ)エトキシ)プロピオン酸の粗生成物を得た。このカルボン酸粗生成物に対し、合成例1で合成したH-(I) (334.0 mg, 0.583 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(5.8 mL)、iPr2EtN (203 μL, 1.17 mmol)、及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート (HATU) (332.2 mg, 0.874 mmol) を添加し、室温で23時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (30 mL) で希釈した後、飽和NaHCO3水(30 mL)、クエン酸水溶液(10 wt%, 30 mL)、及び飽和食塩水(30 mL)で順次洗浄し、MgSO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:3)で精製し、下記構造を有するTsO-(III-1(m=2, n=1))-(I)を黄色固体として得た(424.8 mg, 86%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.23 (s, 1H), 8.36 (s, 1H), 7.72 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.56 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz 1H), 7.60 (t, J = 2.1 Hz, 1H), 7.50 (dd, J = 9.6, 1.8 Hz 1H), 7.47-7.35 (m, 2H), 7.32 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.08 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.65 (t, J = 8.2 Hz, 1H),4.25-4.05 (m, 2H), 3.85-3.65 (m, 4H), 3.18 (s, 3H), 2.70 (tt, J = 6.9, 3.6 Hz, 1H), 2.62 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 2.43 (s, 3H), 1.45 (s, 3H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.85-0.60 (m, 2H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 169.7, 164.9, 164.0, 156.3, 153.7, 151.8, 151.7, 145.2, 145.1, 140.4, 139.0, 134.0, 133.9, 132.6, 130.0, 129.1, 128.4, 128.3, 127.9, 125.8, 125.6, 125.0, 124.9, 120.2, 119.3, 103.6, 90.3, 87.9, 87.8, 69.1, 68.6, 67.0, 37.9, 34.6, 25.2, 21.7, 13.4, 8.4 ; HRMS (ESI-TOF): C36H35FIN5NaO8S [M + Na]+ 計算値: 866.1133; 実測値: 866.1127。
【0112】
【0113】
<2.(II-4)-(III-1(m=2, n=1))-(I)>
TsO-(III-1(m=2, n=1))-(I) (40.2 mg, 0.0476 mmol)、実施例8と同様の方法で得られた(II-4)-H (27.7 mg, 0.0948 mmol)、iPr2EtN (16.5 μL, 0.0948 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (47.2 mg)をN,N-ジメチルアセトアミド(474 μL)中に懸濁させた。反応混合物を80 ℃で25時間加熱した後、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をアミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 9:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-4)-(III-1(m=2, n=1))-(I)を黄色固体として得た(18.0 mg, 39%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.35 (br s, 1H), 11.29 (s, 1H), 8.92 (br s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.82 (br s, 1H), 7.48 (dd, J = 9.6, 1.4 Hz 1H), 7.41 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.32 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.10 (s, 1H), 6.99 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.65 (t, J = 8.3 Hz, 1H),3.91 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.80 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 3.75-3.55 (m, 4H), 3.18 (s, 3H), 2.75-2.60 (m, 7H), 2.55-2.40 (m, 2H), 1.90-1.75 (m, 2H), 1.70-1.55 (m, 4H), 1.42 (s, 3H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.90-0.60 (m, 2H) ; 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 170.2, 165.0, 164.0, 156.0, 155.5, 154.3, 152.0, 151.7, 150.81, 150.79, 145.0, 140.5, 139.2, 134.1, 134.0, 129.1, 128.4, 128.3, 125.9, 125.8, 125.1, 124.6, 120.7, 119.4, 103.7, 103.0, 100.9, 90.1, 88.10, 88.07, 67.1, 58.5, 51.7, 48.9, 39.6, 38.1, 34.8, 34.3, 25.4, 13.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C43H46ClFIN10O5 [M + H]+計算値: 963.2370; 実測値: 963.2375。
【0114】
【0115】
[実施例10:(II-4)-(III-1(m=2, n=2))-(I)の合成]
<1.TsO-(III-1(m=2, n=2))-(I)>
tert-ブチル3-{2-[2-(トシルオキシ)エトキシ]エトキシ}プロパノアート(221.4 mg, 0.654 mmol)のCH2Cl2 (6.5 mL)溶液にトリフルオロ酢酸(500 μL) を室温で添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、減圧下で濃縮し、3-{2-[2-(トシルオキシ)エトキシ]エトキシ}プロピオン酸の粗生成物を得た。このカルボン酸粗生成物(54.3 mg, 0.164 mmol)に対し、合成例1で合成したH-(I) (78.0 mg, 0.136 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(1.36 mL)、iPr2EtN (48.6 μL, 0.272 mmol)、及びHATU (77.6 mg, 0.204 mmol)を添加し、室温で19時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2 (15 mL)で希釈した後、飽和NaHCO3水(15 mL)及び飽和食塩水(15 mL)で順次洗浄し、MgSO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:4)で精製し、下記構造を有するTsO-(III-1(m=2, n=2))-(I)を黄色固体として得た(71.3 mg,58%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.28 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 7.90-7.70 (m, 3H), 7.51 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.44(d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.40-7.28 (m, 4H), 7.01 (d, J = 7.8 Hz 1H), 6.69 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 4.15 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 3.75-3.65 (m, 2H), 3.65 (s, 4H), 3.19 (s, 3H), 2.80 (s, 1H), 2.72 (tt, J = 6.6, 3.6 Hz, 1H), 2.63 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 2.44 (s, 3H), 1.90-1.60 (m, 2H), 1.41 (s, 3H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.85-0.60 (m, 2H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 170.1, 165.0, 164.0, 156.4, 153.9, 152.0, 151.7, 145.1, 145.0, 140.4, 139.2, 134.1, 134.0, 133.0, 130.0, 129.2, 128.4, 128.3, 128.0, 125.9, 125.7, 125.2, 124.6, 120.4, 119.2, 103.7, 90.1, 88.1, 88.0, 70.6, 70.3, 69.3, 68.9, 67.0, 38.0, 34.7, 25.3, 21.8, 13.5, 8.5 ; HRMS (ESI-TOF): C38H40FIN5O9S [M + H]+ 計算値: 888.1575; 実測値: 888.1596。
【0116】
【0117】
<2.(II-4)-(III-1(m=2, n=2))-(I)>
TsO-(III-1(m=2, n=2))-(I) (25.4 mg, 0.0286 mmol)、実施例8と同様の方法で得られた(II-4)-H (16.7 mg, 0.0572 mmol)、及びiPr2EtN (10.0 μL, 0.0572 mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(286 μL)中に懸濁させた。反応混合物を室温で3時間、60 ℃で28時間加熱、さらに80 ℃で17時間加熱した後、室温に冷却した。次に、反応混合物をシリカのパッド[MeOH (Et3Nを1%含有)]に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を2回の分取薄層クロマトグラフィー(1回目:シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1、2回目:シリカ、CHCl3/MeOH = 19:1)で精製し、下記構造を有する(II-4)-(III-1(m=2, n=2))-(I)を黄色固体として得た(4.9 mg, 17%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 10.30 (br s, 1H), 8.99 (br s, 1H), 8.26 (s, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.50 (dd, J = 9.6, 1.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.42-7.34 (m, 1H), 7.32 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.07 (s, 1H), 7.01 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 6.69 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 3.93 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 3.82 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 3.75-3.60 (m, 8H), 3.19 (s, 3H), 2.72 (tt, J = 7.1, 3.7 Hz, 1H), 2.64 (t, J = 5.0 Hz, 7H), 2.47 (br s, 2H), 1.87 (t, J= 7.1 Hz, 2H), 1.84-1.65 (m, 4H), 1.43 (s, 3H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.85-0.60 (m, 2H); HRMS (ESI-TOF): C45H50ClFIN10O6 [M + H]+計算値: 1007.2632; 実測値: 1007.2659。
【0118】
【0119】
[実施例11:(II-4)-(III-1(m=1, n=2))-(I)の合成]
<1.TsO-(III-1(m=1, n=2))-(I)>
tert-ブチル2-{2-[2-(トシルオキシ)エトキシ]エトキシ}アセタート(274.8 mg, 0.734 mmol)のCH2Cl2 (7.3 mL)溶液にトリフルオロ酢酸(562 μL)を室温で添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、減圧下で濃縮し、2-{2-[2-(トシルオキシ)エトキシ]エトキシ}酢酸の粗生成物を得た。このカルボン酸粗生成物(70.4 mg, 0.221 mmol)に対し、合成例1で合成したH-(I) (105.7 mg, 0.184 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(1.84 mL)、iPr2EtN (64.2 μL, 0.369 mmol)、及びHATU (105.1 mg, 0.276 mmol) を添加し、室温で5時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (20 mL) で希釈した後、飽和NaHCO3水(20 mL)及び飽和食塩水(20 mL)で順次洗浄し、MgSO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:2)で精製し、下記構造を有するTsO-(III-1(m=1, n=2))-(I)を黄色固体として得た(159.3 mg,99%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.26 (s, 1H), 8.67 (s, 1H), 7.76 (d, J= 8.7 Hz, 2H), 7.66 (t, J = 1.8 Hz, 1H), 7.59 (dd, J = 8.0, 1.1 Hz, 1H), 7.53 (dd, J = 9.6, 1.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.38 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.06 (dd, J = 7.8, 1.4 Hz, 1H), 6.68 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 4.20 (t, J = 4.3 Hz, 2H), 4.07 (s, 2H), 3.80-3.60 (m, 6H), 3.19 (s, 3H), 2.72 (tt, J= 7.1, 3.6 Hz, 1H), 2.43 (s, 3H), 1.42 (s, 3H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.85-0.60 (m, 2H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 168.1, 164.9, 164.0, 156.4, 153.8, 151.9, 151.6, 145.1, 145.0, 140.4, 138.1, 134.02, 133.98, 132.9, 130.0, 129.4, 128.4, 128.3, 127.9, 125.9, 125.7, 125.1, 125.0, 120.3, 119.3, 103.7, 90.2, 88.03, 87.95, 71.1, 70.5, 70.4, 69.0, 68.9, 34.7, 25.3, 21.7, 13.5, 8.4 ; HRMS (ESI-TOF): C37H37FIN5NaO9S [M + Na]+計算値: 896.1238; 実測値: 896.1210。
【0120】
【0121】
<2.(II-4)-(III-1(m=1, n=2))-(I)>
TsO-(III-1(m=1, n=2))-(I) (58.2 mg, 0.0654 mmol)、実施例8と同様の方法で得られた(II-4)-H (38.2 mg, 0.131 mmol)、iPr2EtN (22.8 μL, 0.131 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (65.4 mg)をN,N-ジメチルアセトアミド(654 μL)中に懸濁させた。反応混合物を80 ℃で24時間加熱した後、室温に冷却し、アミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 3:2)に通過させた。溶離液を減圧下で濃縮後、残渣を2回の分取薄層クロマトグラフィー(1回目:シリカ、CHCl3/MeOH = 4:1、2回目:シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-4)-(III-1(m=1, n=2))-(I)を黄色固体として得た(18.8 mg, 28%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 11.03 (br s, 1H), 8.84 (s, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.80 (t, J= 1.8 Hz, 1H), 7.60-7.40 (m, 3H), 7.37(t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.09 (s, 1H), 7.04 (dd, J = 8.0, 1.1 Hz 1H), 6.68 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 4.11 (s, 2H), 3.92 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 3.90-3.75 (m, 2H), 3.74-3.55 (m, 6H), 3.19 (s, 3H), 2.72 (tt, J = 7.1, 3.6 Hz, 1H), 2.69-2.50 (m, 2H), 2.43 (br s, 2H), 2.00-1.80 (m, 4H), 1.75-1.55 (m, 4H), 1.42 (s, 3H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.85-0.60 (m, 2H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 168.4, 165.0, 164.0, 160.9, 156.5, 155.5, 153.9, 152.1, 151.7, 150.94, 150.85, 145.0, 140.5, 138.3, 134.10, 134.06, 129.3, 128.4, 128.3, 126.0, 125.8, 125.2, 125.1, 120.7, 119.4, 119.2, 103.8, 103.1, 100.9, 90.1, 88.2, 88.1, 71.3, 70.7, 70.1, 69.3, 58.6, 58.0, 53.6, 51.7, 48.9, 43.7, 39.8, 37.5, 36.0, 35.2, 34.8, 34.7, 33.8, 25.4, 18.6, 13.6, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C44H48ClFIN10O6 [M + H]+ 計算値: 993.2476; 実測値993.2511。
【0122】
【0123】
[実施例12:(II-1)-(III-2(q=1))-(I)の合成]
<1.Boc-NH-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I)>
下記構造を有するBoc-NH-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I)を合成した。
【0124】
【0125】
合成例1で合成したH-(I)(47.1 mg, 0.0821 mmol)、Boc-NH-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-OH (39.4 mg, 0.0903 mmol, Autar, R.等, ChemBioChem 2003, 4, 1317-1325に記載の方法により合成)、及びN-メチルモルホリン(9.0 μL, 0.082 mmol)のTHF (1.64 mL)懸濁液に対し、室温でDMT-MM (30.0 mg, 0.107 mmol)を添加した。2時間後、反応混合物をEtOAc (5 mL)で希釈し、続いてクエン酸水溶液(10 wt%, 5 mL)、飽和NaHCO3水溶液(5 mL)、及び飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc/MeOH = 19:1)で精製し、Boc-NH-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I)を白色固体として得た(79.1 mg, 97%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 9.31 (s, 1H), 7.81 (s, 1H), 7.66-7.57 (m, 1H), 7.56-7.20 (m, 4H), 7.11-7.00 (m, 1H), 6.70 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 5.06-4.90 (m, 1H), 4.17 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 3.72-3.35 (m, 14H), 3.27-3.10 (m, 5H), 2.73 (tt, J = 6.4, 3.4 Hz, 1H), 1.90-1.60 (m, 4H), 1.55-1.33 (m, 12H), 1.20-1.03 (m, 2H), 0.85-0.70 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 168.7, 167.5, 165.0, 163.9, 156.2, 156.0, 154.3, 152.0, 151.6, 145.0, 140.4, 138.4, 134.1, 129.3, 128.33, 128.25, 125.9, 125.8, 125.2, 125.0, 120.7, 119.6, 103.7, 90.0, 88.2, 88.1, 79.1, 71.9, 71.5, 70.5, 70.3, 70.2, 70.0, 69.5, 38.4, 38.2, 34.7, 29.8, 28.8, 28.5, 25.3, 13.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C43H55FIN7NaO11[M + Na]+ 計算値: 1014.2886; 実測値: 1014.2860。
【0126】
<2.NH2-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I) TFA塩>
上記で得られたBoc-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)2-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I) (20.3 mg, 0.0200 mmol)のCH2Cl2(400 μL)溶液に対し、0 ℃でトリフルオロ酢酸(30 μL, 0.40 mmol)を添加した。反応混合物を室温で4.5時間撹拌した後、トリフルオロ酢酸(90 μL, 1.2 mmol)を添加した。1時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、下記構造を有するNH2-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I) TFA塩を黄色固体として得た(20.1 mg, 98%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.28 (s, 1H), 9.50 (s, 1H), 7.95-7.55 (m, 6H), 7.54-7.48 (m, 1H), 7.48-7.42 (m, 1H), 7.41-7.33 (m, 1H), 7.09-7.02 (m, 1H), 6.71 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 4.19 (s, 2H), 4.11 (s, 2H), 3.74-3.30 (m, 14H), 3.21-3.08 (m, 5H), 2.76-2.67 (m, 1H), 1.95-1.85 (m, 2H), 1.81-1.70 (m, 2H), 1.39 (s, 3H), 1.15-1.06 (m, 2H), 0.83-0.75 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 170.2, 168.1, 164.9, 164.2, 161.2, 160.9, 156.4, 153.9, 152.1, 151.9, 145.2, 140.3, 138.5, 134.2, 134.1, 129.3, 128.3, 128.2, 126.0, 125.8, 125.3, 125.2, 121.0, 120.2, 103.7, 90.3, 88.3, 88.2, 71.5, 71.1, 70.8, 70.3, 69.7, 69.6, 69.5, 68.7, 67.7, 40.5, 36.5, 34.8, 29.83, 29.78, 29.1, 26.2, 25.3, 13.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C38H48FIN7O9[M + H]+計算値: 892.2542; 実測値: 892.2525。
【0127】
【0128】
<3.(II-1)-CO-CH2-O-CH2-CO2H>
アフレセルチブ (30 mg, 0.070 mmol)及びEt3N (11.6 μL, 0.0840 mmol)のCH2Cl2 (600 μL)溶液に対し、0 ℃でジグリコール酸無水物(8.9 mg, 0.077 mmol)のCH2Cl2 (600 μL)溶液を添加した。2時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカ、CHCl3/MeOH = 4:1 (AcOHを1%含有)]で精製し、下記構造を有する(II-1)-CO-CH2-O-CH2-CO2Hを白色固体として得た(33 mg, 96%)。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 7.59-7.52 (m, 2H), 7.40-6.97 (m, 3H), 6.96-6.84 (m, 1H), 4.50-4.36 (m, 1H), 4.13 (s, 2H), 4.04 (s, 2H), 3.74 (s, 3H), 3.56-3.38 (m, 2H), 3.03-2.80 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 174.0, 172.8, 165.4, 163.0, 162.4, 142.24, 142.16, 139.0, 138.0, 136.7, 133.8, 131.13, 131.05, 130.1, 127.6, 126.2, 126.1, 117.0, 116.8, 114.4, 114.1, 111.8, 71.4, 69.4, 61.5, 53.0, 43.4, 38.7, 38.5; LRMS (ESI): m/z 581 ([M + K]+)。
【0129】
【0130】
<4.(II-1)-(III-2(q=1))-(I)>
NH2-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I) TFA塩 (12.4 mg, 0.0123 mmol)、(II-1)-CO-CH2-O-CH2-CO2H (6.1 mg, 0.011 mmol)、及びEt3N (1.9 μL, 0.013 mmol)のMeOH (224 μL)溶液に対し、室温でDMT-MM (3.7 mg, 0.013 mmol)を添加した。1時間後、反応混合物をEtOAc (5 mL)で希釈し、続いてクエン酸水溶液(10 wt%, 5 mL)、飽和NaHCO3水溶液(5 mL)、及び飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc/MeOH = 4:1)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-2(q=1))-(I)を白色固体として得た(6.5 mg, 41%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.32 (s, 1H), 9.28 (s, 1H), 8.02-7.92 (m, 1H), 7.89-7.64 (m, 2H), 7.63-7.42 (m, 5H), 7.41-7.30 (m, 3H), 7.30-7.18 (m, 1H), 7.09-6.87 (m, 4H), 6.71 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 4.33-3.89 (m, 9H), 3.76 (s, 3H), 3.64-3.44 (m, 13H), 3.43-3.21 (m, 4H), 3.21-3.06 (m, 5H), 2.76-2.64 (m, 2H), 1.93-1.63 (m, 4H), 1.37 (s, 3H), 1.16-1.03 (m, 2H), 0.82-0.72 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 171.3, 168.9, 168.7, 167.5, 164.9, 164.2, 164.0, 161.8, 161.0, 156.5, 154.0, 152.2, 151.8, 145.1, 140.4, 140.3, 140.2, 138.3, 137.6, 137.6, 137.3, 135.9, 134.21, 134.17, 132.3, 130.4, 130.3, 129.3, 128.7, 128.3, 128.1, 126.6, 126.0, 125.8, 125.32, 125.27, 125.15, 125.13, 121.1, 120.0, 116.3, 116.1, 114.0, 113.7, 110.7, 103.5, 90.0, 88.44, 88.37, 71.6, 71.3, 71.1, 70.9, 70.2, 70.1, 70.0, 69.9, 69.8, 69.7, 42.2, 38.5, 38.4, 37.9, 37.5, 34.8, 29.8, 29.2, 29.0, 25.4, 12.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C60H66Cl2F2IN11NaO13S [M + Na]+ 計算値: 1438.2850; 実測値: 1438.2901。
【0131】
【0132】
[実施例13:(II-1)-(III-2(q=0))-(I)の合成]
<1.Br-(III-2(q=0))-(I)>
実施例12と同様の方法で得られたNH2-CH2-(CH2CH2O)3-(CH2)3-NH-CO-CH2-O-CH2-CO-(I) TFA塩(59.5 mg, 0.0592 mmol)のCH2Cl2 (5 mL)溶液を、飽和NaHCO3水溶液(5 mL)と飽和食塩水(5 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し濾過した後、濾液を減圧下で濃縮し、脱TFA体(白色固体) (52.1 mg)を得た。これをCH2Cl2(1.18 mL)に溶解させ、そこに0 ℃でEt3N (16.4 μL, 0.118 mmol)と2-ブロモアセチルブロミド(5.7 μL, 0.065 mmol)を添加した。反応混合物を室温で40分間撹拌した後、2-ブロモアセチルブロミド(1.5 μL, 0.018 mmol)を添加した。40分後、2-ブロモアセチルブロミド(2.6 μL, 0.030 mmol)を添加した。40分後、反応混合物をCH2Cl2 (5 mL)で希釈し、続いてクエン酸水溶液(10 wt%, 5 mL)と飽和NaHCO3水溶液(5 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、EtOAc/MeOH = 19:1)で精製し、下記構造を有するBr-(III-2(q=0))-(I)を白色固体として得た(36.1 mg, 60%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 9.30 (s, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.64-7.56 (m, 1H), 7.56-7.48 (m, 1H), 7.48-7.42 (m, 1H), 7.42-7.15 (m, 3H), 7.10-7.00 (m, 1H), 6.70 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 4.18 (s, 2H), 4.13 (s, 2H), 3.85 (s, 2H), 3.70-3.50 (m, 12H), 3.48-3.30 (m, 4H), 3.19 (s, 3H), 2.72 (tt, J = 6.9, 3.4 Hz, 1H), 1.88-1.69 (m, 4H), 1.42 (s, 3H), 1.17-1.05 (m, 2H), 0.84-0.73 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 168.8, 167.5, 166.1, 165.0, 164.0, 156.1, 154.4, 152.1, 151.7, 145.0, 140.5, 138.4, 134.1, 129.3, 128.33, 128.27, 126.0, 125.8, 125.2, 125.1, 120.9, 119.8, 119.7, 103.7, 90.1, 88.3, 88.2, 71.8, 71.5, 71.4, 70.5, 70.4, 70.3, 70.2, 70.1, 42.9, 38.9, 38.7, 37.9, 37.7, 34.8, 29.5, 29.1, 28.9, 28.83, 28.76, 28.6, 25.4, 25.2, 13.5, 13.4, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C40H49BrFIN7O10[M + H]+ 計算値: 1012.1753; 実測値: 1012.1743。
【0133】
【0134】
<2.(II-1)-(III-2(q=0))-(I)>
アフレセルチブ (7.1 mg, 0.017 mmol)、nBu4NI (5.5 mg, 0.015 mmol)、及びiPr2EtN (5.2 μL, 0.030 mmol)のMeCN (300 μL)溶液に対し、室温で、上記で得られたBr-(III-2(q=0))-(I) (15.2 mg, 0.0150 mmol)を添加した。反応混合物を2時間攪拌した後、反応混合物を60 ℃に加熱し19時間攪拌した。その後、反応混合物をEtOAc (2 mL)で希釈し、続いて飽和NaHCO3水溶液(2 mL)と飽和食塩水(2 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/EtOAc/MeOH = 4:13:3)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-2(q=0))-(I)を白色固体として得た(14.6 mg, 72%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 9.41 (s, 1H), 7.81-7.74 (m, 1H), 7.68-7.41 (m, 7H), 7.40-7.15 (m, 3H), 7.10-6.84 (m, 4H), 6.70 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 4.36-4.22 (m, 1H), 4.14 (s, 2H), 4.10 (s, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.65-3.43 (m, 12H), 3.43-3.34 (m, 2H), 3.33-3.22 (m, 2H), 3.22-3.10 (m, 5H), 3.16-2.93 (m, 1H), 2.73 (tt, J = 6.9, 3.7 Hz, 1H), 2.74-2.60 (m, 3H), 1.83-1.60 (m, 4H), 1.38 (s, 3H), 1.15-1.05 (m, 2H), 0.85-0.68 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 172.0, 171.2, 168.9, 167.6, 164.9, 164.2, 164.0, 161.7, 160.8, 156.5, 154.0, 152.1, 151.8, 145.2, 145.1, 145.0, 140.6, 140.5, 140.4, 138.4, 138.1, 137.2, 135.6, 134.20, 134.16, 132.5, 131.1, 130.2, 130.1, 129.3, 128.6, 128.2, 128.1, 126.3, 126.0, 125.8, 125.31, 125.26, 125.00, 124.98, 121.1, 120.0, 116.4, 116.1, 113.8, 113.6, 110.6, 103.6, 103.5, 90.0, 88.43, 88.35, 71.7, 71.4, 70.4, 70.2, 70.03, 69.95, 69.9, 69.8, 69.7, 69.2, 60.5, 52.5, 52.2, 51.8, 38.5, 38.4, 37.9, 37.5, 34.8, 29.3, 29.0, 25.4, 21.2, 12.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C58H65Cl2F2IN11O11S [M + H]+ 計算値: 1358.2976, 実測値: 1358.3005。
【0135】
【0136】
[実施例14:(II-2)-(III-2(q=0))-(I)の合成]
実施例13と同様の方法で得られたBr-(III-2(q=0))-(I) (12.1 mg, 0.0120 mmol)とMK2206二塩酸塩 (6.3 mg, 0.013 mmol)のDMSO (60 μL)混合物に対し、室温でiPr2EtN (8.3 μL, 0.048 mmol)とNaI (3.6 mg, 0.024 mmol)を添加した。反応混合物を80 ℃で4時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物をシリカのパッドに通過させ(EtOAc/MeOH = 7:3)、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、EtOAc/MeOH = 9:1)、分取薄層クロマトグラフィー[シリカ、EtOAc/MeOH = 9:1 (Et3Nを1%含有)]、続いてカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、EtOAc/MeOH = 4:1)で精製し、下記構造を有する(II-2)-(III-2(q=0))-(I)を白色固体として得た(9.5 mg, 59%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 9.46 (s, 1H), 8.50 (s, 1H), 7.83-7.75 (m, 2H), 7.62-7.54 (m, 1H), 7.54-7.13 (m, 14H), 7.10-6.97 (m, 2H), 6.69 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 4.15 (s, 2H), 4.11 (s, 2H), 3.68-3.46 (m, 12H), 3.46-3.33 (m, 2H), 3.33-3.23 (m, 2H), 3.19 (s, 3H), 2.91 (s, 2H), 2.72 (tt, J = 6.9, 3.7 Hz, 1H), 2.43-2.30 (m, 2H), 2.18-1.99 (m, 3H), 1.98-1.60 (m, 5H), 1.41 (s, 3H), 1.15-1.05 (m, 2H), 0.82-0.75 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 172.5, 168.9, 167.5, 165.0, 164.0, 160.2, 156.0, 154.4, 152.1, 151.7, 150.8, 148.1, 146.5, 145.0, 141.4, 140.4, 138.8, 138.5, 137.9, 136.2, 134.1, 132.8, 130.2, 129.7, 129.3, 128.7, 128.4, 128.3, 128.1, 126.0, 125.82, 125.78, 125.2, 125.0, 123.4, 121.0, 119.8, 116.5, 113.8, 103.7, 90.1, 88.22, 88.18, 71.8, 71.5, 70.5, 70.3, 70.2, 70.1, 70.0, 69.6, 63.0, 60.5, 47.0, 37.8, 37.1, 34.8, 33.2, 29.8, 29.6, 29.1, 25.4, 21.2, 15.0, 14.3, 13.5, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C65H69FIN12O11[M + H]+計算値: 1339.4237, 実測値: 1339.4241。
【0137】
【0138】
[実施例15:(II-1)-(III-3(r=1))-(I)の合成]
<1.Br-(III-3(r=1))-Br>
シリルエノールエーテルの一般的合成法(Cazeau, P.等, Tetrahedron, 1987, 43, 2075-2088)に従い3,3’-(フラン-2,5-ジイル)ビス(3-メチルブタン-2-オン) (Uesaka, M.等, CommunicationsChemistry, 2018, 1, 23に記載の方法により合成)から調製した2,5-ビス{2-メチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]ブタ-3-エン-2-イル}フラン(2.00 g, 5.25 mmol)のCH2Cl2溶液(4.00 mL)に臭素のCH2Cl2溶液(1.90 M, 5.55 mL)を-40 ℃で添加した。20 分後、飽和NaHCO3水(16 mL)を加えて反応を停止し、有機層を分離した。水層をCH2Cl2 (2×15 mL)で抽出し、統合した有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/CH2Cl2 = 3:2)で精製し、下記構造を有するBr-(III-3(r=1))-Brを白色固体として得た(1.45 g, 70%)。融点82 ℃; 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.23 (s, 2H), 3.95 (s, 4H), 1.52 (s, 12H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 201.7, 156.7, 107.7, 48.9, 31.7, 23.7; IR (ATR, neat): 3132, 2981, 2937, 1725, 1550, 1463, 1385, 1367, 1263, 1114, 1041, 1030, 804, 694, 652 cm-1; HRMS (ESI-TOF): C14H18Br2O3Na [M + Na]+ 計算値: 414.9515; 実測値: 414.9515; 元素分析(%): C14H18Br2O3 計算値: C, 42.67; H, 4.60; 実測値: C, 42.48; H, 4.53。
【0139】
【0140】
<2.Br-(III-3(r=1))-(I)>
合成例1で合成したH-(I) (17.2 mg, 0.0300 mmol)とBr-(III-3(r=1))-Br (35.5 mg, 0.0900 mmol) のN,N-ジメチルアセトアミド(0.60 mL)懸濁液に2,6-ルチジン(5.2 μL, 0.045 mmol)を室温で添加した。反応混合物を80 ℃で43時間加熱した後、室温に冷却した。次に、EtOAc (5 mL)で希釈し、飽和NaHCO3水(2 mL)と飽和食塩水(2 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:1)及び分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 2:3)で精製し、下記構造を有するBr-(III-3(r=1))-(I)を白色固体として得た(15.1 mg, 57%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.31(s, 1H), 7.51 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.68 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 6.52-6.41 (m, 2H), 6.30-6.16 (m, 2H), 4.66 (br s, 1H), 3.94 (s, 2H), 3.88 (s, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.77-2.66 (m, 1H), 1.54 (s, 6H), 1.52 (s, 6H), 1.46 (s, 3H), 1.15-1.05 (m, 2H), 0.82-0.73 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 206.4, 201.8, 165.1, 164.0, 157.1, 156.8, 156.5, 156.4, 153.9, 151.9, 151.7, 147.6, 145.1, 141.0, 134.09, 134.05, 129.8, 128.5, 128.4, 126.0, 125.8, 125.1, 118.4, 113.7, 112.5, 107.8, 107.7, 104.0, 90.1, 88.1, 88.0, 49.4, 48.8, 47.9, 47.7, 34.8, 31.7, 31.4, 25.3, 23.74, 23.68, 23.5, 13.1, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C38H38BrFIN5NaO6[M + Na]+ 計算値: 908.0932; 実測値: 908.0943。
【0141】
【0142】
<3.(II-1)-(III-3(r=1))-(I)>
Br-(III-3(r=1))-(I) (20.0 mg, 0.0226 mmol)、アフレセルチブ(10.6 mg, 0.0248 mmol)、iPr2EtN (5.9 μL, 0.034 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (22.6 mg)のN,N-ジメチルアセトアミド(226 μL)懸濁液を室温で42時間撹拌した。反応混合物をシリカのパッド(CHCl3/MeOH = 17:3)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を2回の分取薄層クロマトグラフィー(1回目:シリカ、CHCl3/MeOH = 19:1、2回目:シリカ、CHCl3/MeOH = 97:3)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-3(r=1))-(I)を黄色固体として得た(10.4 mg, 37%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 7.60-7.45 (m, 2H), 7.45-7.35 (m, 2H), 7.30-7.25 (m, 1H), 7.25-7.10 (m, 1H), 7.09 (br s, 1H), 7.00-6.80 (m, 3H), 6.68 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 6.60-6.35 (m, 3H), 6.22 (d, J = 13.8, 3.2 Hz, 1H), 6.19 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 4.64 (br s, 1H), 3.84 (br s, 2H), 3.77 (s, 3H), 3.34 (br s, 2H), 3.19 (s, 3H), 2.90-2.80 (m, 1H), 2.70-2.50 (m, 2H), 2.50-2.20 (m, 2H), 1.60 (s, 6H), 1.50 (s, 3H), 1.43 (s, 6H), 1.20-0.90 (m, 2H), 0.80-0.60 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ207.3, 206.3, 165.0, 164.1, 164.0, 161.7, 160.5, 157.2, 156.6, 156.4, 153.9, 152.1, 152.0, 147.7, 145.1, 140.9, 140.8, 137.3, 135.43, 135.40, 134.1, 132.5, 130.05, 129.96, 129.7, 128.4, 128.32, 128.27, 126.3, 126.0, 125.8, 125.15, 125.06, 125.0, 116.4, 116.2, 113.6, 113.5, 113.44, 113.37, 110.6, 107.5, 107.3, 104.0, 90.2, 88.2, 54.6, 51.7, 50.89, 50.86, 50.8, 48.0, 47.9, 38.5, 37.9, 34.8, 25.3, 23.7, 23.4, 23.3, 23.2, 13.1, 8.57, 8.47; HRMS (ESI-TOF): C56H55Cl2F2IN9O7S [M + H]+ 計算値: 1232.2335; 実測値: 1232.2354。
【0143】
【0144】
[実施例16:(II-1)-(III-3(r=3))-(I)の合成]
<1.Br-(III-3(r=3))-Br>
シリルエノールエーテルの一般的合成法(Cazeau, P.等, Tetrahedron, 1987, 43, 2075-2088)に従い3,3’-{[フラン-2,5-ジイルビス(プロパン-2,2-ジイル)]ビス(フラン-5,2-ジイル)}ビス(3-メチルブタン-2-オン) (Uesaka, M.等, CommunicationsChemistry, 2018, 1, 23に記載の方法により合成)から調製した2,5-ビス(2-{5-[2-メチル-3-(トリメチルシリル)ブタ-3-エン-2-イル]フラン-2-イル}プロパン-2-イル)フラン (1.7 g, 2.9 mmol)のCH2Cl2溶液(2.2 mL)に臭素のCH2Cl2溶液(1.9 M, 3.00 mL)を-40 ℃で添加した。20 分後、飽和NaHCO3水(10 mL)を加えて反応を停止し、有機層を分離した。水層をCH2Cl2(2×10 mL)で抽出し、統合した有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/CH2Cl2/EtOAc = 18:1:1)で精製し、下記構造を有するBr-(III-3(r=3))-Brを白色固体として得た(1.1 g, 62%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.10 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 5.92 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 5.88 (s, 2H), 3.86 (s, 4H), 1.57 (s, 12H), 1.48 (s, 12H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 202.3, 160.5, 158.2, 154.7, 107.0, 105.0, 104.6, 48.7, 37.5, 32.7, 26.2, 23.7; IR (ATR, neat): 2978, 2936, 2871, 1731, 1550, 1462, 1385, 1364, 1259, 1206, 1098, 1038, 1022, 956, 787, 728, 659 cm-1; HRMS (ESI-TOF): C28H34Br2O5Na [M + Na]+ 計算値: 631.0668; 実測値: 631.0667。
【0145】
【0146】
<2.Br-(III-3(r=3))-(I)>
合成例1で合成したH-(I) (17.2 mg, 0.0300 mmol)とBr-(III-3(r=3))-Br (51.1 mg, 0.0840 mmol) のN,N-ジメチルアセトアミド(0.60 mL)懸濁液に2,6-ルチジン(5.2 μL, 0.045 mmol)を室温で添加した。反応混合物を80 ℃で20時間加熱した後、室温に冷却した。次に、EtOAc (3 mL)で希釈して濾過し、濾液を水(3 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/EtOAc = 9:1)及び分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/EtOAc = 9:1)で精製し、下記構造を有するBr-(III-3(r=3))-(I)を白色固体として得た(19.8 mg, 60%)。1H NMR 11.31 (s, 1H), 7.56-7.40 (m, 2H), 7.15 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.67 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 6.62-6.55 (m, 1H), 6.50-6.43 (m, 1H), 6.43-6.36 (m, 1H), 6.13 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.09 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.96-5.89 (m, 2H), 5.89-5.83 (m, 2H), 4.65 (br s, 1H), 3.92-3.72 (m, 4H), 3.20 (s, 3H), 2.78-2.68 (m, 1H), 1.58 (s, 6H), 1.55 (s, 6H), 1.50 (s, 6H), 1.47 (s, 6H), 1.45 (s, 3H), 1.15-1.06 (m, 2H), 0.82-0.74 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 207.4, 202.4, 165.1, 164.0, 160.5, 160.4, 158.3, 158.2, 156.4, 154.8, 154.7, 153.9, 151.9, 151.7, 147.8, 145.1, 140.9, 134.09, 134.05, 129.7, 128.5, 128.4, 126.0, 125.8, 125.1, 118.1, 114.0, 112.1, 107.1, 107.0, 105.0, 104.6, 104.0, 90.1, 88.1, 88.0, 49.4, 48.7, 47.7, 37.64, 37.55, 34.7, 32.8, 26.4, 26.2, 25.3, 23.7, 13.1, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C52H54BrFIN5NaO8[M + Na]+ 計算値: 1124.2082; 実測値: 1124.2094。
【0147】
【0148】
<3.(II-1)-(III-3(r=3))-(I)>
アフレセルチブ(6.1 mg, 0.014 mmol)とBr-(III-3(r=3))-(I) (14.3 mg, 0.0130 mmol)のジメチルスルホキシド(26 μL)溶液にiPr2EtN (3.4 μL, 0.019 mmol)とNaI (2.9 mg, 0.019 mmol)を室温で添加し、39時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を2回の分取薄層クロマトグラフィー(1回目:シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:3、2回目:シリカ、ヘキサン/EtOAc = 3:17)及びカラムクロマトグラフィー(アミン修飾シリカ、EtOAc)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-3(r=3))-(I)を白色固体として得た(3.7 mg, 28%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.31 (s, 1H), 7.55-7.48 (m, 3H), 7.48-7.38 (m, 2H), 7.30-7.19 (m, 1H), 7.13 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.03-6.96 (m, 1H), 6.95-6.86 (m, 2H), 6.67 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 6.60-6.52 (m, 1H), 6.50-6.43 (m, 1H), 6.40-6.33 (m, 1H), 6.11 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.03 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.91 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.86 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.83 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.81 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 4.64 (br s, 1H), 4.19-4.10 (m, 1H), 3.86-3.70 (m, 5H), 3.34-3.27 (m, 2H), 3.18 (s, 3H), 3.15-3.06 (m, 1H), 2.78-2.67 (m, 2H), 2.55-2.47 (m, 1H), 2.44-2.35 (m, 1H), 1.56 (s, 6H), 1.51 (s, 6H), 1.48 (s, 6H), 1.44 (s, 3H), 1.39 (s, 6H), 1.14-1.06 (m, 2H), 0.81-0.74 (m, 2H); HRMS (ESI-TOF): C70H71Cl2F2IN9O9S [M + H]+ 計算値: 1448.3485; 実測値: 1448.3493。
【0149】
【0150】
[実施例17:(II-2)-(III-3(r=1))-(I)の合成]
MK2206二塩酸塩をアミン修飾シリカ(CHCl3/MeOH = 3:2)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮してMK2206を調製した。このように得たMK2206 (13.8 mg, 0.0339 mmol)、実施例15と同様の方法で得られたBr-(III-3(r=1))-(I) (16.1 mg, 0.0182 mmol)、NaI (4.2 mg, 0.0226 mmol)、iPr2EtN (14.6 μL, 0.0839 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A(22.6 mg)のN,N-ジメチルアセトアミド(226 μL)懸濁液を室温下で1時間、続いて80 ℃で7.5時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物をシリカのパッド(CHCl3/MeOH = 9:1)に通過させた。溶離液を減圧下で濃縮後、残渣を分取薄層クロマトグラフィー[2回、1回目はシリカ(CHCl3/MeOH = 9:1)、2回目はシリカ(CHCl3/MeOH = 19:1)]により精製し、下記構造を有する(II-2)-(III-3(r=1))-(I)を白色固体として得た(2.0 mg, 9%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 8.43 (s, 1H), 7.71 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.60-7.45 (m, 1H), 7.45-7.25 (m, 10H), 7.10-7.00 (m, 2H), 6.65 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 6.50 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.40-6.20 (m, 4H), 4.70-4.60 (m, 1H), 4.35-4.15 (m, 1H), 3.95 (s, 1H), 3.49 (s, 2H), 3.17 (s, 3H), 2.75-2.60 (m, 1H), 2.60-2.00 (m, 6H), 1.38 (s, 3H), 1.25 (s, 12H), 1.20-1.00 (m, 2H), 0.90-0.70 (m, 2H); HRMS (ESI-TOF): C63H59FIN10O7 [M + H]+ 計算値: 1213.3597; 実測値: 1213.3570。
【0151】
【0152】
[実施例18:(II-3)-(III-3(r=1))-(I)の合成]
実施例15と同様の方法で得られたBr-(III-3(r=1))-(I) (12.4 mg, 0.0140 mmol)、実施例7と同様の方法で得られた(II-3)-H・2TFA (17.3 mg, 0.0420 mmol)、iPr2EtN (14.6 μL, 0.0839 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (8.5 mg)のN,N-ジメチルアセトアミド(70 μL)懸濁液を室温で24時間撹拌した。反応混合物をアミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 9:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を2回の分取薄層クロマトグラフィー(1回目:シリカ、EtOAc/MeOH = 19:1、2回目:アミン修飾シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1)で精製し、下記構造を有する(II-3)-(III-3(r=1))-(I)を黄色固体として得た(13.1 mg, 52%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 8.88 (br s, 1H), 8.28 (s, 1H), 8.51 (dd, J = 9.8, 1.6 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.16 (t, J = 7.8 Hz , 1H), 7.15-6.95 (m, 1H), 6.67 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 6.50-6.40 (m, 3H), 6.24 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.21 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 4.75-4.63 (m, 1H), 4.62-4.50 (m, 2H), 3.88 (br s, 2H), 3.47 (s, 2H), 3.19 (s, 3H), 3.13 (br s, 1H), 3.16 (s, 1H), 2.70 (br s, 1H), 2.58 (br s, 1H), 1.90-1.75 (m, 2H), 1.53 (s, 6H), 1.48 (s, 6H), 1.45 (s, 3H), 1.20-1.00 (m, 2H), 0.80-0.60 (m, 2H) 3.19 (s, 3H), 3.08 (s, 2H), 2.71 (tt, J = 6.9, 4.1 Hz, 1H), 2.53-2.40 (m, 2H), 2.27-2.05 (m, 3H), 1.91-1.77 (m, 1H), 1.40 (s, 3H), 1.18-1.05 (m, 2H), 0.84-0.73 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 206.6, 165.1, 164.0, 159.1, 157.2, 157.0, 156.5, 156.0, 151.9, 151.8, 147.6, 145.1, 141.0, 134.1, 129.8, 128.44, 128.37, 126.0, 125.8, 125.1, 120.3, 118.4, 113.7, 112.4, 107.6, 107.4, 104.0, 102.8, 102.0, 90.1, 88.13, 88.08, 54.8, 51.9, 49.3, 48.0, 47.9, 44.5, 34.7, 32.2, 32.1, 31.7, 29.84, 29.78, 29.5, 25.3, 24.1, 23.7, 23.5, 22.84, 22.80, 14.3, 13.2, 8.5, 1.2; HRMS (FAB-TOF): C49H53FIN10O6[M + H]+ 計算値: 1023.3173; 実測値: 1023.3197。
【0153】
【0154】
[実施例19:(II-4)-(III-3(r=1))-(I)の合成]
実施例15と同様の方法で得られたBr-(III-3(r=1))-(I) (25.0 mg, 0.0282 mmol)、実施例8と同様の方法で得られた(II-4)-H (9.2 mg, 0.032 mmol)、iPr2EtN (7.4 μL, 0.042 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (28.2 mg)のN,N-ジメチルアセトアミド(282 μL)懸濁液を室温で6時間撹拌し、続いて60 ℃で19時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物をシリカのパッド(CHCl3/MeOH = 4:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/MeOH = 19:1)で精製し、下記構造を有する(II-4)-(III-3(r=1))-(I)を黄色固体として得た(21.2 mg, 68%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.29 (s, 1H), 10.16 (br s, 1H), 8.24 (s, 1H), 7.51 (dd, J = 9.6, 1.4 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.15 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.06 (s, 1H), 6.67 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.48 (s, 1H), 6.45 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.23 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 6.20 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.68 (t, J = 4.3 Hz, 1H), 4.00-3.80 (m, 4H), 3.66 (s, 2H), 3.19 (s, 3H), 3.17 (s, 2H), 2.70 (tt, J =7.1, 3.6 Hz, 1H), 2.49 (br s, 1H), 2.25 (br s, 1H), 1.82 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 1.80-1.60 (m, 4H), 1.53 (s, 6H), 1.45 (s, 6H), 1.44 (s, 3H), 1.20-1.00 (m, 2H), 0.90-0.70 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 206.5, 165.1, 164.0, 157.6, 156.4, 156.0, 155.5, 154.4, 152.0, 151.7, 150.8, 147.6, 145.1, 141.0, 134.10, 134.07, 129.8, 128.5, 128.4, 126.0, 125.8, 125.1, 119.2, 118.4, 114.0, 112.2, 107.6, 107.1, 104.0, 103.2, 100.8, 90.1, 88.1, 88.0, 63.3, 60.0, 51.1, 49.3, 49.0, 48.3, 47.9, 39.5, 36.3, 34.7, 34.5, 31.1, 29.8, 25.3, 23.7, 23.6, 13.2, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C52H56ClFIN10O6 [M + H]+計算値: 1097.3102; 実測値: 1097.3078。
【0155】
【0156】
[実施例20:(II-3)-(III-4)-(I)の合成]
<1.Cl-(III-4)-Cl>
1,10-フェナントロリン無水物[1,10-フェナントロリン一水和物(1585.9 mg, 8.000 mmol)を減圧下で加熱後室温に冷却して調製]、塩化シアヌル(590.1 mg, 3.200 mmol)、及びモレキュラーシーブ3A (321.0 mg)のTHF (10.7 mL)懸濁液に対し、室温で3-クロロ-1-プロパノール(294 μL, 3.52 mmol)を添加した。反応混合物を室温で87時間、続いて40 ℃で27時間攪拌した後、室温に冷却した。次に、MeOH (10.7 mL)を添加し、室温で53時間、続いて35 ℃で41時間攪拌した後、室温に冷却した。反応混合物をEtOAc (50 mL)で希釈し、H2O (120 mL)、塩酸水溶液(1 M, 80 mL)、飽和NaHCO3水(80 mL)、及び飽和食塩水(80 mL)で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 6:1 to 4:1)で精製し、下記構造を有するCl-(III-4)-Clを薄黄色透明液体として得た(559.3 mg, 73%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 4.60 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 4.08 (s, 3H), 3.72 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.27 (tt, J = 6.4, 6.0 Hz 2H);13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 172.8, 172.6, 172.0, 65.8, 56.2, 40.9, 31.4; HRMS (DART-TOF): C7H10Cl2N3O2[M + H]+計算値: 238.01501; 実測値: 238.01478。
【0157】
【0158】
<2.Cl-(III-4)-(I)>
合成例1で合成したH-(I) (114.7 mg, 0.2000 mmol)、Cl-(III-4)-Cl (71.4 mg, 0.300 mmol)、3,5-ルチジン(4.6 μL, 0.040 mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(1.0 mL)の混合物に対し、iPr2EtN (69.8 μL, 0.401 mmol)を室温で添加した。反応混合物を室温で30分、続いて60 ℃で40分攪拌した後、室温に冷却した。次に、反応混合物をシリカのパッド(ヘキサン/EtOAc = 1:2)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/EtOAc = 1:1, 5回展開)で精製し、下記構造を有するCl-(III-4)-(I)を薄黄色固体として得た(101.7 mg, 66%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ11.31 (s, 1H), 7.72-7.68 (m, 1H), 7.55 (dd, J = 8.2, 1.4 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 9.6, 1.7 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 8.2, 7.9 Hz, 1H), 7.37 (br, s, 1H), 7.01 (dd, J = 7.9, 1.0 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 8.2, 8.2 Hz, 1H), 4.51 (t, J = 5.3 Hz, 2H), 3.97 (s, 3H), 3.71 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.74 (tt, J = 7.3, 3.7 Hz, 1H), 2.23 (tt, J = 6.2 Hz, 2H), 1.46 (s, 3H), 1.15-1.08 (m, 2H), 0.83-0.75 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 166.4, 165.0, 163.9, 156.5, 153.9, 152.1, 151.7, 145.0, 140.5, 138.6, 134.1, 134.1, 129.4, 128.3, 128.1, 126.0, 125.8, 125.2, 124.2, 121.8, 120.2, 103.8, 89.9, 88.4, 88.3, 64.5, 55.1, 41.4, 34.8, 31.8, 25.3, 13.6, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C31H29Cl1F1I1N8Na1O5[M + Na]+ 計算値: 797.08758; 実測値: 797.08516。
【0159】
【0160】
<3.(II-3)-(III-4)-(I)>
実施例7と同様の方法で得られた(II-3)-H・2TFA (15.6 mg)をアミン修飾シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 12:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮して得た脱TFA体(8.4 mg, 0.039 mmol)に、Cl-(III-4)-(I) (8.9 mg, 0.011 mmol)、モレキュラーシーブ4A (1.2 mg)、N,N-ジメチルアセトアミド(38.3 μL)、及びiPr2EtN (4.0 μL, 0.023 mmol)を室温で添加した。反応混合物を80 ℃で1時間、続いて100 ℃で20時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物をシリカのパッド(CHCl3/MeOH = 9:1)に通過させ、溶離液を減圧下で濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、CHCl3/MeOH = 9:1, 2回展開)で精製し、下記構造を有する(II-3)-(III-4)-(I)を白色固体として得た(2.6 mg, 24%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 11.30 (s, 1H), 11.19 (br, s, 1H), 8.88 (br, s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.78-7.65 (m, 1H), 7.63 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 9.6, 1.9 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 8.3, 7.8 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 3.7 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.69 (dd, J = 8.3, 8.2 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.72-4.61 (m, 2H), 4.54-4.42 (m, 2H), 3.95 (s, 3H), 3.28-3.12 (m, 5H), 2.95-2.81 (m, 3H), 2.75 (tt, J = 7.3, 3.7 Hz, 1H), 2.10-1.98 (m, 4H), 1.55-1.38 (m, 5H), 1.17-1.06 (m, 2H), 0.84-0.75 (m, 2H), 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 166.4, 165.0, 163.9, 157.1, 156.1, 154.4, 152.2, 151.9, 151.8, 151.2, 145.1, 140.5, 140.5, 134.2, 134.2, 131.1, 129.5, 128.3, 128.2, 126.0, 125.9, 125.3, 124.1, 121.7, 120.4, 120.2, 103.9, 102.9, 101.8, 101.7, 90.0, 88.4, 88.3, 55.3, 55.1, 44.9, 44.8, 43.3, 34.8, 32.2, 29.9, 25.4, 13.6, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C42H44F1I1N13O5[M + H]+ 計算値: 956.2617; 実測値: 956.2642。
【0161】
【0162】
[実施例21:(II-4)-(III-4)-(I)の合成]
実施例20と同様の方法で得られたCl-(III-4)-(I) (23.2 mg, 0.0299 mmol)、実施例8と同様の方法で得られた(II-4)-H (17.4 mg, 0.0596 mmol)、iPr2EtN (10.5 μL, 0.0603 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A(3.2 mg)のN,N-ジメチルアセトアミド(100 μL)溶液を120 ℃で6時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 9:1)に通過させた。溶離液を減圧下で濃縮後、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(シリカ、3回展開、CHCl3/MeOH = 15:1)により精製し、下記構造を有する(II-4)-(III-4)-(I)を白色固体として得た(2.0 mg, 6 %)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.3 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.76-7.57 (m, 2H), 7.51 (dd, J = 9.6, 1.4 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 8.2, 7.9 Hz, 1H), 7.08 (s, 1H), 7.00 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.69 (dd, J = 8.3, 8.2 Hz, 1H), 4.43 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.97 (s, 3H), 3.93 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 3.72 (s, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.74 (tt, J = 7.3, 3.7 Hz, 1H), 2.69-2.49 (m, 4H), 2.46-2.32 (m, 2H), 2.05-1.96 (m, 2H), 1.87 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 1.80-1.60 (m, 4H), 1.46 (s, 3H), 1.16-1.09 (m, 2H), 0.82-0.77 (m, 2H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 166.4, 165.0, 163.9, 156.1, 155.6, 154.4, 152.2, 151.7, 151.1, 150.8, 145.0, 140.5, 138.9, 134.2. 134.1, 131.1, 129.5, 128.3, 128.2, 126.0. 125.9, 125.3, 124.1, 121.6, 120.2, 119.0, 103.9, 103.3, 100.9, 90.0, 88.4, 88.3, 66.7, 55.4, 55.2, 55.1, 51.3, 48.9, 48.8, 40.1, 34.8, 34.8, 29.9, 26.6, 25.4, 13.6, 8.5; HRMS (ESI-TOF): C45H47Cl1F1I1N13O5[M + H]+ 計算値: 1030.2540; 実測値: 1030.2526。
【0163】
【0164】
[実施例22:(II-1)-(III-4)-(I)の合成]
実施例20と同様の方法で得られたCl-(III-4)-(I) (7.7 mg, 0.0099 mmol)、アフレセルチブ(12.8 mg, 0.0300 mmol)、iPr2EtN (3.5 μL, 0.020 mmol)、NaI (1.6 mg, 0.011 mmol)、ジメチルスルホキシド(50 μL)の混合物を40 ℃で39時間加熱した後、室温に冷却した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、シリカのパッド(CHCl3/MeOH = 9:1)に通過させた。溶離液を減圧下で濃縮後、残渣を2回の分取薄層クロマトグラフィー(1回目:シリカ、3回展開、CHCl3/MeOH = 29:1→19:1→19:1、2回目:シリカ、CHCl3/EtOH = 15:1)で精製し、下記構造を有する(II-1)-(III-4)-(I)を白色固体として得た(0.8 mg, 7 %)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 11.31 (s, 1H), 7.71 (br, s, 1H), 7.56-7.50 (m, 2H), 7.49 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.41-7.36 (m, 2H), 7.27-7.20 (m, 1H), 7.01 (dd, J = 7.9, 1.0 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 6.95-6.87 (m, 2H), 6.70 (dd, J = 8.3, 8.2 Hz, 1H), 4.55-4.26 (m, 3H), 3.94 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 3.08-2.97 (m, 1H), 2.87-2.64 (m, 6H), 1.98-1.84 (m, 2H), 1.46 (s, 3H), 1.18-1.05 (m, 2H), 0.85-0.73 (m, 2H); HRMS (ESI-TOF): C49H46Cl2F2I1N12O6S1[M + H]+ 計算値: 1165.1774; 実測値: 1165.1747。
【0165】
【0166】
[実施例23:細胞増殖阻害活性評価(IC50)]
実施例1~22で得られたハイブリッド型化合物の活性を、細胞生存率の測定に広く利用されるMTTアッセイにより評価した[MTT: 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]。このアッセイでは、還元酵素の作用によりMTTから生成するホルマザン色素の量が生存細胞数に比例するため、吸光度測定により細胞生存率を求めることができる。又は、市販の細胞増殖測定キット(Cell Count Reaget SF; ナカライ #755344)を用いて、販売元プロトコールに従って、生細胞数を計測することで増殖阻害活性(IC50)を算出した。
【0167】
96ウェルプレートを用いて、H358細胞(5×103cells/well)を培地(RPMI-1640、10%ウシ胎児血清添加)(100 μL/well)中で24時間培養した。各ウェルにハイブリッド型化合物又は対照化合物(トラメチニブ)の培地溶液(100 μL、0.2%以下のジメチルスルホキシド含有)を添加し、72時間培養後、各ウェルにMTT溶液(50 μL、2 mg/mL)を添加した。2時間後、各ウェルの上清を除去し、残渣にジメチルスルホキシド(50 μL)を添加した。マイクロプレートリーダーを用いて吸光度(570 nm)を測定し、陰性対照(100%)に対する吸光度の百分率を細胞生存率として算出した。各ハイブリッド型化合物又は対照化合物の濃度を変えて、複数回実験を繰り返すことにより、細胞生存率50%となる各ハイブリッド型化合物又は対照化合物の濃度を求め、該濃度をIC50とした。各ハイブリッド型化合物又は対照化合物におけるIC50を、以下の表1に示す。
【0168】
【0169】
表1より、いずれのハイブリッド型化合物も、細胞増殖阻害活性を有することが示唆された。また、一部のハイブリッド型化合物は、トラメチニブと同等以上の細胞増殖阻害活性を有することが分かった。
【0170】
[実施例24:Akt阻害活性評価]
市販のAktキナーゼ活性測定キット(Akt Kinase Activity Kit, Catalog # ADI-EKS-400A, Enzo Lifescience社製)を用いて、ハイブリッド型化合物((II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)、(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)、(II-4)-(III-1(m=5, n=0))-(I)、(II-1)-(III-3(r=1))-(I)、(II-3)-(III-3(r=1))-(I)、(II-4)-(III-3(r=1))-(I)、(II-1)-(III-4)-(I)、(II-3)-(III-4)-(I)、(II-4)-(III-4)-(I)、(II-4)-(III-1(m=2, n=1))-(I))及び薬剤(アフレセルチブ、1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピペリジン-4-アミン、2-(5-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカン)のAkt阻害活性を評価した。陰性対照(化合物無添加)のAkt活性を100%として、IC50となる、各ハイブリッド型化合物及び薬剤の濃度(μM)を表2に示した。IC50となる濃度が低いほどハイブリッド型化合物又は薬剤のAkt活性の阻害が強いことを表す。
【0171】
【0172】
その結果、リンカー部が(III-3(r=1))又は(III-1(m=2, n=1))である場合、薬剤と同程度のAkt阻害活性を有していることが示唆された。
【0173】
[実施例25:細胞増殖阻害活性評価(IC90)]
ハイブリッド型化合物((II-4)-(III-1(m=2, n=1))-(I)、(II-4)-(III-3(r=1))-(I)、(II-1)-(III-3(r=3))-(I)、(II-4)-(III-4)-(I))又は薬剤(トラメチニブ)の細胞増殖阻害活性(IC90)を評価した。実施例23と同様の条件でH358細胞の培養を開始し、ハイブリッド型化合物又は薬剤添加前の培養期間を1日~2日延ばし、プレート底面でH358細胞がsemi-confluentになった時に、各ハイブリッド型化合物又は薬剤の培地溶液(100 μL、0.2%以下のジメチルスルホキシド含有)を添加し、48時間培養した。市販の細胞増殖測定キット(Cell Count Reaget SF; ナカライ #755344)を用いて、販売元プロトコールに従って、生細胞数を450nm 吸光度で算出した。化合物無添加の生細胞数の吸光度に対して、その10%の吸光度の薬剤濃度をIC90濃度として算出し、以下の表3に示した。比較のために、この培養及び薬剤添加条件におけるIC50濃度(50%吸光度の薬剤濃度)を求めた。この同一試験内におけるIC90/IC50値を算出した。
【0174】
【0175】
同一条件にて検出したIC90濃度は、ハイブリッド型化合物((II-4)-(III-3(r=1))-(I)、(II-1)-(III-3(r=3))-(I)、(II-4)-(III-4)-(I))において、トラメチニブよりも低値を示した。また算出したIC90/IC50値を指標にすると、トラメチニブはハイブリッド化合物に比べ、生細胞数を10%まで減少させるために、IC50濃度の100倍程度の濃度で用いる必要があることが示された。一方、ハイブリッド型化合物はIC50濃度に近い濃度域で、生細胞数を十分に低下させることが示唆された。
【0176】
[実施例26:マウス血中濃度試験]
本発明のハイブリッド型化合物((II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)、(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)、及び(II-1)-(III-3(r=1))-(I))のマウスの血中濃度の推移を評価した。
【0177】
ハイブリッド型化合物と対比するために、化合物(MK2206及びトラメチニブ混合物1(MK2206:トラメチニブ(重量比)=50:50)、MK2206及びトラメチニブ混合物2(MK2206:トラメチニブ(重量比)=50:50)、アフレセルチブ及びトラメチニブ混合物1(アフレセルチブ:トラメチニブ(重量比)=50:50)、アフレセルチブ及びトラメチニブ混合物2(アフレセルチブ:トラメチニブ(重量比)=50:50))を使用した。
【0178】
ハイブリッド型化合物又は前記化合物を、20 μg/100 μLの量で含むin vivo投与液(2% DMSO, 1% Tween-20, PBS)を調製した。Balb/c(nu/nu)マウス(メス、8週齢;日本クレア)2匹を1群として、前記in vivo投与液を、1.0 mg/kg(ca. 20 μg/20g/100 μL)の用量で、マウスの背部皮下に投与した。
【0179】
投与後、5 min, 15 min, 30 min, 60 min, 2 hr, 4.5 hr, 及び25 hr経過後に頬下採血し、クエン酸溶液を×1/10量添加し氷冷した。冷却遠心機にて、3000 rpmで10分遠心し、上清を血漿画分として、LC-MS解析するまで-80 ℃で保管した。
【0180】
-80 ℃で保管した血漿画分を解凍し、4 ℃で、該血漿画分10 μLに、PBS 10 μLを加え、150 nM イマチニブ(Imatinib)と0.1% ギ酸を含むアセトニトリル60 μLを加えてよく撹拌した後、1500 rpmで5分遠心した。その上清を回収して、LC-MS/MSにて定量した。
【0181】
なお、前記ハイブリッド型化合物及び前記化合物について、事前に所定量を対照マウス血漿に添加し、イマチニブを内部標準とした添加回収試験を行い、検量線を作製することにより、各採血時の血中濃度を定量した。前記化合物のトラメチニブの血中濃度推移を
図1に示し、前記化合物のアフレセルチブの血中濃度推移を
図2に示し、(II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の血中濃度を
図3に示し、(II-3)-(III-1(m=5, n=0))-(I)の血中濃度を
図4に示し、(II-1)-(III-3(r=1))-(I)の血中濃度を
図5に示す。前記ハイブリッド型化合物及び前記化合物の血中濃度の半減期(t
1/2)表4に示す。
【0182】
【0183】
前記表4の結果から算出したトラメチニブの半減期の平均は744分であり、アフレセルチブの半減期の平均は191分であった。トラメチニブと、アフレセルチブや、MK2206等のAkt阻害薬とを併用した場合には、両者の半減期が異なるといった問題点が考えられるが、ハイブリッド型化合物とすることにより、当該問題を解決することができると考えられる。また、ハイブリッド型化合物の半減期はアフレセルチブより長く、有用性が高いと考えられる。なお、LC-MS/MSの測定条件は以下のものを採用した。
【0184】
LC-MS/MS条件
・使用カラム:Shiseido CAPCELL PAK C18 Type : MGIII 3 μm
(Size : 2.0 mm I.D. x 50 mm、Cat. No. 92744、Col. No. A19IE01366)
・流速:0.4000 mL/分
・カラムオーブン温度:40 ℃
【0185】
[実施例27:Hybrid化合物のH-358担がんマウス増殖阻害効果の評価試験]
本発明のハイブリッド型化合物((II-1)-(III-1(m=5, n=0))-(I)及び(II-1)-(III-3(r=1))-(I))を、In vivo担がんモデルで評価した。ハイブリッド型化合物と対比するために、トラメチニブを使用した。
【0186】
培養したH358細胞を、Balb/c(nu/nu)マウス(メス、7週齢;日本クレア)の腹側左右皮下にそれぞれ5×106個ずつ、Matrigel共存下で移植した。各移植部位の腫瘍径を計測して、腫瘍増大の観察を、マウスを4群に分けて実施した。
【0187】
各マウスに薬液を上背部皮下に投与した。投与間隔は3回/週(2~3日に1回投与)として、ハイブリッド型化合物の腫瘍増殖抑制作用をトラメチニブ、及びvehicleと比較した。薬液は、2% DMSOと1% Tween-20とを含むPBSにハイブリッド型化合物又はトラメチニブが下記用量、容量となるように溶解させたものを使用した。ハイブリッド型化合物又はトラメチニブを用いない2% DMSOと1% Tween-20とを含むPBSを投与する態様をvehicleと記した。
【0188】
薬液は、薬剤が1 μmol/kg用量となるように、5 mL/kgの容量で投与した。なお、vehicleでは、同量の液体(2% DMSOと1% Tween-20とを含むPBS)を投与した。腫瘍径を毎週計測し、5週間投与した結果を
図6に示した。
【0189】
トラメチニブ及びハイブリッド型化合物において、vehicleと比べて腫瘍増大の抑制が観察され、5週においてトラメチニブと、ハイブリッド型化合物とは同等の抗がん効果を示した。該試験により、ハイブリッド型化合物in vivo有効性が確認された。