IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-180462液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
<>
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図1
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図2
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図3
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図4
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図5
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図6
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図7
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図8
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図9
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図10
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図11
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図12
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図13
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図14
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図15
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図16
  • 特開-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180462
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B41J2/14 605
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093810
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 俊道
(72)【発明者】
【氏名】安藤 汐視
(72)【発明者】
【氏名】村上 友章
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF34
2C057AG15
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG48
2C057AG68
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】共通液室部分を流れる液体の圧力損失の低減の要望あるいは小型化の要望に十分に応える。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズル31A,31Bがそれぞれ配列された少なくとも2列のノズル列と、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室22A,22Bと、前記個別液室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、前記複数の個別液室の各々に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドであって、前記共通液室は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、前記少なくとも2列のノズル列が存在するノズル列領域Iに対し、該ノズル列のノズル配列方向に対して直交する方向の一方側に配置される共通液室部分から、前記少なくとも2列のノズル列のそれぞれを構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室の各々に液体を供給する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルがそれぞれ配列された少なくとも2列のノズル列と、
前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室と、
前記個別液室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、
前記複数の個別液室の各々に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドであって、
前記共通液室は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、前記少なくとも2列のノズル列が存在するノズル列領域に対し、該ノズル列のノズル配列方向に対して直交する方向の一方側に配置される共通液室部分から、前記少なくとも2列のノズル列のそれぞれを構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室の各々に液体を供給することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記少なくとも2列のノズル列は、互いに隣接するノズル列間におけるノズルのノズル配列方向位置が互い違いに配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通液室は、前記共通液室部分から個別流路を通じて前記複数の個別液室の各々に液体を供給し、
前記共通液室部分から遠いノズル列を構成するノズルに連通した個別液室に接続される個別流路は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、該遠いノズル列よりも前記共通液室部分に近いノズル列を横切るように配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通液室は、前記共通液室部分から個別流路を通じて前記複数の個別液室の各々に液体を供給し、
前記共通液室部分に近いノズル列を構成するノズルに連通した個別液室に接続される個別流路は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、該近いノズル列を横切ってから該近いノズル列の方へ戻るように配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記個別流路は、前記ノズルの液体吐出方向で前記ノズル列が形成されたノズル面から離れる向きへ液体を流す流路部分を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、及び、主走査移動機構の少なくとも一つと、液体吐出ヘッドとを備えた液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドを用いることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項7】
液体を吐出する装置において、
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドを有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する複数のノズルがそれぞれ配列された少なくとも2列のノズル列と、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室と、個別液室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、複数の個別液室の各々に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2列のノズル列をそれぞれ構成するノズルのノズル配列方向位置がノズル列間で互い違いになるように千鳥状配置がなされたインクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)が開示されている。このインクジェット記録ヘッドにおける共通液室は、ノズルの液体吐出方向から見たときに、当該2列のノズル列が存在するノズル列領域に対し、ノズル列のノズル配列方向に対して直交する方向の各側に配置される2つの共通液室部分に分岐している。これらのうちの一方の共通液室部分は、一方のノズル列をそれぞれ構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室へ液体を供給し、他方の共通液室部分は、他方のノズル列をそれぞれ構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室へ液体を供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体吐出ヘッドでは、共通液室部分を流れる液体の圧力損失の低減の要望あるいは小型化の要望に十分に応えることができていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、液体を吐出する複数のノズルがそれぞれ配列された少なくとも2列のノズル列と、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室と、前記個別液室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、前記複数の個別液室の各々に液体を供給する共通液室とを有する液体吐出ヘッドであって、前記共通液室は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、前記少なくとも2列のノズル列が存在するノズル列領域に対し、該ノズル列のノズル配列方向に対して直交する方向の一方側に配置される共通液室部分から、前記少なくとも2列のノズル列のそれぞれを構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室の各々に液体を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、共通液室部分を流れる液体の圧力損失の低減の要望あるいは小型化の要望に十分に応えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル面を示す平面図。
図2】同液体吐出ヘッドを、図1中符号C-Cに沿って、ノズル列のノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図3】同液体吐出ヘッドを、図1中符号D-Dに沿って、ノズル列のノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図4】同液体吐出ヘッドを、第一のノズル列に沿って切断した断面図。
図5】同液体吐出ヘッドを、第二のノズル列に沿って切断した断面図。
図6】同液体吐出ヘッドの外観斜視説明図。
図7】実施形態における共通液室から2つのノズル列の各ノズルまでのインク流路を説明するために、流路板を構成する3枚の板状部材とノズル板をそれぞれノズル面側から見た状態で並べて表示した分解図。
図8】変形例1における液体吐出ヘッドを、第一のノズル列のノズルを通るように、ノズル列のノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図9】変形例1における液体吐出ヘッドを、第二のノズル列のノズルを通るように、ノズル列のノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図10】変形例1における共通液室から2つのノズル列の各ノズルまでのインク流路を説明するために、流路板を構成する3枚の板状部材とノズル板をそれぞれノズル面側から見た状態で並べて表示した分解図。
図11】変形例1に係る液体吐出ヘッドを、第一のノズル列に沿って切断した断面図。
図12】同液体吐出ヘッドを、第二のノズル列に沿って切断した断面図。
図13】変形例2における液体吐出ヘッド、第一のノズル列のノズルを通るように、ノズル列のノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図14】変形例2における液体吐出ヘッドを、第二のノズル列のノズルを通るように、ノズル列のノズル配列方向と直交する面で切断した断面図。
図15】液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図。
図16】液体を吐出する装置の要部側面説明図。
図17】液体吐出ユニットの他例の要部平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッドの一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434のノズル面を示す平面図である。
図2は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434を、図1中符号C-Cに沿って、ノズル列A,Bのノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図3は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434を、図1中符号D-Dに沿って、ノズル列A,Bのノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図4は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434を、第一のノズル列Aに沿って切断した断面図である。
図5は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434を、第二のノズル列Bに沿って切断した断面図である。
【0009】
本実施形態に係る液体吐出ヘッド434は、主に、フレーム1と、流路板2と、ノズル板3と、ベース4と、積層圧電素子5と、振動板6とから構成されている。
【0010】
フレーム1は、所定のインク供給口や共通液室12となる彫り込みが形成された構成部材(隔壁部材)である。流路板2は、個別液室である圧力発生室22A,22Bとなる彫り込みと、ノズル31A,31Bに連通する連通管部23A,23Bとが形成された構成部材である。ノズル板3は、ノズル31A,31Bが形成された構成部材である。ベース4は、圧力発生手段としてのアクチュエータ素子である積層圧電素子5を支持する構成部材である。振動板6は、ダイヤフラム部62及びインク流入口63を有する構成部材である。
【0011】
流路板2は、ノズル31A,31Bに通じる圧力発生室22A,22B、各圧力発生室22A,22Bに通じる個別流体抵抗部21A,21B、個別流体抵抗部21A,21Bに通じる導入部20が形成されている。流路板2は、ノズル板3側から複数枚(ここでは3枚)の板状部材2A,2B,2Cを積層接合して形成され、これらの板状部材2A,2B,2Cと振動板6とを積層接合して流路部材が構成されている。
【0012】
ノズル板3は、金属材料、例えば電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、液体であるインクを飛翔させるための微細な吐出口であるノズル31A,31Bを多数形成している。このノズル31A,31Bの内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル31A,31Bの径はインク出口側の直径で約20[μm]~35[μm]である。
【0013】
本実施形態の液体吐出ヘッド434は、図1に示すように、液体であるインクを吐出する複数のノズル31A,31Bがそれぞれ配列された2列のノズル列A,Bを備えている。本実施形態のノズル列A,Bは、それぞれのノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bのノズル配列方向(図1の上下方向)位置がノズル列間で互い違いになるように千鳥状配置になっている。各ノズル列A,Bにおけるノズルピッチは例えば150[dpi]である。
【0014】
ノズル板3のノズル面(インク吐出面)は、撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けるのが好ましい。例えば、PTFE-Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理層を設けるのが好ましい。これにより、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。インク供給口と共通液室12となる彫り込みを形成するフレーム1は樹脂成形で作製している。
【0015】
ベース4は、積層圧電素子5を支持する基材であり、例えばSUSによって形成されている。
【0016】
積層圧電素子5は、厚さ10[μm]~50[μm]/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数[μm/1層]の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層した積層構造をもつ。内部電極層は両端で外部電極に接続される。積層圧電素子5は、ハーフカットのダイシング加工により櫛歯状に分割され、1つ毎に駆動部と支持部(非駆動部)として使用される。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極54となる。他方はダイシング加工では分割されずに導通しており共通電極55となる。
【0017】
個別電極54には、FPC(フレキシブルプリント回路)13が半田接合されている。また、共通電極55は積層圧電素子5の端部に電極層を設けて回し込んでFPC13のグランド電極に接合している。FPC13には、ヘッド制御部であるヘッドドライバが実装されており、これにより積層圧電素子5への駆動電圧印加を制御している。
【0018】
振動板6は、電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成したものである。振動板6には、薄膜のダイヤフラム部62と、インク流入口63となる開口とが形成されている。ダイヤフラム部62の厚さは、例えば3[μm]、幅は35[μm](片側)である。振動板6と積層圧電素子5の駆動部との接合や、振動板6とフレーム1との接合については、ギャップ材を含んだ接着剤からなる接着層7をパターニングして接着により接合している。
【0019】
このように構成した液体吐出ヘッド434においては、画像記録信号に応じて、駆動パルスで構成される駆動波形(10[V]~50[V]のパルス電圧)が積層圧電素子5に印加される。これによって、積層圧電素子5に積層方向の変位が生起し、振動板6を介して圧力発生室22A,22Bが加圧されて圧力が上昇し、ノズル31A,31Bからインクが吐出される。その後、インク吐出の終了に伴い、圧力発生室22A,22B内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動電圧(駆動パルス)の放電過程によって圧力発生室22A,22B内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室12に流入し、共通液室12からインク流入口63を経て導入部20及び個別流体抵抗部21A,21Bを通り、圧力発生室22A,22B内に充填される。
【0020】
個別流体抵抗部21A,21Bは、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果がある反面、最充填(リフィル)に対して抵抗になる。個別流体抵抗部21A,21Bを適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0021】
図6は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド434の外観斜視説明図である。
フレーム1の供給ポート71は、共通液室12のノズル配列方向一端側に配置され、共通液室12につながっている。フレーム1の循環ポート72は、共通液室12のノズル配列方向他端側に配置され、共通液室12につながっている。
【0022】
なお、一般に、プリンタ、ファックス、複写機、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えばインクの液滴(以下、インクという)を吐出する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、媒体である用紙を搬送しながら液体吐出ヘッドによりインクを用紙に付着させて画像形成を行う。ここでの媒体は「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。また、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出して画像形成を行う装置を意味する。そして、画像形成とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を吐出する)ことをも意味する。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液滴となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。
【0023】
図7は、本実施形態における共通液室12から2つのノズル列A,Bの各ノズル31A,31Bまでのインク流路を説明するために、流路板2を構成する3枚の板状部材2A,2B,2Cとノズル板3をそれぞれノズル面側から見た状態(ノズルのインク吐出方向から見た状態)で並べて表示した分解図である。
なお、図7は、2つのノズル列A,Bのノズル31A,31Bが1つずつだけ示されたものである。
【0024】
流路板2に形成される導入部20は、ノズル31A,31Bのインク吐出方向から見たとき、2つのノズル列A,Bが存在するノズル列領域Iに対してノズル列横方向(図7中左右方向)の一方側に配置されている。この導入部20のノズル面とは反対側には、図2及び図3に示すように、共通液室12が接続されている。ノズル31A,31Bのインク吐出方向から見たとき、共通液室12も、図2及び図3に示すように、2つのノズル列A,Bが存在するノズル列領域Iに対してノズル列横方向(図2及び図3中左右方向)の一方側に配置されている。
【0025】
共通液室12からインクが導入される導入部20は、各ノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bのうちの1つずつのノズル31A,31Bに連通するように設けられている。詳しくは、共通液室12は、2つのノズル列A,Bのノズル配列方向に沿って延びるインク流路を構成しており、各ノズル列A,Bを構成するノズル個数分(1つのノズル列を構成するノズル個数分)の導入部20のそれぞれが、ノズル列A,Bのノズル配列方向に沿って延びる共通液室12の各位置に接続されている。
【0026】
以下、図1図3並びに図7を用いて、共通液室12から2つのノズル列A,Bの各ノズル31A,31Bの圧力発生室22A,22Bへインクを供給する経路を説明する。
【0027】
第一のノズル列Aのノズル31Aの圧力発生室22Aへのインク供給経路においては、まず、共通液室12から導入部20へ導入されたインクは、ノズル板3から最も遠い流路板2の板状部材2Cに形成された個別流体抵抗部21Aを通って、同じ板状部材2Cに形成された圧力発生室22Aへ供給される。圧力発生室22A内のインクは、対応する積層圧電素子5により振動板6を介して圧力発生室22Aが加圧されて圧力が上昇することで、流路板2の板状部材2A,2Bに形成された連通管部23Aを通って、ノズル板3のノズル31Aから吐出される。
【0028】
第二のノズル列Bのノズル31Bの圧力発生室22Bへのインク供給経路は、第一のノズル列Aのインク供給経路と同じ導入部20からインクが供給される。第二のノズル列Bのインク供給経路では、まず、導入部20へ導入されたインクは、ノズル板3に最も近い流路板2の板状部材2Aに形成された個別流体抵抗部21Bを通る。その後、個別流体抵抗部21Bを通過したインクは、流路板2の板状部材2A,2Bに形成された連絡路24Bを通って、ノズル面から離れる向きへ流れ、ノズル板3から最も遠い流路板2の板状部材2Cに形成された圧力発生室22Bへ供給される。圧力発生室22B内のインクは、対応する積層圧電素子5により振動板6を介して圧力発生室22Bが加圧されて圧力が上昇することで、流路板2の板状部材2A,2Bに形成された連通管部23Bを通って、ノズル板3のノズル31Bから吐出される。
【0029】
本実施形態における共通液室12は、2列のノズル列A,Bのそれぞれを構成する複数のノズル31A,31Bに連通した複数の圧力発生室22A,22Bの各々にインク(液体)を供給する共通液室部分を含んでいる。そして、共通液室12のうちの少なくとも当該共通液室部分は、ノズル31A,31Bのインク吐出方向から見たときに、2列のノズル列A,Bが存在するノズル列領域Iに対して、ノズル列A,Bのノズル配列方向に対して直交する方向(ノズル列横方向)の一方側に配置されている。これにより、本実施形態では、当該ノズル列領域Iのノズル列横方向の他方側には、当該2列のノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bの圧力発生室22A,22Bへインクを供給するための共通液室12が配置されていない。
【0030】
従来構成では、2列のノズル列ごとに設けられる2つの共通液室部分がノズル列領域Iに対してノズル列横方向の両側にそれぞれ配置されていた。これに対し、本実施形態では、従来構成における2つの共通液室部分を集約して、ノズル列領域Iに対してノズル列横方向の一方側に配置したものと言える。このような本実施形態の構成によれば、従来構成と比較して、ノズル列横方向における液体吐出ヘッド434の小型化の実現が容易になる。
【0031】
また、従来構成では、ノズル列横方向における小型化を実現するためには、ノズル列領域Iに対してノズル列横方向の両側に配置される2つの共通液室部分のノズル列横方向寸法を小さくする必要があり、各共通液室部分を流れるインクの圧力損失の増大を伴う。これに対し、本実施形態によれば、従来構成における2つの共通液室部分を、ノズル列領域に対してノズル列横方向の一方側に配置される共通液室12に集約することで、ノズル列横方向における小型化を従来構成と同じように実現する場合でも、従来構成よりも共通液室12のノズル列横方向の寸法を大きくでき、共通液室12を流れる液体の圧力損失を小さく抑えることが可能である。
【0032】
更に、本実施形態における共通液室12を、ノズル31A,31Bのインク吐出方向から見たときに2列のノズル列A,Bの列間に配置することで、上述したようなノズル列横方向における液体吐出ヘッド434の小型化の実現、共通液室12を流れる液体の圧力損失を小さく抑えることは可能である。しかしながら、この場合、2列のノズル列A,Bの列間隔を広くとる必要が出てくるため、ノズル列間のノズル間隔が広がってしまい、液体吐出ヘッド434のノズル密度が低下してしまうという問題が生じる。本実施形態によれば、共通液室12が2列のノズル列A,Bの列間には配置されないため、このようなノズル密度の低下を引き起こすことはない。
【0033】
また、本実施形態においては、図1図7に示すように、各ノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bのノズル配列方向位置がノズル列間で互い違いになるような千鳥状配置となっている。各ノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bのノズル配列方向位置がノズル列間で同じ位置となっている場合、本実施形態のようにノズル列領域Iに対してノズル列横方向の一方側に配置された共通液室12から当該2列のノズル列A,Bの各ノズル31A,31Bに連通した圧力発生室22A,22Bの各々にインクを供給するには、それぞれのインク流路の経路が複雑となり、圧力損失の増大などを引き起こしやすい。これに対し、本実施形態のような千鳥状配置であれば、各ノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bの位置がノズル配列方向においてずれているため、それぞれのインク流路の経路の複雑化を避けることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態においては、第一のノズル列Aのインク供給経路において、流路板2の板状部材2Cに形成される(ノズル面からの高さが同じ箇所に形成される)個別流体抵抗部21A及び圧力発生室22Aは、対応するノズル31Aと略同じノズル配列方向位置に形成されている。したがって、共通液室12から導入部20及び個別流体抵抗部21Aを通じて圧力発生室22Aに至るインク流路は、直線的でかつ短距離である。
【0035】
一方、第二のノズル列Bのインク供給経路において、上述したように、個別流体抵抗部21Bから連絡路24Bを通ってノズル面から離れる向きへ曲げられた後、圧力発生室22Bへ供給される。このインク流路は、途中に流路方向が変化する箇所があり、しかも流路長が第一のノズル列Aのインク供給経路と比べて長い。そのため、第一のノズル列Aのインク供給経路と第二のノズル列Bのインク供給経路との間では、インク流路の圧力損失に違いが生じやすい。このような圧力損失の違いが大きいと、ノズル列A,B間におけるノズル31A,31Bからのインク吐出特性などに違いが出てしまいやすい。
【0036】
そのため、第一のノズル列Aのインク供給経路と第二のノズル列Bのインク供給経路との間の圧力損失の差を小さくするような構成を採用するのが好ましい。例えば、第一のノズル列Aのインク供給経路における個別流体抵抗部21Aの長さを第二のノズル列Bのインク供給経路における個別流体抵抗部21Bよりも長くしたり、第二のノズル列Bのインク供給経路については圧力損失の比較的少ない流路断面の広い箇所(例えば導入部20)を多く設けたりする。
【0037】
〔変形例1〕
次に、本実施形態の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
図8は、本変形例1における液体吐出ヘッド434を、第一のノズル列Aのノズル31Aを通るように、ノズル列A,Bのノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図9は、本変形例1における液体吐出ヘッド434を、第二のノズル列Bのノズル31Bを通るように、ノズル列A,Bのノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図10は、本変形例1における共通液室12から2つのノズル列A,Bの各ノズル31A,31Bまでのインク流路を説明するために、流路板2を構成する3枚の板状部材2A,2B,2Cとノズル板3をそれぞれノズル面側から見た状態(ノズルのインク吐出方向から見た状態)で並べて表示した分解図である。
図11は、本変形例1に係る液体吐出ヘッド434を、第一のノズル列Aに沿って切断した断面図である。
図12は、本変形例1に係る液体吐出ヘッド434を、第二のノズル列Bに沿って切断した断面図である。
【0038】
本変形例1のノズル列A,Bは、上述した実施形態と同様、それぞれのノズル列A,Bを構成するノズル31A,31Bのノズル配列方向位置がノズル列間で互い違いになるように千鳥状配置になっている。上述した実施形態において、各ノズル列A,Bのノズル31A,31Bに対応した各圧力発生室22A,22Bは、ノズル配列方向に対して直交する方向(ノズル列横方向)の位置が同じ位置になるように配置されていた。これに対し、本変形例1では、各ノズル列A,Bのノズル31A,31Bに対応した各圧力発生室22A,22Bは、ノズル列横方向の位置がノズル列間で互い違いになるように千鳥状配置になっている。
【0039】
本変形例1において、第一のノズル列Aのノズル31Aの圧力発生室22Aへのインク供給経路については、まず、共通液室12から導入部20へ導入されたインクは、流路板2を構成する真ん中の板状部材2Bに形成された個別流体抵抗部21Aを通って、圧力発生室22Aへ供給される。本変形例1の圧力発生室22Aは、流路版を構成する3枚の板状部材2A~2Bの全部を貫通するように形成されている。圧力発生室22A内のインクは、対応する積層圧電素子5により振動板6を介して圧力発生室22Aが加圧されて圧力が上昇することで、ノズル板3のノズル31Aから吐出される。
【0040】
本変形例1において、第二のノズル列Bのノズル31Bの圧力発生室22Bへのインク供給経路は、第一のノズル列Aのインク供給経路と同じ導入部20からインクが供給される。第二のノズル列Bのインク供給経路では、まず、導入部20へ導入されたインクは、第一のノズル列Aのインク供給経路と同じく、真ん中の板状部材2Bに形成された個別流体抵抗部21Bを通って、圧力発生室22Bへ供給される。圧力発生室22Bも、第一のノズル列Aの圧力発生室22Aと同様、流路版を構成する3枚の板状部材2A~2Bの全部を貫通するように形成されている。圧力発生室22B内のインクは、対応する積層圧電素子5により振動板6を介して圧力発生室22Bが加圧されて圧力が上昇することで、ノズル板3のノズル31Bから吐出される。
【0041】
本変形例1においては、第一のノズル列Aのインク供給経路も、第二のノズル列Bのインク供給経路も、導入部20から各圧力発生室22A,22Bまでの流路が直線的に構成されている。そのため、いずれのインク供給経路でも、インク流路の圧力損失が少ない構成となっている。
【0042】
〔変形例2〕
次に、本実施形態の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図13は、本変形例2における液体吐出ヘッド434を、第一のノズル列Aのノズル31Aを通るように、ノズル列A,Bのノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
図14は、本変形例2における液体吐出ヘッド434を、第二のノズル列Bのノズル31Bを通るように、ノズル列A,Bのノズル配列方向と直交する面で切断した断面図である。
【0043】
本変形例2は、上述した変形例1における液体吐出ヘッド434における積層圧電素子5を、各ノズル列A,Bのノズル31A,31Bごとに分けた構成としている。すなわち、上述した変形例1では(上述した実施形態も)、同じ導入部20からインクが供給される各ノズル列A,Bの圧力発生室22A,22Bには、同じ積層圧電素子5が接続されていたため、これらの圧力発生室22A,22Bの動作を個別に行うことができない構成であった。これに対し、本変形例2では、これらの圧力発生室22A,22Bの動作を個別に行うことが可能である。
【0044】
次に、上述した実施形態(各変形例を含む)に係る液体吐出ヘッド434を適用可能な液体を吐出する装置の一例を、液体吐出ヘッド504として適用した場合について図15及び図16を参照して説明する。
図15は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図であり、図16は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
【0045】
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構593によって、キャリッジ503は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構593は、ガイド部材501、主走査モータ505、及び、タイミングベルト508等で構成されている。ガイド部材501は、装置長手方向両側に設けられた側板591A,591Bに架け渡されており、キャリッジ503を移動可能に保持している。キャリッジ503は、主走査モータ505によって、駆動プーリ506と従動プーリ507との間に架け渡したタイミングベルト508を介して装置長手方向である主走査方向に往復移動される。
【0046】
このキャリッジ503には、液体吐出ヘッド504を搭載した液体吐出ユニット540が設けられている。液体吐出ユニット540の液体吐出ヘッド504は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド504は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド504の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド504に供給するための供給循環機構594により、液体が液体吐出ヘッド504内に供給及び循環される。
【0047】
なお、本実施形態において、供給循環機構594は、供給タンク531、循環タンク532、コンプレッサ533、真空ポンプ534、第一送液ポンプ535、第二送液ポンプ536、レギュレータ(R)539a,539b等で構成される。また、供給側圧力センサ537は、供給タンク531と液体吐出ヘッド504との間であって、液体吐出ヘッド504の供給ポート71に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサ538は、液体吐出ヘッド504と循環タンク532との間であって、液体吐出ヘッド504の循環ポート72に繋がった循環流路側に接続されている。
【0048】
液体を吐出する装置は、用紙510を搬送するための搬送機構595を備えている。搬送機構595は、搬送手段である搬送ベルト512、搬送ベルト512を駆動するための副走査モータ516などで構成されている。搬送ベルト512は、用紙510を吸着して液体吐出ヘッド504に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト512は、無端状ベルトであり、搬送ローラ513とテンションローラ514との間に掛け渡されている。搬送ベルト512への用紙510の吸着は、静電吸着あるいはエアー吸引などで行うことができる。搬送ベルト512は、副走査モータ516によってタイミングベルト517及びタイミングプーリ518を介して搬送ローラ513が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0049】
キャリッジ503の主走査方向の一方側には、搬送ベルト512の側方に液体吐出ヘッド504の維持回復を行う維持回復機構520が配置されている。維持回復機構520は、例えば液体吐出ヘッド504のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材521や、ノズル面を払拭するワイパ部材522などで構成されている。
【0050】
主走査移動機構593、供給循環機構594、維持回復機構520、及び、搬送機構595は、側板591A,591B及び背板591Cなどで構成される筐体に取り付けられている。このように構成した、液体を吐出する装置においては、用紙510が搬送ベルト512上に給紙されて吸着され、搬送ベルト512の周回移動によって用紙510が副走査方向に搬送される。そして、キャリッジ503を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド504を駆動することにより、停止している用紙510に液体を吐出して画像を形成する。このように、液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッド504を備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0051】
次に、液体吐出ユニット540の他例について図17を参照して説明する。
図17は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニット540は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板591A,591B及び背板591Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構593と、キャリッジ503と、液体吐出ヘッド504とで構成されている。なお、この液体吐出ユニット540の例えば側板591Bに、前述した維持回復機構520及び供給循環機構594の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニット540を構成することもできる。
【0052】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0053】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0054】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0055】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0056】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0057】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0058】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0059】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0060】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する
[第1態様]
第1態様は、液体を吐出する複数のノズル31A,31Bがそれぞれ配列された少なくとも2列のノズル列A,Bと、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別液室(例えば圧力発生室22A,22B)と、前記個別液室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段(例えば積層圧電素子5)と、前記複数の個別液室の各々に液体を供給する共通液室12とを有する液体吐出ヘッド434,504であって、前記共通液室は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、前記少なくとも2列のノズル列が存在するノズル列領域Iに対し、該ノズル列のノズル配列方向に対して直交する方向の一方側に配置される共通液室部分から、前記少なくとも2列のノズル列のそれぞれを構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室の各々に液体を供給することを特徴とするものである。
本態様における共通液室では、少なくとも2列のノズル列のそれぞれを構成する複数のノズルに連通した複数の個別液室の各々に液体を供給する共通液室部分が、ノズルの液体吐出方向から見たときに、当該少なくとも2列のノズル列が存在するノズル列領域に対して、ノズル列のノズル配列方向に対して直交する方向(ノズル列横方向)の一方側に配置されている。これによれば、当該ノズル列領域のノズル列横方向の他方側には、当該少なくとも2列のノズル列を構成するノズルの個別液室へ液体を供給するための共通液室部分の少なくとも一部分を配置する必要がなくなる。その結果、当該ノズル列領域に対してノズル列横方向の両側に配置された2つの共通液室部分から、対応する各ノズル列を構成するノズルの個別液室への液体供給を行うという従来構成と比較して、当該ノズル列横方向における小型化が容易になる。
また、従来構成では、当該ノズル列横方向における小型化を実現するためには、ノズル列領域に対してノズル列横方向の両側に配置される2つの共通液室部分のノズル列横方向寸法を小さくする必要があり、共通液室部分を流れる液体の圧力損失の増大を伴う。本態様によれば、従来構成における2つの共通液室部分を、ノズル列領域に対してノズル列横方向の一方側に配置される共通液室部分に集約することが可能である。そのため、従来構成よりも共通液室部分のノズル列横方向の寸法を大きくして、共通液室部分を流れる液体の圧力損失を小さくすることが可能である。
更に、当該少なくとも2列のノズル列を構成するノズルの個別液室へ液体を供給するための共通液室部分を、ノズルの液体吐出方向から見たときに当該少なくとも2列のノズル列の列間に配置しようとすると、ノズル列の間隔を広くとる必要が出てくる。この場合、液体吐出ヘッドのノズル密度が低下してしまうという問題が生じる。本態様によれば、当該共通液室部分が当該少なくとも2列のノズル列の列間には配置されないので、液体吐出ヘッドのノズル密度が低下してしまうという問題が生じない。
【0061】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記少なくとも2列のノズル列は、互いに隣接するノズル列間におけるノズルのノズル配列方向位置が互い違いに配置されていることを特徴とするものである。
各ノズル列を構成するノズルのノズル配列方向位置がノズル列間で同じ位置となっている場合、ノズル列領域に対してノズル列横方向の一方側に配置された共通液室部分から各ノズル列のノズルに連通した圧力発生室の各々にインクを供給するには、それぞれのインク流路の経路が複雑となり、圧力損失の増大などを引き起こしやすい。本態様のように、互いに隣接するノズル列間におけるノズルのノズル配列方向位置が互い違いに配置されている千鳥状配置であれば、各ノズル列を構成するノズルの位置がノズル配列方向においてずれているため、それぞれのインク流路の経路の複雑化を避けることが可能となる。
【0062】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記共通液室は、前記共通液室部分から個別流路を通じて前記複数の個別液室の各々に液体を供給し、前記共通液室部分から遠いノズル列(例えば第一のノズル列A)を構成するノズル31Aに連通した個別液室(例えば圧力発生室22A)に接続される個別流路(例えば導入部20、個別流体抵抗部21A)は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、該遠いノズル列よりも前記共通液室部分に近いノズル列(例えば第二のノズル列B)を横切るように配置されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液室部分から遠いノズル列を構成するノズルに連通した個別液室に接続される個別流路の流路長を短く構成することができ、圧力損失をより小さくすることが可能となる。
【0063】
[第4態様]
第4態様は、第1又は第2態様において、前記共通液室は、前記共通液室部分から個別流路を通じて前記複数の個別液室の各々に液体を供給し、前記共通液室部分に近いノズル列(例えば第二のノズル列B)を構成するノズル31Bに連通した個別液室(例えば圧力発生室22B)に接続される個別流路(例えば導入部20、個別流体抵抗部21B、連絡路24B)は、前記ノズルの液体吐出方向から見たときに、該近いノズル列を横切ってから該近いノズル列の方へ戻るように配置されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液室部分から近いノズル列を構成するノズルに連通した個別液室に接続される個別流路の圧力損失を、共通液室部分から遠いノズル列のものと同程度のものにすることができるので、圧力損失差によるノズル列間の吐出特性差を抑制することができる。
【0064】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記個別流路は、前記ノズルの液体吐出方向で前記ノズル列が形成されたノズル面から離れる向きへ液体を流す流路部分を含むことを特徴とするものである。
これによれば、上記第4態様の構成を容易に実現することができる。
【0065】
[第6態様]
第6態様は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、及び、主走査移動機構態様の少なくとも一つと、液体吐出ヘッドとを備えた液体吐出ユニットにおいて、前記液体吐出ヘッドとして、第1乃至第5態様のいずれかの液体吐出ヘッドを用いることを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液室部分を流れる液体の圧力損失の低減の要望あるいは小型化の要望に十分に応えることができる液体吐出ヘッドを備えた液体吐出ユニットを提供することができる。
【0066】
[第7態様]
第7態様は、液体を吐出する装置において、第1乃至第5態様のいずれかの液体吐出ヘッド、又は、第6態様の液体吐出ユニットを有することを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液室部分を流れる液体の圧力損失の低減の要望あるいは小型化の要望に十分に応えることができる液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 :フレーム
2 :流路板
2A :板状部材
2B :板状部材
2C :板状部材
3 :ノズル板
4 :ベース
5 :積層圧電素子
6 :振動板
7 :接着層
10 :厚さ
12 :共通液室
13 :FPC
20 :導入部
21A,21B:個別流体抵抗部
22A,22B:圧力発生室
23A,23B:連通管部
24B :連絡路
31A,31B:ノズル
54 :個別電極
55 :共通電極
62 :ダイヤフラム部
63 :インク流入口
71 :供給ポート
72 :循環ポート
434,504:液体吐出ヘッド
503 :キャリッジ
520 :維持回復機構
531 :供給タンク
532 :循環タンク
540 :液体吐出ユニット
593 :主走査移動機構
594 :供給循環機構
595 :搬送機構
A,B :ノズル列
I :ノズル列領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2015-171807号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17