(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180487
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】搬送ユニット及び加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231214BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20231214BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20231214BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20231214BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/68 A
B24B41/06 A
B24B55/06
B23Q7/04 K
B23Q11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093843
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】首藤 大地
【テーマコード(参考)】
3C011
3C033
3C034
3C047
5F131
【Fターム(参考)】
3C011BB15
3C011BB36
3C033HH27
3C033MM02
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB84
3C034BB87
3C034DD07
3C034DD10
3C047FF04
3C047FF19
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA37
5F131CA09
5F131DA32
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB22
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
5F131EA05
5F131EA06
(57)【要約】
【課題】、被加工物又は被加工物を含むフレームユニットの下面を乾燥させるとともに、スループットの低下を抑制することが可能な搬送ユニット及び/又はこの搬送ユニットを含む加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物又はフレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾斜した状態で被加工物又はフレームユニットの下面に対するエアの噴射を行う。この場合、例えば、被加工物又はフレームユニットの下面に付着した液体(例えば、加工液)が、下面を伝いながら被加工物又はフレームユニットの進行方向後側に向かって流れて、その後端から落下しやすくなる。そのため、このように被加工物又はフレームユニットを搬送する場合には、被加工物又はフレームユニットの移動速度を大きくすることができる。その結果、被加工物又はフレームユニットの下面を乾燥させるとともに、スループットの低下を抑制することが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物又は該被加工物を含むフレームユニットを搬送するための搬送ユニットであって、
該被加工物又は該フレームユニットを保持するための保持機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整するための傾き調整機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを水平方向に沿って移動させるための水平方向移動機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを鉛直方向に沿って移動させるための鉛直方向移動機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを該水平方向移動機構によって該水平方向に沿って移動させた時の該被加工物又は該フレームユニットの移動経路からみて下方に位置付けられ、かつ、上方に向かってエアを噴射するエア噴射器と、を備え、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように該傾き調整機構が該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整し、かつ、該エア噴射器が上方に向かって該エアを噴射した状態で、該エア噴射器の上方を通るように該水平方向移動機構が該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを移動させる搬送ユニット。
【請求項2】
被加工物を加工するための加工装置であって、
該被加工物の上面に加工液を供給しながら該被加工物を加工する際に該被加工物の下面側を保持するためのチャックテーブルと、
該被加工物の該上面に洗浄液を供給しながら該被加工物を洗浄する際に該被加工物の該下面側を保持するためのスピンナテーブルと、
該被加工物を収容するためのカセットが載置されるカセット載置領域と、
該チャックテーブルと該スピンナテーブルとの間又は該スピンナテーブルと該カセットとの間の少なくとも一方で該被加工物又は該被加工物を含むフレームユニットを搬送するための搬送ユニットと、を備え、
該搬送ユニットは、
該被加工物又は該フレームユニットを保持するための保持機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整するための傾き調整機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを水平方向に沿って移動させるための水平方向移動機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを鉛直方向に沿って移動させるための鉛直方向移動機構と、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを該水平方向移動機構によって該水平方向に沿って移動させた時の該被加工物又は該フレームユニットの移動経路からみて下方に位置付けられ、かつ、上方に向かってエアを噴射するエア噴射器と、を備え、
該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように該傾き調整機構が該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整し、かつ、該エア噴射器が上方に向かって該エアを噴射した状態で、該エア噴射器の上方を通るように該水平方向移動機構が該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを移動させる加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物又は被加工物を含むフレームユニットを搬送するための搬送ユニットと、この搬送ユニットを備える加工装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、以下の順序で製造される。
【0003】
まず、フォトリソグラフィ等を実施してウェーハ等を含む被加工物の表面に多数の素子を形成することで複数のデバイスを形成する。次いで、被加工物の裏面側を研削して被加工物を薄化する。次いで、複数のデバイスの境界に沿って被加工物を切削して被加工物を複数のチップへと分割する。
【0004】
被加工物を研削する研削装置又は被加工物を切削する切削装置等の加工装置においては、一般的に、被加工物の下面(例えば、表面)側がチャックテーブルによって保持された状態で、上面(例えば、裏面)側から被加工物が加工される。
【0005】
また、この加工装置において被加工物が加工されると、加工具と被加工物との摩擦に起因して被加工物が加熱されるとともに除去された被加工物の屑(加工屑)が発生する。そして、被加工物の加熱及び/又は加工屑の被加工物への付着が起こると、被加工物が破損し、かつ/又は、被加工物から製造されるチップの品質が悪化するおそれがある。
【0006】
そのため、加工装置においては、被加工物の上面に純水等の液体(加工液)が供給された状態で被加工物を加工し、その後に被加工物の上面に純水等の液体(洗浄液)が供給された状態で被加工物を洗浄することが多い。この洗浄は、一般的に、上記のチャックテーブルとは別のスピンナテーブルによって被加工物の下面側を保持した状態で行われる。
【0007】
ここで、チャックテーブルから搬出された被加工物においては、その上面のみならず、その下面が濡れていることがある。例えば、被加工物の加工が完了すると、チャックテーブルから被加工物を離隔させるためにチャックテーブルから被加工物に向かってエアが供給されることがある。
【0008】
この場合、被加工物とチャックテーブルとの隙間に加工液が回り込んで、被加工物の下面が濡れることがある。そして、下面が濡れた被加工物がスピンナテーブルによって保持されると、この被加工物を洗浄した後に被加工物をスピンナテーブルから搬出することが困難になるおそれがある。
【0009】
この点を踏まえて、被加工物の搬送経路に向けてエアを噴射するエアカーテンを設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このエアカーテンを備える加工装置においては、エアカーテンから噴射されたエアを通り抜けるように加工後の被加工物を移動させることによって、被加工物に付着した加工液を飛散させて除去することができる。
【0010】
そのため、この加工装置においては、被加工物のスピンナテーブルへの搬入に先立って、被加工物の下面を乾燥させることができる。その結果、この加工装置においては、洗浄後の被加工物をスピンナテーブルから搬出することが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した加工装置において被加工物の下面を乾燥するには、エアカーテンから噴射されたエアを通り抜ける際の被加工物の移動速度を小さくする必要がある。ただし、この場合には、被加工物の加工を完了させるまでに必要な時間が長くなり、スループットが低下するおそれがある。
【0013】
この点に鑑み、本発明の目的は、被加工物又は被加工物を含むフレームユニットの下面を乾燥させるとともに、スループットの低下を抑制することが可能な搬送ユニット及び/又はこの搬送ユニットを含む加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によれば、被加工物又は該被加工物を含むフレームユニットを搬送するための搬送ユニットであって、該被加工物又は該フレームユニットを保持するための保持機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整するための傾き調整機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを水平方向に沿って移動させるための水平方向移動機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを鉛直方向に沿って移動させるための鉛直方向移動機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを該水平方向移動機構によって該水平方向に沿って移動させた時の該被加工物又は該フレームユニットの移動経路からみて下方に位置付けられ、かつ、上方に向かってエアを噴射するエア噴射器と、を備え、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように該傾き調整機構が該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整し、かつ、該エア噴射器が上方に向かって該エアを噴射した状態で、該エア噴射器の上方を通るように該水平方向移動機構が該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを移動させる搬送ユニットが提供される。
【0015】
本発明の別の側面によれば、被加工物を加工するための加工装置であって、該被加工物の上面に加工液を供給しながら該被加工物を加工する際に該被加工物の下面側を保持するためのチャックテーブルと、該被加工物の該上面に洗浄液を供給しながら該被加工物を洗浄する際に該被加工物の該下面側を保持するためのスピンナテーブルと、該被加工物を収容するためのカセットが載置されるカセット載置領域と、該チャックテーブルと該スピンナテーブルとの間又は該スピンナテーブルと該カセットとの間の少なくとも一方で該被加工物又は該被加工物を含むフレームユニットを搬送するための搬送ユニットと、を備え、該搬送ユニットは、該被加工物又は該フレームユニットを保持するための保持機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整するための傾き調整機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを水平方向に沿って移動させるための水平方向移動機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを鉛直方向に沿って移動させるための鉛直方向移動機構と、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを該水平方向移動機構によって該水平方向に沿って移動させた時の該被加工物又は該フレームユニットの移動経路からみて下方に位置付けられ、かつ、上方に向かってエアを噴射するエア噴射器と、を備え、該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように該傾き調整機構が該被加工物又は該フレームユニットの傾きを調整し、かつ、該エア噴射器が上方に向かって該エアを噴射した状態で、該エア噴射器の上方を通るように該水平方向移動機構が該保持機構によって保持された該被加工物又は該フレームユニットを移動させる加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の搬送ユニットにおいては、保持機構によって保持された被加工物又は被加工物を含むフレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾き調整機構が被加工物又はフレームユニットの傾きを調整し、かつ、エア噴射器が上方に向かってエアを噴射した状態で、エア噴射器の上方を通るように水平方向移動機構が保持機構によって保持された被加工物又はフレームユニットを移動させる。
【0017】
すなわち、この搬送ユニットにおいては、被加工物又はフレームユニットの進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾斜した状態で被加工物又はフレームユニットの下面に対するエアの噴射が行われる。この場合、例えば、被加工物又はフレームユニットの下面に付着した液体(例えば、加工液)が、下面を伝いながら被加工物又はフレームユニットの進行方向後側に向かって流れて、その後端から落下しやすくなる。
【0018】
そのため、この搬送ユニットを利用して被加工物又はフレームユニットを、例えば、チャックテーブルからスピンナテーブルに搬送する場合には、被加工物又はフレームユニットの移動速度を大きくすることができる。その結果、この搬送ユニットにおいては、被加工物又はフレームユニットの下面を乾燥させるとともに、スループットの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、研削装置に含まれる搬送ユニットの一例の詳細な構造を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図4】
図4は、搬送ユニットによって被加工物を移動させる様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図5】
図5は、切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、切削装置の一部の構成要素を模式的に示す上面図である。
【
図7】
図7は、被加工物を含むフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1に示されるX軸方向(左右方向)及びY軸方向(前後方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0021】
図1に示される研削装置2は、各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。この基台4の前端部の上面には、一対のカセット載置領域6a,6bがそれぞれ設けられている。そして、各カセット載置領域6a,6bの上には、Z軸方向において互いに離隔した状態で複数の被加工物を収容可能なカセット8a,8bが載置される。
【0022】
すなわち、各カセット8a,8bには、それぞれにおいて被加工物を収容可能な複数段の収容領域が設けられている。
図2は、カセット8a,8bに収容される被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に示される被加工物11は、例えば、円状の表面11a及び裏面11bを有し、シリコン(Si)等の半導体材料からなるウェーハである。
【0023】
この被加工物11は格子状に設定される複数の分割予定ライン13によって複数の領域に区画されており、各領域の表面11a側にはIC等のデバイス15が形成されている。また、被加工物11は、このデバイス15を覆うように設けられたフィルム状のテープを含んでもよい。このテープは、被加工物11の直径と概ね等しい直径を有し、例えば、樹脂からなる。
【0024】
そして、このテープは、被加工物11の裏面11b側を研削する際に表面11a側に加わる衝撃を緩和してデバイス15を保護する。なお、被加工物11の材質、形状、構造及び大きさ等に制限はない。例えば、被加工物11は、他の半導体材料、セラミックス、樹脂又は金属を含んでもよい。
【0025】
また、
図1に示されるように、カセット載置領域6a,6bの後方には窪み4aが形成されており、この窪み4aの内側には搬送ユニット10が設けられている。この搬送ユニット10は、研削前の被加工物11をカセット8a,8bの複数の収容領域のいずれか(元の収容領域)から搬出し、また、研削後の被加工物11を、例えば、元の収容領域に搬入する際に利用される。
【0026】
具体的には、搬送ユニット10は、例えば、複数の関節とロボットハンドとを有し、このロボットハンドの一面において被加工物11を保持する。さらに、搬送ユニット10は、被加工物11を保持するロボットハンドを反転させること、すなわち、被加工物11の上下を反転させることもできる。
【0027】
また、窪み4aの斜め後方には、被加工物11の位置を調整するための位置調整機構12が設けられている。この位置調整機構12は、円盤状の位置調整用テーブルと、位置調整用テーブルの周囲に配置された複数のピンとを含む。そして、搬送ユニット10によってカセット8a,8bから搬出された被加工物11は、この位置調整用テーブルに搬入されて、その中心が所定の位置に合わせられる。
【0028】
具体的には、被加工物11は、その裏面11bが上を向くように位置調整用テーブルに搬入される。そして、位置調整用テーブルの径方向に沿って複数のピンが位置調整用テーブルに接近する。これにより、複数のピンが被加工物11の側面に接触して被加工物11を僅かに移動させる。その結果、被加工物11の中心が所定の位置に合わせられる。
【0029】
また、位置調整機構12の側方には、被加工物11を保持して後方に搬送する搬送ユニット14が設けられている。この搬送ユニット14は、例えば、Z軸方向に延在する支持軸と、この支持軸の上端部に基端部が固定され、かつ、Z軸方向と直交する方向に延在するアームと、このアームの先端部の下側に固定されている吸引パッドとを有する。
【0030】
さらに、搬送ユニット14の支持軸は、モータ等の回転駆動源に接続されている。そして、この回転駆動源を動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸が回転する。また、搬送ユニット14の支持軸は、例えば、ボールねじ式の移動機構(不図示)に連結されている。そして、この移動機構を動作させると、Z軸方向に沿って支持軸が移動する、すなわち、支持軸が昇降する。
【0031】
例えば、搬送ユニット14は、以下の順序で被加工物11を保持して後方に搬送する。まず、位置調整機構12において中心が所定の位置に合わせられた被加工物11の直上に吸引パッドが位置付けられるように支持軸を回転させる。次いで、この吸引パッドが被加工物11の裏面(上面)11に接触するように支持軸を下降させる。
【0032】
次いで、吸引パッドによって被加工物11の裏面(上面)11b側を吸引して保持する。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が後方へと搬送される。
【0033】
搬送ユニット14の後方には、ターンテーブル16が設けられている。このターンテーブル16は、モータ等の回転駆動源に接続されている。そして、この回転駆動源を動作させると、ターンテーブル16の上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてターンテーブル16が回転する。
【0034】
また、ターンテーブル16には、ターンテーブル16の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で3個の円盤状のテーブルベース(不図示)が設けられている。さらに、各テーブルベースの上部には、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するためのチャックテーブル18が装着されている。
【0035】
このチャックテーブル18は、例えば、セラミックス等からなり、ベアリング等を介してテーブルベースに支持される円盤状の枠体を有する。また、チャックテーブル18の枠体の上面には円状の底面を有する凹部が形成されており、この凹部には多孔質セラミックス等からなる円盤状のポーラス板が固定されている。
【0036】
さらに、チャックテーブル18のポーラス板の上面とポーラス板を囲む枠体の上面とは、円錐の側面に対応する形状を有し、被加工物11を保持する際に保持面として機能する。また、チャックテーブル18の枠体は、モータ等の回転駆動源に接続されている。そして、このモータを動作させると、チャックテーブル18の保持面の中心を通る直線を回転軸としてチャックテーブル18が回転する。
【0037】
また、チャックテーブル18の枠体は、テーブルベースを介して、傾き調整機構(不図示)に連結されている。この傾き調整機構は、チャックテーブル18の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で配置されている2つの可動軸及び1つの固定軸を含む。そして、2つの可動軸の少なくとも一方がテーブルベース及びチャックテーブルを部分的に昇降させると、チャックテーブル18の回転軸の傾きが調整される。
【0038】
また、チャックテーブル18のポーラス板の下面側は、その枠体に形成されている流路等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)及びボンベ等のエア供給源(不図示)に連通する。そして、チャックテーブル18の保持面に被加工物11が置かれた状態で吸引源を動作させると、被加工物11の表面(下面)11a側がチャックテーブル18に吸引されて保持される。
【0039】
また、チャックテーブル18の枠体に形成されている流路が負圧となっている状態でエア供給源を動作させると、この流路にエアが供給されて常圧となり、被加工物11をチャックテーブル18から離隔させることが容易になる。
【0040】
なお、テーブルベースにチャックテーブル18が装着された状態でターンテーブル16を回転させると、テーブルベースとともにチャックテーブル18が移動する。具体的には、この場合には、ターンテーブル16の周方向に沿ってテーブルベース及びチャックテーブル18が移動する。
【0041】
これにより、テーブルベース及びチャックテーブル18を、例えば、搬送ユニット14に隣接する搬入搬出位置Aと、搬入搬出位置の斜め後方の粗研削位置Bと、粗研削位置の側方の仕上げ研削位置Cとに順番に位置付けることができる。
【0042】
そして、搬入搬出位置Aに位置付けられたチャックテーブル18には、搬送ユニット14によって後方へと搬送された被加工物11が搬入される。例えば、被加工物11のチャックテーブル18への搬入は、以下の順序で行われる。
【0043】
まず、搬送ユニット14の吸引パッドによって保持された被加工物11をチャックテーブル18の保持面に接近させるように、搬送ユニット14の支持軸に連結されている支持軸を下降させる。次いで、吸引パッドによる被加工物11の裏面(上面)11b側の吸引を停止する。これにより、被加工物11が吸引パッドから分離してチャックテーブル18に搬入される。
【0044】
次いで、被加工物11の表面(下面)11a側がチャックテーブル18に吸引されて保持されるように、チャックテーブル18のポーラス板の下面側と連通する吸引源を動作させる。次いで、この被加工物11を保持するチャックテーブル18を粗研削位置Bに位置付けるようにターンテーブル16を回転させる。
【0045】
粗研削位置B及び仕上げ研削位置Cのそれぞれの後方には、柱状の支持構造20が設けられている。各支持構造20の前面側には、移動機構22が設けられている。この移動機構22は、Z軸方向に沿って延在する一対のガイドレール24を備える。さらに、一対のガイドレール24には、移動プレート26がスライド可能な態様で取り付けられている。
【0046】
また、移動プレート26の後面側にはボールねじのナット(不図示)が固定されており、このナットにはZ軸方向に沿って延在するねじ軸28が回転可能な態様で連結されている。また、このナットは、ねじ軸28の回転に応じてねじ軸28の表面を転がる多数のボールを収容する。
【0047】
さらに、ねじ軸28の一端部(上端部)には、モータ30が接続されている。そして、モータ30によってねじ軸28を回転させると、多数のボールがナット内を循環してナットとともに移動プレート26がZ軸方向に沿って移動する。
【0048】
また、移動プレート26の前面(表面)には、研削ユニット32が設けられている。この研削ユニット32は、移動プレート26に固定されるスピンドルハウジング34を備える。さらに、スピンドルハウジング34には、Z軸方向又はZ軸方向に対して僅かに傾いた方向に沿って延在するスピンドル(不図示)が回転可能な態様で収容されている。
【0049】
また、スピンドルの先端部(下端部)はスピンドルハウジング34の下端面から露出しており、この下端部には円盤状のマウント36が固定されている。そして、粗研削位置B側の研削ユニット32のマウント36の下面には、粗研削用の研削ホイール38aが装着されている。同様に、仕上げ研削位置C側の研削ユニット32のマウント36の下面には、仕上げ研削用の研削ホイール38bが装着されている。
【0050】
また、スピンドルハウジング34に収容されたスピンドルの基端部(上端部)には、モータ40が接続されている。そして、このモータを動作させると、スピンドルとともにマウント36及び研削ホイール38a,38bがZ軸方向又はZ軸方向に対して僅かに傾いた直線を回転軸として回転する。
【0051】
なお、各研削ホイール38a,38bは、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属からなる環状のホイール基台を含む。また、ホイール基台の下面には、ホイール基台の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で複数の研削砥石が固定されている。
【0052】
そして、複数の研削砥石のそれぞれは、ビトリファイド又はレジノイド等の結合剤と、この結合剤に分散されたダイヤモンド等の砥粒とを含む。なお、仕上げ研削用の研削ホイール38bが備える研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、粗研削用の研削ホイール38aが備える研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径よりも小さい。
【0053】
また、各研削ホイール38a,38bの近傍には、液体供給ユニット(不図示)が設けられている。この液体供給ユニットは、例えば、平面視において研削ホイール38a,38bの内側に位置するノズルと、このノズルに純水等の液体(加工液)を供給するポンプとを有する。
【0054】
そして、このポンプを動作させると、粗研削位置B又は仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル18によって表面(下面)11a側が保持された被加工物11の裏面(上面)11bにノズルから加工液が供給される。
【0055】
また、被加工物11を保持するチャックテーブル18が粗研削位置B又は仕上げ研削位置Cに位置付けられると、被加工物11の裏面(上面)11b側の粗研削又は仕上げ研削が行われる。そして、被加工物11の裏面(上面)11b側の粗研削及び仕上げ研削が完了すれば、ターンテーブル16を回転させて、被加工物11を保持するチャックテーブル18が搬入搬出位置Aに位置付けられる。
【0056】
搬入搬出位置Aの前方、かつ、搬送ユニット14の側方には、被加工物11を保持して前方に搬送する搬送ユニット42が設けられている。
図3は、搬送ユニット42の詳細な構造を模式的に示す一部断面側面図である。この搬送ユニット42は、被加工物11の裏面(上面)11b側を保持するための保持機構44を有する。
【0057】
保持機構44は、例えば、セラミックス等からなる円盤状の枠体44aを有する。この枠体44aの下面には円形の底面を有する凹部が形成されており、この凹部には多孔質セラミックス等からなる円盤状のポーラス板44bが固定されている。また、枠体44aの上面側には複数のねじ穴が形成されており、この複数のねじ穴のそれぞれにはボルト46が螺合されている。
【0058】
具体的には、このボルト46は、Z軸方向に沿って延在する円柱状の軸部と、この軸部よりも直径が大きく、かつ、Z軸方向に沿った長さが小さい六角柱状の頭部とを有する。さらに、この軸部は、ねじ山が形成されている下部(ねじ部)と、ねじ山が形成されていない上部(円筒部)とを有する。そして、ボルト46のねじ部が、枠体44aの上面側に形成されているねじ穴に螺合されている。
【0059】
また、枠体44aの上面側にはポーラス板44bの上面側と連通する貫通孔が形成されており、この貫通孔は配管(不図示)及びバルブ(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)及びボンベ等のエア供給源(不図示)に連通する。
【0060】
そして、ポーラス板44bの下面(保持面)に被加工物11の裏面11bが接触した状態で吸引源を動作させると、被加工物11の裏面(上面)11b側が保持機構44に吸引されて保持される。また、枠体44aの上面側に形成されている貫通孔等が負圧となっている状態でエア供給源を動作させると、この貫通孔にエアが供給されて常圧となり、被加工物11を保持機構44から離隔させることが容易になる。
【0061】
保持機構44の上方には、保持機構44によって保持された被加工物11の傾きを調整するための傾き調整機構48が設けられている。この傾き調整機構48は、円盤状の支持部材48aを有する。そして、支持部材48aには、厚さ方向において支持部材48aを貫通し、それぞれの断面が円状の複数の貫通孔が形成されている。
【0062】
これらの貫通孔は枠体44aの上面側に形成されている複数のねじ穴と重なるように位置付けられ、各貫通孔にはボルト46の円筒部が通されている。また、ボルト46の頭部の直径は、貫通孔の直径よりも大きい。そのため、ボルト46が貫通孔と通って落下することはない。
【0063】
また、ボルト46の軸部のうち枠体44aと支持部材48aとの間に位置する部分の周囲には、圧縮コイルバネ50が設けられている。換言すると、この部分は、圧縮コイルバネ50の内側に位置する。そして、枠体44a及び支持部材48aには、圧縮コイルバネ50を圧縮することによって生じる反力が作用している。
【0064】
また、支持部材48aの側部には、アーム48bの先端部が連結されている。このアーム48bは、Z軸方向と直交する方向に沿って延在し、その基端部にはモータ48cが接続されている。そして、このモータ48cを動作させると、アーム48bが延在する方向に沿った直線を回転軸として、アーム48b及び支持部材48aが回転する。
【0065】
そのため、保持機構44によって被加工物11が保持されている場合には、傾き調整機構48のモータ48cを動作させることによって被加工物11の傾きを調整することができる。例えば、この傾き調整機構48は、被加工物11の裏面(上面)11bが水平面に対してなす角が、30°以上55°以下となるように被加工物11の傾きを調整する。
【0066】
モータ48cの下方には、保持機構44によって保持された被加工物11を水平方向に沿って移動させるための水平方向移動機構52が設けられている。この水平方向移動機構52はZ軸方向に沿って延在する支持軸52aを有する。そして、支持軸52aによって傾き調整機構48及び保持機構44が支持されるように、この支持軸52aの先端部(上端部)にはモータ48cが固定されている。
【0067】
また、支持軸52aの基端部には、モータ52bが接続されている。そして、このモータ52bを動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸52aが回転する。そのため、保持機構44によって被加工物11が保持されている場合には、水平方向移動機構52のモータ52bを動作させることによって、支持軸52aを中心として被加工物11を旋回させること、すなわち、被加工物11を水平方向に沿って移動させることができる。
【0068】
水平方向移動機構52の側方には、保持機構44によって保持された被加工物11をZ軸方向(鉛直方向)に沿って移動させるための鉛直方向移動機構54が設けられている。この鉛直方向移動機構54は、ボールねじ式の移動機構である。具体的には、鉛直方向移動機構54は、水平方向移動機構52のモータ52bの側部に表面側が固定されている移動プレート54aを有する。
【0069】
この移動プレート54aの裏面側には、多数のボールを収容するナット54bが固定されている。そして、このナット54bには、Z軸方向に沿って延在するねじ軸54cが螺合されている。また、ねじ軸54cは、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール(不図示)の間に設けられており、この一対のガイドレールの表面側にはスライド可能な態様で移動プレート54aが取り付けられている。
【0070】
さらに、ねじ軸54cの基端部(下端部)には、モータ54dが接続されている。そして、モータ54dによってねじ軸54cを回転させると、多数のボールがナット54b内を循環してナット54bとともに移動プレート54aがZ軸方向に沿って移動する。
【0071】
そのため、保持機構44によって被加工物11が保持されている場合には、鉛直方向移動機構54のモータ54dを動作させることによって被加工物11をZ軸方向(鉛直方向)に沿って移動させることができる。
【0072】
鉛直方向移動機構54の近傍には、X軸方向に沿って延在するように設けられ、その上面の一端部から他端部に渡る領域から上方に向かってエアを噴射するエア噴射器(例えば、エアカーテン又はエアナイフ等)56が設けられている。
【0073】
具体的には、このエア噴射器56は、搬入搬出位置Aと後述する洗浄装置58との間、かつ、保持機構44によって保持された被加工物11を水平方向移動機構52によって水平方向に沿って移動させた時の被加工物11の移動経路からみて下方に位置付けられている。
【0074】
また、このエア噴射器56の上面には、例えば、X軸方向に沿って延在するスリット状の噴射口が設けられており、この噴射口からエアが噴射される。また、この射出口のX軸方向に沿った長さは、例えば、被加工物11の直径よりも大きい。
【0075】
そして、研削後の被加工物11を保持するチャックテーブル18が搬入搬出位置Aに位置付けられると、搬送ユニット42によって被加工物11がチャックテーブル18から搬出される。例えば、被加工物11のチャックテーブル18からの搬出は、以下の順序で行われる。
【0076】
まず、チャックテーブル18のポーラス板の下面側と連通する吸引源の動作を停止させる。次いで、チャックテーブル18のポーラス板の下面側と連通するエア供給源を動作させる。この時、被加工物11がチャックテーブル18から瞬間的に離隔する。そして、この隙間には、被加工物11の粗研削及び仕上げ研削の際に供給された加工液が回り込むことがある。その結果、被加工物11の表面(下面)11aが濡れることがある。
【0077】
次いで、チャックテーブル18の上に置かれている被加工物11の直上に保持機構44が位置付けられるように、水平方向移動機構52のモータ52bを動作させて保持機構44を旋回させる。次いで、保持機構44のポーラス板44bの下面を被加工物11の裏面(上面)11bに接触させるように、鉛直方向移動機構54のモータ54dを動作させて保持機構44を下降させる。
【0078】
次いで、被加工物11の裏面(上面)11b側が保持機構44に吸引されて保持されるように、ポーラス板44bの上面側と連通する吸引源を動作させる。次いで、被加工物11をチャックテーブル18から離隔させるように、鉛直方向移動機構54のモータ54dを動作させて保持機構44を上昇させる。
【0079】
次いで、被加工物11がエア噴射器56の上方を通過するように被加工物11を水平方向に沿って移動させる。
図4は、搬送ユニット42によって被加工物11を移動させる様子を模式的に示す一部断面側面図である。この移動の際には、被加工物11の進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように、傾き調整機構48のモータ48cを動作させて被加工物11の傾きを調整する。
【0080】
そして、上方に向かってエアAを噴射するようにエア噴射器56を動作させた状態で、被加工物11がエア噴射器56の上方を通過するように水平方向移動機構52のモータ52bを動作させる。
【0081】
この場合、被加工物11の表面(下面)11aにエアAが噴射されて、この表面(下面)11aに付着した加工液Lが、表面(下面)11aを伝いながら被加工物11の進行方向後側に向かって流れて、その後端から落下しやすくなる。これにより、被加工物11の表面(下面)11aが乾燥する。
【0082】
なお、被加工物11の進行方向後側に対してエアが噴射される際の被加工物11の移動速度(後半の移動速度)は、その進行方向前側に対してエアが噴射される際の被加工物11の移動速度(前半の移動速度)よりも遅くなるように変更されてもよい。例えば、後半の移動速度は、前半の移動速度の3/4倍以下、1/2倍以下又は1/4倍以下となるように変更されてもよい。
【0083】
あるいは、被加工物11がエア噴射器56の上方を通過する際には、徐々に遅くなるように被加工物11の移動速度が変更されてもよい。これらのように被加工物11の移動速度が変更される場合、被加工物11の表面(下面)11aをより乾燥させやすくなる。
【0084】
図1に示されるように、搬送ユニット42の側方には、チャックテーブル18から搬出された被加工物11を洗浄する洗浄装置58が設けられている。この洗浄装置58は、例えば、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するためのスピンナテーブルと、スピンナテーブルによって保持された被加工物11の裏面(上面)11b側に純水等の液体(洗浄液)を供給するノズルを含む洗浄ユニットとを備える。
【0085】
なお、このスピンナテーブルは、
図1に示されるチャックテーブル18と同様の構造を有し、また、モータ等の回転駆動源に接続されている。そして、この回転駆動源を動作させると、スピンナテーブルの上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンナテーブルが回転する。
【0086】
そして、スピンナテーブルには、搬送ユニット42によってチャックテーブル18から搬出された被加工物11が搬入される。例えば、被加工物11のスピンナテーブルへの搬入は、以下の順序で行われる。
【0087】
まず、保持機構44によって保持された被加工物11がスピンナテーブルの直上に位置付けられるように、水平方向移動機構52のモータ52bを動作させて被加工物11を旋回させる。次いで、被加工物11の表面(下面)11aをスピンナテーブルの保持面に接近させるように、鉛直方向移動機構54のモータ54dを動作させて被加工物11を下降させる。
【0088】
次いで、保持機構44のポーラス板44bの上面側と連通する吸引源の動作を停止させる。次いで、被加工物11を保持機構44から離隔させるように、保持機構44のポーラス板44bの上面側と連通するエア供給源を動作させる。これにより、被加工物11のスピンナテーブルへの搬入が完了する。
【0089】
この洗浄装置58においては、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するスピンナテーブルを回転させながら被加工物11の裏面(上面)11bに洗浄ユニットから洗浄液を供給することによって被加工物11が洗浄される。そして、洗浄装置58における被加工物11の洗浄が完了すると、搬送ユニット10が洗浄装置58からカセット8a,8bの複数の収容領域のいずれか(例えば、元の収容領域)に被加工物11を搬入する。
【0090】
上述した研削装置2の搬送ユニット42においては、保持機構44によって保持された被加工物11の進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾き調整機構48が被加工物11の傾きを調整し、かつ、エア噴射器56が上方に向かってエアAを噴射した状態で、エア噴射器56の上方を通るように水平方向移動機構52が保持機構44によって保持された被加工物11を移動させる(
図4参照)。
【0091】
すなわち、この搬送ユニット42においては、被加工物11の進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾斜した状態で被加工物11の表面(下面)11aに対するエアAの噴射が行われる。この場合、被加工物11の表面(下面)11aに付着した液体(例えば、加工液L)が、表面(下面)11aを伝いながら被加工物11の進行方向後側に向かって流れて、その後端から落下しやすくなる。
【0092】
そのため、この搬送ユニット42を利用して被加工物11を、例えば、チャックテーブル18から洗浄装置58のスピンナテーブルに搬送する場合には、被加工物11の移動速度を大きくすることができる。その結果、この搬送ユニット42においては、被加工物11の表面(下面)11aを乾燥させるとともに、スループットの低下を抑制することが可能となる。
【0093】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、本発明においては、被加工物11がエア噴射器56の上方を通過する際に被加工物11を斜め上方に向けて進行させることによって、被加工物11とエア噴射器56との鉛直方向における間隔を一定としてもよい。
【0094】
具体的には、この場合には、被加工物11がエア噴射器56の上方を通過する際に、水平方向移動機構52のモータ52bと鉛直方向移動機構54のモータ54dとを同時に動作させればよい。
【0095】
また、本発明の搬送ユニットは、洗浄装置58のスピンナテーブルとカセット8a,8bとの間に設けられていてもよい。すなわち、本発明の搬送ユニットは、被加工物11の洗浄に伴って表面(下面)11aが濡れた被加工物11を乾燥させるものでもよい。
【0096】
また、本発明の搬送ユニットは、チャックテーブル18から洗浄装置58のスピンナテーブルへの被加工物11の搬送と、洗浄装置58のスピンナテーブルからカセット8a,8bへの搬送との双方を実施可能なものであってもよい。すなわち、本発明の搬送ユニットは、被加工物11の加工に伴って表面(下面)11aが濡れた被加工物11を乾燥させるとともに、被加工物11の洗浄に伴って表面(下面)11aが濡れた被加工物11を乾燥させるものでもよい。
【0097】
また、本発明の搬送ユニットは、研削装置2以外の加工装置に設けられてもよい。
図5は、このような加工装置の一例を模式的に示す斜視図であり、
図6は、
図5に示される加工装置の一部の構成要素を模式的に示す上面図である。
【0098】
具体的には、
図5及び
図6に示される加工装置は、被加工物11を切削することが可能な切削装置60である。なお、
図5及び
図6に示されるU軸方向(前後方向)及びV軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、W軸方向(上下方向)は、U軸方向及びV軸方向に垂直な方向(鉛直方向)である。
【0099】
切削装置60は、各構成要素が搭載される基台62を備える。また、基台62の角部には、カセットテーブル64が設置されている。このカセットテーブル64の上面は、カセット66を載置するのに適したカセット載置領域68を含む。なお、カセット66には、それぞれにおいて被加工物11を含むフレームユニットを収容可能な複数段の収容領域が設けられている。
【0100】
図7は、被加工物11を含むフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
図7に示されるフレームユニット17は、円盤状のダイシングテープ19を有する。このダイシングテープ19の直径は、被加工物11の直径よりも長い。そして、ダイシングテープ19の中央領域には、被加工物11の裏面11bが貼着されている。
【0101】
ダイシングテープ19は、例えば、可撓性を有するフィルム状の基材層と、基材層の一面(被加工物11側の面)に設けられた粘着層(糊層)とを有する。具体的には、この基材層は、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリスチレン(PS)等からなる。また、この粘着層は、紫外線硬化型のシリコーンゴム、アクリル系材料又はエポキシ系材料等からなる。
【0102】
また、ダイシングテープ19の外周領域には、被加工物11よりも直径が長い円形の開口21aが形成されている環状のフレーム21が貼着されている。このフレーム21は、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼等の金属材料からなる。
【0103】
さらに、
図5に示されるカセットテーブル64は、W軸方向移動機構(不図示)に連結されている。このW軸方向移動機構は、フレームユニット17のカセット66への搬入搬出が適切に行われるようにカセット載置領域68に載置されたカセット66の高さを調整する。
【0104】
また、基台62の上方には、チャックテーブル70と、一対の切削ユニット(加工ユニット)72と、スピンナテーブル74と、洗浄ユニット76と、搬送ユニット78とが設けられている。
【0105】
チャックテーブル70は、被加工物11を加工する際にダイシングテープ19を介して被加工物11の裏面(下面)11b側を保持する。なお、チャックテーブル70は、
図1に示されるチャックテーブル18と同様の構造を有し、エジェクタ等の吸引源(不図示)及びボンベ等のエア供給源(不図示)に連通する。
【0106】
また、チャックテーブル70は、U軸方向移動機構(不図示)及び回転駆動源(不図示)に連結されている。U軸方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータを含み、一対の切削ユニット72が設けられている切削室からカセットテーブル64とスピンナテーブル74との間の待機位置Dまでチャックテーブル70を移動させる。
【0107】
また、回転駆動源は、例えば、スピンドル及びモータを含み、チャックテーブル70の上面の中心を通り、かつ、W軸方向に沿った直線を回転軸としてチャックテーブル70を回転させる。
【0108】
さらに、チャックテーブル70の周囲には、チャックテーブル70の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で4つのクランプ80が設けられている。4つのクランプ80のそれぞれは、チャックテーブル70がダイシングテープ19を介して被加工物11の裏面(下面)11b側を保持する際にチャックテーブル70の保持面よりも低い位置においてフレーム21を保持する。
【0109】
一対の切削ユニット72のそれぞれは、被加工物11を表面(上面)11a側から切削する。具体的には、各切削ユニット72は、V軸方向に沿って延在するスピンドルを有する。このスピンドルの先端部には、円環状の切削ブレードが装着されている。
【0110】
また、スピンドルの基端部は、モータ等の回転駆動源(不図示)に接続されている。そして、この回転駆動源を動作させると、V軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンドルとともに切削ブレードが回転する。
【0111】
また、一対の切削ユニット72のそれぞれは、V軸方向移動機構(不図示)及びW軸方向移動機構(不図示)に連結されている。V軸方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータを含み、切削室の内側において切削ユニット72をV軸方向に沿って移動させる。
【0112】
また、W軸方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータを含み、切削室の内側において切削ユニット72をW軸方向に沿って移動させる。そして、切削装置60においては、上述のとおり切削ブレードを回転させた状態で切削ブレードと被加工物11とを接触させることによって被加工物11が表面(上面)11a側から切削される。
【0113】
さらに、一対の切削ユニット72のそれぞれの近傍には、液体供給ユニット(不図示)が設けられている。この液体供給ユニットは、被加工物11が切削される際に被加工物11の表面(上面)11aに加工液を供給する。
【0114】
具体的には、液体供給ユニットは、例えば、一対の切削ユニット72のそれぞれとともに移動可能なように切削ユニット72に連結されているノズルと、このノズルに加工液を供給するポンプとを有する。そして、このポンプを動作させると、切削室に位置付けられたチャックテーブル70によって裏面(下面)11b側が保持された被加工物11の表面(上面)11aにノズルから加工液が供給される。
【0115】
スピンナテーブル74は、被加工物11を洗浄する際にダイシングテープ19を介して被加工物11の裏面(下面)11b側を保持する。なお、スピンナテーブル74は、
図1に示されるチャックテーブル18と同様の構造を有し、エジェクタ等の吸引源(不図示)及びボンベ等のエア供給源(不図示)に連通する。
【0116】
また、スピンナテーブル74は、回転駆動源(不図示)に接続されている。この回転駆動源は、例えば、スピンドル及びモータを含み、スピンナテーブル74の上面の中心を通り、かつ、W軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンナテーブル74を回転させる。
【0117】
洗浄ユニット76は、W軸方向に沿って延在するパイプ状の支持軸を有する。この支持軸の下端部には、支持軸を回転させるためのモータ等の回転駆動源が接続されている。また、支持軸の上端部には、アームが接続されている。
【0118】
このアームは、支持軸の上端部からスピンナテーブル74の上面の中心までの距離に相当する長さでW軸方向に直交する方向に延在するパイプ状の部材である。また、アームの先端部には、下方に向けて洗浄水を放出するようにノズルが設けられている。
【0119】
さらに、支持軸は、洗浄液を供給するポンプに連通している。そのため、例えば、ノズルをスピンナテーブル112の上方に位置付けるように軸部を回転させた後に、このポンプを動作させると、スピンナテーブル74によって裏面(下面)11b側が保持された被加工物11の表面(上面)11aにノズルから加工液が供給される。
【0120】
搬送ユニット78は、例えば、待機位置Dに位置付けられたチャックテーブル70に保持され、かつ、切削後の被加工物11を含むフレームユニット17をチャックテーブル70からスピンナテーブル74に搬送する際に利用される。この搬送ユニット78は、フレーム21を掴むための把持部(不図示)と、フレーム21の上面側を吸引してフレームユニット17を保持するための吸引パッド等を含む保持機構とを有する。
【0121】
また、この保持機構は、傾き調整機構(不図示)、V軸方向移動機構(水平方向移動機構)(不図示)及びW軸方向移動機構(鉛直方向移動機構)(不図示)に連結されている。傾き調整機構(不図示)は、先端部が保持機構に固定され、かつ、U軸方向に沿って延在するアームと、アームの基端部に接続されているモータとを有する。
【0122】
そして、保持機構によって保持されてフレームユニット17のフレーム21が保持された状態でモータを動作させると、保持機構によって保持されたフレームユニット17の傾きが調整される。例えば、この傾き調整機構は、フレームユニット17に含まれるフレーム21の上面が水平面に対してなす角が、30°以上55°以下となるようにフレームユニット17の傾きを調整する。
【0123】
また、V軸方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータを含み、スピンナテーブル74の上方の位置からカセットテーブル64に載せられたカセット66の近傍の位置まで搬送ユニット78を移動させる。また、W軸方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータを含み、搬送ユニット78の高さを調整する。
【0124】
さらに、この搬送ユニット78は、U軸方向に沿って延在するように設けられ、その上面の一端部から他端部に渡る領域から上方に向かってエアを噴射するエア噴射器(例えば、エアカーテン又はエアナイフ等)82を有する。
【0125】
具体的には、このエア噴射器82は、待機位置Dと後述するスピンナテーブル74との間、かつ、搬送ユニット78の保持機構によって保持された被加工物11をV軸方向移動機構によってV軸方向に沿って移動させた時の被加工物11の移動経路からみて下方に位置付けられている。
【0126】
また、このエア噴射器82の上面には、例えば、U軸方向に沿って延在するスリット状の噴射口が設けられており、この噴射口からエアが噴射される。また、この射出口のU軸方向に沿った長さは、例えば、フレームユニット17に含まれるダイシングテープ19の直径よりも大きい。
【0127】
そして、切削後の被加工物11を含むフレームユニット17を保持するチャックテーブル70が待機位置Dに位置付けられると、搬送ユニット78によって被加工物11がチャックテーブル70からスピンナテーブル74に搬送される。例えば、この被加工物11の搬送は、以下の順序で行われる。
【0128】
まず、チャックテーブル70と連通する吸引源の動作を停止させる。次いで、チャックテーブル70と連通するエア供給源を動作させる。この時、フレームユニット17がチャックテーブル18から瞬間的に離隔する。そして、この隙間には、被加工物11の切削の際に供給された加工液が回り込むことがある。その結果、ダイシングテープ19の下面が濡れることがある。
【0129】
次いで、チャックテーブル70の上に置かれている被加工物11の直上に搬送ユニット78の保持機構が位置付けられるように、V軸方向移動機構を動作させる。次いで、この保持機構をフレームユニット17のフレーム21の上面に接触させるように、W軸方向移動機構を動作させて保持機構を下降させる。
【0130】
次いで、この保持機構によってフレームユニット17を保持する。次いで、フレームユニット17をチャックテーブル70から離隔させるように、搬送ユニット78のW軸方向移動機構を動作させて保持機構を上昇させる。次いで、フレームユニット17の進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように、搬送ユニット78の傾き調整機構を動作させて被加工物11の傾きを調整する。
【0131】
次いで、上方に向かってエアを噴射するようにエア噴射器82を動作させた状態で、フレームユニット17がエア噴射器82の上方を通過するようにフレームユニット17をV軸方向に沿って移動させる。
【0132】
この場合、ダイシングテープ19の下面にエアが噴射されて、この下面に付着した加工液が、下面を伝いながらフレームユニット17の進行方向後側に向かって流れて、その後端から落下しやすくなる。これにより、ダイシングテープ19の下面が乾燥する。
【0133】
なお、フレームユニット17の進行方向後側に対してエアが噴射される際のフレームユニット17の移動速度(後半の移動速度)は、その進行方向前側に対してエアが噴射される際のフレームユニット17の移動速度(前半の移動速度)よりも遅くなるように変更されてもよい。例えば、後半の移動速度は、前半の移動速度の3/4倍以下、1/2倍以下又は1/4倍以下となるように変更されてもよい。
【0134】
あるいは、フレームユニット17がエア噴射器82の上方を通過する際には、徐々に遅くなるようにフレームユニット17の移動速度が変更されてもよい。これらのようにフレームユニット17の移動速度が変更される場合、ダイシングテープ19の下面をより乾燥させやすくなる。
【0135】
上述した切削装置60の搬送ユニット78においては、保持機構によって保持されたフレームユニット17の進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾き調整機構がフレームユニット17の傾きを調整し、かつ、エア噴射器82が上方に向かってエアを噴射した状態で、エア噴射器82の上方を通るようにV軸方向移動機構が保持機構によって保持されたフレームユニット17を移動させる。
【0136】
すなわち、この搬送ユニット78においては、フレームユニット17の進行方向前側が進行方向後側よりも上になるように傾斜した状態でダイシングテープ19の下面に対するエアの噴射が行われる。この場合、ダイシングテープ19の下面に付着した加工液が、下面を伝いながらダイシングテープ19の進行方向後側に向かって流れて、その後端から落下しやすくなる。
【0137】
そのため、この搬送ユニット78を利用してフレームユニット17を、例えば、チャックテーブル70からスピンナテーブル74に搬送する場合には、フレームユニット17の移動速度を大きくすることができる。その結果、この搬送ユニット78においては、ダイシングテープ19の下面を乾燥させるとともに、スループットの低下を抑制することが可能となる。
【0138】
さらに、切削装置60においては、スピンナテーブル74からカセット66にフレームユニット17を搬送する際にも搬送ユニット78が利用される。そのため、この切削装置60においては、被加工物11の加工に伴って下面が濡れたダイシングテープ19を乾燥させることのみならず、被加工物11の洗浄に伴って下面が濡れたダイシングテープ19を乾燥させることもできる。
【0139】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0140】
2 :研削装置
4 :基台(4a:窪み)
6a,6b:カセット載置領域
8a,8b:カセット
10:搬送ユニット
11:被加工物(11a:表面、11b:裏面)
12:位置調整機構
13:分割予定ライン
14:搬送ユニット
15:デバイス
16:ターンテーブル
17:フレームユニット
18:チャックテーブル
19:ダイシングテープ
20:支持構造
21:フレーム(21a:開口)
22:移動機構
24:ガイドレール
26:移動プレート
28:ねじ軸
30:モータ
32:研削ユニット
34:スピンドルハウジング
36:マウント
38a,38b:研削ホイール
40:モータ
42:搬送ユニット
44:保持機構(44a:枠体、44b:ポーラス板)
46:ボルト
48:傾き調整機構(48a:支持部材、48b:アーム、48c:モータ)
50:圧縮コイルばね
52:水平方向移動機構(52a:支持軸、52b:モータ)
54:鉛直方向移動機構(54a:移動プレート、54b:ナット)
(54c:ねじ軸、54d:モータ)
56:エア噴射器
58:洗浄装置
60:切削装置
62:基台
64:カセットテーブル
66:カセット
68:カセット載置領域
70:チャックテーブル
72:切削ユニット
74:スピンナテーブル
76:洗浄ユニット
78:搬送ユニット
80:クランプ
82:エア噴射器