(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180522
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基板固定装置及び基板固定装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231214BHJP
H05B 3/18 20060101ALI20231214BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05B3/18
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093894
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 里駆
【テーマコード(参考)】
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA05
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF27
3K092SS12
3K092SS13
3K092SS14
3K092TT27
3K092VV22
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA12
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】十分に高い均熱性を得ること。
【解決手段】基板固定装置は、ベースプレートと、セラミック板と、熱伝導部材とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層を介して接着されるとともに発熱する電極を内蔵し、静電力によって基板を吸着する。熱伝導部材は、セラミック板の接着面、ベースプレートの接着面及び接着剤層の内部の少なくとも一つに配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに接着剤層を介して接着されるとともに発熱する電極を内蔵し、静電力によって基板を吸着するセラミック板と、
前記セラミック板の接着面、前記ベースプレートの接着面及び前記接着剤層の内部の少なくとも一つに配置され、前記ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材と
有することを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、
前記基板を吸着可能な前記セラミック板の吸着面において前記電極の発熱時に温度の特異点となるホットスポットと平面視で重なる位置に配置される、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の少なくとも一方には、前記ホットスポットの位置に対応して凹部が形成され、
前記熱伝導部材は、前記凹部内に配置される、請求項2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、
長手方向が前記積層方向を向くように配置されたカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブの長手方向の両端面が露出された状態で前記カーボンナノチューブを被覆する樹脂と
を有することを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記接着剤層は、
前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の一方の全面に積層されて前記熱伝導部材を接着する第1接着剤と、
前記第1接着剤と前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の他方との間に積層され、前記熱伝導部材を被覆する第2接着剤と
を有することを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記接着剤層は、
前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の一方に前記熱伝導部材を接着するパッド状の第1接着剤と、
前記セラミック板の接着面と前記ベースプレートの接着面との間に積層され、前記熱伝導部材及び前記第1接着剤を被覆する第2接着剤と
を有することを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記第1接着剤は、前記第2接着剤よりも熱伝導率が高いことを特徴とする請求項6に記載の基板固定装置。
【請求項8】
発熱する電極を内蔵するセラミック板を形成し、
基板を吸着可能な前記セラミック板の吸着面において前記電極の発熱時に温度の特異点となるホットスポットを特定し、
前記セラミック板の接着面及びベースプレートの接着面の少なくとも一方に前記ホットスポットの位置に対応して凹部を形成し、
前記ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材を前記凹部内に配置し、
接着剤層を介して前記ベースプレートの接着面に前記セラミック板を接着する
工程を有することを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【請求項9】
発熱する電極を内蔵するセラミック板を形成し、
基板を吸着可能な前記セラミック板の吸着面において前記電極の発熱時に温度の特異点となるホットスポットを特定し、
前記セラミック板の接着面及びベースプレートの接着面の一方の全面に第1接着剤を塗布し、
前記ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材を、前記ホットスポットの位置に対応して前記第1接着剤上に配置し、
前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の他方に第2接着剤を塗布し、
前記第1接着剤に前記第2接着剤を積層して前記熱伝導部材を被覆するとともに、前記第1接着剤及び前記第2接着剤からなる接着剤層を介して前記ベースプレートの接着面に前記セラミック板を接着する
工程を有することを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【請求項10】
発熱する電極を内蔵するセラミック板を形成し、
基板を吸着可能な前記セラミック板の吸着面において前記電極の発熱時に温度の特異点となるホットスポットを特定し、
前記セラミック板の接着面及びベースプレートの接着面の一方における、前記ホットスポットに対応する位置に、前記ベースプレートと前記セラミック板との積層方向の熱伝導率が前記積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い熱伝導部材をパッド状の第1接着剤を介して接着し、
前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面の他方に第2接着剤を塗布し、
前記一方に前記第2接着剤を積層して前記熱伝導部材及び前記第1接着剤を被覆するとともに、前記第1接着剤及び前記第2接着剤からなる接着剤層を介して前記ベースプレートの接着面に前記セラミック板を接着する
工程を有することを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置及び基板固定装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置は、静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)とも呼ばれ、電極を内蔵するセラミック板を備える。基板固定装置は、セラミック板がベースプレートに接着された構造を有し、セラミック板に内蔵された電極に電圧を印加することにより、静電力を利用してセラミック板にウエハを吸着する。セラミック板にウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
このような基板固定装置においては、ウエハの吸着面での均熱性を向上するために、セラミック板に温度調節機能が付与されることがある。具体的には、例えばタングステンなどの金属ペーストのスクリーン印刷によってヒーター電極が形成され、このヒーター電極がセラミック板の形成時に同時に焼成されることがある。
【0004】
スクリーン印刷によってヒーター電極が形成される場合、形成されたヒーター電極の幅や厚さが不均一となり、セラミック板の吸着面の温度が十分に均一とならないことがある。これに対し、セラミック板の吸着面において高い均熱性を得るために、セラミック板のベースプレートとの接着面に凹部を設け、かかる凹部にセラミック板よりも熱伝導率が低い温調用樹脂を充填する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の技術においては、セラミック板からベースプレートへの熱の移動が温調用樹脂によって阻害され、セラミック板の吸着面の温度が一様でなくなり、十分な均熱性が得られないことがあるという問題がある。
【0007】
具体的には、温調用樹脂がセラミック板よりも熱伝導率が低いため、ヒーター電極の発熱時に温調用樹脂の位置においてセラミック板からベースプレートへ熱が十分に移動せず、セラミック板の吸着面において他の領域よりも温度が高いホットスポットが発生する。結果として、セラミック板の吸着面全体における均熱性が低下するおそれがある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、十分に高い均熱性を得ることができる基板固定装置及び基板固定装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する基板固定装置は、一つの態様において、ベースプレートと、セラミック板と、熱伝導部材とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層を介して接着されるとともに発熱する電極を内蔵し、静電力によって基板を吸着する。熱伝導部材は、セラミック板の接着面、ベースプレートの接着面及び接着剤層の内部の少なくとも一つに配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する基板固定装置の一つの態様によれば、十分に高い均熱性を得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図3】
図3は、熱伝導部材の配置の具体例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、セラミック板の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、ホットスポット特定工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、凹部形成工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、熱伝導部材配置工程の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、熱伝導部材配置工程の具体例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第1接着剤塗布工程の具体例を示す図である。
【
図16】
図16は、熱伝導部材配置工程の具体例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2接着剤塗布工程の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、第4実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、熱伝導部材接着工程の具体例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2接着剤塗布工程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する基板固定装置及び基板固定装置の製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。
図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110にセラミック板120が接着された構造を有する。
【0014】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、セラミック板120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0015】
セラミック板120は、絶縁性のセラミックからなる円形部材である。セラミック板120の径はベースプレート110の径よりも小さく、セラミック板120は、ベースプレート110の中央に固定される。すなわち、セラミック板120の下面がベースプレート110に接着される接着面となり、接着面が例えばシリコーン樹脂からなる接着剤層によってベースプレート110に接着されることによりセラミック板120が固定される。セラミック板120の上面は、例えばウェハのような吸着される対象物を吸着する吸着面である。
【0016】
セラミック板120は、導電性の電極を内蔵し、かかる電極に電圧が印加される場合に発生する静電力を利用して例えばウエハ等の対象物を吸着面に吸着する。また、セラミック板120は、ヒーター電極を内蔵し、電圧が印加される場合に発熱するヒーター電極によって、セラミック板120及びセラミック板120に吸着されるウェハなどの対象物の温度を調節する。
【0017】
図2は、実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図2には、
図1のII-II線における矢視断面が示されている。
図2に示すように、基板固定装置100は、ベースプレート110とセラミック板120とが接着剤層130によって接着されて構成される。
【0018】
ベースプレート110は、例えば厚さ20~50mm程度の金属製の円形部材である。ベースプレート110の内部には、例えば冷却水や冷却ガスなどの冷媒の通路となる冷媒通路111が形成されている。冷媒通路111を冷媒が通過することにより、セラミック板120が冷却される。セラミック板120が冷却される結果、セラミック板120の吸着面に吸着される例えばウエハなどの対象物が冷却される。ベースプレート110の上面110aは、セラミック板120に接着される接着面であり、接着剤層130によってセラミック板120の下面120aに接着されている。
【0019】
セラミック板120は、例えば厚さ4~6mmのセラミックからなる円形板である。セラミック板120は、例えば酸化アルミニウムを用いて作製されたグリーンシートを焼成することにより得られる。セラミック板120の下面120aは、ベースプレート110に接着される接着面であり、接着剤層130によってベースプレート110の上面110aに接着されている。セラミック板120の内部には、電極121及びヒーター電極122が形成されている。
【0020】
電極121は、セラミック板120の内部に配置され、電圧が印加されることにより静電力を発生させる。この静電力により、セラミック板120は、吸着面となる上面120bに例えばウエハ等の対象物を吸着する。
【0021】
ヒーター電極122は、セラミック板120の内部において電極121よりも下方に配置され、電圧が印加されることにより発熱する。このヒーター電極122の発熱により、セラミック板120は、セラミック板120及びセラミック板120の上面120bに吸着されるウエハ等の対象物を加熱する。
【0022】
セラミック板120の下面120aには、凹部120cが形成されており、この凹部120c内に熱伝導部材140が配置されている。
【0023】
熱伝導部材140は、ベースプレート110とセラミック板120との積層方向(以下、単に「積層方向」と表記する場合がある)の熱伝導率が該積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い性質(以下適宜「熱的異方性」と呼ぶ)を有する。具体的には、熱伝導部材140は、樹脂142に、長手方向の熱伝導率が他の方向の熱伝導率よりも高い複数のカーボンナノチューブ141が埋め込まれた構造を有している。カーボンナノチューブ141は、炭素からなる円筒形状の結晶であり、長手方向が積層方向を向くように配置されている。カーボンナノチューブ141の長手方向の熱伝導率は、セラミック板120の熱伝導率よりも高い。樹脂142は、カーボンナノチューブ141の長手方向の両端面が露出された状態でカーボンナノチューブ141を被覆している。樹脂142としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂又はポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0024】
セラミック板120の下面120a(の凹部120c)に熱的異方性を有する熱伝導部材140を配置することにより、温調用樹脂を配置する場合と比較して、セラミック板120からベースプレート110へ熱を円滑に移動させることができる。このため、セラミック板120の吸着面(つまり、上面120b)において他の領域よりも温度が高いホットスポットが発生することを抑制することができる。結果として、セラミック板120の吸着面での温度分布を一様にすることができ、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0025】
また、熱伝導部材140のカーボンナノチューブ141をその長手方向が積層方向を向くように配置するとともに、その長手方向の両端面が露出された状態で樹脂142によって被覆することにより、積層方向に沿った熱の移動を円滑化させることができる。
【0026】
ここで、熱伝導部材140の配置の具体例について
図3を参照して説明する。
図3は、熱伝導部材140の配置の具体例を示す平面図である。
図3においては、
図2に示した2つの熱伝導部材140の配置を図示している。
【0027】
図3に示すように、熱伝導部材140は、セラミック板120の吸着面(つまり、上面120b)においてヒーター電極122の発熱時に温度の特異点となるホットスポットHSと平面視で重なる位置に配置される。すなわち、セラミック板120の下面120a(
図2参照)には、ホットスポットHSの位置に対応して凹部120c(
図2参照)が形成され、熱伝導部材140は、かかる凹部120c内に配置される。ホットスポットHSは、後述するように、ヒーター電極122に電圧が印加された状態で測定装置によってセラミック板120の上面120bにおける温度分布を測定することにより、予め特定される。
【0028】
このように、熱伝導部材140が特定済みのホットスポットHSと平面視で重なる位置に配置されることにより、熱伝導部材140とホットスポットHSとが重ならない場合と比較して、ホットスポットHSからベースプレート110への熱の移動を円滑化できる。結果として、ホットスポットHSに対してベースプレート110による冷却をピンポイントで施すことができることから、セラミック板120の吸着面における温度差をより低減することができる。
【0029】
図2の説明に戻る。接着剤層130は、例えばシリコーン樹脂系の接着剤又はエポキシ樹脂系の接着剤等からなる、例えば厚さ0.05mm~3.0mm程度の層であり、ベースプレート110の上面110aにセラミック板120の下面120aを接着している。
【0030】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図4を参照ししながら説明する。
図4は、第1実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。
【0031】
まず、ウエハ等の対象物を吸着するセラミック板120が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば酸化アルミニウムを主材料とする複数のグリーンシートが作製され、適宜、グリーンシートの一面に電極121が形成されるとともに、他のグリーンシートの一面にヒーター電極122が形成される。電極121及びヒーター電極122は、例えばグリーンシートの表面に金属ペーストをスクリーン印刷することにより、形成することができる。そして、複数のグリーンシートが積層され焼成されることにより、セラミック板120が形成される。セラミック板120は、例えば
図5に示すように、電極121の層及びヒーター電極122の層を内蔵する。
図5は、セラミック板120の具体例を示す図である。
【0032】
セラミック板120が形成されると、セラミック板120の吸着面におけるホットスポットが特定される(ステップS102)。具体的には、例えば
図6に示すように、ホットスポットは、ヒーター電極122に電圧が印加された状態で測定装置200によってセラミック板120の上面120bにおける温度分布を測定して得られる測定結果を用いて、特定される。
図6は、ホットスポット特定工程の具体例を示す図である。測定装置200としては、例えば赤外線カメラ等の非接触式温度計を用いることができる。また、測定装置200には、赤外線カメラ等の非接触式温度計から取得される温度分布の測定結果と所定の閾値とを比較することによりホットスポットを特定するプロセッサ等の演算装置が搭載されてもよい。
【0033】
ホットスポットが特定されると、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に、ホットスポットの位置に対応して凹部が形成される(ステップS103)。具体的には、例えば
図7に示すように、セラミック板120が下面120a側からヒーター電極122に到達しない位置まで切削されて凹部120cが形成される。
図7は、凹部形成工程の具体例を示す図である。凹部120cは、例えばレーザ加工又はドリル加工によって形成される。
【0034】
凹部120cが形成されると、熱伝導部材140が凹部120c内に配置される(ステップS104)。具体的には、例えば
図8に示すように、凹部120cの径と略同径の円柱形状を有する熱伝導部材140が凹部120cに嵌合される。
図8は、熱伝導部材配置工程の具体例を示す図である。熱伝導部材140は、カーボンナノチューブ141の長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向(換言すれば、セラミック板120の厚み方向)と一致するように、凹部120c内に配置される。このとき、カーボンナノチューブ141は、樹脂142を厚み方向に貫通しており、カーボンナノチューブ141の上端面が凹部120cの底面に接触するとともに、カーボンナノチューブ141の下端面がセラミック板120の下面120a側から露出している。熱伝導部材140が凹部120c内に配置されることにより、接着面(つまり、下面120a)側に熱伝導部材140による熱的異方性が局所的に付与されたセラミック板120が得られる。
【0035】
かかるセラミック板120は、接着剤層130によってベースプレート110に接着される(ステップS105)。具体的には、熱伝導部材140が配置されたセラミック板120の下面120aが、接着剤層130によってベースプレート110の上面110aに接着される。このとき、セラミック板120の下面120a側から露出しているカーボンナノチューブ141の下端面が接着剤層130を介してベースプレート110の上面110aに接続され、ベースプレート110の上面110aと凹部120cの底面とが熱的に導通する。これにより、凹部120cに対応するホットスポットからベースプレート110への熱の移動を円滑化することが可能となる。ベースプレート110にセラミック板120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。なお、カーボンナノチューブ141の上端面及び下端面は、樹脂142又は接着剤層130に埋没していてもよい。
【0036】
以上のように、第1実施形態に係る基板固定装置(例えば、基板固定装置100)は、ベースプレート(例えば、ベースプレート110)と、セラミック板(例えば、セラミック板120)と、熱伝導部材(例えば、熱伝導部材140)とを有する。セラミック板は、ベースプレートに接着剤層(例えば、接着剤層130)を介して接着されるとともに発熱する電極(例えば、ヒーター電極122)を内蔵し、静電力によって基板(例えば、ウエハ)を吸着する。熱伝導部材は、セラミック板の接着面(例えば、下面120a)に配置され、ベースプレートとセラミック板との積層方向の熱伝導率が積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0037】
また、熱伝導部材は、基板を吸着可能なセラミック板の吸着面(例えば、上面120b)において電極の発熱時に温度の特異点となるホットスポットと平面視で重なる位置に配置されてもよい。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、ホットスポットに対してベースプレートによる冷却をピンポイントで施すことができることから、セラミック板の吸着面における温度差をより低減することができる。
【0038】
また、セラミック板の接着面には、ホットスポットの位置に対応して凹部(例えば、凹部120c)が形成されてもよい。そして、熱伝導部材は、凹部内に配置されてもよい。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、ホットスポットに対してベースプレートによる冷却をピンポイントで施すことができることから、セラミック板の吸着面における温度差をより低減することができる。
【0039】
また、熱伝導部材は、カーボンナノチューブ(例えば、カーボンナノチューブ141)と、樹脂(例えば、樹脂142)とを有してもよい。カーボンナノチューブは、長手方向が積層方向を向くように配置されてもよい。樹脂は、カーボンナノチューブの長手方向の両端面が露出された状態でカーボンナノチューブを被覆してもよい。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、ベースプレートとセラミック板との積層方向に沿った熱の移動を円滑化させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態における熱伝導部材140の配置のバリエーションに関する。
【0041】
図9は、第2実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図9において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
【0042】
図9に示す基板固定装置100では、熱伝導部材140が、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に代えて、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に配置されている。すなわち、セラミック板120の下面120aではなく、ベースプレート110の上面110aに凹部110cが形成されており、この凹部110c内に熱伝導部材140が配置されている。このように、熱伝導部材140をセラミック板120の下面120aの代わりにベースプレート110の上面110aに配置する場合でも、温調用樹脂を配置する場合と比較して、セラミック板120からベースプレート110へ熱を円滑に移動させることができる。このため、セラミック板120の吸着面(つまり、上面120b)において他の領域よりも温度が高いホットスポットが発生することを抑制することができる。結果として、セラミック板120の吸着面での温度分布を一様にすることができ、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0043】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、第2実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。
図10に例示された処理において、
図4と同じ符号が付された処理は、
図4を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0044】
ステップS102においてホットスポットが特定されると、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に、ホットスポットの位置に対応して凹部が形成される(ステップS203)。具体的には、例えば
図11に示すように、ベースプレート110が上面110a側から冷媒通路111に到達しない位置まで切削されて凹部110cが形成される。
図11は、凹部形成工程の具体例を示す図である。凹部110cは、例えばレーザ加工又はドリル加工によって形成される。
【0045】
凹部110cが形成されると、熱伝導部材140が凹部110c内に配置される(ステップS204)。具体的には、例えば
図12に示すように、凹部110cの径と略同径の円柱形状を有する熱伝導部材140が凹部110cに嵌合される。
図12は、熱伝導部材配置工程の具体例を示す図である。熱伝導部材140は、カーボンナノチューブ141の長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向(換言すれば、ベースプレート110の厚み方向)と一致するように、凹部110c内に配置される。このとき、カーボンナノチューブ141は、樹脂142を厚み方向に貫通しており、カーボンナノチューブ141の下端面が凹部110cの底面に接触するとともに、カーボンナノチューブ141の上端面がベースプレート110の上面110a側から露出している。熱伝導部材140が凹部110c内に配置されることにより、接着面(つまり、上面110a)側に熱伝導部材140による熱的異方性が局所的に付与されたベースプレート110が得られる。
【0046】
かかるベースプレート110に、接着剤層130によってセラミック板120が接着される(ステップS205)。具体的には、熱伝導部材140が配置されたベースプレート110の上面110aに、セラミック板120の下面120aが接着剤層130によって接着される。このとき、ベースプレート110の上面110a側から露出しているカーボンナノチューブ141の上端面が接着剤層130を介してセラミック板120の下面120aに接続され、セラミック板120の下面120aと凹部110cの底面とが熱的に導通する。これにより、凹部110cに対応するホットスポットからベースプレート110への熱の移動を円滑化することが可能となる。ベースプレート110にセラミック板120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。なお、カーボンナノチューブ141の上端面及び下端面は、樹脂142又は接着剤層130に埋没していてもよい。
【0047】
以上のように、第2実施形態に係る基板固定装置において、熱伝導部材は、ベースプレートの接着面(例えば、上面110a)に配置される。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0048】
また、ベースプレートの接着面には、ホットスポットの位置に対応して凹部(例えば、凹部110c)が形成されてもよい。そして、熱伝導部材は、凹部内に配置されてもよい。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、ホットスポットに対してベースプレートによる冷却をピンポイントで施すことができることから、セラミック板の吸着面における温度差をより低減することができる。
【0049】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態における熱伝導部材140の配置のバリエーションに関する。
【0050】
図13は、第3実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図13において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
【0051】
図13に示す基板固定装置100では、熱伝導部材140が、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に代えて、接着剤層130の内部に配置されている。このように、熱伝導部材140をセラミック板120の下面120aの代わりに接着剤層130の内部に配置する場合でも、温調用樹脂を配置する場合と比較して、セラミック板120からベースプレート110へ熱を円滑に移動させることができる。このため、セラミック板120の吸着面(つまり、上面120b)において他の領域よりも温度が高いホットスポットが発生することを抑制することができる。結果として、セラミック板120の吸着面での温度分布を一様にすることができ、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0052】
接着剤層130は、第1接着剤131と、第2接着剤132とを有する。第1接着剤131は、シート状をなし、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)の全面に積層されて熱伝導部材140を接着している。第2接着剤132は、第1接着剤131とセラミック板120の接着面(つまり、下面120a)との間に積層され、熱伝導部材140を被覆している。第2接着剤132は、第1接着剤131を構成する樹脂と同じ樹脂によって構成されてもよく、第1接着剤131を構成する樹脂と異なる樹脂によって構成されてもよい。このように、ベースプレート110の上面110aの全面に第1接着剤131が積層されるとともに、第1接着剤131が接着する熱伝導部材140が第2接着剤132によって被覆されることにより、熱伝導部材140の位置が接着剤層130内に固定される。このため、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に凹部を形成する工程を経ることなく、熱伝導部材140が接着剤層130の内部に配置される。つまり、簡便な工程で熱伝導部材140を接着剤層130の内部に配置することができ、基板固定装置100の製造効率を向上することができる。
【0053】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図14を参照しながら説明する。
図14は、第3実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。
図14に例示された処理において、
図4と同じ符号が付された処理は、
図4を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0054】
ステップS102においてホットスポットが特定されると、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)の全面に第1接着剤が塗布される(ステップS303)。具体的には、例えば
図15に示すように、ベースプレート110の上面110aの全面に第1接着剤131が塗布される。
図15は、第1接着剤塗布工程の具体例を示す図である。ベースプレート110の上面110aの全面に第1接着剤131が塗布される時点では、第1接着剤131を構成する樹脂は半硬化状態である。
【0055】
第1接着剤131が塗布されると、熱伝導部材140が、ホットスポットの位置に対応して第1接着剤131上に配置される(ステップS304)。具体的には、例えば
図16に示すように、ホットスポットの幅と略同径の円柱形状を有する熱伝導部材140が第1接着剤131上に配置される。
図16は、熱伝導部材配置工程の具体例を示す図である。熱伝導部材140は、カーボンナノチューブ141の長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向(換言すれば、ベースプレート110の厚み方向)と一致するように、第1接着剤131上に配置される。このとき、カーボンナノチューブ141は、樹脂142を厚み方向に貫通しており、カーボンナノチューブ141の下端面が第1接着剤131に接触するとともに、カーボンナノチューブ141の上端面が樹脂142の上面から露出している。
【0056】
そして、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に第2接着剤が塗布される(ステップS305)。具体的には、例えば
図17に示すように、セラミック板120の下面120aの全面に第2接着剤132が塗布される。
図17は、第2接着剤塗布工程の具体例を示す図である。セラミック板120の下面120aの全面に第2接着剤132が塗布される時点では、第2接着剤132を構成する樹脂は半硬化状態である。
【0057】
第2接着剤132が塗布されると、セラミック板120は、熱伝導部材140を被覆する第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130によってベースプレート110に接着される(ステップS306)。具体的には、半硬化状態の第1接着剤131に半硬化状態の第2接着剤132が熱伝導部材140を被覆するように積層され、加熱及び加圧によって、第1接着剤131及び第2接着剤132が硬化する。この結果、第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130の内部に熱伝導部材140が配置されるとともに、ベースプレート110の上面110aに、セラミック板120の下面120aが接着剤層130によって接着される。このとき、樹脂142の上面から露出しているカーボンナノチューブ141の上端面が第2接着剤132を介してセラミック板120の下面120aに接続され、セラミック板120の下面120aと熱的に導通する。これにより、ホットスポットからベースプレート110への熱の移動を円滑化することが可能となる。ベースプレート110にセラミック板120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。なお、カーボンナノチューブ141の上端面及び下端面は、樹脂142又は接着剤層130に埋没していてもよい。
【0058】
以上のように、第3実施形態に係る基板固定装置において、熱伝導部材は、接着剤層(例えば、接着剤層130)の内部に配置される。これにより、第3実施形態に係る基板固定装置によれば、十分に高い均熱性を得ることができる。
【0059】
また、接着剤層は、第1接着剤(例えば、第1接着剤131)と、第2接着剤(例えば、第2接着剤132)とを有してもよい。第1接着剤は、ベースプレートの接着面の全面に積層されて熱伝導部材を接着してもよい。第2接着剤は、第1接着剤とセラミック板の接着面との間に積層され、熱伝導部材を被覆してもよい。これにより、第3実施形態に係る基板固定装置によれば、熱伝導部材を配置するための凹部を形成する工程を省略することができ、製造効率を向上することができる。
【0060】
なお、第3実施形態に係る基板固定装置100において、第1接着剤131の位置と第2接着剤132の位置とは入れ替えられてもよい。すなわち、第1接着剤131は、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)の全面に積層されて熱伝導部材140を接着してもよい。また、第2接着剤132は、第1接着剤131とベースプレートの接着面(つまり、上面110a)との間に積層され、熱伝導部材140を被覆してもよい。
【0061】
(第4実施形態)
第4実施形態は、第3実施形態における接着剤層130の構造のバリエーションに関する。
【0062】
図18は、第4実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図18において、
図13と同じ部分には同じ符号を付す。
【0063】
図18に示す基板固定装置100では、接着剤層130が、第1接着剤131と、第2接着剤132とを有する。第1接着剤131は、パッド状をなし、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に熱伝導部材140を接着している。第2接着剤132は、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)とセラミック板120の接着面(つまり、下面120a)との間に積層され、熱伝導部材140及び第1接着剤131を被覆している。第2接着剤132は、第1接着剤131を構成する樹脂と同じ樹脂によって構成されてもよく、第1接着剤131を構成する樹脂と異なる樹脂によって構成されてもよい。このように、セラミック板120の下面120aに第1接着剤131を介して熱伝導部材140が接着されるとともに、熱伝導部材140及び第1接着剤131が第2接着剤132によって被覆されることで、熱伝導部材140の位置が接着剤層130内に固定される。このため、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に凹部を形成する工程を経ることなく、熱伝導部材140が接着剤層130の内部に配置される。つまり、簡便な工程で熱伝導部材140を接着剤層130の内部に配置することができ、基板固定装置100の製造効率を向上することができる。
【0064】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図19を参照しながら説明する。
図19は、第4実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。
図19に例示された処理において、
図14と同じ符号が付された処理は、
図14を用いて説明された処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
ステップS102においてホットスポットが特定されると、熱伝導部材140が、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)における、ホットスポットに対応する位置に接着される(ステップS403)。具体的には、例えば
図20に示すように、ホットスポットの幅と略同径の円柱形状を有する熱伝導部材140が、セラミック板120の下面120aに第1接着剤131を介して接着される。
図20は、熱伝導部材接着工程の具体例を示す図である。セラミック板120の下面120aにる熱伝導部材140が接着される時点では、第1接着剤131を構成する樹脂は半硬化状態である。熱伝導部材140は、カーボンナノチューブ141の長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向(換言すれば、セラミック板120の厚み方向)と一致するように、セラミック板120の下面120aに接着される。このとき、カーボンナノチューブ141は、樹脂142を厚み方向に貫通しており、カーボンナノチューブ141の上端面が第1接着剤131に接触するとともに、カーボンナノチューブ141の下端面が樹脂142の下面から露出している。
【0066】
また、第1接着剤131は、第1接着剤131を構成する樹脂と第2接着剤132を構成する樹脂とが異なる場合、第2接着剤132よりも熱伝導率が高いことが好ましい。これにより、セラミック板120から熱伝導部材140への熱の移動を円滑化することが可能となる。
【0067】
そして、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に第2接着剤が塗布される(ステップS404)。具体的には、例えば
図21に示すように、ベースプレート110の上面110aの全面に第2接着剤132が塗布される。
図21は、第2接着剤塗布工程の具体例を示す図である。ベースプレート110の上面110aの全面に第2接着剤132が塗布される時点では、第2接着剤132を構成する樹脂は半硬化状態である。
【0068】
第2接着剤132が塗布されると、セラミック板120は、熱伝導部材140を被覆する第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130によってベースプレート110に接着される(ステップS405)。セラミック板120の下面120aに半硬化状態の第2接着剤132が熱伝導部材140及び第1接着剤131を被覆するように積層され、加熱及び加圧によって、第1接着剤131及び第2接着剤132が硬化する。この結果、第1接着剤131及び第2接着剤132からなる接着剤層130の内部に熱伝導部材140が配置されるとともに、ベースプレート110の上面110aに、セラミック板120の下面120aが接着剤層130によって接着される。このとき、樹脂142の下面から露出しているカーボンナノチューブ141の下端面が第2接着剤132を介してベースプレート110の上面110aに接続され、ベースプレート110の上面110aと熱的に導通する。これにより、ホットスポットからベースプレート110への熱の移動を円滑化することが可能となる。ベースプレート110にセラミック板120が接着されることにより、基板固定装置100が完成する。なお、カーボンナノチューブ141の上端面及び下端面は、樹脂142又は接着剤層130に埋没していてもよい。
【0069】
以上のように、第4実施形態に係る基板固定装置において、接着剤層は、第1接着剤(例えば、第1接着剤131)と、第2接着剤(例えば、第2接着剤132)とを有する。第1接着剤は、パッド状をなし、セラミック板の接着面に熱伝導部材を接着する。第2接着剤は、ベースプレートの接着面とセラミック板の接着面との間に積層され、熱伝導部材及び第1接着剤を被覆する。これにより、第4実施形態に係る基板固定装置によれば、熱伝導部材を配置するための凹部を形成する工程を省略することができ、製造効率を向上することができる。
【0070】
また、第1接着剤は、第2接着剤よりも熱伝導率が高くてもよい。これにより、第4実施形態に係る基板固定装置によれば、セラミック板から熱伝導部材への熱の移動を円滑化することが可能となる。
【0071】
なお、第4実施形態に係る基板固定装置において、パッド状の第1接着剤131は、セラミック板120の接着面(つまり、下面120a)に代えて、ベースプレート110の接着面(つまり、上面110a)に熱伝導部材140を接着してもよい。
【0072】
(その他の変形例)
上記実施形態では、熱伝導部材140が、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面又は接着剤層130の内部に配置される場合を例に説明したが、熱伝導部材140の配置位置は、適宜変更することが可能である。例えば、熱伝導部材140は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部のいずれか二つに配置されてもよい。また、熱伝導部材140は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部に配置されてもよい。要するに、熱伝導部材140は、セラミック板120の接着面、ベースプレート110の接着面及び接着剤層130の内部の少なくとも一つに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100 基板固定装置
110 ベースプレート
110a 上面
110c 凹部
111 冷媒通路
120 セラミック板
120a 下面
120b 上面
120c 凹部
121 電極
122 ヒーター電極
130 接着剤層
131 第1接着剤
132 第2接着剤
140 熱伝導部材
141 カーボンナノチューブ
142 樹脂