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特開2023-180524無線通信システム、無線通信方法及び無線通信制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180524
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法及び無線通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20231214BHJP
   H04W 8/22 20090101ALI20231214BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20231214BHJP
   H04W 28/02 20090101ALI20231214BHJP
   H04W 48/10 20090101ALI20231214BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W8/22
H04W84/06
H04W28/02
H04W48/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093896
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 宗大
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】糸川 喜代彦
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 啓
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 完介
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE07
5K067HH22
5K067JJ11
(57)【要約】
【課題】本開示は、無線通信システム、無線通信方法及び無線通信制御装置に関し、CRDSA+FH方式をベースとした通信システムにおいて、衛星IoT端末のグループ毎に各チャネルにおける送信率を算出し、それに基づいた送信トラヒック制御を行うことで、システム全体としての通信容量を最大化できる無線通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の無線通信システムは、衛星IoT端末部とシステム制御部を備え、衛星IoT端末部が、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報をシステム制御部に送付する機能と、システム制御部が、送信可能チャネルリストに基づき、衛星IoT端末部をグループに分類する機能と、グループの各チャネルにおける送信率を算出する機能と、グループ及び各チャネルにおける送信率を衛星IoT端末部に報知する機能と、衛星IoT端末部が、各チャネルにおける送信率に基づき、チャネルの選択及び送信トラヒック量の制御を行う機能とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星IoT端末部とシステム制御部を有する無線通信システムであって、
前記衛星IoT端末部が、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報を前記システム制御部に送付する機能と、
前記システム制御部が、
前記送信可能チャネルリストに基づき、前記衛星IoT端末部をグループに分類する機能と、
前記グループの各チャネルにおける送信率を算出する機能と、
前記グループ及び各チャネルにおける前記送信率を前記衛星IoT端末部に報知する機能と、
前記衛星IoT端末部が、各チャネルにおける前記送信率に基づき、チャネルの選択及び送信トラヒック量の制御を行う機能と
を備える無線通信システム。
【請求項2】
前記衛星IoT端末部が、ランダムにタイムスロットを一つ又は複数選択し、選択したタイムスロット間にパケットを送信する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信率が、
チャネルの自由度に基づいて決定され、該チャネルで送信されるトラヒック量に上限値を設定することと、
チャネル間の送信率の偏りに下限値を設定することと
の少なくとも一つを制約条件として算出される、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記チャネル間の送信率の偏りが、チャネル間の送信率の最大値及び最小値の比である
請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
衛星IoT端末部が、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報を、システム制御部に送付する工程と、
前記システム制御部が、
前記送信可能チャネルリストに基づき、前記衛星IoT端末をグループに分類する工程と、
前記グループの各チャネルにおける送信率を算出する工程と、
前記グループ及び各チャネルにおける前記送信率を前記衛星IoT端末に報知する工程と、
前記衛星IoT端末部が、各チャネルにおける前記送信率に基づき、チャネルの選択及び送信トラヒック量の制御を行う工程と
を備える無線通信方法。
【請求項6】
送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報を、衛星IoT端末から受信し、
前記送信可能チャネルリストに基づき、前記衛星IoT端末をグループに分類し、
前記グループの各チャネルにおける送信率を算出し、
前記グループ及び各チャネルにおける前記送信率を前記衛星IoT端末に報知する
無線通信制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信制御装置が有する機能をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無線通信システム、無線通信方法及び無線通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モノとの通信を行うIoTサービスが発展している。IoT端末は、無線通信装置を搭載することにより、無線通信を用いてインターネットに接続することができる。そのためIoT端末は、遠隔監視やテレメタリングなど様々なサービスへの応用が期待されている。
【0003】
無線通信規格には、例えば無線LAN(IEEE 802.11ah)や、LTEなどの既存モバイル通信システムの他、低消費電力を特徴とするLPWAなどがある。LPWAには、アンライセンスバンドを使う規格として、SigfoxやLoRaWAN、ELTRESなどが策定されている。またLPWAには、ライセンスバンドを使う規格として、LTE-MやNB-IoTがある。
【0004】
一方、無線通信装置として低軌道衛星を使った衛星通信サービスが注目されている。衛星通信サービスでは、複数の通信衛星が高度数百km~2000kmの軌道に投入される。地上の無線端末は、これらの通信衛星に接続することにより、高速な通信を行うことができる。例えば、Oneweb社やSpaceX社は、多数の通信衛星を打ち上げ、通信サービスを開始している。
【0005】
また、これらの通信衛星を組み合わせて行う、低軌道衛星を用いたIoTサービスが検討されている。例えば、IoT端末を低軌道衛星に接続し、その低軌道衛星を介してインターネットに接続するサービスである。このようなIoTサービスは、地上ネットワークが整備されていない山間部などの僻地や、地上ネットワークの電波が届かない海上や空中エリアにおいても、IoTサービスを提供できるシステムとして有望である。例えば、Globalstar社は、低軌道衛星を用いた衛星IoTサービスを提供している。
【0006】
図1は、低軌道衛星を用いたIoTシステムのイメージを示す図である。地上に存在する衛星IoT端末2は、IoTデータを格納したパケットを、サービスリンク3を介して衛星4に送信する。パケットはフィーダリンク5を介して地上基地局6へ送信され、更にネットワーク9を介してIoTアプリケーションサーバ10へ送信される。IoTアプリケーションサーバ10では、各種IoTサービスに必要なデータ加工や解析、データクレンジングなどの処理が行われる。
【0007】
これらの衛星IoT端末は、無線チャネルを使って衛星にパケットを送信する。この際、複数の端末が無線チャネルを使ってデータを送信するために、TDMAやFDMAなどのアクセス方式が用いられる。
【0008】
TDMAやFDMAのアクセス方式では、システム側の制御装置が制御を行い、各IoT端末に対してパケットを送信するための時間や周波数などのリソースを割り当てる。また、IoT端末が自律的に制御を行うアクセス方式として、Slotted ALOHA方式を発展させたCRDSA(Contention Resolution Diversity Slotted ALOHA)方式がある。この方式では、IoT端末が送信するパケットを複製し、複製したパケットを異なるタイムスロットで送信する。
【0009】
図2は、CRDSA方式を示す図である。ここでは、IoT端末#1が1chを用いたパケット送信を、タイムスロット12を用いて行う例を示している。まずIoT端末#1は、パケット14を、t2~t3のタイムスロットで送信する。またIoT端末#1は、パケット14を複製し、その複製パケット16を、t4~t5のタイムスロットで送信する。
【0010】
図3は、CRDSA方式における干渉を示す図である。ここでは、IoT端末からの送信タイミングが、他のIoT端末からの送信タイミングと重なる例を示している。このとき、送信パケット同士が衝突して干渉するため、パケットが正しく受信されなくなる。この場合でも、続けて送信する複製パケットが正しく受信されれば、受信側でそのパケットを使って干渉キャンセル処理を行うことで、全パケットが正しく受信される可能性がある。
【0011】
図3では、IoT端末#1、#2、#3が、8つのタイムスロットを用いてCRDSA方式のパケット送信を行う例を示す。IoT端末#1は、パケット14及び複製パケット16を、異なるタイムスロットで送信する。IoT端末#2は、パケット18及び複製パケット20を、異なるタイムスロットで送信する。IoT端末#3は、パケット22及び複製パケット24を、異なるタイムスロットで送信する。
【0012】
この場合、IoT端末#2が送信するパケット18及び複製パケット20は、それぞれパケット14及び複製パケット24と衝突するため、いずれも正しく受信されない。つまり、IoT端末#2の情報は正しく伝達されない。しかし、複製パケット16及びパケット22は、他のタイムスロットで正しく受信されている。つまり、IoT端末#1及びIoT端末#3の情報は正しく伝達されている。
【0013】
そのため、複製パケット16またはパケット22を用いて、干渉キャンセル処理を行うことにより、IoT端末#2の送信パケットを正しく受信することが可能になる。例えば、t2~t3のタイムスロットで受信した情報から、複製パケット16の情報を差し引く処理を行う。複製パケット16はパケット14の複製であるため、この処理により、パケット18の正しい内容を認識できるようになる。つまり、CRDSA方式では、複数のパケット送信と干渉キャンセル処理を併用することで、情報伝達の精度を高めることができる。
【0014】
図4は、FHを導入したCRDSA方式を示す図である。複数のチャネルが利用可能な場合は、CRDSA方式の拡張として、FH(Frequency Hopping)を導入できる。これは、任意の異なるチャネル及びタイムスロットでパケットを送信する方式である。図4では、IoT端末#1が、2つの複製パケットを生成し、送信する例を示している。ここで、パケット14、複製パケット16及び複製パケット26は、それぞれ異なるチャネル及び異なるタイムスロットを用いている。このように、複数チャネルを用いることで、端末間で送信パケットが衝突する可能性が低下するため、スループット特性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2000-299692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
低軌道衛星を使ったIoTサービスでは、衛星1台当たりが地表においてカバーするエリアが広大となる。そのため、1台の衛星に対して多数の端末が接続する。接続する端末数が多くなると、端末間の干渉によって通信に障害が発生し、通信システムの通信容量が低下する課題が生じる。
【0017】
また、各端末が衛星にパケットを送信する際、地上ネットワークに干渉を与えないようにする必要がある。このため、端末によって利用可能なチャネルが異なる。
【0018】
FHを導入したCRDSA方式(以下、この方式を「CRDSA+FH方式」と称する。)では、接続する端末数の増加に伴い、通信容量が増加する。しかし、端末数がある値に達すると、通信容量が急激に低下する。これは、複数の端末が同一のスロットを選択してパケットを送信する確率が上がり、パケットの衝突が増加するためである。一定数以上のパケット衝突が発生すると、干渉キャンセル処理が働かなくなり、急激に通信容量が低下する。通信容量が低下すると、IoTサービスに支障をきたす。
【0019】
図5は、シミュレーションによる、スロット数をパラメータとしたスループット特性を示すグラフである。図5では、横軸が正規化トラヒック量、縦軸がスループットを示す。スロット数ごとに比較すると、スロット数が多くなるほどスループット特性が改善することが分かる。これは、パケットの衝突確率が下がるためと考えられる。また特定のスロット数で比較すると、例えばスロット数が1863の場合、正規化トラヒック量(G)が0.75となる付近でスループットが最大となっている。さらにGが大きくなると、スループットが急激に低下する。これは、パケット衝突が多数発生することで、干渉キャンセル処理に失敗するためと考えられる。
【0020】
特許文献1には、一般的なALOHAシステムの特性を改善するため、送信トラヒックの制御を行う技術が開示されている。この技術では、無線局あるいは端末毎に、独立してパケットを送信できる時間帯と送信できない時間帯を設定する。これにより、無線局あるいは端末当たりの送信トラヒック量を調整する。しかし、この手法では、CRDSA+FH方式の特性に基づいた送信トラヒック量の調整を行うことは想定されておらず、最適な送信トラヒック量の調整を行えない。また、複数のチャネルが利用可能なIoTシステムを想定した場合の、端末による最適なチャネル選択を行うことができず、システム全体としての通信容量を最大化できない。
【0021】
本開示は上述の問題を解決するため、特にCRDSA+FH方式をベースとした通信システムにおいて、衛星IoT端末のグループ毎に各チャネルにおける送信率を算出し、それに基づいた送信トラヒック制御を行う。これにより、システム全体としての通信容量を最大化できる無線通信システムを提供することを第一の目的とする。
【0022】
また、本開示は上述の問題を解決するため、システム全体としての通信容量を最大化できる無線通信方法を提供することを第二の目的とする。
【0023】
また、本開示は上述の問題を解決するため、システム全体としての通信容量を最大化できる無線通信制御装置を提供することを第三の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示の第一の態様は、衛星IoT端末部とシステム制御部を備え、衛星IoT端末部が、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報をシステム制御部に送付する機能と、システム制御部が、送信可能チャネルリストに基づき、衛星IoT端末部をグループに分類する機能と、グループの各チャネルにおける送信率を算出する機能と、グループ及び各チャネルにおける送信率を衛星IoT端末部に報知する機能と、衛星IoT端末部が、各チャネルにおける送信率に基づき、チャネルの選択及び送信トラヒック量の制御を行う機能とを備える無線通信システムであることが好ましい。
【0025】
本開示の第二の態様は、衛星IoT端末部が、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報を、システム制御部に送付する工程と、前記システム制御部が、送信可能チャネルリストに基づき、衛星IoT端末をグループに分類する工程と、グループの各チャネルにおける送信率を算出する工程と、グループ及び各チャネルにおける送信率を衛星IoT端末に報知する工程と、衛星IoT端末部が、各チャネルにおける送信率に基づき、チャネルの選択及び送信トラヒック量の制御を行う工程とを備える無線通信方法であることが好ましい。
【0026】
本開示の第三の態様は、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量についての情報を、衛星IoT端末から受信し、送信可能チャネルリストに基づき、衛星IoT端末をグループに分類し、グループの各チャネルにおける送信率を算出し、グループ及び各チャネルにおける送信率を衛星IoT端末に報知する無線通信制御装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本開示の第一から第三の態様によれば、特にCRDSA+FH方式をベースとした通信システムにおいて、衛星IoT端末のグループ毎に各チャネルにおける送信率を算出し、それに基づいた送信トラヒック制御を行うことで、システム全体としての通信容量を最大化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】低軌道衛星を用いたIoTシステムのイメージを示す図である
図2】CRDSA方式を示す図である。
図3】CRDSA方式における干渉を示す図である。
図4】FHを導入したCRDSA方式を示す図である。
図5】シミュレーションによる、スロット数をパラメータとしたスループット特性を示すグラフである。
図6】本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示す図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの処理を示すフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態1に係る衛星IoT端末の配置を示す図である。
図9】本開示の実施の形態1に係る単位時間あたりのスロット数を示す図である。
図10】本開示の実施の形態1に係る最大スループットの計算結果を示すグラフである。
図11】本開示の実施の形態1に係るスロット数をパラメータとしたスループット特性を示すグラフである。
図12】本開示の実施の形態1に係るスループット特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態1
図6は、本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示す図である。無線通信システム100は、衛星IoT端末2を備える。衛星IoT端末2は、利用可能なチャネルリスト及び送信予定のトラヒック量の情報を、パケットに変換し、サービスリンク3を介して衛星4に伝送する。
【0030】
衛星4は、衛星IoT端末2から伝送された情報パケットを、フィーダリンク5を介して地上基地局6に中継する。地上基地局6は、中継された情報パケットを、ネットワーク9を介してシステム制御器8に伝送する。
【0031】
システム制御器8は、伝送された情報に基づき、各チャネルにおける送信率を算出する。そしてその各チャネルにおける送信率の情報を、地上基地局6を介して衛星4に通知する。
【0032】
衛星4は、各チャネルにおける送信率の情報を、ブロードキャストにより全ての衛星IoT端末2へ通知する。衛星IoT端末2は、その情報に基づき、チャネル選択及び送信トラヒック制御を行う。
【0033】
また衛星IoT端末2は、IoTサービスとして観測やセンシングなどを行い、IoT情報を得る。そして、得られたIoT情報をパケットに変換し、サービスリンク3を介して衛星4に伝送する。衛星4は、伝送された情報パケットを、フィーダリンク5を介して地上基地局6に中継する。
【0034】
地上基地局6は、中継された情報パケットを、ネットワーク9を介してIoTアプリケーションサーバ10に伝送する。IoTアプリケーションサーバ10は、伝送されたIoT情報に基づき、データ加工や解析、データクレンジングなどの処理を行う。
【0035】
図7は、本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの処理を示すフローチャートである。これは、各チャネルにおける送信率の算出のため、無線通信システム100で定期的に行う処理を示している。
【0036】
まずステップ100(S100)で、衛星IoT端末2が、送信可能チャネルリスト及び送信予定のトラヒック量の情報を送付する。この情報は、前述した通り、衛星4及び地上基地局6を介してシステム制御器8へ伝達される。
【0037】
次にステップ102(S102)で、システム制御器8が、衛星IoT端末2をグループに分類した上で、各グループの各チャネルにおける送信率を算出する。このグループの分類及び送信率の算出は、S100で送付された情報に基づいて行われる。
【0038】
次にステップ104(S104)で、システム制御器8が、算出した送信率を報知する。この情報は、前述した通り、地上基地局6及び衛星4を介して衛星IoT端末2へ報知される。
【0039】
最後にステップ106(S106)で、衛星IoT端末2が、報知された各チャネルにおける送信率に基づいて、チャネル選択及び送信トラヒック制御を行う。
【0040】
続けて、システム制御器8の行う具体的な処理を示す。図8は、本開示の実施の形態1に係る衛星IoT端末の配置を示す図である。無線通信システム100は、16台の衛星IoT端末2を備える。ここではその16台を順に、衛星IoT端末2-1から2-16と称する。
【0041】
無線通信システム100は、2つの地上IoTサービスエリアを備える。地上IoTサービスエリア28は、4台の衛星IoT端末2-1から2-4を有する。地上IoTサービスエリア30は、4台の衛星IoT端末2-13から2-16を有する。
【0042】
表1は、各衛星IoT端末2の送信可能チャネルを示す表である。IoTサービス用の無線チャネルとして、1chから4chの4チャネルが利用可能である。しかし衛星IoT端末2は、地上NW(Network)を利用しているIoTサービスへの干渉を防ぐため、地上NWが利用しているチャネルは利用しない。地上IoTサービスエリア28の衛星IoT端末では2ch、3ch及び4chが利用されており、地上IoTサービスエリア30の衛星IoT端末では、1ch、3ch及び4chが利用されている。そのため、各衛星IoT端末2の送信可能チャネルは表1のようになる。
【0043】
【表1】
【0044】
システム制御器8は、各衛星IoT端末2からの情報に基づき、衛星IoT端末2をグループに分類する。ここでは、1chのみ利用可能な端末をグループ1、2chのみ利用可能な端末をグループ2、全チャネル(1ch、2ch、3ch、4ch)を利用可能な端末をグループ3とする。そして、各衛星IoT端末2からの送信可能チャネル情報を、グループ毎に分類する。
【0045】
次に、システム制御器8は、各チャネルにおける送信率を算出する。ここで、各グループiのチャネルjにおける送信率をpij、各グループiにおける正規化した送信予定のトラヒック量(生成トラヒック量)をgと定義する。この場合システム制御器8は、数式1の目的関数を最大にするpijを算出する。
【0046】
【数1】
【0047】
但し、pijを算出するにあたり、2つの制約条件を設ける。1つ目の制約条件は、全てのjにおいて数式2が成立することである。
【0048】
【数2】
【0049】
ただし、この際数式3が成立するものとする。
【0050】
【数3】
【0051】
ここで、f はグループiにおける自由度、つまり利用可能なスロット数と定義する。またf はチャネルjにおける自由度と定義する。数式3の右辺は、自由度f における性能低下が発生しない負荷を意味する。
【0052】
図9は、本開示の実施の形態1に係る単位時間あたりのスロット数を示す図である。図9に示す態様では、ある単位時間におけるスロットが4つ存在する。ここで、グループ1は1chを使用可能、グループ2は2chを使用可能、グループ3は1ch、2ch、3ch、4chを使用可能であることから、f =4、f =4、f =16となる。次に、1chにおいては、グループ1とグループ3が使用可能であるが、最小値は4となるため、f =4となる。同様の算出により、f =4、f =f =16となる。それぞれのf に対する数式3の右辺は、数式4に基づいて算出される。
【0053】
【数4】
【0054】
図10は、本開示の実施の形態1に係る最大スループットの計算結果を示すグラフである。ここでは自由度、つまり利用可能なスロット数に対する最大スループットの計算結果を示している。グラフの各点は、スロット数に対する最大スループットのデータである。グラフの実線は、このデータ群を近似して導出したものであり、数式4はこの近似結果から導出されている。
【0055】
続けて、2つ目の制約条件を示す。2つ目の制約条件は、全てのiにおいて数式5が成立することである。
【0056】
【数5】
【0057】
minは、自由度に影響しない送信率の偏りの最低値である。ここでは各グループにおいて、各チャネルへの最小送信率と最大送信率の比を、送信率の偏りと定義する。なお、この送信率の偏りは他の定義によるものでも良い。
【0058】
図11は、本開示の実施の形態1に係るスロット数をパラメータとしたスループット特性を示すグラフである。図11では、dminを変化させた場合のスループット特性を示している。このグラフから分かる通り、dminが0.02であればスループットの特性劣化はほとんど発生しない。そのため本実施形態では、dmin=0.02と設定している。
【0059】
上述した2つの制約条件に基づき、数式1が最大となるpijを算出する。
【0060】
=0.5、g=0.5、g=1の場合、数式1が最大となるpijの計算結果は数式6の通りとなる。
【0061】
【数6】
【0062】
表2は、1つ目の制約条件として、チャネルjにおける数式2左辺と数式4左辺の算出結果を示す表である。いずれのチャネルjにおいても、算出したpijは制約条件を満たしている。
【0063】
【表2】
【0064】
次に、2つ目の制約条件として、各グループiにおける数式5の左辺及び右辺を表3に示す。いずれのグループiにおいても、算出したpijは制約条件を満たしている。
【0065】
【表3】
【0066】
=1、g=1、g=2の場合、数式1が最大となるpijの計算結果は数式7の通りとなる。
【0067】
【数7】
【0068】
1つ目の制約条件として、表4にチャネルjにおける数式2左辺と数式4左辺の算出結果を示す。いずれのチャネルjにおいても、算出したpijは制約条件を満たしている。
【0069】
【表4】
【0070】
次に、2つ目の制約条件として、各グループiにおける数式5の左辺及び右辺を表5に示す。いずれのグループiにおいても、算出したpijは制約条件を満たしている。
【0071】
【表5】
【0072】
以上のように、システム制御器8は、グループiのチャネルjにおける送信率pijを算出する。続けてシステム制御器8は、算出した送信率pijを、衛星IoT端末2へ報知する。この際、各グループが利用可能なチャネル情報をセットで報知することで、この情報を受信した衛星IoT端末2が、自身が所属するグループを認識できるようにする。
【0073】
衛星IoT端末2は、上述の情報を受信した後、該当する送信率に基づいてチャネル選択及び送信トラヒックの制御を行う。例えばg=1、g=1、g=2の場合、報知される算出結果は数式8の通りとなる。
【0074】
【数8】
【0075】
例えば、グループ1に所属する衛星IoT端末2は、1chのみを選択し、トラヒック送信を30%に抑える制御を行う。この制御では、送信タイミング毎に30%の確率で送信を行う。制御の一例として、送信タイミング毎に0~9までの乱数を生成し、0~2が生成された場合に送信を行う方法が考えられる。同様に、グループ3に所属する衛星IoT端末2は、1ch及び2chは15%、3ch及び4chは35%の確率でチャネルを選択する制御を行う。上記の処理を行うことにより、スループットが最大になるように各端末で送信制御を行うことができる。
【0076】
本開示により、CRDSA+FH方式をベースとした通信システムにおいて、CRDSA+FH方式の特性に基づいたチャネル選択及び送信トラヒック制御を行うことができる。その結果、接続する端末の過多によって生じる通信容量の低下の影響を軽減し、システム容量の最大化を達成することができる。
【0077】
なお、本開示のシステム制御器8に係る機能は、コンピュータとプログラムによっても実現できる。このプログラムは、記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0078】
図12は、本開示の実施の形態1に係るスループット特性のシミュレーション結果を示すグラフである。ここでは、横軸は正規化トラヒック量であり、半数の送信機が半数のチャネルを利用可能としている。グラフより、チャネル選択及び送信トラヒック制御を行った場合に、スループットが改善されることが分かる。
【0079】
なお、横軸の正規化トラヒック量は、端末における送信予定トラヒック量である潜在送信トラヒック量である。送信制限が考えられるため、この全トラヒックが送信されているとは限らない。
【符号の説明】
【0080】
1 衛星
2 衛星IoT端末
4 衛星
8 システム制御器
12 タイムスロット
14 パケット
18 パケット
22 パケット
100 無線通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図12