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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180548
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】藻類増殖促進装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231214BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093935
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】デトモド ティタポーン
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭飛
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA04
4B029DF10
4B065AA83X
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】 藻類への電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって藻類の増殖促進を行う藻類増殖促進装置を得る。
【解決手段】 バイオリアクタ10は、所定の藻類を含む液体を収容する収容空間101を有する。ベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルは、バイオリアクタ10の収容空間101および外側の少なくとも一方に配置されている。電源装置2は、そのベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を液体に印加して電気刺激を藻類に与える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の藻類を含む液体を収容する収容空間を有するバイオリアクタと、
前記バイオリアクタの前記収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルと、
前記ベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、前記収容空間において前記交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記液体に印加して電気刺激を前記藻類に与える電源装置と、
を備えることを特徴とする藻類増殖促進装置。
【請求項2】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、らせん状のコイル軸に沿って周回するソレノイドコイルであることを特徴とする請求項1記載の藻類増殖促進装置。
【請求項3】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであり、周方向において開口部を備えることを特徴とする請求項1記載の藻類増殖促進装置。
【請求項4】
前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材をさらに備え、
前記強磁性体部材は、導電性を有し、
前記ベクトルポテンシャルコイルの一端と前記強磁性体部材の第1接続点とが互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記ベクトルポテンシャルコイルの他端および前記強磁性体部材の第2接続点に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項2または請求項3記載の藻類増殖促進装置。
【請求項5】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、同一の前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる内側ソレノイドコイルおよび外側ソレノイドコイルを備え、
前記内側ソレノイドコイルの一端と前記外側ソレノイドコイルの一端が互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記内側ソレノイドコイルの他端および前記外側ソレノイドコイルの他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項2または請求項3記載の藻類増殖促進装置。
【請求項6】
前記ベクトルポテンシャルコイルを含む複数のベクトルポテンシャルコイルを備え、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、前記バイオリアクタの軸方向または周方向に沿って配列されており、
前記電源装置は、前記複数のベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、前記収容空間において前記交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記液体に印加して電気刺激を前記藻類に与えること、
を特徴とする請求項1記載の藻類増殖促進装置。
【請求項7】
前記藻類は、光合成性のある藻類であって、
前記バイオリアクタは、外部からの培養光を前記収容空間に透過させ、
前記ベクトルポテンシャルコイルは、前記収容空間への前記培養光の入射側とは反対側の前記バイオリアクタの外側に配置されていること、
を特徴とする請求項3記載の藻類増殖促進装置。
【請求項8】
前記バイオリアクタと前記ベクトルポテンシャルコイルとの間に前記培養光を反射する反射層をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の藻類増殖促進装置。
【請求項9】
前記バイオリアクタは、培養槽と、前記培養槽に接続され前記液体を循環させる循環配管と、前記循環配管に設けられたポンプとを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイルは、前記循環配管に設置されていること、
を特徴とする請求項1記載の藻類増殖促進装置。
【請求項10】
前記液体は、導電性を有し、
前記電源装置は、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電圧に対応する交流電流を前記液体に導通させて電気刺激を前記藻類に与えること、
を特徴とする請求項1記載の藻類増殖促進装置。
【請求項11】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、前記バイオリアクタの外側に配置されており、
前記バイオリアクタは、前記ベクトルポテンシャルコイルの配置位置の上流側と下流側とを接続する副液路を備え、
前記交流電流が前記副液路内の前記液体に導通すること、
を特徴とする請求項10記載の藻類増殖促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類増殖促進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマス資源として藻類バイオマスが注目されており、所定の藻類を添加した液体をバイオリアクタに収容し、バイオリアクタ内で培養、増殖させ、増殖によって得られた藻類から、燃料などの脂質、たんぱく質、多糖類などが抽出されている。
【0003】
短時間で多量の藻類を得るために、種々の増殖促進方法が提案されている。ある増殖促進方法では、微細藻類オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)を含む培地に対して電極からパルス電流を印加することで、バイオマス量を増加させている(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
他方、ソレノイドコイルを周回させたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させてベクトルポテンシャルを発生するベクトルポテンシャル発生装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。また、時間変化するベクトルポテンシャルによって電圧が誘起されることを利用してベクトルポテンシャルを検出するベクトルポテンシャル検出装置も開発されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2015/099147
【特許文献2】特許第6950925号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川口紘輝、高谷誠、内ヶ崎万蔵著「電気刺激による微細藻類Aurantiochytrium sp. SEK209の増殖促進」、バイオマス科学会議発表論文集、一般社団法人 日本エネルギー学会、2016年1月14日発行、第137~138頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の増殖促進方法では、藻類を含む液体に対して電流を導通させるためには、その液体に電極を接触させる必要がある。そのため、(a)電極からその液体に、電極由来の金属イオンが溶出し、藻類の増殖に悪影響を与える可能性があり、また、(b)電極が腐食する可能性がある。なお、それらの問題の生じない電極を使用する場合には、電極のコストが高くなり好ましくない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、藻類への電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって藻類の増殖促進を行う藻類増殖促進装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る藻類増殖促進装置は、所定の藻類を含む液体を収容する収容空間を有するバイオリアクタと、バイオリアクタの収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルと、ベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、収容空間において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を液体に印加して電気刺激を藻類に与える電源装置とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、藻類への電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって藻類の増殖促進を行う藻類増殖促進装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る藻類増殖促進装置10の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態2におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態3におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例(一部)を示す図である。
図6図6は、実施の形態5におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図8図8は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図9図9は、実施の形態7におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図10図10は、実施の形態8におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図11図11は、実施の形態9におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図12図12は、実施の形態10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図13図13は、実施の形態11におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図14図14は、実施の形態12におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図15図15は、実施の形態12におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図16図16は、実施の形態13におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図17図17は、実施の形態14におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
実施の形態1.
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る藻類増殖促進装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す藻類増殖促進装置は、バイオリアクタ10、ベクトルポテンシャルコイル装置1、電源装置2、およびコントローラ3を備える。
【0016】
バイオリアクタ10は、所定の藻類を含む液体を収容する収容空間を有する部材である。実施の形態1では、バイオリアクタ10は、パイプ状の部材である。ただし、バイオリアクタ10は、容器状の部材、レースウェイ型の培養槽などでもよい。また、上述の所定の藻類は、燃料などの脂質、たんぱく質、多糖類などを産生したり取り込んだりする藻類(ここでは、単細胞の微細藻類)であり、光合成性のあるものでもよいし、光合成性のないものでもよい。例えば、オーランチオキトリウム、ボトリオコッカス、シュードコリシスティス、イカダモ、ナンノクロロプシスなどが、上述の所定の藻類として使用される。上述の液体は、導電性のある液体培地(例えば電解質を含む水、塩水、汽水、海水など)であって、上述の藻類を添加される。なお、ここでは、バイオリアクタ10は、非金属性(例えば樹脂製)の部材である。また、バイオリアクタ10を金属製の部材とする場合には、例えば、上述の液体が接触する箇所(内壁など)を樹脂などで覆い、上述の液体が金属に接触しないようにする。
【0017】
光合成性のある藻類が使用される場合、バイオリアクタ10には、(少なくとも一部に)光透過性のある部材(例えば透明な樹脂製の部材)が使用される。光合成性のない藻類が使用される場合、バイオリアクタ10は、光透過性のある部材でも光透過性のない部材(例えば金属製の部材)でもよい。
【0018】
図2は、実施の形態1におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0019】
例えば図2に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、バイオリアクタ10の収容空間101および外側の少なくとも一方(ここでは外側)に配置されたベクトルポテンシャルコイル(以下、VPコイルともいう)11を備える。実施の形態1では、例えば図2に示すように、VPコイル11は、らせん状のコイル軸に沿って周回するソレノイドコイルである。ここでは、バイオリアクタ10は、円筒状の部材であって、VPコイル11は、円状に周回するらせん状のコイル軸を有する。
【0020】
また、電源装置2は、商用電源や電池(1次電池または2次電池)などの電力に基づいて交流電流を生成し、その交流電流をVPコイル11に導通させ、上述の収容空間101において交流電流に対応して時間変化するベクトルポテンシャルを発生させ、そのベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を上述の液体に印加して電気刺激を上述の藻類に与えて増殖を促進する。具体的には、上述の液体が導電性を有する場合には、上述の液体には交流の電界が印加されるとともに、その電界による電圧に対応する交流電流が上述の液体を導通する。これにより、電界による電気刺激と電流による電気刺激の両方が上述の藻類に与えられる。一方、上述の液体が導電性を有さない場合には、上述の液体には交流の電界が印加されるが、上述の交流電流は導通しない。
【0021】
振幅Iのsin波である交流電流をVPコイル11に導通させた場合、収容空間101には、次式に示す交流電圧V2が、交流電流によって発生するベクトルポテンシャルの時間変化に応じて生じ、その交流電圧に応じた交流電流が収容空間101内の液体を導通する。
【0022】
【数1】
【0023】
ここで、μは真空透磁率であり、nはVPコイル11におけるソレノイドの単位長あたりの巻数であり、Nは、らせん状のVPコイル11の単位長あたりの巻数であり、SはVPコイル11におけるソレノイドの断面積であり、ωは交流電流の角周波数であり、aは、らせん状のVPコイル11の断面半径であり、Lは、VPコイル11の長さ(両端間の距離)であり、tは時間である。
【0024】
また、コントローラ3は、制御プログラムを実行するコンピュータなどであって、電源装置2を制御して、所定の周波数の交流電流を所定のタイミング(常時、所定時間間隔など)でVPコイル11に導通させる。例えば、コントローラ3は、電源装置2に、高周波で短時間、パルス状の交流電流を導通させるようにしてもよい。
【0025】
次に、上記藻類増殖促進装置の動作について説明する。
【0026】
コントローラ3は、図示せぬ流体制御装置(ポンプや弁など)を制御して、パイプ状のバイオリアクタ10に、上述の藻類が添加されている液体を流入させた後、電源装置2を制御して、電源装置2に、交流電流をVPコイル11へ供給させる。
【0027】
その際、電源装置2は、所定のタイミングで、所定の波形(振幅および周波数)で、交流電流を生成し、VPコイル11へ供給する。
【0028】
VPコイル11を導通する電流によって磁場がコイル軸に沿って発生し、その電流に平行にベクトルポテンシャルが発生し、VPコイル11の湾曲内側方向(つまり、収容空間101)におけるベクトルポテンシャルの強度が、VPコイル11の湾曲外側方向におけるベクトルポテンシャルより大きくなる。
【0029】
そして、収容空間101において、ベクトルポテンシャルが交番するため、その時間的変化に応じた交流電圧が上述のように発生し、その交流電圧に応じた交流電流が収容空間101内の液体に導通し、収容空間101内の藻類に電気刺激が与えられる。これにより、収容空間101内の藻類の増殖が促進される。
【0030】
所定時間経過後、コントローラ3は、図示せぬ流体制御装置(ポンプや弁など)を制御して、増殖した上述の藻類を含む液体をバイオリアクタ10から排出する。そして、既存の方法で、排出された液体における増殖した上述の藻類から脂質、たんぱく質、多糖類などのバイオマス資源が抽出される。
【0031】
以上のように、上記実施の形態によれば、バイオリアクタ10は、所定の藻類を含む液体を収容する収容空間101を有する。VPコイル11は、バイオリアクタ10の収容空間101および外側の少なくとも一方に配置されている。電源装置2は、VPコイル11に交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を液体に印加して電気刺激を藻類に与える。
【0032】
これにより、藻類を含む液体に電極を接触させることなく藻類に電気刺激が与えられる。したがって、藻類への電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって藻類の増殖が促進される。
【0033】
実施の形態2.
【0034】
図3は、実施の形態2におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0035】
実施の形態2では、例えば図3に示すように、バイオリアクタ10は、容器状の部材である。ここでは、バイオリアクタ10は、円筒状の容器である。図3に示すバイオリアクタ10は、上述の藻類を添加された液体を流入させる配管10a、上述の藻類を添加された液体を排出させる配管10b、撹拌装置10c(撹拌羽根、モータなど)、および温度センサなどのセンサ10dを備える。
【0036】
実施の形態2では、バイオリアクタ10において上述の液体が貯留され、上述の液体が貯留される位置(高さ)の外側に、実施の形態1と同様のVPコイル11が配置されている。
【0037】
なお、実施の形態2に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
実施の形態3.
【0039】
図4は、実施の形態3におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0040】
実施の形態3では、例えば図4に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル11の他、VPコイル11を構成するソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材11Aをさらに備える。
【0041】
この強磁性体部材11Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されている。そして、VPコイル11の一端と強磁性体部材11Aの一端11A1(第1接続点)とが互いに電気的に接続されており、電源装置2は、VPコイル11の他端および強磁性体部材11Aの他端11A2(第2接続点)に電圧を印加してVPコイル11に交流電流を導通させる。
【0042】
このように、強磁性体部材11Aが上述の交流電流の経路となり、VPコイル11のいずれか一方の端部側に2つの端子が配置されるため、電源装置2からVPコイル11および強磁性体部材11Aまでの配線の敷設が簡単になるとともに、その配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0043】
なお、実施の形態3に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0044】
実施の形態4.
【0045】
図5は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例(一部)を示す図である。
【0046】
実施の形態4では、例えば図5に示すように、VPコイル11は、同一のコイル軸に沿ってそれぞれ延びコイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。そして、内側ソレノイドコイル11-1の一端と外側ソレノイドコイル11-2の一端が互いに電気的に接続されている。内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものである。したがって、実施の形態4のVPコイル11は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。そして、電源装置2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端および外側ソレノイドコイル11-2の他端に電圧を印加してベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させる。これにより、内側ソレノイドコイル11-1によるベクトルポテンシャルと外側ソレノイドコイル11-2によるベクトルポテンシャルとが同一方向に発生する。
【0047】
なお、実施の形態4に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
実施の形態5.
【0049】
図6は、実施の形態5におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0050】
実施の形態5では、例えば図6に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル11など)は、バイオリアクタ10の収容空間101に配置されている。VPコイルの内部空間において、上述のベクトルポテンシャルに基づき生じる電界が上述の液体に印加される。また、上述の液体が導電性を有する場合、例えば図6に示すように、交流電流I(t)がVPコイル11の内部空間とVPコイル11の外側とを周回的に導通する。なお、ここでは、実施の形態3と同様のベクトルポテンシャルコイル装置1が収容空間101に配置されているが、他の実施の形態と同様のベクトルポテンシャルコイル装置1が収容空間101に配置されていてもよい。
【0051】
なお、ベクトルポテンシャルコイル装置1がバイオリアクタ10の収容空間101に配置される場合、ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル11および強磁性体部材11Aなど)は被覆され、VPコイル11の導線など(つまり、金属部分)が収容空間101内の液体に触れないようになっている。また、電源装置2およびコントローラ3は、バイオリアクタ10の外側に配置されており、電源装置2からVPコイル11までの配線は、バイオリアクタ10から液体が漏洩しないようにバイオリアクタ10の壁面を介して敷設される。
【0052】
なお、実施の形態5に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
実施の形態6.
【0054】
図7は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。図8は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
【0055】
実施の形態6に係る藻類増殖促進装置では、上述の藻類は、光合成性のある藻類であって、バイオリアクタ10は、外部からの培養光を収容空間101に透過させる。
【0056】
実施の形態6では、例えば図7および図8に示すように、VPコイル12は、バイオリアクタ10の収容空間101および外側に配置されている。具体的には、VPコイル12は、収容空間101への培養光の入射側とは反対側の、バイオリアクタ10の外側に配置されている。
【0057】
また、実施の形態6では、VPコイル12は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであり、周方向において開口部を備える。つまり、VPコイル12のコイル軸は1周以上周回されていない。その開口部には、VPコイル12が存在しないため、VPコイル12によって培養光(太陽光、人工光など)の、収容空間101への入射が妨げられない。
【0058】
例えば、VPコイル12の上述のコイル軸は円弧状であり、そのコイル軸(つまり、円弧)を含む円の中心(ここでは、収容空間101の中心軸)から見たVPコイル12(のコイル軸)の一端から他端までの角度(中心角)は、360度未満とされる。これにより、上述の開口部が形成される。例えば、その中心角は、180度でもよく、また、180度未満でもよい。ただし、中心角が大きいほど、湾曲内側方向のベクトルポテンシャルの強度が大きくなるため、中心角が大きいほうが好ましい。この中心角は、0度より大きく360度未満のいずれかの角度とされ、さらに、(a)0度より大きく180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(b)0度より大きく90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(c)0度より大きく45度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(d)0.5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(e)0.5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(e)0.5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(g)2度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(h)2度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(i)2度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(j)2度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(k)2度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(l)5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(m)5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(n)5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(o)5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(p)5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよい。
【0059】
VPコイル12を導通する電流によるベクトルポテンシャルは、電流から離れるにつれて弱くなるが、上述のようにVPコイル12(のコイル軸)は、湾曲しているため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、VPコイル12の各位置の電流で発生したベクトルポテンシャルが重なり合うので強度が大きくなる。
【0060】
さらに、実施の形態6に係る藻類増殖促進装置は、バイオリアクタ10とVPコイル12との間に、収容空間101の内部へ培養光を反射する反射層21をさらに備える。これにより、液体内の藻類に照射される培養光の光量が増加する。例えば、上述の中心角の角度範囲の全部または一部に反射層21が設けられる。例えば、反射層21は、アルミ蒸着などでバイオリアクタ10表面に形成された金属膜、アルミ蒸着などで形成された金属膜を有する、バイオリアクタ10表面と略同一の形状に部材である。なお、反射層21が金属膜である場合でも、ベクトルポテンシャルは金属で遮蔽されないため、VPコイル12の交流電流によって収容空間101内でベクトルポテンシャルが発生する。
【0061】
また、実施の形態6に係る藻類増殖促進装置は、互いに同一な複数のVPコイル12を備えている。そのVPコイル12は、パイプ状のバイオリアクタ10の軸方向に沿って配列されている。
【0062】
電源装置2は、複数のVPコイル12に交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電圧に対応する交流電流を、収容空間101内の液体に導通させて電気刺激をその液体内の藻類に与える。VPコイル12は、電気的に、互いに直列または並列に接続されており、各時点で同一方向にベクトルポテンシャルを発生させる。
【0063】
なお、実施の形態6に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0064】
実施の形態7.
【0065】
図9は、実施の形態7におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0066】
実施の形態7では、例えば図9に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としてのソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Aをさらに備える。強磁性体部材12Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されている。また、VPコイル12の一端と強磁性体部材12Aの一端12A1(第1接続点)とが互いに電気的に接続されている。電源装置2は、VPコイル12の他端および強磁性体部材12Aの他端12A2(第2接続点)に電圧を印加してVPコイル12に交流電流を導通させる。
【0067】
強磁性体部材12Aの実効透磁率に応じてベクトルポテンシャルが増強されるため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、ベクトルポテンシャルの強度が大きくなる。
【0068】
VPコイル12のコイル軸は1周以上周回していないので、VPコイル12の両端の距離が大きくなるが、強磁性体部材12Aが電流の経路となり、VPコイル12のいずれか一方の端部側に2つの端子が配置されるため、電源装置2からVPコイル12および強磁性体部材12Aまでの配線の敷設が簡単になるとともに、その配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0069】
なお、実施の形態7に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、実施の形態6と同様であるので、その説明を省略する。
【0070】
実施の形態8.
【0071】
図10は、実施の形態8におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0072】
実施の形態8では、例えば図10に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としてのソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Bをさらに備える。強磁性体部材12Bは、導電性を有し、VPコイル12の一端と強磁性体部材12Bの接続点12B1(VPコイル12の一端側の箇所、第1接続点)とが互いに電気的に接続されている。電源装置2は、VPコイル12の他端および強磁性体部材12Bの接続点12B2(VPコイル12の他端側の箇所、第2接続点)に電圧を印加してVPコイル12に交流電流を導通させる。
【0073】
さらに、強磁性体部材12Bの接続点12B1,12B2から外側(湾曲外側方向)へ向かって湾曲しており、強磁性体部材12Bは、ギャップGを介して閉磁路を形成している。なお、ギャップGによってVPコイル12の湾曲の外側の部分を電流が導通しないようになっている。
【0074】
また、強磁性体部材12Bにおける内側部分と外側部分との移行部分は、磁束の漏洩や曲げ加工による透磁率減少の影響を小さくするために、急峻な屈曲箇所のないように、連続的に滑らかな曲線状とされることが好ましい。また、強磁性体部材11Bは複数部材を連結して形成されるようにしてもよい。
【0075】
なお、実施の形態8に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、実施の形態6と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
実施の形態9.
【0077】
図11は、実施の形態9におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0078】
実施の形態9では、例えば図11に示すように、VPコイル12は、同一のコイル軸に沿ってそれぞれ延び互いに異なるコイル径の内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2を備える。内側ソレノイドコイル12-1の一端と外側ソレノイドコイル12-2の一端が互いに電気的に接続されている。電源装置2は、内側ソレノイドコイル12-1の他端および外側ソレノイドコイル12-2の他端に電圧を印加してVPコイル12に交流電流を導通させる。
【0079】
内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものである。したがって、実施の形態9のVPコイル12は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。そして、電源装置2は、内側ソレノイドコイル12-1の他端および外側ソレノイドコイル12-2の他端に電圧を印加してベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させる。これにより、内側ソレノイドコイル12-1によるベクトルポテンシャルと外側ソレノイドコイル12-2によるベクトルポテンシャルとが同一方向に発生する。
【0080】
なお、実施の形態9に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、実施の形態6と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
実施の形態10.
【0082】
図12は、実施の形態10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0083】
実施の形態10では、例えば図12に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としての内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2のコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Cをさらに備える。なお、強磁性体部材12Cは、内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2とは電気的に接続されていない。
【0084】
なお、実施の形態10に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、実施の形態9と同様であるので、その説明を省略する。
【0085】
実施の形態11.
【0086】
図13は、実施の形態11におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0087】
実施の形態11では、例えば図13に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としての内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2のコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Dを備える。
【0088】
さらに、強磁性体部材12Dは、VPコイル12の両端から外側へ向かって湾曲しつつ延びており、閉磁路を形成している。なお、強磁性体部材12Dは、内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2とは電気的に接続されていない。強磁性体部材12Dは、導電性を有していなくてもよく、ギャップは設けられていない。実施の形態11では、交流電流が内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2を導通し強磁性体部材12Dを導通しないため、強磁性体部材12Dは導電性やギャップを必要としない。
【0089】
なお、実施の形態11に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、実施の形態9と同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
実施の形態12.
【0091】
図14は、実施の形態12におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。図15は、実施の形態12におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0092】
実施の形態12に係る藻類増殖促進装置は、例えば図14および図15に示すように、互いに同一な複数のVPコイル13を備えている。実施の形態12では、各VPコイル13は、互いに同一な、直線状のコイル軸のソレノイドコイルである。それらのVPコイル13は、パイプ状のバイオリアクタ10の周方向に沿って配列されている。
【0093】
電源装置2は、複数のVPコイル13に交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電圧に対応する交流電流を、収容空間101内の液体に導通させて電気刺激をその液体内の藻類に与える。VPコイル13は、電気的に、互いに直列または並列に接続されており、各時点で同一方向にベクトルポテンシャルを発生させる。
【0094】
収容空間101の中心から所定の中心角θの角度範囲内に、(ここでは均等な角度間隔で)複数のVPコイル13が配列されている。2つのVPコイル13の間の中間位置では2つのVPコイル13のベクトルポテンシャルが相殺されるため、例えば、この中心角θは180度未満のいずれかの角度とされる。
【0095】
なお、実施の形態12に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0096】
実施の形態13.
【0097】
図16は、実施の形態13におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0098】
実施の形態13では、例えば図16に示すように、VPコイル11は、バイオリアクタ10(主液路)の外側に配置されている。さらに、バイオリアクタ10は、主液路とは別に、VPコイル11の配置位置の上流側と下流側とを接続する副液路10Aを備える。したがって、VPコイル11によって発生した交流電流が副液路10A内の液体に導通して電気刺激が上述の藻類に与えられる。つまり、主液路および副液路における液体に交流電流I(t)が周回的に導通する。
【0099】
なお、例えば図16に示すように、副液路10Aに、非金属性(例えば樹脂製)の多孔質フィルタ10Bを設けるようにしてもよい。その場合、多孔質フィルタ10Bは、上述の藻類を透過させないが、上述の液体を透過させる。したがって、多孔質フィルタ10Bがあっても上述の交流電流I(t)は副液路10Aを導通する。また、副液路10Aにも同様のVPコイル11を設置してもよい。その場合、副液路10AのVPコイル11は、主液路のVPコイル11により生成される交流電流I(t)と同一の向きの交流電流が生成されるように設置される。
【0100】
なお、実施の形態13に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0101】
実施の形態14.
【0102】
図17は、実施の形態14におけるバイオリアクタ10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0103】
実施の形態14では、例えば図17に示すように、バイオリアクタ10は、培養槽41と、培養槽41に接続され液体を循環させる循環配管42と、循環配管42に設けられたポンプ43とを備え、VPコイル11は、循環配管42に設置されている。実施の形態14では、ポンプ43によって、所定の流速(流量)で上述の液体が、培養槽41および循環配管42を循環しており、循環配管42において、液体内の藻類に、VPコイル11によって上述の電気刺激が与えられる。なお、ここでは、ポンプ43において上述の液体が接触する箇所は、樹脂などで覆うか、樹脂などの非金属性の部材を使用し、上述の液体が金属に接触しないようにしている。
【0104】
ここでは、上述の液体が導電性を有しており、ポンプ43の取込口内の液体から排出口内の液体まで導電性が確保されており、培養槽41の液位が所定の基準液位以上となるように、培養槽41内に上述の液体が収容されている場合、上述の交流電流が、培養槽41および循環配管42内の液体、並びにポンプ43を導通する。ここでは、基準液位は、循環配管42の排出口42aの高さに設定されている。
【0105】
なお、培養槽41の液位が所定の基準液位未満であっても、十分な流速(流量)で液体が循環している場合には、排出口42aから排出された液体が培養槽41の液位まで連続するため、その場合も、上述の交流電流が、培養槽41および循環配管42内の液体およびポンプ43を導通する。なお、十分な流速(流量)で液体が循環していない場合には、排出口42aから排出された液体が液滴状で培養槽41の液位に落下するため、その場合には、上述の交流電流が、培養槽41および循環配管42内の液体、並びにポンプ43を導通しない。この場合、上述の交流電流は導通しないが、上述の電界は、循環している液体に印加される。したがって、培養槽41内の液位およびポンプ43による液体の循環流速(流量)を調整して、上述の交流電流の導通の有無を選択するようにしてもよい。
【0106】
なお、実施の形態14に係る藻類増殖促進装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0107】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0108】
例えば、上記実施の形態1~14のいずれかにおいて、バイオリアクタ10は、レースウェイ方式の培養槽であってもよく、その場合、その収容空間(藻類を含む液体が収容される空間)に上述のVPコイル11,12,13が配置されるか、培養槽の底部および/または側面の外側にVPコイル11,12,13が配置される。
【0109】
また、上記実施の形態1~14のいずれかにおけるバイオリアクタ10は、例示されているものに限定されず、パイプ状のバイオリアクタ、容器状のバイオリアクタ、レースウェイ方式のバイオリアクタなどといった種々の形態のいずれかとしてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態4,9~11では、VPコイル12が、径方向において、内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2の2層構造となっているが、層数が偶数であれば、4層以上の層数でもよい。その場合、すべての層のソレノイドコイル12-iが電気的に直列接続されるように、ソレノイドコイル12-iのいずれかの端部で次層のソレノイドコイル12-(i+1)に接続される。
【0111】
また、上記実施の形態1~14では、VPコイル11,12,13がバイオリアクタ10の収容空間101および外側の一方のみに配置されているが、VPコイル11がバイオリアクタ10の収容空間101および外側の両方に配置されていてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態1~4,6~14において、ベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイル11,12,13)がバイオリアクタ10の外側に配置される代わりに、そのベクトルポテンシャルコイル装置1がバイオリアクタ10の収容空間101に配置されるようにしてもよい。
【0113】
なお、上記実施の形態1~14のいずれかにおいて、上述の藻類が添加される液体が導電性を有する場合には、上述のようにベクトルポテンシャルによって発生する交流電界に加えて交流電流が電気刺激として藻類に印加され、上述の藻類が添加される液体が導電性を有さない場合には、その液体に電流が流れなくても上述のようにベクトルポテンシャルによって発生する交流電界が電気刺激として藻類に印加される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、例えば、藻類の増殖促進に適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 ベクトルポテンシャルコイル装置
2 電源装置
3 コントローラ
10 バイオリアクタ
10A 副液路
11,12,13 ベクトルポテンシャルコイル
11-1,12-1 内側ソレノイドコイル
11-2,12-2 外側ソレノイドコイル
11A,11B,12A,12B,12C,12D 強磁性体部材
21 反射層
41 培養槽
42 循環配管
43 ポンプ
101 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17