(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180550
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】放送システム、中継装置、及び算出装置
(51)【国際特許分類】
H04H 20/06 20080101AFI20231214BHJP
H04H 20/67 20080101ALI20231214BHJP
H04H 20/18 20080101ALI20231214BHJP
【FI】
H04H20/06
H04H20/67
H04H20/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093938
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】川島 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(57)【要約】
【課題】設備コストを増大させたり送信信号の改変を伴ったりせずに、中継装置間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することを可能にする。
【解決手段】放送システム1は、OFDMフレームにより構成された放送信号を第1の周波数で送信する親局20と、前記親局20から送信された前記放送信号を受信し、受信した前記放送信号を第2の周波数で送信する複数の中継装置30と、前記複数の中継装置30からの前記放送信号の送信時間差を算出する算出装置10とを備え、前記複数の中継装置30の各々は、前記受信した放送信号を送信する送信時刻と、基準時間信号との時間差を測定して、当該時間差を示す時間情報を前記算出装置10へ送信し、前記算出装置10は、前記複数の中継装置30の各々が測定した前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置30の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDMフレームにより構成された放送信号を第1の周波数で送信する親局と、
前記親局から送信された前記放送信号を受信し、受信した前記放送信号を第2の周波数で送信する複数の中継装置と、
前記複数の中継装置からの前記放送信号の送信時間差を算出する算出装置と
を備え、
前記複数の中継装置の各々は、前記受信した放送信号を送信する送信時刻と、基準時間信号との時間差を測定して、当該時間差を示す時間情報を前記算出装置へ送信し、
前記算出装置は、前記複数の中継装置の各々が測定した前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、
放送システム。
【請求項2】
前記算出装置は、前記複数の中継装置の各々から最も互いに近接した時刻に受信した前記時間情報が示す前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、請求項1に記載の放送システム。
【請求項3】
前記複数の中継装置は、前記OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けて、前記時間差を示す前記時間情報を前記算出装置へ送信し、
前記算出装置は、同一の前記識別情報に対応付けられた前記時間情報が示す前記時間差に基づき、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、
請求項2に記載の放送システム。
【請求項4】
前記算出装置は、
複数の前記時間情報が示す前記時間差の集合から、前記複数の中継装置の間における実際の送信時間差を反映した時間差を抽出し、
抽出された前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、
請求項3に記載の放送システム。
【請求項5】
前記複数の中継装置は、前記OFDMフレームを識別する前記識別情報として、前記OFDMフレームのFECブロックポインタと、前記OFDMフレーム中の一部又は全てのLchの復調結果と、前記OFDMフレーム中の一部又は全ての本線信号の復調結果との少なくともいずれかを対応付けて、前記時間情報を前記算出装置へ送信する、請求項3に記載の放送システム。
【請求項6】
親局から第1の周波数で送信されたOFDMフレームにより構成された放送信号を受信し、
受信した前記放送信号を第2の周波数で送信し、
前記受信した放送信号を送信する送信時刻と、基準時間信号との時間差を測定して、当該時間差を示す時間情報を、複数の中継装置からの前記放送信号の送信時間差を算出する算出装置へ送信する、
中継装置。
【請求項7】
前記OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けて、前記時間差を示す前記時間情報を前記算出装置へ送信する、請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
OFDMフレームにより構成された放送信号を中継する複数の中継装置の各々から、前記放送信号を送信する送信時刻と基準時間信号との時間差を示す時間情報を受信し、
前記複数の中継装置の各々から受信した前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、
算出装置。
【請求項9】
前記複数の中継装置の各々から最も互いに近接した時刻に受信した前記時間情報が示す前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、請求項8に記載の算出装置。
【請求項10】
前記複数の中継装置の各々から、前記OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けられた、前記時間差を示す前記時間情報を受信し、
同一の前記識別情報に対応付けられた前記時間情報が示す前記時間差に基づき、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する、
請求項8に記載の算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放送システム、中継装置、及び算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送の高品質化及び高機能化に向けて、現行の地上デジタル放送の伝送方式であるISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrial)方式の特長を継承した次世代地上放送の伝送方式(以下「高度化方式」と称する。)の検討が進められている(非特許文献1参照)。
【0003】
高度化方式は、現行の地上デジタル放送と同様に、マルチパス耐性の高いOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式を採用しており、SFN(Single Frequency Network)による放送ネットワークの構築が可能である。SFNとは、隣接する放送エリアにおいて同一の放送チャンネルで同一の信号を送信するネットワークをいう。SFNを実現するためには、複数の送信機からの信号波形を同期させる必要がある。ただし、送信されるOFDM信号はガードインターバルという時間的な干渉緩和成分を含んでおり、SFNを構築する際には、サービスエリアにおける受信機への複数の同一の到来波の時間差がガードインターバルの範囲内となればよい。そのため、SFNを構築する中継装置間では、送信タイミングを調整してその時間差を一定範囲内にする必要がある。
【0004】
ISDB-T方式において送信タイミングを調整する手法として、放送信号に時間情報信号であるNSI(Network Synchronization Information)を多重し、NSIに基づき時間を調整することが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたISDB-TにおけるSFNでは、時刻情報をNSIパケットとしてAC(Auxiliary Channel)キャリアを用いて伝送する。
【0005】
地上放送ネットワークにおける信号中継方式には、TTL(Transmitter to Transmitter Link)と呼ばれる専用回線によって放送信号の情報を伝送する手法と、上位局の放送波を受信して再送信する放送波中継と呼ばれる手法がある。受信した上位局の放送波の周波数とは異なる周波数で放送波を再送信する放送波中継は、MFN(Multi Frequency Network)放送波中継という。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NHK技研R&D、No.172、P.2~P.47、2018年11月
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高度化方式においては、MFN放送波中継を行う複数の中継装置によりSFNを構築することが検討されている。このような構成を実現するためには、複数の中継装置間において放送波の送信タイミングを調整して同期させることが必要となり、局同士の送信タイミングを把握する必要がある。
【0009】
しかし、このような構成を実現するために特許文献1のように、時刻情報をNSIパケットとして伝送する手法を用いると、放送信号とは別にNSIパケットの多重が必要となる。そのため、高度化方式においてNSIパケットを多重するには、設備コストが増加するとともに、別途冗長ビットの割り当てが必要となる。
【0010】
本開示の目的は、設備コストを増大させたり送信信号の改変を伴ったりせずに、中継装置間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することが可能な放送システム、中継装置、及び算出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本開示の一態様としての放送システムは、OFDMフレームにより構成された放送信号を第1の周波数で送信する親局と、前記親局から送信された前記放送信号を受信し、受信した前記放送信号を第2の周波数で送信する複数の中継装置と、前記複数の中継装置からの前記放送信号の送信時間差を算出する算出装置とを備え、前記複数の中継装置の各々は、前記受信した放送信号を送信する送信時刻と、基準時間信号との時間差を測定して、当該時間差を示す時間情報を前記算出装置へ送信し、前記算出装置は、前記複数の中継装置の各々が測定した前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【0012】
(2)(1)に記載の放送システムにおいて、前記算出装置は、前記複数の中継装置の各々から最も互いに近接した時刻に受信した前記時間情報が示す前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【0013】
(3)(2)に記載の放送システムにおいて、前記複数の中継装置は、前記OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けて、前記時間差を示す前記時間情報を前記算出装置へ送信し、前記算出装置は、同一の前記識別情報に対応付けられた前記時間情報が示す前記時間差に基づき、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【0014】
(4)(3)に記載の放送システムにおいて、前記算出装置は、複数の前記時間情報が示す前記時間差の集合から、前記複数の中継装置の間における実際の送信時間差を反映した時間差を抽出し、抽出された前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【0015】
(5)(3)又は(4)に記載の放送システムにおいて、前記複数の中継装置は、前記OFDMフレームを識別する前記識別情報として、前記OFDMフレームのFECブロックポインタと、前記OFDMフレーム中の一部又は全てのLchの復調結果と、前記OFDMフレーム中の一部又は全ての本線信号の復調結果との少なくともいずれかを対応付けて、前記時間情報を前記算出装置へ送信する。
【0016】
(6)本開示の一態様としての中継装置は、親局から第1の周波数で送信されたOFDMフレームにより構成された放送信号を受信し、受信した前記放送信号を第2の周波数で送信し、前記受信した放送信号を送信する送信時刻と、基準時間信号との時間差を測定して、当該時間差を示す時間情報を、複数の中継装置からの前記放送信号の送信時間差を算出する算出装置へ送信する。
【0017】
(7)(6)に記載の中継装置において、前記OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けて、前記時間差を示す前記時間情報を前記算出装置へ送信する。
【0018】
(8)本開示の一態様としての算出装置は、OFDMフレームにより構成された放送信号を中継する複数の中継装置の各々から、前記放送信号を送信する送信時刻と基準時間信号との時間差を示す時間情報を受信し、前記複数の中継装置の各々から受信した前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【0019】
(9)(8)に記載の算出装置において、前記複数の中継装置の各々から最も互いに近接した時刻に受信した前記時間情報が示す前記時間差に基づいて、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【0020】
(10)(8)に記載の算出装置において、前記複数の中継装置の各々から、前記OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けられた、前記時間差を示す前記時間情報を受信し、
同一の前記識別情報に対応付けられた前記時間情報が示す前記時間差に基づき、前記複数の中継装置の間における前記放送信号の送信時間差を算出する。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一実施形態によれば、設備コストを増大させたり送信信号の改変を伴ったりせずに、中継装置間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係る放送システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の中継装置30が備える時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
【
図3】OFDMフレームと基準信号との時間差を模式的に示す図である。
【
図4A】
図1の中継装置30aから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
【
図4B】
図1の中継装置30bから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図1の各中継装置30から送信される時間情報及びその差分の一例を示す図である。
【
図6】
図1の中継装置30の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1の算出部12の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図1の中継装置30が備える時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
【
図9】OFDMフレームと基準信号との時間差を模式的に示す図である。
【
図10A】
図1の中継装置30aから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
【
図10B】
図1の中継装置30bから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図1の各中継装置30から送信される時間情報及びその差分の一例を示す図である。
【
図12】
図1の各中継装置30から送信される時間情報及びその差分の一例を示す図である。
【
図13】
図1の中継装置30が備える時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
【
図14】
図1の中継装置30が備える時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
【
図15】
図1の中継装置30の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図1の算出部12の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本開示の一実施形態に係る放送システム1の構成例を示すブロック図である。放送システム1は、高度化方式を実現するための放送ネットワークに設けられ、演奏所10、親局20、及び複数の中継装置30(30a,30b)を備える。演奏所10は放送信号を生成し、その放送信号を親局20へ送信する。親局20は、演奏所10から受信した放送信号をOFDMフレームに変調し、そのOFDMフレームをXch(第1の周波数)の通信チャネルを用いた放送波として中継装置30(30a,30b)へ送信する。各中継装置30(30a,30b)は、受信したOFDMフレームに対して遅延制御等の処理をした上で、Ych(第2の周波数)の通信チャネルを用いて再送信する。また、各中継装置30(30a,30b)は、基準時間信号とOFDMフレームの送信時刻との時間的差分を示す時間情報を取得し、例えば演奏所10に設けられた算出部12へ送信する。各中継装置30(30a,30b)と算出部12とは監視用回線等の専用回線により接続されており、時間情報はこの専用回線により伝送されてもよい。各中継装置30(30a,30b)は、同一の周波数チャネル(Ych)上で同一の信号を同時に送信するSFNを構成する。
【0025】
放送システム1は、放送ネットワークにおいてMFN放送波を中継する複数の中継装置30(30a,30b)間における送信時間差を測定する。本実施形態では、2つのMFN放送波の中継装置30a,30b間の送信時間差を測定する例について述べるが、本実施形態に係る構成はTTL中継装置にも適用可能である。また、放送システム1は、3つ以上の中継装置30を備えてもよい。放送システム1は、2つ以上の演奏所10及び親局20を備えてもよい。
【0026】
本実施形態に係る算出装置としての演奏所10は、生成部11及び算出部12を備える。生成部11は、放送対象の映像、音声、及びテキスト情報等を表す放送信号を生成する。演奏所10は、生成部11が生成した放送信号をSTL(Studio to Transmitter Link)を通じて親局20へ送信する。算出部12は、複数の中継装置30(30a,30b)の各々から受信した時間情報に基づき、中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差を算出する。演奏所10は、算出部12が算出した送信時間差を、例えば各中継装置30(30a,30b)へ送信してもよい。本実施形態では、算出部12が演奏所10に設けられた例を説明するが、算出部12は演奏所10以外の場所に設けられてもよい。演奏所10以外の装置に算出部12が設けられた場合、その装置は算出装置として機能する。
【0027】
親局20は、OFDM変調部21及び送信部22を備える。OFDM変調部21は、演奏所10から受信した放送信号を変調してOFDMフレームを生成する。高度化方式は、誤り訂正符号の内符号にLDPC(Low-Density-Parity-Bit)符号、外符号にBCH符号を用いることで伝送耐性をISDB-Tから向上させることが検討されている。このような誤り訂正符号化において、FEC(Forward Error Correction)ブロックは、FECブロックヘッダ、主信号、及びパリティビットを含む単位ブロックとして構成される。伝送パラメータ等の情報であるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)に記述されるFECブロックポインタは、OFDMフレームにおけるFECブロックの開始位置を指定する。このFECブロックポインタの値はOFDMフレーム毎に変化する。OFDM変調部21は、各OFDMフレームにこのようなFECブロックポインタを付加する。
【0028】
送信部22は、OFDM変調部21により生成されたOFDMフレームを、Xchの通信チャネルを用いた放送波として複数の中継装置30(30a,30b)へ送信する。
【0029】
中継装置30(30a,30b)は、受信変換部31(31a,31b)、補償部32(32a,32b)、遅延制御部33(33a,33b)、送信部34(34a,34b)、及び時間情報取得部35(35a,35b)を備える。以下、複数の中継装置30(30a,30b)が同一の構成を備える場合の例を説明するが、各中継装置30(30a,30b)は異なる構成としてもよい。
【0030】
受信変換部31(31a,31b)は、親局20から受信したOFDMフレームを示す信号の周波数を、放送システム1内の全ての中継装置30(30a,30b)に共通の周波数である中間周波数(例えば、37.15MHz)に変換する。受信変換部31(31a,31b)は、任意の周波数変換処理を用いて周波数変換を行ってもよい。
【0031】
補償部32(32a,32b)は、受信信号に補償処理を行って、親局20及び中継装置30(30a,30b)間における伝送路で劣化した信号品質を改善する。補償部32(32a,32b)は、任意の補償処理を用いて補償処理を行ってもよい。
【0032】
遅延制御部33(33a,33b)は、信号の送信時間を制御する。遅延制御部33(33a,33b)は、例えば、演奏所10の算出部12から受信した送信時間差に基づき送信信号を遅延させ、各中継装置30(30a,30b)から送信される同一の送信信号の時間差がガードインターバルの範囲内になるようにする。
【0033】
送信部34(34a,34b)は、遅延制御部33(33a,33b)から出力された信号をYchの通信チャネルを用いた放送波として送信する。送信部34(34a,34b)は、例えば、遅延制御部33(33a,33b)から出力された信号について、中間周波数から送信周波数(Ychの周波数)に変換し、信号電力を増幅した上で送信してもよい。
【0034】
時間情報取得部35(35a,35b)は、OFDMフレームの送信時刻と基準時間信号との時間的差分を示す時間情報を取得する。時間情報取得部35(35a,35b)は、送信部34(34a,34b)から送信信号を受信するとともに、外部から基準時刻を示す基準時間信号を受信する。時間情報取得部35(35a,35b)は、このような基準時間信号として、例えば、GPS(Global Positioning System)で用いられる1PPS(Pulse Per Second)信号を受信してもよい。1PPS(Pulse Per Second)信号は、GPSにおけるナブスター(NAVSTAR:Navigation Satellites with Time And Ranging)衛星から送信される信号であり、厳密に1秒に1パルスを出力する信号である。基準時間信号として1PPS信号を用いる場合、時間情報取得部35(35a,35b)は、GPS受信機により1PPS信号を受信してもよい。なお、時間情報取得部35(35a,35b)は、基準時間信号として、全ての中継装置30(30a,30b)において同期された時刻情報であれば、GPSの1PPS信号以外の信号を取得してもよい。例えば、時間情報取得部35(35a,35b)は、UTC(Coordinated Universal Time)時刻に同期された信号を基準時間信号として取得してもよい。
【0035】
時間情報取得部35(35a,35b)は、各OFDMフレームについて、その送信時刻と基準時間信号との時間的差分を取得する。なお、時間情報取得部35(35a,35b)は、基準時間信号に加えて、一定周波数の基準周波数信号を取得してもよい。例えば、時間情報取得部35(35a,35b)は、基準時間信号及び基準周波数信号を取得し、OFDMフレームの開始タイミングと基準時間信号との時間差を基準周波数信号によってカウントし、カウントしたカウント値を、OFDMフレームの送信時刻と基準時間信号との時間的差分として取得してもよい。時間情報取得部35(35a,35b)は、このような基準周波数信号をGPSのナブスター衛星から受信してもよい。本実施形態では、一例として、基準時間信号に1PPS信号、基準周波数信号に10MHzを示す信号用いる場合について説明する。
【0036】
時間情報取得部35(35a,35b)は、算出したOFDMフレームの送信時刻と基準時間信号との時間的差分を示す時間情報を、中継装置30(30a,30b)に設置された監視制御用回線等により、演奏所10に設けられた算出部12へ送信する。前述のように、本実施形態では算出部12が演奏所10に設置された例を説明するが、算出部12は演奏所10に設置する必要はなく、別の場所に設置されてもよい。
【0037】
図2は、
図1の中継装置30(30a,30b)が備える時間情報取得部35(35a,35b)の構成例を示すブロック図である。
図2の時間情報取得部35は、フレーム同期部351及び時間差測定部352を備える。フレーム同期部351は、送信された信号に対してフレーム同期をとる。例えば、フレーム同期部351は、送信部34からOFDMフレームが送信されるたびにその送信に同期された同期信号を出力してもよい。フレーム同期部351は、OFDMフレームの先頭ビット又は末尾ビット等の、OFDMフレームの特定の部分が送信されたことに応じて同期信号を出力してもよい。
【0038】
時間差測定部352は、フレーム同期部351から出力された同期信号を受信した時刻と、その同期信号の受信の直前に基準時間信号を受信した時刻との差分を測定する。すなわち、時間差測定部352は、同期信号の各々について、その同期信号よりも早くかつ最も近い時間に基準時間信号を受信してからその同期信号を受信するまでの経過時間を測定する。時間差測定部352は、このような時間的差分を示す時間情報を生成し、算出部12へ送信する。
【0039】
図3は、OFDMフレームと基準信号との時間差を模式的に示す図である。
図3は、中継装置30aから送信された各OFDMフレーム101(101a~101e)、中継装置30aが受信する1PPS信号105a,105b、中継装置30bから送信された各OFDMフレーム102(102a~102e)、及び中継装置30bが受信する1PPS信号105c,105dの時間的関係を示している。
図4Aは、
図1の中継装置30aから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
図4Bは、
図1の中継装置30bから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
【0040】
図3の例では、中継装置30aにおいて、OFDMフレーム101aの末尾ビットの送信の直前に1PPS信号105aが受信されている。OFDMフレーム101aは、1PPS信号105aの受信時刻から時間t1_kだけ経過した時刻に送信されている。同様に、OFDMフレーム101b~101dは、1PPS信号105aの受信時刻から時間t1_k+1~t1_k+3だけ経過した時刻に送信されている。OFDMフレーム101dの送信後、OFDMフレーム101eの送信前に1PPS信号105bが受信されている。OFDMフレーム101eは、1PPS信号105bの受信時刻から時間t1_k+4だけ経過した時刻に送信されている。このように、中継装置30aが備える時間情報取得部35aの時間差測定部352は、OFDMフレーム101a~101eについて、時間的差分T1(t1_k~t1_k+4)を測定し、これらの時間的差分T1を示す時間情報を生成して、算出部12へ送信する。すなわち、中継装置30aの時間差測定部352は、
図4Aに示すように、時間的差分T1(t1_k~t1_k+4)を示す時間情報を順に生成し、算出部12へ送信する。
【0041】
同様に、
図3の例では、中継装置30bは、OFDMフレーム102a~102eを順次送信している。前述のように、中継装置30bが受信する1PPS信号105c,105dは、中継装置30aが受信する1PPS信号105a,105bと同期している。
図3の例では、OFDMフレーム102aは、1PPS信号105cの受信時刻から時間t2_lだけ経過した時刻に送信されている。同様に、OFDMフレーム102b~102dは、1PPS信号105cの受信時刻から時間t2_l+1~t2_l+3だけ経過した時刻に送信されている。OFDMフレーム102dの送信後、OFDMフレーム102eの送信前に1PPS信号105dが受信されている。OFDMフレーム102eは、1PPS信号105dの受信時刻から時間t2_l+4だけ経過した時刻に送信されている。これに伴い、中継装置30bが備える時間情報取得部35bの時間差測定部352は、OFDMフレーム102a~102eについて、時間的差分T2(t2_l~t2_l+4)を測定し、これらの時間的差分T2を示す時間情報を生成して、算出部12へ送信する。すなわち、中継装置30bの時間差測定部352は、
図4Bに示すように、時間的差分T2(t2_l~t2_l+4)を示す時間情報を順に生成し、算出部12へ送信する。
【0042】
算出部12は、中継装置30a,30bから受信した時間的差分T1,T2の差|T1-T2|を算出する。本実施形態では、算出部12は、各中継装置30(30a,30b)がOFDMフレームを送信した送信時刻と基準時間信号との時間的差分T1,T2を各中継装置30(30a,30b)から受信するが、OFDMフレームの識別情報は受信しない。しかし、放送ネットワークにおいて放送波の送受信は高速に行われるため、一般的に中継装置30(30a,30b)間の送信時間差はOFDMフレーム長に対して十分小さいことが多い。そのため、差|T1-T2|が所定値(例えば500ms)未満の場合、時間的差分T1,T2は同一の放送信号に関する時間的差分であると考えられる。そこで、本実施形態において、算出部12は、差|T1-T2|が所定値未満か否かを判定し、所定値未満の場合は、T1-T2を中継装置30(30a,30b)間の送信時間差として算出する。
【0043】
本実施形態では、各中継装置30(30a,30b)においてOFDMフレームの送信時刻と基準時間信号との時間的差分を算出し、その時間的差分を示す時間情報を算出部12に集約するだけで、中継装置30間の送信時間差を算出することができる。したがって、本実施形態に係る構成によれば、NSIパケットを多重した場合のように、設備コストを増大させたり送信信号の改変を伴ったりせずに、中継装置30間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することが可能である。
【0044】
図5は、
図1の各中継装置30から送信される時間情報及びその差分の一例を示す図である。
図5の例では、親局20は、0.3s(300ms)毎に1つのOFDMフレームを送信している。例えば、OFDMフレームのフレーム長は300msである。すなわち、親局20からのOFDMフレームの送信時刻は、
図5のように、0s,0.3s,0.6s,0.9s,1.2s,・・・となる。この場合、親局20がOFDMフレームを送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分は、0s,0.3s,0.6s,0.9s,0.2s,・・・となる。
【0045】
図5の例において、中継装置30aは、親局20がOFDMフレームを送信してから0.1sだけ遅れて、そのOFDMフレームを再送信している。すなわち、中継装置30aからのOFDMフレームの(再)送信時刻は、
図5のように、0.1s,0.4s,0.7s,1s,1.3s,・・・となる。この場合、中継装置30aがOFDMフレームを(再)送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分T1は、0.1s,0.4s,0.7s,0s,0.3s,・・・となる。中継装置30aの時間情報取得部35aは、このような差分T1を示す情報を時間情報として算出部12へ送信する。
【0046】
図5の例において、中継装置30bは、親局20がOFDMフレームを送信してから0.11sだけ遅れて、そのOFDMフレームを再送信している。すなわち、中継装置30bからのOFDMフレームの(再)送信時刻は、
図5のように、0.11s,0.41s,0.71s,1.01s,1.31s,・・・となる。この場合、中継装置30bがOFDMフレームを(再)送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分T2は、0.11s,0.41s,0.71s,0.01s,0.31s,・・・となる。中継装置30bの時間情報取得部35bは、このような差分T2を示す情報を時間情報として算出部12へ送信する。
【0047】
算出部12は、複数の中継装置30(30a,30b)から受信した時間情報が示す差分T1,T2を比較し、その差分が小さくなるものを同一OFDMフレームについての時間情報として対応付ける。例えば、算出部12は、中継装置30a,30bから差分T1,T2を受信したことに応じて、
図5のように、差分T1,T2毎に表の同一列に差分T1,T2の値を列挙していく場合、受信したT1,T2に対して、最近傍値を探索し、行を揃えることで、二つの信号間の同期をとるようにしてもよい。
【0048】
図5の例では、中継装置30aから送られる差分T1と中継装置30bから送られる差分T2の差T2-T1(-(T1-T2))が+10msである。そこで、算出部12は、中継装置30bの送信時間が中継装置30aに対して10ms遅れていると判定することができる。
【0049】
図6は、
図1の中継装置30(30a,30b)の動作手順の一例を示すフローチャートである。以下の各ステップは、時間差測定部352の制御に基づき実行される。具体的には、例えば、時間差測定部352は1つ以上のプロセッサを含む制御部を備え、以下の各ステップはこの制御部の制御に基づき実行されてもよい。このプロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。以下の各ステップは、中継装置30(30a,30b)が親局20からOFDMフレームを受信する毎に実行される。
【0050】
図6のステップS1において、中継装置30(30a,30b)の時間差測定部352は、OFDMフレームの同期信号を受信する。例えば、時間差測定部352は、フレーム同期部351が出力する同期信号を受信してもよい。
【0051】
ステップS2において、時間差測定部352は、ステップS1で受信したOFDMフレームの同期信号の直前に受信した基準時間信号の受信時刻を取得する。
【0052】
ステップS3において、時間差測定部352は、ステップS1で受信した同期信号の受信時刻と、ステップS2で取得した基準時間信号の受信時刻との時間的差分を算出する。すなわち、中継装置30aの時間差測定部352は時間的差分T1を算出し、中継装置30bの時間差測定部352が算出する時間的差分T2を算出する。
【0053】
ステップS4において、時間差測定部352は、ステップS3で算出した時間的差分を示す時間情報を算出部12へ送信する。そして、時間差測定部352は、フローチャートの処理を終了する。
【0054】
図7は、
図1の算出部12の動作手順の一例を示すフローチャートである。以下の各ステップは、算出部12の制御に基づき実行される。具体的には、例えば、算出部12は1つ以上のプロセッサを含む制御部を備え、以下の各ステップはこの制御部の制御に基づき実行されてもよい。このプロセッサは、CPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。以下の各ステップは、算出部12が中継装置30(30a,30b)から時間情報を取得する毎に実行される。
【0055】
ステップS11において、算出部12は、第1の中継装置(例えば中継装置30a)から時間情報を受信して、その時間情報が示す時間的差分T1を取得する。
【0056】
ステップS12において、算出部12は、第2の中継装置(例えば中継装置30b)から時間情報を受信して、その時間情報が示す時間的差分T2を取得する。
【0057】
ステップS13において、算出部12は、ステップS11で取得したT1と、ステップS12で取得したT2との差分の絶対値|T1-T2|が所定値未満であるか否かを判定する。この所定値は、基準時間信号の時間的間隔よりも小さい値であり、例えば、500ms又は500msよりも小さい値としてもよい。算出部12は、絶対値|T1-T2|が所定値未満である場合(ステップS13でYES)はステップS14へ進み、そうでない場合(ステップS13でNO)はフローチャートの処理を終了する。
【0058】
ステップS14において、算出部12は、T1-T2を中継装置30a,30bの送信時間差として算出する。算出部12は、算出した送信時間差を各中継装置30(30a,30b)の遅延制御部33(33a,33b)へ送信し、送信時間差に応じた遅延制御を行わせるようにしてもよい。そして、算出部12は、フローチャートの処理を終了する。
【0059】
以上のように、放送システム1は、親局20、複数の中継装置30(30a,30b)、及び算出装置としての演奏所10を備える。親局20は、OFDMフレームにより構成された放送信号を第1の周波数(Xchの通信チャネル)で送信する。複数の中継装置30(30a,30b)は、親局20から送信された放送信号を受信し、受信した放送信号を第2の周波数(Ychの通信チャネル)で送信する。演奏所10の算出部12は、複数の中継装置30からの放送信号の送信時間差を算出する。ここで、複数の中継装置30(30a,30b)の各々は、受信した放送信号を送信する送信時刻と、基準時間信号との時間差を測定して、当該時間差を示す時間情報を演奏所10の算出部12へ送信する。演奏所10の算出部12は、複数の中継装置30(30a,30b)の各々が測定した時間差に基づいて、複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出する。
【0060】
このように各中継装置30(30a,30b)においてOFDMフレームの送信時刻と基準時間信号との時間的差分を算出し、その時間的差分を示す時間情報を算出部12に集約するだけで、中継装置30間の送信時間差を算出することができる。したがって、本実施形態に係る構成によれば、NSIパケットを多重した場合のように、設備コストを増大させたり送信信号の改変を伴ったりせずに、中継装置30間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することが可能である。
【0061】
また、本実施形態では、演奏所10の算出部12は、複数の中継装置30(30a,30b)の各々から最も互いに近接した時刻に受信した時間情報が示す時間差に基づいて、複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出する。したがって、本実施形態に係る構成によれば、OFDMフレームを識別することなく簡易な処理により、中継装置30間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することが可能である。
【0062】
<第2実施形態>
第1実施形態では、中継装置30(30a,30b)間での送信時間差がOFDMフレーム長と比べて十分小さい場合を想定して、差|T1-T2|の大きさに基づき時間的差分T1,T2が同一の放送信号に関する時間的差分であるか否かを判定した。しかし、このような構成においては、偶発的に中継装置30(30a,30b)間での送信時間差が大きくなったような場合に、中継装置30(30a,30b)間でのOFDMフレームの対応付け、ひいては時間的差分T1,T2の対応付けを誤る可能性がある。また、前述のように、算出部12が受信したT1,T2に対して、最近傍値を探索し、行を揃えることで、二つの信号間の同期をとる場合、最近傍値の探索範囲を事前に決めておく必要があり、また探索処理も必要になる。
【0063】
そこで、本実施形態では、各中継装置30(30a,30b)においてOFDMフレームの内容からOFDMフレームを識別するための識別情報を取得する。そして、各中継装置30(30a,30b)は、そのOFDMフレームに関する時間的差分T1,T2と識別情報とを対応付けて算出部12へ送信する。これにより、本実施形態によれば、処理を複雑化することなく、時間差算出における誤りを防ぎ、中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差をさらに高い精度で測定することが可能である。
【0064】
本実施形態に係る構成の大部分は第1実施形態と共通する。そこで、第1実施形態に係る構成と相違する構成を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態に係る放送システム1は、第1実施形態と同様に
図1により示されるため、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図8は、
図1の中継装置30が備える時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
図8に示すように、時間情報取得部35は、フレーム同期部351、時間差測定部352、TMCC復調部353、及びFECポインタ識別部354を備える。
図8の構成例は、OFDMフレームごとにFECブロックポインタの値が変化することに着目して、このFECブロックポインタの値を、OFDMフレームを識別する識別情報として使用する。
【0066】
フレーム同期部351は、第1実施形態(
図2)と同様に、送信された信号に対してフレーム同期をとる。例えば、フレーム同期部351は、送信部34からOFDMフレームが送信されるたびにその送信に同期された同期信号を出力してもよい。フレーム同期部351は、OFDMフレームの先頭ビット又は末尾ビット等の特定の部分が送信されたことに応じて同期信号を出力してもよい。
【0067】
TMCC復調部353は、OFDMフレームに含まれるTMCCを復調する。
【0068】
FECポインタ識別部354は、復調により取得されたTMCCに記述されるFECブロックポインタを取得する。これにより、時間情報取得部35に入力されるOFDMフレームのFECブロックポインタが特定された状態となる。本実施形態では、このFECブロックポインタをOFDMフレームの識別情報として使用する。
【0069】
時間差測定部352は、フレーム同期部351から出力された同期信号を受信した時刻と、その同期信号の受信の直前に基準時間信号を受信した時刻との差分を測定する。すなわち、時間差測定部352は、同期信号の各々について、その同期信号よりも早くかつ最も近い時間に基準時間信号を受信してからその同期信号を受信するまでの経過時間を測定する。時間差測定部352は、このような時間的差分を示す時間情報を生成し、そのOFDMフレームの識別情報としてのFECブロックポインタとともに、算出部12へ送信する。
【0070】
なお、
図8の例では、FECポインタ識別部354においてOFDMフレームを特定した後に時間差測定部352に信号を入力しているが、このような構成に限られない。例えば、時間差測定部352において時間差を測定した後に、測定対象のOFDMフレームを特定してもよい。
【0071】
図9は、OFDMフレームと基準信号との時間差を模式的に示す図である。
図9は、中継装置30aから送信された各OFDMフレーム101(101a~101e)、中継装置30aが受信する1PPS信号105a,105b、中継装置30bから送信された各OFDMフレーム102(102a~102e)、及び中継装置30bが受信する1PPS信号105c,105dの時間的関係を示している。OFDMフレーム101a~101e,及び102a~102eには、その識別情報としてのポインタa~ポインタeが対応付けられている。
図10Aは、
図1の中継装置30aから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
図10Bは、
図1の中継装置30bから送信される時間情報の一例を模式的に示す図である。
【0072】
図9の例では、中継装置30aにおいて、OFDMフレーム101aの末尾ビットの送信の直前に1PPS信号105aが受信されている。OFDMフレーム101aは、1PPS信号105aの受信時刻から時間t1_bだけ経過した時刻に送信されている。同様に、OFDMフレーム101b~101dは、1PPS信号105aの受信時刻から時間t1_c~t1_eだけ経過した時刻に送信されている。OFDMフレーム101dの送信後、OFDMフレーム101eの送信前に1PPS信号105bが受信されている。OFDMフレーム101eは、1PPS信号105bの受信時刻から時間t1_fだけ経過した時刻に送信されている。このように、中継装置30aが備える時間情報取得部35aの時間差測定部352は、OFDMフレーム101a~101eについて、時間的差分T1(t1_b~t1_f)を測定し、これらの時間的差分T1を示す時間情報を生成し、FECブロックポインタであるポインタa~ポインタeと対応付けて算出部12へ送信する。すなわち、中継装置30aの時間差測定部352は、
図10Aに示すように、時間的差分T1(t1_b~t1_f)を示す時間情報を順に生成し、ポインタa~ポインタeと対応付けて算出部12へ送信する。
【0073】
同様に、
図9の例では、中継装置30bは、OFDMフレーム102a~102eを順次送信している。前述のように、中継装置30bが受信する1PPS信号105c,105dは、中継装置30aが受信する1PPS信号105a,105bと同期している。
図9の例では、OFDMフレーム102aは、1PPS信号105cの受信時刻から時間t2_bだけ経過した時刻に送信されている。同様に、OFDMフレーム102b~102dは、1PPS信号105cの受信時刻から時間t2_c~t2_eだけ経過した時刻に送信されている。OFDMフレーム102dの送信後、OFDMフレーム102eの送信前に1PPS信号105dが受信されている。OFDMフレーム102eは、1PPS信号105dの受信時刻から時間t2_fだけ経過した時刻に送信されている。これに伴い、中継装置30bが備える時間情報取得部35bの時間差測定部352は、OFDMフレーム102a~102eについて、時間的差分T2(t2_b~t2_f)を測定し、これらの時間的差分T2を示す時間情報を生成し、FECブロックポインタであるポインタa~ポインタeと対応付けて算出部12へ送信する。すなわち、中継装置30bの時間差測定部352は、
図10Bに示すように、時間的差分T2(t2_b~t2_f)を示す時間情報を順に生成し、ポインタa~ポインタeと対応付けて算出部12へ送信する。
【0074】
算出部12は、中継装置30a,30bから受信した時間的差分T1,T2の差T1-T2を同一の識別情報、すなわち、FECブロックポインタにより識別されるOFDMフレームごとに算出する。算出部12は、OFDMフレームごとに算出された差T1-T2に基づき、中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差を測定する。
【0075】
このように本実施形態では、各中継装置30(30a,30b)においてOFDMフレームの送信時刻と基準時間信号との時間的差分を算出し、その時間的差分を示す時間情報をOFDMフレームの識別情報とともに算出部12に集約する。算出部12は、各中継装置30(30a,30b)から受信した時間情報をOFDMフレームの識別情報を用いて対応付けて、中継装置30間の送信時間差を算出する。したがって、本実施形態に係る構成によれば、中継装置30間における放送信号の送信時間差が大きい場合であっても、中継装置30間における放送信号の送信時間差をより高い精度で測定することが可能である。
【0076】
図11は、
図1の各中継装置30から送信される時間情報及びその差分の一例を示す図である。
図11の例では、親局20は、0.3s(300ms)毎に1つのOFDMフレームを送信している。例えば、OFDMフレームのフレーム長は300msである。すなわち、親局20からのOFDMフレームa,OFDMフレームb,OFDMフレームc,OFDMフレームd,OFDMフレームe,・・・の送信時刻は、
図11のように、0s,0.3s,0.6s,0.9s,1.2s,・・・となる。
【0077】
図11の例において、中継装置30aは、親局20がOFDMフレームを送信してから0.1sだけ遅れて、そのOFDMフレームを再送信している。すなわち、中継装置30aからのOFDMフレームa,OFDMフレームb,OFDMフレームc,OFDMフレームd,OFDMフレームe,・・・の(再)送信時刻は、
図11のように、0.1s,0.4s,0.7s,1s,1.3s,・・・となる。この場合、中継装置30aがOFDMフレームを(再)送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分T1は、0.1s,0.4s,0.7s,0s,0.3s,・・・となる。中継装置30aの時間情報取得部35aは、このような差分T1を示す情報にOFDMフレームの識別情報(FECブロックポインタ)対応付けたものを時間情報として算出部12へ送信する。
【0078】
図11の例において、中継装置30bは、親局20がOFDMフレームを送信してから0.15sだけ遅れて、そのOFDMフレームを再送信している。すなわち、中継装置30bからのOFDMフレームa,OFDMフレームb,OFDMフレームc,OFDMフレームd,OFDMフレームe,・・・の(再)送信時刻は、
図11のように、0.15s,0.45s,0.75s,1.05s,1.35s,・・・となる。この場合、中継装置30bがOFDMフレームを(再)送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分T2は、0.15s,0.45s,0.75s,0.05s,0.35s,・・・となる。中継装置30bの時間情報取得部35bは、このような差分T2を示す情報にOFDMフレームの識別情報(FECブロックポインタ)対応付けたものを時間情報として算出部12へ送信する。
【0079】
算出部12は、複数の中継装置30(30a,30b)から受信した時間情報が示す差分T1,T2を、OFDMフレームの識別情報を用いて、OFDMフレーム毎に対応付ける。そして、算出部12は、対応するOFDMフレームごとに、差T1-T2を算出する。
図11の例では、中継装置30aから送られる差分T1と中継装置30bから送られる差分T2の差T2-T1(=-(T1-T2))が+50msである。そこで、算出部12は、中継装置30bの送信時間が中継装置30aに対して50ms遅れていると判定することができる。
【0080】
なお、基準時間信号の間隔に対して中継装置30における送信時間の遅延が大きくなると、同一のOFDMフレームについて時間差T1,T2を算出する基準時間信号のパルスが中継装置30(30a,30b)の間で相違する場合が生じ得る。このような場合、算出部12は、中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差の時間的変動が緩やかであることに鑑み、T1-T2の集合の中から実際の送信時間差を反映したものを抽出して、抽出された情報に基づき送信時間差を測定する。
【0081】
図12は、
図1の各中継装置30から送信される時間情報及びその差分の一例を示す図である。
図12では、中継装置30bにおける送信時間の遅延が大きくなっている。
図12の例では、
図11と同様に、親局20は、0.3s(300ms)毎に1つのOFDMフレームを送信している。中継装置30aは、
図11と同様に、親局20がOFDMフレームを送信してから0.1sだけ遅れて、そのOFDMフレームを再送信している。この場合、中継装置30aがOFDMフレームを(再)送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分T1は、0.1s,0.4s,0.7s,0s,0.3s,・・・となる。
【0082】
図12の例では、中継装置30bは、親局20がOFDMフレームを送信してから0.55sだけ遅れて、そのOFDMフレームを再送信している。すなわち、中継装置30bからのOFDMフレームa,OFDMフレームb,OFDMフレームc,OFDMフレームd,OFDMフレームe,・・・の(再)送信時刻は、
図12のように、0.55s,0.85s,1.15s,1.45s,1.75s,・・・となる。この場合、中継装置30bがOFDMフレームを(再)送信した送信時刻と、そのOFDMフレームの末尾ビットの直前の基準時間信号である1PPSの受信時刻との差分T2は、0.55s,0.85s,0.15s,0.45s,0.75s,・・・となる。
【0083】
この場合、OFDMフレームa,OFDMフレームb,OFDMフレームc,OFDMフレームd,OFDMフレームe,・・・のT1-T2は、-0.45s,-0.45s,0.55s,-0.45s,-0.45s,・・・となる。中継装置30a,30bの正しい送信時間差は、0.1s-0.55s=-0.45sであるため、OFDMフレームcについてのT1-T2=0.55sは実際の送信時間差を反映していない。
【0084】
そこで、算出部12は、一定の時間範囲内に取得されたT1,T2について、T1-T2の集合の中から実際の送信時間差を反映したものを抽出して、抽出された情報に基づき送信時間差を測定してもよい。例えば、算出部12は、T1-T2の集合の中からその絶対値|T1-T2|が予め定められた閾値以上のものを除外し、残りの値を抽出して、その抽出された情報に基づき送信時間差を測定してもよい。具体的には、例えば、算出部12は、基準時間信号の時間的間隔(例えば、1s)の半分の値(例えば、500ms)を閾値としてもよい。例えば、OFDMフレームa~OFDMフレームeについて取得されたT1-T2の集合は{-0.45s,-0.45s,0.55s,-0.45s,-0.45s}である。これらのうち、閾値500ms未満のT1-T2は{-0.45s,-0.45s,-0.45s,-0.45s}であるため、算出部12は、これらに基づき送信時間差を測定してもよい。例えば、算出部12は、抽出されたT1-T2の平均値(-0.45s)を中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差として算出してもよい。
【0085】
なお、算出部12は、一定の時間範囲内に取得されたT1,T2について、T1-T2の集合の中から最も出現頻度が高いものを実際の送信時間差を反映したT1-T2として抽出してもよい。その際、算出部12は、例えば、T1-T2の一定値(例えば10ms)未満の値の差を無視した値について、出現頻度を評価してもよい。例えば、OFDMフレームa~OFDMフレームeについて取得されたT1-T2の集合が{-0.451s,-0.458s,0.552s,-0.452s,-0.455s}であるとする。この場合、10ms未満の値を無視(例えば、切り捨て)した値で最も出現頻度が高いT1-T2は-0.45sである。算出部12は、この値に基づき送信時間差を測定してもよい。例えば、算出部12は、{-0.451s,-0.458s,-0.452s,-0.455s}の平均値-0.454sを放送信号の送信時間差として算出してもよい。
【0086】
なお、上の例ではOFDMフレームを識別する識別情報にFECブロックポインタを用いた場合について説明したが、OFDMフレームを識別する情報はFECブロックポインタに限られない。複数の中継装置30(30a,30b)の各々には同一のOFDMフレームが送信されるため、OFDMフレーム毎に異なる固有の情報であれば任意の情報を、OFDMフレームの識別情報として用いてもよい。例えば、OFDMフレームを識別する識別情報は、Lch(ISDB-TのACに相当)又は本線信号の復調結果であってもよい。
【0087】
図13は、Lchの復調結果によってOFDMフレームを識別する場合の、時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
図13において、時間情報取得部35は、フレーム同期部351、時間差測定部352、及びLch復調部355を備える。
図13の構成例は、OFDMフレームごとにLchの値が変化することに着目して、このLchの値を、OFDMフレームを識別する識別情報として使用する。
【0088】
フレーム同期部351は、第1実施形態(
図2)と同様に、送信された信号に対してフレーム同期をとる。例えば、フレーム同期部351は、送信部34からOFDMフレームが送信されるたびにその送信に同期された同期信号を出力してもよい。フレーム同期部351は、OFDMフレームの先頭ビット又は末尾ビット等の特定の部分が送信されたことに応じて同期信号を出力してもよい。
【0089】
Lch復調部355は、OFDMフレームに含まれるLchを復調する。これにより、時間情報取得部35に入力されるOFDMフレームのLchの値が特定された状態となる。本実施形態では、このLchの値をOFDMフレームの識別情報として使用する。
【0090】
図14は、本線信号の復調結果によってOFDMフレームを識別する場合の、時間情報取得部35の構成例を示すブロック図である。
図14において、時間情報取得部35は、フレーム同期部351、時間差測定部352、及び本線信号復調部356を備える。
図14の構成例は、OFDMフレームごとに本線信号の値が変化することに着目して、この本線信号の値を、OFDMフレームを識別する識別情報として使用する。
【0091】
フレーム同期部351は、第1実施形態(
図2)と同様に、送信された信号に対してフレーム同期をとる。例えば、フレーム同期部351は、送信部34からOFDMフレームが送信されるたびにその送信に同期された同期信号を出力してもよい。フレーム同期部351は、OFDMフレームの先頭ビット又は末尾ビット等の特定の部分が送信されたことに応じて同期信号を出力してもよい。
【0092】
本線信号復調部356は、OFDMフレームに含まれる本線信号を復調する。本線信号復調部356は、OFDMフレームのすべてOFDMシンボルを復調せず、OFDMフレームを識別するために例えばOFDMフレーム中の特定の数シンボルなど、必要最低限のOFDMシンボルを復調して、OFDMフレームの識別情報としてもよい。これにより、時間情報取得部35に入力されるOFDMフレームの本線信号の値が特定された状態となる。本実施形態では、この本線信号の値をOFDMフレームの識別情報として使用する。
【0093】
上記のLch、本線信号を用いる手法は、高度化方式だけでなく、ISDB-Tによる放送ネットワークにおいても、OFDMフレームを識別することが可能である。ISDB-Tの場合、周波数帯域一部(1セグメント分)を用いて移動受信用の放送が運用されていることから、この帯域のみの信号を用いてOFDMフレームを識別してもよい。一方、ISDB-TのTMCCにはOFDMフレーム固有の情報が記載されていないため、ISDB-Tでは、FECブロックポインタをOFDMフレームの識別情報として用いることはできない。
【0094】
図15は、
図1の中継装置30(30a,30b)の動作手順の一例を示すフローチャートである。以下の各ステップは、時間差測定部352の制御に基づき実行される。具体的には、例えば、時間差測定部352は1つ以上のプロセッサを含む制御部を備え、以下の各ステップはこの制御部の制御に基づき実行されてもよい。このプロセッサは、CPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。以下の各ステップは、中継装置30(30a,30b)が親局20からOFDMフレームを受信する毎に実行される。
【0095】
図15のステップS21において、中継装置30(30a,30b)の時間差測定部352は、OFDMフレームの同期信号及びフレームの識別情報を受信する。例えば、時間差測定部352は、フレーム同期部351が出力する同期信号を受信してもよい。
【0096】
ステップS22において、時間差測定部352は、ステップS21で受信したOFDMフレームの同期信号の直前に受信した基準時間信号の受信時刻を取得する。
【0097】
ステップS23において、時間差測定部352は、ステップS1で受信した同期信号の受信時刻と、ステップS22で取得した基準時間信号の受信時刻との時間的差分を算出する。すなわち、中継装置30aの時間差測定部352は時間的差分T1を算出し、中継装置30bの時間差測定部352は時間的差分T2を算出する。
【0098】
ステップS24において、時間差測定部352は、ステップS23で算出した時間的差分を示す時間情報をステップS2で受信した識別情報と共に算出部12へ送信する。そして、時間差測定部352は、フローチャートの処理を終了する。
【0099】
図16は、
図1の算出部12の動作手順の一例を示すフローチャートである。以下の各ステップは、算出部12の制御に基づき実行される。具体的には、例えば、算出部12は1つ以上のプロセッサを含む制御部を備え、以下の各ステップはこの制御部の制御に基づき実行されてもよい。このプロセッサは、CPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。以下の各ステップは、算出部12が中継装置30(30a,30b)から時間情報を取得する毎に実行される。
【0100】
ステップS31において、算出部12は、第1の中継装置(例えば中継装置30a)から時間情報及びOFDMフレームの識別情報を受信して、その時間情報が示す時間的差分T1を取得する。
【0101】
ステップS32において、算出部12は、第2の中継装置(例えば中継装置30b)から時間情報及びOFDMフレームの識別情報を受信して、その時間情報が示す時間的差分T2を取得する。
【0102】
ステップS33において、算出部12は、同一の識別情報で識別されるOFDMフレームの各組についてT1-T2を算出して、T1-T2の集合を取得する。算出部12は、例えば、一定時間(例えば、1秒~数秒)の間に受信した各T1,T2について、T1-T2を算出して、T1-T2の集合を取得してもよい。
【0103】
ステップS34において、算出部12は、T1-T2の集合から真の時間差を抽出する。例えば、算出部12は、|T1-T2|が予め定められた閾値を超えるもの、及び、出現頻度が低いものを除外することにより、真の時間差を抽出してもよい。
【0104】
ステップS35において、算出部12は、ステップS34で抽出した真の時間差に基づき、複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出する。例えば、算出部12は、ステップS34で抽出した真の時間差の平均値を放送信号の送信時間差として算出してもよい。そして、算出部12は、フローチャートの処理を終了する。
【0105】
以上のように、本実施形態では、複数の中継装置30(30a,30b)は、OFDMフレームを識別する識別情報と対応付けて、時間差を示す時間情報を演奏所10の算出部12へ送信する。算出部12は、同一の識別情報に対応付けられた時間情報が示す時間差に基づき、複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出する。
【0106】
したがって、本実施形態では、識別情報によりOFDMフレームを識別し、同一のOFDMフレームに対応する時間情報を対応付けて複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出する。したがって、偶発的に中継装置30(30a,30b)間での送信時間差が大きくなったような場合であっても、処理を複雑化することなく、時間差算出における誤りを防ぎ、中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差をさらに高い精度で測定することが可能である。
【0107】
また、演奏所10の算出部12は、複数の時間情報が示す時間差の集合から、複数の中継装置30(30a,30b)の間における実際の送信時間差を反映した時間差を抽出する。そして、算出部12は、抽出された時間差に基づいて、複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出する。前述のように、基準時間信号の間隔に対して中継装置30(30a,30b)における送信時間の遅延が大きくなると、同一のOFDMフレームについて時間差T1,T2を算出する基準時間信号のパルスが中継装置30(30a,30b)の間で相違する場合が生じ得る。本実施形態に係る構成はこのような場合であっても、中継装置30(30a,30b)間における放送信号の送信時間差をさらに高い精度で測定することが可能である。
【0108】
また、複数の中継装置30(30a,30b)は、OFDMフレームを識別する識別情報として、OFDMフレームのFECブロックポインタと、OFDMフレーム中の一部又は全てのLchの復調結果と、OFDMフレーム中の一部又は全ての本線信号の復調結果との少なくともいずれかを対応付けて、時間情報を算出部12へ送信する。したがって、算出部12は、識別情報によりOFDMフレームを区別して、同一のOFDMフレームに対応する時間情報を対応付けて複数の中継装置30(30a,30b)の間における放送信号の送信時間差を算出することが可能である。
【0109】
以上のように、本開示の各実施形態では、各中継装置30(30a、30b)でOFDMフレームを識別して1PPSからの時間差を取得し、同一OFDMフレームの時間差を比較することで、中継装置30(30a、30b)間の厳密な送信時間差を把握することが可能となる。NSIパケットの付加、及び復号のための装置等が不要となり、設備の簡易化に資するとともに、放送信号への追加のビット割り当てが不要となる。前述のように、NSIパケットを用いる手法では中継装置側でOFDM復調器が必要となり、また時刻情報の付加が必要だった。これに対して、本開示の各実施形態では、時刻情報の付加が及び送信信号に新たな情報を多重することが不要である。
【0110】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 放送システム
10 演奏所
11 生成部
12 算出部
20 親局
21 OFDM変調部
22 送信部
30 中継装置
31 受信変換部
32 補償部
33 遅延制御部
34 送信部
35 時間情報取得部
351 フレーム同期部
352 時間差測定部
353 TMCC復調部
354 FECポインタ識別部
355 Lch復調部
356 本線信号復調部