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特開2023-180564プラズマ処理方法、および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180564
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20231214BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231214BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20231214BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/318 C
H01L21/31 C
C23C16/505
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093959
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貴司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB02
2G084BB03
2G084BB26
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC15
2G084CC17
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD40
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH02
2G084HH05
2G084HH16
2G084HH19
2G084HH20
2G084HH26
2G084HH28
2G084HH56
4K030AA13
4K030AA16
4K030BA38
4K030FA01
4K030JA09
4K030JA10
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB33
5F045AB34
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD08
5F045AE21
5F045DP15
5F045DP27
5F045DQ10
5F045DQ12
5F045EE19
5F045EF03
5F045EF09
5F045EH02
5F045EH11
5F045EM10
5F058BC08
5F058BC10
5F058BC11
5F058BC12
5F058BF07
5F058BF22
5F058BF30
5F058BF37
5F058BF38
5F058BF39
(57)【要約】
【課題】窒化膜を成膜する際に、プラズマによる窒素の活性種を抑制して、パーティクルを低減できる技術を提供する。
【解決手段】プラズマ処理方法は、プラズマを用いて窒化膜を基板に成膜する。プラズマ処理方法は、(a)窒素含有ガスを含むプラズマ処理ガスを処理容器の内部のプラズマ処理空間に供給する工程と、(a)の工程の実施時に、(b)プラズマ処理空間にプラズマを生成するために、プラズマ処理空間に露出される石英部に配置されたアンテナに高周波電源から高周波電力を給電する工程と、を有する。(b)の工程では、高周波電力としてオンおよびオフを繰り返すパルス波をアンテナに給電することで、プラズマの平均電子密度と相対的に平均電子温度を低下させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いて窒化膜を基板に成膜するプラズマ処理方法であって、
(a)窒素含有ガスを含むプラズマ処理ガスを処理容器の内部のプラズマ処理空間に供給する工程と、
前記(a)の工程の実施時に、(b)前記プラズマ処理空間に前記プラズマを生成するために、前記プラズマ処理空間に露出される石英部に配置されたアンテナに高周波電源から高周波電力を給電する工程と、を有し、
前記(b)の工程では、前記高周波電力としてオンおよびオフを繰り返すパルス波を前記アンテナに給電することで、前記プラズマの平均電子密度と相対的に平均電子温度を低下させる、
プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記(b)の工程では、前記パルス波のデューティ比を66.7%~99.9%の範囲に設定する、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記(b)の工程では、前記高周波電力として500W~5000Wの範囲の出力値を給電する、
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記(b)の工程では、前記パルス波を給電するステップの前に、前記高周波電源から前記アンテナに前記高周波電力の連続波を給電するステップを有し、
前記パルス波を給電するステップにおける前記高周波電力の出力値は、前記連続波を給電するステップにおける前記高周波電力の出力値よりも大きい、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記パルス波を給電するステップにおける前記高周波電力の出力値は、前記連続波を給電するステップにおける前記高周波電力の出力値の1.5倍以上である、
請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記(a)の工程および前記(b)の工程では、前記処理容器の内部において前記基板を複数載置する回転テーブルを回転させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
プラズマを用いて窒化膜を基板に成膜する基板処理装置であって、
前記基板を収容する処理容器と、
窒素含有ガスを含むプラズマ処理ガスを前記処理容器の内部のプラズマ処理空間に供給する処理ガスノズルと、
前記プラズマ処理空間に露出される石英部にアンテナを配置し、前記プラズマ処理空間に前記プラズマを生成可能なプラズマ源部と、
前記処理ガスノズルから前記プラズマ処理空間への前記プラズマ処理ガスの供給時に、前記アンテナに高周波電力を給電する高周波電源と、を備え、
前記高周波電源は、前記高周波電力としてオンおよびオフを繰り返すパルス波を前記アンテナに給電することで、前記プラズマの平均電子密度と相対的に平均電子温度を低下させる、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理方法、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理容器の内部空間にプラズマを発生させて、酸化シリコン膜を基板の表面に成膜するプラズマ処理方法(成膜方法)が開示されている。このプラズマ処理方法では、アルゴンガス、酸素ガス、アンモニアガス等を処理容器の内部空間に供給すると共に、内部空間の上部のアンテナに高周波電力を給電することにより、内部空間にプラズマを生成する。
【0003】
アンモニアを構成している窒素(N)は、内部空間において電離した高エネルギの電子の影響を受けることで活性種となる。窒素の活性種は、石英にダメージを与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-135154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プラズマを生成して窒化膜を成膜する際に、窒素の活性種を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、プラズマを用いて窒化膜を基板に成膜するプラズマ処理方法であって、(a)窒素含有ガスを含むプラズマ処理ガスを処理容器の内部のプラズマ処理空間に供給する工程と、前記(a)の工程の実施時に、(b)前記プラズマ処理空間に前記プラズマを生成するために、前記プラズマ処理空間に露出される石英部に配置されたアンテナに高周波電源から高周波電力を給電する工程と、を有し、前記(b)の工程では、前記高周波電力としてオンおよびオフを繰り返すパルス波を前記アンテナに給電することで、前記プラズマの平均電子密度と相対的に平均電子温度を低下させる、プラズマ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、プラズマを生成して窒化膜を成膜する際に、窒素の活性種を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の構成例を示す概略断面図である。
図2図1の基板処理装置の概略平面図である。
図3】プラズマ処理領域を形成する基板処理装置の構成を示す概略断面図である。
図4】基板処理装置のプラズマ処理領域を示す概略平面図である。
図5】高周波電力を給電する給電回路を概略的に示す説明図である。
図6】プラズマ処理方法によりプラズマ処理空間に生じるプラズマの電子密度および電子温度の状態を例示するグラフである。
図7】SiON膜の成膜処理の工程を示すフローチャートである。
図8】給電工程における高周波電力の給電例を示すタイミングチャートである。
図9】プラズマ処理ステップにおいて高周波電源から出力する高周波電力の条件を変えて、ウエハ上に生じるパーティクルの数を比較したグラフおよび表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置100の構成例を示す概略断面図である。図2は、図1の基板処理装置100の概略平面図である。なお、図2では、説明の便宜上、天板の図示を省略している。一実施形態に係るプラズマ処理方法は、図1および図2に示す基板処理装置100を用いて、基板の表面に所定の膜を形成する。基板処理装置100は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法または分子層堆積(MLD:Molecular Layer Deposition)法による成膜処理を行う。
【0011】
成膜処理が施される基板としては、シリコン半導体、化合物半導体または酸化物半導体等の半導体ウエハがあげられる(以下、基板をウエハWともいう)。ウエハWは、トレンチ、ビア等の窪みパターンを有するものでもよい。
【0012】
また、本実勢形態に係るプラズマ処理方法では、ウエハWの表面にシリコン酸窒化(SiON:SiO)膜を成膜する。なお、プラズマ処理方法は、窒化膜を成膜する成膜処理であれば、成膜する膜種はSiON膜に限定されず、例えば、SiN膜、SiCN膜、SiBCN膜、SiOCN膜等であってもよい。
【0013】
図1に示すように、基板処理装置100は、略円筒状の処理容器1と、処理容器1内でウエハWを回転(公転)させる回転テーブル2(基板支持部)と、を備える。また、基板処理装置100は、当該装置の各構成を制御する制御部110を有する。
【0014】
処理容器1は、複数のウエハWを内部に収容して、各ウエハW上にSiON膜を形成する。処理容器1は、天板11と、容器本体12とを含み、複数のウエハWを収容して、各ウエハW上にSiON膜を形成するための処理室を内部に有する。処理容器1は、容器本体12の上面の外周壁に円環状のシール部材13を有し、容器本体12に対して天板11を離脱可能かつ気密に固定することができる。平面視における処理容器1の直径(内径)は、例えば、1100mm程度に設計されるとよい。
【0015】
天板11の中央部には、分離ガスを供給する分離ガス供給管16が接続されている。容器本体12の底面部14には、Arガス等のパージガスを供給するパージガス供給管17が接続されている。パージガス供給管17は、底面部14の周方向に沿って複数設けられている。また、底面部14は、回転テーブル2を固定しているコア部21の外周面に近接する位置に、円環状の突出部12aを有する。
【0016】
処理容器1の外周壁には、回転テーブル2と搬送アーム10との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送ポート15と、搬送ポート15を開閉するゲートバルブGとが設けられている(図2参照)。ゲートバルブGは、搬送ポート15の閉塞状態で処理容器1の処理室を気密に密閉する。回転テーブル2は、搬送ポート15に隣接する位置に、ウエハWを載置する凹部24を配置することで、搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しを行う。
【0017】
処理容器1内に収容される回転テーブル2は、処理容器1の中央部において、略円盤状のコア部21に固定されている(図1参照)。コア部21は、鉛直方向に延びる回転軸22に接続され、この回転軸22は、駆動部23に支持されている。駆動部23は、回転軸22を介して回転テーブル2を鉛直軸回り(図2中の時計回り)に回転させる。回転テーブル2の直径寸法は、特に限定されないが、例えば、処理容器1の直径が1100mmである場合には1000mm程度であるとよい。
【0018】
駆動部23は、回転軸22の回転角度を検出するエンコーダ25を備える。エンコーダ25により検出された回転軸22の回転角度は、制御部110に送信されて、制御部110において回転テーブル2上の各凹部24に載置されたウエハWの位置を特定するために利用される。
【0019】
回転軸22の下端部、駆動部23およびエンコーダ25は、ケース体26に収納されている。ケース体26は、処理容器1の底面部14に気密に取り付けられる。また、ケース体26には、回転テーブル2の下方領域にパージガスを供給するパージガス供給管27が接続されている。
【0020】
回転テーブル2は、例えば、直径300mmのウエハWを載置可能な円形状の凹部24を表面に複数(本実施形態では6つ)有する(図2も参照)。複数の凹部24は、回転テーブル2の回転方向(図2では時計回り)に沿って等間隔に設けられる。各凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに(1mm~4mm程度)大きな内径を有する。凹部24の深さは、ウエハWの厚さ以上に設定される。
【0021】
凹部24の底面には、図示しない複数の昇降ピンを通過させる図示しない貫通孔が複数(例えば、3つ)形成されている。各昇降ピンは、搬送ポート15の近傍におけるウエハWの受け渡し位置に設けられ、図示しない昇降機構によって上下方向に昇降する。各昇降ピンは、ウエハWを保持している搬送アーム10の進入後に上昇してウエハWを受け取り、搬送アーム10の後退後に下降して凹部24にウエハWを載置する。さらに、各昇降ピンは、基板処理後のウエハWを上昇させ、その後に進入してきた搬送アーム10にウエハWを受け渡す。
【0022】
図2に示すように、基板処理装置100は、各凹部24の通過範囲の上方に複数本のガスノズルを配置している。各ガスノズルは、回転テーブル2の回転方向の法線に沿って延在すると共に、処理容器1の周方向に沿って互いに間隔をあけて設置されている。本実施形態において、複数のガスノズルは、第1の処理ガスノズル31、第2の処理ガスノズル32、第3の処理ガスノズル33~35および分離ガスノズル41、42である。
【0023】
第1の処理ガスノズル31、第2の処理ガスノズル32、第3の処理ガスノズル33~35および分離ガスノズル41、42は、回転テーブル2と天板11との間の処理室に配置される。第1の処理ガスノズル31、第2の処理ガスノズル32、および分離ガスノズル41、42の各々は、処理容器1の外周壁から中心領域Cに向かう径方向に沿って直線状に延在し、また回転テーブル2に対して平行(水平方向)に固定される。図2では、搬送ポート15から時計回りに、第3の処理ガスノズル33~35、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42、第2の処理ガスノズル32がこの順番で配置されている。
【0024】
第1の処理ガスノズル31は、その下面側(回転テーブル2に対向する側)に図示しない複数のガス孔を有し、各ガス孔を介して処理室の下方側の第1の処理領域P1に、第1の処理ガスを噴出する。第1の処理ガスノズル31は、処理容器1の外部において、流量調整バルブや開閉バルブを介して第1の処理ガスの供給源に接続されている(共に不図示)。SiON膜を形成する場合、第1の処理ガスノズル31は、例えば、第1の処理ガスとしてシリコン含有ガスをウエハWに噴出する。
【0025】
第1の処理ガスノズル31の上方側には、ノズルカバー40が設けられている。ノズルカバー40は、第1の処理ガスノズル31の上方および両側方を覆い、第1の処理ガスをウエハWに沿って通流させ、かつ分離ガスがウエハWを避けて処理容器1の天板11側を流れるように誘導する。
【0026】
第2の処理ガスノズル32は、その下面側(回転テーブル2に対向する側)に複数のガス孔を有し、各ガス孔を介して処理室の下方側の第2の処理領域P2に、第2の処理ガスを噴出する。第2の処理ガスノズル32は、処理容器1の外部において、流量調整バルブや開閉バルブを介して第2の処理ガスの供給源に接続されている(共に不図示)。SiON膜を形成する場合、第2の処理ガスノズル32は、例えば、第2の処理ガスとして酸素含有ガス(O、O、またはこれらの混合ガス等)を噴出する。
【0027】
第3の処理ガスノズル33~35は、処理室の第3の処理領域P3に、第3の処理ガスを噴出する。また、第3の処理領域P3は、ウエハWに対してプラズマ処理を行う領域であり、以下、プラズマ処理領域P3ともいう。このプラズマ処理領域P3に設けられる構成については、後に詳述する。
【0028】
分離ガスノズル41、42は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2の間、および第3の処理領域P3と第1の処理領域P1の間を分離する分離領域D1、D2を形成する。分離ガスノズル41、42の各々は、その下面側(回転テーブル2に対向する側)に複数のガス孔を有し、各ガス孔を介して分離領域D1、D2に不活性ガスまたは希ガス等の分離ガスを噴出する。分離ガスノズル41、42は、処理容器1の外部において、流量調整バルブや開閉バルブを介して分離ガスの供給源に接続されている(共に不図示)。
【0029】
分離領域D1、D2における処理容器1の天板11(図1参照)の裏面には、略扇形の凸状部4が設けられている。凸状部4は、周方向中央部において径方向に延在する溝部(不図示)を有し、この溝部内に各分離ガスノズル41、42を収容している。
【0030】
図1に戻り、天板11の下面中央部には、凸状部4における中心領域C側の部位と連続して周方向に沿って略円環状に形成された突出部5が設けられている。突出部5の下面は、凸状部4の下面と同じ高さに形成されている。突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側かつコア部21の上方には、中心領域Cでの各ガスの混ざり合いを抑制するために、ラビリンス構造部51が設けられている。
【0031】
また、図1および図2に示すように、処理容器1は、回転テーブル2よりも外側かつ回転テーブル2よりも下方の位置に、カバー体である円環状のサイドリング18を備える。サイドリング18内には、ガスを流通可能な溝状のガス流路18aが形成されている。
【0032】
サイドリング18は、第1の排気口61および第2の排気口62を上面に有する。第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と分離領域D1との間に形成されている。第2の排気口62は、プラズマ処理領域P3と、分離領域D2との間に形成されている。第1の排気口61は、第1の処理ガスや分離ガスを主に排気し、第2の排気口62は、第3の処理ガスや分離ガスを主に排気する。図1に示すように、ガス流路18aには、処理容器1の底面部14の排気口を介して排気管63が接続されている。排気管63には、バタフライバルブ等の圧力調整部64、真空ポンプ等の真空排気機構65が接続されている。
【0033】
さらに、基板処理装置100は、処理容器1の底面部14と回転テーブル2との間の空間にヒータユニット7を備える。ヒータユニット7は、容器本体12の突出部12aに支持されるカバー体71内に収容され、回転テーブル2上のウエハWを例えば室温~700℃程度に加熱する。
【0034】
また、基板処理装置100の制御部110は、1以上のプロセッサ111、メモリ112、入出力インタフェースおよび電子回路(共に不図示)等を有する制御用コンピュータを適用することができる。プロセッサ111は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数の組み合わせたものである。メモリ112は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ等のうち1つまたは複数を組み合わせたもの)を含む。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムやプロセス条件等のレシピを読み出して実行することで、基板処理装置100を動作させて成膜処理を行う。
【0035】
次に、基板処理装置100のプラズマ処理領域P3の構成について説明する。図2に示すように、基板処理装置100は、プラズマ処理領域P3の上方位置にプラズマ源部80を備える。プラズマ源部80は、平面視で略扇形に形成され、回転テーブル2上の凹部24(ウエハW)の直径部分を跨ぐように設置される。
【0036】
図3は、プラズマ処理領域P3を形成する基板処理装置100の構成を示す概略断面図である。図4は、基板処理装置100のプラズマ処理領域P3を示す概略平面図である。なお、図4では、図の理解の容易化のため、第3の処理ガスノズル33~35を実線で示し、処理容器1およびプラズマ源部80の構成を仮想線(2点鎖線)で示している。図3および図4に示すように、プラズマ処理領域P3は、処理容器1の上方のプラズマ源部80から高周波を出力する誘導結合型(ICP:Inductively Coupled Plasma)に構成されている。処理容器1内においてプラズマ源部80と回転テーブル2の間には、第3の処理ガスノズル33~35から噴出される第3の処理ガスをプラズマ化するプラズマ処理空間99が形成されている。
【0037】
プラズマ源部80は、プラズマ処理空間99に誘導電界を形成するアンテナ83を備える。アンテナ83は、処理容器1の内部領域に対して気密に区画されるように設置される。アンテナ83は、平面視でプラズマ源部80の長方形状に沿った扁平なコイル状を呈している(図2も参照)。一例として、アンテナ83は、金属線等を鉛直軸回りに複数回(例えば、3回)巻回して形成される。
【0038】
アンテナ83は、処理容器1の外部において整合器84を介して高周波電源85に接続されている。また、プラズマ源部80は、アンテナ83と、整合器84および高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極86を有する。なお、アンテナ83は、上下に折り曲げ可能な構成、アンテナ83を自動的に上下に折り曲げ可能な上下動機構、回転テーブル2の中心側の箇所を上下動可能な機構等(共に不図示)を必要に応じて備えるとよい。
【0039】
第3の処理ガスノズル33~35の上方側における天板11には、平面視で略扇形の開口11aが形成されている(図3参照)。プラズマ源部80は、この天板11の開口11aの縁部に沿って周回する環状部材82を介して、アンテナ83を収容した筐体90を設置している。環状部材82と筐体90との間には、Oリング等のシール部材11bが設けられる。また、プラズマ源部80は、環状部材82および筐体90を開口11a内に嵌め込んだ状態で、環状部材82および筐体90の境界部に沿った枠状の押圧部材91を、ボルト等の固定手段により天板11に固定することで、処理容器1に組み付けられる。これにより、プラズマ処理空間99の天井側が気密に閉塞される。
【0040】
本実施形態に係る筐体90は、石英により形成された石英部となっており、天板11よりも下方側にアンテナ83を位置させる。筐体90は、上方側の周縁が周方向に沿って突出したフランジ部90aを有すると共に、中央部が下方側の処理容器1の内部領域に向かって窪む、断面視で凹状の箱に形成されている。筐体90は、この筐体90の下方にウエハWが位置した場合に、回転テーブル2の径方向にウエハWを跨ぐように配置される。筐体90の下面は、プラズマ処理空間99内で回転テーブル2を臨む対向面93となっている。
【0041】
筐体90において対向面93と反対側には、ファラデーシールド95および絶縁板94が積層されている。ファラデーシールド95は、導電性の板(金属板)により形成されている。絶縁板94は、ファラデーシールド95とアンテナ83との間の絶縁性を確保するものであり、石英等により形成されている。
【0042】
筐体90は、対向面93から回転テーブル2に向かって下方に突出した突起部92を有する。突起部92は、筐体90の下方側のプラズマ処理空間99を周方向に沿って囲んでいる。そして、筐体90の対向面93、突起部92の内周面、および回転テーブル2の上面により囲まれたプラズマ処理空間99に、第3の処理ガスノズル33~35が配置されている。なお、第3の処理ガスノズル33~35の基端部(処理容器1の内壁側)に位置する突起部92は、第3の処理ガスノズル33~35の外形に沿うように切り欠かれている。
【0043】
第3の処理ガスノズル33~35は、プラズマ源部80と連動して第3の処理ガスであるプラズマ処理ガスを噴出する。これにより、プラズマ処理空間99にプラズマが生成される。第3の処理ガスノズル33~35は、プラズマ生成用の希ガス、窒素含有ガス等を単独でまたは混合して噴出する。希ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスがあげられる。窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガスがあげられる。なお、第3の処理ガスノズル33~35は、希ガスや窒素含有ガスの他に他のガス(例えば、O、O等の酸素含有ガス、H等の水素含有ガス)を合わせて噴出する構成でもよい。
【0044】
具体的には、第3の処理ガスノズル33~35は、ベースノズル33、外側ノズル34および軸側ノズル35と、を含む(図4参照)。ベースノズル33は、ウエハWの全面にプラズマ処理ガスを供給するガスノズルであり、プラズマ処理空間99内で回転テーブル2の回転方向の上流側(突起部92の近傍位置)に配置される。ベースノズル33は、回転テーブル2の径方向に沿って直線状に延在し、処理容器1の中心領域C付近まで達している。
【0045】
ベースノズル33は、回転テーブル2の回転方向下流側を臨むガス孔33aを複数有する。各ガス孔33aは、プラズマ源部80の設置位置(対向面93の下方)において、ベースノズル33の長手方向に沿って等間隔に並んでいる。各ガス孔33aは、プラズマ源部80の対向面93の面方向(水平方向)に対して平行にプラズマ処理ガスを噴出する。あるいは、複数のガス孔33aは、水平方向に対して斜め下方(回転テーブル2側)に傾斜して形成され、回転テーブル2に向かってプラズマ処理ガスを噴出する構成でもよい。
【0046】
外側ノズル34は、ウエハWの外側領域にプラズマ処理ガスを重点的に供給するためのノズルであり、プラズマ処理空間99内で回転テーブル2の回転方向の上流側近傍に設けられる。外側ノズル34は、処理容器1の外周壁から中心領域Cに向かって短く延びる径方向部位と、外周壁の近傍で屈曲して時計回りに直線状に延びる外側部位と、を有する。そして、外側ノズル34は、1以上のガス孔34aを外側部位に備える。複数のガス孔34aは、例えば、中心領域Cに対向すると共に、斜め下方(回転テーブル2側)を臨むように形成されている。
【0047】
軸側ノズル35は、処理容器1の中心領域C付近のウエハWにプラズマ処理ガスを重点的に供給するためのノズルであり、プラズマ処理空間99内で回転テーブル2の回転方向の下流側近傍に設けられる。軸側ノズル35は、処理容器1の外周壁から中心領域Cに向かって径方向に延びる径方向部位と、中心領域Cの近傍で屈曲して反時計回り(回転テーブル2の回転方向と逆向き)に直線状に延びる軸側部位と、を有する。そして、軸側ノズル35は、1以上のガス孔35aを軸側部位に備える。複数のガス孔35aは、例えば、処理容器1の外周壁に対向すると共に、斜め下方(回転テーブル2側)を臨むように形成されている。
【0048】
プラズマ処理ガスを構成するArガスの流量(供給量)、NHガスの流量(供給量)は、ベースノズル33、外側ノズル34および軸側ノズル35の各々において相互に異なってもよい。例えば、基板処理装置100は、ベースノズル33および外側ノズル34からNHガスを供給する一方で、軸側ノズル35からNHガスを供給しない構成とすることができる。なお、ベースノズル33、外側ノズル34および軸側ノズル35は、相互に同じ流量のガスを噴出する構成でもよい。基板処理装置100は、外側ノズル34および軸側ノズル35のうち一方または両方を備えない構成でもよい。
【0049】
また、第3の処理ガスノズル33~35は、処理容器1の外側において処理ガス供給部37に接続されている(図3参照)。例えば、処理ガス供給部37は、プラズマ処理ガスを供給するため、Arガス源371と、NHガス源372と、ベースノズルバッファ部373、外側ノズルバッファ部374および軸側ノズルバッファ部375と、を有する。Arガス源371およびNHガス源372と、ベースノズルバッファ部373、外側ノズルバッファ部374および軸側ノズルバッファ部375との間には、図示しない流量調整器、開閉バルブ等が設けられている。
【0050】
ベースノズルバッファ部373は、Arガス源371のArガス、NHガス源372のNHガス等を適宜の流量比で混合して、ベースノズル33に供給する。外側ノズルバッファ部374は、Arガス源371のArガス、NHガス源372のNHガス等を適宜の流量比で混合して、外側ノズル34に供給する。軸側ノズルバッファ部375は、Arガス源371のArガス、NHガス源372のNHガス等を適宜の流量比で混合して、軸側ノズル35に供給する。
【0051】
図5は、高周波電力を給電する給電回路を概略的に示す説明図である。図5に示すように、基板処理装置100は、電源側からグランド側に向かって順に、高周波電源85、整合器84、アンテナ83およびブロッキングコンデンサ87を直列に接続している。整合器84は、複数の可変容量コンデンサおよび/またはインダクタンスを内部に備え、アンテナ83で誘導電界を形成する際にインピーダンス整合を行う。
【0052】
高周波電源85は、高周波電力として13.56MHzの周波数、かつ500W~5kW(5000W)の出力値を出力可能な発振装置が適用される。また、高周波電源85は、高周波電力の連続波およびパルス波を出力可能に構成される。特に、高周波電力のパルス波の出力において、高周波電源85は、10%~99.9%の範囲にわたってDutyを調整可能であるとよい。
【0053】
高周波電源85は、制御部110との間で通信可能に接続され、制御部110から送信される制御指令に基づいて調整した高周波電力をアンテナ83に出力する。制御指令には、例えば、高周波電力の出力値、パルス波のDuty、連続波やパルス波の出力タイミング等の情報が含まれる。これにより、基板処理装置100は、制御部110にてプラズマ処理空間99の誘導電界を適切に制御できる。
【0054】
以上のように構成される基板処理装置100は、成膜処理において実際にウエハWにプラズマ処理を施す期間に、高周波電源85から高周波電力のパルス波を出力する構成としている。以下、この高周波電源85からパルス波を出力することの意義について、図6を参照しながら説明していく。図6は、プラズマ処理方法によりプラズマ処理空間99に生じるプラズマの電子密度および電子温度の状態を例示するグラフであり、(A)は連続波を給電した場合、(B)はパルス波を給電した場合である。
【0055】
図6(A)に示すように、プラズマ処理空間99では、アンテナ83に給電される高周波電力に応じて、プラズマの電子密度(Ne)および電子温度(Te)が変動する。具体的には、高周波電源85からアンテナ83に連続波を出力する場合、高周波電力がゼロ(オフ)から所定の出力値(例えば、4kW:オン)に立ち上がることに伴い、プラズマ処理空間99の電子密度(Ne)および電子温度(Te)が上昇する。この際、電子温度(Te)は、高周波電力のオフからオンの切り替わりに概ね連動して急激に立ち上がる。プラズマ中の電子は、誘導電界からエネルギを受け易く、また他の粒子と衝突してもエネルギ損失が少ない。そのため、電子温度(Te)は高周波電力の変化に追従し易い。一方、電子密度(Ne)は、プラズマ中のプラズマ処理ガスの電離に基づいて上昇するため、高周波電力の立ち上がりに対して遅延することになる。
【0056】
ここで、電子温度が大きい場合、プラズマ中の電子が窒素(N)に衝突することで、窒素の活性種を生じさせる。この窒素の活性種が筐体90(石英部)に衝突すると、石英にダメージを与えてパーティクルが生じる要因となる。ただし、電子温度を抑制するために高周波電力の出力を低くすると、プラズマ処理ガスの電離も少なくなる。石英のダメージに伴うパーティクルを抑制するためには、電子密度が高いまま、電子温度を低減する必要がある。
【0057】
図6(B)に示すように、高周波電力のオンおよびオフを繰り返すパルス波を出力した場合、電子密度(Ne)および電子温度(Te)は、高周波電力のオフ時にそれぞれ下降していく。ただし、電子温度(Te)の減衰率は、高周波電力のオフに伴って誘導電界がなくなることで、急激に下降していく。その一方で、電子密度(Ne)の減衰率は、電子温度(Te)の減衰率よりもはるかに小さな減衰率で下降する。したがって、高周波電力のオフ時における電子温度(Te)と電子密度(Ne)の減衰差を利用することで、電子密度を維持しつつ電子温度を低減することが可能になる。
【0058】
詳細には、高周波電力のパルス波によって、電子温度(Te)は、大きな振幅を繰り返すようになり、その平均である平均電子密度(平均Ne)が低下する。これに対して、高周波電力のパルス波によって、電子密度(Ne)は、高い密度状態から徐々に低下することで小さな振幅を繰り返すようになり、その平均である平均電子温度(平均Te)は高い状態を維持できる。したがって高周波電力のパルス波により、基板処理装置100は、平均電子密度に対して平均電子温度を大きく低下させることで、石英のダメージに伴うパーティクルを抑制することが可能となる。
【0059】
プラズマ処理空間99の平均電子密度および平均電子温度を精度よく制御するために、基板処理装置100の制御部110は、高周波電源85から給電する高周波電力のDutyを指令してパルス波を出力させる。高周波電力のパルス波のDutyは、以下の式(1)で求めることができる。
Duty=TON/(TON+TOFF
なお、TONは、高周波電力のオン期間、TOFFは、高周波電力のオフ期間である。
【0060】
制御部110は、高周波電力のパルス波のDutyを10%~99.9%の範囲で設定可能としているが、実際のパルス波のDutyとしては、66.7%~99.9%の範囲で設定することが好ましい。パルス波のDutyが66.7%未満の場合には、電子温度(Te)の減衰が少なくなる一方で、電子密度(Ne)の減衰が大きくなるため、平均電子密度が低下し易くなるからである。
【0061】
これに対して、パルス波のDutyが66.7%以上であれば、電子温度(Te)が大きく低下する一方で、電子密度(Ne)の低下が少ない段階で、高周波電力がオンとなる。そのため、平均電子密度を充分に高い値に維持することが可能となる。なお、制御部110は、パルス波のDutyを指令するだけでなく、オン期間TONおよびオフ期間TOFFを指令する構成でもよい。Duty、オン期間TONおよびオフ期間TOFFは、ユーザにより設定可能な構成でもよい。
【0062】
本実施形態に係る基板処理装置100は、基本的には以上のように構成され、以下その動作(成膜処理)について説明する。
【0063】
図7は、SiON膜の成膜処理の工程を示すフローチャートであり、(A)は成膜処理の各工程を示すフローチャートであり、(B)はプラズマアニール工程S2のプラズマ処理方法を示すフローチャートである。基板処理装置100の制御部110は、処理容器1内の回転テーブル2の各凹部24にウエハWを載置した後、図7(A)に示すように、基板処理方法としてSiO膜形成工程S1と、プラズマアニール工程S2とを順に行う。
【0064】
SiO膜形成工程S1において、制御部110は、圧力調整部64および真空排気機構65により処理容器1内を所定の圧力に制御した状態で、回転テーブル2を回転させながら、ヒータユニット7によりウエハWを所定の温度に加熱する。このとき、制御部110は、分離ガスノズル41、42から分離ガス(例えば、Arガス)を供給する。
【0065】
また、制御部110は、第1の処理ガスノズル31から第1の処理ガスであるシリコン含有ガスを供給する。これにより、第1の処理領域P1では、ウエハWの表面にシリコン含有ガスが付着する。
【0066】
さらに、制御部110は、第2の処理ガスノズル32から第2の処理ガスである酸素含有ガスを供給する。これにより、第2の処理領域P2では、回転テーブル2の回転に伴って移動したウエハW上のシリコン含有ガスが酸素含有ガスと反応する。そのため、薄膜成分であるSiOの分子層が形成されてウエハW上に堆積する。
【0067】
そして、制御部110は、回転テーブル2の回転を継続することにより、ウエハWの表面へのシリコン含有ガスの付着、およびシリコン含有ガスと酸素含有ガスの反応を繰り返す。その結果、所望の厚みを有するSiO膜が、ウエハWの表面に成膜される。SiO膜の膜厚が所望の厚みに到達すると、制御部110はSiO膜形成工程S1を終了する。
【0068】
次に、制御部110は、プラズマアニール工程S2において、処理容器1のプラズマ処理領域P3において各ウエハWに対してプラズマ処理を行う。制御部110は、図7(B)に示すように、圧力調整部64および真空排気機構65により処理容器1内を所定の圧力に制御した状態で、各ウエハWを載置している回転テーブル2を回転させる(ステップS21)。またこの際、制御部110は、ヒータユニット7によりウエハWを所定の温度に加熱すると共に、分離ガスノズル41、42から分離ガスを供給する。
【0069】
そして、制御部110は、処理ガス供給部37を制御して、第3の処理ガスノズル33~35からプラズマ処理空間99にプラズマ処理ガス(Arガス、NHガス)を供給するガス供給工程を行う(ステップS22)。さらにガス供給を継続している状態で、制御部110は、高周波電源85からアンテナ83に高周波電力を給電して、プラズマ処理空間99内にプラズマを生成する給電工程を行う(ステップS23)。プラズマ処理空間99のプラズマにより、ウエハW上に堆積したSiO膜が改質されることで、SiON膜が生成される。
【0070】
図8は、給電工程における高周波電力の給電例を示すタイミングチャートである。図8に示すように、制御部110は、給電工程において、まず高周波電源85からアンテナ83に高周波電力の連続波を給電する初期ステップを行う。これにより、プラズマ処理空間99においてArガスが励起して、プラズマを迅速に着火させることができる。連続波を給電する初期ステップの高周波電力としては、例えば、2kWに設定されるとよい。基板処理装置100は、初期ステップの高周波電力が低いことで、筐体90を構成する石英のダメージを抑制できる。
【0071】
プラズマ処理空間99においてプラズマが安定して生成される時点に移行すると、制御部110は、プラズマ処理ガスの供給を継続しつつ、高周波電源85から高周波のパルス波を給電させるプラズマ処理ステップに移行する。このプラズマ処理ステップにおける高周波電力の出力値は、初期ステップにおける高周波電力の出力値の1.5倍以上に設定することが好ましい。例えば図8では、制御部110は、プラズマ処理ステップの高周波電力の出力値を、初期ステップの出力値の2倍の4kWとしている。その結果、基板処理装置100は、高周波電力のパルス波を給電した場合でも、各ウエハWに対するプラズマ処理を効率的に行うことができる。
【0072】
以上の給電工程を行うことにより、基板処理装置100は、プラズマ処理空間99において、プラズマの平均電子密度を維持しながら、平均電子温度を下げることができる。具体的には、平均電子密度を高く維持することで、ウエハW上のSiO膜に対するプラズマ処理を行い、SiO膜をSION膜に円滑に改質することが可能となる。その一方で、基板処理装置100は、平均電子温度が低いことにより石英のダメージを低減して、石英の損傷に伴って生じるパーティクルを抑制することができる。
【0073】
図7(A)に戻り、基板処理装置100の制御部110は、以上のプラズマアニール工程S2を終了すると、処理ガス供給部37を制御してプラズマ処理ガスを停止すると共に、プラズマ源部80への高周波電力の給電を停止する。その後、制御部110は、処理済みのウエハWを処理容器1から搬出し、成膜処理を終了する。なお、上記の実施形態の基板処理方法では、SiO膜形成工程S1とプラズマアニール工程S2とを順に1回ずつ行う場合を説明したが、これに限定されず、SiO膜形成工程S1とプラズマアニール工程S2とを交互に複数回繰り返してもよい。また、基板処理方法では、各ウエハWを回転させながら、第1の処理領域P1でのシリコン含有ガスの供給、第2の処理領域P2での酸素含有ガスの供給、およびプラズマ処理領域P3でのプラズマによる改質を同時に実施してもよい。
【0074】
[実施例]
上記で説明したプラズマ処理方法の効果を確認するための実験を行った。図9は、プラズマ処理ステップにおいて高周波電源85から出力する高周波電力の条件を変えて、ウエハW上に生じるパーティクルの数を比較したグラフおよび表である。
【0075】
図9の棒グラフにおいて、横軸は高周波電力の条件の各パターンであり、縦軸はプラズマ処理でウエハW上に生じたパーティクルの数である。この実験では、プロセス条件として、ウエハWを400℃に加熱し、処理容器1内の圧力を1.5Torr(200Pa)に調整した。また、回転テーブル2によるウエハWの回転を停止した状態として、プラズマ処理空間99にウエハWを配置した状態で、プラズマ処理方法を実施した。プラズマ処理空間99に供給するプラズマ処理ガスは、ArガスおよびNHガスである。
【0076】
図9に示す実験結果から分かるように、高周波電力の連続波を給電している場合、ウエハWに生じるパーティクルの数が大きくなる。特に、高周波電力が3kWや4kWの場合には、パーティクルの数が大幅に増えている。回転テーブル2によりウエハWを回転させながらプラズマ処理方法を行う基板処理装置100では、高周波電力の電力値を高い値に設定することで処理の効率が向上するが、3kWや4kW等の電力値でパーティクルが増えることが問題となる。
【0077】
これに対して、高周波電力のパルス波を給電している場合には、連続波を給電している場合に比べて、パーティクルの数が減っている。したがって、高周波電力のパルス波を給電することにより、石英のダメージが軽減されて、パーティクルが抑制できると言うことができる。特に、パルス波のオン期間TONが1msecかつオフ期間TOFFが0.5msecの場合(Dutyが66.7%の場合)に、パーティクルが充分に抑えられていることが分かる。これは、オン期間TONが短くなることで、プラズマの電子温度(Te)が高くなる期間が短くなり、Nの活性種が石英に与えるダメージを減らしていると推定できる。したがって、プラズマ処理方法は、高周波電力のパルス波のオン期間TONおよびオフ期間TOFFを適切に設定することで、パーティクルを抑えたプラズマ処理を実現することができると言える。
【0078】
本開示の基板処理装置100およびプラズマ処理方法は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、上記の実施形態では、回転テーブル2により複数のウエハWを回転させながらプラズマ処理方法を行う基板処理装置100を説明したが、図示しない載置台に1枚のウエハWを載置する基板処理装置にも本開示のプラズマ処理方法を適用することが可能である。
【0079】
プラズマ処理方法は、高周波電力のパルス波を給電するプラズマ処理ステップにおいて、高周波電力の出力値を変動させる構成としてもよい。例えば、パルス波の給電開始時において高周波電力を段階的に増やすことで、局所的な電子密度や電子温度の上昇等を抑えることができる。上記したように高周波電源85は、500W~5kWの範囲で高周波電力を調整可能としているため、状況に応じて適切な出力値で高周波電力を出力することができる。
【0080】
また、プラズマ処理方法は、プラズマアニール工程において高周波電力の連続波を出力せずに、直ちにパルス波を出力する構成でもよい。この場合でもパルス波の高周波電力によって、プラズマ処理空間99においてプラズマを着火させることができる。
【0081】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0082】
本開示の第1の態様は、プラズマを用いて窒化膜を基板(ウエハW)に成膜するプラズマ処理方法であって、(a)窒素含有ガスを含むプラズマ処理ガスを処理容器1の内部のプラズマ処理空間99に供給する工程と、(a)の工程の実施時に、(b)プラズマ処理空間99にプラズマを生成するために、プラズマ処理空間99に露出される石英部(筐体90)に配置されたアンテナ83に高周波電源85から高周波電力を給電する工程と、を有し、(b)の工程では、高周波電力としてオンおよびオフを繰り返すパルス波をアンテナ83に給電することで、プラズマの平均電子密度と相対的に平均電子温度を低下させる。
【0083】
上記のプラズマ処理方法は、プラズマを用いて窒化膜を成膜する際に高周波電力のパルス波を給電することで、電離した電子による窒素の活性種の発生を抑制できる。すなわち、プラズマ処理方法は、パルス波の給電によって、平均電子密度を維持しながら、平均電子温度を低下させることが可能となる。このため、高い電子温度の影響によって、窒素が活性種となることによる石英部(筐体90)のダメージが抑えられる。その結果、プラズマ処理方法は、石英が削れることによるパーティクルの発生を大幅に低減できる。
【0084】
また、(b)の工程では、パルス波のデューティ比を66.7%~99.9%の範囲に設定する。これにより、プラズマ処理方法は、平均電子密度を維持しつつ、平均電子温度を充分に低下させることができる。
【0085】
また、(b)の工程では、高周波電力として500W~5000Wの範囲の出力値を給電する。これにより、プラズマ処理方法は、高周波電力のパルス波を給電する場合でも、プラズマ処理空間99においてプラズマを安定的に生成することができる。
【0086】
また、(b)の工程では、パルス波を給電するステップの前に、高周波電源85から高周波電力の連続波を給電するステップを有し、パルス波を給電するステップにおける高周波電力の出力値は、連続波を給電するステップにおける高周波電力の出力値よりも大きい。このように、高周波電力の連続波によりプラズマを着火させてからパルス波を給電することで、プラズマ処理方法は、プラズマを良好に生成しつつ、パーティクルの数を大幅に減らすことができる。
【0087】
また、パルス波を給電するステップにおける高周波電力の出力値は、連続波を給電するステップにおける高周波電力の出力値の1.5倍以上である。これにより、プラズマ処理方法は、連続波を給電するステップにおいて石英部(筐体90)のダメージを抑制できると共に、パルス波を給電するステップでプラズマ処理を効率的に行うことができる。
【0088】
また、(a)の工程および(b)の工程では、処理容器1の内部に設けられた基板(ウエハW)を複数載置する回転テーブル2を回転させる。これにより、プラズマ処理方法は、複数の基板を回転させながら窒化膜を成膜する場合でも、パーティクルの数を少なくしつつ、各基板に対してプラズマ処理を安定して行うことができる。
【0089】
本開示の第2の態様は、プラズマを用いて窒化膜を基板(ウエハW)に成膜する基板処理装置100であって、基板を収容する処理容器1と、窒素含有ガスを含むプラズマ処理ガスを処理容器1の内部のプラズマ処理空間99に供給する処理ガスノズル(第3の処理ガスノズル33~35)と、プラズマ処理空間99に露出される石英部(筐体90)にアンテナ83を配置し、プラズマ処理空間99にプラズマを生成可能なプラズマ源部80と、処理ガスノズルからプラズマ処理空間99へのプラズマ処理ガスの供給時に、アンテナ83に高周波電力を給電する高周波電源85と、を備え、高周波電源85は、高周波電力としてオンおよびオフを繰り返すパルス波をアンテナ83に給電することで、プラズマの平均電子密度と相対的に平均電子温度を低下させる。この場合でも、基板処理装置100は、プラズマを生成して窒化膜を成膜する際に、窒素の活性種を抑制できる。
【0090】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0091】
本開示のプラズマ処理方法は、ICPの他に、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)等の装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 処理容器
83 アンテナ
85 高周波電源
90 筐体
99 プラズマ処理空間
100 基板処理装置
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9