(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180573
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基板処理装置、制御システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/52 20060101AFI20231214BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C23C16/52
C23C16/455
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093974
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅敏
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030EA06
4K030FA10
4K030GA02
4K030HA01
4K030KA41
(57)【要約】
【課題】制御基板間の時間ずれおよび絶対的な時間ずれが生じ難い基板処理装置、制御システム、および制御方法を提供する。
【解決手段】基板に処理を行う基板処理装置は、複数のエンドデバイスを有し、複数のエンドデバイスを用いて基板に対して処理を行う基板処理部と、基板処理部における基板の処理を制御する制御部とを有する。制御部は、上位の制御ユニットと、上位の制御ユニットとネットワークにより接続された、下位の制御ユニットである複数の制御基板とを有し、制御基板は、エンドデバイスとの間で制御信号を授受し、かつ、時間測定のためのクロック発生器を有する。制御部は、さらに、上位の制御ユニットから一定時間クロック信号を複数の制御基板に発信し、制御基板のそれぞれにおいて上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいてクロック発生器による実働時間のずれを補正する時間ずれ補正機能部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理を行う基板処理装置であって、
複数のエンドデバイスを有し、前記複数のエンドデバイスを用いて基板に対して処理を行う基板処理部と、
前記基板処理部における前記基板の処理を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、上位の制御ユニットと、前記上位の制御ユニットとネットワークにより接続された、下位の制御ユニットである複数の制御基板と、を有し、前記制御基板は、前記エンドデバイスとの間で制御信号を授受し、かつ、時間測定のためのクロック発生器を有し、
前記制御部は、さらに、前記上位の制御ユニットから一定時間クロック信号を前記複数の制御基板に発信し、前記制御基板のそれぞれにおいて上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいて前記クロック発生器による実働時間のずれを補正する時間ずれ補正機能部を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記時間ずれ補正機能部は、
前記上位の制御ユニットに設けられ、前記ネットワーク経由で一定期間クロック信号を前記複数の制御基板に発信する信号発信部と、
前記制御基板に設けられ、前記信号発信部からのクロック信号を受信する信号受信部と、
前記制御基板に設けられ、前記信号受信部で受信した信号の周期と、前記クロック発生器の信号の周期とを比較して前記クロック発生器に基づく時間ずれを補正する補正部と、
を有する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記信号発信部は、少なくとも前記基板処理が行われている期間に前記クロック信号の発信を一定期間ごとに実施する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記クロック発生器は水晶振動子によりクロック信号を発生させ、前記信号発信部からのクロック信号は水晶振動子により発信され、前記補正部は、前記信号受信部で受信された単位時間当たりの振動回数と、前記クロック発生器の単位時間当たりの振動回数とを比較し、それに基づいて時間ずれを補正する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御基板は、前記エンドデバイスに対するデジタル信号およびアナログ信号の入力および出力の制御を行うI/Oモジュールであり、高速制御を行う制御基板である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記上位の制御ユニットは、前記基板の処理を行うための処理レシピを有し、前記処理レシピは、前記制御基板のそれぞれにローカルレシピとしてダウンロードされる、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板処理部は、前記基板に対してALD成膜を行う、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板に対して基板処理を行う基板処理装置を制御する制御システムであって、
上位の制御ユニットと、
前記上位の制御ユニットとネットワークにより接続された、下位の制御ユニットである複数の制御基板と、
を有し、
前記制御基板は、前記基板に対して処理を行うための、前記基板処理装置の構成部である複数のエンドデバイスとの間で制御信号を授受し、かつ、時間測定のためのクロック発生器を有し、
さらに、前記上位の制御ユニットから一定時間クロック信号を前記複数の制御基板に発信し、前記制御基板のそれぞれにおいて上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいて前記クロック発生器による実働時間のずれを補正する時間ずれ補正機能部を有する、制御システム。
【請求項9】
前記時間ずれ補正機能部は、
前記上位の制御ユニットに設けられ、前記ネットワーク経由で一定期間クロック信号を前記複数の制御基板に発信する信号発信部と、
前記制御基板に設けられ、前記信号発信部からのクロック信号を受信する信号受信部と、
前記制御基板に設けられ、前記信号受信部で受信した信号の周期と、前記クロック発生器の信号の周期とを比較して前記クロック発生器に基づく時間ずれを補正する補正部と、
を有する、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記信号発信部は、少なくとも前記基板処理が行われている期間に前記クロック信号の発信を一定期間ごとに実施する、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記クロック発生器は水晶振動子によりクロック信号を発生させ、前記信号発信部からのクロック信号は水晶振動子により発信され、前記補正部は、前記信号受信部で受信された単位時間当たりの振動回数と、前記クロック発生器の単位時間当たりの振動回数とを比較し、それに基づいて時間ずれを補正する、請求項9に記載の制御システム。
【請求項12】
前記制御基板は、前記エンドデバイスに対するデジタル信号およびアナログ信号の入力および出力の制御を行うI/Oモジュールであり、高速制御を行う高速制御基板である、請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記上位の制御ユニットは、前記基板の処理を行うための処理レシピを有し、前記処理レシピは、前記制御基板のそれぞれにローカルレシピとしてダウンロードされる、請求項12に記載の制御システム。
【請求項14】
前記上位の制御ユニットは、前記基板処理装置を制御する装置コントローラと、前記基板処理装置を含む複数の装置を有する基板処理システム全体を制御する設備コントローラとを有し、前記設備コントローラから前記装置コントローラを介して前記クロック信号を前記複数の制御基板に発信する、請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項15】
前記基板処理システムは、前記基板処理装置を含む複数の装置に対応する複数の装置コントローラを有し、前記複数の装置コントローラには、それぞれ複数の前記制御基板が接続され、前記設備コントローラから前記複数の装置コントローラを介して前記クロック信号を前記複数の装置の前記複数の制御基板に発信する、請求項14に記載の制御システム。
【請求項16】
基板に対して基板処理を行う基板処理装置を制御する制御方法であって、
上位の制御ユニットと、前記上位の制御ユニットとネットワークにより接続された、下位の制御ユニットである複数の制御基板と、を有する制御システムを用い、前記制御基板と、前記基板に対して処理を行うための、前記基板処理装置の構成部である複数のエンドデバイスとの間で制御信号を授受して基板処理を行う工程と、
前記上位の制御ユニットから一定時間クロック信号を前記複数の制御基板に発信し、前記制御基板のそれぞれにおいて上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいて、前記制御基板に設けられた時間測定のためのクロック発生器による実働時間のずれを補正する工程と、
を有する制御方法。
【請求項17】
少なくとも前記基板処理が行われている期間に前記クロック信号の発信を一定期間ごとに実施する、請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
前記上位の制御ユニットからのクロック信号および前記制御基板に設けられた前記クロック発生器からのクロック信号は、いずれも水晶振動子により発信され、これらのクロック信号の単位時間当たりの振動回数を比較し、それに基づいて時間ずれを補正する、請求項16に記載の制御方法。
【請求項19】
前記制御基板は、前記エンドデバイスに対するデジタル信号およびアナログ信号の入力および出力の制御を行うI/Oモジュールであり、高速制御を行う高速制御基板である、請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項20】
前記上位の制御ユニットは、前記基板の処理を行うための処理レシピを有し、前記基板処理を行う工程は、前記処理レシピを前記制御基板のそれぞれにローカルレシピとしてダウンロードして行われる、請求項19に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、制御システム、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体装置の製造過程では、基板である半導体ウエハに、成膜処理、エッチング処理、熱処理等の種々の処理が行われる。これらの処理を行う処理装置、特に、成膜処理としてALDプロセスを行う処理装置においては、ALDのための高速開閉バルブや、自動圧力制御バルブ等、高速制御が必要な複数のエンドデバイスが存在する。これらのエンドデバイスの高速制御を実現するための技術として、特許文献1には、装置の制御を行うコントローラに、エンドデバイスの高速制御に特化した複数の高速制御基板を、ネットワークを介して接続し、コントローラから与えられた処理レシピに基づきエンドデバイスを制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、制御基板間の時間ずれおよび絶対的な時間ずれが生じ難い基板処理装置、制御システム、および制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理装置は、基板に処理を行う基板処理装置であって、複数のエンドデバイスを有し、前記複数のエンドデバイスを用いて基板に対して処理を行う基板処理部と、前記基板処理部における前記基板の処理を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、上位の制御ユニットと、前記上位の制御ユニットとネットワークにより接続された、下位の制御ユニットである複数の制御基板と、を有し、前記制御基板は、前記エンドデバイスとの間で制御信号を授受し、かつ、時間測定のためのクロック発生器を有し、前記制御部は、さらに、前記上位の制御ユニットから一定時間クロック信号を前記複数の制御基板に発信し、前記制御基板のそれぞれにおいて上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいて前記クロック発生器による実働時間のずれを補正する時間ずれ補正機能部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、制御基板間の時間ずれや絶対的な時間ずれが生じ難い基板処理装置、制御システム、および制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る基板処理装置の制御部を含む全体制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】制御部に設けられた時間ずれ補正機能部を説明するためのブロック図である。
【
図4】制御部による制御動作を示すフローチャートである。
【
図5】制御部の要部の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】ローカルレシピをダウンロードした際の制御部の状態を示すブロック図である。
【
図7】ローカルレシピをスタートした際の制御部の状態を示すブロック図である。
【
図8】ローカルレシピに基づいてエンドデバイスの制御を行い、基板処理を実行する際の制御部の状態を示すブロック図である。
【
図9】高速制御基板において時間ずれが発生した際の制御部の状態を示すブロック図である。
【
図10】上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいて高速制御基板における実働時間のずれを補正する際の制御部の状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0009】
<基板処理装置>
図1は一実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図である。
本実施形態では、基板処理装置100として、原料ガスと反応ガスを用いてALDにより基板上に膜を形成する成膜装置の場合を例示する。基板処理装置100は、基板処理部200と、制御部300とを有する。
【0010】
[基板処理部]
基板処理部200は、処理容器1と、載置台2と、シャワーヘッド3と、ガス供給部4と、排気部5とを有している。
【0011】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。処理容器1の側壁には基板Wを搬入出するための搬入出口(図示せず)が形成され、搬入出口はゲートバルブ(図示せず)で開閉可能となっている。また、処理容器1の底部には排気口1aが設けられている。
【0012】
載置台2は、基板Wに対応した大きさの円板状をなし、処理容器1内に水平に設けられ、支持部材21に支持されている。載置台2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒーター(図示せず)が埋め込まれており、ヒーターはヒーター電源(図示せず)から給電されることにより昇温される。載置台2の上面近傍には温度センサー(図示せず)設けられており、温度センサーによりヒーターの出力を制御することにより、基板Wの温度を制御する。
【0013】
支持部材21は、載置台2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構22に接続されている。昇降機構22により載置台2が支持部材21を介して昇降可能となっている。ALDプロセス中に昇降機構22により載置台2を昇降させることにより基板W近傍の圧力制御を行うことができる。
【0014】
支持部材22と処理容器1の底壁との間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ23が設けられている。
【0015】
シャワーヘッド3は、処理容器1の上部に載置台2に対向するように設けられ、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に吐出するガス吐出部として機能する。シャワーヘッド3は、例えば金属材料により形成され、載置台2とほぼ同じ直径を有する。シャワーヘッド3の内部には、ガスを拡散するガス拡散空間31が形成されており、ガス拡散空間31には上方からガス導入管32が接続されている。シャワーヘッド3の底壁には多数のガス吐出孔33が形成され、ガス導入管32からガス拡散空間31に供給されたガスがガス吐出孔33から処理容器1内にガスが吐出されるように構成されている。
【0016】
ガス供給部4は、ALD成膜に用いる原料ガス、反応ガス、パージガス等のガスを、シャワーヘッド3を経て処理容器1に供給するためものものである。原料ガスは、成膜しようとする膜の金属成分を含む化合物ガスであり、反応ガスは原料ガスと反応して膜を形成するためのガスである。また、パージガスは、処理容器1内に残留するガスをパージするためのものであり、N2ガスや希ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0017】
ガス供給部4は、原料ガスを供給する原料ガス供給源41aと、反応ガスを供給する反応ガス供給源42aと、パージガスを供給する第1パージガス供給源43aおよび第2パージガス供給源44aとを有する。
【0018】
原料ガス供給源41a、反応ガス供給源42a、第1パージガス供給源43a、および第2パージガス供給源44aには、それぞれ、原料ガス供給配管41b、反応ガス供給配管42b、第1パージガス供給配管43b、および第2パージガス供給配管44bが接続されている。原料ガス供給配管41bには、原料ガス供給源41a側から順に、前段側バルブ41c、流量制御器41d、および、後段側バルブ41eが介設されている。反応ガス供給配管42bには、反応ガス供給源42a側から順に、前段側バルブ42c、流量制御器42d、および、後段側バルブ42eが介設されている。第1パージガス供給配管43bには、第1パージガス供給源43a側から順に、前段側バルブ43c、流量制御器43d、および、後段側バルブ43eが介設されている。第2パージガス供給配管44bには、第2パージガス供給源44a側から順に、前段側バルブ44c、流量制御器44d、および、後段側バルブ44eが介設されている。
【0019】
原料ガス供給配管41b、反応ガス供給配管42b、第1パージガス供給配管43b、および第2パージガス供給配管44bは共通配管45に合流し、共通配管45はガス導入管32に接続されている。
【0020】
第1パージガス供給配管43bおよび第2パージガス供給配管44bは、それぞれ原料ガス供給配管41b側および反応ガス供給配管42b側に設けられており、これらを通流するパージガスは、それぞれ原料ガスおよび反応ガスのキャリアガスとしても機能する。
【0021】
前段側バルブ41c、42c、43c、44cは通常の開閉バルブであり、後段側バルブ41e、42e、43e、44eはALD用の高速開閉バルブである。流量制御器41d、42d、43d、44dとしては、例えばマスフローコントローラが用いられる。
【0022】
排気部5は、処理容器1の内部を排気して、処理容器1内を減圧する。排気部5は、排気配管51、自動圧力制御バルブ(APC)52および真空ポンプ53を含む。排気配管51は、排気口1aに接続されている。自動圧力制御バルブ(APC)52および真空ポンプ53は、排気配管51に介設されている。自動圧力制御バルブ(APC)52としては、開度を調整することで排気配管51内のコンダクタンスを制御するバルブを用いることができる。圧力制御バルブ(APC)52は、処理容器1内の圧力を検出する圧力センサー(図示せず)の圧力値が所望の値になるように開度が制御される。
【0023】
基板処理部200においては、制御部300の制御により、以下のようなプロセスが実行される。
【0024】
まず、処理容器1内に基板Wを搬入して載置台2上に載置し、処理容器1内を所定の減圧状態に保持し、ヒーターにより載置台2の温度を設定温度に制御する。この状態で、ガス供給部4からシャワーヘッド3を介して処理容器1内にパージガスを供給し、処理容器1内をパージする。
【0025】
その後、ALD用の高速開閉バルブ41e~44eを高速で開閉して、処理容器1内への原料ガスの供給、処理容器1内の残留ガスのパージ、処理容器1内への反応ガスの供給、処理容器1内の残留ガスのパージを高速で繰り返し行う。これにより、基板Wへの原料ガスの吸着および原料ガスと反応ガスとの反応による膜形成が繰り返されるALDプロセスが行われ、基板W上に設定膜厚の膜が成膜される。
【0026】
このALDに際しては、ALDプロセスの各ステップにおいて、自動圧力制御バルブ(APC)52による高速圧力制御、昇降機構22による載置台2の高速昇降が行われる。
【0027】
[基板処理装置の制御部を含む全体制御システム]
図2は制御部300を含む全体制御システムの概略構成を示すブロック図である。制御部300は、基板処理部200を構成する各構成部を制御し、基板処理装置100での処理を実行させるためのものである。制御部300は、基板処理装置100を含む基板処理システムの全体を制御する全体制御システム600の一部として構成される。
【0028】
図2に示すように、全体制御システム600は、基板処理システム全体を制御する統括部であるEC(Equipment Controller)501と、その下位に存在する、基板処理システムを構成する各装置(モジュール)を制御する複数のMC(Module Controller)401とを有する。
【0029】
EC501は、基板処理システムの複数の装置の制御を行う共通の上位制御部として機能し、複数の装置(モジュール)の一つとして基板処理装置100が含まれる。基板処理装置100以外の装置としては、例えば、ロードロック室、ローダーユニット等を挙げることができる。MC401は複数の装置(モジュール)に対応して複数設けられるが、
図2では基板処理装置100のMC401のみを示し、他は省略している。
【0030】
制御部300は、EC501と、基板処理装置100に対応するMC401と、その下位に設けられた複数の高速制御基板413とを備えている。高速制御基板413は高速制御対象機器である複数のエンドデバイス201を制御するI/Oモジュールとして構成される。高速制御基板413から見て、MC401およびEC501は上位制御ユニットとしてとして位置付けられる。
【0031】
EC501は、CPU(中央演算装置)503と、揮発性メモリとしてのRAM505と、記憶部としてのハードディスク装置507と、を有している。EC501と各MC401は、ネットワーク513により接続されている。ネットワーク513としては、超高速フィールドネットワークシステムであるEther-CAT(以下、E-CATと記す)を好適に用いることができる。ネットワーク513は、スイッチングハブ(HUB)515を有している。このスイッチングハブ515は、EC501からの制御信号に応じてEC501の接続先としてのMC401の切り替えを行う。
【0032】
また、EC501は、ネットワーク601を介して基板処理システムが設置されている工場全体の製造工程を管理するMES(Manufacturing
Execution System)としてのホストコンピュータ603に接続されている。
【0033】
また、EC501には、ユーザーインターフェース511も接続されている。ユーザーインターフェース511は、工程管理者が基板処理システムを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理システムの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ、メカニカルスイッチ等を有している。
【0034】
EC501は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体517に対して情報を記録し、記憶媒体517より情報を読み取ることができるようになっている。
【0035】
EC501では、ユーザーインターフェース511においてユーザ等によって指定された基板Wの処理レシピを含むプログラムをCPU503がハードディスク装置507や記憶媒体517から読み出す。そして、EC501から複数のMC401に処理レシピを含むプログラムを送信するように構成されている。上述したように複数のMC401のうち一つが基板処理装置100の制御部300に対応する。
【0036】
複数のMC401のうち成膜装置100に対応し、制御部300に含まれるMC401は、CPU403と、RAMなどの揮発性メモリ部405と、I/O情報記憶部としての不揮発性メモリ部407と、I/O制御部409と、を有している。
【0037】
不揮発性メモリ部407には、基板処理装置100における種々の履歴情報が保存される。また、不揮発性メモリ部407は、I/O情報記憶部としても機能し、後述するようにMC401と高速制御対象機器である複数のエンドデバイス201との間で取り交される各種のI/O情報を不揮発性メモリ部407に随時書き込んで保存できるように構成されている。
【0038】
エンドデバイス201としては、ガス供給部4における高速開閉バルブ41e~44e、流量制御器41dから44e、排気部5の自動圧力制御バルブ(APC)52、昇降機構22、ヒーターの電源、各種センサー類等を挙げることができる。
【0039】
MC401のI/O制御部409は、高速制御基板413に種々の制御信号を送出したり、高速制御基板413から各エンドデバイス201に関するステータス情報などの信号を受け取ったりする。MC401による各エンドデバイス201の制御は、高速制御基板413を介して行われる。高速制御基板413は上述したようにI/Oモジュールとして構成され、各エンドデバイス201への制御信号およびエンドデバイス201からの入力信号の伝達を行う。高速制御基板413と各エンドデバイス201との間はデジタル/アナログ信号で接続される。MC401は、ネットワーク411を介して複数の高速制御基板413に接続される。ネットワークとしては超高速フィールドネットワークであるE-CATが好適に用いられ、E-CAT通信が行われる。MC401に接続されるネットワーク411は、例えばチャンネルCH0,CH1,CH2のような複数の系統を有している。
【0040】
下位の制御ユニットである複数の高速制御基板413は、成膜装置100を構成する各エンドデバイス201に接続される複数のI/Oボード415を有している。このI/Oボード415は、MC401の支配のもとで動作する。高速制御基板413におけるデジタル信号、アナログ信号およびシリアル信号の入出力の制御は、これらのI/Oボード415において行われる。
【0041】
I/Oボード415において管理される入出力情報は、デジタルインプット情報DI、デジタルアウトプット情報DO、アナログインプット情報AIを含んでいる。DIは、下位の各エンドデバイス201から上位のMC401へインプットされるデジタル情報に関する。DOは、上位のMC401から下位の各エンドデバイス201へアウトプットされるデジタル情報に関する。AIは、各エンドデバイスからMC401へインプットされるアナログ情報に関する。
【0042】
DIおよびAIには、例えば各エンドデバイス201のステータスに関する情報が含まれている。DOには、例えば、各エンドデバイスへのプロセス条件に関する値の設定の指令(コマンド)が含まれている。すなわち、DIおよびAIは例えば機器の監視処理を行い、DOは例えば機器の操作を行う。
【0043】
DI、DO、AIは、それぞれの内容に対応してI/Oアドレスが付与されている。各I/Oアドレスには、例えば16ビット(0~15)のデジタル情報またはアナログ情報が含まれている。アナログ情報は、例えば0~FFFの16進数で表される。また、各I/Oアドレスにはアドレス番号が割り当てられている。さらに、I/Oボード415には、数字の1から始まるノード番号が割り当てられている。そして、複数のチャンネルには、上述のように、例えばCH0,CH1、CH2のような番号が付与されている。したがって、チャンネル番号と、ノード番号と、I/Oアドレス番号の3種類のパラメータによって、DI、DO、AIのI/Oアドレスを特定できるようになっている。
【0044】
各高速制御基板413が制御するエンドデバイス201の分類は任意である。各高速制御基板413に接続するエンドデバイス201を同じ種類にしてもよいし、複数種類混合してもよい。前者の例としては、複数の高速制御基板413のそれぞれを、例えば、ガス供給部4のバルブの制御用、自動圧力制御バルブ52用、昇降機構22用等に分類する場合が挙げられる。また、後者の例としては、1枚の高速制御基板413にエンドデバイス201として、ガス供給部のバルブや自動圧力制御バルブ等、複数種類のものを接続し、例えば、ガス供給部の複数のバルブを複数の高速制御基板413に亘って接続して制御する場合が挙げられる。
【0045】
上述したように、基板処理装置100において基板Wを処理するための処理レシピは、EC501から基板処理装置100に対応するMC401に送信される。MC401に送信された処理レシピは複数のエンドデバイス201を制御するものであり、処理レシピは各高速制御基板413に対応するローカルレシピ(プログラム)としてネットワーク411を経由してMC401から各高速制御基板413にダウンロードされる。そして、高速制御基板413は、ダウンロードされたローカルレシピに基づいて対応するエンドデバイス201を制御する。
【0046】
図3に示すように、各高速制御基板413には時間測定のためのクロック発生器420が搭載されている。ローカルレシピの実行に際しては、クロック発生器420により発生されるクロックに基づいて、操作時間、監視時間等がプログラム内の固定計算式で決定される。クロック発生器420は、例えば水晶振動子のような素子を有し、クロック信号を発生する。
【0047】
制御部300は、上位の制御ユニットから一定時間クロック信号を下位の制御ユニットである各高速制御基板413に送信し、各高速制御基板413において上位の制御ユニットからのクロック信号に基づいて実働時間のずれを補正する時間ずれ補正機能部を有する。
【0048】
すなわち、
図3に示すように、時間ずれ補正機能部430は、上位の制御ユニットであるEC501に設けられた信号発信部521と、各高速制御基板413に設けられた信号受信部421と、各高速制御基板413に設けられた補正部422とを有する。信号発信部521は、ネットワーク513、411、例えばE-CAT通信経由で一定時間、例えば水晶振動子によりクロック信号を高速制御基板413に発信する。信号受信部421は、信号発信部521からのクロック信号を受信する。補正部422は、信号受信部421で受信した信号の周期とクロック発生器420の信号の周期とを比較してクロック発生器420に基づく時間ずれをリアルタイムで補正する。信号発信部521からの信号発信は、一定期間ごとに複数回行ってもよく、少なくとも基板処理が行われている期間に一定期間ごとの信号発信を継続してもよい。また、一定期間ごとの信号発信を常時行ってもよい。
【0049】
具体例を挙げれば、信号発信部521からは、一定時間、例えば1secの間、例えば水晶振動子により一定周期のクロック信号が、一定期間ごと、例えば1minに一度発信され、各高速制御基板413の信号受信部421で受信される。そして、各高速制御基板413の補正部422では、例えば、信号受信部421で受信された水晶振動子の時間当たりの振動回数と、クロック発生器420の水晶振動子の単位時間当たりの振動回数が比較され、それに基づいて時間ずれを補正する。
【0050】
<制御動作>
次に、以上のように構成された基板処理装置100における制御動作について
図4~9を参照して説明する。
図4は基板処理装置100の制御部300による制御動作を示すフローチャート、
図5は制御部300の要部の概略構成を示すブロック図、
図6~10は制御動作を説明するための制御部300の状態を示すブロック図である。
【0051】
本実施形態では、基板処理の例として上述したようなALDプロセスが行われ、ALDプロセスは、処理レシピに基づき制御部300により基板処理部200の複数のエンドデバイス201を制御することにより行われる。
【0052】
まず、
図5に示す構成の制御部300において、EC501から基板処理装置100に対応するMC401に送信された基板Wの処理を行うための処理レシピを、ネットワーク411を経由して各高速制御基板413にローカルレシピとしてダウンロードする(ステップST1、
図6)。上述したように、EC501およびMC401は上位の制御ユニットとして機能し、高速制御基板413は下位の制御ユニットとして機能する。また、ネットワーク411には、例えばE-CATを好適に用いることができる。
【0053】
次に、上位制御ユニットであるMC401から各高速制御基板413に対してローカルレシピのスタートを同時に指示する(ステップST2、
図7)。
【0054】
次に、ローカルレシピに基づいて、高速制御基板413(I/Oボード415)によりエンドデバイス(高速制御対象機器)201の制御、例えばDOによる機器操作とDI/AIによる機器の監視処理を行い、基板処理、例えば上述したようなALDプロセスを実行する(ステップST3、
図8)。
【0055】
ところで、基板処理として、ALDプロセスのような高速の制御が必要な場合、制御周期はネットワーク、例えばE-CATの周期よりも短くなる。このため、制御時間は各高速制御基板413に設けられているクロック発生器420に基づいて決定される。
【0056】
しかし、クロック発生器420に基づいてローカルレシピ中の操作時間、監視時間を決定する場合には、周囲環境、クロック発生器420の水晶振動子の個体差、経年劣化などの要因により、複数の高速制御基板413の間で相対的な時間ずれや、例えば1分が1分でないという絶対的な時間ずれが発生する可能性がある。例えば、
図9に示すように、上位の制御システムからの指示が1secであっても、高速制御基板413では実働時間がずれてしまう。
【0057】
このような時間ずれは1回あたりが僅かであっても、膜厚が厚い等によりレシピ時間が長くなると、ずれが累積し影響が大きくなる。例えば、連動して操作されるべき複数のエンドデバイスにおいて操作の連動性が保てなくなる場合がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、周囲環境、個体差、経年劣化等に左右され難い上位の制御システムからのクロック信号に基づいて高速制御基板413における実働時間のずれを補正する(ステップST4、
図10)。このような実働時間のずれは上述したように時間ずれ補正機能部430により補正する。具体的には、時間ずれ補正機能部430においては、上位の制御システムであるEC501の信号発信部521からネットワーク513、411、例えばE-CAT通信経由で一定時間ごとに例えば水晶振動子によりクロック信号を高速制御基板413に発信する。そして、その信号を高速制御基板413の信号受信部421で受信し、補正部422において、信号受信部421で受信した信号の周期とクロック発生器420の信号の周期とを比較してクロック発生器420に基づく時間ずれをリアルタイムで補正する。これにより、高速制御基板413間での相対的な時間ずれや、絶対的な時間ずれを抑制することができる。
【0059】
例えば、
図10に示すように、各高速制御基板413において、指示時間である1secからずれた時間を、上位の制御システムであるEC501から例えば1minごとに発生するクロック信号に基づいて補正部422により補正することにより解消することができる。
【0060】
また、基板処理システムを構成する基板処理装置100を含む複数の装置間においても制御の時間ずれが生じるおそれがあるが、EC501の信号発生器521からのクロック信号を各装置の複数の高速制御基板に対して送信して補正することにより、装置間の時間ずれも解消することができる。
【0061】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0062】
例えば、上記実施形態では、基板処理装置としてALD成膜を行う装置を例にとって説明したが、上位の制御ユニットからの指令を、複数の制御基板を介して各エンドデバイスに与えて制御しつつ基板処理を行うものであればALD成膜を行う装置に限るものではない。
【0063】
また、制御部の構成も、上位の制御システムから複数の制御基板を経て各エンドデバイスを制御するものであれば
図2のものに限らない。
【0064】
また、処理対象となる基板は、特に限定されるものではなく、例えば、半導体ウエハ、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板、セラミック基板等を用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1;処理容器
2;載置台
3;シャワーヘッド
4;ガス供給部
5;排気部
22;昇降機構
41e、42e、43e、44e;後段側バルブ(高速開閉バルブ)
52;自動圧力制御バルブ(APC)
100;基板処理装置
200;処理部
201;エンドデバイス
300;制御部
401;MC(上位の制御システム)
411、513;ネットワーク(E-CAT)
420;クロック発生器
421;信号受信部
422;補正部
430;時間ずれ補正機能部
501;EC(上位の制御システム)
600;全体制御システム
W;基板