(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180599
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】検査システム、検査装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094030
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】道本 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】坂田 泰啓
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA89
2G051AB02
2G051AB12
2G051AC15
2G051BB01
2G051CA04
2G051CB01
2G051DA06
2G051EA12
2G051EB01
2G051EB05
(57)【要約】
【課題】被検物の表面に対する詳細な検査を行うことが可能な検査システムを提供する。
【解決手段】検査システムは、検査ヘッド110により撮像取得された被検物の表面の画像に基づいて、被検物の表面において異常の候補となる異常候補部の大きさを求める画像処理部132と、画像処理部132に求められた異常候補部の大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する異常判定部133と、異常候補部の大きさが第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定するデータ判定部42と、データ判定部42による判定結果に基づいて、第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部の数を含む異常候補部に関する統計的データを生成するデータ生成部43と、データ生成部43に生成された統計的データを出力するデータ出力部41とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の表面を照明する照明部と前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する撮像部とを備え、前記被検物の表面を検査する検査システムであって、
前記撮像部に撮像された前記被検物の表面の画像に基づいて、前記被検物の表面において異常の候補となる異常候補部の大きさを求める画像処理部と、
前記画像処理部に求められた前記異常候補部の大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する異常判定部と、
前記異常判定部により前記第1の閾値よりも大きいと判定された前記異常候補部の前記被検物の表面における位置を異常部分として示す指示器と、
前記異常候補部の大きさが前記第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定するデータ判定部と、
前記データ判定部による判定結果に基づいて、前記第1の閾値よりも小さく且つ前記第2の閾値よりも大きい前記異常候補部の数を含む前記異常候補部に関する統計的データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部に生成された前記統計的データを出力するデータ出力部とを有する検査システム。
【請求項2】
前記照明部は、前記被検物の表面の法線に対して第1の角度だけ傾斜した方向から、前記被検物の表面を照明し、
前記撮像部は、前記法線に対して前記照明部と同じ側に第2の角度だけ傾斜した方向から、前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記第1の角度が25度以上35度以下の角度であり、
前記第2の角度が25度以上35度以下の角度である請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
被検物を所定の検査位置に向けて搬送する搬送装置をさらに備え、
前記照明部は、前記搬送装置により前記所定の検査位置に向けて搬送された前記被検物の表面を照明し、
前記撮像部は、前記搬送装置により前記所定の検査位置に向けて搬送されて前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像し、
前記所定の検査位置に対する前記被検物の位置ずれを検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された前記被検物の位置ずれに基づいて、前記照明部および前記撮像部の位置を補正する位置補正部とを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
被検物の表面を検査する検査装置であって、
前記被検物の表面の法線に対して第1の角度だけ傾斜した方向から、前記被検物の表面を照明する照明部と、
前記法線に対して前記照明部と同じ側に第2の角度だけ傾斜した方向から、前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する撮像部とを有する検査装置。
【請求項6】
前記第1の角度が25度以上35度以下の角度であり、
前記第2の角度が25度以上35度以下の角度である請求項2に記載の検査装置。
【請求項7】
前記撮像部に撮像された前記被検物の表面の画像に基づいて、前記被検物の表面において異常の候補となる異常候補部の大きさを求める画像処理部と、
前記画像処理部に求められた前記異常候補部の大きさが閾値よりも大きいか否かを判定する異常判定部とを有する請求項5または6に記載の検査装置。
【請求項8】
被検物の表面を照明する照明部と前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する撮像部とを備え、前記被検物の表面を検査する検査システムに関するデータの処理を行うためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記撮像部に撮像された前記被検物の表面の画像に基づいて、前記被検物の表面において異常の候補となる異常候補部の大きさを求める画像処理と、
前記画像処理により求めた前記異常候補部の大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する異常判定処理と、
前記異常判定処理において前記第1の閾値よりも大きいと判定された前記異常候補部の前記被検物の表面における位置を異常部分として示す異常指示処理と、
前記異常候補部の大きさが前記第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定するデータ判定処理と、
前記データ判定処理による判定結果に基づいて、前記第1の閾値よりも小さく且つ前記第2の閾値よりも大きい前記異常候補部の数を含む前記異常候補部に関する統計的データを生成するデータ生成処理と、
前記データ生成処理により生成した前記統計的データを出力するデータ出力処理とを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システム、検査装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検物の表面の検査を行う方法として、照明部に照明される被検物をカメラで撮影し、画像処理によって被検物の表面の異常を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような被検物の表面検査においては、被検物の表面に対する詳細な検査が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る検査システムは、被検物の表面を照明する照明部と前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する撮像部とを備え、前記被検物の表面を検査する検査システムであって、前記撮像部に撮像された前記被検物の表面の画像に基づいて、前記被検物の表面において異常の候補となる異常候補部の大きさを求める画像処理部と、前記画像処理部に求められた前記異常候補部の大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により前記第1の閾値よりも大きいと判定された前記異常候補部の前記被検物の表面における位置を異常部分として示す指示器と、前記異常候補部の大きさが前記第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定するデータ判定部と、前記データ判定部による判定結果に基づいて、前記第1の閾値よりも小さく且つ前記第2の閾値よりも大きい前記異常候補部の数を含む前記異常候補部に関する統計的データを生成するデータ生成部と、前記データ生成部に生成された前記統計的データを出力するデータ出力部とを有する。
【0005】
本発明に係る検査装置は、被検物の表面を検査する検査装置であって、前記被検物の表面の法線に対して第1の角度だけ傾斜した方向から、前記被検物の表面を照明する照明部と、前記法線に対して前記照明部と同じ側に第2の角度だけ傾斜した方向から、前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する撮像部とを有する。
【0006】
本発明に係るプログラムは、被検物の表面を照明する照明部と前記照明部に照明された前記被検物の表面を撮像する撮像部とを備え、前記被検物の表面を検査する検査システムに関するデータの処理を行うためのプログラムであって、コンピュータに、前記撮像部に撮像された前記被検物の表面の画像に基づいて、前記被検物の表面において異常の候補となる異常候補部の大きさを求める画像処理と、前記画像処理により求めた前記異常候補部の大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する異常判定処理と、前記異常判定処理において前記第1の閾値よりも大きいと判定された前記異常候補部の前記被検物の表面における位置を異常部分として示す異常指示処理と、前記異常候補部の大きさが前記第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定するデータ判定処理と、前記データ判定処理による判定結果に基づいて、前記第1の閾値よりも小さく且つ前記第2の閾値よりも大きい前記異常候補部の数を含む前記異常候補部に関する統計的データを生成するデータ生成処理と、前記データ生成処理により生成した前記統計的データを出力するデータ出力処理とを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る検査システムを示す模式図である。
【
図3】検査装置およびデータ処理装置に関する制御ブロック図である。
【
図4】被検物の表面の画像を比較して示す図である。
【
図8】本実施形態に係る検査システムにおける検査の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係る検査システムにおける検査の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願の好ましい実施形態について説明する。本実施形態では、異常を精度よく検出することが可能な検査装置、およびこれを備えた検査システムについて説明する。
【0009】
本実施形態に係る検査システム1は、
図1に示すように、搬送装置10と、検査装置100と、指示器30と、データ処理装置40とを備える。本実施形態に係る検査システム1(検査装置100)により検査が行われる被検物WKとして、自動車のボディや、洗濯機のボディ等がある。図示を省略するが、例えば、自動車のボディの塗装工程において、電着装置(例えば、
図1に示す電着装置60)等による下塗りと、自動塗装装置等による中塗り、上塗り、およびクリア塗装が行われる。本実施形態に係る検査システム1は、例えば、クリア塗料が塗布された状態の自動車のボディの表面検査を行うことが可能である。また、本実施形態に係る検査システム1は、上塗り塗料が塗布された状態の自動車のボディの表面検査を行ってもよく、中塗り塗料が塗布された状態の自動車のボディの表面検査を行ってもよく、下塗り塗料(電着塗料)が塗布された状態の自動車のボディの表面検査を行ってもよい。
【0010】
搬送装置10は、パレット式コンベア等を用いて構成される。搬送装置10は、パレット11に載せられた被検物WKを、前の工程ラインから検査ラインの上流側の所定の検査位置に向けて搬送する。検査ラインの上流側では、検査装置100による被検物WKの表面検査が行われる。また、搬送装置10は、パレット11に載せられた被検物WKを、検査ラインの上流側の所定の検査位置から検査ラインの下流側に向けて搬送する。検査ラインの下流側では、作業員による被検物WKの目視検査および修正が行われる。検査ラインの下流側には、被検物WKの表面における異常部分Aを示す指示器30が配設される。
【0011】
検査装置100は、搬送装置10により検査ラインの上流側の所定の検査位置に向けて搬送された被検物WKの表面検査を行う。検査装置100は、
図1に示すように、検査ヘッド110と、ロボットアーム120と、装置制御部130と、通信部140とを有する。検査ヘッド110は、装置制御部130の制御により被検物WKの表面の画像を取得する。検査ヘッド110により被検物WKの表面の画像を取得する際、被検物WKは検査ライン上で移動していてもよく、停止していてもよい。被検物WKが移動している最中に画像を取得する場合、装置制御部130は、ロボットアーム120のエンドエフェクタとして取り付けられている検査ヘッド110が検査ライン上で移動する被検物WKに追従するように、ロボットアーム120の制御を行う。検査ヘッド110は、取得した被検物WKの表面の画像データを、装置制御部130を介して通信部140へ出力する。検査ヘッド110は、ロボットアーム120の先端部に取り付け保持される。ロボットアーム120は、検査ヘッド110を被検物WKに対して(3次元方向に)相対移動可能に保持する。なお、検査ヘッド110およびロボットアーム120は、被検物WKの大きさや形状等に応じて、被検物WK(所定の検査位置)の周辺部に複数(もしくは単数)設けられる。
【0012】
検査ヘッド110は、
図2に示すように、照明部111と、撮像部112と、距離検出部113と、筐体部115と、姿勢調整機構116とを有する。照明部111は、LED(Light Emitting Diode)および拡散板等を用いて構成される。照明部111は、被検物WKの表面の法線VLに対して第1の角度θ1だけ傾斜した方向から、被検物WKの表面を照明する。照明部111の傾斜角度である第1の角度θ1は、25度以上35度以下の角度に設定される。
【0013】
撮像部112は、デジタルカメラ等を用いて構成される。撮像部112は、被検物WKの表面の法線VLに対して照明部111と同じ側に第2の角度θ2だけ傾斜した方向から、照明部111に照明された被検物WKの表面(照明部111から被検物WKの表面に照射される照明光によって形成される照明像(鏡像))を撮像する。言い換えると、撮像部112は、被検物WKの表面の法線VLに対して照明部111と同じ側に第2の角度θ2だけ傾斜した方向から、撮像部112に入射する光を検出する。撮像部112は、装置制御部130と電気的に接続され、被検物WKの表面からの光の検出信号を装置制御部130に送信する。撮像部112の傾斜角度である第2の角度θ2は、25度以上35度以下の角度に設定される。なお、第1の角度θ1と第2の角度θ2は、同じ角度であってもよく、異なる角度であってもよい。
【0014】
距離検出部113は、被検物WKの表面からの距離を計測可能な測距センサを用いて構成される。距離検出部113は、照明部111および撮像部112と干渉しないように、例えば筐体部115の中央部に取り付けられる。距離検出部113は、被検物WKの表面から検査ヘッド110(筐体部115)までの距離を検出する。
【0015】
筐体部115は、先端側が開口した箱状に形成され、照明部111、撮像部112、および距離検出部113等を収容保持する。筐体部115は、姿勢調整機構116を介してロボットアーム120の先端部に取り付け保持される。なお、姿勢調整機構116が無い場合には、筐体115がロボットアーム120の先端部に直接的に取り付け保持される。
【0016】
姿勢調整機構116は、例えばサーボモータ等を用いて構成され、ロボットアーム120に対して検査ヘッド110(筐体部115)を回動させることができるようになっている。姿勢調整機構116は、距離検出部113により検出された被検物WKの表面から検査ヘッド110までの距離に基づいて、検査ヘッド110を回動させることで、被検物WKに対する検査ヘッド110の姿勢(相対位置および向き)を調整する。これにより、ロボットアーム120を作動させる場合よりも、短時間で精度よく被検物WKに対する検査ヘッド110の姿勢を調整することができる。
【0017】
装置制御部130は、例えばPC(Personal Computer)等を用いて構成され、
図1および
図3に示すように、検査ヘッド110と、ロボットアーム120と、通信部140と電気的に接続される。装置制御部130は、検査ヘッド110およびロボットアーム120の作動を制御する。また、装置制御部130は、検査ヘッド110の撮像部112から送信された光の検出信号に基づいて、被検物WKの表面の画像を生成する。装置制御部130は、生成した被検物WKの表面の画像データを、通信部140を介してデータ処理装置40に送信する。
【0018】
なお、装置制御部130は、被検物WKの表面における第1の検査点(最初の検査点)での画像データを生成すると、生成した第1の検査点での画像データと、記憶部(図示せず)に予め記憶された設計上の第1の検査点での画像データとを比較して、搬送装置10により搬送された被検物WKの所定の検査位置に対する位置ずれを検出する。所定の検査位置に対する被検物WKの位置ずれは、例えば、搬送装置10の搬送誤差により生じる。
装置制御部130は、検出した被検物WKの位置ずれを記憶部に記憶させ、当該位置ずれを補正した制御信号をロボットアーム120に出力する。ロボットアーム120は、装置制御部130からの制御信号により、第1の検査点の位置が設計上の第1の検査点の位置と一致するように、検査ヘッド110(照明部111および撮像部112)の位置を補正し、検査ヘッド110が被検物WKの表面の画像の取得を開始する。これにより、搬送装置10の搬送誤差に拘わらず、被検物WKの表面の画像を精度よく取得することができる。
【0019】
被検物WKの表面における第1の検査点は、近接する他の部位に対して形状変化が大きい部位に設定される。例えば、被検物WKが自動車のボディの場合、被検物WKの表面における第1の検査点は、ボンネットの角や、ヘッドランプの切込み部の位置に設定される。被検物WKが洗濯機のボディの場合、被検物WKの表面における第1の検査点は、洗濯機のボディの四辺の角や、メータ類の取り付け部の位置に設定される。
【0020】
また、装置制御部130は、被検物WKの表面における第1の検査点(最初の検査点)での画像データに限らず、被検物WKの表面における複数の検査点での画像データに基づいて、搬送装置10により搬送された被検物WKの所定の検査位置に対する位置ずれを検出してもよい。これにより、被検物WKの位置ずれを精度よく検出することができる。
【0021】
また、装置制御部130は、送受信部131と、画像処理部132と、異常判定部133とを有する。なお、通信部140には、キーボード等の入力装置(図示せず)や、被検物WKの表面の画像等を表示可能なモニタ150が設けられていてもよい。
【0022】
送受信部131は、装置制御部130で生成された被検物WKの表面の画像データを受信すると、画像処理部132に送る。画像処理部132は、検査ヘッド110の撮像部112によって撮像されて装置制御部130で生成された被検物WKの表面の画像データに基づいて、被検物WKの表面において異常の候補となる異常候補部B(
図4を参照)を検出し、異常候補部Bの大きさ(例えば、異常候補部Bの最大幅や面積等)を求める。画像処理部132は、異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータを異常判定部133に送る。
【0023】
なお、異常の候補(異常候補部B)には、例えば、ハジキと称される異常の候補や、ブツと称される異常の候補、傷による異常の候補等がある。被検物WKが上塗り塗料としてメタリック塗料やパール塗料が塗布された状態の自動車のボディである場合、被検物WKの表面には、アルミの粉や雲母(マイカ)の粉による複数の粒子が散在する。
図4に、このような被検物WKの表面の画像を比較して示す。ここで、
図4(a)に、照明部111からの正反射光を受光して撮像した場合の被検物WKの表面の画像を示す。
図4(b)に、被検物WKの表面の法線VL方向から照明した場合の被検物WKの表面の画像を示す。
図4(c)に、本実施形態に係る検査ヘッド110により撮像した場合の被検物WKの表面の画像を示す。
図4(a)~(c)における円で囲まれた領域に、異常候補部Bが存在する。
【0024】
仮に、照明部111からの正反射光を受光して被検物WKの表面を撮像すると、
図4(a)に示すように、被検物WKの表面の画像に、アルミの粉や雲母(マイカ)の粉による複数の粒子Cが多く映り込む。そのため、画像処理部132は、被検物WKの表面の画像において複数の粒子Cに混ざり込んだ異常候補部Bを検出し難くなる。また仮に、被検物WKの表面の法線VL方向から被検物WKの表面を照明し、法線VLに対して30度だけ傾斜した方向から被検物WKの表面を撮像すると、
図4(b)に示すように、被検物WKの表面の画像に、アルミの粉や雲母(マイカ)の粉による複数の粒子Cが映り込む。そのため、画像処理部132は、被検物WKの表面の画像において複数の粒子Cに混ざり込ん
だ異常候補部Bを検出し難くなる。このように、被検物WKの表面の画像に映り込む粒子Cは、異常候補部Bの検出精度に大きく影響する。
【0025】
前述したように、検査ヘッド110の照明部111は、被検物WKの表面の法線VLに対して第1の角度θ1だけ傾斜した方向から、被検物WKの表面を照明する。検査ヘッド110の撮像部112は、被検物WKの表面の法線VLに対して照明部111と同じ側に第2の角度θ2だけ傾斜した方向から、照明部111に照明された被検物WKの表面を撮像する。これにより、撮像部112が照明部111からの正反射光を受光しないため、
図4(c)に示すように、被検物WKの表面の画像に、アルミの粉や雲母(マイカ)の粉による複数の粒子Cが映り込み難くなる。そのため、画像処理部132は、被検物WKの表面において異常の候補となる異常候補部Bを精度よく検出することができる。前述したように、本実施形態では、第1の角度θ1が25度以上35度以下の角度であり、第2の角度θ2が25度以上35度以下の角度である。例えば、
図4(c)に示す被検物WKの表面の画像においては、第1の角度θ1および第2の角度θ2が30度に設定される。
図4(c)の画像から明らかなように、被検物WKの表面の法線に対して第1の角度θ1だけ傾斜した方向から被検物WKを照明し、且つ被検物WKの表面の法線に対して第1の角度θ1と同じ側に第2の角度θ2だけ傾斜した方向から撮像することにより、被検物WKの表面において異常の候補となる異常候補部Bを精度よく検出することができる。そして、第1の角度θ1を25度以上とし、第2の角度θ2を25度以上とした場合には、
図4(c)の画像から分かるように、被検物WKの表面において異常の候補となる異常候補部Bを精度よく検出することができる。
【0026】
図5に、照明部111の照明範囲LTRを比較して示す。
図5(a)に、第1の角度θ1が0度である場合、すなわち、被検物WKの表面の法線VL方向から照明した場合の照明部111の照明範囲LTRを示す。
図5(b)に、第1の角度θ1が15度である場合の照明部111の照明範囲LTRを示す。
図5(c)に、第1の角度θ1が30度である場合の照明部111の照明範囲LTRを示す。なお、
図5(a)~(c)において、第2の角度θ2は30度となっている。
図5(a)~(c)より、第1の角度θ1(および第2の角度θ2)を増加させるに従って照明範囲LTRが狭くなることが分かる。従って、第1の角度θ1を35度よりも大きくした場合には、照明範囲LTRが狭くなり過ぎ、一度に撮像・検査できる領域が狭くなるので、検査時間が増えてしまう虞がある。言い換えると、第1の角度θ1を35度以下にすることにより、短い検査時間で被検物WKを検査することができる。
【0027】
図6に、撮像部112の焦点深度を比較して示す。
図6(a)に、第1の角度θ1および第2の角度θ2を30度に設定して定規の目盛りを撮像した画像を示す。
図6(b)に、第1の角度θ1および第2の角度θ2を40度に設定して定規の目盛りを撮像した画像を示す。
図6(c)に、第1の角度θ1および第2の角度θ2を50度に設定して定規の目盛りを撮像した画像を示す。第1の角度θ1および第2の角度θ2を30度に設定すると、
図6(a)に示すように、9cmの目盛りの範囲(
図6(a)の矢印を参照)まで画像が明瞭であり、焦点深度が比較的深いことがわかる。第1の角度θ1および第2の角度θ2を40度に設定すると、
図6(b)に示すように、7cmの目盛りの範囲(
図6(b)の矢印を参照)まで画像が明瞭であり、第1の角度θ1および第2の角度θ2を30度に設定する場合よりも焦点深度が浅くなることがわかる。第1の角度θ1および第2の角度θ2を50度に設定すると、
図6(c)に示すように、5cmの目盛りの範囲(
図6(c)の矢印を参照)まで画像が明瞭であり、第1の角度θ1および第2の角度θ2を30度に設定する場合よりも焦点深度がより浅くなることがわかる。
【0028】
図6(a)~(c)より、第1の角度θ1および第2の角度θ2を増加させるに従って焦点深度が浅くなることが分かる。従って、第2の角度θ2を35度よりも大きくした場
合には、焦点深度が浅くなり過ぎ、一度に撮像・検査できる領域が狭くなるので、検査時間が増えてしまう虞がある。言い換えると、第2の角度θ2を35度以下にすることにより、短い検査時間で被検物WKを検査することができる。ここで、第1の角度θ1の範囲および第2の角度θ2の範囲が30度±5度であれば、比較的深い焦点深度が得られ、被検物WKの表面の法線VLに対して傾斜した方向から撮像できる範囲を確保できることがわかる。このように、本実施形態によれば、被検物WKの表面における異常候補部Bを精度よく且つ高速に検出することができる。
【0029】
異常判定部133は、画像処理部132から送られた異常候補部Bに関するデータに基づいて、画像処理部132に求められた異常候補部Bの大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する。第1の閾値は、例えば、異常候補部Bの大きさを最大幅とした場合、0.3mmに設定される。異常判定部133は、第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bに関するデータを、送受信部131および通信部140を介して指示器30に送信する。また、異常判定部133は、異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータを、送受信部131および通信部140を介してデータ処理装置40に送信する。なお、通信部140を外部通信部と称してもよい。
【0030】
指示器30は、検査装置100により被検物WKの表面を検査した結果に基づいて、検査ラインの上流側の所定の検査位置から検査ラインの下流側に搬送された被検物WKの表面における異常部分Aを示す。指示器30は、
図1に示すように、指示ヘッド31と、指示制御部36とを有する。指示ヘッド31は、例えばプロジェクタ等を用いて構成され、検査ラインの下流側の天井部に配設される。指示ヘッド31は、指示制御部36の制御により、検査ラインの下流側で移動する被検物WKの表面に、第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bの位置を異常部分Aとして投影表示する。ここで、被検物WKが検査ライン上で移動している場合には、被検物WKの表面への投影表示を被検物WKの移動に合わせて移動させてもよい。
【0031】
指示制御部36は、例えばPC等を用いて構成され、指示ヘッド31と、検査装置100の通信部140と電気的に接続される。指示制御部36は、検査装置100の通信部140(装置制御部130の送受信部131)から送信された第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bに関するデータに基づいて、指示ヘッド31の作動を制御する。また、指示制御部36には、キーボード等の入力装置(図示せず)や、モニタ37が設けられる。
【0032】
データ処理装置40は、検査装置100から送信されるデータの処理を行う。データ処理装置40は、例えばサーバ等を用いて構成され、検査装置100の通信部140と電気的に接続される。データ処理装置40は、
図3に示すように、データ入出力部41と、データ判定部42と、データ生成部43とを有する。また、データ処理装置40には、キーボード等の入力装置(図示せず)や、モニタ50が設けられる。
【0033】
データ入出力部41には、検査装置100の通信部140(装置制御部130の送受信部131)から送信された被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータが入力される。データ入出力部41は、異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータをデータ判定部42に送る。データ判定部42は、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータに基づいて、異常候補部Bの大きさが第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定する。第2の閾値は、例えば、異常候補部Bの大きさを最大幅とした場合、0.1mmに設定される。データ判定部42は、異常候補部Bの大きさが第2の閾値よりも大きいか否かの判定結果をデータ生成部43に送る。
【0034】
データ生成部43は、データ判定部42による判定結果に基づいて、異常候補部Bに関する統計的データを生成する。データ生成部43は、生成した統計的データをデータ入出力部41に送る。データ入出力部41は、データ生成部43により生成された統計的データを、ホストコンピュータ80に出力する。例えば、被検物WKが自動車のボディの場合、ホストコンピュータ80には、温度計や湿度計等の各種測定器70と、下塗りを行う電着装置60と、中塗りを行う自動塗装装置(図示せず)と、上塗りを行う自動塗装装置(図示せず)と、クリア塗装を行う自動塗装装置(図示せず)等が電気的に接続される。
【0035】
異常候補部Bに関する統計的データは、例えば
図7に示すように、縦軸が第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部が発生した発生回数を表し、横軸が第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部が発生した発生部位(例えば、異常候補部が発生した発生部位の座標)を表すヒストグラムHSに関するデータであってもよい。また、異常候補部Bに関する統計的データは、縦軸が第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部が発生した発生回数を表し、横軸が被検物の管理番号(例えば、自動車のボディの車種の番号)を表すヒストグラムに関するデータであってもよい。このように、異常候補部Bに関する統計的データは、第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部の数を含む統計的データである。
【0036】
次に、本実施形態に係る検査システム1における検査方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る検査システムにおける検査の流れを示すフローチャートである。検査装置100の装置制御部130と、指示器30の指示制御部36と、データ処理装置40は、それぞれの記憶部(図示せず)に制御プログラムが記憶されたコンピュータシステムを構成する。検査装置100の装置制御部130と、指示器30の指示制御部36と、データ処理装置40によって構成されるコンピュータシステムは、それぞれの記憶部から読み出した制御プログラムに従って各種の処理を実行する。
【0037】
搬送装置10により被検物WKが検査ラインの上流側の所定の検査位置に向けて搬送されると、検査装置100の装置制御部130は、画像取得処理(ステップST1)を実行する。画像取得処理(ステップST1)において、装置制御部130は、検査ヘッド110およびロボットアーム120に検物WKの表面の画像を取得させる制御を行う。このとき、検査ヘッド110の照明部111は、被検物WKの表面の法線VLに対して第1の角度θ1だけ傾斜した方向から、被検物WKの表面を照明する。検査ヘッド110の撮像部112は、被検物WKの表面の法線VLに対して照明部111と同じ側に第2の角度θ2だけ傾斜した方向から、照明部111に照明された被検物WKの表面を撮像する。装置制御部130は、撮像部112から送信された光の検出信号に基づいて、被検物WKの表面の画像を生成し、被検物WKの表面の画像データを通信部140に送信する。なお、被検物WKが所定の検査位置もしくは、搬送装置10の搬送誤差により所定の検査位置の近傍において停止する状態で、画像取得処理(ステップST1)が実行されてもよく、被検物WKが搬送装置10によって搬送されている状態で画像取得処理(ステップST1)が実行されてもよい。
【0038】
次に、検査装置100の装置制御部130は、画像処理(ステップST2)を実行する。画像処理(ステップST2)において、装置制御部130の画像処理部132は、検査ヘッド110の撮像部112によって撮像されて装置制御部130で生成された被検物WKの表面の画像データに基づいて、被検物WKの表面において異常の候補となる異常候補部Bを検出し、異常候補部Bの大きさを求める。画像処理部132は、異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータを異常判定部133に送る。
【0039】
次に、検査装置100の装置制御部130は、異常判定処理(ステップST3)を実行
する。異常判定処理(ステップST3)において、装置制御部130の異常判定部133は、画像処理部132から送られた異常候補部Bに関するデータに基づいて、画像処理部132に求められた異常候補部Bの大きさが第1の閾値よりも大きいか否かを判定する。異常判定部133は、第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bに関するデータを、送受信部131を介して通信部140に出力し、通信部140は、この第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bに関するデータを指示器30に送信する。また、異常判定部133は、異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータを、送受信部131を介して通信部140に出力し、通信部140は、この異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータをデータ処理装置40に送信する。
【0040】
検査装置100の通信部140(装置制御部130の送受信部131)から指示器30に、第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bに関するデータが送信されると、指示器30の指示制御部36は、異常指示処理(ステップST4)を実行する。異常指示処理(ステップST4)において、搬送装置10により被検物WKが検査ラインの上流側の所定の検査位置から検査ラインの下流側に搬送されると、指示制御部36は、指示ヘッド31に第1の閾値よりも大きいと判定された異常候補部Bの被検物WKの表面における位置を異常部分Aとして投影表示させる制御を行う。なお、被検物WKが搬送装置10により検査ラインの下流側において移動を続ける状態で、異常指示処理(ステップST4)が実行されてもよく、被検物WKが停止している状態で異常指示処理(ステップST4)が実行されてもよい。
【0041】
検査装置100の通信部140(装置制御部130の送受信部131)からデータ処理装置40に、異常候補部Bの大きさを含む、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータが送信されると、データ処理装置40のデータ判定部42は、データ判定処理(ステップST5)を実行する。データ判定処理(ステップST5)において、データ判定部42は、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータに基づいて、異常候補部Bの大きさが第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定する。データ判定部42は、異常候補部Bの大きさが第2の閾値よりも大きいか否かの判定結果をデータ生成部43に送る。
【0042】
次に、データ処理装置40のデータ生成部43は、データ生成処理(ステップST6)を実行する。データ生成処理(ステップST6)において、データ生成部43は、データ判定部42による判定結果に基づいて、異常候補部Bに関する統計的データを生成し、統計的データをデータ入出力部41に送る。前述したように、異常候補部Bに関する統計的データは、
図7に示すヒストグラムHS等の第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部の数を含む統計的データである。
【0043】
次に、データ処理装置40のデータ入出力部41は、データ出力処理(ステップST7)を実行する。データ出力処理(ステップST7)において、データ入出力部41は、データ生成部43により生成された統計的データを、ホストコンピュータ80に出力する。これにより、ホストコンピュータ80は、第1の閾値よりも小さな第2の閾値を基準とする詳細な検査の結果に基づいて、被検物WKの表面における異常の発生を抑えるための各種報知を行うことが可能になる。例えば、異常候補部Bに関する統計的データにおいて、第2の閾値よりも大きい異常候補部の発生回数が所定回数を超えると、ホストコンピュータ80は、電着装置60および各種自動塗装装置のうち少なくとも一つに対して、臨時点検を行うように促す報知を行うようにしてもよい。
【0044】
また例えば、ホストコンピュータ80は、異常候補部Bに関する統計的データ(例えば、第2の閾値よりも大きい異常候補部の発生回数)と、電着装置60から送信されるメン
テナンスに関するデータ(例えば、直前のメンテナンス時期に関するデータ)に基づいて、電着装置60に関する次回の適切なメンテナンス時期を予測し、電着装置60に対して次回のメンテナンス時期に関する報知を行うようにしてもよい。同様に、ホストコンピュータ80は、異常候補部Bに関する統計的データと、各種自動塗装装置(中塗りを行う自動塗装装置と、上塗りを行う自動塗装装置と、クリア塗装を行う自動塗装装置のうち少なくとも一つ)から送信されるメンテナンスに関するデータに基づいて、各種自動塗装装置に関する次回の適切なメンテナンス時期を予測し、各種自動塗装装置に対して次回のメンテナンス時期に関する報知を行うようにしてもよい。この場合、ホストコンピュータ80は、各種測定器70から送信される温度データや湿度データ等、異常候補部の発生回数に影響を及ぼすデータを考慮して、次回のメンテナンス時期に関する報知を行うようにしてもよい。なお、ホストコンピュータ80は、異常候補部Bに関する統計的データ(例えば、第2の閾値よりも大きい異常候補部の発生回数)と、電着装置60等の自動塗装装置から送信される、検査装置100で検査された被検物WKへの塗装条件に関するデータとに基づいて、異常が少なくなる自動塗装装置の塗装条件を求め、求めた塗装条件を自動塗装装置へ送信してもよい。
【0045】
本実施形態によれば、データ判定処理(ステップST5)において、データ判定部42は、被検物WKの表面における異常候補部Bに関するデータに基づいて、異常候補部Bの大きさが第1の閾値よりも小さな第2の閾値よりも大きいか否かを判定する。データ生成処理(ステップST6)において、データ生成部43は、データ判定部42による判定結果に基づいて、第1の閾値よりも小さく且つ第2の閾値よりも大きい異常候補部の数を含む異常候補部Bに関する統計的データを生成する。データ出力処理(ステップST7)において、データ入出力部41は、データ生成部43により生成された統計的データを出力する。これにより、第1の閾値よりも小さな第2の閾値を基準とする被検物WKの表面に対する詳細な検査を行うことができる。
【0046】
また、検査ヘッド110の照明部111は、被検物WKの表面の法線VLに対して第1の角度θ1だけ傾斜した方向から、被検物WKの表面を照明する。検査ヘッド110の撮像部112は、被検物WKの表面の法線VLに対して照明部111と同じ側に第2の角度θ2だけ傾斜した方向から、照明部111に照明された被検物WKの表面を撮像する。また、第1の角度が25度以上35度以下の角度であり、第2の角度が25度以上35度以下の角度である。これにより、被検物WKの表面における異常候補部Bを精度よく検出することができ、第1の閾値よりも小さな第2の閾値を基準とする被検物WKの表面に対する詳細な検査を行うことが可能になる。
【0047】
また、位置検出部としての装置制御部130は、搬送装置10により搬送された被検物WKの所定の検査位置に対する位置ずれを検出する。位置補正部としてのロボットアーム120は、装置制御部130からの制御信号により、検査ヘッド110(照明部111および撮像部112)の位置を補正する。これにより、搬送装置10の搬送誤差に拘わらず、被検物WKの表面の画像を精度よく取得することができる。
【0048】
上述の実施形態において、被検物WKに対する検査ヘッド110およびロボットアーム120の姿勢(相対位置および向き)をティーチングにより手動で設定してもよく、自動で設定してもよい。例えば、次に述べる手順により、被検物WKに対する検査ヘッド110およびロボットアーム120の姿勢を自動で設定してもよい。まず、被検物WKの設計データ(例えば、CADデータ)に基づいて、被検物WKの表面に対する照明部111の照明方向を決定する。次に、被検物WKの設計データに基づいて、被検物WKの表面における第1の検査点での法線に対して平行になるように、検査ヘッド110の姿勢を求める。次に、先に求めた検査ヘッド110の姿勢で、照明部111から被検物WKの表面に照射される照明光によって形成される照明像(鏡像)についてシミュレーションを行う。
【0049】
次に、シミュレーションによって求まる照明像が撮像部112の視野内に入るか否かを検算する。シミュレーションによって求まる照明像が撮像部112の視野内に入る場合、先に求めた検査ヘッド110の姿勢を、被検物WKの表面における第1の検査点に対する検査ヘッド110の姿勢として決定する。シミュレーションによって求まる照明像が撮像部112の視野内に入らない場合、検査ヘッド110の姿勢を変えて、再度照明像についてシミュレーションを行う。
【0050】
次に、先のシミュレーションによって求まる照明像と連続して形成される照明像を得ることが可能な検査ヘッド110の姿勢を求め、被検物WKの表面における次の検査点に対する検査ヘッド110の姿勢を決定する。このような検査ヘッド110の姿勢の決定を繰り返し、被検物WKの表面の全体にわたり、照明像を得ることが可能な検査ヘッド110の姿勢を決定する。そして、決定した検査ヘッド110の姿勢に合わせるように、ロボットアーム120の姿勢をシミュレーションによって求める。これにより、人手に寄らずに、被検物WKに対する検査ヘッド110およびロボットアーム120の姿勢を自動で設定することができる。
【0051】
上述の実施形態において、検査ラインに指示器30が配設されているが、これに限られるものではない。例えば、検査装置100の検査ヘッド110に、被検物WKの表面における異常部分を示す指示器として、被検物WKの表面にインクを塗布可能なインクノズルが設けられてもよい。この場合、被検物WKの表面における異常候補部が第1の閾値よりも大きいと判定された後、ロボットアーム120が検査ヘッド110を被検物WKの表面における異常部分(第1の閾値よりも大きい異常候補部)に向けて移動させ、検査ヘッド110に設けられたインクノズルが被検物WKの表面における異常部分にインクを塗布してもよい。インクノズルにより塗布されるインクは、例えばワセリンのような水溶性の材料を使用したインクであってもよく、自動車のボディに塗布された塗料を溶かすことなく、検査後に拭き取れるようなインクを用いればよい。
【0052】
また、指示器として、検査ラインの作業員にスマートグラスを装着させ、作業員がスマートグラスを通して被検物WKを視認する際に、スマートグラスに被検物WKの表面における異常部分を表示するようにしてもよい。指示器として、モニタ37の画面や、作業員が携帯するスマートフォン等の携帯機器の画面に、被検物WKの表面における異常部分を表示するようにしてもよい。また、指示ヘッド31が、プロジェクションマッピングにより被検物WKの表面における異常部分の画像を映し出すようにしてもよい。
【0053】
上述の実施形態において、検査装置100の検査ヘッド110に、イオナイザ(静電気除去器)とエアブロー装置とが設けられてもよい。これにより、検査ヘッド110の撮像部112が被検物WKの表面を撮像する直前に、イオナイザが被検物WKの表面に帯電した静電気を除去するとともに、エアブロー装置が被検物WKの表面に空気を吹き付けてホコリを吹き飛ばすようにしてもよい。このようにすれば、被検物WKの表面に一時的に付着したホコリが異常候補部(または異常部分)として誤検出されるのを防止することができる。
【0054】
上述の実施形態において、検査装置100の検査ヘッド110に、距離検出部113と姿勢調整機構116とが設けられているが、これに限られるものではなく、距離検出部113と姿勢調整機構116とが設けられていなくてもよい。
【0055】
上述の実施形態において、データ処理装置40のデータ入出力部41は、データ生成部43により生成された統計的データを、ホストコンピュータ80に出力しているが、これに限られるものではなく、例えば、モニタ50の画面に出力表示してもよく、プリンター
を用いて紙類に出力してもよく、DVD-ROMやCD-ROM、USBメモリ等の記憶媒体に出力してもよい。
【0056】
上述の実施形態において、送受信部131、画像処理部132、および異常判定部133は、検査装置100の装置制御部130に設けられているが、これに限られるものではなく、送受信部、画像処理部、および異常判定部がデータ処理装置40に含まれる構成であってもよい。また、データ入出力部41、データ判定部42、およびデータ生成部43は、データ処理装置40に設けられているが、これに限られるものではなく、データ処理装置40を設けずに、データ入出力部、データ判定部、およびデータ生成部が検査装置100の装置制御部130に含まれる構成であってもよい。また、画像処理部132および異常判定部133は、一つの機能ブロックであってもよい。
【0057】
上述の実施形態において、画像取得処理(ステップST1)からデータ出力処理(ステップST7)までの処理を順番に(いわゆる逐次処理で)実行しているが、一部の処理を並行して実行してもよい。例えば、
図9に示す変形例のように、異常判定処理(ステップST3)および異常指示処理(ステップST4)と、データ判定処理(ステップST5)、データ生成処理(ステップST6)、およびデータ出力処理(ステップST7)とを並行して実行してもよい。言い換えると、異常判定処理(ステップST3)および異常指示処理(ステップST4)が実行されている期間と、データ判定処理(ステップST5)、データ生成処理(ステップST6)、およびデータ出力処理(ステップST7)が実行されている期間との少なくとも一部同士がオーバーラップしていてもよい。
【0058】
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。
【0059】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う検査システム、検査装置、およびプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 検査システム
10 搬送装置
30 指示器
31 指示ヘッド 36 指示制御部
40 データ処理装置
41 データ入出力部 42 データ判定部
43 データ生成部
100 検査装置
100 検査ヘッド
111 照明部 112 撮像部
120 ロボットアーム
130 装置制御部
132 画像処理部 133 異常判定部
WK 被検物