(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180604
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】対象物のマップ形成システム及び対象物のマップ形成方法
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20231214BHJP
H02G 9/08 20060101ALI20231214BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20231214BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20231214BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20231214BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20231214BHJP
G06K 7/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
H02G9/08
G06K7/14 017
G06K19/06 037
G06K19/077 140
G06K19/07 170
G06K7/00 004
G06K7/14 056
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094037
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】風間 吉則
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 弘行
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】野村 朋哉
【テーマコード(参考)】
2C032
5G369
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HB07
5G369AA16
5G369BA05
(57)【要約】
【課題】空間内に配置された複数の対象物の正確なマップを形成することが可能で、かつ、容易に形成することが可能な対象物のマップ形成システムを提供する。
【解決手段】対象物のマップ形成システム1は、コード情報Cが表示された表示部23を空間A内の所定の場所に固定する固定部21を備えた複数の対象物2と、空間A内の構造物Bに関する点群データDpcを取得する点群データ取得装置3と、取得した点群データの中から表示部23に対応する点群データを抽出する表示部抽出装置4と、抽出した表示部23に対応する点群データから表示部23に対応する対象物2に関する情報を読み取って点群データに対応付ける情報読取装置5と、表示部23に対応する点群データと対象物2に関する情報に基づいて空間A内における複数の対象物2のマップM上の各位置を特定して対象物2のマップMを形成するマップ形成装置6と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内に配置され、予め定められたコード情報が表示された表示部と、前記表示部を回転可能に取り付ける取付部と、前記表示部を前記空間内の所定の場所に固定する固定部を備えた複数の対象物と、
前記複数の対象物を含む前記空間内の構造物に関する点群データを取得する点群データ取得装置と、
前記点群データ取得装置が取得した前記点群データの中から前記表示部に対応する点群データを抽出する表示部抽出装置と、
前記表示部抽出装置が抽出した前記表示部に対応する点群データから前記コード情報に対応する点群データを抽出し、抽出した前記コード情報に対応する点群データから前記表示部に対応する前記対象物に関する情報を読み取って前記表示部に対応する前記点群データに対応付ける情報読取装置と、
前記表示部抽出装置が抽出した前記表示部に対応する点群データと前記情報読取装置が読み取った前記対象物に関する情報に基づいて前記空間内における前記複数の対象物のマップ上の各位置を特定して前記対象物のマップを形成するマップ形成装置と、
を備える、対象物のマップ形成システム。
【請求項2】
前記コード情報は、2次元パターンである、請求項1に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項3】
前記対象物は、前記空間内の構造物に着脱可能に固定される、請求項1に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項4】
前記対象物は、前記構造物に磁着により固定される、請求項3に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項5】
前記対象物は、センサデバイスである、請求項1に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項6】
前記取付部は、前記センサデバイスのアンテナである、請求項5に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項7】
前記アンテナが前記センサデバイスに対して回転可能とされている、請求項6に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項8】
前記複数の対象物には、第一の前記表示部を備えた第一の対象物と、第二の前記表示部を備えた第二の対象物とが含まれており、
前記第二の表示部には、前記コード情報が、前記第一の表示部に表示された前記コード情報よりも大きく表示されている、請求項1に記載の対象物のマップ形成システム。
【請求項9】
空間内に配置された複数の対象物の各表示部にそれぞれ表示された予め定められたコード情報を点群データ取得装置が取得することができるように、前記各表示部の向きを、当該表示部を回転可能に取り付ける取付部に対して回転させてそれぞれ調整する調整工程と、
前記点群データ取得装置で、前記複数の対象物を含む前記空間内の構造物に関する点群データを取得する点群データ取得工程と、
前記点群データ取得工程で取得した前記点群データの中から前記表示部に対応する点群データを抽出する表示部抽出工程と、
前記表示部抽出工程で抽出した前記表示部に対応する点群データから前記コード情報に対応する点群データを抽出し、抽出した前記コード情報に対応する点群データから前記表示部に対応する前記対象物に関する情報を読み取って前記表示部に対応する前記点群データに対応付ける情報読取工程と、
前記表示部抽出工程で抽出した前記表示部に対応する点群データと前記情報読取工程で読み取った当該対象物に関する情報に基づいて前記空間内における前記複数の対象物のマップ上の各位置を特定して前記対象物のマップを形成するマップ形成工程と、
を有する、対象物のマップ形成方法。
【請求項10】
前記複数の対象物には、第一の前記表示部を備えた第一の対象物と、第二の前記表示部を備えた第二の対象物とが含まれており、
前記第二の表示部には、前記コード情報が、前記第一の表示部に表示された前記コード情報よりも大きく表示されている、請求項9に記載の対象物のマップ形成方法。
【請求項11】
前記コード情報の最小分解能の大きさを1辺α[m]、前記点群データ取得装置から照射される電磁波の照射方向と前記コード情報とがなす角度をω[度]、前記点群データ取得装置から前記コード情報までの距離をr[m]、前記点群データ取得装置の最小角度分解能をΔθm[度]としたときに、前記調整工程では、
αsinω≧rtanΔθm …(1)
が成立する範囲になるように、前記各表示部の向きをそれぞれ調整する、請求項9に記載の対象物のマップ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物のマップ形成システム及び対象物のマップ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に洞道を構築し、その中に電力ケーブル等が布設される場合がある(例えば特許文献1等参照)。そして、閉鎖空間である洞道内では、電力ケーブルで発生した熱が放散しにくく、電力ケーブルやその周囲が高温になる場合がある。
そして、電力ケーブルの温度が上がると電気抵抗が大きくなり送電量が低下してしまう等の問題が生じる場合があるため、洞道内に温度センサ等のセンサデバイスを配置して、洞道内の温度管理を行うことなどが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように洞道等の比較的広い空間内に配置したセンサデバイス等の対象物の正確なマップを作成する場合、従来は、個々の対象物について緯度、経度、高度をそれぞれ測ったり、個々の対象物について基準位置からの距離や角度等をそれぞれ測るなどして各対象物のマップ上の位置を特定し、それに対象物の識別番号等を割り振るなどして対象物のマップを作成していた。
しかしながら、これらの方法では、対象物が多数になると作業に非常に手間と時間がかかる上、それらに識別情報等を割り振る作業も煩雑になり、誤った識別情報等を割り振ってしまう場合もあった。
【0005】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、空間内に配置された複数の対象物の正確なマップを形成することが可能で、かつ、容易に形成することが可能な対象物のマップ形成システム及び対象物のマップ形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物のマップ形成システムにおいて、
空間内に配置され、予め定められたコード情報が表示された表示部と、前記表示部を回転可能に取り付ける取付部と、前記表示部を前記空間内の所定の場所に固定する固定部を備えた複数の対象物と、
前記複数の対象物を含む前記空間内の構造物に関する点群データを取得する点群データ取得装置と、
前記点群データ取得装置が取得した前記点群データの中から前記表示部に対応する点群データを抽出する表示部抽出装置と、
前記表示部抽出装置が抽出した前記表示部に対応する点群データから前記コード情報に対応する点群データを抽出し、抽出した前記コード情報に対応する点群データから前記表示部に対応する前記対象物に関する情報を読み取って前記表示部に対応する前記点群データに対応付ける情報読取装置と、
前記表示部抽出装置が抽出した前記表示部に対応する点群データと前記情報読取装置が読み取った前記対象物に関する情報に基づいて前記空間内における前記複数の対象物のマップ上の各位置を特定して前記対象物のマップを形成するマップ形成装置と、
を備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、前記コード情報は、2次元パターンである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、前記対象物は、前記空間内の構造物に着脱可能に固定される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、前記対象物は、前記構造物に磁着により固定される。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、前記対象物は、センサデバイスである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、前記取付部は、前記センサデバイスのアンテナである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、前記アンテナが前記センサデバイスに対して回転可能とされている。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の対象物のマップ形成システムにおいて、
前記複数の対象物には、第一の前記表示部を備えた第一の対象物と、第二の前記表示部を備えた第二の対象物とが含まれており、
前記第二の表示部には、前記コード情報が、前記第一の表示部に表示された前記コード情報よりも大きく表示されている。
【0014】
請求項9に記載の発明は、対象物のマップ形成方法において、
空間内に配置された複数の対象物の各表示部にそれぞれ表示された予め定められたコード情報を点群データ取得装置が取得することができるように、前記各表示部の向きを、当該表示部を回転可能に取り付ける取付部に対して回転させてそれぞれ調整する調整工程と、
前記点群データ取得装置で、前記複数の対象物を含む前記空間内の構造物に関する点群データを取得する点群データ取得工程と、
前記点群データ取得工程で取得した前記点群データの中から前記表示部に対応する点群データを抽出する表示部抽出工程と、
前記表示部抽出工程で抽出した前記表示部に対応する点群データから前記コード情報に対応する点群データを抽出し、抽出した前記コード情報に対応する点群データから前記表示部に対応する前記対象物に関する情報を読み取って前記表示部に対応する前記点群データに対応付ける情報読取工程と、
前記表示部抽出工程で抽出した前記表示部に対応する点群データと前記情報読取工程で読み取った当該対象物に関する情報に基づいて前記空間内における前記複数の対象物のマップ上の各位置を特定して前記対象物のマップを形成するマップ形成工程と、
を有する。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の対象物のマップ形成方法において、
前記複数の対象物には、第一の前記表示部を備えた第一の対象物と、第二の前記表示部を備えた第二の対象物とが含まれており、
前記第二の表示部には、前記コード情報が、前記第一の表示部に表示された前記コード情報よりも大きく表示されている。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の対象物のマップ形成方法において、前記コード情報の最小分解能の大きさを1辺α[m]、前記点群データ取得装置から照射される電磁波の照射方向と前記コード情報とがなす角度をω[度]、前記点群データ取得装置から前記コード情報までの距離をr[m]、前記点群データ取得装置の最小角度分解能をΔθm[度]としたときに、前記調整工程では、
αsinω≧rtanΔθm …(1)
が成立する範囲になるように、前記各表示部の向きをそれぞれ調整する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空間内に配置された複数の対象物の正確なマップを形成することが可能で、かつ、容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る対象物のマップ形成システムを洞道内に適用した構成例を表す図である
【
図2】構造物に固定された対象物や表示部、コード情報等の例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る対象物のマップ形成方法の各工程を表すフローチャートである。
【
図4】(a)3Dスキャナから照射されるレーザの照射方向とコード情報がなす角度、及び(b)コード情報の最小分解能の大きさを説明する図である。
【
図5】(a)点群データ取得装置の最小角度分解能等を説明する図であり、(b)点群データ取得装置から見たコード情報の例を表す図である。
【
図6】反射率が低い点群データの中に表示部に対応する反射率が高い点群データが見出された状態を表す図である。
【
図7】形成された対象物のマップの例を表す図である。
【
図8】(a)、(b)部分空間ごとの対象物の部分マップの例を表す図である。
【
図9】
図8(a)、(b)の部分マップを統合した部分マップを表す図である。
【
図10】点群データ取得装置からの距離が遠いほど表示部に表示されるコード情報を大きく表示した状態を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る対象物のマップ形成システム及び対象物のマップ形成方法について説明する。
ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。
【0020】
また、以下では、後述する
図1等に示すように、本実施形態に係る対象物のマップ形成システム1における空間Aが洞道(以下、洞道Aという。)であり、対象物2がセンサデバイス(以下、センサデバイス2という場合がある。)である場合について説明するが、本発明はこの場合に限定されない。
【0021】
図1は、本実施形態に係る対象物のマップ形成システムを洞道内に適用した構成例を表す図である。
本実施形態では、洞道A内には単数又は複数の電力ケーブル10が布設されており、各電力ケーブル10にそれぞれ複数のセンサデバイス2が取り付けられている。
【0022】
センサデバイス2は、温度や湿度、圧力、風速、振動等を測定するものであり、例えば、定期的に温度等のセンシングを行い、センシングした結果を例えば無線通信で図示しない解析装置に送信するように構成される。
このように、本実施形態では、空間A(洞道A)内に複数の対象物2(センサデバイス2)が配置されている。
【0023】
本実施形態では、対象物であるセンサデバイス2は、
図2に示すように、洞道A内の電力ケーブルやジョイント、洞道Aの内壁、天井、床面、受棚、ケーブルトラフ等の構造物に着脱可能に固定される。
その際、
図2に示すように、センサデバイス2を構造物Bに、例えばベルト状の固定具Cで固定することが可能である。また、センサデバイス2に磁石を取り付けて、センサデバイス2を構造物Bに磁着により固定することも可能である。磁着により固定すれば、センサデバイス2を構造物Bに簡単に取り付けて固定することが可能となる。
【0024】
本発明では、対象物2は、予め定められたコード情報が表示された表示部と、表示部を回転可能に取り付ける取付部と、表示部を空間内A(例えば洞道A内)の所定の場所(すなわち上記の構造物Bが存在する場所)に固定する固定部を備えている。
なお、「回転可能」とは、表示部の回転が特定の回転部を必要とするものではなく、後述する点群データ取得装置3に対する表示部の角度を任意に変更可能なように回転させることが可能であればよい。
【0025】
図2に示したセンサデバイス2では、センサデバイス2の筐体21に取り付けられているアンテナ22が、表示部23を回転可能に取り付ける取付部に相当する。
また、
図2に示したセンサデバイス2では、筐体21が表示部23を洞道A内の所定の場所に固定する固定部に相当する。
【0026】
そして、上記のようにセンサデバイス2のアンテナ22を取付部とすることで、表示部23をアンテナ22に通すだけで簡単に取り付けることができ、アンテナ22を軸として表示部23を容易に回転させることが可能となる。
また、アンテナ22がセンサデバイス2の筐体21に対して回転可能とされていれば、例えばアンテナ22を筐体21に対して回転させて略鉛直方向に起立させることで、表示部23を容易に略鉛直方向に起立させた状態にすることが可能となる。
【0027】
上記のように、表示部23を回転させ、後述する点群データ取得装置3に正対する方向に近づけることで、点群データ取得装置3で受光する際の実効的な反射率(後述する点群データ取得装置3の受光強度)を調整してこれを高めることができるが、本実施形態では、表示部23の表面が後述する3Dスキャナから出射される電磁波に対して高い反射率を有する材料で形成されていてもよい。
すなわち、表示部23は、3Dスキャナから出射される電磁波に対する反射率が、電力ケーブル等の洞道A内の他の構造物Bの反射率より有意に高い材料で形成されていてもよい。
【0028】
なお、以下、3Dスキャナから出射される電磁波に対する反射率を、単に「反射率」という場合がある。すなわち、以下で反射率という場合、3Dスキャナから出射される電磁波に対する反射率を表す。
また、高い反射率を有する材料としては、例えば、MCPET(登録商標。超微細発泡光反射板。古河電気工業社製)等を用いることができる。
【0029】
また、表示部23は、例えば
図2に示すように、矩形の厚紙状に形成することができる。
そして、例えば、表示部23を2つ折りにし、折り目23aに切り込み23bを入れて逆折りにして、折り目23aと逆折りの間にアンテナ22を通すことで、表示部23をアンテナ22に通して簡単に取り付けることが可能となる。
【0030】
また、表示部23には、コード情報Cとしての2次元パターンが印刷されたり貼付されたりした予め表示されている。
コード情報Cや2次元パターンについては、後で説明する。
【0031】
なお、センサデバイス2の筐体21やアンテナ22とは別個に表示部23の取付部と固定部を備えるように構成し、表示部23を回転可能に取り付けた取付部をセンサデバイス2に近接して設置するように構成してもよい。
また、筐体21にアンテナ22とは別体の取付部を設け、その取付部に表示部を回転可能に取り付けるように構成してもよい。
【0032】
ここで、
図1に示した対象物のマップ形成システム1の他の構成要素について、本実施形態に係る対象物のマップ形成方法とあわせて説明する。
図3は、本実施形態に係る対象物のマップ形成方法の各工程を表すフローチャートである。
【0033】
本実施形態に係る対象物のマップ形成方法では、まず、洞道A内に配置された複数のセンサデバイス2の各表示部23にそれぞれ表示された予め定められたコード情報Cを後述する点群データ取得装置3が取得することができるようにするために、各表示部23の向きを、取付部であるセンサデバイス2のアンテナ22に対して回転させてそれぞれ調整する(調整工程(ステップS1))。
なお、本実施形態では、点群データ取得装置3はポータブルの非接触式の3Dスキャナである。
【0034】
すなわち、調整工程では、作業員が洞道A内(空間A内)に持ち込んで設置した3Dスキャナ3(
図1参照)で撮影(スキャン)される各センサデバイス2の所に作業員が行って、表示部23すなわちコード情報Cが3Dスキャナ3の方を向くように、表示部23をアンテナ22に対して回転させてそれぞれ調整する。
その際、3Dスキャナ3から照射されるレーザ(電磁波)の照射方向とコード情報C(すなわち表示部23の表面)がなす角度ω(
図4(a)参照)が30°~90°であればよい。この場合、90°は、コード情報Cが3Dスキャナ3に正対する角度である。
【0035】
より正確に言えば、例えば、コード情報Cの最小分解能の大きさを1辺α[m](
図4(b)参照)、3Dスキャナ3から照射されるレーザの照射方向とコード情報Cとがなす角度をω[度](
図4(a)参照)、3Dスキャナ3からコード情報Cまでの距離をr[m](
図5(a)参照)、3Dスキャナ3の最小角度分解能をΔθ
m[度](
図5(a)参照)としたときに、調整工程では、
αsinω≧rtanΔθ
m …(1)
が成立するように各表示部23の向き(すなわち角度ω)をそれぞれ調整する。
【0036】
このように調整すると、コード情報Cは、3Dスキャナ3から
図5(b)に示すように見えるようになるが、コード情報Cの有効読取間隔αsinωが3Dスキャナ3の最小分解能距離rtanΔθ
mと同じかそれより大きくなる。
そのため、3Dスキャナ3でコード情報Cの各コードをそれぞれ的確に撮影することが可能となる。
【0037】
続いて、作業員は3Dスキャナ3の所に戻って、複数の対象物2(センサデバイス2)を含む洞道A内の構造物Bに関する点群データDpcを3Dスキャナ3(点群データ取得装置)で取得する(点群データ取得工程(ステップS2))。
そして、取得した点群データDpcを3Dスキャナ3から後述する表示部抽出装置4に送信する。
【0038】
そして、作業員は3Dスキャナ3を洞道A内で持ち運び、洞道A内の複数箇所でそれぞれ上記の調整工程(ステップS1)と点群データ取得工程(ステップS2)とを行う。そして、取得した点群データDpcを3Dスキャナ3から表示部抽出装置4に送信する。
なお、本実施形態では、3Dスキャナ3で取得される点群データDpcには、3Dスキャナ3から出射した電磁波が当該点群データDpcに対応する構造物の各部分で反射されて3Dスキャナに戻ってくるまでの時間差(すなわち距離)や照射方向等の情報のほかに電磁波の反射率の情報も含まれる。
【0039】
また、
図1では、洞道A内の3Dスキャナ3と表示部抽出装置4とが有線で接続されているように記載されているが、必ずしもこのように構成する必要はない。すなわち、取得された点群データDpcを一旦3Dスキャナ3に保存しておき、後で有線や無線等で表示部抽出装置4に送信したり、あるいは洞道A内の3Dスキャナ3から無線で表示部抽出装置4に送信するように構成することも可能である。
また、表示部抽出装置4や後述する情報読取装置5、マップ形成装置6のいずれか又は全てを3Dスキャナ3と一体的に形成すること(すなわち3Dスキャナ3が表示部抽出装置4や情報読取装置5、マップ形成装置6の機能を有するように構成すること)も可能である。
【0040】
表示部抽出装置4(
図1参照)は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等を備えたコンピュータ等で構成されている。後述する情報読取装置5やマップ形成装置6も同様である。
そして、表示部抽出装置4は、上記のようにして点群データ取得装置3が取得した点群データDpcの中から表示部23に対応する点群データDpcを抽出するようになっている(表示部抽出工程(ステップS3))。
【0041】
点群データDpc中から表示部23に対応する点群データDpcを抽出する方法としては種々の方法があり得るが、例えば、前述したように、表示部23を反射率が高い材料で形成して、表示部23と洞道A内の他の構造物Bとの間で反射率に有意な差(すなわちそれらを区別するために十分に大きな差)ができるようにする。
そして、点群データDpcの反射率に基づいて(すなわち例えば点群データDpcの反射率に設けた閾値以上であるか閾値未満であるかに基づいて)表示部23に対応する点群データDpcとそれ以外の他の構造物Bに対応する点群データDpcとを区別することで、表示部23に対応する点群データDpcを抽出するように構成することが可能である。
【0042】
このように構成すると、
図6に示すように、例えば洞道A内の所定の大きさの立方体(例えば一辺40cm)の空間内の点群データDpcの中に、周囲よりも反射率が高い点群データDpc(本実施形態では表示部23に対応する矩形の平面状に広がる点群データDpc)があり、この反射率が高い点群データDpc(例えば反射率が閾値以上の点群データDpc)の領域の形状と実際の大きさが、表示部23の形状と大きさとして予め設定されたものと同程度、すなわち同じと判断される状態であれば、その反射率が高い点群データDpcを、表示部23に対応する点群データDpcとして抽出することができる。
【0043】
なお、反射率は、必ずしも全ての点群データDpcにおいてその周辺部より高くなっていなくてもよく、表示部23の形状と大きさが確認でき、表示されているコード情報Cが識別できる程度であればよい。
【0044】
また、
図6では反射率の高低が点群データDpcの明暗で表されている(明るいほど反射率が高いことを表す。)。また、
図6では点群データDpcが2次元状に表されているが、実際には3次元のデータである。
このように、点群データ取得装置3として3Dスキャナ3を用いる場合には、対象物2に取り付ける表示部23の反射率を(閾値以上に)高くするように構成することで、表示部抽出装置4で、3Dスキャナ3で取得された点群データDpc中から表示部23に対応する点群データDpcを的確に抽出することが可能となる。
【0045】
情報読取装置5(
図1参照)は、上記のように表示部抽出装置4が抽出した対象物2の表示部23に対応する点群データDpcからコード情報Cに対応する点群データDpcを抽出する。
そして、抽出したコード情報Cから、表示部23に対応する対象物2に関する情報を読み取って、当該対象物2の表示部23に対応する点群データDpcに対応付けるようになっている(情報読取工程(ステップS4))。
【0046】
なお、情報読取装置5を、表示部抽出装置4や後述するマップ形成装置6と一体的に構成することも可能である。
以下では、情報読取装置5で抽出される対象物2に関する情報に、当該対象物2の識別情報(以下、IDという。)が含まれている場合について説明するが、当該対象物2に関する他の情報が含まれていてもよい。
【0047】
本実施形態では、コード情報Cは、前述したように2次元パターンとして構成されており、
図2や
図4(b)に示したように(閾値以上に)反射率を高くした枠の部分に対して相対的に反射率が低い枠の内側を6×6のマス目に分け、コード情報Cが各マス目の反射率の高低の値で表されている。
そして、各マス目の反射率の高低の組み合わせを変えることで、各対象物2のID等を区別して表現可能なようになっている。
【0048】
本実施形態では、情報読取装置5は、表示部抽出装置4が抽出した対象物2の表示部23に対応する点群データDpcから反射率が低い枠に対応する点群データDpcを抽出し、その内側の点群データDpcを6×6の各部分に区分する。そして、各部分ごとの各点群データDpcに基づいて、各マス目の反射率の高低をそれぞれ2値で判別する。
そして、各マス目の反射率の高低のパターンに基づいてそれに対応する対象物2のIDを読み取り、読み取ったIDを当該対象物2の表示部23に対応する点群データDpcに対応付けるようになっている。
【0049】
マップ形成装置6(
図1参照)は、上記のようにして表示部抽出装置4が抽出した対象物2の表示部23に対応する点群データDpcと情報読取装置5が読み取った当該対象物2に関する情報(この場合は当該対象物2のID)に基づいて空間A内における複数の対象物2のマップM上の各位置を特定して対象物2のマップMを形成するようになっている(マップ形成工程(ステップS5))。
【0050】
なお、以下では、マップMが3次元のマップである場合について説明するが、マップMは例えば2次元のマップであってもよい。
その場合、マップMを形成する際に、又は3次元のマップを一旦形成した後で、例えば高さ方向の情報を捨象して、対象物2の水平方向の分布を表す2次元のマップを形成したり、あるいは、空間Aを所定の面(例えば洞道A(
図1参照)の延在方向に沿った上下方向に延びた面)で切断した場合の断面図状の2次元のマップなどを形成することが可能である。
【0051】
マップ形成装置6で対象物2のマップMを形成する方法として、本実施形態では、マップ形成装置6は、空間Aを撮影した際の3Dスキャナ3と対象物2との距離と、3Dスキャナ3の向き(3Dスキャナ3から当該対象物2への照射方向)に基づいて、各対象物2のマップMにおける各位置を算出する。
そして、各対象物2に当該対象物2のIDを割り当てて、
図7に示すように、対象物2のマップMを形成するようになっている。
【0052】
なお、3Dスキャナ3の1回の撮影で洞道A内の全ての対象物2を撮影することができない場合、例えば、上記のようにして、
図8(a)に示すように、洞道Aの一部である部分空間aについて部分マップmを形成する。
そして、3Dスキャナ3を洞道A内で移動させて同様の作業を行い、
図8(b)に示すように次の部分空間aについて部分マップmを形成する。
【0053】
そして、2つの部分マップmのいずれにも属している対象物2(例えば図中の対象物2a~2c)がある場合に、
図9に示すように、それらの対象物2のマップ上の位置が一致するように2つの部分マップmを統合する。
そして、このようにして部分マップmの形成と統合を繰り返すことで、対象物2の全体的なマップMを形成することができる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る対象物のマップ形成システム1や対象物のマップ形成方法によれば、作業員が空間A内に点群データ取得装置3(例えば3Dスキャナ3)を持ち込み、予め定められたコード情報Cが表示された各表示部23の向きを、点群データ取得装置3が取得することができるようにそれぞれ調整する。そして、点群データ取得装置3で空間A内(例えば洞道2内)を撮影して空間A内の構造物に関する点群データDpcを取得する。
そして、各装置が自動的に、点群データDpcの中から表示部23に対応する点群データDpcを抽出するとともに、抽出された表示部23に対応する点群データDpcからコード情報Cに対応する点群データDpcを抽出し、抽出したコード情報Cから当該表示部23に対応する対象物2に関する情報(例えば識別情報(ID))を読み取って当該表示部23に対応する点群データDpcに対応付ける。そして、表示部23に対応する点群データDpcと当該対象物2に関する情報に基づいて空間A内における複数の対象物2のマップM上の各位置を特定して対象物2のマップMを形成する。
【0055】
このように、本実施形態では、作業員は、空間A内に点群データ取得装置3(例えば3Dスキャナ3)を持ち込み、各表示部23の向きをそれぞれ調整して、点群データ取得装置3で空間A内の構造物に関する点群データDpcを取得するだけでよく、各装置が対象物2のマップMを自動的に形成するため、空間A内に配置された複数の対象物2のマップMを容易に形成することが可能となる。
また、対象物2のマップMを作成するために、作業員が個々の対象物2について緯度、経度、高度をそれぞれ測ったり、個々の対象物2に識別番号等を割り振るなどする必要がなく、点群データ取得装置3による点群データDpcの取得動作により複数の対象物2の点群データDpcを取得して対象物2のマップMを形成することができるため、対象物2のマップMを簡便に形成することが可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態では、点群データ取得装置3で、空間A内の各対象物2を含む構造物の位置(3Dスキャナ3の場合は3Dスキャナ3からの距離やレーザの照射方向)の情報を正確に取得することができるため、空間A内に配置された複数の対象物2の正確なマップMを形成することが可能となる。
【0057】
なお、
図7では、各対象物のIDを表示する場合を示したが、マップMを用いた表示の仕方や内容は適宜決められる。
例えば、マップM上の対象物2を指定すると、対象物2であるセンサデバイス2で測定された測定結果(例えば温度等)を表示したり、その時間的変化のグラフを表示したりするように構成することも可能である。
【0058】
また、上記の実施形態では、
図2や
図4(b)に示したように、コード情報Cが6×6個のマス目を有する2次元パターンであり、それによりID(識別情報)を含む対象物2に関する情報を表すように構成した場合について説明した。
しかし、2次元パターンのマス目は必ずしも6×6個でなくてもよく、また、図示を省略するが、m×n個(m≠n)としてもよい。また、2次元パターンを横や縦に複数並べてもよく、QRコード(登録商標)を用いてもよい。
【0059】
また、コード情報Cとして、バーコードを用いてもよい。さらに、コード情報Cを、反射率の高低の2値で表すように構成する代わりに、反射率の高低における3値以上の多値で表すように構成することも可能であり、また、カラーで表示するように構成することも可能である。
さらに、コード情報Cは、文字(数字やアルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字等)であったり、色や形状、大きさ、あるいはそれらの組み合わせを変えたものであってもよい。
【0060】
ところで、上記の実施形態では、複数の対象物2(センサデバイス2)の表示部23に表示されたコード情報Cの大きさ(例えば2次元パターンの枠などの大きさ)を、いずれの対象物2においても同じ大きさとしてもよく、また、対象物2によって大きさを変えるように構成することも可能である。
すなわち、複数の対象物2には、第一の表示部23Aを備えた第一の対象物2Aと、第二の表示部23Bを備えた第二の対象物2Bとが含まれ、第二の表示部23Bには、コード情報Cが、第一の表示部23Aに表示されたコード情報Cよりも大きく表示されるように構成することも可能である。この場合、「大きく表示」とは、マスの数(例えば6×6個)を変えずに、各マスの1辺を大きくし、コード情報Cが幾何学的相似の関係になるよう拡大されることを意味する。
【0061】
具体的には、例えば、3Dスキャナ3に近い側に第一の表示部23Aを設置し、3Dスキャナ3から遠い側には第一の表示部23Aより大きな第二の表示部23Bを設置してもよい。そのようにすることで、3Dスキャナ3から遠い側に設置された表示部23の二次元コードCをより確実に読み取ることができる。
なお、その場合、三以上の表示部23を設置するときであっても、近い側には第一の表示部23A、遠い側には第二の表示部23Bをそれぞれ単数又は複数設置すれば、同様の効果を奏することができる。
【0062】
さらに、例えば、
図10に示すように、3Dスキャナ3(点群データ取得装置。図示省略)からの距離が遠いほど表示部23に表示されるコード情報Cを大きく表示するように構成することができる。
図10の場合は、3Dスキャナ3からの距離が近い対象物2Aの表示部23Aに表示されたコード情報Cよりも、3Dスキャナ3からの距離が遠い対象物2Bの表示部23Bに表示されたコード情報Cの方が大きく表示されている。
【0063】
通常、3Dスキャナ3(点群データ取得装置)からの距離が遠いほどコード情報Cの分解能が低下するが、上記のように3Dスキャナ3からの距離が遠いほどコード情報Cを大きく表示することで、3Dスキャナ3からの距離が近いコード情報Cは勿論、3Dスキャナ3からの距離が遠いコード情報Cも的確に撮影することが可能となる。
【0064】
また、例えば、
図1に示した洞道Aの本線から分岐した行き止まりの側道A1において、側道A1内に設置された複数の対象物2の各コード情報Cを、上記と同様に、本線からの距離が近い対象物2の表示部23に表示されたコード情報Cよりも、本線からの距離が遠い対象物2の表示部23に表示されたコード情報Cを大きく表示するように構成することができる。
【0065】
このように構成すれば、洞道Aの本線上に設置した3Dスキャナ3で、側道A1内の複数の対象物2を撮影することで、本線に近い側のコード情報Cは勿論、本線から遠い側(側道A1の奥側)のコード情報Cも的確に撮影することができる。
そのため、作業員が側道A1の奥に3Dスキャナ3を持ち込まなくても、洞道Aの本線上から撮影するだけで、側道A1内の全ての対象物2のコード情報Cを的確に撮影することが可能となる。
【0066】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0067】
例えば、上記の実施形態では、表示部23を矩形の厚紙状に形成し、2つ折りにした折り目23aに切り込み23bを入れて逆折りにし、折り目23aと逆折りの間にアンテナ22を通すように構成した場合について説明した(
図2参照)。
しかし、表示部23は、取付部22に対して回転させて、その向きを、コード情報Cを点群データ取得装置が取得することができるように調整することができるように構成されていればよく、上記の形状に限定されない。
【符号の説明】
【0068】
1 対象物のマップ形成システム
2 対象物、センサデバイス
2A 第一の対象物
2B 第二の対象物
3 点群データ取得装置
4 表示部抽出装置
5 情報読取装置
6 マップ形成装置
21 固定部
22 取付部、アンテナ
23 表示部
23A 第一の表示部
23B 第二の表示部
A 空間、洞道
B 構造物
C コード情報
Dpc 点群データ
M マップ
r 距離
α コード情報の最小分解能の大きさ
Δθm 点群データ取得装置の最小角度分解能
ω 角度