IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

特開2023-180657白液処理方法、白液酸化監視システム
<>
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図1
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図2
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図3
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図4
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図5
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図6
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図7
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図8
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図9
  • 特開-白液処理方法、白液酸化監視システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180657
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】白液処理方法、白液酸化監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20231214BHJP
   D21C 7/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N21/27 B
D21C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094143
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広
(72)【発明者】
【氏名】駿河 圭二
(72)【発明者】
【氏名】柏木 聡
【テーマコード(参考)】
2G059
4L055
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF10
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK01
2G059KK10
2G059MM05
2G059MM12
4L055BA18
4L055DA08
4L055DA22
4L055EA34
4L055FA01
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】 本発明は、白液の状態をできるだけ正確に把握できる技術を提供すること。
【解決手段】 パルプ製造における白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御する、白液処理方法;前記色調が、前記白液の色調を測定して取得された白液の色調データであり、当該色調データから白液の状態を制御することが好適である。 前記白液の色調データが、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好適である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御する、白液処理方法。
【請求項2】
前記色調が、前記白液の色調を測定して取得された白液の色調データであり、当該色調データから白液の状態を制御する、請求項1に記載の白液処理方法。
【請求項3】
前記白液の色調データが、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項2に記載の白液処理方法。
【請求項4】
前記白液のR相対受光量、又は、前記白液のG相対受光量は、白液中の多硫化物濃度と相関関係を有する、請求項3に記載の白液処理方法。
【請求項5】
前記色調データが、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量であり、
前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値より高い場合には、白液の多硫化物生成反応を促進させるように、白液の状態を制御する、又は、
前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値より低い場合には、白液の多硫化物生成反応を抑制させるように、白液の状態を制御する、
請求項2に記載の白液処理方法。
【請求項6】
前記白液の状態の制御は、白液に対する酸素供給量を調整して白液の状態を制御することである、請求項2又は5に記載の白液処理方法。
【請求項7】
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データに基づき白液の状態を制御する、白液酸化監視システム。
【請求項8】
前記色調データが、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量である、請求項7に記載の白液酸化監視システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白液処理方法、白液酸化監視システム、白液に含まれる多硫化物濃度調整方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプは、木材チップに水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを含む蒸解処理用水(蒸解薬液ともいう)を加え蒸解することにより製造され、この蒸解処理用水として白液が用いられている。そして、木材チップと蒸解薬液を加えた蒸解工程で木材チップをアルカリ(白液)で蒸煮してパルプを得るとともに、パルプ廃液(黒液)から蒸解薬剤と熱エネルギーの回収を行っている。パルプの製造工程では、蒸解工程、パルプ洗浄工程、黒液濃縮工程、黒液燃焼工程、緑液処理工程、白液処理工程、消和反応工程、苛性化反応工程、石灰焼成工程などから薬剤の回収が行われ、回収された薬剤を再利用している。
【0003】
パルプ製造における蒸解工程は、パルプを効率よく得るための工程であるので、パルプの収率向上又は収率低下抑制が重要となっている。この蒸解工程でのパルプ収率の低下の一因は、パルプ(セルロース繊維)の多糖性の還元性末端基(アルデヒド基)が順次脱落していくピーリング反応である。このピーリング反応対策として、硫化ナトリウムを酸化させた多硫化ナトリウム(Na2Sx:ポリスルファイド(PS)ともいう)を用いており、この多硫化物はこの還元性末端基を酸化して、ピーリング反応に対して安定的なカルボキシル基にすることが知られている。
【0004】
現在のパルプ製造において、多硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムを含む白液(蒸解薬液)の製造方法としては、クラフト法の蒸解薬液である白液に直接単体硫黄を添加して多硫化ナトリウムを製造する方法、白液中の硫化ナトリウムを活性炭等の固体触媒を用いて空気酸化を行なって多硫化ナトリウムとする方法(非特許文献1)、白液電解方法(非特許文献2)などが知られている。
【0005】
蒸解工程では、ピーリング反応対策のためには、白液中の多硫化ナトリウムの濃度を管理、調整又は制御するために、白液中の多硫化ナトリウム濃度の把握が重要になってくる。しかし、従来技術は、白液中の硫化ナトリウムNaSを多硫化ナトリウムNaに酸化する処理状況を把握するのに、サンプリング採取による手分析が用いられていた。
【0006】
また、多硫化ナトリウム蒸解薬液の濃度を測定する方法として、従来の方法と比較して、迅速に、実用的な精度で分析し算出するため、液体クロマトの一種であるイオンクロマトグラフィー分析を用いた方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1は、多硫化ナトリウム蒸解プロセスに使用する蒸解薬液の多硫化ナトリウムのイオンを組成する多硫化硫黄(Naにおける(x-1)Sに相当する。)を分析する方法に関するものである。当該特許文献1には、多硫化ナトリウム蒸解薬液の多硫化ナトリウムのイオンを含むアルカリ性水溶液に、亜硫酸イオンを作用させ、多硫化ナトリウムのイオンを組成する多硫化硫黄をチオ硫酸イオンに変えた後、これらのチオ硫酸イオン及び/又は亜硫酸イオンを含む液を分析試料として、チオ硫酸イオン又は亜硫酸イオンを分析し、得られたチオ硫酸イオンの増加量又は作用させた亜硫酸イオンの減少量を基に多硫化硫黄の量を算出することを特徴とする多硫化ナトリウム蒸解薬液中の多硫化硫黄の分析方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、多硫化ナトリウムのイオンを含むアルカリ性水溶液に、アルキル化剤を作用させ、多硫化ナトリウムを組成する各多硫化物イオン成分を各ジアルキル多硫化物に変えた後、これらの化合物を分析試料として、高速液体クロマトグラフィーの分析を行うことを特徴とする多硫化ナトリウムの分析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07-92148号公報
【特許文献2】特開平06-027095号公報
【特許文献3】特開2022-12850号公報
【特許文献4】特開2018-083176号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】黒須一博、紙パ技協誌、第65巻第9号第42~47頁(2011年9月)
【非特許文献2】海外技術ニュース、”MOXY法による多硫化物蒸解”(G.C.Smith S.E. Knowles and R.P.Green., Paper Trade Journal/May 1, 1975)、紙パ技協誌、第29巻第10号第25~28頁(1975年10月)
【非特許文献3】SCAN-N 30:85 (SCANDINAVIAN PULP, PAPER AND BOARD TESTING. COMMITTEE, 1985).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のサンプリング採取による手分析法では、白液中の多硫化ナトリウムを簡便に迅速に測定することができず、また連続的に測定するも困難であった。このため、このような従来の多硫化物検出又は測定方法では、多硫化物生成工程に流入する前から多硫化物生成工程から流出した後までの間の白液中の多硫化ナトリウムを、リアルタイムにその濃度を把握することもできなかった。このため、多硫化物生成工程における白液(「多硫化物蒸解薬液」ともいう)中の多硫化物濃度の調整が十分にできなかった。このため、従来の多硫化物濃度の検出又は測定方法では、蒸解工程においてピーリング反応の対策ができる安定的な多硫化物濃度に調整することが難しかった。このため、蒸解工程でのパルプ収率の低下などになり、生産性を大きく阻害していた。
また、イオンクロマトグラフィーによる多硫化ナトリウム蒸解薬液中の多硫化ナトリウム濃度分析でも、そのサンプル採取やサンプル採取後の様々な試薬反応の前処理があるため、白液中の多硫化ナトリウム濃度をできるだけより簡便にかつよりリアルタイムで把握したいと本発明者らは考えた。
【0012】
そこで、本発明は、白液の状態をできるだけ正確に把握できる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、従来の手分析と比較し、白液の色調から白液の状態(具体的には、白液中の多硫化物濃度(g/L as S)の推定)をできるだけ正確にリアルタイムに把握することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明は、以下のとおりである。
【0015】
本発明は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御する、白液処理方法を提供するものである。
本発明は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データに基づき白液の状態を制御する、白液酸化監視システムを提供するものである。
前記色調が、前記白液の色調を測定して取得された白液の色調データであり、当該色調データから白液の状態を制御することが好適である。
前記白液の色調データが、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好適である。
前記白液のR相対受光量、又は、前記白液のG相対受光量は、白液中の多硫化物濃度と相関関係を有することが好適である。
前記色調データが、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量であり、
前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値より高い場合には、白液の多硫化物生成反応を促進させるように、白液の状態を制御する、又は、
前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値より低い場合には、白液の多硫化物生成反応を抑制させるように、白液の状態を制御する、ことが好適である。
前記白液の状態の制御は、白液に対する酸素供給量を調整して白液の状態を制御することであることが好適である。
前記色調データが、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、白液の状態をできるだけ正確に把握できる技術を提供することができる。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明における実施形態に係る多硫化物製造系を備えたパルプ製造系の概略図であるが、これは本発明の1例であって、本発明はこれに限定されない。
図2図2Aは、本第1実施形態の概略構成図であり、本第1実施形態は、消和・苛性化系40から多硫化物生成工程(リアクター)の入口との間で当該入口付近に設置した白液色調測定部(色調検出部)と、白液状態を制御する制御部とを備えることが好適であるが、これに限定されない。 図2Bは、本第2実施形態の概略構成図であり、本第2実施形態は、多硫化物生成工程(リアクター)の出口と蒸解系10(蒸解釜11)との間で当該出口付近又は蒸解釜11の入口付近に設置した白液色調測定部(色調検出部)と、白液状態を制御する制御部とを備えることが好適であるが、これに限定されない。
図3図3は、本第3実施形態の概略構成図であり、本第3実施形態は、多硫化物生成工程(リアクター)の入口付近及び出口付近に設置した複数の白液色調監視部(色調検出部)と、多硫化物生成工程に関する酸素供給部及び温度調整部と、白液状態を制御する制御部を備えることが好適であるが、これに限定されない。
図4】本実施形態における色調データに基づく白液状態(好適には多硫化物生成反応)の制御を示すフローの概略図の一例であり、本発明はこれに限定されない。
図5】本実施形態における色調処理データと設定値(設定範囲)との対比による白液状態(好適には多硫化物生成反応)の制御の一例を示すフローの概略図の一例であり、本発明はこれに限定されない。
図6】本実施形態における色調処理データ(好適には白液中の多硫化物濃度の推定値)と設定範囲(好適には多硫化物濃度の設定範囲)との対比による白液状態(好適には多硫化物生成反応)の制御の一例を示すフローの概略図の一例であり、本発明はこれに限定されない。
図7】本実施形態における色調処理データ(好適にはR相対受光量)と設定範囲(好適にはR相対受光量の設定範囲)との対比による白液状態(好適には多硫化物生成反応)の制御の一例を示すフローの概略図の一例であり、本発明はこれに限定されない。
図8図8Aは、試験例1のNo.1~5におけるR,G,B相対受光量と多硫化物濃度との関係を示す図であり、右縦軸はR,G,B相対受光量の値であり、左縦軸は多硫化物濃度(PS:g/L as S)であり、横軸は、試験例1のNo.1~5である。 図8Bは、試験例1のNo.1~5におけるR値,G値,B値と、多硫化物濃度との関係を示す図である。右縦軸はR値,G値,B値であり、左縦軸は多硫化物濃度(PS:g/L as S)であり、横軸は、試験例1のNo.1~5である。
図9図9A、B、Cは、試験例1のNo.1~5におけるR,G,B相対受光量と、多硫化物濃度との相関関係、及び相関係数を示す図である。縦軸は、多硫化物濃度(PS:g/L as S)であり、横軸は、R,G,B相対受光量の値である。図9Aは、R相対受光量とPS濃度の関係を示す図である。図9Bは、G相対受光量とPS濃度の関係を示す図である。図9Cは、B相対受光量とPS濃度の関係を示す図である。
図10】一般的な特化型AIの処理手順を簡略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。本実施形態は、以下の順に説明する。
【0019】
1.本実施形態に係る白液処理方法
1-1.本実施形態に係る白液処理系
1-2.本実施形態に係る白液処理方法
1-2-1.白液の色調の監視
1-2-2.色調データ処理
1-2-3.多硫化物生成工程
1-2-4.白液の状態の制御
1-2-5.本実施形態の例
2.白液処理に関する装置及びシステム
3.本実施形態における白液処理方法を用いるパルプ製造系の概要
4.本技術について
【0020】
1.本実施形態に係る白液処理方法
【0021】
本実施形態は、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御する、白液処理方法を提供することができる。当該白液処理方法は、白液処理の制御又は白液処理の管理方法であってもよい。
また、本実施形態は、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該白液の色調から白液の状態を制御する、白液の状態の制御工程を含む、白液処理方法を提供することができる。
本実施形態において、前記「パルプ製造における白液」は、「パルプ製造の蒸解工程に供する白液」が好適であり、当該監視する「パルプ製造の蒸解工程に供する白液」は、消和・苛性化系から蒸解系以前までの白液であることがより好適である。
【0022】
本実施形態によれば、白液の状態をできるだけ正確に把握できる技術を提供することができる。また、本実施形態によれば、白液中の多硫化ナトリウム濃度をできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に把握することができる。また、白液の状態をより正確に把握できるようになり、安定操業につなげることができ、また、白液の状態(好適には、多硫化物濃度状況、多硫化物生成状況)をより正確に把握できるようになり、安定的に操業することができる。安定的に操業することにより、化学パルプ収率の低下を抑制することができる操業、パルプ収率の低下を抑制できパルプ収率又はパルプ生産の安定化ができる操業を行うことができるようになる。
【0023】
前記白液処理方法は、(a)クラフトパルプの収率の安定、向上或いは低下抑制方法若しくは蒸解工程でのパルプ収率の安定、向上或いは低下抑制方法、(b)白液中の多硫化物の生成方法、調製方法或いは濃度調整方法、(c)白液の製造方法或いは調製方法、白液酸化処理の制御方法、(d)白液中の多硫化物濃度の推定方法、又は、(e)これら方法の監視システム或いは白液酸化監視システムなど、及びこれらの組み合わせから選択される1種又は2種以上であってもよい。
また、本実施形態における制御手段は、他の手段とアクセス可能な状態であることが可能である。当該他の手段として、特に限定されず当該制御手段と同じ装置などの内部手段又は外部手段であってもよく、好適には、光学的センサーなどの色調測定手段、多硫化物生成反応への空気供給量を調整する酸素供給手段、温度調整手段、助剤添加手段、外部記憶手段(サーバ、クラウドなど)などから選択される1種又は2種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
なお、本実施形態における白液処理方法の例の説明において、後述する内容(例えば「2.」「3.」「4.」等)等と重複する、白液、白液の色調の監視、色調データ処理、色調データ、色調処理データ、多硫化物濃度推定モデル(推定式)、多硫化物生成工程、白液の状態の制御、制御部などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略する場合もあるが、当該「2.」~「4.」等の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。また、本実施形態における白液処理系や白液処理方法などの例の説明において、後述する「2.」~「4.」等の説明を、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
【0025】
1-1.本実施形態に係る白液処理系
【0026】
本実施形態に係る白液処理に関する一つの実施形態の例として、図1図10などを参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る白液処理方法が適用される白液処理系(好適な態様として、蒸解工程に供する白液を処理する系)の概要について、以下に簡単に説明するが、本発明はこれに限定されず、現場ごとに応じた様々な白液処理系に適用することができる。
【0027】
例えば、図1を参照して説明すると、本実施形態に係る白液処理系は、消和・苛性化系40からの硫化塩及び水酸化塩を含む白液を、蒸解系10(蒸解工程)に用いる多硫化物を含む白液になるように処理するために、白液の状態を監視及び/又は制御するための白液処理系100を含むことが好適である。硫化塩、水酸化塩、多硫化物の塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられるが、好ましくはアルカリ金属(より好適にはナトリウム)である。
【0028】
本実施形態に係る白液処理系は、白液の状態(好適には蒸解工程に供する白液の状態)を監視し当該白液の色調を測定する白液色調測定系と、当該白液の色調の測定値に基づき白液の状態を制御する白液状態制御系とを含んでもよい。
【0029】
本実施形態に係る白液の状態制御系は、パルプ製造における白液を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データ(好適には色調処理データ)に基づき白液状態を制御することが好適である。
また、本実施形態に係る白液状態制御系には、パルプ製造における白液を監視する白液監視系と、監視結果の白液の色調データを解析する色調データ解析系と、監視結果から多硫化物生成工程における多硫化物濃度を調整する多硫化物生成調整系などが挙げられ、これらから1種又は2種以上を含んでもよい。
また、本実施形態に係る白液状態制御系において、前記白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液であることが好適である。
また、本実施形態に係る白液状態制御系は、白液の色調監視系、白液の色調データ解析系、白液の多硫化物濃度推定系、白液の多硫化物生成調整系から選択される1種又は2種以上を制御又は管理してもよい。
【0030】
本実施形態に係る白液処理系100は、ライン(例えば、流路、配管など)にて、各場所又は各部、各系などと接続することができ、例えば、消和・苛性化系40と白液処理系100と蒸解系10との各間をラインにて接続することができる。消和・苛性化系40からの硫化塩及び水酸化塩を含む白液は、白液クラリファイア42又は白液タンク43からの白液であることが好適である。蒸解系10において、白液を用いて原料である木材チップから、パルプスラリー又はパルプクラフトを製造することが好適である。
【0031】
本実施形態の好適な態様の流れとして、消和・苛性化系40からの白液(この白液は硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む)が、蒸解薬液の原料として、白液処理系100に流入すること;白液処理系100に流入した白液は、多硫化物生成工程(好適には酸化反応工程)にて白液中に多硫化物が生成され白液(この白液は所定濃度の多硫化ナトリウムを含む)に処理され、蒸解系に白液を流出すること;流出された白液は、蒸解系にて蒸解薬液として使用されること、などが挙げられる(例えば図1~3など参照)。
【0032】
本実施形態において、多硫化物生成工程における白液の色調を測定することが好適であり、この生成工程の監視には、生成工程中の他、生成工程への流入前及び/又は生成工程からの流出後が含まれてもよい。また、本実施形態において、多硫化物生成工程の流入前の白液の色調及び/又は流出後の白液の色調を、同時期又は別々の時期に測定することが好適である(例えば、図2及び図3など参照)。本実施形態では、当該白液の色調測定結果に基づき、多硫化物生成工程における白液中の多硫化物濃度又は多硫化物推定濃度を把握し、白液の状態を制御することが好適である。
【0033】
1-2.本実施形態に係る白液処理方法
【0034】
本実施形態に係る白液処理方法は、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御することが好適である。より具体的には、前記パルプ製造における白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。前記白液処理は、白液中の多硫化物生成工程(好適には酸化反応工程)において、消和・苛性化系からの白液(当該白液は硫化塩及び水酸化塩を含む)を、蒸解工程に用いる多硫化物を含む白液に処理することが好適である。
【0035】
本実施形態では、色調を監視し及び/又は測定し、さらに測定する受光量を組み合わせることで、白液の状態の制御(好適には白液中の多硫化物濃度の調整)に関する監視を行うことが好適である。これにより、多硫化物生成工程における、白液の状態(好適には多硫化物濃度)をより正確に把握できるようになり、安定的に操業することができる。
【0036】
本実施形態に係る白液処理方法は、白液の色調を白液色調測定装置にて監視すること;当該白液の色調データ(好適には色調測定データ)に基づき白液の状態の制御に関する色調処理データ(好適には変換又は加工データなど)を取得すること;取得した色調処理データに基づき、白液中の多硫化物生成の調整を行うこと;を含むことが好適であり、これら監視、色調処理データ取得及び多硫化物生成調整などは、白液の状態を制御する制御工程に含まれることがより好適である。
【0037】
前記色調は、前記パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を測定して取得された白液の色調データであることが好適であり、当該色調データから白液の状態を制御することがより好適である。
前記色調は、前記パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を測定して取得された白液の色調データ(好適には色調測定データ、色調処理データ)であることが好適であり、当該色調データから白液の状態を制御することがより好適である。
【0038】
本実施形態において、色調処理データとは、色調データ(好適には色調測定データ)を、白液の状態の制御に利用できる又は関与できるように処理(変換、加工など)されたデータが好適である。また、色調処理データは、白液色調測定データに基づき処理され取得されることが好適である。
【0039】
前記色調データ(好適には色調処理データ)は、白液のR,G,B相対受光量、及び/又は、白液中の多硫化物濃度の推定値であることが好適である。本実施形態において、白液のR,G,B相対受光量とは、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量、白液のB相対受光量から選択される1種又は2種以上のことをいう。
前記白液のR,G,B相対受光量は、白液中の多硫化物濃度と統計学的な関連性(好適には相関関係)を有することが好適であり、白液中の多硫化物濃度と負の相関関係を有することがより好適である。
前記色調データが、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好適であり、より好適には白液のR相対受光量である。
【0040】
前記白液の状態の制御は、多硫化物生成工程にて行われることが好適である。当該白液の状態の制御は、多硫化物生成反応又は多硫化物生成工程を制御することが好適であり、また、白液中の多硫化物濃度、白液中の多硫化物の生成反応又は白液の酸化反応を制御することが好適である。
【0041】
また、前記白液の状態の制御は、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内又は設定範囲内になるように白液状態を制御することが好適である。当該制御は、前記白液の色調又は色調データ(好適には、色調測定データ、色調処理データ)に基づき行うことが好適であり、又は、白液中の多硫化物濃度推定モデル(好適には白液中の多硫化物の推定濃度)に基づき行うことが好適である。
【0042】
前記白液の状態の制御は、白液に対する助剤(好適には硫化塩、酸化剤)の添加量調整、白液の温度調整、及び白液に対する酸素供給量調整からなる群から選択される1種又は2種以上によるものであることが好適である。このうち、酸素供給量調整が、酸化反応をより簡便に制御しやすいので、より好適である。
【0043】
1-2-1.白液の色調の監視
本実施形態の白液処理方法では、白液の色調を監視することが好適である。当該白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。これにより、多硫化物生成工程における白液状態の処理状況を、迅速かつ正確に把握することができ、白液の状態(好適には多硫化物濃度)をより正確に把握できるようになり、安定的に操業することができる。
【0044】
前記白液の色調は、特に限定されないが、色の数値化ができる表色系の色調であることが好適である。当該表色系として、混色系又は顕色系のいずれでもよいが、CIE表色系を用いることが好適である。当該CIE表色系として、例えば、RGB系、XYZ表色系、L表色系、L表色系などが挙げられるが、これらに限定されない。このうち、RGB系、XYZ表色系、及びL表色系から選択される1種又は2種以上がより好適である。
【0045】
また、これらCIE表色系は、必要に応じて相互に変換することが可能である。例えば、RGB系色調から、XYZ表色系色調又はL表色系色調などに変換可能であり、また、XYZ表色系色調などからL表色系色調などにも変換可能であり、その逆の変換も可能である。
このため、本実施形態において、白液の色調として取得したRGB表色系色調などから、L表色系色調などに変換し、変換したL表色系色調などにて白液の状態を制御してもよいし、L表色系色調などからRGB表色系色調などに変換し、変換したRGB表色系色調などにて白液の状態を制御してもよい。
【0046】
前記白液の色調は、白液の色調を測定して取得された白液の色調データ(好適には白液測定データ)であることが好適である。より具体的には、白液の色調を監視する際に、前記白液の色調を、後で詳述する白液の色調測定装置によって測定し、この測定値を表色系の色調データとして取得することもできる。当該色調測定装置は、色調データを取得後、当該色調データを制御装置に送信してもよいし、内部又は外部の記憶部に記憶させてもよい。なお、色調測定装置は、下記の色調監視場所に適宜設定することができる。なお、本実施形態における装置は、部、系又は手段などであってもよい。
【0047】
前記白液の色調を、経時的に監視することが好ましく、これにより白液の色調を経時的に取得することができる。経時的に色調を取得することで、より正確に白液の状態を制御しやすい。
前記白液の色調を、連続的、又は間欠的(好適には一定間隔ごと)に監視してもよい。当該「一定間隔」とは、例えば、1~60分間隔や5~20分間隔などであり、一定間隔ごとに監視することで、取得データ量を低減し、制御部の処理速度を向上することができる。
【0048】
前記監視する白液は、上記<1-1.本実施形態に係る白液処理系>で述べた、消和・苛性化系以降から蒸解系以前までの各場所又はこれら各部のいずれの白液であってもよく、消和・苛性化系以降から蒸解系以前までの間には多硫化物生成系が含まれる。より具体的には、前記監視する白液は、白液クラリファイアや白液タンクなどの消和・苛性化系以降の白液、多硫化物生成装置内の白液、蒸解系以前の白液、及びそれぞれをつなぐ各ライン(例えば、流路、配管など)の白液などから選択される1種又は2種以上の白液であってもよい。
【0049】
前記監視する白液は、消和・苛性化系から蒸解系以前までの白液がより好ましく、より好適な具体例として、例えば、多硫化物生成装置への流入ライン(消和・苛性化系からの移送ライン)の白液、多硫化物生成装置内の白液、多硫化物生成装置からの流出ライン(蒸解系への移送ライン)の白液などから選択される1種又は2種以上が好適である。さらに好適な具体例として、多硫化物生成装置に備える、白液流入口、白液流出口、及びこれら流入口付近又は流出口付近の移送ラインなどから選択される1種又は2種以上の白液がより好適である。さらに好ましくは、白液流入口及び/又は白液流出口、又はその付近であり、より好ましくは白液流出口又はその付近であり、白液流出口がより好適である。
より好ましくは白液の流入又は流出の「直後」であり、当該流入又は流出の「直後」とは、より好適には流入前から2時間程度の間又は流出後から2時間程度の間、さらに好適には流入前~1又は0.5時間程度の間又は流出後~1又は0.5時間程度の間であり、例えば、好適な流出直後として、流出後から2時間以内である。
【0050】
白液の色調監視場所は、上述した白液処理系の各場所又は各部であってもよい。
前記白液の色調監視場所の数は、特に限定されず、1又は2以上であってもよい。当該色調監視場所を複数にすることで、白液の状態をより把握しやすくなるので、より適正な白液の状態(好適には、より適正な白液中の多硫化物濃度)になるように制御しやすい。
また、白液を経時的に監視する場合、同じ場所の白液を経時的に監視してもよいし、別々の場所の白液を経時的に監視してもよい。好ましくは、同じ場所の白液から色調データ(好適には色調測定データ、色調処理データ)を経時的に取得することである。これにより、白液の色調変化(好適には、多硫化物生成工程前後の白液)を経時的に正確に監視若しくは予測しやすいので好適である。このような経時的な色調データに基づいて、白液の状態をより適切に制御することができる。
【0051】
また、前記白液を監視する場合、XYZのいずれの方向からでも白液を監視することができるが、上方向(Z軸方向、垂直方向)から白液を監視することが好ましい。また、前記白液を監視する場合、白液(好適には液面又は測定用面)から所定の距離(間隔)を空けて白液の色調を監視することが好ましく、当該所定の距離として、装置の性能や白液の状態などに応じて適宜調整することができるが、例えば0~1000mmが好適であり、より好ましくは30~500mm、さらに好ましくは50~200mmである。また、白液を監視する場合、白液処理系の各場所又は各部に、白液を流入させ、監視するための色調監視用ライン(例えば、バイパスラインなど)を設けてもよい。このとき、流入させる白液は、液面付近(例えば、液面~液面から50cm程度の間)の白液が好ましい。これにより、白液を監視しやすく、白液の温度などを調整しやすい。
【0052】
前記白液の色調監視場所に、白液色調測定装置(例えば、カラーセンサなど)を設けることができる。これにより、従来であれば、強アルカリ、腐食成分及び異臭成分など手分析では取り扱いにくい白液を容易に経時的に或いは連続的に監視できる。また、当該白液色調測定装置であれば、非接触方式を採用することで、白液に接触させる必要もなく、白液処理系への設置も容易である。
【0053】
前記監視する白液のpH及び温度は、特に限定されないが、白液のpH(20℃)は、好ましくは12以上、より好ましくは13以上である。
また、前記監視する白液の温度は、その好適な下限値として、好ましくは4℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃又は50℃以上であり、その好適な上限値として、多硫化物の分解抑制の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
なお、前記監視する白液の好適なpH及び温度は、多硫化物生成工程における好適なpH及び温度であってもよい。
【0054】
1-2-2.色調データ処理
本実施形態の白液処理方法では、前記監視により取得された色調を、色調データに処理(変換、加工など)することが好適である。
本実施形態の白液処理方法では、色調データ(好適には白液色調測定データ)に基づき、白液の状態の制御に関する色調処理データに処理し取得することが好適である。この色調処理データを用いることにより、白液の状態をより正確に把握できるようになり、安定操業につなげることができる。
【0055】
前記白液の色調又は色調データは、特に限定されないが、前記パルプ製造における白液の色調を測定して取得された白液の色調測定データであることが好適である。当該白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液であることが好適である。より好適な態様として、前記白液の色調又は色調データは、当該取得された白液の色調測定データに基づき制御部などにより処理(例えば加工、変換など)された色調処理データである。
【0056】
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)は、好ましくは、多硫化物生成工程に流入する白液の色調又は色調データ、及び/又は、多硫化物生成工程から流出する白液の色調又は色調データである。
前記白液の色調データ(好適には色調処理データ)として、白液中の多硫化物濃度と関連性(好適には統計学的な関連性、より好適には相関関係)のある色調データが好適であり、より好適な具体例として、好ましくは、白液のR,G,B相対受光量、及び白液中の多硫化物濃度の推定値から選択される1種又は2種以上であり、これらに特に限定されない。
【0057】
本実施形態において、より好ましくは、前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液中の多硫化物濃度を推定することが好適である。より好適な態様として、前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液中の多硫化物の推定濃度を取得することができることが好適であり、さらに好ましくは、白液中の多硫化物濃度を推定する推定モデル又は推定式を用いて、色調測定結果から白液中の多硫化物濃度を推定することであり、よりさらに好ましくは、さらに取得した白液中の多硫化物濃度の推定結果(推定値)及び設定値(目標値、目的値)に基づき、白液の多硫化物濃度の生成を調整することである。
本実施形態において、前記設定値(目標とする設定値)として、現場の白液処理の状況(実機ごと、季節ごとなど)に応じて、白液の多硫化物濃度の好適な範囲となる値を設定値とすることが好適である。
【0058】
本発明者らは、後記〔実施例〕に示すように、白液の色調測定結果からの色調測定データであるR,G,B値を用いるよりも、当該色調測定データを処理(変換、加工)した色調処理データであるR,G,B相対受光量を用いることで、白液中の多硫化物濃度をより正確に把握することができることを見出した。これにより、白液の色調を連続的に画像解析でき、この白液の色調からパルプ製造系(好適には、蒸解薬液生成系、蒸解系)の操業状態を把握し、リアルタイムで制御することでパルプ製造系(好適には、蒸解薬液生成系、蒸解系、クラフトパルプ法)の安定化を図ることができる。
【0059】
なお、本明細書における「R,G,B相対受光量」は、それぞれ、R相対受光量=全体の受光量×R値/(R値+G値+B値);G相対受光量=全体の受光量×G値/(R値+G値+B値);B相対受光量=全体の受光量×B値/(R値+G値+B値)にて算出し取得することができる。また、本実施形態で用いるR,G,B相対受光量は、複雑な数式を用いていないため、データ量やデータ処理の負担も少なくてよく、また操作者(ヒト)でも容易に算出し装置などに適宜入力することも可能であり、また検算も容易であるという優れた利点がある。
【0060】
さらに、本発明者らは、R,G,B相対受光量(より好適には、R相対受光量、G相対受光量)の色調処理データと、白液中の多硫化物濃度とが、統計学的な関連性(具体的には相関関係)を有すること、具体的には負の相関関係を有することを見出した。本発明者らが、このような統計学的な関連性を見出したことにより、白液の色調を測定し、当該色調測定結果の値を、R,G,B相対受光量に処理(変換又は加工など)し、取得したR,G,B相対受光量に基づき、白液中の多硫化物濃度又は白液中の多硫化物推定濃度もより正確に把握することができるようになった。
【0061】
本発明者らは、色調データと白液中の多硫化物濃度とに統計学的な関連性(具体的には相関関係)があることを見出したことにより、白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)を取得することができることを見出した。この推定モデルを用いることにより、実測値からの色調処理データ(R,G,B相対受光量など)から、現場の白液中の多硫化物濃度(好適には、多硫化物生成工程における白液中の多硫化物濃度)をより正確に簡便に推定することもできる。さらに、実際のパルプ製造の蒸解工程に供する白液処理の状況(実機ごと、季節ごどなど)ごとに、白液の色調データと白液中の多硫化物濃度とを実測することにより、白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)を取得することもでき、このような状況ごとの推定モデル(推定式)を用いることで、実際のパルプ製造における白液処理の状況(実機ごと、季節ごどなど)をできるだけ正確に把握でき、状況ごとにより精度よく対応することもできる。
【0062】
本実施形態の好適な態様として、実測値を処理して取得した色調処理データでの白液中の多硫化物濃度の推定値に基づいて、白液中の多硫化物濃度の好適な設定値(目標値)と、と対比することで、白液の状態の制御もより正確に把握し行うことができる。当該設定値は、現場の白液処理の状況(実機ごと、季節ごとなど)に応じて設定することができることも、現場の状況により即して対応できるため、これは本実施形態の優れた利点である。また、本実施形態における、設定値は、多硫化物濃度と統計学的に関連性(好適には相関関係)を有する特徴的な項目(特徴量)であってもよく、このため、多硫化物濃度の設定値を、統計学的に関連性(好適には相関関係)のある数式(単回帰式など)を用いて、これに関連性のある特徴的な項目の数値(例えば、R,G,B相対受光量、空気供給量など)に変換してもよい。
【0063】
前記白液中の多硫化物濃度の設定値とは、好適な白液中の多硫化物濃度の目標値又は目的値として設定されている又は設定した値であることが好適であり、現場の白液処理の状況に応じ、目標値などの好適な多硫化物濃度を適宜設定することができる。
【0064】
前記多硫化物濃度の設定値(g/L as S)は、特に制限されないが、好適な下限値として、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下、より好ましくは7以下、より好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下であり、当該好適な数値範囲として、空気酸化PS蒸解法の観点から、好ましくは4~6であり、また、より好ましい上限値として「5~6」の上限値以下が、より好ましい。
現場における多硫化物生成方法や蒸解薬液製造装置及びその生成能力(生成上限値など)などを考慮して、現場の白液処理の状況に応じて好適な濃度範囲を設定してもよい。例えば、空気酸化PS蒸解法では通常上限値5~6g/L as S程度、白液電解PS蒸解法では通常上限値10g/L as S程度ともいわれている。
【0065】
また、本実施形態では、色調又は色調データ(好適には色調処理データ)と対比するための設定値(目標とする設定値)として、上述した白液中の多硫化物濃度以外での設定も可能であり、白液中の多硫化物濃度と統計学的に関連性(好適には相関関係)がある特徴的な項目(特徴量)を用いることが好適である。例えば、上記目標の設定値とした白液中の多硫化物濃度を、R,G,B相対受光量に処理(変換又は加工)し、取得したR,G,B相対受光量を目標の設定値としてもよい。これにより、測定色調測定結果から取得するR,G,B相対受光量を随時さらにデータ処理をしなくとも、当該測定結果からのR,G,B相対受光量で、目標とするR,G,B相対受光量の設定値と対比することができる。これにより、さらなるデータ処理工程を省略、スキップ又は低減することができるので、データ量やデータ加工処理などデータ処理の負荷の低減を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態に用いる白液中の色調(好適にはR,G,B相対受光量)と白液中の多硫化物濃度との関係などといった各特徴的な項目(各特徴量)の統計学的な関連性を求めるデータは、現場の白液処理の状況(実機ごと、季節ごとなど)に応じて、多変量解析などの統計処理を用いて取得することができる。このため、後記〔実施例〕の図8及び図9に示したような個別具体的な数式にとらわれず、現場の白液処理の状況(実機、季節、気温、気候、原料パルプなど)に応じて取得した実測値(特徴量)を多変量解析(例えば、回帰分析)にて、モデル又は数式(例えば、単回帰式)を取得し、取得したモデル又数式(推定モデルなど)を適宜採用することができる。また、試料として、実際の現地の実機の白液のほか、模擬白液(より具体的には酸化前及び酸化後の多硫化物濃度違いの模擬白液など)を用いてもよい。例えば、試料の実測の色調データ(好適には色調処理データ)及び白液中の多硫化物濃度データを多変量解析して、これらの相関関係のモデル又は数式(例えば、単回帰式など)を、推定モデル又は推定式として、取得してもよい。
【0067】
なお、本実施形態において、白液中の多硫化物濃度の測定方法は、特に限定されないが、白液の色調データとの統計学的な関連性(好適には相関関係)を求めるために用いることができる測定方法が望ましく、公知又は将来生ずるであろう白液中の多硫化物濃度測定方法又は多硫化ナトリウム蒸解薬液の分析方法を適宜採用することができる。例えば、多硫化ナトリウムを組成する多硫化硫黄の分析方法(特許文献1:特開H07-92148号公報)、白液中の硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムの定量分析に常用する酸滴定法、多硫化ナトリウム蒸解薬液にホルマリンを加えて酸滴定を行う方法、水銀化合物を使用し電位差滴定を行う二段階の分析方法、多硫化硫黄を組成する元素硫黄の波長370nmにおける吸光度を測定する方法、多硫化ナトリウムを組成とする各成分イオンごとの分析方法(特許文献2:特開平06-027095号公報)などが挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0068】
本実施形態では、「色調データ(好適には色調処理データ)」及び「白液中の多硫化物濃度」との統計学的な関連性又は関係から導き出し取得した白液状態の推定モデル(好適には、白液中の多硫化物濃度の推定モデル)(例えば、推定式等)を用いることがより好適である。これらの関連性及び推定モデルなどは、使用者によって適宜利用されてもよく、また、白液処理に関する装置又はシステムの記憶部やクラウド、サーバなどに予め記憶させておき、制御部などによって必要に応じて記憶部などにアクセスし送受信して利用されてもよいし、白液処理装置などを使用する際に操作者によって制御部又は白液処理に関する装置又はシステムなどに適宜入力されてもよい。
また、本実施形態では、さらに、「白液中の多硫化物濃度」と「生成反応、酸化反応(より好適には、酸素供給、さらに好適には空気供給量)」とを特徴的な項目(特徴量)とし、これらの関係から導き出し取得した白液状態の推定モデル(好適には、多硫化物生成工程における多硫化物生成反応の推定モデル)(例えば、推定式等)を、上記白液中の多硫化物濃度の推定モデルと併用してもよく、以下のようにしてこの推定モデル又は推定式を得ることができる。この多硫化物生成工程における多硫化物生成反応(好適には酸化反応)の推定モデルに基づき、その目標とする設定値になるように生成反応(好適には酸化反応、より好適には酸素供給、さらに好適には空気供給量)を行うことで、所定の多硫化物濃度になるように生成反応(好適には酸化反応)を調整又は管理することができ、このとき温度調整は、好適な温度範囲になるように設定又は固定することが好適である。当該目標とする設定値の項目は、上記特徴的な項目と同様な項目(例えば、白液中の多硫化物濃度、空気供給量など)であることが好適である。この好適な推定式として、例えば、回帰式(y=ax+b:yは空気供給量、xは多硫化物濃度(g/L as S)、aは傾き、bは切片、正の相関関係)などが挙げられる。
【0069】
前記白液状態の推定モデル(好適には、白液中の多硫化物濃度の推定モデル)は、上述のように実機などに合わせた推定モデル又は推定式を、統計学的処理などにて得ることが望ましい。推定モデルなどは、公知又は将来の統計学的処理を用いて得ることができ、例えば、後記実施例で示したような回帰式(y=-ax+b:yは色調処理データであるR,G,B相対受光量、xは多硫化物濃度(g/L as S)、aは傾き、bは切片、負の相関関係)が挙げられ、単回帰分析、重回帰分析、多変量解析等を適宜採用して本実施形態の白液状態の推定モデル又は推定式等を取得してこれを使用することができる。なお、推定式に用いる単回帰式の傾きaの幅は、実測で取得したときの傾きa±0.005、推定式の切片bの幅は、実測で取得したときの切片b±0.5と設定してもよい。
【0070】
また、本実施形態における白液状態(好適には多硫化物濃度)の推定モデル又は推定式を用いることで、白液中の多硫化物濃度の設定値(目標値)をR,G,B相対受光量に処理(変換又は加工など)し、当該R,G,B相対受光量の設定値(目標値)を取得することができる。このR,G,B相対受光量の設定値(目標値)と、実測値の白液の色調測定データから処理された色調処理データであるR,G,B相対受光量とを対比することも可能である。これにより、経時的に又は連続的に実測値を白液中の多硫化物濃度にまで処理(変換又は加工)しなくともよくなり、これによりデータ量やデータ処理の負荷を低減できる。なお、R,G,B相対受光量と多硫化物濃度との項目にかぎらず、統計学的に関連性(例えば、相関関係など)の高い特徴的な項目(特徴量)に変換又は加工などの処理を行ってもよい。
【0071】
また、本実施形態において、AI学習などを用いて各特徴的な項目(特徴量)から本実施形態の推定モデル又は推定式を統計学的処理などを利用して作成してもよく、当該特徴量として、現場の白液や模擬白液などの「白液の色調(好適には色調処理データ)」と「白液中の多硫化物濃度」とが挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
1-2-3.多硫化物生成工程
本実施形態の白液処理方法では、色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液の状態を制御すること(好適には白液中の多硫化物生成の調整すること)が好適である。当該色調処理データは、白液の色調測定データに基づき取得された白液の状態の制御に関する色調処理データであることが好適であり、より好適には白液のR,G,B相対受光量、及び/又は、白液中の多硫化物濃度の推定値である。前記白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。
【0073】
本実施形態に用いる多硫化物生成工程に関する方法(例えば、多硫化物生成方法、白液(多硫化物蒸解薬液)の調整方法など)は、公知又は将来に生じるであろう多硫化物生成の工程又は方法を用いることが好適である。
【0074】
白液(「多硫化物蒸解薬液」ともいう)の製造場所は、特に限定されず、例えば、蒸解釜中で多硫化物生成工程又は方法を行って製造してもよいが、ピーリング反応対策の観点から、多硫化物生成の工程又は装置などを設けて白液(多硫化物蒸解薬液)を製造し、蒸解釜に使用することが好適である。例えば、消和・苛性化系40から蒸解系10までの間に、多硫化物生成工程などを設けることが好適である(図1~3参照)。また、消和・苛性化系からの白液は、製造パルプ系を循環する硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含んでいる。多硫化物生成工程では、消和・苛性化系からの白液に含まれるこれら硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを多硫化物の原料とし、これらを用いて多硫化物が設定濃度になるように多硫化物生成反応を行い、目標とする設定値(設定濃度)の白液(多硫化物蒸解薬液)にすることが好適である。
【0075】
多硫化物生成方法としては、特に限定されないが、例えば、白液への硫黄単体の添加法、白液の酸化処理法(好適には空気酸化法)、白液の電解法などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
本実施形態は、パルプ製造においてよく用いられている、白液の酸化処理法に適用することができる利点がある。多硫化物生成方法として、白液の酸化処理方法(好適には空気酸化法)を用いることが好適である。
また、多硫化物生成工程前の白液の硫化ナトリウム濃度(as NaO)は、特に限定されないが、その好適な下限値として、好ましくは5g/L(as NaO)以上、より好ましくは10g/L(as NaO)以上、また、その好適な上限値として、好ましくは60g/L(as NaO)以下、より好ましくは50g/L(as NaO)以下である。
多硫化物生成工程前の白液の水酸化ナトリウム濃度(as NaO)は、特に限定されないが、その好適な下限値として、好ましくは15g/L(as NaO)以上、より好ましくは20g/L(as NaO)以上、また、その好適な上限値として、好ましくは100g/L(as NaO)以下、より好ましくは90g/L(as NaO)以下である。
多硫化物生成反応の際の白液の温度として、特に限定されないが、好ましくは4~100℃、より好ましくは40~90℃である。
多硫化物生成反応の際の白液のpHとして、特に限定されないが、好ましくは12以上、より好ましくは13以上である。
【0076】
白液の空気酸化法は、白液への助剤添加法よりも、クラフトプロセスにおいて循環するNaとSとバランスを維持しやすく、白液に酸素(空気)を供給することで、硫化ナトリウムから多硫化物を容易に得ることができるという利点がある。
【0077】
白液の空気酸化法として、特に限定されないが、例えば、活性炭等の固体触媒を用いて白液中の硫化ナトリウムを空気酸化処理を行って、多硫化ナトリウムとすることが好適であり、当該好適な触媒として表面が親水処理された活性炭の粒子が挙げられる。白液の空気酸化法として、MOXY(Mead Oxidation)法などがよく用いられている。
【0078】
白液の酸化処理法(好適には、白液の空気酸化法)の制御として、温度調整、酸素供給量調整、及び助剤(酸化触媒など)調整などから選択される1種又は2種以上が挙げられる。白液の空気酸化法の制御として、温度調整、及び酸素供給量調整などから選択される1種又は2種以上が好適である。
【0079】
本実施形態において、前記色調データ(好適には色調処理データ)に基づいて、空気酸化法のうち酸素供給の調整を主に制御することで、白液の状態をより簡便に制御し、目標とする設定値の白液中の多硫化物濃度になるように、白液中の多硫化物濃度をより簡便に調整することが好適である。
酸素供給として、酸素濃度、酸素供給量などから選択される1種又は2種以上が挙げられ、酸素濃度は、通常、安価で取り扱いやすい空気を用いるため、酸素濃度20%程度である。このため、酸素供給量の増減にて、多硫化物濃度を調整することが望ましい。
酸素供給調整として、空気-白液の比率を調整することが好適であり、多硫化物への転化率(白液中の多硫化物濃度)が、高ければ空気の比率を減らし、低ければ空気の比率を増加させることが好適である。
酸素供給量(好適には空気供給量)Nm3/H(単位)は、白液量mの比率で、特に限定されないが、その好適な下限値として、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、また、その好適な上限値として、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
【0080】
温度調整としては、特に限定されないが、酸素供給調整にて多硫化物生成反応の促進又は抑制ができるので、現場での白液酸化処理法で通常行われている温度条件の温度範囲を採用することが好適であり、当該温度範囲内を外れるような場合には、当該温度範囲内になるように温度調整することが好適である。また、本実施形態における白液処理方法において、現場の白液酸化処理法で採用されている通常の温度範囲を採用することが好適である。これにより、多硫化物生成反応の促進又は抑制が、酸素供給調整を行うことで、制御することができるようになり、酸化処理の要因又は工程数を簡略化することができる。
【0081】
1-2-4.白液の状態の制御
【0082】
本実施形態における白液処理方法では、白液の状態の制御は、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該色調からの白液の状態の制御が好適である。当該白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液であることが好適である。
前記白液の状態の制御は、多硫化物生成工程における白液(多硫化物蒸解薬液)の状態を制御することが好適である。
前記白液の状態の制御は、多硫化物生成反応又は多硫化物生成工程を制御すること、又は、白液中の多硫化物濃度、白液中の多硫化物の生成反応又は白液の酸化処理或いは酸化反応を制御することが好適である。
【0083】
前記白液の状態の制御は、白液に対する酸素供給調整(好適には酸素供給量調整)、白液の温度調整、及び白液に対する酸化助剤(好適には硫化塩)の添加量調整などからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好適である。より好適な態様として、前記白液の状態の制御は、白液に対する酸素供給(好適には酸素供給量)の調整によるものであり、より好適には、酸素供給(好適には酸素供給量)の調整と温度調整とによるものである。さらに、当該酸素供給の調整で使用される気体は、酸素又は酸素を含む気体(好適には空気)が好適であり、例えば空気がより好適である。
【0084】
前記白液の状態の制御は、前記白液の色調を測定して取得された白液の色調データ(好適には色調測定データ又は色調処理データ)を用いることが好適である。
前記白液の状態の制御は、白液の色調データを用いることが好適であり、白液の色調測定データに基づき、処理(変換又は加工など)された白液の色調処理データを用いることがより好適である。
【0085】
前記白液の色調データ(好適には色調処理データ)は、白液のR,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度の推定値から選択される1種又は2種以上が好適である。白液のR,G,B相対受光量は、白液中の多硫化物濃度と統計学的な関連性(好適には負の相関関係)を有するデータであることが好適である。これらの関連性は何れか一方又はその両方のファイル情報に紐付けられて又は内包させて、記憶部、クラウド、サーバなどに記憶されていることが好適であり、制御部は、必要に応じて記憶部などにアクセスし、このファイル情報又は蒸白液の状態の制御に関するデータ(例えば、色調又は色調データの処理(変換、加工など)及びその取得情報に関する各種データ、白液中の多硫化物濃度の推定モデル又は推定式における処理及び取得情報の各種データ、多硫化物生成反応の各種データなど)を各部に送受信してもよい。
【0086】
前記白液の状態の制御は、前記色調データが、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量であることが好適であり、前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、(a)目標とするR相対受光量又はG相対受光量の設定値より高い場合(すなわち、多硫化濃度が低い場合)には、白液の多硫化物生成反応を促進させるように、又は、(b)目標とするR相対受光量又はG相対受光量の設定値より低い場合(すなわち、多硫化濃度が高い場合)には、白液の多硫化物生成反応を抑制させるように、白液の状態を制御することが好適である。設定値は、制御部が予め設定した設定値であってもよいし、操作者が設定した又は入力した設定値であってもよい。
【0087】
前記白液の状態の制御において、色調データと目標とする設定値とは、これらを変換可能なモデル又は数式を用いて、いずれか一方の条件(基準、単位)に合わせることが好適である。
前記白液の状態の制御において、R,G,B相対受光量又はそのデータを、設定値が白液中の多硫化物濃度でありこれに適合させる場合には、白液中の多硫化物濃度推定モデル又は推定式を用いて、白液中の多硫化物濃度の推定値に、処理(変換又は加工)してもよい。また、本実施形態において、設定値が白液中の多硫化物濃度である場合には、当該設定値を、白液中の多硫化物濃度推定モデル又は推定式を用いて、R,G,B相対受光量に処理(変換又は加工)してもよい。
【0088】
前記白液の状態の制御において、前記白液の色調又は色調データに基づき、取得した白液の色調処理データ(好適には、R,G,B相対受光量の少なくともいずれか1つ)に基づき、白液の状態を制御することが好適である。さらに好ましくは、取得した色調処理データ(R,G,B相対受光量の1つ)と、当該色調処理データに対応可能な設定値(好適には白液の相対受光量の設定値)とを対比し、その対比結果に基づき、白液の状態を制御することである。より好ましくは、白液中の多硫化物濃度の過不足分を設定範囲内になるように、白液状態を制御することであり、当該制御としては、多硫化物生成反応、多硫化物濃度、及び酸化反応から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0089】
前記白液の状態の制御において、前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)である白液のR相対受光量、前記白液のG相対受光量、又は前記白液のB相対受光量は、白液中の多硫化物濃度と統計学的な関連性、好適には相関関係及び単回帰式(より好適には負の相関関係)を有することが好適である。
前記白液の状態の制御において、前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液中の多硫化物濃度を推定することが好適である。
前記白液の状態の制御において、前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づいて取得した白液中の多硫化物の推定濃度に基づき、多硫化物生成反応、多硫化物濃度又は酸化反応を制御することが好適である。
【0090】
前記白液の状態の制御において、前記色調又は色調データ(好適には色調測定データ)に基づき取得した色調処理データと、目標とする設定値とを対比し、この対比結果に基づき、白液の状態(好適には、多硫化物生成反応、多硫化物濃度、又は酸化反応)を制御することが好適である。多硫化物濃度推定モデルにおいて、色調処理データと多硫化物濃度データとは負の相関関係であることが好適である。
【0091】
前記白液の状態の制御において、前記色調又は色調データ(好適には色調処理データ)が、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量であることが好適であり、(a)前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値より高い場合(すなわち、多硫化濃度が低い場合)には、白液の酸化反応、多硫化物生成反応又は白液の多硫化物濃度などを増加又は促進させるように、白液の状態を制御する、又は、(b)前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値より低い場合(すなわち、多硫化濃度が高い場合)には、当該白液の酸化反応などを減少又は抑制させるように、白液の状態を制御する、又は(c)前記R相対受光量又は前記G相対受光量が、R相対受光量又はG相対受光量の設定値の範囲内にある場合には、当該白液の酸化反応などを維持させるように、白液の状態を制御する、ことが好適である。
【0092】
前記白液の状態の制御において、前記色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき取得した白液中の多硫化物の推定濃度を、好適な範囲として設定又は記憶されている白液中の多硫化物濃度と比較し、(a)当該多硫化物の推定濃度が、当該多硫化物の好適な範囲未満(下限値未満)の場合には、白液中の酸化反応、多硫化物生成反応又は白液の多硫化物濃度などを増加又は促進させる(例えば、空気比率の増加)ように、又は、(b)当該多硫化物の推定濃度が、当該多硫化物の好適な範囲超え(上限値超え)の場合には、当該白液中の酸化反応などを減少又は抑制させる(例えば、空気比率の低下)ように、又は、(c)当該多硫化物の推定濃度が、当該多硫化物濃度の好適な範囲内(下限値以上かつ上限値以下の範囲)に該当する場合には、当該白液中の酸化反応などを維持させる(例えば、空気比率の維持)ように、白液の状態を制御する、ことが好適である。
【0093】
1-2-5.本実施形態の例
本実施形態における白液の状態の制御について、図1~8に示した本第1実施形態~本第7実施形態を参照して説明するが、本実施形態はこれらに限定されない。本第1実施形態~本第3実施形態では、装置の構成が一部相違するものであり、本実施形態の方法を適宜採用することができ、例えば本第4~本第7実施形態の制御方法を適宜採用することができる。
また、本第4実施形態~本第7実施形態は、制御工程が一部相違するものであり、本実施形態の装置又はシステムを適宜採用することができ、例えば本第1実施形態~本第3実施形態の装置又はシステムを適宜採用することも可能である。
また、本第1実施形態~本第3実施形態と、本第4実施形態~本第7実施形態との構成や制御方法を適宜採用し、これら本第1実施形態~本第7実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0094】
以下に説明する本実施形態に係る白液処理に関する装置又はシステムは、白液監視に関する装置又はシステムであってもよく、また、白液処理に関する装置又は白液監視に関する装置は、システムであってもよい。
【0095】
本実施形態は、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データに基づき白液の状態を制御する、白液処理装置又は白液監視システムを提供することができる。また、本実施形態は、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データに基づき白液の状態を制御する制御部を備える、白液処理装置又は白液監視システムを提供することができる。前記パルプ製造における白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。また、制御部は、各部又は各装置などとアクセス可能な状態であってもよい。
これにより、白液の状態をできるだけ正確に把握できる技術を提供することができる。また、これにより、パルプ製造における白液(好適にはパルプ製造の蒸解工程に供する白液)の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データに基づき白液の状態を制御することができる。
なお、本実施形態は、白液の色調処理データを多硫化物濃度データに処理して、多硫化物濃度を基準にして判断することもできるが、目標とする設定値をR,G,B相対受光量データに処理して、R,G,B相対受光量を基準にして判断してもよいし、また、これら「多硫化物濃度」「R,G,B相対受光量」の特徴的な項目に限らず、これらと統計学的な関連性(例えば、相関関係など)の高い別の項目に、データ処理(変換、加工など)などにて、変えてもよい。
【0096】
本実施形態における制御部は、パーソナルコンピュータ(パット、ノート型、デスクトップ型等)、サーバ、クラウドなどから選択される1種又は2種以上に存在するものであることが好適である。
本実施形態における制御部は、色調測定装置、多硫化物生成装置、酸素供給装置、温度調整装置、助剤添加装置から選択される1種又は2種以上と無線又は有線にて送受信できるように構成されていることが好適であり、少なくとも色調測定装置に、又は、色調測定装置及び酸素供給装置に、又は、色調測定装置及び酸素供給装置及び多硫化物生成装置に接続されていることが好適である。
【0097】
<本第1実施形態~本第3実施形態>
本実施形態における白液処理に関する装置又はシステムの一例を、本第1実施形態~本第3実施形態として、以下に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。また、本第1実施形態~本第3実施形態の構成、装置などを任意に組み合わせてもよい。
図2Aに示すように、本第1実施形態に係る装置又はシステムは、消和・苛性化系40から多硫化物生成工程(リアクター)の入口との間で当該入口付近に設置した白液色調測定部(色調検出部)と、白液状態を制御する制御部とを備えることが好適である。
本第1実施形態における好適な態様として、消和・苛性化系40から多硫化物生成工程(リアクター)の入口との間で当該入口付近に設置した白液色調測定部(色調検出部)と、多硫化物生成工程に酸素を供給する酸素供給部と、白液状態を制御する制御部と、を備え、制御部は他の部とアクセス可能な状態にあることが好適である。
【0098】
図2Bに示すように、本第2実施形態に係る装置又はシステムは、多硫化物生成工程(リアクター)の出口と蒸解系10(蒸解釜11)との間で当該出口付近から蒸解釜11の入口付近までに設置した白液色調測定部(色調検出部)と、白液状態を制御する制御部とを備えることが好適である。
本第2実施形態における好適な態様として、多硫化物生成工程(リアクター)の出口と蒸解系10(蒸解釜11)との間で当該出口付近又は蒸解釜11の入口付近に設置した白液色調測定部(色調検出部)と、多硫化物生成工程に酸素を供給する酸素供給部と、白液状態を制御する制御部とを備え、制御部は他の部とアクセス可能な状態にあることが好適である。
【0099】
図3に示すように、本第3実施形態に係る装置又はシステムは、多硫化物生成工程(リアクター)の入口付近及び出口付近に設置した複数の白液色調監視部(色調検出部)と、多硫化物生成工程に関する酸素供給部及び温度調整部と、白液状態を制御する制御部を備えることが好適である。
本第3実施形態における好適な態様として、消和・苛性化系40から多硫化物生成工程(リアクター)の入口との間で当該入口付近に設置し、かつ、多硫化物生成工程(リアクター)の出口と蒸解系10(蒸解釜11)との間で当該出口付近に設置した複数の白液色調監視部(色調検出部)と、多硫化物生成工程に酸素を供給する酸素供給部と、多硫化物生成工程の温度を調整する温度調整部と、白液状態を制御する制御部と、を備え、制御部は他の部とアクセス可能な状態にあることが好適である。
【0100】
<本第1実施形態>
本第1実施形態について、図2Aを参照して説明する。
本第1実施形態に係る白液処理装置100-1は、白液中に多硫化物を生成させるように構成されている多硫化物生成装置101、白液の色調を測定するように構成されている色調測定装置102、多硫化物生成装置に対して酸素供給を調整(酸素供給量の増加、減少、維持など)できるように構成されている酸素供給装置103、及びこれらを制御する制御部110を備える。消和・苛性化系40から硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む白液の一部又は全部が、流入口から白液処理装置100-1に流入する。図示しないが、消和・苛性化系40からの白液は、白液処理装置を通過しない別のラインにて蒸解系10に移送されてもよい。
【0101】
本第1実施形態の色調測定装置102は、消和・苛性化系40と多硫化物生成装置101のラインを監視するように、多硫化物生成装置101の流入口直後に配置されている。
【0102】
制御部110は、多硫化物生成装置101に流入前の白液の色調を色調測定装置102にて監視しており、色調測定装置102から白液の色調測定データを受信し、白液の色調測定データを上述のように処理して色調処理データ(白液のR,G,B相対受光量)を生成する。
【0103】
制御部110は、記憶部又はサーバなどに記憶されている白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)、及び、多硫化物生成装置101における好適な又は適切な多硫化物濃度(多硫化物濃度の設定値)を記憶する部にアクセスし、これら推定モデル及び設定値のデータを取得することが好適である。なお、推定モデルには、白液中の多硫化物濃度の推定モデルの他、〔多硫化物濃度の設定値-白液中の多硫化物濃度の推定値〕に基づき、両者の差から必要とされる空気供給量などを推定し供給するために、多硫化物生成工程における多硫化物の酸化反応の推定モデル(例えば、多硫化物濃度と空気供給量との相関関係を有する推定モデル又は推定式)を併用することが好適である。
そして、制御部110は、白液の色調処理データを、白液中の多硫化物濃度推定モデルに当てはめ、白液中の多硫化物濃度の推定値を算出し取得する。
【0104】
制御部110は、取得した白液中の多硫化物濃度の推定値と、白液中の多硫化物濃度の設定値とを対比し、流入した白液の酸化処理の条件を判断する。その対比の結果により、白液中の多硫化物濃度の設定値より低い場合には、酸素供給装置103に対して設定値になるように流入した白液中の多硫化物生成反応を促進させる(例えば、酸素供給量の増加)、又は、白液中の多硫化物濃度の設定値より高い場合には、酸素供給装置103に対して設定値になるように流入した白液中の多硫化物生成反応を抑制させる(例えば、酸素供給量の減少)、又は、酸素供給装置103に対して設定値の範囲内である場合には、流入した白液中の多硫化物の生成反応を維持させる(例えば、酸素供給量の維持)ように命令をする。また、制御部110は、反応温度を温度計などにて測定し、その反応温度と設定温度とを対比し、設定温度になるように温度調整装置に命令し、多硫化物生成反応の温度調整を制御してもよい。
【0105】
これにより、本第1実施形態は、流入前の白液の多硫化ナトリウム濃度をできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に把握することができる。そして、本第1実施形態では、流入する白液中の多硫化物濃度を、目標とする設定値の白液中の多硫化物濃度に調整できるように、白液の状態を制御することができる。そして、蒸解系に、適正な多硫化物濃度を有する白液を提供することができる。
なお、制御部110は、白液の色調処理データを多硫化物濃度に処理して、多硫化物濃度を基準にして判断してもよいが、設定値をR,G,B相対受光量に処理して、R,G,B相対受光量を基準にして判断してもよい。実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、当該相対受光量は多硫化物濃度とは負の相関関係にあるため、このR,G,B相対受光量の設定値より高い場合には、白液中の多硫化物生成反応を促進させる、又は、このR,G,B相対受光量の設定値より低い場合には、白液中の多硫化物生成反応を抑制させる。
【0106】
<本第2実施形態>
本第2実施形態について、図2Bを参照して説明する。
本第2実施形態に係る白液処理装置100-2は、本第1実施形態に係る白液処理装置100-1と色調測定装置102の配置が相違する以外は、本第1実施形態に係る白液処理装置100-1と同様であるので、重複する装置、機構及びこれらと同様の動作については適宜省略する。
本第2実施形態の色調測定装置102は、多硫化物生成装置101と蒸解系10のライン(好適には、流路、配管など)の白液を監視するように、多硫化物生成装置101の流出口直後に配置されている。
【0107】
制御部110は、多硫化物生成装置101から流出後の白液を、色調測定装置102にて監視しており、色調測定装置102から白液の色調測定データを受信し、白液の色調測定データを上述のように処理して色調処理データ(白液のR,G,B相対受光量)を生成する。
【0108】
制御部110は、取得した白液中の多硫化物濃度の推定値と、白液中の多硫化物濃度の設定値とを対比し、流出した白液の状態(好適には蒸解薬液中の多硫化物濃度)を判断する。その対比の結果により、白液中の多硫化物濃度の設定値より低い場合には、酸素供給装置103に対して設定値になるように多硫化物生成工程における白液中の多硫化物生成反応を促進させる(例えば、酸素供給量の増加)、又は、白液中の多硫化物濃度の設定値より高い場合には、酸素供給装置103に対して設定値になるように多硫化物生成工程における白液中の多硫化物生成反応を白液中の多硫化物生成反応を抑制させる(例えば、酸素供給量の減少)、又は、白液中の多硫化物濃度の設定値の範囲内である場合には、酸素供給装置103に対して多硫化物生成工程における白液中の多硫化物の生成反応を維持させる(例えば、酸素供給量の維持)ように命令をする。
【0109】
これにより、本第2実施形態は、流出後の白液(蒸解薬液)中の多硫化ナトリウム濃度をできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に把握することができる。また、これにより、白液の状態をフィードバック制御することもできる。そして、本第2実施形態では、多硫化物生成工程における白液中の多硫化物濃度を、設定値の白液中の多硫化物濃度に調整することができ、白液の状態を制御することができる。本第2実施形態は、流出後の白液(蒸解薬液)中の多硫化物生成濃度を、多硫化物生成工程にできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に迅速にフィードバック制御することも可能である。そして、蒸解系に、適正な多硫化物濃度を有する白液を提供することができる。
なお、R,G,B相対受光量を基準とし、実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、当該相対受光量は多硫化物濃度とは負の相関関係にあるため、このR,G,B相対受光量の設定値より高い場合には、白液中の多硫化物生成反応を促進させる、又は、このR,G,B相対受光量の設定値より低い場合には、白液中の多硫化物生成反応を抑制させる。
【0110】
<本第3実施形態>
本第3実施形態について、図3を参照して説明する。
本第3実施形態に係る白液処理装置100-3は、色調測定装置102を、本第1実施形態の色調測定装置102の配置及び本第2実施形態の色調測定装置102の配置の両方に配置し、さらに多硫化物生成装置101の温度を調整するために温度調整装置104を配置した以外は、本第1実施形態及び本第2実施形態の構成及び動作と同様であるので、重複する装置、機構及びこれらと同様の動作については適宜省略する。
【0111】
制御部110は、多硫化物生成装置101に流入前の白液の色調を色調測定装置102及び流出後の白液の色調を色調測定装置102の併用にて監視しており、それぞれの色調測定装置102,102から流出前及び/又は流出後の白液の色調測定データを受信し、流出前及び/又は流出後の白液の色調測定データを上述のように処理して流出前及び/又は流出後の白液の色調処理データ(白液のR,G,B相対受光量)を生成する。
【0112】
制御部110は、取得した流入前の白液中の多硫化物濃度の推定値と、多硫化物濃度の設定値とを対比し、流入した白液の酸化処理の条件を判断する。その対比の結果により、制御部110は、酸素供給装置103に対して設定値の多硫化物濃度になるように酸素供給量を調整するように、命令をする。
【0113】
そして、制御部110は、取得した流出後の白液の多硫化物濃度の推定値と、多硫化物濃度の設定値とを対比し、多硫化物生成工程における白液の酸化処理の条件を判断する。その対比の結果により、制御部110は、酸素供給装置103に対して設定値の多硫化物濃度になるように酸素供給量を調整するように、命令をする。
【0114】
また、制御部110は、多硫化物生成工程の温度が所定の範囲外になったときには、所定範囲内の反応温度になるように温度調整部104に命令する。これにより、温度の過不足に起因する多硫化物濃度の不安定化を抑制することができる。
【0115】
これにより、本第3実施形態は、流出前及び/又は流出後の白液の多硫化ナトリウム濃度をできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に把握することができる。そして、本第3実施形態では、流入した白液の多硫化物濃度、及び、流出した白液の多硫化物濃度から、多硫化物生成工程における白液中の多硫化物濃度を、設定値の白液中の多硫化物濃度に調整することができ、白液の状態を制御することができる。本第3実施形態は、流出前及び/又は流出後の白液中の多硫化物生成濃度を、多硫化物生成工程にできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に迅速にフィードバック制御などをすることも可能である。そして、蒸解系に、適正な多硫化物濃度を有する白液を提供することができる。
なお、R,G,B相対受光量を基準とし、実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、当該相対受光量は多硫化物濃度とは負の相関関係にあるため、このR,G,B相対受光量の設定値より高い場合には、白液中の多硫化物生成反応を促進させる、又は、このR,G,B相対受光量の設定値より低い場合には、白液中の多硫化物生成反応を抑制させる。
【0116】
<本第4実施形態~本第7実施形態>
本実施形態の白液の状態の制御部又は制御方法の一例として本第4実施形態~本第7実施形態の制御又は制御方法を、以下に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。また、本第4実施形態~本第7実施形態の構成、ステップ、方法などを任意に組み合わせてもよい。また、各ステップ、各数値の設定などは、制御部が行ってもよく、また、操作者が適宜入力などを行ってもよい。
本実施形態の制御部は、前記白液の色調を測定して白液の色調データを取得すること、取得された白液の色調データを白液の状態の制御に関する色調データに変換又は加工して色調処理データを取得することを実行することが好適である。
一方で、本実施形態の制御部は、事前に、色調処理データと白液中の多硫化物濃度との統計学的な関連性(例えば相関関係)を算出し、白液中の多硫化物濃度推定モデル又は推定式を取得することを実行することが好適である。本実施形態の制御は、多硫化物生成工程における白液中の多硫化物濃度の設定値(好適な数値範囲、生成の上限値など)、白液中の多硫化物濃度推定モデル、これに関連する、内包される又は紐づけされる各種データを、適宜、記憶部、サーバなどに記憶しておいてもよい。
【0117】
本実施形態の制御部は、前記色調処理データと前記設定値とを対比して、目標とする設定値の多硫化物濃度になるように、多硫化物生成反応を制御し、これにより白液の状態を制御することができる。前記色調処理データは、R,G,B相対受光量であってもよく、白液中の多硫化物濃度推定値であってもよい。
本実施形態の制御部は、前記色調処理データが多硫化物濃度の設定値よりも低い場合には、多硫化物生成反応を促進させるように、又は、前記色調処理データが多硫化物濃度の設定値よりも高い場合には、多硫化物生成反応を抑制させるように、又は、前記色調処理データが多硫化物濃度の設定値の範囲内である場合には、多硫化物生成反応を維持させるように、多硫化物生成工程又はその関連工程に命令する。
【0118】
好適な態様として、空気酸化法を行うことが挙げられる。この空気酸化法の場合には、本実施形態の制御は、多硫化物生成装置に空気を供給する酸素供給装置(例えば、コンプレッサーなど)に対して、多硫化物生成反応の促進の場合には酸素供給量を増加させる、又は、多硫化物生成反応の抑制の場合には酸素供給量を抑制させる、又は、多硫化物生成反応の維持の場合には酸素供給量を維持させるように命令をすることが望ましい。
【0119】
これにより、本実施形態の制御部は、流入前及び/又は流出後の白液の多硫化ナトリウム濃度をできるだけリアルタイムにかつできるだけ正確に把握することができる。そして、本実施形態の制御部では、実測値である白液中の多硫化物濃度を、目標とする設定値の白液中の多硫化物濃度に調整することができ、白液の状態を制御することができる。そして、蒸解系に、適正な多硫化物濃度を有する白液を提供することができる。
なお、本実施形態の制御部は、実測値である白液の色調処理データを多硫化物濃度に処理して、多硫化物濃度を基準にして判断しているが、目標とする設定値をR,G,B相対受光量に処理して、R,G,B相対受光量を基準にして判断してもよい。
【0120】
<本第4実施形態>
本第4実施形態では、ステップ101において、制御部は、白液の状態の制御を開始する。前記白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。
ステップ102において、制御部は、白液の色調を色調測定装置にて測定させ、白液の色調データを取得する。白液の色調データは、白液の色調測定データに基づき白液の色調処理データ(R,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度推定値)に変換又は加工することが好適である。また、制御部は、予めR,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度とを特徴量としこれらの関連性に基づいて作製された白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)を記憶部などから、受信し、設定値を取得しておくことが好適である。
【0121】
ステップ103において、制御部は、白液の色調データ(色調処理データ)に基づき、多硫化物生成工程における多硫化物生成反応を制御する。好適な態様として、制御部は、白液の色調データと、設定値とを対比し、この対比結果に基づき、PS生成反応を制御する。例えば、制御部は、白液の色調データ(好適には、多硫化物濃度に変換された色調処理データ)と、多硫化物濃度の設定値とを対比し、多硫化物濃度の設定値よりも低い場合には反応を促進させるように、又は、多硫化物濃度の設定値よりも高い場合には反応を抑制させるように、又は、多硫化物濃度の設定値の範囲内の場合には反応を維持させるように命令することが好適である。
なお、制御部は、白液の色調データの実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、当該相対受光量は多硫化物濃度とは負の相関関係にあるため、このR,G,B相対受光量の設定値より高い場合に、白液中の多硫化物生成反応を促進させるように、又は、このR,G,B相対受光量の設定値より低い場合に、白液中の多硫化物生成反応を抑制させるように命令することが好適である。
【0122】
ステップ104において、制御部は、白液の製造を継続するか否かについて、継続する場合には、ステップ102に戻り、継続しない場合にはステップ105にて反応を終了させる。
【0123】
<本第5実施形態>
本第5実施形態では、ステップ201において、制御部は、白液の状態の制御を開始する。前記白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。
ステップ202において、制御部は、白液の色調を色調測定装置に測定させ、白液の色調データを取得する。
ステップ203において、制御部は、白液の色調データに基づき、色調処理データ(R,G,B相対受光量、PS濃度推定値)を取得する。白液の色調データは、白液の色調測定データに基づき白液の色調処理データ(R,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度推定値)に処理(変換、加工)することが好適である。制御部は、予めR,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度とを特徴量としこれらの関連性に基づいて作製された白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)を記憶部などから、受信し、設定値を取得しておくことが好適である。
【0124】
ステップ204において、制御部は、白液の色調データと、設定値とを対比し、この対比結果に基づき、PS生成反応を制御する。この対比のステップは、本第4実施形態でのステップ103を参照することができる。
【0125】
ステップ205において、制御部は、白液の色調データが多硫化物濃度の設定値よりも低い場合にはPS生成反応を促進させるように、又は、多硫化物濃度の設定値よりも高い場合には反応を抑制させるように、又は、多硫化物濃度の設定値の範囲内の場合には反応を維持させるように命令することが好適である。また、制御部は、白液の色調データの実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、当該相対受光量は多硫化物濃度とは負の相関関係にあるため、このR,G,B相対受光量の設定値より高い場合に、白液中の多硫化物生成反応を促進させるように、又は、このR,G,B相対受光量の設定値より低い場合に、白液中の多硫化物生成反応を抑制させるように命令することが好適である。
【0126】
このとき、PS生成反応の好適な態様として、空気酸化法を用いることであり、空気酸化法において、制御部は、PS生成反応を促進させる場合には、空気比率の増加させる、又はPS生成反応を抑制させる場合には、空気比率を減少させる、又は、PS生成反応を維持する場合には、空気比率を維持させるように命令する。
【0127】
ステップ206において、制御部は、白液の製造を継続するか否かについて、継続する場合には、ステップ202に戻り、継続しない場合には反応をステップ207にて終了させる。
【0128】
<本第6実施形態>
本第6実施形態では、ステップ301において、制御部は、白液の状態の制御を開始する。前記白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。
ステップ302において、制御部は、白液の色調を色調測定装置に測定させ、白液の色調データを取得する。
【0129】
ステップ303において、制御部は、白液の色調データに基づき、色調処理データ(R,G,B相対受光量、PS濃度推定値)を取得する。白液の色調データは、白液の色調測定データに基づき白液の色調処理データ(R,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度推定値)に処理(変換、加工)することが好適である。制御部は、予めR,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度とを特徴量としこれらの関連性に基づいて作製された白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)を記憶部などから、受信し、設定値を取得しておくことが好適である。
【0130】
ステップ304において、制御部は、白液の色調データ(多硫化物濃度推定値)と、多硫化物濃度の設定値Aとを対比し、白液の色調データが多硫化物濃度の設定値Aよりも低い場合か否かを判断する。多硫化物濃度の設定値Aよりも低い場合(Yes)にはステップ305に移行し、一方で、高い場合には(No)、ステップ308に移行する。
【0131】
ステップ305において、制御部は、多硫化物濃度の設定値Aよりも低い場合(Yes)には、PS生成反応を促進させ、ステップ306に移行する。
【0132】
ステップ308において、制御部は、白液の色調データ(多硫化物濃度推定値)と、多硫化物濃度の設定値Bとを対比し、白液の色調データが多硫化物濃度の設定値Bよりも高いか否かを判断する。多硫化物濃度の設定値Bよりも高い場合には(Yes)ステップ308に移行し、一方で、低い場合には(No)ステップ306に移行する。この低い場合(No)の場合には、PS生成反応の促進及び抑制がないため、前回と同じ状態のPS生成反応を維持した状態となる。
【0133】
ステップ309において、制御部は、多硫化物濃度の設定値Bよりも高い場合(Yes)には、PS生成反応を抑制され、ステップ306に移行する。
【0134】
ステップ306において、制御部は、PS生成反応を継続するか否かを判断し、継続する場合(Yes)は、ステップ302に戻り、色調データ取得を行い、一方、継続しない場合(No)は、ステップ307にて終了する。
【0135】
なお、ステップ303~ステップ309において、制御部は、白液の色調データの実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、当該相対受光量は多硫化物濃度とは負の相関関係にあるため、この設定値より高い場合(ステップ304a)に、白液中の多硫化物生成反応を促進させるように、又は、この設定値より低い場合(ステップ308a)に、白液中の多硫化物生成反応を抑制させるように命令することが好適である。
【0136】
<本第7実施形態>
本第7実施形態では、ステップ401において、制御部は、白液の状態の制御を開始する。
ステップ402において、制御部は、白液の色調を色調測定装置に測定させ、白液の色調データを取得する。
ステップ403において、制御部は、白液の色調測定データに基づき、色調加工デーであるR相対受光量に処理(変換、加工)して取得する。制御部は、予めR相対受光量、白液中の多硫化物濃度とを特徴量としこれらの関連性に基づいて作製された白液中の多硫化物濃度推定モデル(推定式)を記憶部などから、受信し、設定値を取得しておくことが好適である。
【0137】
ステップ404において、制御部は、実測値からの白液のR相対受光量と、設定値A(R相対受光量>300)とを対比し、白液の色調データ(R相対受光量)が、R相対受光量の設定値Aよりも高い場合か否かを判断する。R相対受光量の設定値Aよりも高い場合(Yes)にはステップ405に移行し、一方で、低い場合には(No)、ステップ408に移行する。
【0138】
ステップ405において、制御部は、R相対受光量の設定値Aよりも高い場合(換言すると、多硫化物濃度が低い場合)(Yes)には、PS生成反応を促進させるために空気比率を増加させて、ステップ406に移行する。
【0139】
ステップ408において、制御部は、実測値からの白液の色調データと、設定値B(R相対受光量<100)とを対比し、白液の色調データ(R相対受光量)がR相対受光量の設定値Bよりも低い場合か否かを判断する。R相対受光量の設定値Bよりも低い場合(Yes)にはステップ408に移行し、一方で、高い場合には(No)ステップ406に移行する。この高い場合(No)の場合には、PS生成反応の促進及び抑制(空気比率の増加及び原料)がないため、前回と同じ状態のPS生成反応(空気比率)を維持した状態となる。
【0140】
ステップ409において、制御部は、白液の色調データ(R相対受光量)がR相対受光量の設定値Bよりも低い場合(換言すると、多硫化物濃度が高い場合)(Yes)には、PS生成反応を抑制され(空気比率の減少)、ステップ406に移行する。
ステップ406において、制御部は、PS生成反応を継続するか否かを判断し、継続する場合(Yes)は、ステップ402に戻り、色調データ取得を行い、一方、継続しない場合(No)は、ステップ407にて終了する。
【0141】
なお、本第7実施形態を、R相対受光量にて説明したが、R相対受光量を、G相対受光量又はB相対受光量に代えて、同様にステップを行ってもよい。この場合には、ステップ404及びステップ408のR相対受光量の値は、多硫化物濃度推定モデル(推定式)を用いて、対応する多硫化物濃度に変換し、変換後の多硫化物濃度に対応するG相対受光量又はB相対受光量に変換することができる。
【0142】
2.白液処理に関する装置及びシステム
【0143】
本実施形態における白液処理に関する装置及びシステムの例の説明において、上述する内容(例えば「1.」等)など、及び後述する内容(例えば「3.」「4.」等)等と重複する、白液、白液の色調の監視、色調データ処理、色調データ、色調処理データ、多硫化物濃度推定モデル(推定式)、多硫化物生成工程、白液の状態の制御などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1.」~「4.」等の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0144】
本実施形態に係る白液処理に関する装置又はシステムは、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御するように構成されていることが好適である。前記パルプ製造における白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。前記システム又は装置は、上述の「1.本実施形態に係る白液処理方法」又は後述する「3.」「4.」の本実施形態の方法などを実施するように構成されていることが好適である。
【0145】
本実施形態のより好適な態様として、前記白液処理に関する装置又はシステムは、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データ(好適には色調処理データ)に基づき白液の状態を制御することが好適である。
前記白液処理に関する装置又はシステム、パルプ製造における白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データ(好適には色調処理データ)に基づき白液の状態を制御するように構成されている制御部を備えることが好適である。このとき、制御部は、白液処理に関する装置又はシステム以外に配置されている各部(色調測定部、多硫化物生成部、記憶部など)にアクセスし各種データを取得することができる。
【0146】
前記白液処理に関する装置又はシステムは、白液酸化監視システム、白液処理装置、白液状態制御装置、白液酸化監視装置、又は、白液酸化制御装置から選択されるものが好適である。
前記システム又は装置は、上述又は後述する本実施形態の方法を実施することが好適である。
白液処理に関する装置又はシステムは、前記色調又は色調データ(好適には色調処理データ)が、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量、及び白液のB相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好適である。
【0147】
また、好適な態様として、パルプ製造における白液の色調を監視し、白液の色調から白液の状態を制御するように構成されている制御装置、を備える、多硫化物生成工程が好適である。当該好適な態様の多硫化物生成工程として、消和・苛性化系からの白液から、蒸解系で使用する白液に処理する、白液処理に関する装置又はシステムが挙げられる。前記パルプ製造における白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。さらに、パルプ製造における白液(好適には、多硫化物生成工程の流入前及び/又は流出後の白液)の色調を測定又は監視するための白液色調測定装置を備えることがより好適である。また、前記装置又はシステムにおいて、当該白液色調測定装置は、制御装置とアクセス可能なように接続されていてもよい。
【0148】
前記装置又はシステムは、さらに好適には、パルプ製造における白液の色調を測定する白液色調測定装置、及び/又は、白液中に多硫化物を生成させるように構成されている反応装置をさらに備えることが好適である。また、前記装置又はシステムにおいて、当該白液色調測定装置、及び/又は、当該多硫化物生成の反応装置は、制御装置とアクセス可能なように接続されていてもよい。前記パルプ製造における白液は、パルプ製造の蒸解工程に供する白液が好適である。
【0149】
前記装置又はシステムは、さらに好適には、多硫化物生成工程において、白液中の多硫化物の生成を調整するために、白液に酸素又は空気を供給する酸素供給装置;白液中の多硫化物の生成を調整するために、白液に助剤(硫酸Na)を添加する助剤添加装置;白液中の多硫化物の生成を調整するために、白液の温度を調整する温度調整装置などから選択される1種又は2種以上をさらに備えることが好適である。また、前記装置又はシステムにおいて、これら装置から選択される1種又は2種以上は、制御装置とアクセス可能なように接続されていてもよい。
【0150】
前記酸素供給装置は、コンプレッサーなどにより空気(酸素)供給量を調整でき、反応装置内で当該空気と白液とを混合させるように構成されているが好適である。
【0151】
前記温度調整装置としては、温度測定装置及び加温装置とを備えるものが好適である。温度調整装置は、加温及び/又は冷却の装置、温度センサ、温度調節機構等を備えることが好適である。当該温度制御装置は、フィードバック温度制御ができるように構成されていてもよい。当該温度制御のための動作制御は、公知の動作制御を用いてもよく、例えば、ON/OFF動作制御、P動作(比例動作)制御、PID動作制御が好適である。
【0152】
前記温度測定装置としては、温度センサ、温度調節器(温度コントローラ)などの計測機器などの温度測定装置を含むことができるが、これらに限定されない。前記温度測定装置は、温度センサを少なくとも含むことが好適である。温度センサは、接触式又は非接触式のいずれでもよい。接触式の温度センサとして、例えば、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体等が挙げられ、非接触式の温度センサとして、放射温度センサ、色温度センサ等が挙げられ、これらから1種又は2種以上を選択することができる。また、温度センサは、色調監視場所と同じ場所、及び/又は、多硫化物生成工程の反応温度を測定できる場所に設置できる。
前記加温及び/又は冷却の機構としては、例えば、流体(液体又は気体)を用いた熱交換式、ヒータ、冷却機構(冷媒配管、冷却水配管等)等が挙げられる。
【0153】
前記装置又はシステムは、前記白液色調測定装置において色調を監視する白液は、消和・苛性化系の白液が前記反応装置に流入するライン(好適には、流路、配管など)を流れる白液、及び/又は、前記反応装置から蒸解系に流出するライン(好適には、流路、配管など)を流れる白液であることが好適である。
【0154】
前記装置又はシステムは、(a)前記流入する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、当該流入白液中の多硫化物濃度を推定し、推定された多硫化物濃度の推定値と、多硫化物濃度の設定値と対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液状態を制御する、及び/又は、(b)前記流出する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、当該流出白液中の多硫化物濃度を推定し、推定された多硫化物濃度の推定値と、多硫化物濃度の設定値と対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液状態を制御する、ことが好適である。
【0155】
前記装置又はシステムは、(a)前記流入する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量又は白液のB相対受光量の少なくともいずれか1つを取得し、取得された白液の相対受光量と、白液の相対受光量の設定値とを対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液状態を制御する、及び/又は、(b)前記流出する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量又は白液のB相対受光量の少なくともいずれか1つを取得し、取得された白液の相対受光量と、白液の相対受光量の設定値とを対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液状態を制御する、ことが好適である。
【0156】
本実施形態に係る白液処理管理又は白液酸化監視システムには、上述した少なくとも制御部を備える白液処理管理装置又は白液酸化監視装置が備えられていることが好適である。本実施形態の白液処理管理又は白液酸化監視システムは、制御部又は当該制御部を備える白液処理管理装置などと、他の部又は他の装置とが、無線及び/又は有線にて、送受信可能な通信部を更に設けてもよい。
【0157】
なお、本実施形態に関する方法を、白液処理状況、白液の状態などを管理するための装置(例えば、コンピュータ、PLC、サーバ、クラウドサービスなど)におけるCPUなどを含む装置又は制御部によって実現させることも可能である。また、本実施形態に関する方法を、記録媒体(不揮発性メモリ(USBメモリなど)、HDD、CD、DVD、ブルーレイなど)などを備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、制御部によって実現させることも可能である。当該制御部によって、白液に多硫化物生成反応(空気酸化法)を制御する白液処理状況又は白液酸化監視の管理システムなど、当該制御部もしくは当該システムを備える装置を提供することも可能である。また、当該管理装置には、キーボードなどの入力部、ネットワークなどの通信部、ディスプレイなどの表示部などを備えてもよい。
【0158】
白液処理状況又は白液酸化監視などを管理するための装置又管理システムは、キーボードなどの入力部、ネットワークなどの通信部、ディスプレイなどの出力部、HDDなどの記憶部、上述した色調測定部などを備えることができる。当該装置又はシステムは、入力部、出力部、記憶部を備えることが好ましく、さらに、通信部及び/又は測定部を備えることが好ましい。
前記入力部は、本実施形態の方法を行う操作者によって、ユーザ操作を受け付けることができる。当該入力部は、例えばマウス及び/又はキーボードなどを含むことができる。また、表示装置のディスプレイ面がタッチ操作を受け付ける入力部として構成されてもよい。
前記出力部は、白液処理状況又は白液酸化監視及びこれに関連する情報(例えば、表、図、説明文など)などを出力することができる。当該出力部は、例えば、画像を表示する表示装置、音を出力するスピーカー、紙などの印刷媒体に印刷する印刷装置などを挙げることができるが、これらに限定されない。
前記記憶部は、操作者が入力したデータ、白液処理状況又は白液酸化監視をみるために設定されているデータを記憶することができる。当該記憶部は、例えば記録媒体を含んでよい。
また、本実施形態に係る白液処理管理などに関するシステムは、プログラム及びハードウェアを利用することによって実行することができる。本発明の一実施形態に係るコンピュータ1の一実施形態(図示せず)は、これに限定されないが、コンピュータ1の構成要素として、CPUを少なくとも備え、さらに、RAM、記憶部、出力部、入力部、通信部、ROM、及び測定部などから選択される1種又は2種を備えることができ、このうちRAM、記憶部、出力部及び入力部を備えることが好適であり、さらに、通信部、測定部、ROMなどを少なくとも1つ備えることが好適である。それぞれの構成要素は、例えばデータの伝送路としてのバスで接続されていることが好適である。
【0159】
本実施形態において学習済みモデルとして用いられる特化型AIの処理手順例を簡略的に示すと、「(1)学習データ→(2)アルゴリズム→(3)学習済みモデル」「(4)入力データ→(3)学習済みモデル→(5)結果物」とすることができるが、これに限定されない(例えば図10参照)。特化型AIは、大きな枠組みとして、学習用プログラムとして機能するアルゴリズムに学習データ(教師データ)を組み込むことより構築された学習済みモデルに対して、任意の入力データを適用することにより結果物が得られる仕組みである。
【0160】
本実施形態において、学習データ(教師データ)における白液には、現場の白液、実験の疑似白液を含めることができる。
制御部は、学習データ(教師データ)として、白液の色調測定値と、白液中の多硫化物濃度値との少なくとも2つの値を、データとして、複数以上、取得する。少なくともこれら2つの値を、1データセットとすることが好適である。また、制御部は、白液の色調測定値をR,G,B相対受光量に処理(変換、加工)して、当該色調処理データであるR,G,B相対受光量データを用いることが好適である。また、制御部は、これらから2つ以上選択される教師データを記憶部、サーバ、クラウドなどから読み出すことができる。なお、記憶部などには、複数の現場や実験から取得した白液の色調測定値及び白液中の多硫化物濃度値を予めデータとして記憶してもよい。また、学習データに用いる白液として、多硫化物の濃度勾配(又は異なる濃度)の複数の試料、外部標準添加法による複数の試料などを用いてもよい。
【0161】
次いで、制御部は、予め設定されているアルゴリズムに記憶部から読み出した学習データを組み込むことによって、白液中の多硫化物濃度の予測モデル又は推定モデル(学習済みモデル)を構築することができる。これにより、制御部は、白液中の多硫化物濃度の予測モデル又は推定モデルを有する構成となる。上述したように、「統計解析」を用いて学習済みモデル(白液中の多硫化物濃度の予測モデルなど)を取得することができる。
【0162】
上述したアルゴリズムは、例えば機械学習アルゴリズムとして機能することができる。機械学習アルゴリズムの種類として、特に限定されず、例えばRNN(RecurrentNeural Network:再帰型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional NeuralNetwork:畳み込みニューラルネットワーク)又はMLP(Multilayer Perceptron:多層パーセプトロン)等のニューラルネットワークを用いたアルゴリズムであってもよく、任意のアルゴリズムであってもよい。
【0163】
次いで、制御部は、操作者からの入力データ((4)入力データ(入力層)を、構築された白液中の多硫化物濃度の予測モデルなど(学習済みモデル)に入力することで、表示から出力するための白液の多硫化物生成工程(白液の色調処理データ、白液中の多硫化物濃度推定値など)に関するデータ((5)結果物(出力層))を生成することができる。
前記学習済みモデルは、例えば深層学習(ディープラーニング)により生成された学習済みモデルであってよい。例えば、前記学習済みモデルは、多層ニューラルネットワークであってよく、例えば深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)であってよく、より具体的には畳込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)であってもよい。学習済みモデルとして、多層ニューラルネットワークが用いられてもよく、当該多層ニューラルネットワークは、対象者などが年齢値及び測定値を入力する入力層と、対象者のシワ評価結果を出力する出力層と、入力層と出力層との間に設けられる少なくとも1層の中間層とを有することができる。
【0164】
制御部は、以下のような、学習済みモデルの生成方法、学習済みモデルを用いた対象現場に対する白液中の多硫化物濃度の推定方法もしくは当該推定方法を用いる白液の状態の制御方法や白液処理方法などを実現することができる。
(a)白液の色調測定値(好適には、R,G,B相対受光量)と、白液中の多硫化物濃度値との少なくともこれら2つの値とをデータとして含む教師データを複数取得すること、(b)前記教師データを用いて、白液の色調測定値と、白液中の多硫化物濃度値との少なくともこれら2つの値を入力すること、(c)これら入力データから、白液状態(好適には白液中の多硫化物濃度)を推定するための白液状態の推定モデル(好適には白液中の多硫化物濃度の推定モデル)を出力する学習済みモデルを生成すること、を含む、学習済みモデル生成方法。
【0165】
(d)白液の色調測定値と、白液中の多硫化物濃度値との少なくともこれら2つの値とをデータとして取得すること、(e)白液の色調の測定値と、白液中の多硫化物濃度の測定値との少なくともこれら2つの値を用いて前記学習済モデル生成方法により生成された学習済みモデルに対して、白液の色調測定値と、白液中の多硫化物濃度の測定値との少なくともこれら2つの値を適用することによって、白液の色調測定値(好適には、R,G,B相対受光量)との関係で推定される白液中の多硫化物濃度値を生成し、(f)当該生成された推定値を用いる白液処理方法、多硫化物濃度推定方法、又は白液中の多硫化物濃度調整方法などの方法として提供する方法。
前記白液処理方法などの方法として提供する方法を、コンピュータに実行させるプログラム、又は当該プログラムを格納する記録媒体。当該プログラム又は当該記録媒体を含む、白液処理に関する装置又はシステム、白液処理装置又は白液酸化監視システムなど。
【0166】
3.本実施形態における白液処理方法を用いるパルプ製造系の概要
【0167】
本実施形態におけるパルプ製造系の例の説明において、上述する内容(例えば「1.」「2.」等)など、及び後述する内容(例えば「4.」等)等と重複する、白液、白液の色調の監視、色調データ処理、色調データ、色調処理データ、多硫化物濃度推定モデル(推定式)、多硫化物生成工程、白液の状態の制御などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1.」~「4.」等の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0168】
本発明に係る白液処理方法を用いるパルプ製造系の概要について、以下に説明するが、ここで説明するパルプ製造系は一例であり、本実施形態は当該パルプ製造系に特に限定されない。
【0169】
図1は、本発明に関する白液処理方法を用いるパルプ製造系1の概略構成図であり、本発明はこれに限定されない。本実施形態おけるパルプ製造系は、一般的なパルプ製造系に、本実施形態における白液処理若しくは白液処理管理の装置又はシステムを組み込んでもよい。
【0170】
本実施形態に関するパルプ製造系1は、蒸解系10と、黒液処理系20と、緑液処理系30と、消和・苛性化系40と、を備えることができる。これら系は、図1において実線で示される管で互いに連通され、全体として循環路を構成していてもよい(例えば、特許文献4:特開2018-083176号公報参照)。
以下、各系についてより詳細に説明する。
【0171】
<3-1.蒸解系>
蒸解系10は、図示しないヒーターを上部及び/又は下部に有する蒸解釜11を有し、この蒸解釜11の下流にはパルプ精製部が設けられていてもよい。蒸解釜11には、パルプの原料である木材チップと、苛性ソーダを含有する白液(好適には多硫化物蒸解薬液)とが投入され、木材チップの蒸解が行われる。
これによって生じたパルプはパルプ精選系へと移送され、当該精選系にて精選及び洗浄工程を経た後、次いで漂白工程、抄紙工程などを順次受け、紙が製造される。一方で、廃液である黒液は、苛性ソーダの回収などのため、後述するエバポレータ21へと移送される。
【0172】
<3-2.黒液処理系>
黒液処理系20は、上流から順に、エバポレータ21と、ボイラ22と、を有してもよい。黒液は、エバポレータ21で濃縮された後(黒液濃縮工程)、ボイラ22へと移送され、このボイラ22内で燃焼される(黒液燃焼工程)。これにより、黒液に含有されていた無機ナトリウム塩が溶融し、ボイラ22の底部からスメルトとして排出される。排出されたスメルトは、溶解(ディゾルビング)タンク31へと移送される。
【0173】
なお、ボイラ22には、熱エネルギーを回収するための熱回収系が設けられていてよい。このような熱回収系としては、従来公知のものが使用できる。
【0174】
<3-3.緑液処理系>
緑液製造系30は、上流から順に、溶解タンク31と、緑液クラリファイア32と、緑液タンク33と、を有する。緑液は、溶解タンク31において水に撹拌され溶解する。これにより、水酸化ナトリウムに加え、炭酸ナトリウムを豊富に含有する緑液が生成される。溶解タンク31には図示しない送液ポンプが設けられており、緑液はこの送液ポンプに吸引され、緑液クラリファイア32へと移送される。緑液は、残存する未溶解成分が緑液クラリファイア32において除去される。その後、緑液タンク33へと移送されて貯留され、やがて苛性化系41へと移送される。
【0175】
<3-4.消和・苛性化系>
消和・苛性化系40は、苛性化系41と、白液クラリファイア42と、白液タンク43と、を有してもよい。消和・苛性化系40は、この白液クラリファイア42の下流に位置するライムマッドワッシャー46、ライムマッドフィルター45、キルン44をさらに有してもよい。苛性化系41、白液クラリファイア42、白液タンク43は、互いに連通され、全体として循環路を構成する。
【0176】
苛性化系41へと移送された清澄緑液は、この苛性化系41において、キルン44から供給された酸化カルシウムと混合される。この混合に関して、より詳細に説明する。
【0177】
苛性化系41は、スレーカ411と、このスレーカ411の下流に位置する複数の苛性化反応槽412とを有してもよい。スレーカ411に移送された清澄緑液(通常、90~100℃、pH13~14)は、同じくスレーカ411に供給された酸化カルシウムと混合される。これにより、酸化カルシウムが水で消和されて水酸化カルシウムが生成される(消和反応工程)。その後、苛性化反応槽412へと移送されると、緑液中の炭酸ナトリウムが水酸化カルシウムと反応し、苛性ソーダ及び炭酸カルシウムが生成される(苛性化反応工程)。
【0178】
このようにして得られた白液は、白液クラリファイア42へと移送される。この白液クラリファイア42において、不溶性の炭酸カルシウムが沈降され分離された後、白液は白液タンク43に貯留され、やがて蒸解釜11へと循環して再利用されることになる。一方で、分離された炭酸カルシウムは、キルン44へと回収され、キルン44にて焙焼されて、酸化カルシウムへと戻って(石灰焼成工程)、苛性化系41において再利用される。
【0179】
より具体的には、苛性化系41において、キルン44で得られた酸化カルシウム(CaO)を、スレーカ411の清澄緑液に添加することで消和反応:CaO+水→Ca(OH)+水となり、さらにスレーカ411の清澄緑液のNaCOと反応し、Ca(OH)+NaCO+水→CaCO(↓)+2NaOH+水となり、CaCOが回収されたNaOHを含む水溶液は白液として使用される。このようにして、苛性ソーダ及び炭酸カルシウムは、苛性化工程中の回収サイクルにて、再生資源として繰り返し利用される。
【0180】
4.本技術について
本技術は以下の構成を採用することができる。
・〔1〕
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該色調から白液の状態を制御する、白液処理方法。また、当該白液処理方法は、白液処理の制御又は白液処理の管理方法であってもよい。
・〔2〕
前記色調が、前記パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を測定して取得された白液の色調データ(好適には、色調測定データ、色調処理データなど)であり、当該色調データから白液の状態を制御する、前記〔1〕に記載の白液処理方法。
・〔3〕
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該色調から又は当該色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液の状態を制御する、白液状態制御工程と、を含む、白液処理方法。さらに、パルプ製造における白液の色調を測定する白液色調測定工程を含むことが好適である。
・〔4〕
前記白液処理は、白液中の多硫化物生成工程(好適には酸化反応工程)にて、硫化塩及び水酸化塩を含む消和・苛性化系からの白液を、蒸解工程に用いる多硫化物を含む白液に処理することである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
【0181】
・〔5〕
前記白液処理方法が、(a)クラフトパルプの収率の安定、向上或いは低下抑制方法若しくは蒸解工程でのパルプ収率の安定、向上或いは低下抑制方法、(b)白液中の多硫化物の生成方法、調製方法或いは濃度調整方法、(c)蒸解工程に供するための白液の製造方法或いは調製方法、白液酸化処理の制御方法、又は、(d)白液中の多硫化物濃度の推定方法、又は、(e)これら方法の監視システム或いは白液酸化監視システムなどである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
【0182】
・〔6〕
前記白液の状態の制御は、多硫化物生成工程における白液(多硫化物蒸解薬液)の状態を制御する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔7〕
前記白液の状態の制御は、多硫化物生成反応又は多硫化物生成工程を制御することである、又は、白液中の多硫化物濃度、白液中の多硫化物の生成反応又は白液の酸化処理或いは酸化反応を制御することである、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。当該酸化処理或いは酸化法は、空気酸化法(好適にはMOXY法による空気酸化法)が好適であり、当該空気酸化触媒は、粒子の活性炭(好適には、親水処理された活性炭粒子)である。
・〔8〕
前記白液の状態の制御は、白液に対する酸化助剤(好適には硫化塩)の添加量調整、白液の温度調整、及び白液に対する酸素供給量調整からなる群から選択される1種又は2種以上によるものである、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。これらのうち、白液の温度調整、白液に対する酸素供給量調整が好適である。
・〔9〕
前記白液の状態の制御は、白液に対する酸素供給(好適には酸素供給量)の調整によるものであり、より好適には当該酸素供給調整と温度調整とによるものである、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。当該酸素供給調整で使用される気体は、酸素又は酸素を含む気体が好適であり、例えば空気がより好適である。
【0183】
・〔10〕
前記白液の色調又は色調データが、当該色調又は色調データ(好適には色調測定データ)に基づいて処理(変換又は加工など)された色調処理データであり、好適な当該色調処理データは、白液のR,G,B相対受光量、白液中の多硫化物濃度の推定値である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。白液のR,G,B相対受光量のうち、好適には、前記白液のR相対受光量、又は、前記白液のG相対受光量である。
・〔11〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)が、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量、白液のB相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。好適には、前記白液のR相対受光量、又は、前記白液のG相対受光量である。
・〔12〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調測定データ)に基づき、取得した白液のR相対受光量、白液のG相対受光量、白液のB相対受光量の少なくともいずれか1つに基づき、多硫化物生成反応、多硫化物濃度、又は酸化反応を制御する、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔13〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調測定データ)に基づき、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量又は白液のB相対受光量の少なくともいずれか1つを取得し、取得した白液の相対受光量と、白液の相対受光量の設定値とを対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液状態を制御する、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔14〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)である白液のR相対受光量、前記白液のG相対受光量、又は前記白液のB相対受光量は、白液中の多硫化物濃度と相関関係(好適には単回帰式)を有する、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔15〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液中の多硫化物濃度を推定する、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔16〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づいて取得した白液中の多硫化物の推定濃度に基づき、多硫化物生成反応、多硫化物濃度又は酸化反応を制御する、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔17〕
前記白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)が、多硫化物生成工程に流入する白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)、及び/又は、多硫化物生成工程から流出する白液の色調又は色調データ(好適には色調処理データ)である、前記〔1〕~〔16〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔18〕
前記色調又は色調データ(好適には色調測定データ)に基づき取得した色調処理データと、設定値とを対比し、対比結果に基づき、多硫化物生成反応、多硫化物濃度又は酸化反応を制御する、前記〔1〕~〔17〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔19〕
前記色調又は色調データ(好適には色調処理データ)が、白液のR相対受光量又は白液のG相対受光量であり、 前記R相対受光量又は前記G相対受光量が設定値より高い場合には、白液の酸化反応、多硫化物生成反応又は白液の多硫化物濃度などを増加又は促進させるように、白液の状態を制御する、又は、
前記R相対受光量又は前記G相対受光量が設定値より低い場合には、当該白液の酸化反応などを減少又は抑制させるように、白液の状態を制御する、
前記〔1〕~〔18〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。
・〔20〕
前記色調又は色調データ(好適には色調処理データ)に基づき取得した白液中の多硫化物の推定濃度を、予め好適な範囲として設定又は記憶されている白液中の多硫化物濃度と比較し、(a)当該多硫化物の推定濃度が、当該予め好適な多硫化物濃度の範囲未満(下限値未満)の場合には、白液中の酸化反応、多硫化物生成反応又は白液の多硫化物濃度などを増加又は促進させる(例えば、空気比率の増加)ように、又は、(b)当該予め好適な多硫化物濃度の範囲超え(上限値超え)の場合には、当該白液中の酸化反応などを減少又は抑制させる(例えば、空気比率の低下)ように、又は、(c)当該予め好適な多硫化物濃度の範囲内(下限値以上かつ上限値以下の範囲)に該当する場合には、当該白液中の酸化反応などを維持させる(例えば、空気比率の維持)ように、白液の状態を制御する、前記〔1〕~〔19〕のいずれか1つに記載の白液処理方法。なお、R,G,B相対受光量を基準とし、実測値と設定値との対比が、R,G,B相対受光量の場合には、(a)このR,G,B相対受光量の設定値より超える場合には、白液中の多硫化物生成反応などを増加又は促進させるように、又は、(b)このR,G,B相対受光量の設定値より未満の場合には、白液中の多硫化物生成反応などを減少又は抑制させるように、(c)当該範囲内の場合には、白液中の多硫化物生成反応などを維持するように、白液の状態を制御することが好適である。
【0184】
・〔21〕
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データ(好適には色調処理データ)に基づき白液の状態を制御する、白液処理に関する装置又はシステム。前記システム又は装置は、前記〔1〕~〔20〕のいずれか1つに記載の方法を実施することが好適である。
・〔22〕
前記白液処理に関する装置又はシステムは、白液酸化監視システム、白液処理装置、白液状態制御装置、白液酸化監視装置、又は、白液酸化制御装置から選択されるものである、前記〔21〕に記載の装置又はシステム。
・〔23〕
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、当該白液の色調を測定して取得された色調データ(好適には色調処理データ)に基づき白液の状態を制御するように構成されている制御部を備える、白液処理に関する装置又はシステム、又は、前記〔21〕又は〔22〕に記載の装置又はシステム。
・〔24〕
前記〔1〕~〔20〕のいずれか1つに記載の方法を実施する、白液処理に関する装置又はシステム。
・〔25〕
前記色調又は色調データ(好適には色調処理データ)が、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量、及び白液のB相対受光量からなる群から選択される1種又は2種以上である、前記〔21〕~〔24〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。
【0185】
・〔26〕
パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を監視し、白液の色調から白液の状態を制御するように構成されている制御装置、を備える、
多硫化物生成工程において、消和・苛性化系からの白液から、蒸解系で使用する白液になるように処理する、白液処理に関する装置又はシステム、又は前記〔21〕~〔25〕のいずれか1つ記載の白液処理に関する装置又はシステム。
さらに、パルプ製造の蒸解工程に供する白液(好適には、多硫化物生成工程の流入前及び/又は流出後の白液)の色調を測定又は監視するための白液色調測定装置を備えることが好適である。
・〔27〕
さらに、パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を測定する白液色調測定装置に、及び/又は、白液中に多硫化物を生成させるように構成されている反応装置に、さらにアクセスし制御する、前記〔21〕~〔26〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。当該装置又はシステムは、各種装置に適宜アクセスし、各種データを取得してもよい。
・〔28〕
さらに、パルプ製造の蒸解工程に供する白液の色調を測定する白液色調測定装置を、及び/又は、白液中に多硫化物を生成させるように構成されている反応装置を、さらに備える、前記〔21〕~〔27〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。
・〔29〕
さらに、多硫化物生成工程において、白液中の多硫化物の生成を調整するために、白液に酸素又は空気を供給する酸素供給装置;白液中の多硫化物の生成を調整するために、白液に助剤(硫酸Na)を添加する助剤添加装置;白液中の多硫化物の生成を調整するために、白液の温度を調整する温度調整装置などから選択される1種又は2種以上、にさらにアクセスし制御する、及び/又は、をさらに備える、前記〔21〕~〔28〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。当該装置又はシステムは、各種装置に適宜アクセスし、各種データを取得してもよい。
・〔30〕
前記白液色調測定装置において色調を監視する白液は、
消和・苛性化系の白液が前記反応装置に流入するライン(好適には、流路、配管など)を流れる白液、及び/又は、前記反応装置から蒸解系に流出するライン(好適には、流路、配管など)を流れる白液である、前記〔21〕~〔29〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。
・〔31〕
前記流入する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、当該流入白液中の多硫化物濃度を推定し、推定された多硫化物濃度の推定値と、多硫化物濃度の設定値と対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液の状態を制御する、及び/又は、
前記流出する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、当該流出白液中の多硫化物濃度を推定し、推定された多硫化物濃度の推定値と、多硫化物濃度の設定値と対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液の状態を制御する、前記〔21〕~〔30〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。
・〔32〕
前記流入する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量又は白液のB相対受光量の少なくともいずれか1つを取得し、取得された白液の相対受光量と、白液の相対受光量の設定値とを対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液の状態を制御する、及び/又は、
前記流出する白液の色調を監視して得られた色調データ(好適には色調処理データ)に基づき、白液のR相対受光量、白液のG相対受光量又は白液のB相対受光量の少なくともいずれか1つを取得し、取得された白液の相対受光量と、白液の相対受光量の設定値とを対比して、白液中の多硫化物濃度の過不足分を所定範囲内になるように、白液の状態を制御する、前記〔21〕~〔31〕のいずれか1つに記載の白液処理に関する装置又はシステム。
【実施例0186】
以下の実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0187】
〔試験例1〕
下記のように、色調検出装置などを備える白液処理装置を使い、多硫化物生成のための反応装置(酸化装置)にある白液の色調を連続的に測定し、この白液の色調測定結果から、反応装置(酸化装置)への酸素供給量及び温度を調整することができる。
【0188】
<白液処理装置(白液の色調検出装置)の構成>
本試験で用いた白液処理装置は、RGBカラーセンサ、マルチセンサコントローラ、プログラマブルコントローラ、及びネットワーク通信ユニットを、基本的なカラーセンサ装置(白液の色調測定装置)を、備えるものであり、さらに、本試験で用いた白液処理装置は、白液の温度を温度センサにて測定できる熱電対温度計(市販品)、コンプレッサーにより空気(酸素)供給量を調整して当該空気と白液とを混合させるように構成されている酸素供給ユニットを備えるが、付属部とすることもできる。
【0189】
白液処理装置は、以下の構成による。
(1)RGBカラーセンサ (株)キーエンス社製 LR-W500
(2)コントローラ (株)キーエンス社製 MU-N12
(3)PLC (株)キーエンス社製 KV-NC32T
(4)通信ユニット (株)キーエンス社製 NU-EP1
(5)熱電対温度計
(6)酸素供給ユニット(空気コンプレッサー)
【0190】
なお、RGBカラーセンサとして、アンプ内蔵型ホワイトスポット光電センサ LR-W500(株)キーエンス社製)を使用した。
マルチセンサコントローラとして、マルチセンサコントローラ MU-N12((株)キーエンス社製)を使用した。
プログラマブル コントローラ(PLC)として入力16点/出力16点 KV-NC32T2((株)キーエンス社製)を使用した。
ネットワーク通信ユニットとして、通信ユニット EtherNet/IPTM対応 NU-EP1((株)キーエンス社製)を使用した。
【0191】
<ホワイトスポット光電センサ LR-W500>
検出距離 30~500mm(投光面から試料の液面)
最小スポットサイズ 可変スポット 約φ3.5 at 100mm/約φ9 at 250mm/約φ18mm at 500mm
応答時間 200μs/1ms/10ms/100ms/500ms 切換式
光源 白色LED
使用周囲照度 白熱ランプ10,000 lux以下、太陽光:20,000 lux以下;
使用周囲温度 -20~+50℃(氷結しないこと)
使用周囲湿度 35~85% RH(結露しないこと)
【0192】
<測定原理>
白液(又は白液酸化物)の測定の原理は、カラーセンサから投光された白色LED光が測定対象物(液面)に当たり、対象物が反射した色をカラーセンサの受光部が検出し、RGBの色成分としてデータが演算出力され、当該RGB値データが通信ユニットから外部に送信される。このRGB値データは、白液処理の制御部を含むコンピュータに送信され、コンピュータ画面にこのときのRGB値が表示される。そして、白液処理の制御部は、任意の色座標に演算出力、測定値の変化量から、白液中の多硫化ナトリウム濃度(推定値)を計算する。また、白液処理装置の制御部は、酸化装置にある熱電対温度計にて、酸化処理或いは酸化反応中の白液の温度を測定しその結果を受信することができる。白液処理の制御部は、白液処理装置に備えられる各部、その他装置などを制御でき、各部及びその他装置などに命令し、白液状態(白液の酸化反応)を制御をすることができる。
【0193】
<試験例1>
NaOH、NaCO、NaSを使い、反応前の模擬白液を調整し、得た。同一サンプルを2回滴定し、その結果を表1に示した。多硫化物生成(酸化反応)前の模擬白液の水質を、表1に示した。
全滴定アルカリは、SCAN-N 30:85(非特許文献3)に従って、測定した。
また「g/L asNaO」とは、全ナトリウム塩はNaOとして表示することが一般的である。
【0194】
【表1】
【0195】
この模擬白液(調整液:No.1-5)100mLに、MnOを、0~2g(0、0.5、1.0、1.5、2.0g)を添加し60℃に加温しながら攪拌し、酸化を行った。酸化反応後の模擬白液を、5Aろ紙で、ろ過した液し、そのろ過液について、ポリスルファイド分析(特許文献1:特開平07-92148号公報:多硫化ナトリウムを組成する多硫化硫黄の分析方法)、色調分析(特許文献3:特開2022-12850号公報(特願2020-114974))に従い、分析を行った。その酸化反応により得られた多硫化物生成の結果を、PS(g/L as S)として、表2に示した。なお、酸化薬剤として、MnO試薬(キシダ化学社製、1級酸化マンガン(IV)、粉末、純度(90.0%以上)を使用した。
【0196】
<色調分析の測定条件>
測定容器 100mL容ガラスビーカー
測定距離 液面とカラーセンサとの距離16cm
測定温度 60℃
【0197】
<ポリスルファイド分析>
<多硫化ナトリウム蒸解薬液/前段の分析サンプルの調製>
窒素置換した100mLの三個のメスフラスコに、脱酸素した水95mLを入れ、上記「酸化反応後の模擬白液(試料)」、各1mLを各別に加え、これに脱酸素した水を加えて100mLの定容とした。ここに調製した多硫化ナトリウム蒸解薬液を前段の分析サンプルとする。
【0198】
<多硫化ナトリウム蒸解薬液/後段の分析サンプルの調製>
同様の操作により、上記「酸化反応後の模擬白液(試料)」、各1mLを各別に加え100mLの定容に調製した各メスフラスコに、亜硫酸ナトリウム0.115グラムを加えて溶解し、不活性ガス雰囲気下に、加熱し、70℃に昇温し、その温度において1時間保持した。温度保持による反応が完結した多硫化ナトリウム蒸解薬液を後段の分析サンプルとする。
【0199】
<分析操作>
前出の多硫化ナトリウム蒸解薬液/各前段の分析サンプル及び後段の分析サンプルを高速液体クロマトグラフ分析装置にそれぞれ10μLを注入する。分析操作において、前後の工程を1セットのイオンクロマトグラフ装置で兼ねる場合には、前段の分析サンプルを注入し、クロマトグラムチャートの作表後、カラムに亜硫酸ナトリウムの希釈溶液(1リットル中1グラム)を10μL注入して洗浄する。なお、分析条件は以下の通りである。
【0200】
<分析条件>
(1)高速液体クロマトグラフ分析装置は日本分光製800シリーズ
(2)分離カラムはTSK-gel/IC-Anion-PW(東ソー商品名)直径4.6mm、長さ50mm、2本直列
(3)分離カラムの温度は45°C
(4)検出器はUV検出器
(5)検出波長は225nm
(6)移動相は4ミリモルの燐酸水素二カリウム水溶液
(7)流速は1.2mL/分
(8)サンプル注入量は10μL
【0201】
<クロマトグラムチャートの作表>
それぞれの得られたクロマトグラムチャートのピーク面積から各前後段の分析サンプルのチオ硫酸ナトリウムの量を算出し、これらの値から〔化01〕に示した算式に従って、上記「酸化反応後の模擬白液(試料)」における多硫化ナトリウムを組成する多硫化硫黄の量を求めた。なお、〔化01〕は、硫黄に換算した重量を単位とする。
【0202】
<多硫化硫黄の算出>
(1)チオ硫酸イオンを分析して算出する場合には、多硫化ナトリウム蒸解薬液に含まれるチオ硫酸イオンを分析するカラムと、この多硫化ナトリウム蒸解薬液に亜硫酸イオンを作用させて増加したチオ硫酸イオンを分析するカラムとを用意し、それらのカラムによって定量したチオ硫酸イオンの差から〔化01〕式に基づいて、多硫化硫黄の量を求めることができる。
【0203】
〔化01〕 多硫化硫黄=(亜硫酸イオン作用後のS 2- - 亜硫酸イオン作用前のS 2-)÷2
【0204】
試験例1の調整液No1~5(試験例1-1~1-5)の白液酸化試験結果を、表2、図8A(相対受光量と多硫化物との関係)、図8B(相対受光量R,G,Bと、多硫化物との関係)、図9A、B、C(相対受光量R,G,Bと、多硫化物との相関関係、及び相関係数)を示した。
【0205】
【表2】
【0206】
本発明者らは、多硫化物濃度を勾配的に変化させた模擬白液を作成し、特許文献3:特開2022-12850号公報(特願2020-114974)に記載の色調分析に従い、非接触式の光学的センサーを用いて、この模擬白液の色調を分析した。しかし、この色調分析の方法では、R値が上限255になっているため多硫化物(PS)の生成状況の把握が十分にできなかった。本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、光学的センサーの受光量は多硫化物(PS)の生成に合わせ、白液の透過光の量が減ることに着目した。
【0207】
さらに、本発明者らは、白液の色調観察において、白液の色調の考えに、さらに受光量の考えを組み合わせて相対受光量を導き出し、この白色の相対受光量を監視することで、白液中の多硫化物濃度を推測できることを新たに見出した。
【0208】
より具体的には、R相対受光量=全体の受光量×R/(R+G+B)、G相対受光量=全体の受光量×G/(R+G+B)、B相対受光量=全体の受光量×B/(R+G+B)を用いることで、多硫化物を含む白液の状態を監視しできることを見出した。
さらに、本発明者らは、R,G,B相対受光量と多硫化物濃度とに相関関係があることを見出し、さらに、回帰分析により、R相対受光量、G相対受光量及びB相対受光量をそれぞれ説明変数(x)とすることで、白液中の多硫化物濃度(目的変数(y))を推定することができることを見出した。このうち、相関係数の高さから、R相対受光量及び/又はG相対受光量に基づく白液中の多硫化物濃度の推定及び制御が好ましく、R相対受光量に基づく白液中の多硫化物濃度の推定及び制御がより好ましいと考えた。
【0209】
そして、実際の現場では、現場の白液の状況(実機、季節、原料など)によって蒸解工程に必要とされる又は好適とされる白液中の多硫化物濃度の範囲が異なってくる。しかし、本発明では、現場の白液処理の状況に応じて、現場の色調測定値及び多硫化物濃度測定値の測定結果から、多硫化物濃度の推定モデル(単回帰式)を取得することができる利点がある。このとき、色調データ及び多硫化物濃度データの2つを特徴量として算出された白液中の多硫化物濃度の推定モデル(推定式)が好ましい。
【0210】
そして、本発明であれば、現場の白液処理の状況に応じた目標とする多硫化物の濃度範囲を設定し、この設定値と、実測の色調測定値を多硫化物濃度の推定モデルに当てはめて算出した白液中の多硫化物濃度の推定値と対比することで、白液の状態(白液中の多硫化物濃度(g/L as S)の状態)をより良好に把握し制御することができる。また、多硫化物濃度の設定値を、多硫化物濃度測定モデルにて、実測値の色調処理データ(相対受光量など)と同じ項目及び単位に変換することもできる。本発明であれば、経時的に取得する色調データ(好適には色調処理データ)から逐次白液中の多硫化物濃度の推定値にまで随時処理しなくともよいため、データ量の低減、処理時間の短縮化、消費電力の軽減なども行うことができる。
【0211】
図8及び図9に示したうち、具体的な一例として、白液酸化物のR値と多硫化物について、説明する。
PS濃度が0~5(g/L as S)の範囲で、増えていくときに、R相対受光量が直線的に低下することを利用してPS濃度(g/L as S)を求める。
PS濃度(y)=-0.0266×R相対受光量(x)+8.2251(相関係数R=0.9143;負の相関関係)
例えば、R相対受光量が200であれば、PS濃度=2.9(g/L as S)と推定される。
【0212】
そして、制御部は、白液中の好適な多硫化物濃度4~5(g/L as S)を目標とする設定値と設定することができる。そして、制御部は、多硫化物濃度推定モデルを用いて、白液中の好適な多硫化物濃度4~5(g/L as S)は、R相対受光量が121~159と算出し、当該設定値を目標値と判断する。制御部は、目標とするR相対受光量の設定値になるように、実測値からのR相対受光量が200のときには、R相対受光量159の設定値を超えているので、R相対受光量が減少するように、空気-白液の空気比率を上げ酸化反応を促進させるために、反応装置への空気供給量(酸素供給量)を空気供給装置にて増加させるように指示をする。
そして、空気-白液の空気比率が増加することで、多硫化物生成(酸化反応)が促進され、R相対受光量は減少するようになり、この色調処理データの減少の傾向は、カラーセンサ装置にて連続的に測定し監視することができる。
【0213】
制御部は、カラーセンサ装置からの色調測定データに基づき算出されたR相対受光量が121(PS濃度推定値 5g/L as S)を下回ったときには、空気-白液の空気比率を空気供給装置にて減少させるように指示をする。
また、制御部は、カラーセンサ装置からの色調測定データに基づき算出されたR相対受光量が121~159(PS濃度推定値 4~5g/L as S)のときは、空気-白液の空気比率を維持するように指示をする。
なお、制御部ではなく、白液処理(白液酸化反応)の管理者(ヒト)が、空気供給装置の空気比率を管理し、白液反応及び白液中のPS濃度を制御してもよい。
【0214】
さらに、一般的な空気酸化PS法では白液中の多硫化ナトリウム濃度(S換算)は5~6g/L as S程度とされているので、R相対受光量の場合にはR相対受光量に基づいて白液中の多硫化物濃度を制御する場合(特に空気酸化PS法)、多硫化ナトリウム濃度0~6g/L as Sの間においてバランス良い傾きといえる。PSを得るための空気酸化法は、クラフトパルププロセスにおいて、硫黄を外部から白液に添加する方法と比較し、循環するNaとSとのバランスを維持しやすい。
【0215】
なお、G相対受光量及びB相対受光量を説明変数(x)にすることについても、R相対受光量と同様に、白液中の多硫化物濃度(目的変数(y))を推定することができる。
色調測定データがG値の場合には、PS濃度(S換算)=-0.0206×G相対受光量(x)+5.3226(相関係数R=0.8367)であった。G相対受光量に基づいて白液中の多硫化物濃度を把握し制御する場合、多硫化物濃度0~3g/L as Sの間において好適に利用することができるといえる。
色調測定データがB値の場合には、PS濃度(S換算)=-0.0242×B相対受光量(x)+4.0974(相関係数R=0.5859)であった。B相対受光量に基づいて白液中の多硫化物濃度を把握し制御する場合、多硫化物濃度0~0.5g/L as Sの間で好適に利用することができると考える。
【0216】
なお、本明細書において、数値範囲(~)における上限値(以下)と下限値(以上)は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、本明細書において、例えば「監視する(こと)」等の「する(こと)」を、方法、工程、ステップ又は手段としてもよいし、「ステップ」を、「する(こと)」、方法、工程、又は手段としてもよし、「工程」又は「方法」を、「する(こと)」、ステップ、又は手段としてもよし、「手段」を、「する(こと)」、方法、工程又はステップとしてもよいし、これらを、機構、装置、手段又は部としてもよい。また、本明細書において、「システム(系)」は、機構、装置、手段又は部、方法としてもよく、「機構」は、システム(系)、装置、手段又は部、方法としてもよく、「装置」は、システム(系)、機構、手段又は部、方法にしてもよく、「手段」は、機構、システム(系)、装置又は部としてもよく、「部」は、機構、手段、装置又はシステム(系)、方法、又はこれらに備えるための機構、手段又は装置等としてもよい。
【符号の説明】
【0217】
1 パルプ製造系; 10 蒸解系; 11 蒸解釜; 20 黒液処理系; 21 エバポレータ; 22 ボイラ; 30 緑液処理(粗緑液の処理)系; 31 溶解タンク(分散); 32 緑液クラリファイア(清澄); 33 清澄緑液タンク; 36 引抜きポンプ; 37 スラッジ濃度測定部; 34 薬剤タンク; 35 薬剤注入ポンプ; 40 消和・苛性化系; 41 苛性化系; 42 白液クラリファイア; 43 白液タンク; 44 キルン; 411 スレーカ; 412 苛性化反応槽; 45 ライムマッドフィルター; 46 ライムマッドウォッシャー; 100 白液処理装置(白液酸化監視システム);101 多硫化物生成装置(多硫化物生成工程);102 色調測定(色調監視)装置(色調測定工程);103 酸素供給装置(酸素供給工程);104 温度調整装置(温度調整工程);110 制御装置(制御工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10