(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180762
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 607
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094323
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】水谷 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 幸太
(72)【発明者】
【氏名】八田 周子
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 あゆみ
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF23
2C057AG01
2C057AG29
2C057AG32
2C057AG47
2C057AH00
2C057AN01
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル孔からの液体の吐出状態を安定させることを課題とする。
【解決手段】インクを吐出する複数のノズル孔4と、ノズル孔4に連通する圧力室6と、圧力室6に連通する流体抵抗部7と流体抵抗部7にインクを供給する中間供給流路8と、を備えた液体吐出ヘッドであって、中間供給流路8の流体抵抗部7の延在方向に直交する断面のうち、流体抵抗部7に連通する面の面積をA2、流体抵抗部7の延在方向に直交する断面の面積をA3とすると、A3/A2が0.17~0.27であることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズル孔と、
前記ノズル孔に連通する圧力室と、
前記圧力室に連通する個別流路と、
前記個別流路に前記液体を供給する液体供給室と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記液体供給室の前記個別流路の延在方向に直交する断面のうち、前記個別流路に連通する面の面積をA2、前記個別流路の延在方向に直交する断面の面積をA3とすると、
A3/A2が0.17~0.27であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記圧力室の長手方向に直交する断面のうち最も大きい断面の面積A1が14000μm2~16000μm2である請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
A3/A2が0.20以下である請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記圧力室の体積が20nL以上35nL以下である請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル孔を形成するノズル板を有し、
前記ノズル板の厚みが30μm以上40μm以下である請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記液体は、水、有機溶剤、顔料を含むインクである請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記液体を循環させない非循環型の液体吐出ヘッドである請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の画像形成装置に設けられる液体吐出ヘッドでは、ノズル孔から、液体としてのインクが吐出されて画像が形成される。
【0003】
このような液体吐出ヘッドでは、形成する画像の品質を安定させるために、ノズル孔から吐出されるインクの量や速度のばらつきを抑え、インクの吐出状態を安定させることが重要である。
【0004】
ノズル孔からのインクの吐出状態が悪化したり、ノズル孔からの吐出不良が生じる例として、ノズル孔およびその近傍でインクが乾燥および増粘することにより、ノズル孔の詰まりが生じる場合がある。これは特に、インクとして速乾性のインクを用いた場合に、ノズル孔の詰まりが生じやすくなる。
【0005】
これに対して、例えば特許文献1(特開2018-103616号公報)のインクヘッドでは、個別液室に供給されたインクの一部が循環流路を介して循環共通液室に戻され、ヘッド内を循環する。
【0006】
ところで、圧力室に連通する個別流路の断面積が大きいほど、圧力室に供給されるインクの量が多くなるが、ノズル孔から吐出される液滴が低速になる。一方で、個別流路の断面積が小さいほどノズル孔から吐出される液滴は高速になるが、圧力室に十分な量のインクを供給することが難しくなり、吐出される液滴の量が少なくなってしまう。このように、液滴の吐出速度を大きくすることと、圧力室に十分な量のインクを満たして吐出する液滴の量を安定させることはトレードオフの関係にあり、ノズル孔から安定して液滴を吐出させることが難しいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノズル孔からの液体の吐出状態を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体を吐出する複数のノズル孔と、前記ノズル孔に連通する圧力室と、前記圧力室に連通する個別流路と、前記個別流路に前記液体を供給する液体供給室と、を備えた液体吐出ヘッドであって、前記液体供給室の前記個別流路の延在方向に直交する断面のうち、前記個別流路に連通する面の面積をA2、前記個別流路の延在方向に直交する断面の面積をA3とすると、A3/A2が0.17~0.27であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズル孔からの液体の吐出状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【
図2】液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図6】圧力室、流体抵抗部、中間供給流路を示す図で、(a)図が平面図、(b)図が側面図である。
【
図8】異なる実施形態の圧力室、流体抵抗部、中間供給流路を示す概略側面図である。
【
図10】
図9の画像形成装置の機能を示すブロック図である。
【
図11】異なる実施形態の印刷装置の要部平面説明図である。
【
図12】異なる実施形態の印刷装置の要部側面説明図である。
【
図13】異なる実施形態の液体吐出ユニットの要部平面説明図である。
【
図14】異なる実施形態の液体吐出ユニットの要部正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。
図1は同第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図2は同実施形態に係る液体吐出ヘッドの圧力室の長手方向Xに沿う断面説明図、
図3は同じくノズル配列方向Yに沿う断面説明図である。方向Yは複数のノズル孔4の配列方向であり、以下、単にノズル配列方向とも呼ぶ。また、方向Zは圧力室6の高さ方向であり、ノズル孔の開口方向あるいは液体の吐出方向である。方向Zは上下方向でもある。この上下方向は、液体吐出ヘッドが使用される状態での重力方向およびその反対方向のことであり、液体吐出ヘッドが使用される状態での方向とは、例えば液体吐出装置などの装置に液体吐出ヘッドが装着された状態での方向のことである。
図1に示す方向X,Y、および、Z方向は互いに直交する方向である。方向Xは、この互いに直交する方向のうち、ノズル配列方向および上下方向と異なる方向である。ただし、上記の圧力室6の長手方向である方向Xとノズル配列方向である方向Yと液体の吐出方向である方向Zとが厳密に垂直である必要はなく、多少の誤差があってもよい。
【0012】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、個別流路部材である流路板2と、壁面部材としての振動板部材3と、圧電アクチュエータ11と、共通液室部材20と、ヘッドカバー29とを備えている。ノズル板1と、流路板2と、振動板部材3とが積層接合されている。圧電アクチュエータ11は振動板部材3の変形部30を変位させる。ヘッドカバー29は液体吐出ヘッド100のフレーム部材を兼ねている。
【0013】
共通液室部材20の内側には圧電素子12等が配置されている。
図1に示すように、ヘッドカバー29は、共通液室部材20の上部に装着され、圧電素子12等を覆っている。
【0014】
供給ポート28は、共通液室部材20内の共通供給流路に液体としてのインクを供給する。
【0015】
図2および
図3に示すように、ノズル板1は、インクを吐出する複数のノズル孔4を有している。
【0016】
流路板2と振動板部材3とにより、流体抵抗部7と、中間供給流路8とが画成されている。また、ノズル板1と流路板2と振動板部材3とにより、複数の圧力室6が画成されている。圧力室6はノズル孔4に連通する。流体抵抗部7は各圧力室6に通じる個別流路である。中間供給流路8は1又は複数(本実施形態では1つ)の流体抵抗部7に通じ、流体抵抗部7を介して圧力室6にインクを供給する液体供給室あるいは液導入部である。
【0017】
振動板部材3は複数の板材が積層されて構成され、本実施形態では2枚の金属板が積層されて構成される。また振動板部材3は、圧電アクチュエータ11に対向する変形部30を有する。
【0018】
変形部30は、圧力室6の壁面の一部を構成し、圧電アクチュエータ11により弾性変形可能な部分である。圧電アクチュエータ11は、駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む。本実施形態の変形部30は、振動板部材3のその他の部分よりも板材の積層枚数が少なく、厚み方向の長さがその他の部分よりも小さい部分である。具体的には、1枚の金属板により変形部30が構成されている。また、振動板部材3に切り込みを入れて部分的に変形可能とし、この変形可能な部分のうち圧力室6の壁面を構成する部分を変形部30としてもよい。
【0019】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子12を所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0020】
変形部30の上部には、変形部30を支持する支持部材27が設けられる。圧電素子12は、支持部材27に接合している。
【0021】
この圧電素子12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものである。圧電素子12は、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0022】
共通液室部材20は複数の圧力室6に通じる共通液室10を形成している。共通液室10は、振動板部材3に設けた開口部9を介して中間供給流路8に連通し、中間供給流路8を介して流体抵抗部7に通じている。
【0023】
共通液室10内のインクは、中間供給流路8、流体抵抗部7を介して圧力室6に供給される。圧力室6内のインクは、ノズル孔4から液体吐出ヘッド100外へ吐出される。圧力室6において、インクの供給方向はX方向の流体抵抗部7側からノズル孔4側への方向である。
【0024】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12が収縮する。この圧電素子12の収縮により変形部30が圧電素子12側へ変形して圧力室6の容積が膨張することで、圧力室6内にインクが流入する。
【0025】
その後、圧電素子12に印加する電圧を上げて圧電素子12を積層方向に伸長させることで、変形部30をノズル孔4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させる。これにより、圧力室6内のインクが加圧され、ノズル孔4からインクが吐出される。
【0026】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、非循環型の液体吐出ヘッドである。循環型の液体吐出ヘッドでは、圧力室6内に流入したインクを、循環流路などを介して循環させ、再び圧力室6へ流入させるが、本実施形態の非循環型の液体吐出ヘッド100では、このようなインクの循環を行わない。この液体吐出ヘッド100の圧力室6には、ノズル孔4と流体抵抗部7の二つの開口部が設けられる。
【0027】
液体吐出ヘッド100は、
図4(a)に示すように、ノズル孔4が配列されたノズル列を一列有する構成であってもよいし、
図4(b)に示すように複数列有する構成であってもよい。また、
図4(b)のように各ノズル列が平行に配列されている他、千鳥状に配列される等の構成であってもよい。また
図4(c)に示すように、複数の液体吐出ヘッド100が配列されることにより、ヘッドユニット103を構成していてもよい。また
図4(d)に示すように、隣接して設けられた一対の液体吐出ヘッド100が、ヘッドユニット103内で千鳥状に配置されていてもよい。またこれらに限らず、適宜最適なノズル孔4や液体吐出ヘッド100の配置を選択できる。
【0028】
圧力室6に通じる流体抵抗部7は、圧力室6や中間供給流路8よりも圧力室6の長手方向に直交する断面の面積が小さいインクの通路である。この流体抵抗部7は、中間供給流路8から圧力室6にインクを供給する機能を有する。また流体抵抗部7は、その断面積を小さくすることで、圧電素子12が圧力室6に発生させる圧力によってインクが中間供給流路8側へ逆流することを防止する機能を有する。そして、この流体抵抗部7の断面積の大小により、圧力室6へのインクの供給量およびインクの流速などが変化する。具体的には、流体抵抗部7の通路を細くすると流体抵抗部7から圧力室6に供給されるインクの流速が大きくなり、液体吐出ヘッドがノズル孔4からインクを高速吐出することが可能になる。一方で、流体抵抗部7の通路を太くすると、流体抵抗部7から圧力室6に供給されるインクの量が多くなり、圧力室6に十分な量のインクを供給してノズル孔4から安定した量のインク滴を吐出させることができる。このように、流体抵抗部7の大きさの変化に伴うインクの吐出速度と吐出量との変化には、トレードオフの関係が生じる。
【0029】
次に、本実施形態の圧力室6および圧力室6に連通する流体抵抗部7,そして中間供給流路8について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は本実施形態の各圧力室を示す斜視図で、
図6(a)は圧力室、流体抵抗部、中間供給流路の平面図、
図6(b)は圧力室、流体抵抗部、中間供給流路の側面図である。
【0030】
図5に示すように、本実施形態では、圧力室6の長手方向が、各圧力室6に設けられたノズル孔4が配列される方向である矢印Y方向、および、圧力室6の高さ方向である矢印Z方向に直交する方向である。
【0031】
図6(a)および
図6(b)に示すように、中間供給流路8の流体抵抗部7に連通する断面B2の面積を面積A2とする。別の言い方をすると、中間供給流路8の流体抵抗部7との境界面である断面B2の面積を面積A2とする。また流体抵抗部7の断面B3の面積を面積A3とする。断面B2,B3は、流体抵抗部7の延在方向、つまり、流体抵抗部7内を流体が流れる方向に直交する断面であり、本実施形態では、圧力室6の長手方向Xに直交する断面である。
【0032】
本実施形態では、A3/A2を0.17~0.27の範囲で設ける。これにより、ノズル孔4に満たされたインクの吐出側の界面と大気との間における表面張力、および、特定の勾配を持つ流体抵抗部7の流体抵抗を釣り合わせることができる。従って、前述のインクの吐出速度とインクの吐出量とのバランスを取ることができ、高速吐出に対応するとともに、長期にわたって安定したメニスカス特性を保持することができる。従って、ノズル孔からの液体の吐出状態を安定させることができる。つまり、A3/A2が0.17未満の場合には中間供給流路8から流体抵抗部7を介して圧力室6に供給されるインクの量が減少して圧力室6内をインクで満たし続けることが難しくなり、ノズル孔4におけるメニスカス位置が圧力室6側へ後退する。これにより、ノズル孔4から吐出されるインクの量が減少したり、ノズル孔4からのインクの吐出不良を生じたりしてしまう。またノズル孔4から異常に早い速度でインクが吐出されたりしてしまう。一方、A3/A2が0.27より大きい場合には、中間供給流路8から流体抵抗部7を介して圧力室6に供給されるインクの量が過剰になる。これにより、インクの界面がノズル孔4から外側へ異常に盛り上がって異常に低速な液滴が吐出される不具合が発生しやすくなる。本実施形態では、上記設定により、メニスカス位置を安定させてノズル孔4からの安定したインクの吐出を可能とするとともに、インクの高速吐出にも対応することができる。
【0033】
特に、A3/A2を0.17~0.20に設けることが好ましい。A3/A2を0.2以下に設けることにより、特にメニスカス位置を安定させてノズル孔4からの安定したインクの吐出を可能とするとともに、インクの高速吐出を可能にすることができる。
【0034】
また本実施形態では、圧力室6の長手方向に直交する断面B1の面積A1を14000μm2~16000μm2の範囲で設ける。断面B1は、圧力室6の長手方向に直交する断面B1のうち最も面積の大きい断面であり、特に本実施形態ではノズル孔4近傍の断面のことである。このような大きさの圧力室を持つ液体吐出ヘッドに対して、A3/A2を上記の値に設定することが好適である。
【0035】
また圧力室の体積は20nL以上35nL以下であることが好ましい。これにより、メニスカス位置を安定させ、ノズル孔からの安定したインクの吐出性を実現できる。つまり、圧力室の体積が20nL未満の場合にはメニスカスを形成する液体組成物がノズル孔4の外側の外気の影響を受けやすく、メニスカス位置を安定させることが難しい。一方、圧力室の体積が35nLよりも大きい場合には、圧電素子の駆動による駆動力が圧力室6内で伝播しにくくなり、ノズル孔4からのインクの安定した吐出の妨げになる。ここでいう圧力室6の体積とは、流体抵抗部7との境界までの範囲Cの体積のことであり、ノズル板1や流路板2、振動板部材3などにより形成された空間のうち、流体抵抗部7との境界までの空間の体積が圧力室6の体積V1である。ただし、ノズル孔4の孔部分はその面積に含まない。別の言い方をすると、圧力室6の体積は、流体抵抗部7とノズル孔4を埋めた時の範囲Cの体積である。
【0036】
またノズル板1の厚みは30μm以上40μm以下であることが好ましい。これにより、インク吐出後、中間供給流路8側から圧力室6内にインクが満たされる際に、メニスカス位置を安定させることができる。
【0037】
また上記のようにA3/A2の値やA1の値を設定する方法として、流路板2の一部を切削したり、流体抵抗部7にスペーサを取り付けるといった方法を採用できる。
【0038】
以上の特徴を有する実施例1~7の液体吐出ヘッドと、比較例1、2の液体吐出ヘッドについて、インクの安定した吐出を実験した実験結果について説明する。
【0039】
以下の表1に示すように、実施例1~7および比較例1、2の各液体吐出ヘッドの寸法値などが設定される。実施例1~7はすべて、A1が15000μm
2、A3/A2を0.17~0.27の範囲に設定している。一方、比較例2,3では、A3/A2を0.17~0.27の範囲外に設定している。実験では、ヘッド内をRICOH ProVC60000用水性顔料インクで満たした状態で、温湿度を60℃、50%に調整した恒温槽内で10日間経過させ、各ヘッドを一定の水準まで劣化させた。その後、RICOH ProVC60000を模した、連帳印刷システムにこのヘッドを組み込み、1200dpi×1200dpi、50mpmの印刷条件で、OKトップコート128gsm紙上にベタチャートを印刷した。そして、印刷したベタチャートを観察し、ベタチャート上の白抜け異常や、着弾遅れなどの異常が発生したチャンネル数をカウントし、10チャンネル以下を〇、11~20チャンネルを△、20チャンネルを超える場合を×と判断した。
【表1】
【0040】
表1に示すように、実施例1~7はすべて、異常のあるチャンネル数を20チャンネル以内に抑えることができたが、一方で、比較例1,2ではともに、異常のあるチャンネル数が20を超えた。実施例と比較例との比較から、A3/A2を0.17~0.27の範囲に設定することで、ノズル孔から安定してインクを吐出することができ、上記の白抜けや着弾遅れなどの異常を抑制できることがわかる。また特に、A3/A2を0.17~0.2の範囲で設定した実施例2~7は、実施例1と比較して結果が良好であった。さらに、圧力室体積を20nL以上35nL以下(具体的には20nL)、ノズル板の板厚を30μm以上40μm以下(具体的には35μm)の範囲にそれぞれ設定した実施例6の結果が最も良好であった。このように、それぞれの値を前述したように設定することで、特にノズル孔から安定してインクを吐出することができる。
【0041】
上記の実施形態では、圧力室6の長手方向が上下方向およびノズル配列方向に直交する場合を示したが、本発明はこれに限らない。例えば
図7および
図8に示すように、本実施形態の圧力室6は、その長手方向Zが上下方向およびノズル孔4の開口方向と同じ方向である。また、長手方向Zは、ノズル孔4の配列方向Yに直交する方向である。
【0042】
本実施形態においても、
図8に示すように、中間供給流路8の流体抵抗部7に連通する断面B2の面積を面積A2、流体抵抗部7の断面B3の面積を面積A3とし、A3/A2を0.17~0.27の範囲で設ける。これにより、メニスカス位置を安定させてノズル孔4からの安定したインクの吐出を可能とするとともに、インクの高速吐出にも対応することができる。断面B2,B3は、流体抵抗部7の延在方向、つまり、流体抵抗部7内を流体が流れる方向に直交する断面であり、方向Xに直交する方向の断面である。
【0043】
また本実施形態のように方向Zが圧力室6の長手方向である液体吐出ヘッドであって、圧力室6の長手方向Zに直交する断面のうちその面積が最も大きい断面B1の面積A1が14000μm2~16000μm2である液体吐出ヘッドにおいて、A3/A2を上記のように設定することが好適である。本実施形態では、圧力室6をその長手方向の各断面の面積が等しい直方体の場合を示したが、長手方向にその断面形状が変化する形状をなしていてもよい。
【0044】
以上の実施形態では、非循環型の液体吐出ヘッドに本発明を適用する場合を示したが、本発明はこれに限らない。つまり、循環型の液体吐出ヘッドに本発明の上記構成を適用してもよい。
【0045】
以上の実施形態における液体吐出ヘッド100においては、水系顔料インクを用いることが好適である。また以上の実施形態における液体吐出ヘッド100においては、速乾インクを用いることが好適である。これらのインクは増粘、乾燥しやすく、ノズル孔の詰まりが生じやすい。しかし、本実施形態の上記構成により、このようなインクを用いた場合でも、ノズル孔から安定してインクを吐出できる。ここで言う水系顔料インクは、水、有機溶媒、顔料を少なくとも含むインクのことである。
【0046】
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性および吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0047】
インクに含まれる上記の有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0048】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0049】
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0050】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性および吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0051】
インクに含まれる顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0052】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0053】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0054】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0055】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0056】
インク中の顔料の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0057】
図9は、以上の実施形態の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置である画像形成装置200の構成の一例を説明する図である。画像形成装置200は、制御部102と、ヘッドユニット103と、画像検査部104と、アンワインダー105と、乾燥部106と、リワインダー107とを有する。
【0058】
画像形成装置200は、用紙P1にインク滴を吐出して画像を形成する。ここで、用紙P1は記録媒体の一例であり、例えば本実施形態ではロール紙である。またインクは液滴の一例である。なお、
図9における方向Jは、用紙P1の幅方向に直交する方向で、画像形成装置200内における用紙P1の供給側から排出側への方向を示している。幅方向は
図9の紙面に直交する方向である。
【0059】
制御部102は、画像形成装置200を制御する制御装置である。アンワインダー105およびリワインダー107は、制御部102が出力する制御信号T1によって同期し、用紙P1を所定の速度で搬送する。アンワインダー105、リワインダー107、および複数の搬送ローラ108は搬送機構150を構成する。
【0060】
ヘッドユニット103は、ラインヘッド131と、ラインヘッド132と、ラインヘッド133と、ラインヘッド134とを有する。ラインヘッド131乃至134のそれぞれは、液滴吐出ヘッドの一例である。各ラインヘッド131~134には、前述した実施形態に係る液体吐出ヘッドが搭載されている。
【0061】
アンワインダー105およびリワインダー107が搬送する用紙Pがヘッドユニット103の直下を通過する際に、ラインヘッド131、132、133および34のそれぞれは、画像情報に基づいてインクを吐出し、用紙P1上にインクを付与して画像を形成する。一例として、ラインヘッド131はブラックのインクを吐出し、ラインヘッド132はシアンのインクを吐出し、ラインヘッド133はマゼンタのインクを吐出し、ラインヘッド134はイエローのインクを吐出することができる。
【0062】
乾燥部106は、用紙P1を搬送しながら、ヘッドユニット103で用紙P1上に付与されたインクを加熱する加熱ドラムである。乾燥部106は、加熱によりインク中の水分等の液分を蒸発させ、用紙P1上にインクを固着させ、用紙P1に画像を定着させることができる。
【0063】
画像検査部104は、用紙P1上に定着した画像を読み取り、画像の検査を行う。制御部102は、画像検査部104による画像検査データ等を含む受信信号T2を受信し、画像検査データを用いて各種補正処理を行うことができる。
【0064】
画像形成装置200は、
図9に示した構成以外に他の機能部を適宜追加することもできる。例えば、アンワインダー105とヘッドユニット103との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部106とリワインダー107との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。前処理部は、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙P1に塗布する処理液塗布処理を行うもの等を含むが、前処理の内容については特に制限はない。また後処理部は、用紙を冷却させる冷却機構等を含むが、後処理の内容についても特に制限はない。
【0065】
図10を参照して、画像形成装置200が備える制御部102の機能構成を説明する。
図10は、制御部102の機能構成の一例を説明するブロック図である。
【0066】
図10に示すように、制御部102は、温度制御部501と、搬送速度制御部502と、ヘッド吐出制御部503と、画像検査装置制御部504とを有する。制御部102は、CPUがROM等に記憶されたプログラムをRAMに展開して実行すること等によりこれらの機能を実現することができる。
【0067】
温度制御部501は、乾燥部106の温度を制御する。搬送速度制御部502は、ヘッドユニット103と用紙を搬送方向に相対移動させる移動部の一例である。搬送速度制御部502は、アンワインダー105、リワインダー107および搬送ローラ108等で構成される搬送機構150による搬送速度を制御する。ヘッド吐出制御部503は、駆動電圧波形を出力してラインヘッド131乃至134のそれぞれにインクを吐出させる。画像検査装置制御部504は、画像検査部104を制御する。
【0068】
画像形成を行う際には、温度制御部501は、乾燥部106が所望の温度となるよう温度制御を開始する。搬送速度制御部502は、乾燥部106が所望の温度になって画像形成の準備が整うタイミングに合うように用紙P1の搬送を開始する。搬送速度制御部502による用紙P1の搬送速度が略一定の速度となり、且つ乾燥部106が所望の温度範囲となったら、ヘッド吐出制御部503は、ヘッドユニット103のラインヘッド131乃至134のそれぞれに駆動電圧波形を出力してインクを吐出させる。画像形成装置200は、ラインヘッド131乃至34のそれぞれから吐出されたインクで、用紙P1上に画像を形成することができる。
【0069】
各ラインヘッド131乃至134によるインク吐出タイミングは、調整用の画像形成を行い、その際に画像検査部104で読み取った着弾位置に基づいて、予め適正化しておく。なお、画像形成中に画像検査を行ってインク吐出タイミングを調整することもできる。
【0070】
次に、本発明に係る液体吐出装置としての印刷装置の他の例について
図11および
図12を参照して説明する。
図11は同装置の要部平面説明図、
図12は同装置の要部側面説明図である。
【0071】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向Kに往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向Kに往復移動される。
【0072】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100およびヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット300を搭載している。液体吐出ユニット300の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向Kと直交する副走査方向Lに配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。なお、主走査方向Kは前述の液体吐出ヘッドにおける方向Xであり、副走査方向Lは前述の液体吐出ヘッドにおける方向Yである。
【0073】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0074】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0075】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417およびタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向Lに周回移動する。
【0076】
さらに、キャリッジ403の主走査方向Kの一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0077】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0078】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0079】
このように構成した印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向Lに搬送される。
【0080】
そこで、キャリッジ403を主走査方向Kに移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0081】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図13を参照して説明する。
図13は同ユニットの要部平面説明図である。
【0082】
この液体吐出ユニット300は、前記液体吐出装置を構成している部材のうち、側板491A、491Bおよび背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100と、を有する。
【0083】
なお、この液体吐出ユニット300の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0084】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図14を参照して説明する。
図14は同ユニットの正面説明図である。
【0085】
この液体吐出ユニット300は、流路部品444が取り付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0086】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441(
図12参照)を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0087】
以上の液体吐出ユニットや液体吐出装置にも、前述の液体吐出ヘッド100を設けることができる。これにより、ノズル孔から安定してインクを吐出することができるとともに、インクの高速吐出にも対応できる。
【0088】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0089】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子および薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0090】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0091】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0092】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0093】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0094】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0095】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0096】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0097】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0099】
「液体」にはインクだけでなく塗料を含む。
【0100】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0101】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0102】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0103】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0104】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0105】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0106】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0107】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0108】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0109】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
液体を吐出する複数のノズル孔と、
前記ノズル孔に連通する圧力室と、
前記圧力室に連通する個別流路と、
前記個別流路に前記液体を供給する液体供給室と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記液体供給室の前記個別流路の延在方向に直交する断面のうち、前記個別流路に連通する面の面積をA2、前記個別流路の延在方向に直交する断面の面積をA3とすると、
A3/A2が0.17~0.27であることを特徴とする液体吐出ヘッドである。
<2>
前記圧力室の長手方向に直交する断面のうち最も大きい断面の面積A1が14000μm2~16000μm2である<1>記載の液体吐出ヘッドである。
<3>
A3/A2が0.20以下である<1>または<2>記載の液体吐出ヘッドである。
<4>
前記圧力室の体積が20nL以上35nL以下である<1>から<3>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<5>
前記ノズル孔を形成するノズル板を有し、
前記ノズル板の厚みが30μm以上40μm以下である<1>から<4>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<6>
前記液体は、水、有機溶剤、顔料を含むインクである<1>から<5>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<7>
前記液体を循環させない非循環型の液体吐出ヘッドである<1>から<6>記載の液体吐出ヘッドである。
<8>
<1>から<7>いずれか記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0110】
100 液体吐出ヘッド
3 振動板部材
4 ノズル孔
6 圧力室
7 流体抵抗部(個別流路)
8 中間供給流路(液体供給室)
X 圧力室の長手方向
Y ノズル配列方向
Z 上下方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】