(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180892
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20231214BHJP
F22B 1/04 20060101ALI20231214BHJP
F22G 1/16 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F22B1/04
F22G1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094566
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】深田 利昭
(57)【要約】
【課題】安価な余剰電力を熱として蓄えて有効利用することができ、電力需給の平準化に寄与することができる蓄熱システムを提供する。
【解決手段】水蒸気を固体蓄熱粒子と熱交換させ、水蒸気を過熱蒸気にする熱交換部2と、固体蓄熱粒子を貯蔵する高温貯蔵部3と、固体蓄熱粒子を貯蔵する低温貯蔵部4と、低温貯蔵部3、高温貯蔵部5、熱交換部2、低温貯蔵部4の順に循環するように固体蓄熱粒子を輸送する輸送部5と、固体蓄熱粒子を余剰電力から得られる熱によって第1温度に加熱する電気ヒーター6と、第1温度よりも低い第2温度に太陽熱によって加熱する太陽熱ヒーター7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を固体蓄熱粒子と熱交換させ、流体を高温気体にする熱交換部と、
前記固体蓄熱粒子を貯蔵する高温貯蔵部と、
前記固体蓄熱粒子を貯蔵する低温貯蔵部と、
前記低温貯蔵部から前記高温貯蔵部へ、前記高温貯蔵部から前記熱交換部へ、前記熱交換部から前記低温貯蔵部へ、前記固体蓄熱粒子を輸送する輸送部と、
前記低温貯蔵部から前記高温貯蔵部に輸送される前記固体蓄熱粒子を、電力から得られる熱によって第1温度に加熱する第1加熱部と、
前記熱交換部から前記低温貯蔵部に輸送される前記固体蓄熱粒子を、第1温度よりも低い第2温度に電力以外のエネルギーから得られる熱によって加熱する第2加熱部と、を備える
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱システムであって、
前記第2加熱部は、太陽熱により前記固体蓄熱粒子を加熱する
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄熱システムであって、
前記熱交換部で熱交換される前記流体は気体であり、
前記熱交換部は、熱交換室を備え、
前記熱交換室は、
前記固体蓄熱粒子が上部から投入され、下部から排出され、
前記気体が下部から投入され、高温気体となって上部から排出される
ように構成されている
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄熱システムであって、
前記熱交換部から排出された高温気体の一部を加熱源とし、前記熱交換部に供給される前記流体としての液体を気体にする第3加熱部を備える
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項5】
請求項1に記載の蓄熱システムであって、
前記第1加熱部は、余剰電力により前記固体蓄熱粒子を加熱する
ことを特徴とする蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品を製造する工場などでは、相当量の熱の需要があることが知られている。大半は200℃未満の比較的低い温度の熱需要であるが、200℃以上の比較的高温の熱需要もある。後者の熱需要は今後増加すると考えられている。
【0003】
比較的高温の熱需要に対しては、過熱蒸気を供給することが行われている。例えば水を誘導加熱方式により過熱して過熱蒸気を生成する電気式過熱蒸発器が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
今後の熱需要の増加を想定すると、夜間など安価な余剰電力を利用して過熱蒸気を生成することが望ましい。しかしながら、電気式過熱蒸発器は、熱需要に応じて即座に過熱蒸気を生成する必要があることから、日中の高価な電力を利用せざるをえない場合がある。このため、余剰電力を有効利用できず、電力需給の平準化に寄与できないという問題もある。
【0005】
なお、このような問題は、過熱蒸気を供給する場合に限らず、高温の気体を供給する場合についても存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、安価な余剰電力を熱として蓄えて有効利用することができ、電力需給の平準化に寄与することができる蓄熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、流体を固体蓄熱粒子と熱交換させ、流体を高温気体にする熱交換部と、前記固体蓄熱粒子を貯蔵する高温貯蔵部と、前記固体蓄熱粒子を貯蔵する低温貯蔵部と、前記低温貯蔵部から前記高温貯蔵部へ、前記高温貯蔵部から前記熱交換部へ、前記熱交換部から前記低温貯蔵部へ、前記固体蓄熱粒子を輸送する輸送部と、前記低温貯蔵部から前記高温貯蔵部に輸送される前記固体蓄熱粒子を、電力から得られる熱によって第1温度に加熱する第1加熱部と、前記熱交換部から前記低温貯蔵部に輸送される前記固体蓄熱粒子を、第1温度よりも低い第2温度に電力以外のエネルギーから得られる熱によって加熱する第2加熱部と、を備えることを特徴とする蓄熱システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な余剰電力を熱として蓄えて有効利用することができ、電力需給の平準化に寄与することができる蓄熱システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の蓄熱システムの一実施形態について説明する。
図1には、蓄熱システム1の構成が例示されている。蓄熱システム1は、熱を必要とする需要者の設備(工場など)に対して、余剰電力を有効活用して高温気体の一例である過熱蒸気を生成して供給する装置群からなる。具体的には、蓄熱システム1は、熱交換部2、高温貯蔵部3、低温貯蔵部4、輸送部5、電気ヒーター6、太陽熱ヒーター7、供給ライン8、予備加熱ライン9、回収ライン10、予備加熱器11を備えている。
【0012】
熱交換部2は、水蒸気を固体蓄熱粒子と熱交換させ、水蒸気を過熱蒸気にする装置である。熱交換部2による熱交換は、水蒸気と固体蓄熱粒子を直接的に熱交換させる方式でもよいし、間接的に熱交換させる方式でもよい。熱交換部2の具体的構成は後述する。
【0013】
熱交換部2には予備加熱ライン9が接続されている。予備加熱ライン9の途中には予備加熱器11が設けられている。供給ライン8の途中から回収ライン10が分岐しており、回収ライン10は予備加熱器11に接続されている。水が予備加熱ライン9を流通し、予備加熱器11において過熱蒸気と混合されて水蒸気となり、熱交換部2に供給される。なお、水蒸気の元となる水は、需要家の設備に供給された過熱蒸気が仕事を終えて復水したものであってもよいし、別途用意した水であってもよい。
【0014】
固体蓄熱粒子とは、顕熱を長時間に亘って維持することができる粒子である。具体的な固体蓄熱粒子としては、砂や砕石などを挙げることができ、150℃から600℃程度の熱を1日程度維持することが可能である。固体蓄熱粒子の粒子径や形状は特に限定はないが、数mm以下とすることが好ましい。
【0015】
高温貯蔵部3は、固体蓄熱粒子を貯蔵する装置である。貯蔵した固体蓄熱粒子は熱交換部2へ輸送される。高温貯蔵部3は、断熱構造を有する容器を備えており、当該容器に固体蓄熱粒子を貯蔵する。高温貯蔵部3に貯蔵される固体蓄熱粒子は、電気ヒーター6により加熱されており、低温貯蔵部4に貯蔵される固体蓄熱粒子よりも相対的に温度が高い。
【0016】
低温貯蔵部4は、固体蓄熱粒子を貯蔵する装置である。貯蔵した固体蓄熱粒子は高温貯蔵部3へ輸送される。低温貯蔵部4は、断熱構造を有する容器を備えており、当該容器に固体蓄熱粒子を貯蔵する。低温貯蔵部4に貯蔵される固体蓄熱粒子は、太陽熱ヒーター7により加熱されており、高温貯蔵部3に貯蔵される固体蓄熱粒子よりも相対的に温度が低い。
【0017】
輸送部5は、低温貯蔵部4から高温貯蔵部3へ、高温貯蔵部3から熱交換部2へ、固体蓄熱粒子を輸送する装置群からなる。具体的には、固体蓄熱粒子を輸送するコンベアなどであり、公知のものであるので詳細は省略する。輸送部5は、熱交換部2における固体蓄熱粒子の必要量に応じて、高温貯蔵部3から熱交換部2に固体蓄熱粒子を輸送する。また、輸送部5は、高温貯蔵部3に固体蓄熱粒子が所定量維持されるように、低温貯蔵部4から高温貯蔵部3に固体蓄熱粒子を輸送する。また、輸送部5は、熱交換部2から排出された固体蓄熱粒子を低温貯蔵部4に輸送する。
【0018】
電気ヒーター6は、低温貯蔵部4から高温貯蔵部3に供給される固体蓄熱粒子を、商用電源の余剰電力を用いて得られる熱によって加熱する装置である。電気ヒーター6により加熱されて到達する温度を第1温度とする。電気ヒーター6は、輸送部5により輸送された固体蓄熱粒子を一定量蓄えて加熱してもよいし、輸送部5により輸送されている固体蓄熱粒子を加熱してもよい。このような電気ヒーター6の構成については公知であるので詳細は省略する。
【0019】
太陽熱ヒーター7は、熱交換部2から低温貯蔵部4に供給される固体蓄熱粒子を、電力以外のエネルギーから得られた熱、ここでは太陽熱を用いて加熱する装置である。太陽熱ヒーター7により加熱されて到達する温度を第2温度とする。この第2温度は第1温度より低い。
【0020】
太陽熱は、レンズや反射鏡などを用いて集光し、高温を作り出す太陽炉により得ることができる。このような太陽炉によって得られた熱により、太陽熱ヒーター7は、太陽熱ヒーター7に供給された固体蓄熱粒子を加熱する。例えば、輸送部5により輸送される固体蓄熱粒子に直接太陽光を照射、又はレンズや反射鏡で集光した太陽光を照射することで固体蓄熱粒子に太陽熱を蓄熱することができる。他にも、太陽炉で得られた熱で流体などの熱媒を加熱し、その熱媒によって直接又は間接的に固体蓄熱粒子を加熱してもよい。
【0021】
上述した構成の蓄熱システム1の動作について説明する。熱交換部2で仕事を終えた固体蓄熱粒子は、熱交換部2から排出され、輸送部5により低温貯蔵部4へ輸送される。固体蓄熱粒子の輸送量を1kg/sとする。仕事を終えた固体蓄熱粒子の温度は150℃とする。輸送部5により低温貯蔵部4へ輸送される途中で、太陽熱ヒーター7により固体蓄熱粒子は加熱される。固体蓄熱粒子は、第2温度の一例として200℃に加熱され、低温貯蔵部4に貯蔵される。
【0022】
次に、低温貯蔵部4から高温貯蔵部3へ輸送部5により固体蓄熱粒子が輸送される。この輸送のタイミングは任意でよいが、夜間など余剰電力がある時間帯に行うことが好ましい。固体蓄熱粒子は電気ヒーター6により第1温度の一例として600℃に加熱され、高温貯蔵部3に貯蔵される。
【0023】
そして、高温貯蔵部3から熱交換部2へ連続的、または間欠的に固体蓄熱粒子を供給する。熱交換部2では、需要家の設備の需要に応じて過熱蒸気を生成する。熱交換部2に供給される水蒸気の流量は1kg/s、100℃とすると、600℃の固体蓄熱粒子と熱交換することで、流量が1kg/s、温度が550℃の過熱蒸気を需要家の設備に供給することができる。この場合の熱交換部2の交換熱量は450kWとなる。
【0024】
高温貯蔵部3には、例えば一日に必要な固体蓄熱粒子の分量を貯蔵するように設計することが好ましい。これにより、熱交換部2で必要な分量の固体蓄熱粒子が枯渇する可能性を低く抑えることができる。もちろん、高温貯蔵部3の固体蓄熱粒子が枯渇しそうな場合には、低温貯蔵部4の固体蓄熱粒子を電気ヒーター6で加熱し、高温貯蔵部3に供給するようにしてもよい。その場合、夜間の余剰電力ではなく昼間の比較的高価な電力を使用することになるが、その電力量は抑えることができる。
【0025】
ここで、
図2(a)に熱交換部2の具体的構成について説明する。熱交換部2は、熱交換室20を備えている。熱交換室20は、固体蓄熱粒子が上部から投入され、下部から排出されるように構成されている。具体的には熱交換室20の上部に高温の固体蓄熱粒子(以後、高温粒子と略記)の投入部21が設けられている。また、熱交換室20の下部には、熱交換して低温となった固体蓄熱粒子(以後、低温粒子と略記)の排出部24が設けられている。投入部21は、輸送部5を介して高温貯蔵部3に接続されている。排出部24は輸送部5を介して低温貯蔵部4に接続されている。
【0026】
さらに、熱交換室20は、水蒸気が下部から投入され、過熱蒸気となって上部から排出されるように構成されている。具体的には熱交換室20の上部に過熱蒸気の排気部22が設けられている。また、熱交換室20の下部には、排出部24に向かって下方に傾斜した漏斗状のプレート23が設けられている。プレート23は、メッシュ状、又は細孔が形成されている。
【0027】
プレート23は下方から予備加熱ライン9から水蒸気が供給されるようになっている。プレート23の上面には投入部21から落下した高温粒子が一時的に蓄積されている。水蒸気はプレート23を通過し、その高温粒子の隙間を通過する際に熱交換し過熱蒸気となる。高温粒子を抜けた過熱蒸気は排気部22から排出され需要家の設備へ供給される。
【0028】
また、熱交換室20の上部には、高温粒子を分散させる分散部材25が設けられている。投入部21から落下する高温粒子は分散部材25によって平面方向に分散させられる。これにより、高温粒子は熱交換室20の内部に均一に広がって落下するので、水蒸気を高温粒子により確実に接触させて熱交換することができる。
【0029】
上述したように、熱交換部2は、上部から高温粒子を落下させ、下部から水蒸気を供給する構成としてある。熱交換室20の下部に溜まった固体蓄熱粒子は、上部に向かうほど温度が高くなり、また、落下中の固体蓄熱粒子についても投入部21に近いほど高温である。したがって、水蒸気はプレート23から排気部22へ向かうにつれて、低温から高温の固体蓄熱粒子に接触することになる。すなわち、需要家の設備に近い排気部22付近で低温の固体蓄熱粒子に接触しない。このため、熱交換を効率よく行うことができる。
【0030】
また、プレート23は漏斗状に形成されているので、固体蓄熱粒子を排出部24に排出させやすくなっている。すなわち、熱交換部2における固体蓄熱粒子の流れやすさ(流動性)が向上している。このような流動性の向上は、温度低下した固体蓄熱粒子を速やかに排出することにつながるので、熱交換部2から排気される過熱蒸気の目標温度をより確実に維持することができる。
【0031】
なお、
図2(b)に示すように、プレート23は、漏斗状に限定されず、平面状であってもよい。このような形状であっても、一時的にプレート23に固体蓄熱粒子が蓄積されるが、排出部24から固体蓄熱粒子を排出でき、流動性は確保される。
【0032】
図3(a)に熱交換部2の他の具体的構成について説明する。熱交換部2は、熱交換室30を備えている。熱交換室30は、固体蓄熱粒子が上部から投入され、下部から排出されるように構成されている。具体的には熱交換室30の上部に高温粒子の投入部31が設けられている。また、熱交換室30の下部には、低温粒子の排出部34が設けられている。投入部31は、輸送部5を介して高温貯蔵部3に接続されている。排出部34は輸送部5を介して低温貯蔵部4に接続されている。
【0033】
熱交換室30は、上下方向に平行な断面視において壁面が中心に向けて突出して下方に傾斜した分散部35が形成されている。高温粒子は、投入部31から熱交換室30に投入され、分散部35によって水平方向に導かれるようにして落下していく。このような分散部35により、高温粒子は熱交換室30の内部に均一に広がって落下するので、水蒸気を高温粒子により確実に接触させて熱交換することができる。
【0034】
また、熱交換室30は、水蒸気が下部から投入され、過熱蒸気となって上部から排出されるように構成されている。具体的には熱交換室30の上部に過熱蒸気の排気部32が設けられている。また、熱交換室30の下部には、排出部34に隣接してメッシュ状のプレート33が設けられている。プレート33は下方から予備加熱ライン9から水蒸気が供給されるようになっている。
【0035】
水蒸気はプレート33を通過し、熱交換室30を落下する高温粒子と熱交換して過熱蒸気となる。過熱蒸気は排気部32から排出され需要家の設備へ供給される。
【0036】
上述したように、熱交換部2は、上部から高温粒子を落下させ、下部から水蒸気を供給する構成としてある。熱交換室30を落下する固体蓄熱粒子は、上部に向かうほど温度が高い。したがって、水蒸気はプレート33から排気部32へ向かうにつれて、低温から高温の固体蓄熱粒子に接触することになる。すなわち、需要家の設備に近い排気部32付近で低温の固体蓄熱粒子に接触しない。このため、熱交換を効率よく行うことができる。
【0037】
また、
図3(b)に示すように、プレート33は排出部34に向けて下方に傾斜していてもよい。このようにプレート33を傾斜させることで、固体蓄熱粒子を排出部34に排出させやすくなっており、熱交換部2における固体蓄熱粒子の流動性が向上している。このような流動性の向上は、温度低下した固体蓄熱粒子を速やかに排出することにつながるので、熱交換部2から排気される過熱蒸気の目標温度をより確実に維持することができる。
【0038】
以上に説明したように、本発明の蓄熱システム1は、余剰電力により得られた熱を固体蓄熱粒子に蓄熱させ、その固体蓄熱粒子により過熱蒸気を生成して需要家の設備に供給する。すなわち、夜間などの時間帯における商用電源の余剰電力を熱として蓄積する。したがって、熱需要に応じて即座に過熱蒸気を生成するような場合であっても、前もって蓄熱した固体蓄熱粒子を用いればよいので、昼間の高価な電力を利用する必要がない。このように蓄熱システム1は、余剰電力を有効活用することができる。さらに、電力需要が逼迫するような昼間や冬季などであっても、商用電源の非余剰電力を使用することなく、又は使用量を低減することができるので、電力需給の平準化に貢献することができる。
【0039】
また、蓄熱システム1は、蓄熱のための媒体として固体蓄熱粒子を用いる。これにより、溶融塩を媒体とした場合と比較して、熱交換部2などの各装置が腐食することを回避することができる。なお、溶融塩は、融点を維持できないと固体となる。このため、熱交換を終えたあとでは溶融塩は固化し、回収が困難である。一方、本発明では熱媒は固体の粒子であるから回収も容易であり、
図1に示したように熱交換部2から回収して再加熱することを容易に実現することができる。
【0040】
また、蓄熱システム1は、電力のみならず太陽熱などのエネルギーから得られる熱で固体蓄熱粒子を加熱し、その後、電力による加熱を行う。このように段階的に加熱を行うことで、電気ヒーター6で使用する電力を削減することができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0041】
また、当該エネルギーとして太陽熱を用いることで更なる効果がある。太陽熱は、固体蓄熱粒子を比較的低い温度にするための加熱源として用いる。このように高温を要求しないことから、狭い土地や日射量が少ない場所に設置された太陽炉であっても本発明の太陽熱ヒーター7の熱源として利用することができる。さらに、本発明の蓄熱システム1は、太陽熱を直接的に過熱蒸気を生成するために用いず、固体蓄熱粒子に蓄熱するために用いる。このため、日射の変動の影響を受けにくいという効果がある。
【0042】
一般に、太陽熱は、回収する温度が高いほど放射量が大きいことが知られている。具体的には放射量は絶対温度の4乗に比例する。したがって、固体蓄熱粒子の第2温度の600℃を太陽熱のみで賄うとすると、太陽炉の規模が大きくなるだけでなく、放射ロスが大きくなってしまう。
【0043】
一方、本発明の蓄熱システム1は、固体蓄熱粒子を低温の第1温度(例えば200℃)にするための熱源として太陽熱を用いるので、放射ロスを抑えることができる。
【0044】
図2及び
図3に示したように、熱交換部2は、固体蓄熱粒子が一時的に滞留するとしても、上部から下部に向けて流動している。このように固体蓄熱粒子を流動させる熱交換の方式を流動床式熱交換と称する。一方、熱交換室20又は熱交換室30に固体蓄熱粒子を投入して蓄積したままで水蒸気を固体蓄熱粒子に接触させる熱交換の方式を固定床式熱交換と称する。
【0045】
固定床式熱交換は、固定蓄熱粒子から水蒸気などの気体への熱抽出と、固体蓄熱粒子への蓄熱を交互に行う必要がある。このような熱抽出と蓄熱を繰り返すほど固定蓄熱粒子の温度が低下するという知見がある。このことから、固定床式熱交換は、固定蓄熱粒子の蓄熱が十分に有効利用できない。しかしながら、流動床式熱交換は、そのような入れ替えがなく、固定蓄熱粒子の温度低下の問題がないので、固定床式熱交換と比べて固体蓄熱粒子から熱を有効に取り出すことができる。また、固定床式熱交換は、熱抽出、蓄熱を同時並行的に行えない。一方、流動床式熱交換は、熱交換部2における熱抽出と、電気ヒーター6や太陽熱ヒーター7における蓄熱を同時並行的に行うことができる。したがって、蓄熱のために中断することなく連続的に過熱蒸気を供給することができる。
【0046】
さらに、流動床式熱交換を採用したことで、輸送部5によって固定蓄熱粒子を輸送している最中に、太陽熱によって直接的に熱を回収することができる。
【0047】
図1に示したように、蓄熱システム1は、供給ライン8に供給した過熱蒸気の一部を加熱源とし、水を水蒸気にする予備加熱器11を備えている。固体蓄熱粒子で水を過熱蒸気とする場合と比較して、流動する固体蓄熱粒子で水蒸気をより確実に過熱蒸気とすることができる。なお、本発明としては、熱交換部2に水を供給し、固体蓄熱粒子と水を熱交換させることで過熱蒸気としてもよい。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、熱交換部2は過熱蒸気を生成して供給するが、これに限定されない。例えば、熱交換部2に空気を取り込み、これを熱交換して高温の空気(請求項に記載の高温気体の一例である)としてもよい。他にも不活性ガスなど様々な気体を高温にする場合について本発明は適用できる。
【0049】
図2及び
図3に、熱交換室の最上部から固体蓄熱粒子が供給され、熱交換室の最下部から排出される構成を例示したが、このような構成に限定されない。すなわち、固体蓄熱粒子は、上方から下方に落下するように供給される構成であればよく、請求項の上部(投入部)は下部(排出部)よりも相対的に上方であればよい。
【0050】
また、熱交換室の最下部から水蒸気が供給され、熱交換室の最上部から過熱蒸気が排出される構成を例示したが、このような構成に限定されない。すなわち、水蒸気・過熱蒸気は、下方から上方へ供給される構成であればよく、請求項の上部(排気部)は下部(プレート)よりも相対的に上方であればよい。
【0051】
熱交換室では、一時的に蓄積された固体蓄熱粒子を通過するように水蒸気を供給するようにしたが、このような熱交換に限定されない。例えば、熱交換室に固体蓄熱粒子が全く、またはほとんど蓄積されないような構成とし、上方から下方に落下する固体蓄熱粒子に水蒸気を流し込むようにして熱交換してもよい。さらには、熱交換室に一時的に蓄積された固体蓄熱粒子に、水を流し込んで蒸発させ、過熱蒸気としてもよい。
【0052】
太陽熱ヒーター7は、太陽熱を熱源とするものを例示したが、これに限定されない。電力以外のエネルギー、例えば再生可能エネルギーを用いて得られた熱を固定蓄熱粒子に蓄熱してもよい。
【0053】
予備加熱器11は、水と過熱蒸気を直接混合させて水蒸気とするものを例示したが、これに限定されない。例えば、過熱蒸気により間接的に水を加熱してもよい。また、予備加熱器11の熱源は過熱蒸気に限定されず、固体蓄熱粒子を用いてもよいし、それ以外の熱源を用いてもよい。
【0054】
輸送部5は、コンベアのように動力を必要とする構成に限定されない。例えば、熱交換部2、高温貯蔵部3、低温貯蔵部4をこの順で低い高さから順に配置し、固体蓄熱粒子の自重によって下位の装置に輸送される構成としてもよい。
【0055】
蓄熱システム1は、需要家の施設とは別に配備されていてもよいし、需要家の施設内に配備されていてもよい。また、
図1に示した固体蓄熱粒子や過熱蒸気などの温度、流量、交換熱量は一例であり、蓄熱システムの規模に応じて適宜設定できるものである。
【符号の説明】
【0056】
1…蓄熱システム、2…熱交換部、3…高温貯蔵部、4…低温貯蔵部、5…輸送部、6…電気ヒーター(第1加熱部)、7…太陽熱ヒーター(第2加熱部)、11…予備加熱器(第3加熱部)