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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180897
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231214BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/175 121
B41J2/175 119
B41J2/01 401
B41J2/175 503
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094573
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正典
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC06
2C056EC08
2C056EC28
2C056EC80
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA22
2C056KB15
2C056KB26
2C056KB37
2C056KC02
2C057AG29
2C057AG77
2C057AM16
2C057AM40
(57)【要約】
【課題】不良吐出ノズルを検出する手段を備えることなく、画像品質の低下を防止できる液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド100と、液体吐出ヘッド100に供給する液体を収容するヘッドタンク35と、ヘッドタンク35に供給する液体を収容する液体カートリッジ10と、を備える液体を吐出する装置1であって、液体吐出ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル202、及びノズル202と連通する個別液室203に液体を供給する共通液室210を有し、共通液室210は、ヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有し、連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を使用せずに印刷を行う印刷モードを有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、前記ヘッドタンクに供給する液体を収容する液体カートリッジと、を備える液体を吐出する装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズル、及び前記ノズルと連通する個別液室に液体を供給する共通液室を有し、
前記共通液室は、前記ヘッドタンクから液体が供給される供給路と接続する連結部を有し、
前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用せずに印刷を行う印刷モードを有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記共通液室のノズル配列方向一方端部側または中央部にあることを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記液体吐出ヘッドに供給される液体が白色インクを含む複数色のインクであり、
前記白色インクが供給される前記液体吐出ヘッドの前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用しないことを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドは、前記ヘッドタンクとの間に、液体をろ過するフィルタ部材を備えたフィルタユニットを有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記印刷モードは、ノズル列の12.5%~87.5%の領域の前記ノズルを使用しないノズルとして選択することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、前記ヘッドタンクに供給する液体を収容する液体カートリッジと、を備える液体を吐出する装置により被印刷物に液体を吐出する印刷方法であって、
前記液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズル、及び前記ノズルと連通する液室に液体を供給する共通液室を有し、
前記共通液室は、前記ヘッドタンクから液体が供給される供給路が接続する連結部を有し、
前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用せずに印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置として、インクを吐出する液体吐出ヘッド(記録ヘッド)を用いたインクジェット方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。
液体吐出ヘッドからインク滴を吐出して画像を形成する際に、ノズルに異物が詰まる等の要因により、ノズルからインクが吐出されない「不良吐出」が発生することがある。
【0003】
そこで、不良吐出が生じた場合でも画像品質を落とさないために、ノズルからインク滴が正常に吐出されているかどうかを検知して、その結果に応じて入力画像データに、通常の印刷とは別種の画像処理を行い、それによって画質を補償する補償方法が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
特許文献1では、形成した画像中に実際にドット抜け(画素の欠損)があるかどうかを検出することができる装置において、許容ドット抜け数の基準値が異なる3つの作動モードを有し、各作動モードに応じた制御を行う例が開示されている。
【0005】
特許文献2では、補償効果が低下する不良吐出ドットが連続する箇所の発生を回避することを目的として、吐出検知手段により不良吐出ノズルを検知した後の処理を選択する選択手段を備え、不吐出画素の連続数に基づきクリーニング手段を使用するか補償手段を使用するかを選択する装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不良吐出による画像品質の低下を防止する従来の装置では、ドットの欠損から不良吐出が発生しているノズルを検出する手段を備え、検出された結果に応じて補償を行う構成となっているため、装置構成や機構が複雑化するという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、不良吐出ノズルを検出する手段を備えることなく、画像品質の低下を防止できる液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、前記ヘッドタンクに供給する液体を収容する液体カートリッジと、を備える液体を吐出する装置であって、前記液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズル、及び前記ノズルと連通する個別液室に液体を供給する共通液室を有し、前記共通液室は、前記ヘッドタンクから液体が供給される供給路と接続する連結部を有し、前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用せずに印刷を行う印刷モードを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不良吐出ノズルを検出する手段を備えることなく、画像品質の低下を防止できる液体を吐出する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の液体を吐出する装置の一実施形態のインクジェット記録装置を前方から見た斜視図である。
図2図1に示す装置の機構部の概要を示す側面図である。
図3図1に示す装置の機構部の要部平面図である。
図4】ヘッドタンクの一例を示す斜視図である。
図5】(A)は図4に示すヘッドタンク内のインク排出を示す模式図であり、(B)はインク供給配管の構成を示す概略構成図である。
図6】自動メンテナンス機構の構成を示す概略構成図である。
図7】液体吐出ヘッドの一例の分解斜視説明図である。
図8】液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面説明図である。
図9】液体吐出ヘッドのノズル面の説明図である。
図10】液体吐出ヘッド及びヘッドタンクの断面模式図である。
図11】液体吐出ヘッドのフレーム部材を液室部材側から見た平面説明図である。
図12】フィルタユニットのフィルタ部材の説明図である。
図13】第一の実施形態における印刷モードの説明を示した表である。
図14】第一の実施形態における不使用ノズルの配置を模式的に表した説明図である。
図15】第二の実施形態における印刷モードの説明を示した表である。
図16】第二の実施形態における不使用ノズルの配置を模式的に表した説明図である。
図17】第二の実施形態における不使用ノズルの配置を模式的に表した説明図である。
図18】本実施形態の印刷方法により印刷を行った例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置及び印刷方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
図1は、本発明に係る液体を吐出する装置の一実施形態であるインクジェット記録装置を前方から見た斜視図である。インクジェット記録装置1は、装置本体に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された被記録媒体である用紙をストックするための排紙トレイ3とを備える。
【0013】
また、装置本体の前面の一方側には、給排紙トレイ部に隣接するように、液体カートリッジであるインクカートリッジ10を装填するためのカートリッジ装填部4が設けられている。
カートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10がセットされる。各インクカートリッジ10には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)の各色インクが収容される。これらのインクカートリッジ10は、装置本体の前面側から後方側に向って挿入して装填可能で、縦置き状態で横方向に各インクカートリッジ10を並べて装填する構成となっている。カートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6が開閉可能に設けられている。
【0014】
次に、このインクジェット記録装置1の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面図、図3は同じく要部平面図である。
インクジェット記録装置1の機構部において、フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bにガイド部材であるガイドロッド31とステー32とが横架され、これらがキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ33は、主走査モータによってタイミングベルトを介して図3の矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0015】
このキャリッジ33には、前述した各色のインク滴を吐出する4個の液体吐出ヘッド100からなる記録ヘッドが、複数のインク吐出口(複数のノズル)を主走査方向と交叉する方向(用紙送り方向)に配列され、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。なお、各色の液滴を吐出するノズル列を有する1又は複数のヘッド構成などを採用することもできる。
【0016】
また、キャリッジ33には、液体吐出ヘッド100に各色のインクを供給するための各色のヘッドタンク35が搭載されている。この各色のヘッドタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための送液手段である送液ポンプ24が設けられている。
【0017】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43と、給紙コロ43に対向する分離パッド44とを備える。分離パッド44は、摩擦係数の大きな材質からなり、給紙コロ43側に付勢されている。
【0018】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を液体吐出ヘッド100の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えられている。さらに、給送された用紙42を静電吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51が備えられている。
【0019】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成されている。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ56が備えられている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、液体吐出ヘッド100による印写領域に対応してガイド部材57が配置されている。
【0020】
この搬送ベルト51は、副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3に矢印で示す副走査方向(ベルト搬送方向)に周回移動する。
【0021】
さらに、液体吐出ヘッド100で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とが備えられている。排紙ローラ62の下方には、排紙トレイ3が備えられている。
【0022】
また、装置本体の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0023】
記録動作は、キャリッジ33を主走査方向に移動させながら、画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動する。液体吐出ヘッド100は、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0024】
図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、液体吐出ヘッド100のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81が配置されている。
【0025】
この維持回復機構81には、液体吐出ヘッド100の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a~82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b~82dは保湿用キャップとしている。
【0026】
この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液は、廃液タンク23(図5及び図6参照)に排出されて収容される。また、キャップ82に排出されたインク、ワイパーブレード83に付着してワイパークリーナで除去されたインク、及び空吐出受け84に空吐出されたインクも、廃液タンク23(図6参照)に排出されて収容される。
【0027】
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88が配置されている。この空吐出受け88には、液体吐出ヘッド100のノズル列方向に沿った開口部89などが備えられている。
【0028】
待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で液体吐出ヘッド100がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で液体吐出ヘッド100をキャッピングした状態で吸引ポンプ22(図5及び図6参照)によってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘したインクや気泡を排出する回復動作を行う。さらに、印刷動作開始前や印刷途中などに印刷と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これらによって、液体吐出ヘッド100の安定した吐出性能を維持できる。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に係るヘッドタンクの構造を示す斜視図である。同図において、ヘッドタンク35の内部に設けられたフィルム92は、バネに付勢されることで負圧を生じており、ヘッドタンク内に収納されたインクの消費量に応じて変位する。また、負圧レバー91は、フィルム92に追随して動作するレバーである。
【0030】
供給口93は、インクカートリッジ10からインク供給チューブ36を経てインクが供給される供給口である(図1及び図3参照)。また、大気開放弁94はヘッドタンク35の内部を必要に応じて大気状態に開放するピンである。さらに、このようなヘッドタンク35の下方にはインク滴を吐出する液体吐出ヘッド100が取り付けられている。さらに、インク又は空気を検知する検知機構95が設けられている。
【0031】
図5(A)は、ヘッドタンク内のインク排出を示す模式図である。図5(A)に示すように、キャップ82で液体吐出ヘッド100のノズル面を覆い、吸引ポンプ22にて吸引を行うと、ヘッドタンク35内のインクを廃液タンク23へ排出(ヘッド吸引)できる。このヘッド吸引により、ノズルの増粘インクなどを排除できる。
【0032】
図5(B)は、インク供給配管の構成を示す概略構成図である。図5(B)に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、ヘッドタンク35とインクカートリッジ10との間で、液体を正転送又は逆転送できる送液ポンプ24を備える。すなわち、送液ポンプ24は、「正転時」には、インクカートリッジ10からヘッドタンク35へ送液し、「逆転時」には、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10へ逆戻しする(液体の循環)。
【0033】
図6は、インクジェット記録装置1における自動メンテナンス機構の構成を示す概略構成図である。
図6に示すように、自動メンテナンス機構は、インクカートリッジ10と、送液ポンプ24と、ヘッドタンク35と、液体吐出ヘッド100と、キャップ82と、吸引ポンプ22と、廃液タンク23と、ワイパーブレード83と、空吐出受け84とを備える。ここで、インクカートリッジ10には、図中左から白(W1、W2)、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色インクが収容される。
【0034】
図7は液体吐出ヘッド100の一例を示す分解斜視説明図である。図8は、液体吐出ヘッド100の流路構成の説明図であり、ノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面図である。図9は、液体吐出ヘッド100のノズル面の説明図である。
【0035】
液体吐出ヘッド100は、ノズル板及び流路板並びに振動板部材から構成される液室部材101と、共通液室部材を兼ねるフレーム部材102とを有し、フレーム部材102の液体供給経路上流側にはフィルタユニット103が配置されている。フレーム部材102と液室部材101とは接着剤により固定されている。
【0036】
フィルタユニット103には、ヘッドタンク35から供給される液体(インク)中の不純物をろ過するためのフィルタ部材が設けられている。
【0037】
液室部材101は、ノズル板212と、流路板213と、振動板部材214とを接合している。
ノズル板212には、図9(A)に示すように、液滴を吐出する複数のノズル202が2列配列された2列のノズル列300A、300Bを有している。このノズル板212は、例えば、ステンレスを用いてプレス加工でノズル202を形成できる。
【0038】
なお、以降の説明においてノズル列300を模式的に図9(B)のように示すことがある。
【0039】
流路板213は、ノズル202に通じる個別液室203を形成している。この流路板213は、例えばシリコンの異方性エッチングで形成しているが、ステンレスなどの金属材料を使用することもできる。
振動板部材214は、個別液室203の一部の壁面を変位可能な振動領域214aとして形成する。この振動板部材14はNi電鋳で形成している。
フレーム部材102には、各個別液室203に液体を供給する共通液室210が形成されている。
【0040】
振動板部材214の振動領域214aの個別液室203とは反対側に圧電アクチュエータ220を配置している。圧電アクチュエータ220は、2列のノズル列に合わせて1つのベース部材219に例えばノズルピッチの2倍のピッチで柱状の圧電素子(圧電柱)を形成した2つの圧電部材218を接合している。圧電部材218の各圧電柱は振動板部材214の振動領域214aと接合されて、FPCやFFCなどのフレキシブル配線部材221が接続され、フレキシブル配線部材221に搭載された駆動回路(ドライバIC)222)によって駆動信号が与えられる。
【0041】
この液体吐出ヘッドでは、圧電アクチュエータ220を駆動することで振動板部材214の振動領域214aが変位して、個別液室203の液体が加圧されてノズル202から液滴が吐出される。
【0042】
次に、この液体吐出ヘッドの共通液室構成について図10及び図11を参照して説明する。
図10は液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク35の断面説明図、図11は液体吐出ヘッド100のフレーム部材102を液室部材101側から見た平面説明図である。図10(A)及び図11(A)は第一の態様、図10(B)、図11(B)及び図11(C)は第二の態様を示している。
【0043】
図10(A)及び図10(B)中の破線Fは、インク中に凝集物等があった場合に最も流れやすい経路を模式的に示している。
なお、液体吐出ヘッド100は、ノズル列に対応する複数の個別液室に液体を供給する共通液室210を2つ有しているが、図10では一方のみを示している。
【0044】
第一の実施形態では、図10(A)及び図11(A)に示すように、共通液室210は、ノズル配列方向の中央部にヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有している。
【0045】
一方、第二の実施形態では、図10(B)、図11(B)及び図11(C)に示すように、共通液室210は、ノズル配列方向の一方端部側にヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有している。
【0046】
図12はフィルタユニット103が備えるフィルタ部材131の配置を説明する図である。図中、フィルタ部材131を破線で模式的に示している。フィルタ部材131は、図12(A)及び図12(B)に示すように、ノズル列方向に2つ設けられていてもよく、図12(C)に示すように1つであってもよい。
図11に示したように、2列の共通液室210は、ヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有しているが、連結部231はフィルタユニット103との接続部でもある。
【0047】
液体を濾過するフィルタ部材131は、滴吐出特性に与える影響を極力小さいものとするため、液体通過時における流体抵抗は極力小さい方が好ましい。フィルタ部材131の形状は、連結部231の配置に応じて適宜設計、選択することができるが、面積が極力大きく、かつ抵抗の少ない形状とすることが好ましい。また、2つのフィルタ部材131が配置されていることが好ましい。
【0048】
図12(A)に示す例は、図10(A)、図11(A)に示す第一の実施形態におけるフィルタ部材131の配置例である。第一の実施形態の共通液室210は、ノズル配列方向の中央部にヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有している。連結部231が中央部に配設されているため、2つのフィルタ部材131は、液体を中央部に導くことができるように、平面形状で略涙形状に形成されたものを用いている。
【0049】
図12(B)に示す例は、図10(B)、図11(B)に示す第二の実施形態におけるフィルタ部材131の配置例である。第二の実施形態の共通液室210は、ノズル配列方向の一方端部側にヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有している。連結部231が一方端側と他方端側に配設されているため、2つの矩形のフィルタ部材131をそれぞれヘッドの異なる端部側に寄せるように配置している。
【0050】
図12(C)に示す例は、図10(B)に示す第二の実施形態の変形例としての図11(C)におけるフィルタ部材131の配置例である。図11(C)の例では連結部231が一方端側にのみ配設されているため、1つのフィルタ部材131でフィルタユニット103を構成している。
【0051】
ところで、白(W1、W2)インクのような沈降しやすい成分(例えば、酸化チタン等)を含むインクが充填されているインクカートリッジ10は、濃度が高いインクが容器下側に集まり、容器上側のインク濃度は低くなる。また、同インクカートリッジをインクジェット記録装置に搭載し、インク吐出を行った場合は、ヘッドタンク35において凝集を生じやすく、ヘッドタンク35に残留した凝集物がノズル孔に流れ込み、不良吐出が生じたり、ノズルの回復性が悪くなったりし易いことが知られている。
【0052】
インクは上流側から下流側に向かって、(1)ヘッドタンク35、(2)フィルタユニット103、(3)連結部231、(4)共通液室210、(5)個別液室203、(6)ノズル202の順に流れる。ノズル202の上流側のヘッドタンク35及びフィルタユニット103に残留している凝集物は、図10(A)及び図10(B)中に破線矢印Fで示したように、連結部231を通りノズル202に流れて来ることとなる。凝集物の沈降位置は、重力の影響で連結部231の直下に落ちやすく、これによりノズル202の不良吐出が起こりやすくなる。
【0053】
従来の装置では、不良吐出を検出する手段を備え、検出された結果に応じて補償を行う構成となっているため、装置構成や機構が複雑化するという課題があった。
これに対し、本発明に係る液体を吐出する装置は、上述のように凝集しやすいインクを吐出するノズル202について、予め不良吐出が発生することを予測し、当該ノズル202を用いないで印刷を行う構成とすることにより、不良吐出ノズルを検出する手段や機構を備えることなく、画像品質の低下を防止することができる。
【0054】
すなわち、本発明に係る液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッド100と、液体吐出ヘッド100に供給する液体を収容するヘッドタンク35と、ヘッドタンク35に供給する液体を収容する液体カートリッジ(インクカートリッジ)10と、を備える液体を吐出する装置1であって、液体吐出ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル202、及びノズル202と連通する個別液室203に液体を供給する共通液室210を有し、共通液室210は、ヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有し、連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を使用せずに印刷を行う印刷モードを有する。
連結部231は、共通液室210のノズル配列方向一方端部側または中央部にある。
また、液体吐出ヘッド100は、ヘッドタンク35との間に、液体をろ過するフィルタ部材を備えたフィルタユニットを有している。
【0055】
本実施形態の装置において、液体吐出ヘッド100に供給される液体が白色インクを含む複数色のインクであり、白色インクが供給される液体吐出ヘッド100の連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を使用しないように設定される。
【0056】
印刷モードは、ノズル列の12.5%~87.5%の領域のノズルを、使用しないノズルとして選択することができる。
【0057】
(第一の実施形態における印刷)
図10(A)、図11(A)に示した第一の実施形態の共通液室210は、ノズル配列方向の中央部にヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有している。
この場合、白インクはノズル列300における中央部のノズルに不良吐出(以下、「ノズル抜け」ともいう)が生じやすい。ノズル抜けは、印刷開始後の時間経過や、印刷回数の増加にともなって生じる範囲が広くなることが確認されている。
そこで、白色インクが供給される連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を使用しない印刷モードにより印刷を行うことが好ましい。
【0058】
印刷モードとしては、ノズル列300のうち、連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を含む所定の領域のノズル202を使用しないことを選択することができ、例えば、鉛直方向下方にあるノズルを含む12.5%~87.5%の領域のノズルを、使用しないノズルとして選択することができる。これにより、12.5%~87.5%のノズルにノズル抜けが発生しても、印刷された画像の品質に影響が及ぶことがない。
【0059】
図13は印刷モード(M1~M7)の例を示した表である。一例として、ノズル列300に含まれるノズル202の数が192個である場合について示している。
例えば、印刷モードM1では、ノズル列300の中央部を含む全体の12.5%(24個)のノズルを不使用として、残りの87.5%(168個)のノズルを使用して印刷を行う。これにより、最大12.5%のノズルにノズル抜けが発生している場合であっても画像品質を低下させることなく印刷を行うことができる。
一方、印刷モードM7では、ノズル列300の中央部を含む全体の87.5%(168個)のノズルを不使用として、残りの12.5%(24個)のノズルを使用して印刷を行う。これにより、最大87.5%のノズルにノズル抜けが発生している場合であっても画像品質を低下させることなく印刷を行うことができる。
【0060】
図14は、選択された印刷モードに対応した液体吐出ヘッド100における不使用ノズルの配置を模式的に表した図である。図中不使用ノズルの領域301を黒色で示している。なお、液体吐出ヘッドの配置は図6示した例と同様であり、白色(W)以外の各色(Y、M、K、C)のインクを吐出する液体吐出ヘッドをあわせて示している。
【0061】
図14(A)は通常印刷時の配置図である。
図14(B)は印刷モードM2の配置図であり、M2では白色インクが吐出されるノズル列300の中央部を含む全体の25%(48個)のノズルを不使用とし、残りの75%(144個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
図14(C)は印刷モードM4の配置図であり、M4では白色インクが吐出されるノズル列300の中央部を含む全体の50%(96個)のノズルを不使用とし、残りの50%(96個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
図14(D)は印刷モードM6の配置図であり、M6では白色インクが吐出されるノズル列300の中央部を含む全体の75%(144個)のノズルを不使用とし、残りの25%(48個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
【0062】
(第二の実施形態における印刷)
図10(B)、図11(B)に示した第二の実施形態の共通液室210は、ノズル配列方向の一端側にヘッドタンク35から液体が供給される供給路が接続する連結部231を有している。
この場合、白インクはノズル列における端部側のノズルに不良吐出(以下、「ノズル抜け」ともいう)が生じやすい。ノズル抜けは、印刷開始後の時間経過や、印刷回数の増加にともなって生じる範囲が広くなることが確認されている。
そこで、白色インクが供給される連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を使用しない印刷モードにより印刷を行うことが好ましい。
【0063】
印刷モードとしては、ノズル列300のうち、連結部231の鉛直方向下方にあるノズル202を含む所定の領域のノズル202を使用しないことを選択することができ、例えば、鉛直方向下方にあるノズルを含む12.5%~87.5%の領域のノズルを、使用しないノズルとして選択することができる。これにより、12.5%~87.5%のノズルにノズル抜けが発生しても、印刷された画像の品質に影響が及ぶことがない。
【0064】
図15は印刷モード(M1~M7)の例を示した表である。一例として、ノズル列に含まれるノズル202の数が192個である場合について示している。
例えば、印刷モードM1では、ノズル列の一方端部を含む全体の12.5%(24個)のノズルを不使用として、残りの87.5%(168個)のノズルを使用して印刷を行う。これにより、最大12.5%のノズルにノズル抜けが発生している場合であっても画像品質を低下させることなく印刷を行うことができる。
一方、印刷モードM7では、ノズル列の一方端部を含む全体の87.5%(168個)のノズルを不使用として、残りの12.5%(24個)のノズルを使用して印刷を行う。これにより、最大87.5%のノズルにノズル抜けが発生している場合であっても画像品質を低下させることなく印刷を行うことができる。
【0065】
図16は、図11(B)に示した態様において、選択された印刷モードに対応した液体吐出ヘッド100における不使用ノズルの配置を模式的に表した図である。図中、ノズル列300のうち不使用ノズルの領域301を黒色で示している。なお、液体吐出ヘッドの配置は図6示した例と同様であり、白色(W)以外の各色(Y、M、K、C)のインクを吐出する液体吐出ヘッドをあわせて示している。
【0066】
図16(A)は通常印刷時の配置図である。
図16(B)は印刷モードM2の配置図であり、M2では白色インクが吐出されるノズル列300の一方端部を含む全体の25%(48個)のノズルを不使用とし、残りの75%(144個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
図16(C)は印刷モードM4の配置図であり、M4では白色インクが吐出されるノズル列300の一方端部を含む全体の50%(96個)のノズルを不使用とし、残りの50%(96個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
図16(D)は印刷モードM6の配置図であり、M6では白色インクが吐出されるノズル列300の一方端部を含む全体の75%(144個)のノズルを不使用とし、残りの25%(48個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
【0067】
なお、図11(B)は第二の実施形態として、2つの連結部が一方端側(231A)と他端側(231B)に設けられた例を示したが、図11(C)に示すように、2つの連結部231A及び231Bが同じ端部側に設けられた態様であってもよい。
【0068】
図17は、図11(C)に示した態様において、選択された印刷モードに対応した液体吐出ヘッド100における不使用ノズルの配置を模式的に表した図である。図中、ノズル列300のうち不使用ノズルの領域301を黒色で示している。なお、液体吐出ヘッドの配置は図6示した例と同様であり、白色以外の各色のインクを吐出する液体吐出ヘッドをあわせて示している。
【0069】
図17(A)は通常印刷時の配置図である。
図17(B)は印刷モードM2の配置図であり、M2では白色インクが吐出されるノズル列300の一方端部を含む全体の25%(48個)のノズルを不使用とし、残りの75%(144個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
図17(C)は印刷モードM4の配置図であり、M4では白色インクが吐出されるノズル列300の一方端部を含む全体の50%(96個)のノズルを不使用とし、残りの50%(96個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
図17(D)は印刷モードM6の配置図であり、M6では白色インクが吐出されるノズル列300の一方端部を含む全体の75%(144個)のノズルを不使用とし、残りの25%(48個)のノズルを使用して印刷を行うことを示している。
【0070】
本発明に係る印刷方法は、液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、前記ヘッドタンクに供給する液体を収容する液体カートリッジ(インクカートリッジ)と、を備える液体を吐出する装置により被印刷物に液体を吐出する印刷方法であって、前記液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズル、及び前記ノズルと連通する液室に液体を供給する共通液室を有し、前記共通液室は、前記ヘッドタンクから液体が供給される供給路が接続する連結部を有し、前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用せずに印刷を行う印刷方法である。
【0071】
本実施形態の印刷方法は、被記録媒体としてTシャツなどの布地に印刷を行う場合にも適用することができる。布地に印刷を行う装置は、布地をセットするプラテンを備えていることが好ましい。
【0072】
図18は、Tシャツに印刷を行った例を模式的に示す図である。図10(A)及び図11(A)に示す第一の実施形態の装置を用いて印刷を行った結果を示している。
図18(A)は、通常の印刷モードで不良吐出が発生していない状態で印刷を行った例であり、ノズル列のうち50%にノズル抜けが生じている。
図18(B)は、通常の印刷モードで不良吐出が発生している状態で印刷を行った例である。
図18(C)は、印刷回数や印刷開始後の経過時間が図18(B)と同じ条件下で、本実施形態の印刷方法で印刷を行った例である。印刷モードとしては、図14(C)に示した印刷モードM4を選択した。すなわち、白色インクが吐出されるノズル列の中央部を含む全体の50%(96個)のノズルを不使用とし、残りの50%(96個)のノズルを使用して印刷を行った。
【0073】
図18の例では、被記録媒体として濃色(黒色)のTシャツを用い、カラーインクの発色を向上させるために下地として白色インクを印刷している。
白色インクの不良吐出により図18(B)では画像品質が低下しているのに対し、連結部の位置に対応した不使用ノズルを設けた本実施形態の印刷方法では、画像品質の低下はみられなかった。
【0074】
以上のように、本実施形態の液体を吐出する装置及び印刷方法によれば、不良吐出ノズルを検出する手段を備えることなく、画像品質の低下を防止することができる。
【0075】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0076】
「液体を吐出する装置」とは、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれ、画像形成装置の他、立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置等が挙げられる。
【0077】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0078】
また、「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0079】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0080】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0081】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0082】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0083】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0084】
「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0085】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、前記ヘッドタンクに供給する液体を収容する液体カートリッジと、を備える液体を吐出する装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズル、及び前記ノズルと連通する液室に液体を供給する共通液室を有し、
前記共通液室は、前記ヘッドタンクから液体が供給される供給路と接続する連結部を有し、
前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用せずに印刷を行う印刷モードを有することを特徴とする液体を吐出する装置である。
<2> 前記連結部は、前記共通液室のノズル配列方向一方端部側または中央部にあることを特徴とする前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<3> 前記液体吐出ヘッドに供給される液体が白色インクを含む複数色のインクであり、
前記白色インクが供給される前記液体吐出ヘッドの前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用しないことを特徴とする前記<1>または<2>に記載の液体を吐出する装置である。
<4> 前記液体吐出ヘッドは、前記ヘッドタンクとの間に、液体をろ過するフィルタ部材を備えたフィルタユニットを有することを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<5> 前記印刷モードは、ノズル列の12.5%~87.5%の領域の前記ノズルを使用しないノズルとして選択することを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<6> 液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を収容するヘッドタンクと、前記ヘッドタンクに供給する液体を収容する液体カートリッジと、を備える液体を吐出する装置により被印刷物に液体を吐出する印刷方法であって、
前記液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズル、及び前記ノズルと連通する液室に液体を供給する共通液室を有し、
前記共通液室は、前記ヘッドタンクから液体が供給される供給路が接続する連結部を有し、
前記連結部の鉛直方向下方にある前記ノズルを使用せずに印刷を行うことを特徴とする印刷方法である。
【符号の説明】
【0086】
1 液体を吐出する装置(インクジェット記録装置)
10 液体カートリッジ(インクカートリッジ)
35 ヘッドタンク
100 液体吐出ヘッド
103 フィルタユニット
131 フィルタ
202 ノズル
210 共通液室
231 連結部
300 ノズル列
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特許第3867767号公報
【特許文献2】特許第6766350号公報
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
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