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特開2023-180912液体を吐出する装置及び液体を吐出する装置が行うメンテナンス方法
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  • 特開-液体を吐出する装置及び液体を吐出する装置が行うメンテナンス方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180912
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置及び液体を吐出する装置が行うメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094593
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】上野 智志
(72)【発明者】
【氏名】松本 和悦
(72)【発明者】
【氏名】尾ヶ口 宗之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FB03
2C056JB03
2C056JB07
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】メンテナンス治具を、液体を吐出する装置へセットする際の操作性を改善すること。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズルを有する複数の液体吐出ヘッド(ヘッド20F、20G)と、複数の液体吐出ヘッドを搭載する複数のキャリッジ(キャリッジ11F、11G)と、を備える液体を吐出する装置であって、液体吐出ヘッドに取付け可能なメンテナンス治具(ヘッドキャップ装置600F、600G)を、液体吐出ヘッドに取り付けるときに、複数のキャリッジが、メンテナンス治具を取り付ける側から見て、互い違いの位置に待機する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを有する複数の液体吐出ヘッドと、
複数の前記液体吐出ヘッドを搭載する複数のキャリッジと、を備える液体を吐出する装置であって、
前記液体吐出ヘッドに取付け可能なメンテナンス治具を、前記液体吐出ヘッドに取り付けるときに、複数の前記キャリッジが、前記メンテナンス治具を取り付ける側から見て、互い違いの位置に待機する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
複数の前記キャリッジの位置を、相互に切り替える手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
液体を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドが搭載されたキャリッジを複数備える液体を吐出する装置が行うメンテナンス方法であって、
複数の前記キャリッジを、メンテナンスを行う側から見て、互い違いの位置に移動させる工程と、
前記液体吐出ヘッドに取付け可能なメンテナンス治具が、前記液体吐出ヘッドに取り付けられるまで待機する工程と、
を有する液体を吐出する装置が行うメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置及び液体を吐出する装置が行うメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Tシャツ等の布地に直接インクジェットで印刷する印刷装置のヘッド乾燥固着防止方法する技術が既に知られている。
例えば、特許文献1に開示されている、ヘッドノズル面の回復を目的としたメンテナンス治具は、装置の内部にユーザ自ら手を入れてセットする。ヘッドを保持しているキャリッジが一列しかない装置においては、通常比較的容易にキャリッジに手が届くためメンテナンス治具も容易に取り付けることができるものの、キャリッジが二列以上設けられた装置においては、手前側のキャリッジが妨げとなり奥側のキャリッジにアクセスしずらいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、メンテナンス治具を、液体を吐出する装置へセットする際の操作性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、
液体を吐出する複数のノズルを有する複数の液体吐出ヘッドと、
複数の前記液体吐出ヘッドを搭載する複数のキャリッジと、を備える液体を吐出する装置であって、
前記液体吐出ヘッドに取付け可能なメンテナンス治具を、前記液体吐出ヘッドに取り付けるときに、複数の前記キャリッジが、前記メンテナンス治具を取り付ける側から見て、互い違いの位置に待機する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、メンテナンス治具を、液体を吐出する装置へセットする際の操作性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体を吐出する装置としてのキャリッジが二列ある印刷装置の一例の平面説明図である。
図2】同じく正面説明図である。
図3】本発明の実施形態に係るメンテナンス治具としてのヘッドキャップ装置の斜視説明図である。
図4】同じく図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
図5】同じくキャッピング状態でのキャップの正面説明図である。
図6】同ヘッドキャップ装置をキャリッジに装着する前後の状態の斜視説明図である。
図7】キャリッジが二列ある印刷装置にヘッドキャップ装置を装着するメンテナンスの比較例を模式的に説明する斜視図である。
図8】同装置にヘッドキャップ装置を装着するメンテナンスの比較例を模式的に説明する側面図である。
図9】本発明の実施形態の液体を吐出する装置において、同装置にヘッドキャップ装置を装着するメンテナンス例を模式的に説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0008】
本発明の実施形態に係る液体を吐出する装置として、印刷装置の一例を、図1図2を参照して説明する。液体吐出ヘッド(「ヘッド」とも称する)を搭載したキャリッジを、二列備える印刷装置を説明する。図1は同印刷装置の平面説明図、図2は同じく正面説明図である。
【0009】
印刷装置1は、液体を吐出する装置であり、液体を吐出する液体吐出手段である複数のヘッド20(20A~20D)と、サブタンクなどを搭載した二つのキャリッジ11F、11Gとを備えている。ヘッド20は、複数のノズル列を有し、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各色の液体、白インク、透明インクなどの液体を吐出する。二つのキャリッジ11F、11Gは、同様の構成を有する。
【0010】
ガイド部材12、13(図2では省略)は、キャリッジ11F、11Gを主走査方向Xに往復移動可能に保持している。キャリッジ11F、11Gは、主走査モータ14で回転される駆動プーリ15と従動プーリ16とに掛け回したタイミングベルト17に連結し、主走査モータ14を駆動することによりキャリッジ11F、11Gを主走査方向Xに往復移動させる。
【0011】
エンコーダシート18は主走査方向Xに沿って配置している。エンコーダシート18には周期的なスリットが設けられている。キャリッジ11F、11Gは、エンコーダシート18のスリットを読み取る読み取りセンサを有し、読み取りセンサの読み取り結果から主走査方向Xにおけるキャリッジ11F、11Gの位置を検出できる。
【0012】
コントローラボード50は、キャリッジ11F、11Gの読み取りセンサの読み取り結果で得らえるキャリッジ位置から吐出位置でタイミングを合わせてヘッド20から液体であるインクを吐出させる制御をする。
【0013】
コントローラボード50は、印刷装置1の全体を制御する手段(制御手段)を有し、制御を実行する。コントローラボード50は、例えば、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)と、メモリとを備える。メモリは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。メモリは、印刷装置1の基本プログラム、液体を吐出する処理を制御するためのプログラム等、各種処理を実行させるプログラム、及びこれらのプログラムを実行するのに必要なシステムデータやその他のデータを記憶するとともに、CPUのワークメモリとして利用される。CPUは、例えば、ROMなどに記憶されているプログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、各種処理を実行する。
【0014】
キャリッジ11F、11G上には、ヘッド20A~20Cに供給する液体を一時的に収容するサブタンクがヘッド20A~20Cと一体的に搭載され、サブタンクにはメインタンク32に貯留されている液体が供給される。
【0015】
印刷装置1は、印刷対象(液体付与対象)としての布地400を保持する保持部材であるプラテン40を備えている。プラテン40は、昇降機構41上に搭載して上下方向Zの高さを調整可能としている。プラテン40の昇降機構41はスライダ42上に搭載されている。スライダ42は、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに延設したスライドレール43上に移動可能に載置されている。
【0016】
スライダ42は、タイミングベルト45を介して副走査駆動機構により副走査方向Yに往復移動される。スライダ42が副走査方向Yに往復移動されることにより、プラテン40も副走査方向Yに往復移動される。
【0017】
主走査方向の一端側には、ヘッド20の維持回復を行うメンテナンス装置60が配置されている。メンテナンス装置60は、ヘッド20のノズル面をキャッピングする吸引キャップ61と、ヘッド20のノズル面を保湿のためにキャッピングする保湿キャップ62と、ヘッド20のノズル面を払拭する払拭部材であるワイパ63を備えている。吸引キャップ61には吸引ポンプが接続されている。
【0018】
主走査方向の他端側には、吐出受け66が配置されている。印刷途中で、ヘッド20から吐出受け66に液体を吐出させることにより、ヘッド20の維持回復を行う。
【0019】
また、印刷装置1は、電源ボタン70、操作部71、電源ユニット72などを備えている。
【0020】
この印刷装置1において、Tシャツなどの布地(印刷対象)に印刷を行うときには、布地400をプラテン40上にセットする。その後、操作部71での操作により、スライダ42を介してプラテン40を装置内後方へ完全に引き込む動作を行う。
【0021】
プラテン40の引き込みが完了したとき、印刷データ待機状態となる。ここで、印刷装置1が外部の情報処理装置から印刷データを受信したときに印刷動作が開始される。あるいは、予めコントローラボード50に印刷データが蓄積されていた場合には、操作部71で当該印刷データを選択することによって印刷動作が開始される。
【0022】
印刷動作が開始されると、スライダ42を介してプラテン40が印刷開始位置まで移動される。その後、キャリッジ11F、11Gの移動とヘッド20からの液体吐出が行われて、1行分が印刷される。1行分が印刷されると、スライダ42を介してプラテン40が1行分移動される。キャリッジ11F、11Gの1スキャンとスライダ42の間欠移動の繰り返しを行うことにより、布地400の所望の領域に印刷が行われる。印刷完了後、プラテン40は装置手前まで戻されて印刷終了となる。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係るメンテナンス治具としてのヘッドキャップ装置(「ヘッドノズル面回復用治具」とも称する)について図3ないし図6を参照して説明する。図3は同ヘッドキャップ装置の斜視説明図、図4は同じく図3と異なる方向から見た斜視説明図、図5は同じくキャッピング状態でのキャップの正面説明図、図6は同ヘッドキャップ装置をキャリッジに装着する前後の状態の斜視説明図である。
【0024】
ヘッドキャップ装置600は、図5に示すように、キャリッジ11F、11Gに搭載されたヘッド20のノズル面20aをキャッピングする複数のキャップ601と、複数のキャップ601を保持するホルダ部材602とを備えている。図3図4では、ホルダ部材602は四つのキャップ601を保持する例を示している。
ヘッドキャップ装置600は、ヘッド20を保護するキャップ601を有する構成になっている。キャップ601の数はヘッド数と同数有しており、一つのヘッドキャップ装置600ですべてのヘッド20を保護することができる構成になっている。
【0025】
ホルダ部材602に備えられた複数のキャップ601は、キャッピング時に複数のキャップ601内が密閉される。
本実施形態では、複数のキャップ601の内の少なくとも1つのキャップ601は、図5に示すように、経路611を有し、経路611は封止部611aによって閉じられている。
つまり、本実施形態では、ヘッドキャップ装置600のキャップ構成は、前述した印刷装置1のメンテナンス装置60で備える吸引キャップ61及び保湿キャップ62と共通化している。
【0026】
このとき、吸引キャップ61に相当するキャップ601については、吸引手段に接続される経路611を封止部611aによって閉じることで、保湿キャップ62に相当するキャップ601と同様に、キャッピング時にキャップ601内が密閉されるようにしている。
言い換えれば、吸引キャップ61に相当するキャップ601の経路611を封止部611aによって閉じることで、ヘッドキャップ装置600のキャップを印刷装置1のメンテナンス装置60で備える吸引キャップ61及び保湿キャップ62と共通化できる。
【0027】
また、吸引キャップ61に相当するキャップ601については、吸引手段に接続される経路611を封止部611aによって閉じることで、保湿液を充填した場合でも経路611を通じて漏出することが防止される。
【0028】
複数のキャップ601は、2個ずつキャップホルダ(不図示)に保持されている。
ホルダ部材602は、キャップ並び方向の両端部に、キャリッジ11F、11Gの外装に設けられた係合部としての凸部121(図6参照))に着脱可能に装着する係合部としての引っ掛け部(爪部)621を備えている。ヘッドキャップ装置600の引っ掛け部621は、キャリッジ11F、11Gの凸部121に対して着装状態を保持可能に係合する。
【0029】
ホルダ部材602は、キャリッジ11F、11Gに装着するときの案内及び位置決め部となるガイド部622を四隅に備えている。
ホルダ部材602は、キャップ601の長手方向におけるキャップ601とノズル面20aとの位置関係を規制する位置決め部623を有している。位置決め部623は、キャップホルダに対して1つの割合で配置している。
さらに、ホルダ部材602内には、キャップホルダの下方側に液体を吸収する吸収部材(不図示)を配置している。
【0030】
次に、本実施形態のヘッドキャップ装置600によるメンテナンス方法(ヘッドキャッピング)について説明する。
図6は、(a)にヘッドキャップ装置をキャリッジに装着する前の状態例、(b)にヘッドキャップ装置をキャリッジに装着した後の状態例を示す。
【0031】
印刷装置1が故障などにより停止し、キャリッジ11F、11Gをメンテナンス装置60によるキャッピング位置(メンテナンス位置)まで移動できなくなる場合がある。この場合、ヘッド20のノズルはサービスマン等による修理などが終了するまで大気に晒されることになる。そのため、ノズル内のインクなどの液体の水分が蒸発することで、増粘し、更に進んで固着したりすることがある。
【0032】
そこで、図6(a)に示すように、途中で停止しているキャリッジ11F、11Gに対して、ヘッドキャップ装置600のガイド部622をキャリッジ11F、11Gの外装に合わせながら下方から持ち上げる。
【0033】
そして、図6(b)に示すように、ヘッドキャップ装置600の引っ掛け部621をキャリッジ11F、11Gの凸部121に係合させることで、ヘッドキャップ装置600はキャリッジ11F、11Gに装着される。
【0034】
キャップ601は、ヘッド20に取り付けられた際、図5のように、ヘッド20のノズル穴がある位置(ノズル面20a)をキャップする(密閉する)形状になっており、このような密封される構造により、ヘッド20は外気に触れることがなくなる。
【0035】
これにより、ヘッド20のノズル面20aは外気から遮断されるので、キャッピングしない場合よりも水分の蒸発が抑制され、ヘッドの乾燥、増粘、固着を防止または遅らせることができる。
【0036】
このように、メンテナンス手段(メンテナンス装置60)によるヘッド20のキャッピングを行えない場合、具体的には、キャリッジ11F、11Gがホームポジション(メンテナンス装置60と対向する位置)ではない場所で停止してしまった時でも、本実施形態に係るヘッドキャップ装置600を使用することで、手動でヘッド20のノズルの乾燥を抑制できるようになる。
【0037】
ここで、キャップ601は内部に洗浄液を充填することができる空間を有しており、ヘッドキャップ装置600のキャップ601でキャッピングするとき、キャップ601内に洗浄液などを含む保湿液を充填した状態でキャッピングすることで、ノズルを含むノズル面20aを保湿状態にすることができる。これにより、より確実に、水分の蒸発が抑制され、増粘、固着が防止される。
この場合、キャップ601でノズル面20aをキャッピングしたときに保湿液を兼ねる洗浄液がノズル面20aに接触するように充填した状態にすることで、ノズル面20aの洗浄を合わせて行うことができる。ヘッドキャップ装置600は、キャップ601内に洗浄液を満たしてノズル面20aをキャッピングする(ヘッドキャップ装置600を取り付けておく)ことで、ノズル面20aに固着したインクを融解する構成を有するものであり、ノズル面20aの回復に効果がある。
【0038】
上述したように、洗浄液を充填できるようにキャップ601の下穴には液が漏れないよう追加工が施されており(図5参照)、通常の維持に用いられるキャップのように外につながる穴は無いようになっている。
また、キャップ601内に充填した保湿液がキャッピング時にこぼれた場合でも、ホルダ部材602内に配置した吸収部材により吸収し、装置内を汚すことを防ぐことができる。
【0039】
ここで、印刷途中でキャリッジ11F、11Gが停止したような場合、キャリッジ11F、11Gはプラテン40と対向した位置にあり、キャリッジ11F、11Gにヘッドキャップ装置600を装着することが困難である。
そこで、このような場合には、ヘッドキャッピング方法として、まず、ヘッド20から液体を付与される付与対象を保持する部材としてのプラテン40を、ヘッド20に対向する位置からヘッド20に対向しない位置に移動させる工程を行う。
【0040】
その後、ヘッドキャップ装置600のホルダ部材602をキャリッジ11F、11Gに装着して、キャップ601によりヘッド20のノズル面20aをキャッピングする工程を行う。
このように、液体を付与される付与対象を保持する部材がキャリッジに対して移動可能であることで、ヘッドキャップ装置600によるキャッピング操作がし易くなる。
【0041】
次に、液体を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドが搭載されたキャリッジを複数備える液体を吐出する装置のメンテナンス方法について説明する。
図7は、キャリッジが二列ある印刷装置にヘッドキャップ装置を装着するメンテナンスの比較例を模式的に説明する斜視図である。本体側板68の間にキャリッジ11F、11Gが設置された構成例を示している。
図8は、同装置にヘッドキャップ装置を装着するメンテナンスの比較例を模式的に説明する側面図である。
【0042】
図7図8に示すように、メンテナンスを行う場合に、奥側のキャリッジ11Gにアクセスする際は手前側のキャリッジ11Fが作業の妨げとなる。
そこで、本発明の実施形態に係る液体を吐出する装置(印刷装置1)は、液体を吐出する複数のノズルを有する複数の液体吐出ヘッド(ヘッド20F、20G)と、複数の液体吐出ヘッドを搭載する複数のキャリッジ(キャリッジ11F、11G)と、を備える液体を吐出する装置であり、液体吐出ヘッドに取付け可能なメンテナンス治具(ヘッドキャップ装置600F、600G)を、液体吐出ヘッドに取り付けるときに、複数のキャリッジが、メンテナンス治具を取り付ける側から見て、互い違いの位置に待機する。( )内は図1、後述する図9の構成を一例として対応付けている。
【0043】
図9は、本発明の実施形態の液体を吐出する装置において、同装置にヘッドキャップ装置を装着するメンテナンス例を模式的に説明する斜視図である。
図1図9に示すように、液体を吐出する装置としての印刷装置1は、液体を吐出するためのノズルを備えたヘッド20F、20Gと、ヘッド20F、20Gを搭載するキャリッジ11F、11Gとを有し、ヘッド20F、20Gのノズルに固着したインクを融解するためのメンテナンス治具としてのヘッドキャップ装置600F、600Gをヘッド20F、20Gに取り付け可能である。
【0044】
また、印刷装置1は、ヘッドキャップ装置600F、600Gを取り付けるためのメンテナンスモードを有し、メンテナンスモードの際(メンテナンス治具取り付けの際)に、図9に示すように、前方(ヘッドキャップ装置600F、600Gを取り付ける側)から見て、キャリッジ11F、11Gが互い違いの位置に待機する。
【0045】
このようにすると、キャリッジが二列設けられた液体を吐出する装置において、装置が故障し動作停止状態になりヘッドの自動メンテナンス等が実行されない状態で放置する場合に際して、メンテナンス治具としてのヘッド乾燥固着防止用治具(ヘッドキャップ装置)を、キャリッジに容易に取り付けることが可能となり、操作性を改善できる。また、メンテナンス治具を取り付けるとノズルは外気と触れることはないため、ノズルの乾燥固着を防止または遅らせることが可能となり、マシンの故障に対しサービスマン到着までの間ヘッドを乾燥、固着が起きないよう保護できる。その結果、ヘッドの不良や交換のリスクを下げることができる。
【0046】
また、印刷装置1は、前方から見て互い違いに待機するキャリッジ11F、11Gの左右位置を切り替えられるモード(左右位置を切り替える手段)を有するとよい。このようにすると、利き腕からアクセスしやすいように、手前側装着時と奥側装着時でキャリッジ位置を切り替えることができる。
【0047】
メンテナンスモードは、故障が生じたときに、例えば、コントローラボード50により自動的に制御すること、または、ユーザが操作部71を介して指示すること、などに基づいて、移行できるようにするとよい。メンテナンスモードにおいて、印刷装置1は、例えば、複数のキャリッジ11F、11Gを、前方からみて、互い違いの位置に移動させる工程と、ヘッド20F、20Gに取付け可能なヘッドキャップ装置600F、600Gが、ヘッド20F、20Gに取り付けられるまで待機する工程と、を有するとよい。印刷装置1は、ヘッドキャップ装置600F、600Gがヘッド20F、20Gに取り付けられた後サービスマンが到着するまで、例えば、そのまま待機する、または、キャリッジ11F、11Gを所定の位置に移動させて待機する。
【0048】
また、待機するキャリッジ11F、11Gの左右位置を切り替えられるモードは、例えば、ユーザが操作部71を介して入力した指示に基づいて、切り替える手段が左右位置を切り替えるように構成するとよい。切り替える手段は、例えば、ユーザからの指示に基づいて、キャリッジ11F、11Gを移動させる駆動部を制御するように構成するとよい。左右位置を切り替えるモードは、例えば、上述の待機する工程において実施可能とするとよい。
【0049】
コントローラボード50において、制御手段(プログラム等)は、操作部71を介してユーザからメンテナンスモードまたは左右位置を切り替えるモードの指示が入力されると、指示に基づいて印刷装置1を制御するとよい。
【0050】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。また、上述した二以上の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
11F、11G キャリッジ
20、20F、20G ヘッド
600、600F、600G ヘッドキャップ装置(メンテナンス治具)
601 キャップ
602 ホルダ部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2021-146664号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9