(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180945
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】設置位置決定方法及び設置位置決定システム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20231214BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20231214BHJP
【FI】
H04W16/18
H04W16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094637
(22)【出願日】2022-06-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日 :2022年2月23日 ウェブサイトのアドレス :https://www.ieice.org/ken/program/ (https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=c78c47e63f5b7956c8e0c57ef3cb598eaea78cc6e50d217183af2380bc563f8a&tgid=IEICE-SRW) ミリ波セルラシステムにおけるカバレッジ拡張とブロッキングを考慮したAF中継局置局設計に関する検討 〔刊行物等〕 開催日:2022年3月4日(開催期間:2022年3月2日~2022年3月4日) 電子情報通信学会 無線通信システム研究会 オンライン開催 ウェブサイトのアドレス :https://www.ieice.org/ken/program/ (https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=c78c47e63f5b7956c8e0c57ef3cb598eaea78cc6e50d217183af2380bc563f8a&tgid=IEICE-SRW)
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】阪口 啓
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓海
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067EE06
5K067EE10
5K067HH22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基地局から端末までの距離が遠い場合、及び基地局から見通し外に端末がある場合にも、所定の品質で信号を伝搬できるように中継する中継局の設置位置を効率的に決定する。
【解決手段】基地局が所定品質で信号を送信できる基地局カバー領域を特定しS202、AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置それぞれにAF中継局を設置した場合にAF中継局が所定品質で信号を増幅させて中継することができるAF中継局カバー領域をそれぞれ特定しS204、基地局カバー領域と、AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせてS206、基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる1つの候補位置をAF中継局の設置位置として決定するS210。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局が送信する信号を増幅させて中継することができるAF中継局の設置位置を決定する設置位置決定方法において、
前記基地局が所定品質で信号を送信できる基地局カバー領域を特定する第1特定工程と、
AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置それぞれにAF中継局を設置した場合に、AF中継局が所定品質で信号を増幅させて中継することができるAF中継局カバー領域をそれぞれ特定する第2特定工程と、
前記基地局カバー領域と、前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる1つの前記候補位置をAF中継局の設置位置として決定する決定工程と、
前記基地局、及び決定した設置位置に設置されたAF中継局によって信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域と、決定した設置位置以外の前記第2特定工程により特定した前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる他の1つの前記候補位置をさらにAF中継局の設置位置として決定するように制御する制御工程と
を含むことを特徴とする設置位置決定方法。
【請求項2】
前記制御工程では、
前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬できない非カバー領域が、信号を伝搬すべき領域に対して所定割合以下になるまで、AF中継局の設置位置の決定を繰り返すように制御すること
を特徴とする請求項1に記載の設置位置決定方法。
【請求項3】
前記制御工程では、
前記基地局が送信した信号を移動可能な端末まで伝搬する伝搬路が少なくとも2つ以上になるまで、AF中継局の設置位置の決定を繰り返すように制御すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の設置位置決定方法。
【請求項4】
前記基地局が送信する信号をAF中継局が所定の閾値以上の品質で増幅させて中継することが可能な位置を、AF中継局を設置可能な複数の位置の中から前記候補位置として選択する選択工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の設置位置決定方法。
【請求項5】
基地局が送信する信号を増幅させて中継することができるAF中継局の設置位置を決定する設置位置決定システムにおいて、
前記基地局が所定品質で信号を送信できる基地局カバー領域を特定する第1特定部と、
AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置それぞれにAF中継局を設置した場合に、AF中継局が所定品質で信号を増幅させて中継することができるAF中継局カバー領域をそれぞれ特定する第2特定部と、
前記基地局カバー領域と、前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる1つの前記候補位置をAF中継局の設置位置として決定する決定部と、
前記基地局、及び前記決定部が決定した設置位置に設置されたAF中継局によって信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域と、前記決定部が決定した設置位置以外の前記第2特定部が特定した前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる他の1つの前記候補位置をさらにAF中継局の設置位置として決定するように前記決定部を制御する制御部と
を有することを特徴とする設置位置決定システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬できない非カバー領域が、信号を伝搬すべき領域に対して所定割合以下になるまで、AF中継局の設置位置の決定を前記決定部が繰り返すように制御すること
を特徴とする請求項5に記載の設置位置決定システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記基地局が送信した信号を移動可能な端末まで伝搬する伝搬路が少なくとも2つ以上になるまで、AF中継局の設置位置の決定を前記決定部が繰り返すように制御すること
を特徴とする請求項5又は6に記載の設置位置決定システム。
【請求項8】
前記基地局が送信する信号をAF中継局が所定の閾値以上の品質で増幅させて中継することが可能な位置を、AF中継局を設置可能な複数の位置の中から前記候補位置として選択する選択部
をさらに有することを特徴とする請求項5又は6に記載の設置位置決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う基地局が送信する信号を増幅させて中継することができる中継局の設置位置決定方法及び設置位置決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯などの高周波数帯を用いた無線通信では、広帯域で大容量の通信を実現することができるが、低周波数帯を用いる無線通信よりも伝搬損失が高くなっている。
【0003】
高周波数帯を用いた無線通信では、基地局から遠い位置にある端末(ユーザ端末)に対して十分な通信品質を確保することが困難になることがある。また、高周波数帯を用いた無線通信では、ブロッキングによる影響が大きく、基地局から見通し外の端末に対する無線通信の確立が困難になることがある。
【0004】
例えば、都市部など建物が多く存在する場合や、複雑な路地が存在する環境では、十分な通信品質を確保できるように基地局を配置しようとすると、膨大な数の基地局が必要となってしまう。このような場合、中継局を効率的に配置することが望ましい。
【0005】
従来より、無線通信の品質を確保するために基地局の配置を検討する置局方法はいくつか知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、中継局を対象とする置局方法の検討はあまり多くない。例えば、基地局から中継局までの距離に基づいて、通信容量を最大化するように中継局を配置する方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】福永慧、外2名、「都市部の基地局機能停止時におけるUAV空中基地局を用いた代替ネットワーク展開手法の検討」、情報処理学会第81回全国大会、2019年、5V-06、p.3-69~3-70
【非特許文献2】Weisi Guo and Tim O’Farrell, "Relay Deployment in Cellular Networks: Planning and Optimization", IEEE JOURNAL ON SELECTED AREAS IN COMMUNICATIONS, VOL. 31, NO. 8, AUGUST 2013, p.1597-1606
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の中継局の置局方法は、環境に存在するオブジェクトを考慮しておらず、遮蔽による影響も考慮されていない。なお、本願にかかる中継局は、変復調の機能を持たず、増幅機能を備えて、受信信号を増幅して送信し、遅延を最小限にするAF(Amplify-and-Forward)方式の中継局(以下、AF中継局とする)であるとする。
【0008】
本発明は、基地局から端末までの距離が遠い場合、及び基地局から見通し外に端末がある場合にも、所定の品質で信号を伝搬できるように中継する中継局の設置位置を効率的に決定することができる設置位置決定方法及び設置位置決定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様にかかる設置位置決定方法は、基地局が送信する信号を増幅させて中継することができるAF中継局の設置位置を決定する設置位置決定方法において、前記基地局が所定品質で信号を送信できる基地局カバー領域を特定する第1特定工程と、AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置それぞれにAF中継局を設置した場合に、AF中継局が所定品質で信号を増幅させて中継することができるAF中継局カバー領域をそれぞれ特定する第2特定工程と、前記基地局カバー領域と、前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる1つの前記候補位置をAF中継局の設置位置として決定する決定工程と、前記基地局、及び決定した設置位置に設置されたAF中継局によって信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域と、決定した設置位置以外の前記第2特定工程により特定した前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる他の1つの前記候補位置をさらにAF中継局の設置位置として決定するように制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様にかかる設置位置決定システムは、基地局が送信する信号を増幅させて中継することができるAF中継局の設置位置を決定する設置位置決定システムにおいて、前記基地局が所定品質で信号を送信できる基地局カバー領域を特定する第1特定部と、AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置それぞれにAF中継局を設置した場合に、AF中継局が所定品質で信号を増幅させて中継することができるAF中継局カバー領域をそれぞれ特定する第2特定部と、前記基地局カバー領域と、前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる1つの前記候補位置をAF中継局の設置位置として決定する決定部と、前記基地局、及び前記決定部が決定した設置位置に設置されたAF中継局によって信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域と、前記決定部が決定した設置位置以外の前記第2特定部が特定した前記AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、前記基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる他の1つの前記候補位置をさらにAF中継局の設置位置として決定するように前記決定部を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基地局から端末までの距離が遠い場合、及び基地局から見通し外に端末がある場合にも、所定の品質で信号を伝搬できるように中継する中継局の設置位置を効率的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態にかかる設置位置決定システムが行う処理を概念的に示す概念図である。
【
図2】一実施形態にかかる設置位置決定システムが有する機能を例示する機能ブロック図である。
【
図3】一実施形態にかかる設置位置決定システムが1つのAF中継局の位置を決定するために行う処理例を示す図である。
【
図4】一実施形態にかかる設置位置決定システムが複数のAF中継局の設置位置を決定するために行う処理例を示す図である。
【
図5】一実施形態にかかる設置位置決定システムのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を用いて一実施形態にかかる設置位置決定システムについて説明する。
図1は、一実施形態にかかる設置位置決定システムが行う処理を概念的に示す概念図である。
【0014】
なお、一実施形態にかかる設置位置決定システムは、変復調の機能を持たず、増幅機能を備えて、例えば基地局が送信するミリ波の信号を受信して増幅し、遅延を最小限にして送信(中継)するAF(Amplify-and-Forward)方式の中継局(AF中継局)の設置位置を決定するシステムであるとする。
【0015】
AF中継局は、低コスト・低遅延・低消費電力で,小型化が可能な例えばアナログRS(Relay Station)などの中継局である。例えば、アナログRSは、受信側と送信側の2つの面を持っており、それぞれの面が多素子アンテナを用いて高性能な動的ビーム制御が可能であるように構成されている。
【0016】
そして、一実施形態にかかる設置位置決定システムは、例えば基地局及びAF中継局により所定の品質で信号を伝搬できるカバー領域(カバレッジ)の拡張と、ブロッキング対策を目的として、AF中継局の設置位置を効率的に決定するように構成されている。
【0017】
まず、設置位置決定システムは、複数の建物100の間に道路200がある環境を把握するために例えば3Dマップ(エリアマップ)を作成し、電波伝搬解析ツールを用いてレイトレーシング法などにより基地局のみが電波の伝搬をカバーするエリア(基地局カバー領域)を特定する(1)。
【0018】
基地局カバー領域は、例えば電波の伝搬状況(電波強度、SNR、通信容量など通信品質情報を含む)を色分けするカラーマップによって示される。
【0019】
次に、設置位置決定システムは、AF中継局を設置可能なある場所にAF中継局を設置したとき、AF中継局ごとに新たにカバーされる各エリア(各AF中継局カバー領域)をそれぞれ特定する(2)。
【0020】
例えば、AF中継局を設置可能な場所それぞれに受信装置を配置して、各AF中継局カバー領域を特定するようにしてもよい。
【0021】
このとき、設置位置決定システムは、AF中継局を設置可能な位置に制限があるため、AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置を削減して限定するように選択(抽出)する。
【0022】
各AF中継局カバー領域も、それぞれ例えば電波の伝搬状況(電波強度、SNR、通信容量など通信品質情報を含む)を色分けするカラーマップによって示される。
【0023】
そして、設置位置決定システムは、基地局カバー領域と、各AF中継局カバー領域とを順次個別に重ね合わせ(3)、基地局とAF中継局によって新たにカバーされる各エリア(カバー領域)を複数のカラーマップ(カバレッジカラーマップ)によって示す(4)。
【0024】
次に、設置位置決定システムは、基地局とAF中継局によって新たにカバーされる複数のエリア(カバー領域)の中から、端末による受信電力が所定の閾値以下となるエリアを最小化するAF中継局の位置を1つ選択し、1つ目のAF中継局の設置位置として決定する(5)。
【0025】
そして、設置位置決定システムは、端末による受信電力が所定の閾値以下となるエリアが、信号を伝搬すべき領域に対して所定の割合以下になるまでAF中継局の追加(設置位置の決定)を繰り返す(6)。
【0026】
このとき、設置位置決定システムは、AF中継局の設置位置に送信装置を配置して、2つ目以降のAF中継局カバー領域を特定するようにしてもよい。
【0027】
具体的には、基地局と選択済のAF中継局のエリアの重ね合わせ(7)と、他のAF中継局により新たにカバーされるエリア(8)とをさらに重ね合わせて、基地局と複数のAF中継局によってカバーされるエリア(カバー領域)をカラーマップ(カバレッジカラーマップ)によって示す。
【0028】
次に、設置位置決定システムが有する機能について、より具体的に説明する。
図2は、一実施形態にかかる設置位置決定システムが有する機能を例示する機能ブロック図である。
図2に示すように、設置位置決定システムは、例えば第1特定部10、選択部12、第2特定部14、決定部16、及び制御部18を有する。
【0029】
第1特定部10は、基地局及び環境情報(建物や道路を含むエリアマップなど)を取得して、基地局が所定品質で信号を送信できる基地局カバー領域を特定し、特定した結果を第2特定部14及び決定部16に対して出力する。
【0030】
選択部12は、例えばAF中継局を設置可能な複数の位置(ビルの屋上など)を示す情報を取得する。そして、選択部12は、基地局が送信する信号をAF中継局が所定の閾値以上の品質で増幅させて中継することが可能な位置を、AF中継局を設置可能な複数の位置の中から、AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置として選択(抽出)し、選択した結果を第2特定部14に対して出力する。
【0031】
第2特定部14は、AF中継局の設置位置の候補となる複数の候補位置それぞれにAF中継局を設置した場合に、AF中継局が所定品質で信号を増幅させて中継することができるAF中継局カバー領域をそれぞれ特定し、特定した結果を決定部16に対して出力する。
【0032】
決定部16は、基地局カバー領域と、AF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる1つの候補位置をAF中継局の設置位置として決定し、決定した結果を制御部18に対して出力する。
【0033】
制御部18は、基地局、及び決定部16が決定した設置位置に設置されたAF中継局によって信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域と、決定部16が決定した設置位置以外の第2特定部14が特定したAF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる他の1つの候補位置をさらにAF中継局の設置位置として決定するように決定部16を制御する。
【0034】
また、制御部18は、基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬できない非カバー領域が、信号を伝搬すべき領域に対して所定割合以下になるまで、AF中継局の設置位置の決定を決定部16が繰り返すように制御する。
【0035】
また、制御部18は、基地局が送信した信号を移動可能な端末まで伝搬する伝搬路が少なくとも2つ以上になるまで、AF中継局の設置位置の決定を決定部16が繰り返すように制御してもよい。
【0036】
次に、設置位置決定システムが行う処理について説明する。
図3は、一実施形態にかかる設置位置決定システムが1つのAF中継局の位置を決定するために行う処理例を示す図である。
【0037】
ステップ100(S100)において、設置位置決定システムは、AF中継局の設置位置を決定する対象となるエリアのエリアマップを設定する。例えば、エリアマップは、例えば対象エリアの地形、地図、構造物を含む三次元データなどである。
【0038】
ステップ102(S102)において、設置位置決定システムは、通信パラメータを設定する。例えば、通信パラメータは、無線通信システムを構成する基地局、AF中継局、及び端末のパラメータ(送信電力、アンテナ、アンプ増幅率、その他の計算に必要な情報)と、無線通信システムのパラメータ(周波数、その他の計算に必要な情報)などである。
【0039】
ステップ104(S104)において、設置位置決定システムは、基地局の位置(三次元座標など)を設定する。
【0040】
ステップ106(S106)において、設置位置決定システムは、エリアマップの設定値、及び通信パラメータの設定値を用いて基地局がカバーするエリアの通信品質を算出して、基地局カバー領域を算出する。通信品質は、例えば受信電力、スループット、キャパシティ、遅延、誤り率、その他の通信品質の評価に用いる値によって示される。
【0041】
ステップ108(S108)において、設置位置決定システムは、AF中継局の複数の候補位置(三次元座標など)を設定する。
【0042】
ステップ110(S110)において、設置位置決定システムは、複数の候補位置それぞれにAF中継局を配置したときに、AF中継局がそれぞれカバーするエリアの通信品質を算出して、AF中継局カバー領域をそれぞれ算出する。
【0043】
ステップ112(S112)において、設置位置決定システムは、基地局及びAF中継局によるカバー領域の情報を用いて、AF中継局の設置位置を決定する。
【0044】
図4は、一実施形態にかかる設置位置決定システムが複数のAF中継局の設置位置を決定するために行う処理例を示す図である。ここでは、設置位置決定システムは、ブロッキング対策のために、基地局から端末まで複数(例えば2つ)の伝搬路を確保するようにAF中継局の設置位置を決定する。
【0045】
ステップ200(S200)において、設置位置決定システムは、基地局から端末への伝搬路の数nを1に設定する。
【0046】
ステップ202(S202)において、設置位置決定システムは、基地局のカバレッジカラーマップを取得する。
【0047】
ステップ204(S204)において、設置位置決定システムは、各AF中継局のカバレッジカラーマップを取得する。
【0048】
ステップ206(S206)において、設置位置決定システムは、各AF中継局のカバレッジカラーマップ(カラーマップ)を重ね合わせる。
【0049】
ステップ208(S208)において、設置位置決定システムは、1つのAF中継局の位置を選択する。
【0050】
ステップ210(S210)において、設置位置決定システムは、選択したAF中継局の位置を、AF中継局の設置位置として決定する。
【0051】
ステップ212(S212)において、設置位置決定システムは、基地局と、決定した設置位置に設置されるAF中継局とにより、基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬できない非カバー領域が、信号を伝搬すべき領域に対して所定割合(例えば2%)以下であるか否かを判定する。設置位置決定システムは、所定割合以下であると判定した場合(S212:Yes)にはS216の処理に進み、所定割合以下でないと判定した場合(S212:No)にはS214の処理に進む。
【0052】
ステップ214(S214)において、設置位置決定システムは、選択したAF中継局の位置を候補位置から除外し、S206の処理に戻る。
【0053】
ステップ216(S216)において、設置位置決定システムは、基地局から端末への伝搬路の数n=2であるか否かを判定し、n=2である場合(S216:Yes)には処理を終了し、n=2でない場合(S216:No)にはS218の処理に進む。
【0054】
ステップ218(S218)において、設置位置決定システムは、2つの伝搬路によって電波が伝搬されるカバー領域となっていないエリアをカラーマップによって可視化する。
【0055】
ステップ220(S220)において、設置位置決定システムは、基地局から端末への伝搬路の数nをn+1に置き換えて、S204の処理に戻る。
【0056】
つまり、設置位置決定システムは、瞬間的な物体遮蔽を回避するため、AF中継局を配置して複数(n経路)の伝搬路(通信経路)を形成するようにAF中継局の設置位置を決定する。
【0057】
したがって、設置位置決定システムは、
図3に示した処理をn回繰り返すよりも効率的に、基地局から端末まで複数の伝搬路を形成するようにAF中継局の設置位置を決定することができる。
【0058】
このように、一実施形態にかかる設置位置決定システムは、基地局、及び決定した設置位置に設置されたAF中継局によるカバー領域と、決定した設置位置以外のAF中継局カバー領域それぞれとを個別に重ね合わせて、基地局が送信した信号を所定の品質で伝搬可能なカバー領域が最大となる他の1つの候補位置をさらにAF中継局の設置位置として決定するので、基地局から端末までの距離が遠い場合、及び基地局から見通し外に端末がある場合にも、所定の品質で信号を伝搬できるように中継する中継局の設置位置を効率的に決定することができる。
【0059】
なお、設置位置決定システムが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0060】
例えば、本発明にかかる設置位置決定システムは、1つ又は複数のコンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0061】
図5は、一実施形態にかかる設置位置決定システムのハードウェア構成例を示す図である。
図5に示すように、例えば設置位置決定システムは、入力部50、出力部51、通信部52、CPU53、メモリ54及びHDD55がバス56を介して接続され、コンピュータとしての機能を備える。また、設置位置決定システムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体57との間でデータを入出力することができるようにされている。
【0062】
入力部50は、例えばキーボード及びマウス等である。出力部51は、例えばディスプレイなどの表示装置である。通信部52は、例えば無線のネットワークインターフェースである。
【0063】
CPU53は、設置位置決定システムを構成する各部を制御し、所定の処理等を行う。メモリ54及びHDD55は、データ等を記憶する上述の記憶部30に対応する。記憶媒体57は、設置位置決定システムが有する機能を実行させるプログラム等を記憶可能にされている。なお、設置位置決定システムを構成するアーキテクチャは
図5に示した例に限定されない。
【符号の説明】
【0064】
10・・・第1特定部、12・・・選択部、14・・・第2特定部、16・・・決定部、18・・・制御部、50・・・入力部、51・・・出力部、52・・・通信部、53・・・CPU、54・・・メモリ、55・・・HDD、56・・・バス、57・・・記憶媒体