(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180963
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】耐熱装置、アタッチメント装置、宇宙機及び展開制御方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/62 20060101AFI20231214BHJP
B64G 1/58 20060101ALI20231214BHJP
B64G 1/64 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B64G1/62
B64G1/58
B64G1/64 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094663
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲西 俊之
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 功
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宏
(57)【要約】
【課題】積載物を搭載する宇宙機であっても、大気圏の再突入時において熱的負荷を軽減し、宇宙機を回収する。
【解決手段】積載物を搭載すると共に宇宙空間に投入される宇宙機に設けられ、積載物の宇宙機からの切り離し後、宇宙機の大気圏への再突入時に展開される耐熱装置であって、宇宙機は、宇宙機本体と積載物とを接続するアタッチメントを有し、アタッチメントは、積載物側の中心に開口部が設けられた筒形状となっており、展開時において開口部から突出して、宇宙機の先端となる突出位置に位置する先端部材と、先端部材に接続し、展開時において突出位置に位置する先端部材とアタッチメントとの間の隙間を被覆する被覆部と、展開前において先端部材及び被覆部をアタッチメント内部に収容する収容位置から、展開後において先端部材及び被覆部を開口部から突出させる突出位置へ突出させる突出機構と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物を搭載すると共に宇宙空間に投入される宇宙機に設けられ、前記積載物の前記宇宙機からの切り離し後、前記宇宙機の大気圏への再突入時に展開される耐熱装置であって、
前記宇宙機は、宇宙機本体と前記積載物とを接続するアタッチメントを有し、
前記アタッチメントは、前記積載物側の中心に開口部が設けられた筒形状となっており、
展開時において前記開口部から突出して、前記宇宙機の先端となる突出位置に位置する先端部材と、
前記先端部材に接続し、展開時において前記突出位置に位置する前記先端部材と前記アタッチメントとの間の隙間を被覆する被覆部と、
展開前において前記先端部材及び前記被覆部を前記アタッチメント内部に収容する収容位置から、展開後において前記先端部材及び前記被覆部を前記開口部から突出させる前記突出位置へ突出させる突出機構と、を備える耐熱装置。
【請求項2】
前記先端部材は、前記積載物側に凸となる曲面形状となっている請求項1に記載の耐熱装置。
【請求項3】
前記突出機構は、前記先端部材と前記アタッチメントとの間に設けられ、
前記先端部材は、前記アタッチメント内部の空中に保持されている請求項1に記載の耐熱装置。
【請求項4】
前記突出機構は、
前記先端部材と前記アタッチメントとを接続すると共に、前記突出位置側に付勢するリンク部と、
前記リンク部による付勢に抗して、前記先端部材を前記収容位置に係止する係止部と、
前記係止部による係止を解除する係止解除部と、を有する請求項1に記載の耐熱装置。
【請求項5】
前記被覆部は、前記先端部材側に設けられ、展開時において前記先端部材側から前記アタッチメント側に反転する反転板材を有する請求項1に記載の耐熱装置。
【請求項6】
前記反転板材は、展開後において、前記先端部材側から前記アタッチメント側に向かって流れる気流の流れ方向の上流側の端部が、前記先端部材の内側に位置し、流れ方向の下流側の端部が、前記アタッチメントの外側に位置する請求項5に記載の耐熱装置。
【請求項7】
前記反転板材は、前記先端部材と前記アタッチメントとの間に形成される隙間に沿って複数並べて配置され、
前記被覆部は、隣接する前記反転板材の間の隙間を被覆する可撓性の可撓部材を、さらに有する請求項5に記載の耐熱装置。
【請求項8】
前記反転板材は、
前記先端部材と前記アタッチメントとの間に形成される隙間に沿って複数並べて配置される第1の反転板材と、
隣接する前記第1の反転板材の間に配置される複数の第2の反転板材と、を有する請求項5に記載の耐熱装置。
【請求項9】
前記第1の反転板材と前記第2の反転板材との重複部位は、篏合することで形成されるラビリンスシールとなっている請求項8に記載の耐熱装置。
【請求項10】
前記被覆部は、
前記第1の反転板材及び前記第2の反転板材を反転させる作動部を、さらに有し、
前記作動部は、
駆動源となるモータと、
前記モータと前記第1の反転板材とを連結する第1の作動ワイヤと、
前記モータと前記第2の反転板材とを連結する第2の作動ワイヤと、
前記モータの正回転時において前記第1の作動ワイヤを巻き取る第1の巻取り機構と、
前記モータの逆回転時において前記第2の作動ワイヤを巻き取る第2の巻取り機構と、を含む請求項8に記載の耐熱装置。
【請求項11】
前記被覆部による前記先端部材と前記アタッチメントとの間の隙間の被覆を検出する被覆検出センサと、
前記被覆検出センサが接続される制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記積載物の切り離し後、前記突出機構を作動させる作動信号を出力し、前記被覆検出センサから検出信号が入力されたら、展開完了と判定する請求項1に記載の耐熱装置。
【請求項12】
宇宙機本体と積載物とを接続するアタッチメントと、
前記アタッチメントに設けられる請求項1から11のいずれか1項に記載の耐熱装置と、を備えるアタッチメント装置。
【請求項13】
積載物を搭載する宇宙機本体と、
前記宇宙機本体と前記積載物とを接続するアタッチメントと、
請求項1から11のいずれか1項に記載の耐熱装置と、を備える宇宙機。
【請求項14】
請求項11に記載の耐熱装置に、
前記積載物の切り離し後、前記突出機構を作動させる作動信号を出力するステップと、
前記作動信号の出力後、前記被覆検出センサから検出信号が入力されたか否かを判定するステップと、
前記被覆検出センサから検出信号が入力された場合、展開が完了したと判定するステップと、を実行させる展開制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐熱装置、アタッチメント装置、宇宙機及び展開制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圏に再突入して回収される宇宙機として、カプセルカバーを備えた自律回収型宇宙機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この宇宙機は、カプセルカバーが設けられ、宇宙空間の投入後においても、カプセルカバーが設けられた状態となっている。このため、宇宙機が大気圏に再突入する場合であっても、カプセルカバーにより宇宙機の耐熱性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、宇宙機としては、衛星等の積載物を搭載する多段ロケットがある。このような宇宙機では、衛星を宇宙空間に投入すべく、ロケット先端を覆うフェアリングを衛星の切り離し前に分離させる。このため、衛星を切り離した後の宇宙機にはフェアリングがないことから、宇宙機は、大気圏の再突入時に発生する熱的負荷に耐えることができず、宇宙機を大気圏に再突入させることは困難であった。
【0005】
そこで、本開示は、積載物を搭載する宇宙機であっても、大気圏の再突入時において熱的負荷を軽減し、宇宙機を回収することができる耐熱装置、アタッチメント装置、宇宙機及び展開制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の耐熱装置は、積載物を搭載すると共に宇宙空間に投入される宇宙機に設けられ、前記積載物の前記宇宙機からの切り離し後、前記宇宙機の大気圏への再突入時に展開される耐熱装置であって、前記宇宙機は、宇宙機本体と前記積載物とを接続するアタッチメントを有し、前記アタッチメントは、前記積載物側の中心に開口部が設けられた筒形状となっており、展開時において前記開口部から突出して、前記宇宙機の先端となる突出位置に位置する先端部材と、前記先端部材に接続し、展開時において前記突出位置に位置する前記先端部材と前記アタッチメントとの間の隙間を被覆する被覆部と、展開前において前記先端部材及び前記被覆部を前記アタッチメント内部に収容する収容位置から、展開後において前記先端部材及び前記被覆部を前記開口部から突出させる前記突出位置へ突出させる突出機構と、を備える。
【0007】
本開示のアタッチメント装置は、宇宙機本体と積載物とを接続するアタッチメントと、前記アタッチメントに設けられる上記の耐熱装置と、を備える。
【0008】
本開示の宇宙機は、積載物を搭載する宇宙機本体と、前記宇宙機本体と前記積載物とを接続するアタッチメントと、上記の耐熱装置と、を備える。
【0009】
本開示の展開制御方法は、上記の耐熱装置に、前記積載物の切り離し後、前記突出機構を作動させる作動信号を出力するステップと、前記作動信号の出力後、前記被覆検出センサから検出信号が入力されたか否かを判定するステップと、前記被覆検出センサから検出信号が入力された場合、展開が完了したと判定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、積載物を搭載する宇宙機であっても、大気圏の再突入時において熱的負荷を軽減し、宇宙機を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る宇宙機を示した図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る耐熱装置を模式的に示した図である。
【
図3】
図3は、耐熱装置を下方側から見たときの説明図である。
【
図4】
図4は、被覆部の動作に関する説明図である。
【
図6】
図6は、耐熱装置の動作の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、耐熱装置の動作の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、耐熱装置の動作の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る耐熱装置の被覆部の動作に関する説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態3に係るアタッチメント装置を模式的に示した図である。
【
図12】
図12は、実施形態4に係る耐熱装置の被覆部の動作に関する説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態5に係る耐熱装置の被覆部の一例を示す上面図である。
【
図14】
図14は、耐熱装置を下方側から見たときの説明図である。
【
図15】
図15は、耐熱装置の反転板材の一例の斜視図である。
【
図16】
図16は、耐熱装置の反転板材の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0013】
[実施形態1]
本開示の宇宙機1は、大気圏に再突入する宇宙機となっており、例えば、多段ロケットの上段の(2段目の)ロケット(以下、ロケット1という)である。ロケット1は、積載物Pを搭載しており、積載物Pとして、例えば、衛星または補給器等が適用される。多段ロケットは、先端に設けられるフェアリングが、打ち上げ時において分離する。このため、ロケット1は、フェアリングがない状態で、宇宙空間を航行し、この後、大気圏に再突入する。
【0014】
図1は、実施形態1に係る宇宙機を示した図である。
図2は、実施形態1に係る耐熱装置を模式的に示した図である。
図3は、耐熱装置を下方側から見たときの説明図である。
図4は、被覆部の動作に関する説明図である。
図5は、被覆部の一例を示す上面図である。
図6から
図8は、耐熱装置の動作の一例を示す説明図である。
図1を参照して、宇宙機について説明する。
【0015】
(宇宙機)
宇宙機としてのロケット1は、宇宙空間に投入される。
図1に示すように、ロケット1は、ロケット本体3と、積載物支持部(PSS:Payload Support Structure)21(以下、PSS21という)と、積載物分離部(PAF:Payload Attachment Fitting)22(以下、PAF22という)と、耐熱装置23と、を備えている。
【0016】
ロケット本体3は、フレーム5と、フレーム5の一方側(
図1の上方側)に支持される燃料タンク6と、フレーム5の他方側(
図1の下方側)に支持される酸化剤タンク7と、燃料を燃焼させて推進力を発生させるロケットエンジン8と、気蓄器10とを備えている。気蓄器10は、蓄圧した作動ガスを、燃料タンク6及び酸化剤タンク7へ向けて供給可能となっている。
【0017】
燃料タンク6は、例えば、燃料として液体水素を溜める液体水素タンクとなっており、円筒形状に形成されている。燃料タンク6は、気蓄器10から作動ガスが供給されることで、ロケットエンジン8へ向けて液体水素を供給可能となっている。酸化剤タンク7は、例えば、酸化剤として液体酸素を溜める液体酸素タンクとなっており、円筒形状に形成されている。酸化剤タンク7は、気蓄器10から作動ガスが供給されることで、ロケットエンジン8へ向けて液体酸素を供給可能となっている。
【0018】
ロケットエンジン8は、酸化剤タンク7の他方側、つまり、酸化剤タンク7を挟んで、燃料タンク6の反対側に設けられている。ロケットエンジン8は、燃料タンク6から供給された液体水素及び酸化剤タンク7から供給された液体酸素を混合して燃焼させることで、推進力を発生させる。
【0019】
PSS21は、積載物Pを支持する支持体であり、燃料タンク6の一方側に設けられる。PSS21は、ロケット本体3側から積載物P側に向かって先細りする円筒形状に形成されている。PSS21は、その内部が中空空間となっている。PSS21は、他方側がロケット本体3に固定され、一方側にPAF22が接続される。
【0020】
PAF(アタッチメント)22は、積載物Pを分離する機能を有し、PSS21の一方側に設けられる。PAF22は、PSS21に接続される他方側の端部が、PSS21の一方側の端部と同じ大きさとなっている。PAF22は、PSS21側から積載物P側に向かって先細りする円筒形状に形成されている。PAF22は、その外周面が、PSS21の外周面と連なっている。また、PAF22には、一方側の端部において、中心に円形状の開口部が設けられている。この開口部を通じて、後述する耐熱装置23の先端部材31が突出する。PAF22は、その内部が中空空間となっている。PAF22は、他方側がPSS21に固定され、一方側に積載物Pが分離可能に搭載される。
【0021】
(耐熱装置)
次に、
図2から
図5を参照して、耐熱装置23について説明する。耐熱装置23は、PSS21及びPAF22の内部に収容されており、ロケット1の大気圏への再突入時に展開される装置となっている。耐熱装置23は、先端部材31と、突出機構32と、被覆部33と、被覆検出センサ34と、制御部35と、を備えている。
【0022】
先端部材31は、展開時においてPAF22の開口部から突出して、ロケット1の先端となる部材である。先端部材31は、平面視円形状に形成されており、積載物側に凸となる曲面形状となっている。先端部材31は、単一の材料からなる継目のない部品となっており、外面が連続する面となっている。先端部材31は、例えば、耐熱性を有する材料が用いられ、セラミックス、CMC(Ceramic Matrix Composites)、PICA(Phenolic Impregnated Carbon Ablators)等が適用される。先端部材31は、展開前において、PSS21及びPAF22の内部に収容された位置が収容位置となっている。一方で、先端部材31は、展開後において、PAF22の開口部から突出した位置が突出位置となっている。先端部材31および後述する被覆部33は、収容位置において一方側からの平面視でPAF22の開口部より小さい。
【0023】
突出機構32は、先端部材31を収容位置から突出位置へ突出させる機構となっている。突出機構32は、PSS21及びPAF22の内部に設けられ、先端部材31とPAF22及びPAF22の内面との間に設けられる。つまり、突出機構32は、PAF22及びPAF22に接続される部分を固定点として、先端部材31を突出させる。突出機構32は、展開前において、PSS21及びPAF22の内部に先端部材31を収容位置に空中で保持している。
【0024】
突出機構32は、リンク部41と、係止部42と、係止解除部43とを有している。リンク部41は、
図3に示すように、先端部材31の周方向に沿って所定の間隔を空けて複数並べて設けられる。リンク部41は、先端部材31とPAF22とを接続するリンク機構41aと、リンク機構41aを付勢する付勢部材41bとを含んでいる。リンク機構41aは、一端が先端部材31に回動可能に接続され、他端がPAF22に回動可能に接続される。リンク機構41aは、付勢部材41bの付勢により先端部材31を突出位置へ移動させ、図示しないラッチ等により、先端部材31を突出位置に固定する。付勢部材41bは、例えば、圧縮バネであり、リンク機構41aとPAF22の内周面とを接続している。付勢部材41bは、収縮により先端部材31を突出位置側に移動させるようリンク機構41aを付勢している。係止部42は、付勢部材41bによる付勢に抗して、先端部材31が収容位置となるようリンク機構41aを係止している。係止部42は、例えば、テンションワイヤ42aであり、テンションワイヤ42aによりリンク機構41aを収容位置側に規制している。つまり、テンションワイヤ42aは、圧縮バネを伸長させることで、先端部材31を収容位置に位置させている。また、
図3に示すように、テンションワイヤ42aは、周方向に並んだ複数のリンク部41のリンク機構41aを束ねるテンションワイヤと、リンク機構41aを収容位置側に規制するテンションワイヤとを含んでいる。係止解除部43は、係止部42によるリンク部41に対する係止を解除する。係止解除部43は、テンションワイヤ42aをカットする装置である。係止解除部43は、例えば、電熱によりワイヤをカットする装置、ピンプラーを解放することにより係止を解除する装置、火工品によりワイヤをカットする装置等が適用される。また、係止解除部43は、制御部35に接続されており、制御部35から出力される作動信号に基づいて、係止解除(ワイヤカット)動作を実行する。
【0025】
突出機構32は、制御部35から作動信号が入力されると、係止部42の係止を、係止解除部43によって解除する。これにより、突出機構32は、係止部42による先端部材31の収容位置への位置規制が解除され、リンク部41の付勢によって、先端部材31を突出位置へ移動させる。
【0026】
被覆部33は、先端部材31が突出位置へ移動した後に展開され、突出位置に位置する先端部材31とPAF22との間の隙間を被覆する。
図4及び
図5に示すように、被覆部33は、反転板材51と、可撓部材52とを有している。反転板材51は、先端部材31とPAF22との間の隙間に沿って複数並べて配置されている。反転板材51は、先端部材31からPAF22へ向かって延びる板形状となっており、隙間を塞ぐように外周に倣った湾曲形状となっている。反転板材51は、先端部材31の外周縁部にヒンジ53を介して接続されている。反転板材51は、展開前後において表裏が反転するように移動する。反転板材51は、反転前において、先端部材31と重ね合わされた状態となっている。つまり、反転板材51の表面が先端部材31の外面と対向する位置となっており、また、反転板材51の裏面が外部に露出した状態となっている。
図4に示すように、反転前において、先端部材31及びこれと重ね合わされた反転板材51は、一方側からの平面視でPAF22の開口部より小さいため、PAF22の開口部から突出位置へ移動することができる。そして、反転板材51は、反転後において、先端部材31からPAF22に延長した状態となることで、先端部材31とPAF22との間の隙間を被覆した状態となる。つまり、反転板材51の表面が外部に露出した状態となり、また、反転板材51の裏面がPAF22の内部側に対向する位置となる。なお、反転前の反転板材51は、ワイヤー等の拘束部材により拘束してもよい。
【0027】
また、反転板材51は、反転(展開)後において、先端部材31に接続する端部が先端部材31に対しPAF22側に位置するように重なり、PAF22を覆う端部がPAF22に対し先端部材31側に位置するように重なる。再突入時の気流Aの流れ方向は、先端部材31からPAF22に向かう方向を想定しており、
図4に示すように、反転板材51は、先端部材31側からPAF22側に向かって流れる気流Aの流れ方向の上流側の端部が、先端部材31の内側かつ上流側に位置し、流れ方向の下流側の端部が、PAF22の外側かつ下流側に位置している。このため、反転板材51は、気流Aに対して、衝突する部位を有しないものとなり、気流Aは、反転板材51の表面に沿って流れる。先端部材31に接続する端部は、
図4に示すように、ヒンジ53を介して接続する部分がコの字形状となっていてもよい。これにより、反転板材51の一部が展開後に先端部材31の端部の内側かつ上流側に入り込むように重なる部分を持つこととなり、気流Aが反転板材51の表面に沿って流れやすくなる。
【0028】
反転板材51は、先端部材31と同様に、耐熱性を有する材料が用いられ、例えば、セラミックス、CMC(Ceramic Matrix Composites)、PICA(Phenolic Impregnated Carbon Ablators)等が適用される。
【0029】
可撓部材52は、隣接する反転板材51の間の隙間を被覆する可撓性の部材である。可撓部材52は、耐熱性を有する材料が用いられ、例えば、シリカクロス、アルミシリカクロス等が適用される。可撓部材52は、両側にある反転板材51のそれぞれに接続されている。可撓部材52は、反転板材51と共に、展開前後において表裏が反転するように移動する。
【0030】
また、被覆部33は、反転板材51を反転させる反転機構として、反転板材51のヒンジ53側となる根元部位を、ワイヤまたはバネ等により引っ張る機構とすることで、反転板材51及び可撓部材52を反転させる。
【0031】
被覆検出センサ34は、被覆部33により先端部材31とPAF22との間の隙間が被覆されたか否かを検出する。被覆検出センサ34は、例えば、タッチセンサであり、反転板材51とPAF22とが接触する部位に設けられる。被覆検出センサ34は、制御部35に接続されており、制御部35へ向けて検出信号を出力する。
【0032】
制御部35は、耐熱装置23の各部を制御する。制御部35は、ロケット1に設けられる制御装置であってもよい。制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。制御部35は、耐熱装置23の展開制御を実行する。制御部35は、積載物Pの切り離し後、突出機構32を作動させる作動信号を出力し、被覆検出センサ34から検出信号が入力されたら、展開完了と判定している。具体的に、制御部35は、展開制御として、積載物Pの切り離しが行われたか否かを判定する。制御部35は、積載物Pの切り離しが行われたと判定すると、突出機構32を作動させる作動信号を出力するステップを実行する。作動信号の出力後、制御部35は、被覆検出センサ34から検出信号が入力されたか否かを判定するステップを実行する。制御部35は、被覆検出センサ34から検出信号が入力されたと判定すると、耐熱装置23の展開が完了したと判定する。
【0033】
次に、
図6から
図8を参照して、耐熱装置23の一連の動作について説明する。
図6に示すように耐熱装置23は、展開前において、先端部材31がPAF22の内部の収容位置に位置している。耐熱装置23は、制御部35から作動信号が入力されると、係止解除部43が作動する。耐熱装置23は、係止解除部43が作動することで、係止部42による係止を解除する。これにより、
図7に示すように、突出機構32は、係止部42による先端部材31の収容位置への位置規制が解除され、リンク部41の付勢によって、先端部材31が突出位置へ移動する。この後、耐熱装置23は、被覆部33の反転板材51及び可撓部材52が反転することで、
図8に示すように、被覆部33により先端部材31とPAF22との間の隙間を被覆する。
【0034】
なお、実施形態1では、耐熱装置23をロケット1に設けた場合について説明したが、PAF22と耐熱装置23とを一体としたアタッチメント装置として提供してもよい。
【0035】
また、実施形態1では、リンク機構41aを含む突出機構32により、先端部材31を収容位置から突出位置へ移動させたが、先端部材31を収容位置から突出位置へ移動させる機構であれば、実施形態1の突出機構32に特に限定されない。突出機構は、例えば、アクチュエータを用いた機構であってもよいし、作動ガスによって体積を膨張させることにより作動するインフレータブル機構であってもよい。
【0036】
また、実施形態1では、係止部42として、テンションワイヤ42aを用いたが、係止及び係止解除可能な機構であってもよく、例えば、電磁石を用いた機構、形状記憶合金を用いた機構、油圧チャッキングを用いた機構であってもよい。
【0037】
[実施形態2]
次に、
図9及び
図10を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図9は、実施形態2に係る耐熱装置の被覆部の動作に関する説明図である。
図10は、被覆部の一例を示す上面図である。
【0038】
実施形態2の耐熱装置70は、実施形態1の被覆部33に代えて、第1の反転板材75及び第2の反転板材76を有する被覆部71を備えたものとなっている。つまり、被覆部71は、第1の反転板材75と、第2の反転板材76とを有している。第1の反転板材75は、先端部材31とPAF22との間の隙間に沿って複数並べて配置されている。なお、第1の反転板材75は、実施形態1の反転板材51と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
第2の反転板材76は、隣接する第1の反転板材75の間の隙間を被覆する。第2の反転板材76は、複数設けられ、隣接する第1の反転板材75の間にそれぞれ設けられる。第2の反転板材76は、先端部材31からPAF22へ向かって延びる板形状となっており、第1の反転板材75と同様に、隙間を塞ぐように外周に倣った湾曲形状となっている。第2の反転板材76は、先端部材31の外周縁部にヒンジ77を介して接続されている。第2の反転板材76は、展開前後において表裏が反転するように移動する。第2の反転板材76は、反転前において、先端部材31と重ね合わされた状態となっている。つまり、第2の反転板材76の表面が先端部材31の外面と対向する位置となっており、また、第2の反転板材76の裏面が外部に露出した状態となっている。そして、第2の反転板材76は、反転後において、先端部材31からPAF22に延長した状態となることで、先端部材31とPAF22との間の隙間を被覆すると共に、第1の反転板材75の間の隙間を被覆した状態となる。つまり、第2の反転板材76の表面が外部に露出した状態となり、また、第2の反転板材76の裏面がPAF22の内部側に対向する位置となる。
【0040】
なお、第2の反転板材76は、第1の反転板材75と同様に、反転(展開)後において、先端部材31側からPAF22側に向かって流れる気流Aの流れ方向の上流側の端部が、先端部材31の内側に位置し、流れ方向の下流側の端部が、PAF22の外側に位置する。先端部材31に接続する端部は、
図9に示すように、ヒンジ77を介して接続する部分がコの字形状となっていてもよい。これにより、反転板材76の一部が展開後に先端部材31の端部の内側かつ上流側に入り込むように重なる部分を持つこととなり、気流Aが反転板材51の表面に沿って流れやすくなる。
【0041】
実施形態2の被覆部71では、第1の反転板材75が反転することで、先端部材31とPAF22との間の隙間を被覆し、この後、第2の反転板材76が反転することで、隣接する第1の反転板材75の間の隙間を被覆する。
【0042】
[実施形態3]
次に、
図11を参照して、実施形態3について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図11は、実施形態3に係るアタッチメント装置を模式的に示した図である。
【0043】
実施形態3の耐熱装置80は、被覆部33の反転板材51を反転させる反転機構81が、
図11に示す機構となっている。
図11には、2つの反転機構81a、81bを示している。
【0044】
反転機構81aは、先端部材31を突出させる突出機構32と連結した機構となっている。反転機構81aは、反転板材51のヒンジ53側となる根元部位と、突出機構32のリンク機構41aの一部とを連結した連結部材である。反転機構81aは、リンク機構41aが付勢部材41bの付勢により突出位置側に移動することに伴って、反転板材51の根元部位を引っ張ることで、反転板材51を反転させている。
【0045】
反転機構81bは、反転板材51のヒンジ53側となる根元部位に設けられる付勢部材(図示省略)と、付勢部材による付勢に抗して、反転板材51を展開前の位置に係止するテンションワイヤ85と、テンションワイヤ85をカットする切断装置(図示省略)と、を備えている。反転機構81bは、切断装置によりテンションワイヤ85がカットされることで、反転板材51の位置規制が解除され、付勢部材による付勢により反転板材51が反転する。
【0046】
[実施形態4]
次に、
図12を参照して、実施形態4について説明する。なお、実施形態4では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図12は、実施形態4に係る耐熱装置の被覆部の動作に関する説明図である。
【0047】
実施形態4の耐熱装置90は、被覆部33の反転板材51を反転させる反転機構91が、
図12に示す機構となっている。
図12に示す反転機構91は、反転板材51のヒンジ53側となる根元部位に設けられる紐状部材92と、紐状部材92を締める締結機構93と、を備えている。紐状部材92は、先端部材31の周方向に沿って、複数の反転板材51を連結するように架け渡されることで、環状に配置される。締結機構93は、環状となる紐状部材92を締めることで、紐状部材92の環を小さくする。反転機構91は、締結機構93により紐状部材92の環を小さくすることで、反転板材51の根元部位を内部側に引き込むことで、反転板材51を反転させている。
【0048】
[実施形態5]
次に、
図13から
図18を参照して、実施形態5について説明する。なお、実施形態5では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から4と異なる部分について説明し、実施形態1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図13は、実施形態5に係る耐熱装置の被覆部の一例を示す上面図である。
図14は、耐熱装置を下方側から見たときの説明図である。
図15は、耐熱装置の反転板材の一例の斜視図である。
図16は、耐熱装置の反転板材の一例の斜視図である。
図17は、被覆部の作動部に関する説明図である。
図18は、被覆部の動作に関する説明図である。
【0049】
実施形態5の耐熱装置100は、実施形態2の被覆部71に作動部107を加えた被覆部101となっている。つまり、被覆部101は、第1の反転板材105と、第2の反転板材106と、作動部107と、を有している。第1の反転板材105及び第2の反転板材106は、実施形態2の第1の反転板材75及び第2の反転板材76と一部相違するため、異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
第1の反転板材105と第2の反転板材106とは、先端部材31の周方向における端部が重複する重複部位となっている。
図13に示すように、第1の反転板材105及び第2の反転板材106は、先端部材31の外周縁部の周方向に交互に配置されている。
図16に示すように、重複部位において第1の反転板材105と第2の反転板材106とは嵌め合わされている。また、第1の反転板材105と第2の反転板材106とは、展開後において、表面が相互に連なるように、重複部位において嵌め合わされている。このとき、第1の反転板材105と第2の反転板材106との重複部位は、篏合することで形成されるラビリンスシール109となっている。
【0051】
第1の反転板材105及び第2の反転板材106は、先端部材31の外周縁部にヒンジ108を介して接続されている。ヒンジ108は、
図15に示すように、第1の反転板材105及び第2の反転板材106の表面にそれぞれ設けられ、先端部材31側に寄せて配置されている。なお、ヒンジ108は、先端部材31の表面において形状が対称となる対称軸I上に設けられている。対称軸Iは、先端部材31からPAF22に延びる軸となっている。
【0052】
図17及び
図18に示すように、作動部107は、先端部材31の内側の中心に設けられる。作動部107は、モータ110と、第1の作動ワイヤ111と、第2の作動ワイヤ112と、第1の巻取り機構115と、第2の巻取り機構116とを有している。
【0053】
モータ110は、駆動源であり、制御部35に接続され、制御部35により駆動が制御される。モータ110は、正逆回転可能なモータとなっており、第1の反転板材105の反転時において正方向に回転し、第2の反転板材106の反転時において逆方向に回転する。モータ110は、第1の作動ワイヤ111を第1の巻取り機構115により巻き取るときに駆動し、また、第2の作動ワイヤ112を第2の巻取り機構116により巻き取るときに駆動する。なお、モータ110の出力軸には、要求される駆動トルク及び回転数に応じて減速ギアが設けられる。
【0054】
第1の作動ワイヤ111は、モータ110と第1の反転板材105とを連結する。第1の作動ワイヤ111は、第1の巻取り機構115を介してモータ110に連結される。モータ110と第1の反転板材105との間には、第1の作動ワイヤ111をガイドするワイヤガイド117(
図18参照)が設けられる。第1の作動ワイヤ111は、ワイヤガイド117に沿って設けられる。
【0055】
第2の作動ワイヤ112は、モータ110と第2の反転板材106とを連結する。第2の作動ワイヤ112は、第2の巻取り機構116を介してモータ110に連結される。モータ110と第2の反転板材106との間には、第1の作動ワイヤ111と同様に、第2の作動ワイヤ112をガイドするワイヤガイド117(図示省略)が設けられる。第2の作動ワイヤ112は、ワイヤガイド117に沿って設けられる。
【0056】
第1の巻取り機構115は、モータ110の回転軸に取り付けられ、モータ110の正回転時において第1の作動ワイヤ111を巻き取る。第1の巻取り機構115は、正転用ラッチ121と、正転用ラッチ121と共に回転する正転用プーリ122とを有する。正転用ラッチ121は、モータ110の正回転時において回転する一方で、逆回転時において回転しない。正転用プーリ122は、第1の作動ワイヤ111が巻き掛けられる。
【0057】
第2の巻取り機構116は、モータ110の回転軸に取り付けられ、モータ110の逆回転時において第2の作動ワイヤ112を巻き取る。第2の巻取り機構116は、第1の巻取り機構115と同軸上に設けられる。第2の巻取り機構116は、逆転用ラッチ124と、逆転用ラッチ124と共に回転する逆転用プーリ125とを有する。逆転用ラッチ124は、モータ110の逆回転時において回転する一方で、正回転時において回転しない。逆転用プーリ125は、第2の作動ワイヤ112が巻き掛けられる。
【0058】
次に、
図18を参照して、被覆部101の動作について説明する。第1の反転板材105及び第2の反転板材106の展開時において、制御部35は、作動部107のモータ110を正回転させる。モータ110が正回転すると、正転用ラッチ121と共に正転用プーリ122が正回転することで、第1の作動ワイヤ111が巻き取られる。第1の作動ワイヤ111が巻き取られると、第1の反転板材105の根元部位が引っ張られることで、第1の反転板材105が反転する。この後、図示は省略するが、制御部35は、作動部107のモータ110を逆回転させる。モータ110が逆回転すると、逆転用ラッチ124と共に逆転用プーリ125が逆回転することで、第2の作動ワイヤ112が巻き取られる。第2の作動ワイヤ112が巻き取られると、第2の反転板材106の根元部位が引っ張られることで、第2の反転板材106が反転する。
【0059】
以上のように、本実施形態に記載の耐熱装置23、アタッチメント装置、宇宙機1及び展開制御方法は、例えば、以下のように把握される。
【0060】
第1の態様に係る耐熱装置23は、積載物Pを搭載すると共に宇宙空間に投入される宇宙機(ロケット1)に設けられ、前記積載物Pの前記宇宙機からの切り離し後、前記宇宙機の大気圏への再突入時に展開される耐熱装置23であって、前記宇宙機は、宇宙機本体(ロケット本体3)と前記積載物Pとを接続するアタッチメント(PAF22)を有し、前記アタッチメントは、前記積載物P側の中心に開口部が設けられた筒形状となっており、展開時において前記開口部から突出して、前記宇宙機の先端となる突出位置に位置する先端部材31と、前記先端部材31に接続し、展開時において前記突出位置に位置する前記先端部材31と前記アタッチメントとの間の隙間を被覆する被覆部33と、展開前において前記先端部材31及び前記被覆部33を前記アタッチメント内部に収容する収容位置から、展開後において前記先端部材31及び前記被覆部33を前記開口部から突出させる突出位置へ突出させる突出機構32と、を備える。
【0061】
この構成によれば、積載物を搭載する宇宙機であっても、先端部材31を突出させて、先端部材31とアタッチメントとの隙間を被覆部33で被覆することができる。このため、積載物Pの切り離し後、宇宙機が大気圏に再突入する場合であっても、先端部材31及び被覆部33により熱的負荷を軽減することができ、宇宙機の回収を行うことが可能となる。
【0062】
第2の態様として、第1の態様に係る耐熱装置23において、前記先端部材31は、前記積載物P側に凸となる曲面形状となっている。
【0063】
この構成によれば、先端部材31の形状を、大気圏への再突入時における熱的負荷の軽減に好適な形状とすることができる。
【0064】
第3の態様として、第1または第2の態様に係る耐熱装置23において、前記突出機構32は、前記先端部材31と前記アタッチメントとの間に設けられ、前記先端部材31は、前記アタッチメント内部の空中に保持されている。
【0065】
この構成によれば、先端部材31及び突出機構32を宇宙機本体に設けることなく、アタッチメントの内部へ収容して保持することができる。このため、宇宙機本体に影響を与えることなく、耐熱装置23を配置することができる。
【0066】
第4の態様として、第1から第3のいずれか1つの態様に係る耐熱装置23において、前記突出機構32は、前記先端部材31と前記アタッチメントとを接続すると共に、前記突出位置側に付勢するリンク部41と、前記リンク部41による付勢に抗して、前記先端部材31を前記収容位置に係止する係止部42と、前記係止部42による係止を解除する係止解除部43と、を有する。
【0067】
この構成によれば、係止解除部43により係止部42による係止を解除することで、リンク部41の付勢により先端部材31を突出させることができる。このため、簡易な構成となる突出機構32で、先端部材31を突出させることができる。
【0068】
第5の態様として、第1から第4のいずれか1つの態様に係る耐熱装置23において、前記被覆部33は、前記先端部材31側に設けられ、展開時において前記先端部材31側から前記アタッチメント側に反転する反転板材51を有する。
【0069】
この構成によれば、反転板材51を反転させることで、先端部材31とアタッチメントとの間の隙間を、簡易に被覆することができる。
【0070】
第6の態様として、第5の態様に係る耐熱装置23において、前記反転板材51は、展開後において、前記先端部材31側から前記アタッチメント側に向かって流れる気流Aの流れ方向の上流側の端部が、前記先端部材31の内側に位置し、流れ方向の下流側の端部が、前記アタッチメントの外側に位置する。
【0071】
この構成によれば、気流Aが反転板材51に衝突することなく、反転板材51の表面に沿って流れることができる。
【0072】
第7の態様として、第5の態様に係る耐熱装置23において、前記反転板材51は、前記先端部材31と前記アタッチメントとの間に形成される隙間に沿って複数並べて配置され、前記被覆部33は、隣接する前記反転板材51の間の隙間を被覆する可撓性の可撓部材52を、さらに有する。
【0073】
この構成によれば、可撓部材52により反転板材51の間に形成される隙間を好適に被覆することができる。
【0074】
第8の態様として、第5の態様に係る耐熱装置23において、前記反転板材51は、前記先端部材31と前記アタッチメントとの間に形成される隙間に沿って複数並べて配置される第1の反転板材75,105と、隣接する前記第1の反転板材75,105の間に配置される複数の第2の反転板材76,106と、を有する。
【0075】
この構成によれば、第1の反転板材75,105及び第2の反転板材76,106を反転させることで、先端部材31とアタッチメントとの間の隙間を、簡易に被覆することができる。
【0076】
第9の態様として、第8の態様に係る耐熱装置23において、前記第1の反転板材105と前記第2の反転板材106との重複部位は、篏合することで形成されるラビリンスシール109となっている。
【0077】
この構成によれば、第1の反転板材105と第2の反転板材106との重複部位から気流Aが流入することを抑制することができる。
【0078】
第10の態様として、第8の態様に係る耐熱装置23において、前記被覆部101は、前記第1の反転板材105及び前記第2の反転板材106を反転させる作動部107を、さらに有し、前記作動部107は、駆動源となるモータ110と、前記モータ110と前記第1の反転板材105とを連結する第1の作動ワイヤ111と、前記モータ110と前記第2の反転板材106とを連結する第2の作動ワイヤ112と、前記モータ110の正回転時において前記第1の作動ワイヤ111を巻き取る第1の巻取り機構115と、前記モータ110の逆回転時において前記第2の作動ワイヤ112を巻き取る第2の巻取り機構116と、を含む。
【0079】
この構成によれば、モータ110の正逆回転を利用して、第1の反転板材105及び第2の反転板材106を反転させることができる。
【0080】
第11の態様として、第1から第10のいずれか1つの態様に係る耐熱装置23において、前記被覆部33による前記先端部材31と前記アタッチメントとの間の隙間の被覆を検出する被覆検出センサ34と、前記被覆検出センサ34が接続される制御部35と、をさらに備え、前記制御部35は、前記積載物Pの切り離し後、前記突出機構32を作動させる作動信号を出力し、前記被覆検出センサ34から検出信号が入力されたら、展開完了と判定する。
【0081】
この構成によれば、耐熱装置23の展開が完了したことを検知することができる。
【0082】
第12の態様に係るアタッチメント装置は、宇宙機本体と積載物Pとを接続するアタッチメントと、前記アタッチメントに設けられる第1から第11のいずれか1つの態様に係る耐熱装置23と、を備える。
【0083】
この構成によれば、耐熱装置23とアタッチメントとが一体となった装置を提供することができる。
【0084】
第13の態様に係る宇宙機は、積載物Pを搭載する宇宙機本体と、前記宇宙機本体と前記積載物とを接続するアタッチメントと、第1から第11のいずれか1つの態様に係る耐熱装置23と、を備える。
【0085】
この構成によれば、耐熱装置23を展開することで、大気圏へ再突入することができるため、回収可能な宇宙機とすることができる。
【0086】
第14の態様に係る展開制御方法は、第11の態様に係る耐熱装置23に、前記積載物Pの切り離し後、前記突出機構32を作動させる作動信号を出力するステップと、前記作動信号の出力後、前記被覆検出センサ34から検出信号が入力されたか否かを判定するステップと、前記被覆検出センサ34から検出信号が入力された場合、展開が完了したと判定するステップと、を実行させる。
【0087】
この構成によれば、耐熱装置23の展開が完了したことを検知することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ロケット
3 ロケット本体
5 フレーム
6 燃料タンク
7 酸化剤タンク
8 ロケットエンジン
10 気蓄器
21 PSS
22 PAF
23 耐熱装置
31 先端部材
32 突出機構
33 被覆部
34 被覆検出センサ
35 制御部
41 リンク部
42 係止部
43 係止解除部
51 反転板材
52 可撓部材
53 ヒンジ
70 耐熱装置(実施形態2)
71 被覆部
75 第1の反転板材
76 第2の反転板材
80 耐熱装置(実施形態3)
81 反転機構
90 耐熱装置(実施形態4)
91 反転機構
92 紐状部材
100 耐熱装置(実施形態5)
101 被覆部
105 第1の反転板材
106 第2の反転板材
107 作動部
109 ラビリンスシール
110 モータ
111 第1の作動ワイヤ
112 第2の作動ワイヤ
115 第1の巻取り機構
116 第2の巻取り機構
P 積載物
A 気流