IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特開2023-181258基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置
<>
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図1
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図2
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図3
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図4
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図5
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図6
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図7
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図8
  • 特開-基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181258
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231214BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20231214BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/455
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179365
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2023005582の分割
【原出願日】2019-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】平松 宏朗
(72)【発明者】
【氏名】石橋 清久
(57)【要約】
【課題】基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)処理室内の基板に対して第1元素を含む第1原料ガスを供給する工程と、(b)基板に対して、第1元素を含み、第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する工程と、(c)基板に対して、第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスを供給する工程と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより、基板上に、第1元素および第2元素を含む膜を形成する工程を有する技術を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して第1元素を含む第1ガスを供給することにより、1原子層未満の厚さの前記第1元素を含む第1層を形成する工程と、
(b)前記第1層が形成された前記基板に対して、前記第1元素を含む第2ガスを供給することにより、前記第1元素同士の結合を含む1原子層を超える厚さの第2層を形成する工程と、
(c)前記第2層が形成された前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、前記第1元素を含む膜を形成する工程を有する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記第1元素同士の結合は、前記第2ガスの分解により生じた未結合手を有する前記第1元素同士が結合することにより形成される、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2ガスは、前記第1元素同士の結合を含むガスである、
請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2ガスは、前記第1元素同士の結合を含むガスである、
請求項2記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1ガスは、前記第1元素同士の結合を含まないガスである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1ガスは、1分子中に含まれる前記第1元素の数が1つである、
請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1ガスおよび前記第2ガスとしてそれぞれ互いに異なるハロシラン系ガスを用いる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記反応ガスとして、窒化ガスまたは酸化ガスのうち少なくともいずれかを含むガスを用いる、
請求項1~7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a)基板に対して第1元素を含む第1ガスを供給することにより、1原子層未満の厚さの前記第1元素を含む第1層を形成する工程と、
(b)前記第1層が形成された前記基板に対して、前記第1元素を含む第2ガスを供給することにより、前記第1元素同士の結合を含む1原子層を超える厚さの第2層を形成する工程と、
(c)前記第2層が形成された前記基板に対して反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、前記第1元素を含む膜を形成する工程を有する、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
(a)基板に対して第1元素を含む第1ガスを供給することにより、1原子層未満の厚さの前記第1元素を含む第1層を形成する手順と、
(b)前記第1層が形成された前記基板に対して、前記第1元素を含む第2ガスを供給することにより、前記第1元素同士の結合を含む1原子層を超える厚さの第2層を形成する手順と、
(c)前記第2層が形成された前記基板に対して反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、前記第1元素を含む膜を形成する手順を、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項11】
第1元素を含む第1ガスを基板へ供給する第1ガス供給系と、
前記第1元素を含む第2ガスを前記基板へ供給する第2ガス供給系と、
反応ガスを前記基板へ供給する反応ガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給することにより、1原子層未満の厚さの前記第1元素を含む第1層を形成する処理と、
(b)前記第1層が形成された前記基板に対して、前記第2ガスを供給することにより、前記第1元素同士の結合を含む1原子層を超える厚さの第2層を形成する処理と、
(c)前記第2層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、前記第1元素を含む膜を形成する処理を行わせるように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系および前記反応ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラムおよび基板処理装置に関する。
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-025262号公報
【特許文献2】特開2017-097017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)処理室内の基板に対して第1元素を含む第1原料ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して、前記第1元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して、前記第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスを供給する工程と、
をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に、前記第1元素および前記第2元素を含む膜を形成する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一態様の基板処理工程におけるフローを示す図である。
図5】本開示の一態様の成膜処理におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図6】本開示の一態様の成膜処理におけるガス供給のタイミングの変形例を示す図である。
図7】(a)は、ステップaを行うことで第1原料ガスが供給された後の基板の表面の部分拡大図であり、(b)は、ステップaを行った後、ステップbを行うことで第2原料ガスが供給された後の基板の表面の部分拡大図であり、(c)は、ステップbを行った後、ステップcを行うことで反応ガスが供給された後の基板の表面の部分拡大図である。
図8】基板上に形成された膜の評価結果を示す図である。
図9】基板上に形成された膜の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図5図7を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0012】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232cが接続されている。ガス供給管232cには、ガス流の上流側から順に、MFC241cおよびバルブ243cが設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232e,232dには、ガス流の上流側から順に、MFC241e,241dおよびバルブ243e,243dがそれぞれ設けられている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1元素を含む第1原料ガスとして、例えば、第1元素としてのシリコン(Si)とハロゲン元素とを含むハロシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロシランとは、ハロゲン基を有するシランのことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン系ガスを用いることができる。第1原料ガスとしては、1分子中に含まれるSi原子の数が1つであるクロロシラン系ガス、例えば、テトラクロロシラン(SiCl)ガスを用いることができる。SiClガスは、後述する成膜処理においてSiソースとして作用する。本明細書では、処理室201内に第1原料ガスが単独で存在した場合に、第1原料ガスが熱分解する温度を第1温度と称する場合がある。第1原料ガスとしてSiClガスを用いたときの第1温度は、800℃以上の範囲内の所定の温度である。
【0015】
ガス供給管232cからは、第1元素を含み、第1原料ガスよりも熱分解温度が低い第2原料ガスとして、例えば、第1元素としてのSiとハロゲン元素とを含むハロシラン系ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。第2原料ガスとしては、1分子中に含まれるSi原子の数が2つ以上であり、Si-Si結合を有するクロロシラン系ガス、例えば、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガスを用いることができる。SiClガスは、後述する成膜処理においてSiソースとして作用する。本明細書では、処理室201内に第2原料ガスが単独で存在した場合に、第2原料ガスが熱分解する温度を第2温度と称する場合がある。第2原料ガスとしてSiClガスを用いたときの第2温度は、500℃以上の範囲内の所定の温度である。
【0016】
ガス供給管232bからは、第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスとして、例えば、第2元素としての窒素(N)を含む窒化ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。NHガスは、後述する成膜処理において、Nソースとして作用する。
【0017】
ガス供給管232d,232eからは、不活性ガスとしての窒素(N)ガスが、それぞれMFC241d,241e、バルブ243d,243e、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。Nガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0018】
各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第2原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d,232e、MFC241d,241e、バルブ243d,243eにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0019】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243eやMFC241a~241e等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243eの開閉動作やMFC241a~241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0020】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ244により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0021】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0022】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。
【0023】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0024】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0025】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0026】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241e、バルブ243a~243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0027】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0028】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0029】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に膜を形成する基板処理シーケンス例、すなわち、成膜シーケンス例について、図4図5図7を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0030】
図4図5に示す成膜シーケンスでは、
処理室201内のウエハ200に対して第1原料ガスとしてSiClガスを供給するステップaと、
ウエハ200に対して第2原料ガスとしてSiClガスを供給するステップbと、
ウエハ200に対して反応ガスとしてNHガスを供給するステップcと、
をこの順に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、SiおよびNを含む膜として、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成する。なお、図5では、ステップa,b,cの実施期間をそれぞれa,b,cと表している。
【0031】
本明細書では、図4図5に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様等の説明においても同様の表記を用いる。
【0032】
(SiCl→SiCl→NH)×n ⇒ SiN
【0033】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0034】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0035】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の処理圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度(成膜温度)となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0036】
(成膜処理)
その後、以下のステップa~cを順次実施する。
【0037】
[ステップa]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してSiClガスを供給する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へSiClガスを流す。SiClガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してSiClガスが供給される。このとき同時にバルブ243d,243eを開き、ガス供給管232d,232e内へNガスを流す。Nガスは、MFC241d,241eにより流量調整される。流量調整されたNガスは、SiClガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。
【0038】
本ステップにおける処理条件としては、
SiClガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは100~1000sccm
ガス供給流量(各ガス供給管):100~20000sccm
各ガス供給時間:10~300秒、好ましくは30~120秒
処理温度(第1温度よりも低い温度、好ましくは、第1温度よりも低く第2温度よりも高い温度):400~800℃、好ましくは500~800℃、より好ましくは600~750℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
が例示される。なお、本明細書における「400~800℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、「400~800℃」とは「400℃以上800℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0039】
なお、本実施形態では、本ステップの前処理として、ウエハ200に対してNHガス等の反応ガスを先行して供給するプリフローを行っている。プリフローにおいてNHガスをウエハ200に供給することによって、ウエハ200の表面上に水素(H)による吸着サイトを形成し、本ステップや後述するステップbにおいて、Si原子が吸着しやすい状態(すなわち、Si原子との反応性の高い状態)としている。プリフローの手順は、例えば、後述するステップcと同様に行うことができる。
【0040】
上述の条件下では、SiClにおけるSi-Cl結合の一部を切断し、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、上述の条件下では、SiClにおける切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することができる。例えば、SiClを構成するSiが有する4つの結合手のうち、3つの結合手にそれぞれClを結合させた状態で、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、ウエハ200の表面に吸着したSiから切断されず保持されたClが、このSiに未結合手を有することとなった他のSiが結合することを阻害するので、ウエハ200上にSiが多重に堆積することを回避することができる。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。Siの吸着反応が進行し、ウエハ200の表面に残存する吸着サイトがなくなると、その吸着反応は飽和することになるが、本ステップでは、吸着反応が飽和する前にSiClガスの供給を停止し、吸着サイトが残存した状態で本ステップを終了することが望ましい。
【0041】
これらの結果、ウエハ200上には、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSiおよびClを含む層、すなわち、Clを含むSi含有層が形成される。図7(a)に、第1層が形成されたウエハ200の表面の部分拡大図を示す。ここで、1原子層未満の厚さの層とは、不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは、連続的に形成される原子層のことを意味している。また、1原子層未満の厚さの層が略均一であるということは、ウエハ200の表面上に略均一な密度で原子が吸着していることを意味している。第1層は、ウエハ200上に略均一な厚さに形成されるため、ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性に優れている。
【0042】
なお、処理温度が400℃未満となると、ウエハ200上にSiが吸着しにくくなり、第1層の形成が困難となる場合がある。処理温度を400℃以上にすることにより、ウエハ200上に第1層を形成することが可能となる。処理温度を500℃以上にすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を600℃以上にすることで、上述も効果をより確実に得られるようになる。
【0043】
処理温度が800℃を超えると、SiClにおける切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することが困難となるとともに、SiClの熱分解速度が増大するその結果、ウエハ200上にSiが多重に堆積し、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層を形成することが難しくなる場合がある。処理温度を800℃以下とすることにより、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層を形成することが可能となる。処理温度を750℃以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。
【0044】
ウエハ200上に第1層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのSiClガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。なお、このとき、バルブ243d,243eは開いたままとして、不活性ガスとしてのNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0045】
第1原料ガスとしては、SiClガスの他、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス等のハロシラン原料ガスを用いることができる。
【0046】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述するステップb,cにおいても同様である。
【0047】
[ステップb]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対してSiClガスを供給する。具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232a内へSiClガスを流す。SiClガスは、MFC241cにより流量制御され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してSiClガスが供給される。
【0048】
本ステップの処理条件としては、
SiClガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは100~1000sccm
SiClガス供給時間:0.5~60秒、好ましくは1~30秒
処理温度(第2温度よりも高い温度、好ましくは、第2温度よりも高く第1温度よりも低い温度):500~1000℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃
が例示される。他の処理条件は、ステップaにおける処理条件と同様とする。
【0049】
上述の条件下では、SiClガスの分子構造の大部分を熱分解させ、これにより未結合手を有することとなったSiを、ステップaにおいて第1層が形成されずに残存したウエハ200表面上の吸着サイトと反応させて、ウエハ200の表面に吸着させることができる。一方、第1層が形成された部分には吸着サイトが存在しないため、第1層上に対するSiの吸着は抑制される。その結果、本ステップでは、略均一な厚さに形成された第1層を基礎として、第2層としてのSi含有層が略均一な厚さで形成される。また、SiClの熱分解により未結合手を有することとなったSi同士は結合して、Si-Si結合を形成する。これらのSi-Si結合をウエハ200の表面上に残存した吸着サイト等と反応させることにより、第2層にSi-Si結合を含ませ、Siが多重に堆積した層とすることが可能となる。すなわち、本ステップにより、第2層に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)を、第1層に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)よりも大きくする。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。
【0050】
なお、本ステップにより第2層に含ませるSi-Si結合の量を第1層に含ませるSi-Si結合の量よりも大きくするためには、上述の通り、第2原料ガスの熱分解温度が第1原料ガスの熱分解温度よりも低いことが好適である。換言すると、第2原料ガスは第1原料ガスよりも、同一条件下においてSi-Si結合を形成しやすいガスであることが望ましい。例えば、第2原料ガスの分子中にSi-Si結合が含まれていることや、第2原料ガスの分子中におけるCl等のハロゲン元素に対するSiの組成比が、第1原料ガスのものよりも大きいことなどが好適である。このように、本ステップでは、ステップaよりも、ウエハ表面上に残存した吸着サイト等に反応するSi-Si結合が形成されやすいように、各ステップの処理温度等の処理条件の選択や、第1原料ガス及び第2原料ガスの選択が行われる。
【0051】
この結果、本ステップでは、第2層として、第1層の厚さを超える略均一な厚さのSi含有層が形成される。成膜レートの向上等の観点から、本実施形態では特に、第2層として、1原子層を超える略均一な厚さのSi含有層を形成する。図7(b)に、第2層が形成されたウエハ200の表面の部分拡大図を示す。なお、本明細書において、第2層とは、ステップa及びbが1回ずつ実施されることにより形成されたウエハ200上のSi含有層を意味している。
【0052】
なお、処理温度が500℃未満となると、SiClガスが熱分解しにくくなり、第2層の形成が困難となる場合がある。処理温度を500℃以上にすることにより、第1層上に第2層を形成することが可能となる。処理温度を600℃以上にすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を650℃以上にすることで、上述の効果をより確実に得られるようになる。
【0053】
処理温度が1000℃を超えると、SiClガスの熱分解が過剰となり、自己飽和しないSiの堆積が急速に進みやすくなるため、第2層を略均一に形成することが困難となる場合がある。処理温度を1000℃以下とすることにより、SiClガスの過剰な熱分解を抑制し、自己飽和しないSiの堆積を制御することで、第2層を略均一に形成することが可能となる。処理温度を800℃以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を750℃以下とすることで、上述の効果をより確実に得られるようになる。
【0054】
また、ステップa,bにおける温度条件は、実質的に同一の条件とすることが望ましい。これにより、ステップa,bの間で、ウエハ200の温度変更、すなわち、処理室201内の温度変更(ヒータ207の設定温度の変更)を行うことが不要となるので、ステップ間でウエハ200の温度を安定させるまでの待機時間が不要となり、基板処理のスループットを向上させることができる。従って、ステップa,bにおいては共に、ウエハ200の温度を、例えば500~800℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃の範囲内の所定の温度とするのがよい。本実施形態では、ステップa,bにおける温度条件が実質的に同一である場合、ステップaにおいては第1原料ガスの熱分解が実質的に起こらず(すなわち抑制され)、ステップbにおいては第2原料ガスの熱分解が起こる(すなわち促進される)ように、当該温度条件と、第1原料ガス及び第2原料ガスが選択される。
【0055】
ウエハ200上に第2層を形成した後、バルブ243cを閉じ、処理室201内へのSiClガスの供給を停止する。そして、上述のステップaの残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0056】
第2原料ガスとしては、SiClガスの他、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス等の水素化ケイ素系原料ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(SiH[N(C、略称:BDEAS)ガス等のアミノシラン系原料ガスを用いることができる。第2原料ガスとして、ノンハロゲンガスを用いることにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜へのハロゲンの混入を回避することが可能となる。
【0057】
[ステップc]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層と第2層とが積層してなる層に対してNHガスを供給する。具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へNHガスを流す。NHガスは、MFC241bにより流量制御され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してNHガスが供給される。
【0058】
本ステップにおける処理条件としては、
NHガス供給流量:100~10000sccm、好ましくはは1000~5000sccm
NHガス供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは10~1000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップaにおける処理条件と同様とする。ただし、ステップcにおける温度条件は、成膜処理の生産性を向上させるという観点からは、ステップa,bと同一の条件とすることが望ましいが、これらの条件と異ならせてもよい。
【0059】
上述の条件下では、第2層の少なくとも一部を窒化することができる。第2層に含まれていたClは、HCl、Cl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。
【0060】
この結果、ウエハ200上には、第3層として、SiとNとを含むSiN層が形成される。図7(c)に、第3層が形成されたウエハ200の表面の部分拡大図を示す。
【0061】
ウエハ200上に第3層を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのNH3ガスの供給を停止する。そして、上述のステップaの残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0062】
反応ガスとしては、NHガスの他、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。
【0063】
[所定回数実施]
上述したステップa~cを1サイクルとして、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に所定組成比および所定膜厚のSiN膜を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するSiN
層の厚さを・BR>竃]の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
【0064】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
上述の成膜処理が終了した後、ガス供給管232d,232eのそれぞれから不活性ガスとしてのNガス処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0065】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0066】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す一つ又は複数の効果が得られる。
【0067】
(a)本態様では、1サイクルにおいて、SiClガスを供給するステップaと、SiClガスを供給するステップbと、の両方のステップを行うことから、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、を両立することが可能となる。
【0068】
というのも、上述の処理条件でウエハ200に対して、SiClガスよりも熱分解温度が高く、熱分解しにくいSiClガスを供給すると、ウエハ200上には1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層(第1層)が形成されることとなる。仮に、ステップbを行わずに、SiClガスを供給するステップaと、NHガスを供給するステップcと、をこの順に行うサイクルを所定回数行うこととした場合、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さがウエハ面内にわたり均一であることから、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を良好にすることが可能となる。一方で、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さが薄いことから、ウエハ200上に形成されるSiN膜の成膜レートを高めることが困難となる場合がある。
【0069】
一方、上述の処理条件でウエハ200に対して、SiClガスよりも熱分解温度が低く、熱分解しやすいSiClガスを供給すると、ウエハ200上にはSi-Si結合を有する、1原子層を超える厚さのSi含有層(第2層)が形成されることとなる。仮に、ステップaを行わずに、SiClガスを供給するステップbと、NHガスを供給するステップcと、をこの順に行うサイクルを所定回数行うこととした場合、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さが厚いことから、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の成膜レートを良好とすることが可能となる。一方で、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さがウエハ面内で不均一になり易いことから、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることが困難となる場合がある。
【0070】
本態様では、ステップaおよびステップbの両ステップを行うことから、各ステップから得られるそれぞれの効果を両立させることが可能となる。例えば、Siの吸着反応が飽和する前にステップaを終了し、成膜レートの比較的大きいステップbに移行することで、ステップaのみを同じ時間実行する場合に比べて、成膜レートを向上させることができる。また、ステップaにおいて比較的厚さの均一性に優れた第1層を形成した後、ステップbにおいて第1層をベースとして第2層を形成することで、ステップbのみを実行する場合に比べて、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。
【0071】
(b)本態様では、各サイクルにおいて、ステップbよりも先にステップaを行い、その後にステップbを行うことにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を充分に発揮しつつ、その成膜レートを高めることが可能となる。
【0072】
仮に、各サイクルにおいて、ステップaよりも先にステップbを行い、その後にステップaを行うこととした場合、ステップbでは、熱分解によって生じたSi-Si結合を含むSiがウエハ200の表面に不規則に吸着しやすくなるため、ステップaで形成しようとするSi含有膜の下地として、ウエハ面内で厚さが不均一になり易い層が形成されてしまう場合がある。そのため、成膜処理の途中で略均一な厚さのSi含有層を形成するというステップaの技術的意義が失われやすくなる。
【0073】
これに対し、本態様では、各サイクルにおいて、ステップbよりも先にステップaを行い、その後にステップbを行うことから、ステップbで形成しようとするSi含有膜の下地として、略均一な厚さのSi含有層を形成することが可能となる。そのため、成膜処理の途中で略均一な厚さのSi含有層を形成するというステップaの技術的意義を充分に発揮することが可能となる。
【0074】
(c)本態様では、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜のSiとNとの組成比を広く制御することが可能となる。
【0075】
というのも、1サイクルあたりのSiClガスの基板に対する供給量Aに対する1サイクルあたりのSiClガスの基板に対する供給量Bの比率B/Aを小さくすることにより、第2層に含まれるSi-Si結合の割合を小さくして、第2層の厚さを薄くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップcにおいて窒化対象となる層を薄くすることにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の組成比を、Siの組成比が小さくなる方向に制御することができる。例えば、比率B/Aを小さくすることで、第2層の厚さが1原子層を超える厚さの範囲で薄くする。これにより、SiN膜の化学量論組成における組成比(すなわち、Si:N=3:4)に対して、Siの組成比を小さくなる方向に近づけるように制御することができる。
【0076】
また、B/Aを大きくすることにより、第2層に含まれるSi-Si結合の割合を大きくして、第2層の厚さを厚くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップcにおいて窒化対象となる層を厚くすることにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の組成比を、Siの組成比が大きくなる方向に制御することができる。例えば、比率B/Aを大きくすることで、第2層の厚さが1原子層を超える厚さの範囲で厚くする。これにより、SiN膜の化学量論組成における組成比に対して、Siの組成比をより大きくなる方向に(すなわちSiリッチとするように)制御することができる。
【0077】
なお、上述のB/Aは、例えば、1サイクルあたりのSiClガスの供給時間TAに対する1サイクルあたりのSiClガスの供給時間TBの比率TB/TAの大きさを調整すること、すなわち、1サイクルあたりのSiClガスとSiClガスとの供給時間を調整することにより制御することができる。また、上述のB/Aは、SiClガスの供給流量FAに対するSiClガスの供給流量FBの比率FB/FAの大きさを調整することによっても制御することができる。
【0078】
また、ステップbにおける処理室201内の圧力PBの大きさを調整し、SiClガスの熱分解速度を制御することによっても、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜におけるSiの含有量とNの含有量との比率である組成比を制御することができる。
【0079】
例えば、圧力PBを小さくすることにより、第2層の厚さを薄くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップcにおいて窒化対象となる層を薄くすることにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の組成比を、Siの組成比が小さくなる方向に制御することができる。
【0080】
また、圧力PBを、ステップaにおける処理室201内の圧力PAより大きくすることにより、第2層の厚さを厚くする方向に制御することができる。第2層、すなわち、ステップcにおいて窒化対象となる層を厚くすることにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の組成比を、Siの組成比が大きくなる方向に制御することができる。
【0081】
(d)本態様では、ステップaの処理温度をSiClガスの熱分解温度(第1温度)よりも低くし、ステップbの処理温度をSiClガスの熱分解温度(第2温度)よりも高くしているので、上述の効果を確実に得ることができる。
【0082】
というのも、ステップaでは、処理温度を第1温度よりも低い温度としているので、SiClガスの熱分解を抑制することができ、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。また、SiN膜の組成比をSiに近づける方向に制御することが可能となる。
【0083】
また、ステップbでは、処理温度を第2温度より高い温度としているので、SiClガスの適切な熱分解を維持することができ、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の成膜レートを向上させることが可能となる。また、SiN膜の組成比をSiリッチの方向に制御することが可能となる。
【0084】
(e)なお、上述の効果は、SiClガス以外の第1原料ガスを用いる場合や、SiClガス以外の第2原料ガスを用いる場合や、NHガス以外の反応ガスを用いる場合や、Nガス以外の不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0085】
<他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0086】
上述の態様では、第2元素としてNを例に挙げ、第2元素を含む反応ガスとしてNHガスを例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第2元素として酸素(O)を用い、第2元素を含む反応ガスとして、Oガスの他、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、O+Hガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガスなどを用いてもよい。また、反応ガスとして、これらのO含有ガスと上述のNHガスとの両方を用いてもよい。
【0087】
例えば、以下に示す成膜シーケンスにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜(SiO膜)を形成するようにしてもよい。
【0088】
(SiCl→SiCl→O)×n ⇒ SiO
(SiCl→SiCl→O)×n ⇒ SiO
(SiCl→SiCl→HO)×n ⇒ SiO
(SiCl→SiCl→O+H)×n ⇒ SiO
【0089】
また、例えば、以下に示す成膜シーケンスにより、ウエハ200上にシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成するようにしてもよい。
【0090】
(SiCl→SiCl→NH→O)×n ⇒ SiON
(SiCl→SiCl→O→NH)×n ⇒ SiON
【0091】
これらの成膜シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件は、例えば上述の態様と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0092】
上述の態様では、ステップaの実施期間aとステップbの実施期間bとを重複させない例、例えば、ステップaにおいてSiClガスの供給を中止し、その後実施期間aが終了した後でステップbを開始する例を説明した(図5参照)。本開示はこれに限定されず、例えば、ステップaにおいてSiClガスの供給を継続したままの状態でステップbを開始してSiClガスの供給する、というようにステップaの実施期間aとステップbの実施期間bの少なくとも一部とを重複させてもよい(図6参照)。このようにすることで、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて基板処理のスループットを向上させることができる。
【0093】
また、上述の態様等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例0094】
サンプル1~5として、図1に示す基板処理装置を用い、ウエハ上に対してSiN膜を形成した。
【0095】
サンプル1は、ステップbを行わずに、ステップaとステップcとをこの順に行うサイクルをn回行うことにより作製した。サンプル2~5は、ステップa~cをこの順に行うサイクルをn回行うことにより作製した。
【0096】
サンプル1~5では、ステップaにおけるSiClガスの供給時間をそれぞれ60秒間とした。また、サンプル2~5では、ステップbにおけるSiClガスの供給時間を、それぞれ1.5秒間、4.5秒間、9秒間、18秒間とした。その他の処理条件は、サイクルの実施回数やガスの供給量を含め、それぞれ、上述の態様における処理条件範囲内の共通の条件とした。
【0097】
そして、サンプル1~5における、SiN膜のウエハ面内平均膜厚(Å)と、波長633nmの光に対しての屈折率(RI)と、をそれぞれ測定した。図8にそれらの結果を示す。
【0098】
図8によれば、サンプル2~5におけるSiN膜のウエハ面内平均膜厚は、サンプル1におけるSiN膜のウエハ面内平均膜厚よりも厚いことがわかる。すなわち、原料ガスとしてSiClガスとSiClガスとの両方のガスを供給する場合の方が、原料ガスとしてSiClガスを供給せずSiClガスのみを供給する場合よりも、1サイクルあたりのSiN膜の成膜量が増加すること、すなわち、成膜レートが向上することがわかる。
【0099】
また、図8によれば、サンプル2~5におけるSiN膜のウエハ面内平均膜厚は、SiClガスの供給時間を長くするほど厚くなることがわかる。これにより、SiClガスの供給時間を長くするほど1サイクルあたりのSiN膜の成膜量が増加すること、すなわち、ウエハ200上に形成されるSiN膜の成膜レートが向上することがわかる。
【0100】
また、図8によれば、サンプル2~5におけるSiN膜の屈折率は、サンプル1におけるSiN膜の屈折率よりも大きいことがわかる。すなわち、原料ガスとしてSiClガスとSiClガスとの両方のガスを供給する場合の方が、原料ガスとしてSiClガスを供給せずSiClガスのみを供給する場合よりも、SiN膜の屈折率が大きくなることがわかる。波長633nmの光に対してのSiの屈折率が、3.882であることを考慮すると、原料ガスとしてSiClガスとSiClガスの両方のガスを供給する場合の方が、SiClガスを供給せずSiClガスのみを供給する場合よりも、ウエハ200上に形成されるSiN膜のSi組成比が大きいことがわかる。
【0101】
さらに、サンプル2~5におけるSiN膜の屈折率は、SiClガスの供給時間を長くするほど大きくなることがわかる。すなわち、SiClガスの供給時間を長くするほどウエハ200上に形成されるSiN膜のSi組成比は大きくなることがわかる。
【0102】
また、サンプル6,7として、図1に示す基板処理装置を用い、ウエハ上に対してSiN膜を形成した。
【0103】
サンプル6,7は、溝幅約50nm、溝深さ約10μm、アスペクト比約200のトレンチ構造体を表面に有するウエハに対して以下の処理を行うことにより作製した。
【0104】
サンプル6は、ステップaを行わずに、ステップbとステップcとをこの順に行うサイクルをn回行うことにより作製した。サンプル7は、ステップa~cをこの順に行うサイクルをn回行うことにより作製した。
【0105】
具体的には、サンプル7では、ステップaにおけるSiClガスの供給時間を60秒とした。サンプル6,7では、ステップbにおけるSiClガスの供給時間をそれぞれ9秒間とした。その他の処理条件は、サイクルの実施回数やガスの供給量を含め、それぞれ、上述の態様における処理条件範囲内の共通の条件とした。
【0106】
そして、サンプル6,7のSiN膜におけるTop/Bottom比(%)と、Range(%)と、をそれぞれ測定した。図9にそれらの結果を示す。「Top/Bottom比(%)」は、トレンチ構造体の溝の下部に形成された膜厚に対する、トレンチ構造体の溝の上部に形成された膜厚の割合を百分率で表したものである。Top/Bottom比(%)は、トレンチ構造体の溝の上部と下部に形成された膜厚をそれぞれC,Dとした場合に、C/D×100の式で算出される。「Range(%)」とは、トレンチ構造体の溝の上部と溝の下部に形成された膜厚値の平均値に対する、溝の上部に形成された膜厚値と溝の下部に形成された膜厚値との差を百分率で表したものである。トレンチ構造体の溝の上部と下部に形成された膜厚をそれぞれC,Dとした場合に、Range(%)は、|C-D|/{(C+D)/2}×100の式で算出される。
【0107】
図9によれば、サンプル7におけるTop/Bottom比は、サンプル6におけるTop/Bottom比よりも大きいことがわかる。また、サンプル7におけるRangeは、サンプル6におけるRangeよりも小さいことがわかる。すなわち、SiClガスとSiClガスの両方のガスを供給する場合の方が、SiClガスを供給せずSiClガスのみを供給する場合よりもステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0108】
200…ウエハ、202…処理炉、217…ボート、115…ボートエレベータ、121…コントローラ、201…処理室、249a,249b…ノズル、250a,250b…ガス供給孔、232a~232d…ガス供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9