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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181316
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】節輪構造体および可動型カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20231214BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 540
A61M25/00 550
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183332
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2019059033の分割
【原出願日】2019-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】嶋 辰也
(72)【発明者】
【氏名】米道 渉
(57)【要約】
【課題】安定した偏向を行うことができる節輪構造体を提供すること。
【解決手段】複数の節輪を軸心方向に沿って順次隣接して基端から先端にわたって延在するように配設してなる節輪構造体である。各節輪5は、軸心に対して互いに略対称な位置に配置された一対の山部52aと、側壁内に軸心方向に沿って形成されるとともに、山部のそれぞれの頂点を結ぶ揺動中心線L1の一側に互いに離間して形成された貫通孔53a,53bおよび揺動中心線L1に関して貫通孔53a,53bとそれぞれ略対称な位置に形成された貫通孔53c,53dを備える。それぞれ最先端の節輪に先端部が係合され、複数の節輪の各貫通孔53a~53dにより構成される4つの通路に挿通され、基端部が節輪構造体の基端に至る4本のワイヤ部を設けた。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の円筒部を有する複数の節輪を軸心方向に沿って順次隣接して基端から先端にわたって延在するように配設してなる節輪構造体であって、
前記複数の節輪の各節輪は、
前記円筒部の両端面のうちの少なくとも一方に突出するように形成され、軸心に関して互いに略対称な位置に配置された一対の山部と、
前記円筒部の側壁内に軸心方向に沿って形成されるとともに、該山部のそれぞれの頂点を結ぶ揺動中心線の一側に互いに離間して形成された第1貫通孔および第2貫通孔、ならびに該揺動中心線の他側に形成され、該揺動中心線に関して該第1貫通孔および該第2貫通孔とそれぞれ略対称な位置に形成された第3貫通孔および第4貫通孔とを備え、
一端側が各第1貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通されて当該節輪構造体の基端に至り、中間部分が最先端の前記節輪の先端面で折り返されて、他端側が各第2貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通されて当該節輪構造体の基端に至る単一の第1ワイヤ、および
一端側が各第3貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通されて当該節輪構造体の基端に至り、中間部分が最先端の前記節輪の先端面で折り返されて、他端側が各第4貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通されて当該節輪構造体の基端に至る単一の第2ワイヤを設け、
前記第1ワイヤの一端側および他端側の端部ならびに前記第2ワイヤの一端側および他端側の端部がそれぞれ接続された回転操作部材を有し、該回転操作部材を手動で一方向に回転させることにより前記第1ワイヤの一端側および他端側の端部を同時に引っ張るとともに前記第2ワイヤを緩め、該回転操作部材を手動で逆方向に回転させることにより前記第2ワイヤの一端側および他端側の端部を同時に引っ張るとともに前記第1ワイヤを緩めることができる操作部を備えた節輪構造体。
【請求項2】
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、前記第3貫通孔および前記第4貫通孔は、前記揺動中心線と該第1貫通孔および該第4貫通孔のそれぞれの中心を結ぶ線とが略45°で交差し、該揺動中心線と該第2貫通孔および該第3貫通孔のそれぞれの中心を結ぶ線とが略45°で交差するように形成された請求項1に記載の節輪構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の節輪構造体を有する可動型カテーテルであって、
メインルーメンと、前記節輪構造体の各ワイヤ用通路のそれぞれに対応して管壁内に形成された4本のワイヤ用ルーメンとを備える可撓性のチューブを有し、
前記節輪構造体の基端と前記チューブの遠位端とが互いに隣接して配置され、
前記第1ワイヤの前記節輪構造体の基端に至っている一端側および他端側の端部、ならびに前記第2ワイヤの前記節輪構造体の基端に至っている一端側および他端側の端部は、それぞれ対応する前記ワイヤ用ルーメンに挿通されて、前記チューブの近位端に至っている可動型カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用処置具に好適に用いることができる節輪構造体、およびこれを備える可動型カテーテル(Steerable Catheter)に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の体内に挿入される先端部を偏向させる技術として、特許文献1に記載の節輪構造体が知られている。この節輪構造体は、互いに180°対向位置に形成された揺動支点となる一対の山部を有する金属製の複数の節輪を軸心方向に沿って配設して構成されている。各節輪は、略90°の角度ピッチで形成された4つの貫通孔を有しており、これら4つの貫通孔のうちの互いに180°対向する一対の貫通孔は連結ワイヤが挿通される連結ワイヤ挿通孔として一対の山部に形成されており、他の一対の貫通孔は偏向ワイヤ(首振ワイヤ)が挿通される偏向ワイヤ挿通孔となっている。
【0003】
各節輪は、一対の連結ワイヤ挿通孔にそれぞれ挿通された金属製の連結ワイヤを適宜にレーザ溶接して接続(固定)することにより連結されており、一対の偏向ワイヤ挿通孔にそれぞれ挿通された偏向ワイヤの一方を引っ張ることにより、山部を支点として各節輪が一側に回動し、他方を引っ張ることにより、山部を支点として各節輪が他側に回動することで、偏向(湾曲)できるようにしている。
【0004】
しかしながら、従来の節輪構造体では、一対の連結ワイヤは各節輪を連結するためだけに設けられているものであり、節輪構造体を偏向させる際の引張力は、2本の偏向ワイヤのうちの一方、すなわち1本の偏向ワイヤを介して節輪構造体の先端部に伝達される構成であるため、偏向時にブレが生じ、安定した偏向を行えない場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-253387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、安定した偏向を行うことができる節輪構造体およびこれを備える可動型カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る節輪構造体は、
略円筒状の円筒部を有する複数の節輪を軸心方向に沿って順次隣接して基端から先端にわたって延在するように配設してなる節輪構造体であって、
前記複数の節輪の各節輪は、
前記円筒部の両端面のうちの少なくとも一方に突出するように形成され、軸心に関して互いに略対称な位置に配置された一対の山部と、
前記円筒部の側壁内に軸心方向に沿って形成されるとともに、該山部のそれぞれの頂点を結ぶ揺動中心線の一側に互いに離間して形成された第1貫通孔および第2貫通孔、ならびに該揺動中心線の他側に形成され、該揺動中心線に関して該第1貫通孔および該第2貫通孔とそれぞれ略対称な位置に形成された第3貫通孔および第4貫通孔とを備え、
各第1貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通され、先端部が最先端の前記節輪に係合し、基端部が当該節輪構造体の基端に至る第1ワイヤ部、
各第2貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通され、先端部が最先端の前記節輪に係合し、基端部が当該節輪構造体の基端に至る第2ワイヤ部、
各第3貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通され、先端部が最先端の前記節輪に係合し、基端部が当該節輪構造体の基端に至る第3ワイヤ部、および
各第4貫通孔により構成されるワイヤ用通路に挿通され、先端部が最先端の前記節輪に係合し、基端部が当該節輪構造体の基端に至る第4ワイヤ部を設けた節輪構造体である。
【0008】
本発明の第1の観点に係る節輪構造体では、第1ワイヤ部および第2ワイヤ部を同時に基端側に引っ張ることにより当該節輪構造体を一側(一方側)に偏向(湾曲)させることができ、または第3ワイヤ部および第4ワイヤ部を同時に基端側に引っ張ることにより、当該節輪構造体を他側(他方側)に偏向(湾曲)させることができる。したがって、節輪構造体を偏向させる際の引張力は、互いに離間した2本のワイヤ部を介して節輪構造体の先端部に伝達することができ、1本のワイヤでこれを行う従来技術と比較して、偏向時のブレを抑制することができ、安定した偏向を行い得る。しかも、従来技術のような各節輪を連結するためだけにワイヤ(連結ワイヤ)を設けなくても各節輪を連結し得るため、構成が複雑化することがない。
【0009】
本発明の第1の観点に係る節輪構造体において、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、前記第3貫通孔および前記第4貫通孔を、前記揺動中心線と該第1貫通孔および該第4貫通孔のそれぞれの中心を結ぶ線とが略45°で交差し、該揺動中心線と該第2貫通孔および該第3貫通孔のそれぞれの中心を結ぶ線とが略45°で交差するように形成することができる。このように構成することにより、各ワイヤ部がバランス良く配置されるため、各節輪の連結を確実になしつつ安定した偏向を実現し得る。
【0010】
本発明の第1の観点に係る節輪構造体において、前記第1ワイヤ部、前記第2ワイヤ部、前記第3ワイヤ部および前記第4ワイヤ部のそれぞれを互いに独立したワイヤから構成し、各ワイヤの先端部を最先端の前記節輪に接続して構成することができる。第1ワイヤ部を構成するワイヤの基端部および第2ワイヤ部を構成するワイヤの基端部を同時に基端側に引っ張ることにより当該節輪構造体を一側(一方側)に偏向(湾曲)させることができ、または第3ワイヤ部を構成するワイヤの基端部および第4ワイヤ部を構成するワイヤの基端部を同時に基端側に引っ張ることにより、当該節輪構造体を他側(他方側)に偏向(湾曲)させることができる。
【0011】
本発明の第2の観点に係る可動型カテーテルは、本発明の第1の観点に係る節輪構造体を有する可動型カテーテルであって、メインルーメンと、前記節輪構造体の各ワイヤ用通路のそれぞれに対応して管壁内に形成された4本のワイヤ用ルーメンとを備える可撓性のチューブを有し、前記節輪構造体の基端と前記チューブの遠位端とが互いに隣接して配置され、前記第1ワイヤ部、前記第2ワイヤ部、前記第3ワイヤ部および前記第4ワイヤ部の前記節輪構造体の基端に至っている端部は、それぞれ対応する前記ワイヤ用ルーメンに挿通されて、前記チューブの近位端に至っている可動型カテーテルである。これにより、安定した偏向を実現し得る可動型カテーテルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本発明の実施形態の節輪構造体を備える可動型カテーテルの外観構成を示す正面図である。
図1B図1Bは、図1AのIb-Ib線に沿って切断した断面図である。
図2A図2Aは、図1Aの可動型カテーテルの遠位端部の正面図であって、偏向部を偏向(湾曲)させていない状態を示す図である。
図2B図2Bは、図2Aの可動型カテーテルの偏向部を遠位端側から見た側面図である。
図2C図2Cは、図2Aの可動型カテーテルの遠位端部の平面図である。
図2D図2Dは、図2Aの可動型カテーテルの遠位端部の正面図であって、偏向部を偏向(湾曲)させた状態を示す図ある。
図3A図3Aは、図2Aの可動型カテーテルの偏向部を構成する節輪の正面図である。
図3B図3Bは、図3Aの節輪を基端側から見た側面図である。
図3C図3Cは、図3Aの節輪の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態として、節輪構造体からなる偏向部(可動部)を備える医療用処置具としての可動型カテーテルについて、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態の可動型カテーテルは、たとえば、内視鏡の処置具案内管を介して経十二指腸乳頭的に胆管内に挿入し、胆管内の検査のためのX線造影剤を注入するためなどに用いられる可動型内視鏡用カテーテルである。
【0014】
ただし、本発明は内視鏡を介して体内に挿入される内視鏡用カテーテルに限定されることはなく、たとえば、カテーテルアブレーションを行う際に、心電を検出するための電極カテーテルや患部を焼灼するためのアブレーションカテーテル等に先行して挿入され、これらの電極カテーテルやアブレーションカテーテル等を案内するカテーテルシースに適用することができる。また、カテーテルシース等の案内部材を介して体内に挿入される電極カテーテルやアブレーションカテーテル等のカテーテル、あるいは内視鏡やカテーテルシース等の案内部材を介さずに直接的に体内管腔等に挿入されるカテーテルにも本発明を適用することができる。
【0015】
なお、カテーテルアブレーションとは、心臓に生じる不整脈を治療するための治療法であり、その先端部に高周波電極を有するアブレーションカテーテルを血管を経由して心臓内の不整脈の原因となっている異常な電気信号を発する心筋組織まで挿入し、該心筋組織またはその近傍を60~70℃程度で焼灼して凝固壊死せしめ、不整脈の原因となる異常な電気信号の伝達経路を遮断する治療法である。
【0016】
まず、図1Aおよび図1Bを参照する。可動型内視鏡用カテーテル(可動型カテーテル)1は、シース部2、操作部3、グリップ部4、および一対のワイヤW1,W2を概略備えて構成されている。
【0017】
シース部2は、体内に挿入される遠位端および体外に配置される近位端を有する長尺の部材からなり、メインルーメン22を有する可撓性で長尺のチューブからなるシース本体部(チューブ)20およびシース本体部20の遠位端部に連続(隣接)して設けられた可動部としての偏向部(節輪構造体)21から構成されている。
【0018】
シース本体部20としては、たとえば網状のステンレス鋼等からなるブレード層および複数の樹脂層を含む多層チューブが用いられる。シース本体部20に用いる樹脂材料としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、たとえば、ポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが用いられる。
【0019】
シース本体部20の管壁内には、メインルーメン22の外側を取り囲むように、メインルーメン22に略平行する4つのワイヤ用ルーメン(サブルーメン)23a~23dが形成されている。ワイヤ用ルーメン23a~23dは、シース本体部20の近位端部から遠位端(偏向部21の近位端)に至って形成されている。ワイヤ用ルーメン23a~23dは、シース本体部20の軸心を中心として、メインルーメン22の外側に、略90°の角度ピッチ(角度間隔)で互いに離間して形成されている。ワイヤ用ルーメン23a~23dの遠位端は、シース本体部20の遠位端面に開口している。
【0020】
ワイヤ用ルーメン23aは、ワイヤW1の一端部側の略半分(第1ワイヤ部)W1aが摺動可能に挿通されるルーメンであり、ワイヤ用ルーメン23bは、ワイヤW1の他端部側の略半分(第2ワイヤ部)W1bが摺動可能に挿通されるルーメンである。ワイヤ用ルーメン23cは、ワイヤW2の一端部側の略半分(第3ワイヤ部)W2aが摺動可能に挿通されるルーメンであり、ワイヤ用ルーメン23dは、ワイヤW2の他端部側の略半分(第4ワイヤ部)W2bが摺動可能に挿通されるルーメンである。
【0021】
シース本体部20の外径は1~10mmの範囲内で設定することができ、内径は0.5~9.5mmの範囲内で設定することができる。シース部2の全長は100~3000mmの範囲内で設定することができる。ワイヤ用ルーメン23a~23dの直径はφ0.05~5mmの範囲内で設定することができる。
【0022】
偏向部21は、図2A図2Dに示すように、略円筒状の円筒部51を有する複数の節輪5を軸心方向に沿って互いに略同一の姿勢で順次隣接して基端から先端にわたって延在するように配設してなる節輪構造体から構成されており、基端側がシース本体部20の遠位端に連続するように隣接して配置されている。偏向部21を構成する節輪51の数は、特に限定されないが、図2Aに示す実施形態では、一例として、12個としている。
【0023】
節輪51は、図3A図3Cに示すように、円筒部51の両端面のうちの一方(本実施形態では、基端側の面)に突出するように形成され、軸心に関して互いに略対称な位置(180°対向する位置)に配置された一対の山部52,52を有している。節輪5は、山部52,52のそれぞれの頂点52a,52aが当接する節輪5の先端側の面またはシース本体部20の遠位端面に対して、頂点52a,52aを結んだ線(揺動中心線L1)を中心として、一側および他側に揺動(回動)し得るようになっている。なお、一対の山部は、円筒部51の基端側ではなく、先端側の面に設けてもよく、基端側の面に加えて、先端側の面にも設けるようにしてもよい。
【0024】
節輪5の円筒部51の側壁内には、軸心方向に沿って4つのワイヤ用貫通孔(第1~第4貫通孔)53a~53dが形成されている。ワイヤ用貫通孔53aおよびワイヤ用貫通孔53bは、山部52,52のそれぞれの頂点52a,52aを結ぶ揺動中心線L1の一側(図3Bにおいて上側)に互いに離間して形成されている。また、ワイヤ用貫通孔53cおよびワイヤ用貫通孔53dは、該揺動中心線L1の他側(図3Bにおいて下側)であって、揺動中心線L1に関してワイヤ用貫通孔53aおよびワイヤ用貫通孔53bとそれぞれ略対称な位置に形成されている。
【0025】
本実施形態では、各ワイヤ用貫通孔53a~53dは、互いに略90°の角度ピッチで配置されており、揺動中心線L1とワイヤ用貫通孔53aおよびワイヤ用貫通孔53dのそれぞれの中心を結ぶ線L2とが略45°で交差し、揺動中心線L1とワイヤ用貫通孔53bおよびワイヤ用貫通孔53cのそれぞれの中心を結ぶ線L3とが略45°で交差するように形成されている。また、ワイヤ用貫通孔53aはシース本体部20のワイヤ用ルーメン23aに対応し、ワイヤ用貫通孔53bはシース本体部20のワイヤ用ルーメン23bに対応し、ワイヤ用貫通孔53cはシース本体部20のワイヤ用ルーメン23cに対応し、ワイヤ用貫通孔53dはシース本体部20のワイヤ用ルーメン23dに対応して形成されている。
【0026】
なお、本実施形態では、節輪5の軸心方向に沿って延在し、節輪5の内壁面から内側を指向して突出するように厚肉とした4つの厚肉部55a~55dを設けて、各ワイヤ用貫通孔53a~53dを対応する厚肉部55a~55dに形成するようにしている。これは、節輪5の軽量化を図る観点から円筒部51の肉厚(側壁の厚さ)を小さく(薄く)するためであるが、円筒部51の側壁が十分な肉厚を有する場合には、そのような厚肉部55a~55dを設けることなく、各ワイヤ用貫通孔53a~53dを円筒部51の側壁内に形成するようにしてもよい。
【0027】
節輪5の材料としては、特に限定されないが、樹脂であることが好ましく、たとえば、ポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などを用いることができる。特に限定されないが、節輪5の円筒部51の外径は、本実施形態では、シース本体部20の外径と略同一とし、節輪5の円筒部51の厚肉部55a~55dにおける内径は、シース本体部20の内径と略同一としている。節輪5の円筒部51の厚肉部55a~55d以外の部分の内径は、0.5~9.5mmの範囲内で設定することができる。節輪5の軸心方向の長さ(先端面から基端側の山部52の頂点52aまでの寸法)は、1~5mmの範囲内で設定することができる。山部52の傾斜角度(軸心に対して直交する面に対する角度)θは、1~45°の範囲で設定することができ、5~20°の範囲内で設定することがより好ましい。ワイヤ用貫通孔53a~53dの直径は、本実施形態では、シース本体部20のワイヤ用ルーメン23a~23dと略同一としている。
【0028】
図1Aに示すように、偏向部21の遠位端(最先端の節輪5の先端)には、樹脂からなり、遠位端側が半球状(または先細の円錐台状)とされた略円筒状の先端保護部材24が設けられている。先端保護部材24は、メインルーメン22と略同径の内腔を有し、偏向部21の遠位端部に熱融着等により一体的に接合(固着)されている。ただし、先端保護部材24は省略してもよい。
【0029】
図2A図2Dに示すように、偏向部21を構成する複数の節輪5(円筒部51)の各ワイヤ用貫通孔53aにより構成されるワイヤ用通路54aおよびこれに対応するワイヤ用ルーメン23aならびに各ワイヤ用貫通孔53bにより構成されるワイヤ用通路54bおよびこれに対応するワイヤ用ルーメン23bには、単一(1本)のワイヤW1が挿通されている。また、偏向部21を構成する複数の節輪5(円筒部51)の各ワイヤ用貫通孔53cにより構成されるワイヤ用通路54cおよびこれに対応するワイヤ用ルーメン23cならびに各ワイヤ用貫通孔53dにより構成されるワイヤ用通路54dおよびこれに対応するワイヤ用ルーメン23dには、単一(1本)のワイヤW2が挿通されている。
【0030】
これらのワイヤW1およびワイヤW2は、偏向部21を構成する各節輪5を互いに連結するとともに、偏向部21の基端(最基端の節輪5)をシース本体部20の遠位端に連結する機能と、ワイヤW1の両端部を基端側(近位端側)に、またはワイヤW2の両端部を基端側(近位端側)に引っ張ることにより、各節輪5をそれぞれの揺動中心線L1を中心として一側または他側に回動させて、各節輪5全体として一側または他側に偏向(湾曲)させる機能とを担うものである。
【0031】
ワイヤW1は、その一端部側の略半分(第1ワイヤ部)W1aがワイヤ用通路54aおよびワイヤ用ルーメン23aに挿通され、その中間部分W1cが偏向部21の最先端の節輪5の先端面(先端保護部材24が接合される遠位端面)で折り返されて、その他端部側の略半分(第2ワイヤ部)W1bがワイヤ用通路54bおよびワイヤ用ルーメン23bに挿通され、その両端部(一端部および他端部)がシース部2(シース本体部20)の近位端側の操作部3に位置するように配置されている。同様に、ワイヤW2は、その一端部側の略半分(第3ワイヤ部)W2aがワイヤ用通路54cおよびワイヤ用ルーメン23cに挿通され、その中間部分W2cがシース2の偏向部21の最先端の節輪5の先端面(先端保護部材24が接合される遠位端面)で折り返されて、その他端部側の略半分(第4ワイヤ部)W2bがワイヤ用通路54dおよびワイヤ用ルーメン23dに挿通され、その両端部(一端部および他端部)がシース部2(シース本体部20)の近位端側の操作部3に位置するように配置されている。
【0032】
ワイヤW1,W2としては、本実施形態では、シース部2(シース本体部20および偏向部21)の湾曲に追従して湾曲し得る程度の柔軟性を有する金属(ステンレス鋼等)からなる線材を用いている。ただし、ワイヤW1,W2としては、樹脂からなる線材を用いてもよい。ワイヤW1,W2を構成する線材の直径は、φ0.05~1.00mm程度の範囲で設定することができる。
【0033】
偏向部21を各節輪5のそれぞれの軸心が略直線状に配置される直線形体(図2A参照)とした状態から、ワイヤW1の両端部をシース部2の近位端部において近位端側に同時に引っ張ることにより、各節輪5のそれぞれの軸心が順次互いに交差するように湾曲して配置される湾曲形体(図2D参照)にすることができる。これと逆に、ワイヤW2の両端部をシース部2の近位端部において近位端側に同時に引っ張ることにより、偏向部21を図2Aに示した直線形体に戻し、さらに引っ張ることにより、偏向部21を図2Dとは逆向きに湾曲した湾曲形体にすることができる(図1Aの矢印A3参照)。
【0034】
図1Aにおいて、シース部2の近位端側に取り付けられた操作部3およびグリップ部4には、シース本体部20の近位端側の部分が挿通される挿通孔(不図示)が形成されていて、グリップ部4の近位端側には、ポート41が設けられている。
【0035】
ポート41は内腔を有していて、ポート41の近位端側にはグリップ部4内のシース本体部20が、ポート41の内腔とシース本体部20のメインルーメン22とが連通するように取り付けられている。また、ポート41は、止血弁を備えた挿入口を有している。この挿入口にシリンジを接続して、体内(胆管内)に造影剤やその他の薬液等を、メインルーメン22を介して注入し、あるいは体内(胆管内)の液体を吸引することができる。
【0036】
ワイヤW1の両端部およびワイヤW2の両端部は、シース部2の近位端側に設けられた操作部3の内部においてシース本体部20に設けられた側孔から引き出されて、操作部3(回転操作部材31)にそれぞれ接続されている。回転操作部材31は、グリップ部4に対して回転可能に設けられており、術者が手で回転操作部材31を握って一方向または逆方向に回転させることにより、ワイヤW1(ワイヤ部W1a,W1b)およびW2(ワイヤ部W2a,W2b)の一方を引っ張り、他方を緩めることにより、偏向部21を選択的に偏向させることができる。
【0037】
図1Aに示したニュートラル状態では、ワイヤW1(ワイヤ部W1a,W1b)およびワイヤW2(ワイヤ部W2a,W2b)の両者に均等に初期張力が作用した状態となっており、シース部2の先端の偏向部21は、直線状に延びた状態(直線形体)となる(図2Aおよび図2Cも参照)。
【0038】
ニュートラル状態から、回転操作部材31を操作して、回転操作部材31を図1において矢印A1の方向に回転させると、この回転に伴い、ワイヤW1(ワイヤ部W1a,W1b)が緩められ、ワイヤW2(ワイヤ部W2a,W2b)が引っ張られることにより、先端の偏向部21が図1Aにおいて矢印A3に示すように偏向される。
【0039】
これと反対に、回転操作部材31を操作して、回転操作部材31を図1において矢印A2方向に回転させると、ワイヤW1が引っ張られ、ワイヤW2が緩められることにより、先端の偏向部21が図1Aにおいて矢印A4に示すように偏向される(図2Dも参照)。
【0040】
上述した実施形態では、ワイヤW1の両端部(ワイヤ部W1aの近位端部およびワイヤ部W1bの近位端部)を同時に近位端側に引っ張ることにより偏向部21を構成する節輪構造体を一側に偏向(湾曲)させるようにしている。また、ワイヤW2の両端部(ワイヤ部W2aの近位端部およびワイヤ部W2bの近位端部)を同時に近位端側に引っ張ることにより、偏向部21を構成する節輪構造体を他側に偏向(湾曲)させるようにしている。
【0041】
したがって、偏向部21を偏向させる際の引張力は、互いに離間した実質的に2本のワイヤ(ワイヤ部W1aおよびワイヤ部W1bまたはワイヤ部W2aおよびワイヤ部W2b)を介して、偏向部21の先端部(最先端の節輪5)に伝達される。このため、偏向させる際に、シース部2の周方向における比較的に広い範囲に力を作用させることができ、1本のワイヤで引張力を作用させる従来技術と比較して、偏向時のブレを抑制することができ、安定した偏向を行い得る。また、引張力を分散させることができるため、ワイヤ(ワイヤ部)にかかる力を小さくすることができ、偏向操作に伴うワイヤ破断を少なくし得る。しかも、従来技術のような各節輪を連結するためだけにワイヤを設けなくても各節輪を連結し得るため、構成が複雑化することもない。
【0042】
また、上述した実施形態では、各ワイヤ用貫通孔53a~53dを、揺動中心線L1とワイヤ用貫通孔53aおよびワイヤ用貫通孔53dのそれぞれの中心を結ぶ線L2とが略45°で交差し、揺動中心線L1とワイヤ用貫通孔53bおよびワイヤ用貫通孔53cのそれぞれの中心を結ぶ線L3とが略45°で交差するように形成している。このため、各ワイヤ部W1a,W1b,W2a,W2bが均等にバランス良く配置されるため、各節輪5の連結を十分に確保しつつ安定した偏向を実現し得る。
【0043】
さらに、上述した実施形態では、ワイヤ部W1aおよびワイヤ部W1bをそれぞれの先端部(中間部分W1c)で互いに一体的に連続する単一のワイヤから構成し、ワイヤ部W2aおよびワイヤ部W2bをそれぞれの先端部(中間部分W2c)で互いに連続する単一のワイヤから構成している。こうすることで、ワイヤW1,W2の中間部分W1c,W2cが偏向部21の遠位端面(最先端の節輪5の先端面)で折り返されて係合した状態とし得るため、ワイヤW1,W2を偏向部21の遠位端部に接続(固定)する作業を省略でき、その製造における作業工数を削減し得る。
【0044】
ただし、ワイヤW1,W2の中間部分W1c,W2cを、最先端の節輪5に接続(固定)してもよい。また、ワイヤW1,W2に代えて、ワイヤ部W1aに相当する単一のワイヤ、ワイヤ部W1bに相当する単一のワイヤ、ワイヤ部W2aに相当する単一のワイヤ、およびワイヤ部W2bに相当する単一のワイヤを設ける、すなわち、互いに独立した4本のワイヤを設けて、ワイヤ用通路54a~54dおよびこれらに対応するワイヤ用ルーメン23a~23dのそれぞれにワイヤを1本ずつ挿通し、各ワイヤの遠位端部を偏向部21の遠位端部(最先端の節輪5)にそれぞれ接続(固定)することにより係合させる構成としてもよい。
【0045】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0046】
たとえば、偏向部21を構成する各節輪5の外側に、偏向部21の偏向(湾曲)に支障がない程度の柔軟性を有する外管(被覆管)を配置(外嵌)してもよい。こうすることで、偏向部21を偏向(湾曲)させた際に、各節輪5の間の部分に体内組織が挟み込まれることを防止し得る。また、たとえば、メインルーメン22に他のカテーテル等の長尺部材が挿入される可動型カテーテル(カテーテルシース)である場合には、偏向部21を構成する各節輪5の内側に、偏向部21の偏向(湾曲)に支障がない程度の柔軟性を有する内管を配置(内嵌)してもよい。こうすることで、長尺部材の挿入時に該長尺部材の遠位端が偏向部21を構成する各節輪5の間の部分に内側から干渉して円滑な挿入の支障となることを抑制し得る。
【符号の説明】
【0047】
1…可動型内視鏡用カテーテル(可動型カテーテル)
2…シース部
20…シース本体部(チューブ)
21…偏向部(節輪構造体)
22…メインルーメン
23a~23d…ワイヤ用ルーメン
24…先端保護部材
3…操作部
31…回転操作部材
4…グリップ部
41…ポート
5…節輪
51…円筒部
52…山部
52a…頂部
53a…ワイヤ用貫通孔(第1貫通孔)
53b…ワイヤ用貫通孔(第2貫通孔)
53c…ワイヤ用貫通孔(第3貫通孔)
53d…ワイヤ用貫通孔(第4貫通孔)
54a~54d…ワイヤ用通路
55a~55d…厚肉部
L1…揺動中心線
W1…ワイヤ(第1ワイヤ)
W1a…ワイヤ部(第1ワイヤ部)
W1b…ワイヤ部(第2ワイヤ部)
W2…ワイヤ(第2ワイヤ)
W2a…ワイヤ部(第3ワイヤ部)
W2b…ワイヤ部(第4ワイヤ部)
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C