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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181343
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20231214BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N27/447 315D
G01N27/447 315K
G01N35/04 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185154
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2022532231の分割
【原出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 和希
(72)【発明者】
【氏名】大浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】刈屋 俊一
(57)【要約】
【課題】電気泳動装置の処理時間を短縮する技術を提供する。
【解決手段】本開示の電気泳動装置は、泳動媒体が充填されるキャピラリと、サンプルが収容されたサンプル容器を保管する保管部と、前記サンプル容器を搬送するオートサンプラと、前記サンプル容器に記された前記サンプルの情報を読み取る情報読み取り部と、前記オートサンプラの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サンプル容器を前記保管部から前記情報読み取り部の読み取り位置まで搬送するように、前記オートサンプラを駆動することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泳動媒体が充填されるキャピラリと、
サンプルが収容されたサンプル容器を保管する保管部と、
前記サンプル容器を搬送するオートサンプラと、
前記サンプル容器に記された前記サンプルの情報を読み取る情報読み取り部と、
前記オートサンプラの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記サンプル容器を前記保管部から前記情報読み取り部の読み取り位置まで搬送するように、前記オートサンプラを駆動することを特徴とする電気泳動装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記保管部は、前記サンプル容器の有無を検知するセンサを有し、
前記制御部は、
前記センサが、前記サンプル容器が配置されたことを検知すると、
前記保管部から前記読み取り位置に前記サンプル容器を搬送するように前記オートサンプラを駆動し、
前記情報読み取り部の読み取り信号に基づいて前記サンプルの情報を読み取ることを特徴とする電気泳動装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記保管部は、複数の保管位置で前記サンプル容器を保管し、
前記センサは、前記複数の保管位置のそれぞれに設けられており、
前記制御部は、
前記センサにより前記サンプル容器が配置されたと検知された前記保管位置から、前記読み取り位置に前記サンプル容器を搬送するように、前記オートサンプラを駆動することを特徴とする電気泳動装置。
【請求項4】
請求項1において、
バッファが収容されたバッファ容器を搬送するバッファ用オートサンプラをさらに備えることを特徴とする電気泳動装置。
【請求項5】
請求項1において、
バッファが収容されたバッファ容器と、
前記キャピラリの一端部が位置するキャピラリ位置において前記サンプル容器又は前記バッファ容器を固定する第1の固定部と、
前記キャピラリ位置の近傍の待機位置において前記サンプル容器又は前記バッファ容器を固定する第2の固定部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1の固定部と前記第2の固定部との間で前記バッファ容器を搬送し、
前記保管部、前記第1の固定部及び前記第2の固定部の間で前記サンプル容器を搬送するように、前記オートサンプラを駆動することを特徴とする電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャピラリ電気泳動法は、デオキシリボ核酸(DNA)をはじめとする生体試料を分離し分析する技術として広く普及している。一般に、キャピラリ電気泳動装置には、サンプルを保管するホルダーやサンプルをキャピラリに搬送するステージ等が搭載されている。
【0003】
特許文献1は、「サンプルの解析のためのサンプルハンドリング及び制御方法が改善された紫外線吸光に基づくマルチプレックスキャピラリ電気泳動システム及びコンソールを提供する。」ことを課題として、「x-zステージは、ユーザがアクセス可能な引出しから、解析用のキャピラリアレイにサンプルを移動させる。コンピュータプログラムにより、ユーザは、実行中の処理を停止又は中断することなく、サンプルの列又はプレートの解析に対応するキャピラリ電気泳動ジョブをキューに追加できる。」という技術を開示している(同文献の要約参照)。
【0004】
特許文献2は、「電気泳動装置において、サンプルの劣化を防止し、且つ、効率的に分析を行うこと」を課題として、「電気泳動法によってサンプルプレートに収容された試料を分析する電気泳動分析部と、複数のサンプルプレートを積載できる冷凍保管槽と、該冷凍保管槽のサンプルプレートを上記電気泳動分析部に搬送する前に一時的に保管する待機装置と、サンプルプレートを搬送する搬送装置と、を有し、電気泳動分析部においてサンプルプレートを分析している際に、別のサンプルプレートを待機装置にて保管する」という技術を開示している(同文献の要約及び請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-35753号公報
【特許文献2】特許4377764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の電気泳動装置は、いずれも電気泳動中に、不要サンプルの交換やサンプル処理順序の変更の機能を有しているものの、搬送ステージが1つであるため、搬送系による搬送時間が長く、装置の全体の処理に時間を要してしまう。
【0007】
そこで、本開示は、電気泳動装置において、電気泳動中にサンプル容器の交換が可能であり、且つ電気泳動の処理時間を短縮する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の電気泳動装置は、泳動媒体が充填されるキャピラリと、バッファ溶液が収容されたバッファ容器と、サンプルが収容されたサンプル容器を保管する保管部と、前記サンプル容器及び前記バッファ容器をそれぞれ搬送する少なくとも1つのオートサンプラと、前記オートサンプラの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記キャピラリの一端部が位置するキャピラリ位置に前記バッファ容器を配置している間、前記保管部から前記キャピラリ位置の近傍の待機位置に前記サンプル容器を搬送し、前記バッファ容器を前記キャピラリ位置から前記待機位置に搬送したときに、前記サンプル容器を前記待機位置から前記キャピラリ位置に搬送するように、前記オートサンプラを駆動することを特徴とする。
【0009】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術によれば、電気泳動中にサンプル容器の交換が可能であり、且つ電気泳動の処理時間を短縮することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る電気泳動装置の概略図である。
図2】サンプル容器がバーコードリーダの読み取り位置に搬送された状態を示す概略図である。
図3】オートサンプラの駆動領域を示す概略図である。
図4A】サンプル用オートサンプラの移動ステージの側面図である。
図4B】サンプル用オートサンプラの移動ステージの正面図である。
図5A】保管部の上面図である。
図5B図5AのA矢視図であり、保管部の側面図である。
図6】電気泳動装置における一連の動作を示すフローチャートである。
図7】電気泳動動作の概要を示すフローチャートである。
図8】駆動系が1つの場合におけるサンプル容器及びバッファ容器の搬送動作を示すフローチャートである。
図9】サンプル用オートサンプラ及びバッファ用オートサンプラによるサンプル容器及びバッファ容器の搬送動作を示すフローチャートである。
図10】サンプル情報の読み取り時における動作を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る、サンプル容器及びバッファ容器の搬送動作を示すタイミングチャートである。
図12】第2の実施形態に係る電気泳動装置の一部の構成を示す概略図である。
図13】第2の実施形態におけるサンプル容器及びバッファ容器の搬送動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の電気泳動装置の特徴を換言してみれば、本開示の電気泳動装置は、従来の搬送ステージに代わるオートサンプラを少なくとも1つ有すると共に、搬送系による搬送時間を短縮するのに有効な他の構成を更に有することを特徴とすると言える。この特徴により、搬送系による搬送時間を短縮し、以て装置全体の処理時間を短縮する効果が期待される。
【0013】
上記「他の構成」としては、(I)従来の搬送ステージに代わる部分をもう1つ有するという構成と、(II)サンプル容器に記されたサンプルの情報を読み取る情報読み取り部及びそれに関連するサンプル容器搬送制御系を更に有するという構成と、(III)上記(I)と上記(II)との組合せに係る構成と、大別して3つの構成が考えられる。
【0014】
上記(I)の構成は、従来の搬送ステージに代わる部分として、互いに分離された2つの部分を有することを特徴とすると言える。互いに分離された2つの搬送ステージ部分は、少なくとも一方が可動式となっていればよく、よって、(1)2つのうちの両方が可動式となっている態様と、(2)2つのうちの一方が固定式となっており、もう一方が可動式となっている態様と、2つの態様が考えられる。上記(1)(2)共に本開示の範囲に属する。上記(1)を「第1の実施形態」として、また、上記(2)を「第2の実施形態」として、以下、図面を参照しながらそれぞれの実施形態について詳細に説明する。特に、上記(1)の2つの可動式の搬送ステージ部分は、「第1の実施形態」においては、それぞれ、「サンプル用オートサンプラ」及び「バッファ用オートサンプラ」として説明される。また、上記(2)の固定式の搬送ステージ部分及び可動式の搬送ステージ部分は、「第2の実施形態」においては、それぞれ、「固定部」及び「オートサンプラ」として説明される。
【0015】
上記(II)及び上記(III)の構成は、「第1の実施形態」の変形例として、「第1の実施形態」の説明の中で併せて説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
<電気泳動装置の構成例>
図1は、第1の実施形態に係る電気泳動装置101の概略図である。電気泳動装置101は、キャピラリ電気泳動部102、照射検出ユニット103、ポンプ機構104、オートサンプラ機構105、信号処理部150及び制御部160を備える。
【0017】
キャピラリ電気泳動部102は、ロードヘッダ106、陰極電極107、キャピラリアレイ108、バーコードリーダ128、恒温槽109及び高圧電源110を有する。
【0018】
キャピラリアレイ108は、複数本のキャピラリで構成されており、陰極側にロードヘッダ106が固定され、陽極側にキャピラリヘッド111が固定されている。キャピラリは、例えば内径数十μm、外形数百μmのガラス管であり、外被はポリイミド樹脂でコーティングされている。ただし、照射検出ユニット103の検出部112においては、キャピラリ内部の発光が外部に漏れるようにコーティングが除去されている。
【0019】
ロードヘッダ106は、恒温槽109に固定され、ロードヘッダ106に陰極電極107が設けられている。各キャピラリは陰極電極107を通過して陰極電極107の先端から突出している。高圧電源110は、陰極電極107に接続され、陰極電極107に電圧を印加する。
【0020】
恒温槽109は、泳動中のキャピラリアレイ108の温度を一定に維持する。
【0021】
照射検出ユニット103は、電気泳動媒体によって分離されたサンプル(例えば生体試料)を光学的に検出する。照射検出ユニット103は、検出部112、光源113及び光学検出器114を有する。検出部112は、キャピラリ内を流れるサンプルの光学的情報を読み取る部分である。光源113としては、例えば液体レーザ、気体レーザ、半導体レーザなどを適宜使用でき、LEDで代用することも可能である。光源113から励起光が検出部112に照射されることにより、サンプルに依存した波長の光が放出され、光学検出器114によって、放出された光が検出される。光学検出器114は、例えばCCDセンサ、フォトダイオードなどの光センサを有し、光の検出信号を信号処理部150に出力する。信号処理部150は、アナログ/デジタル変換回路(不図示)を有し、光学検出器114から検出信号を受信すると、検出信号をアナログ/デジタル変換回路によりデジタル信号に変換して、制御部160に出力する。
【0022】
ポンプ機構104は、キャピラリ及び通電路に電気泳動媒体を注入する。ポンプ機構104は、キャピラリヘッド111、ブロック115、ポンプ116、逆止弁117、ピンバルブ118、ポリマ容器119、バッファ容器120及び陽極電極121を有する。
【0023】
キャピラリヘッド111は、複数本のキャピラリを1つに束ねており、ブロック115に挿入するための凸部を有する。ポリマ容器119は、電気泳動媒体となるポリマを収容する。ポリマとしては、例えばポリアクリルアミド系分離ゲルを用いることができる。ポンプ116の駆動により、ブロック115内の流路にポリマが充填され、このポリマがキャピラリに注入される。バッファ容器120は泳動用のバッファ溶液を収容し、陽極電極121はこのバッファ溶液に浸漬される。
【0024】
オートサンプラ機構105は、サンプル用オートサンプラ123、バッファ用オートサンプラ124及び保管部126を有する。
【0025】
サンプル用オートサンプラ123及びバッファ用オートサンプラ124は、それぞれ、移動ステージと、移動ステージを三軸方向に移動させるための3つのステッピングモータと、リニアガイドとを有する。サンプル用オートサンプラ123の移動ステージ上にはサンプル容器122が載置され、移動ステージを三軸方向に移動させることによりサンプル容器122を搬送する。サンプル用オートサンプラ123の移動ステージは、サンプル容器122を把持する電動グリッパ127を有する。電動グリッパ127により、サンプル容器122は移動ステージ上で固定される。サンプル容器122は、例えば、複数のウェルを有するウェルプレートとすることができる。図示は省略しているが、サンプル容器122の外壁には、サンプル容器122に収容されるサンプルの情報(サンプル情報)を示すバーコードが記されている。
【0026】
バッファ用オートサンプラ124の移動ステージ上には試薬容器125が載置され、移動ステージを三軸方向に移動させることにより試薬容器125を搬送する。試薬容器125には、泳動用のバッファ溶液を収容するバッファ容器129、キャピラリを洗浄する洗浄液を収容する洗浄槽130、及び余分な溶液が廃棄される廃液槽131があり、これらは同一の移動ステージ上に載置されている。図示は省略しているが、バッファ用オートサンプラ124にも電動グリッパ127を設けることができる。
【0027】
本明細書において、ロードヘッダ106の直下において、キャピラリアレイ108の陰極端(陰極電極107)がサンプル容器122又は試薬容器125の内部に位置するようなサンプル容器122及び試薬容器125の位置を「キャピラリ位置」という場合がある。図1においては、キャピラリ位置にバッファ容器129が位置し、陰極電極107がバッファ溶液に浸漬した状態が示されている。サンプル用オートサンプラ123及びバッファ用オートサンプラ124は、それぞれ移動ステージを移動させることにより、サンプル容器122、バッファ容器129、洗浄槽130又は廃液槽131をキャピラリ位置に移動させることができる。
【0028】
保管部126は、サンプル容器122を電気泳動装置101内に保管する場所であり、例えばキャピラリ位置の下方に配置される。保管部126は、例えばドロワであり、電気泳動装置101から略水平方向に引き出すことができる。ユーザは、電気泳動装置101の外部から保管部126にアクセスし、サンプル容器122を出し入れすることができる。図1に示す例においては、保管部126はサンプル容器122のみを保持しているが、サンプル容器122及び試薬容器125の両方を保持するようにしてもよい。保管部126には、サンプル容器122が配置されたことを検知する反射型フォトインタラプタ132(センサ)が設けられている。
【0029】
バーコードリーダ128(情報読み取り部)は、サンプル用オートサンプラ123によって保管部126から読み取り位置に搬送されてきたサンプル容器122に記されたバーコードを読み取り、読み取り信号を制御部160に出力する。制御部160は、バーコードリーダ128からの信号を処理することにより、サンプルの情報を取得する。なお、サンプル情報の読み取りの手法はバーコードを用いた方法に限定されず、例えばRFID又はQRコード(登録商標)などを用いることもできる。また、サンプル容器122にサンプル情報を示す文字を付して、バーコードリーダ128の代わりにカメラを設けてサンプル容器122の画像を撮像し、制御部160が画像データからサンプル情報を取得するようにしてもよい。
【0030】
制御部160は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などのコンピュータ装置であり、電気泳動装置101の各部を制御する。また、制御部160は、例えばプロセッサにより、上述のように信号処理部150からの光の検出信号(デジタル信号)の処理と、バーコードリーダ128からの読み取り信号の処理とを実行する。制御部160は、電気泳動装置101の各部と通信可能であればよく、電気泳動装置101の各部との接続は有線接続か無線接続かを問わない。図示は省略しているが、制御部160は、ユーザが指示や電気泳動条件を入力可能な入力デバイスと、GUI画面及び分析結果を表示する表示装置とを有する。
【0031】
図2は、サンプル容器122がバーコードリーダ128の読み取り位置に搬送された状態を示す概略図である。図2に示すように、サンプル用オートサンプラ123は、1つのサンプル容器122を保管部126からピックアップして移動ステージ1231上に載置し、移動ステージ1231を駆動して、バーコードリーダ128の読み取り位置にサンプル容器122を搬送する。なお、本明細書において、バーコードリーダ128の「読み取り位置」とは、バーコードリーダ128から照射される光1281が入射し、サンプル容器122のバーコードからの反射光がバーコードリーダ128に入射してサンプル情報を問題なく読み取ることができるような位置を指す。
【0032】
図2のように、バーコードリーダ128が電気泳動装置101に内蔵され、読み取り位置が保管部126の上方にあることにより、サンプル用オートサンプラ123が保管部126からピックアップしたサンプル容器122をそのまま読み取り位置に搬送して、サンプル情報を読み取ることができる。
【0033】
尚、バーコードリーダ128(情報読み取り部)及びそれに関連する構成を、オートサンプラとしてサンプル用オートサンプラ123及びバッファ用オートサンプラ124の2つを有する本実施形態において説明したが、本開示におけるバーコードリーダ128(情報読み取り部)及びそれに関連する構成は、オートサンプラとしてサンプル用オートサンプラ123を有し、かつ、バッファ用オートサンプラ124を有しない構成においても有効である。つまり、泳動媒体が充填されるキャピラリと、サンプルが収容されたサンプル容器を保管する保管部と、サンプル容器を搬送するオートサンプラと、サンプル容器に記された前記サンプルの情報を読み取る情報読み取り部と、オートサンプラの駆動を制御する制御部とを備え、その制御部が、サンプル容器を保管部から情報読み取り部の読み取り位置まで搬送するように、オートサンプラを駆動することを特徴とする電気泳動装置も、本開示の範囲に属する。この構成によれば、特にオートサンプラとしてサンプル用オートサンプラ123を有しかつバッファ用オートサンプラ124を有しない構成においても、搬送系による搬送時間を短縮し、以て装置全体の処理時間を短縮する効果が期待される。
【0034】
図3は、オートサンプラ機構105の駆動領域を示す概略図である。図3に示すように、サンプル用オートサンプラ123の駆動領域201と、バッファ用オートサンプラ124の駆動領域202とは、キャピラリの陰極端が各容器に挿入される位置以外は独立しており、それぞれが干渉しないようになっている。これにより、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124との接触及び衝突を防止することができる。
【0035】
図4Aは、サンプル用オートサンプラ123の移動ステージ1231の側面図であり、図4Bは、サンプル用オートサンプラ123の移動ステージ1231の正面図である。サンプル用オートサンプラ123の移動ステージ1231は、電動グリッパ127、ステージ301、位置決めピン303、ソレノイド304及びバネ305を有する。図4Aには、サンプル容器122が示されており、サンプル容器122の底面には位置決めピン303が嵌合する位置決め穴306が設けられている。図4Aにおいては、位置決めピン303及び位置決め穴306は2対設けられているが、数はこれに限定されない。
【0036】
位置決めピン303及び位置決め穴306が設けられていることにより、ステージ301上にサンプル容器122を固定する際に、毎回定位置で固定することができ、結果として、サンプルが収容されるウェル302にキャピラリを確実に挿入することができる。
【0037】
ソレノイド304は、電動グリッパ127の開閉動作を制御する。ソレノイド304に電流を流すとソレノイド304が駆動し、電動グリッパ127が開く。ソレノイド304に流す電流を止めると、バネ305の弾性力によって電動グリッパ127は閉じる。サンプル容器122をステージ301上に載置する際には、電動グリッパ127を開いた状態とし、サンプル容器122をステージ301上に載置した後は、電動グリッパ127を閉じた状態とすることで、サンプル容器122を把持することができる。
【0038】
図5Aは、保管部126の上面図である。図5Bは、図5AのA矢視図であり、保管部126の側面図である。図5A及び5Bに示すように、保管部126は、土台1261、収納部1262及びインターロック機構1263を有する。
【0039】
収納部には、ユーザが保管部126を開閉するための取っ手1264が設けられている。ユーザは、取っ手1264を用いて保管部126を電気泳動装置101から引き出したり戻したりすることができる。このように、保管部126は、ユーザがアクセスしやすい形状である。
【0040】
図5Aの例においては、収納部1262には4つのサンプル容器122の配置場所があるが、サンプル容器122の収納数は4つに限定されない。サンプル容器122の各配置場所には、反射型フォトインタラプタ132が設けられている。反射型フォトインタラプタ132は、サンプル容器122が配置されたことを検知し、サンプル容器122がない場合は未検知となる。反射型フォトインタラプタ132の検知信号は、制御部160に出力される。これにより、保管部126上のどの位置にサンプル容器122が配置されているかを確認できる。
【0041】
サンプル容器122の各配置場所には、サンプル容器122の位置を固定するための支え1265が設けられている。さらに、サンプル容器122の各配置場所には、サンプル容器122の側面の一部と非接触のくぼみ1266が設けられており、このくぼみ1266は、電動グリッパ127が開状態となった際の通路となる。
【0042】
インターロック機構1263は、板金1267及びソレノイド1268を有する。板金1267には開口部が設けられており、ソレノイド1268には、板金1267の開口部に挿入可能な棒状部材1269を有する。ソレノイド1268に電流を流すと、板金1267の開口部に棒状部材1269が挿入されて、ロック状態となる(図5Aの点線)。ソレノイド1268に流す電流をオフにすると、板金1267の開口部から棒状部材1269が退避して、アンロック状態となる(図5Aの実線)。ソレノイド1268への電流の印加は、制御部160により制御される。
【0043】
インターロック機構1263は、サンプル用オートサンプラ123が所定の位置にいない場合はロックをし、ユーザのアクセスを防止する。後述の電気泳動のサンプル注入時、及びサンプル情報の読み取り時以外は、サンプル用オートサンプラ123は所定の位置にいるため、この2つの処理中以外のタイミングは、ユーザがサンプルにアクセスできるように、インターロック機構1263はアンロック状態となる。サンプル用オートサンプラ123の「所定の位置」とは、例えば、電気泳動装置101の起動時のイニシャル位置であり、キャピラリ位置の近傍とすることができる。
【0044】
保管部126は、キャピラリ位置付近に設置することで搬送時間を短縮できる。また、保管部126をサンプル用オートサンプラ123のリニアガイドの上方に配置することで、電気泳動装置101のサイズの縮小が可能となる。
【0045】
<電気泳動装置の動作>
図6は、電気泳動装置101における一連の動作を示すフローチャートである。
【0046】
(ステップ501)
ユーザは、キャピラリアレイ108、ポリマを収容するポリマ容器119、陽極側のバッファ溶液を収容するバッファ容器120、陰極側のバッファ溶液を収容するバッファ容器129、サンプルを収容するサンプル容器122をそれぞれ電気泳動装置101の所定の位置に設置する。バッファ溶液を容器に入れる際、電極が浸る程度まで溶液を入れる必要がある。また、陽極側は、ブロック115から延伸する管の先端もバッファ容器120中のバッファ溶液に浸漬する。電極及び管がバッファ溶液に浸漬していない状態で電気泳動を行うと、放電が生じる恐れがあるためである。また、陽極側及び陰極側の両方のバッファ溶液の水位を同じにすることで、高低差による圧力の差が発生することを防止できる。
【0047】
(ステップ502)
ユーザは、電気泳動装置101の電源をONにする。制御部160は、電気泳動装置101の電源がONになったことを示す信号を受信すると、ポンプ機構104を駆動して、キャピラリ内にポリマを充填する。
【0048】
(ステップ503)
ユーザは、電気泳動を行う通電路が正常な状態であるかを確認する。具体的には、ユーザは、通電路にポリマが充填されているか、気泡などの異物が混入していないかを確認する。キャピラリアレイ108やポリマ容器119の交換の際、ポンプ機構104を用いる、もしくはユーザがシリンジ等を用いて手動で流路内をポリマで再充填した後、ユーザは、目視で流路内の異常、例えば気泡混入等を確認する。しかし、微小な異物や気泡は目視で確認することは難しく、見落としてしまう場合がある。異物が混入した状態で電気泳動を行うと、異物が抵抗として働き、電気泳動時に正常な測定ができないことや、放電が生じる危険がある。異物が混入していた場合、制御部160は、バッファ溶液をキャピラリに流すなど、任意の方法で異物を通電路から除去する。
【0049】
(ステップ504)
ユーザは、制御部160の入力デバイスを用いて、電気泳動に用いる条件を設定する。
【0050】
(ステップ505)
ユーザは、電気泳動動作の開始の指示を入力する。制御部160は、電気泳動開始の指示を受信すると、電気泳動動作を実行する。
【0051】
(ステップ506)
制御部160は、1つのサンプル、若しくは1つのサンプル容器122の各サンプルの電気泳動が終了すると、次に処理すべきサンプルがあるかどうかを判断する。処理すべきサンプルがある場合は、ステップ505に戻り、電気泳動動作を行う。処理すべきサンプルがない場合は、動作を終了する。
【0052】
<電気泳動方法>
図7は、上述のステップ505における電気泳動動作の概要を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップ601)
制御部160は、ポンプ116を駆動して、ブロック115内にポリマを充填する。
【0054】
(ステップ602)
制御部160は、ピンバルブ118を閉め、ポンプ116を駆動してキャピラリアレイ108にポリマを注入する。
【0055】
(ステップ603)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、保管部126に収納されているサンプル容器122のうち1つを移動ステージ1231上に載置し、バーコードリーダ128の読み取り位置に移動させる。制御部160は、バーコードリーダ128の読み取り信号を受信して、サンプル情報を読み取る。
【0056】
(ステップ604)
制御部160は、バッファ用オートサンプラ124を駆動して、バッファ容器129をキャピラリ位置から退避させる。次に、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、キャピラリ位置にサンプル容器122を搬送し、キャピラリアレイ108の陰極端をサンプル容器122内のサンプルに浸漬する。制御部160は、高圧電源110を駆動して、陰極電極107及び陽極電極121間に電圧を印加することにより、キャピラリアレイ108にサンプルを注入する。
【0057】
(ステップ605)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、サンプル容器122を保管部126上に戻し、バッファ用オートサンプラ124を駆動して、バッファ容器129をキャピラリ位置に搬送し、キャピラリアレイ108の陰極端をバッファ容器129内のバッファ溶液に浸漬する。その後、制御部160は、高圧電源110を駆動して、陰極電極107及び陽極電極121間に電圧を印加することにより、電気泳動を行う。
【0058】
この電気泳動中に、バッファ用オートサンプラ124は、バッファ容器129をキャピラリ位置に固定しているが、サンプル用オートサンプラ123は駆動が可能である。また、電気泳動中は、保管部126のインターロック機構1263がアンロック状態とすることができる。したがって、ユーザは、電気泳動中に保管部126を開けて新しいサンプル容器122に交換することができ、サンプル用オートサンプラ123の駆動により、バーコードリーダ128でサンプル情報を読み取ることができる。
【0059】
<オートサンプラの動作>
上記の電気泳動動作(図7)のうち、オートサンプラ機構105によるサンプル容器122及びバッファ容器129の搬送動作について詳細に説明する。搬送動作は、主に、(1)サンプル情報の読み取り、及び、(2)サンプル注入時のキャピラリ位置へのサンプル容器とバッファ容器の差し替え、に大別される。(1)サンプル情報の読み取りはサンプル用オートサンプラ123での動作であり、(2)キャピラリ位置へのサンプル容器とバッファ容器の差し替えは、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124間での入れ替え動作となる。
【0060】
ここで、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124の2つの駆動系による搬送動作を説明する前に、まず、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124を用いる代わりに、1つのオートサンプラを用いてサンプル容器122及びバッファ容器129の搬送を行う場合の動作を説明する。この場合の電気泳動装置のオートサンプラの構成は、図1におけるサンプル用オートサンプラ123及びバッファ用オートサンプラ124の代わりに、1つのオートサンプラのみを有し、当該オートサンプラの移動ステージ上にサンプル容器122又は試薬容器125が載置されるような構成となる。
【0061】
図8は、オートサンプラが1つの場合におけるサンプル容器122及びバッファ容器129の搬送動作を示すフローチャートである。図8の左図(ステップ701~707)は、サンプル情報の読み取り時の動作を示している。
【0062】
(ステップ701)
ユーザは、保管部126でサンプル容器122の交換を行う。
【0063】
(ステップ702)
ユーザは、サンプル容器122を保管部126に配置し終えたら、保管部126を閉める。このとき、保管部126の反射型フォトインタラプタ132は、サンプル容器122が配置されたことを検知し、制御部160に検知信号を出力する。
【0064】
(ステップ703)
制御部160は、反射型フォトインタラプタ132の検知信号から、サンプル容器122が配置された配置場所を特定し、当該配置場所のサンプル容器122の情報を読み取る。具体的には、制御部160は、オートサンプラを駆動して、キャピラリ位置にあったバッファ容器129を保管部126上に搬送する。
【0065】
(ステップ704)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、上記の配置場所のサンプル容器122を移動ステージに載置し、バーコードリーダ128の読み取り位置まで搬送する。
【0066】
(ステップ705)
制御部160は、バーコードリーダ128の読み取り信号を受信して、サンプル情報を読み取る。
【0067】
(ステップ706)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、サンプル容器122をバーコードリーダ128の読み取り位置から保管部126上に戻す。
【0068】
(ステップ707)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、バッファ容器129を保管部126からキャピラリ位置まで搬送し、キャピラリアレイ108の陰極端をバッファ溶液に浸漬させる。
【0069】
図8の右図(ステップ708~715)は、サンプル注入時の動作を示している。
【0070】
(ステップ708)
本ステップでは、オートサンプラ上のバッファ容器129はキャピラリ位置にあり、バッファ容器129にキャピラリアレイ108の陰極端が挿入された状態である。
【0071】
(ステップ709)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、バッファ容器129を保管部126上に搬送する。
【0072】
(ステップ710)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、指定された保管部126位置のサンプル容器122をオートサンプラの移動ステージに載置する。
【0073】
(ステップ711)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、サンプル容器122をキャピラリ位置まで搬送し、キャピラリアレイ108の陰極端をサンプルに浸漬する。
【0074】
(ステップ712)
制御部160は、高圧電源110を駆動して、陰極電極107及び陽極電極121間に電圧を印加することにより、サンプルをキャピラリアレイ108内に注入する。
【0075】
(ステップ713)
サンプルの注入が終了したら、制御部160は、オートサンプラを駆動して、サンプル容器122をキャピラリ位置から保管部126上に戻す。
【0076】
(ステップ714)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、オートサンプラの移動ステージに再度バッファ容器129を載置する。
【0077】
(ステップ715)
制御部160は、オートサンプラを駆動して、バッファ容器129をキャピラリ位置まで搬送し、キャピラリアレイ108の陰極端をバッファ溶液に浸漬する。
【0078】
以上では、サンプル情報を読み取った後(ステップ705)、キャピラリ位置にバッファ容器を戻して(ステップ707)、サンプル注入の動作(ステップ708以降)に移行する例を説明した。別の形態として、サンプル情報を読み取った後(ステップ705)、電気泳動の準備が完了している場合には、ステップ706~710を行わずにそのままサンプル容器122をキャピラリ位置に移動させて(ステップ711)、サンプルを注入する(ステップ712)ようにしてもよい。
【0079】
上述のステップ701のように、サンプル容器が交換された際は、交換したサンプル容器が何かを判別し、以降の電気泳動処理の順番を決めるために、サンプル情報の読み込みを行う必要がある。従来、サンプル情報の読み取りは、サンプル容器を装置に搭載する前に装置外部で行ったり、装置に搭載されたすべてのサンプル容器の情報を読み込んだりしていた。これに対し、本実施形態の方法では、バーコードリーダ128のようなサンプル情報の読み取り機能を電気泳動装置101に内蔵化し、且つ、交換されたサンプル容器のみの情報を読み取る。また、オートサンプラを用いて、保管部126からサンプル容器122をピックアップしてバーコードリーダ128の読み取り位置まで搬送し、サンプル情報を読み取ることができる。したがって、サンプル容器122の投入後、収容されるサンプルの情報をすぐに読み取ることができるので、全体の処理時間を短縮することができる。
【0080】
しかしながら、オートサンプラ(駆動系)が1つだと、サンプル容器122の搬送を行う前に必ずバッファ容器129を保管部126上に戻し、サンプル容器122の搬送後にバッファ容器129に載せ変え、キャピラリ位置に搬送する必要がある。オートサンプラがキャピラリ位置と保管部126間を何度も搬送することになり、処理時間を要してしまう。また、サンプル容器122の搬送にオートサンプラを用いるため、サンプル容器122の搬送中は、キャピラリアレイ108の陰極端は空気に暴露され続けてしまい、分析性能が劣化する恐れがある。
【0081】
そこで、サンプル用オートサンプラ123及びバッファ用オートサンプラ124の2つの駆動系を用いることにより、処理時間をさらに短縮し、かつ分析性能の劣化も防止することができる。
【0082】
図9は、サンプル用オートサンプラ123及びバッファ用オートサンプラ124によるサンプル容器122及びバッファ容器129の搬送動作を示すフローチャートである。図9の左図(ステップ801~805)は、サンプル情報の読み取り時の動作を示している。
【0083】
(ステップ801)
ユーザは、保管部126でサンプル容器122の交換を行う。
【0084】
(ステップ802)
ユーザは、サンプル容器122を保管部126に配置し終えたら、保管部126を閉める。このとき、保管部126の反射型フォトインタラプタ132は、サンプル容器122が配置されたことを検知し、制御部160に検知信号を出力する。
【0085】
(ステップ803)
制御部160は、反射型フォトインタラプタ132の検知信号から、サンプル容器122が配置された配置場所を特定し、当該配置場所のサンプル容器122の情報を読み取る。具体的には、制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、上記の配置場所のサンプル容器122を移動ステージに載置し、バーコードリーダ128の読み取り位置まで搬送する。
【0086】
(ステップ804)
制御部160は、バーコードリーダ128の読み取り信号を受信して、サンプル情報を読み取る。
【0087】
(ステップ805)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、バーコードリーダ128の読み取り位置から保管部126に戻す。
【0088】
図9の右図(ステップ806~813)は、サンプル注入時の動作を示している。
【0089】
(ステップ806)
本ステップでは、バッファ用オートサンプラ124上のバッファ容器129はキャピラリ位置にあり、バッファ容器129にキャピラリアレイ108の陰極端が挿入された状態である。
【0090】
(ステップ807)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、上記の配置場所のサンプル容器122を移動ステージに載置し、バーコードリーダ128の読み取り位置まで搬送する。制御部160は、バーコードリーダ128の読み取り信号を受信して、サンプル情報を読み取る。このサンプル情報の読み取りは、ステップ804で読み取ったサンプル情報と同じであること、すなわちサンプルに間違いがないことを確認するために行われる。次に、制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、サンプル容器122キャピラリ位置の真下の待機位置まで搬送する。
【0091】
(ステップ808)
制御部160は、バッファ用オートサンプラ124を駆動して、キャピラリ位置からバッファ容器129を退避させることにより、キャピラリアレイ108を抜去する。
【0092】
(ステップ809)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、待機位置からキャピラリ位置までサンプル容器122を搬送する。
【0093】
(ステップ810)
制御部160は、高圧電源110を駆動して、陰極電極107及び陽極電極121間に電圧を印加することにより、サンプルをキャピラリアレイ108内に注入する。
【0094】
(ステップ811)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、キャピラリ位置から待機位置までサンプル容器122を搬送する。
【0095】
(ステップ812)
制御部160は、バッファ用オートサンプラ124を駆動して、バッファ容器129を再度キャピラリ位置に搬送する。
【0096】
(ステップ813)
制御部160は、サンプル用オートサンプラ123を駆動して、待機位置にあるサンプル容器122を保管部126に戻す。
【0097】
保管部126のインターロック機構1263に関して、サンプル用オートサンプラ123が駆動中、若しくは処理中時にアンロックしてしまうと、駆動部にユーザが手を入れて損傷してしまう恐れがある。したがって、制御部160は、サンプル用オートサンプラ123が所定の位置にないときは、保管部126が開けられないようにインターロック機構1263をロック状態にし、その他の状態ではアンロック状態とする。
【0098】
図10は、サンプル情報の読み取り時(ステップ801~805)におけるインターロック機構1263及び反射型フォトインタラプタ132の動作を示すフローチャートである。
【0099】
ステップ801のサンプル交換のとき、保管部126はロックされているので、ステップ901において、制御部160は、インターロック機構1263をアンロックする。ステップ902において、ユーザは、保管部126を開き、ステップ903において、所定の配置場所にサンプル容器122を配置する。このとき、所定の配置場所にはサンプル容器122がないため、ステップ904において、反射型フォトインタラプタ132は、サンプル容器122を未検知であり、配置後には、反射型フォトインタラプタ132はサンプル容器122を検知する。
【0100】
ユーザは、サンプル容器122を配置し終えたら、ステップ802において保管部126を閉める。次に、ステップ803において、サンプル用オートサンプラ123は保管部126からサンプル容器122を取り、読み取り位置まで搬送する。このとき、ステップ905において、サンプル容器122を配置した際に反射型フォトインタラプタ132が未検知から検知状態に遷移した配置場所を指定し、ステップ906において、サンプル用オートサンプラ123により、指定された配置場所のサンプル容器122を取る。ステップ907において、制御部160は、サンプル用オートサンプラ123にサンプル容器122を載置したとき、反射型フォトインタラプタ132が検知から未検知状態に遷移したことを確認する。ステップ908において、制御部160は、サンプル用オートサンプラ123により、サンプル容器122を読み取り位置まで搬送する。その後、上述のステップ804及び805を実行する。
【0101】
<まとめ>
以上のように、第1の実施形態の電気泳動装置101には、バーコードリーダ128などのサンプル情報読み取り装置と、サンプル容器122を保管する保管部126が内蔵されている。保管部126のサンプル容器122の配置場所では、反射型フォトインタラプタ132などのセンサによりサンプル容器122の有無が検知され、交換されたサンプル容器122についてのみサンプル情報が読み取られる。これにより、保管部126にある全てのサンプル容器122のサンプル情報を読み取る必要がなく、情報読み取りが必要なサンプル容器122だけを処理することができる。これに伴い、電気泳動装置101の処理時間を抑えることができる。さらに、ユーザが電気泳動装置101の操作のために拘束される時間を短縮することができる。
【0102】
また、第1の実施形態の電気泳動装置101においては、オートサンプラ機構105により、キャピラリ位置にバッファ容器を配置している間、保管部から待機位置にサンプル容器を搬送し、バッファ容器をキャピラリ位置から待機位置に搬送したときに、サンプル容器を待機位置からキャピラリ位置に搬送する。このように、サンプル容器122をキャピラリ位置に搬送してキャピラリアレイ108を挿入する前に、キャピラリ位置の近傍の待機位置で待たせることで、キャピラリアレイ108の陰極端が空気へ暴露される時間を短縮することができる。結果として、分析性能の劣化が防止される。
【0103】
さらに、サンプル容器122やバッファ容器129を搬送するオートサンプラを、サンプル容器搬送用及び試薬容器搬送用の2つに分けることによって、バッファ容器129を保管部126に戻す必要がなくなるので、処理時間を短縮できる。電気泳動中には、バッファ用オートサンプラ124はバッファ容器129をキャピラリ位置に搬送して固定されるが、サンプル用オートサンプラ123は自由に駆動できるため、保管部126からサンプル容器122を取り、サンプル情報の読み取り位置に搬送してサンプル情報を読み取ることができる。
【0104】
<第1の実施形態の変形例>
図9に示した方法は、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124が独立して駆動する方法であるが、処理時間短縮のために、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124を同時に駆動してもよい。
【0105】
図11は、変形例に係る、サンプル容器122及びバッファ容器129の搬送動作を示すタイミングチャートである。図11の上段は、図9の右図(ステップ806~813)におけるサンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124の動作を示し、下段は、本変形例における動作を示している。図11に示すように、図9においては、サンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124が交互に駆動されていたのに対し、本変形例においては、一部の動作においてサンプル用オートサンプラ123とバッファ用オートサンプラ124が同時に駆動される。これにより、処理時間が短縮されることが分かる。
【0106】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、サンプル容器122を搬送するサンプル用オートサンプラ123と、バッファ容器129を搬送するバッファ用オートサンプラ124を有する例を説明した。これに対し、第2の実施形態においては、オートサンプラを1つにし、キャピラリ位置の近傍の待機位置にサンプル容器122及びバッファ容器129を固定できる固定部を設けた構成を提案する。
【0107】
<電気泳動装置の構成例>
図12は、第2の実施形態に係る電気泳動装置1001の一部の構成を示す概略図である。本実施形態の電気泳動装置1001は、固定部1101~1103と、1つのオートサンプラ223とを有する。その他の構成については、第1の実施形態の電気泳動装置101と同様であるので、説明を省略する。
【0108】
固定部1103(第1の固定部)は、ロードヘッダ106の直下、すなわちキャピラリ位置に配置され、固定部1101及び1102(第2の固定部)は、固定部1103に隣接する位置、すなわちキャピラリ位置の近傍の待機位置に配置されている。固定部1101~1103は、断面がL字状の部材が向かい合った構造を有し、L字状の部材が水平方向に移動することにより開閉可能となっている。固定部1101~1103の開閉動作は制御部160により制御される。
【0109】
オートサンプラ223は、移動ステージ2231を備え、保管部126から、キャピラリ位置の固定部1103、並びにキャピラリ位置近傍の固定部1101及び1102に、サンプル容器122及び試薬容器125を搬送する。例えば、サンプル容器122を固定部1101に搬送し、試薬容器125を固定部1102に搬送する。
【0110】
保管部126は、固定部1101~1103の下方に配置されている。保管部126には、サンプル容器122及び試薬容器125が収納されている。
【0111】
<オートサンプラの動作>
図13は、第2の実施形態におけるサンプル容器122及びバッファ容器129の搬送動作を示すフローチャートである。なお、電気泳動装置における一連の全体的な動作は、第1の実施形態(図6及び7)と同様である。
【0112】
(ステップ1201)
制御部160は、オートサンプラ223及び固定部1103を駆動して、保管部126からバッファ容器129をキャピラリ位置の固定部1103に搬送し、固定する。
【0113】
(ステップ1202)
制御部160は、オートサンプラ223及び固定部1101を駆動して、保管部126からサンプル容器122を固定部1101に搬送し、固定する。
【0114】
(ステップ1203)
制御部160は、ポンプ機構104を駆動して、キャピラリ内にポリマを充填する。その後、制御部160は、固定部1103を駆動してバッファ容器129の固定を解除し、オートサンプラ223及び固定部1102を駆動して、固定部1103から固定部1102にバッファ容器129を搬送し、固定する。
【0115】
(ステップ1204)
制御部160は、オートサンプラ223及び固定部1101を駆動してサンプル容器122の固定を解除し、オートサンプラ223及び固定部1103を駆動して、固定部1101から固定部1103にサンプル容器122を搬送し、固定する。その後、制御部160は、高圧電源110を駆動して、陰極電極107及び陽極電極121間に電圧を印加することにより、サンプルをキャピラリアレイ108内に注入する。
【0116】
(ステップ1205)
制御部160は、オートサンプラ223及び固定部1103を駆動してサンプル容器122の固定を解除し、オートサンプラ223及び固定部1101を駆動して、固定部1103から固定部1101にサンプル容器122を搬送し、固定する。
【0117】
(ステップ1206)
制御部160は、オートサンプラ223及び固定部1102を駆動してバッファ容器129の固定を解除し、オートサンプラ223及び固定部1103を駆動して、固定部1102から固定部1103にバッファ容器129を搬送し、固定する。その後、制御部160は、高圧電源110を駆動して、陰極電極107及び陽極電極121間に電圧を印加することにより、電気泳動を行う。
【0118】
(ステップ1207)
制御部160は、電気泳動中に、オートサンプラ223及び固定部1101を駆動してサンプル容器122の固定を解除し、オートサンプラ223によりサンプル容器122を保管部126上に戻す。
【0119】
本実施形態において、通電路へのポリマの充填と、サンプル情報の読み取りは、例えばステップ1201と1202の間に実施することができる。
【0120】
<まとめ>
以上のように、第2の実施形態の電気泳動装置1001は、キャピラリ位置及びその近傍にサンプル容器122及びバッファ容器129を載置し固定することができる固定部1101~1103と、1つのオートサンプラ223とを備える。オートサンプラ223は、固定部1103(キャピラリ位置)及び固定部1102(待機位置)の間でバッファ容器129を搬送し、保管部126、固定部1101(待機位置)及び固定部1103(キャピラリ位置)の間で、サンプル容器122を搬送する。
【0121】
これにより、サンプル容器122及びバッファ容器129の搬送距離が短くなり、毎回これらの容器を保管部126に戻す必要もないため、電気泳動性能の劣化を抑えることができる。オートサンプラが1つで固定部1101~1103が設けられていない場合には、電気泳動時に、オートサンプラはキャピラリ位置でのバッファ容器129の保持に用いられるため、サンプル容器の読み取り動作を実施することができない。これに対し、本実施形態では、電気泳動時にバッファ容器129は固定部1103により固定されるため、オートサンプラ223が1つであっても、第1の実施形態と同様に、電気泳動中にサンプル情報を読み取ることが可能である。
【0122】
また、第2の実施形態の電気泳動装置1001においては、オートサンプラ223により、固定部1103(キャピラリ位置)にバッファ容器129を配置している間、保管部126から固定部1101(待機位置)にサンプル容器122を搬送し、バッファ容器129を固定部1103(キャピラリ位置)から固定部1102(待機位置)に搬送したときに、サンプル容器122を固定部1101(待機位置)から固定部1103(キャピラリ位置)に搬送する。このように、サンプル容器122をキャピラリ位置に搬送してキャピラリアレイ108を挿入する前に、キャピラリ位置の近傍の待機位置で待たせることで、キャピラリアレイ108の陰極端が空気へ暴露される時間を短縮することができる。結果として、分析性能の劣化が防止される。
【0123】
[変形例]
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【符号の説明】
【0124】
101…電気泳動装置、102…キャピラリ電気泳動部、103…照射検出ユニット、104…ポンプ機構、105…オートサンプラ機構、106…ロードヘッダ、107…陰極電極、108…キャピラリアレイ、109…恒温槽、110…高圧電源、111…キャピラリヘッド、112…検出部、113…光源、114…光学検出器、115…ブロック、116…ポンプ、117…逆止弁、118…ピンバルブ、119…ポリマ容器、120…バッファ容器、121…陽極電極、122…サンプル容器、123…サンプル用オートサンプラ、124…バッファ用オートサンプラ、125…試薬容器、126…保管部、127…電動グリッパ、128…バーコードリーダ、129…バッファ容器、130…洗浄槽、131…廃液槽、132…反射型フォトインタラプタ、201…サンプル用オートサンプラの駆動領域、202…バッファ用オートサンプラの駆動領域、301…ステージ、302…ウェル、303…位置決めピン、304…ソレノイド、305…バネ、306…位置決め穴
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
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図9
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図11
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図13