(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181354
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】気流搬送設備
(51)【国際特許分類】
B65G 53/52 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B65G53/52
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185332
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2019147677の分割
【原出願日】2019-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】土井 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 明則
(57)【要約】
【課題】粉粒体運搬車のタンク内に収容された粉粒体をサイロ内に移送する際に、サイロの入口側パイプとの接続部分に隙間が生じ難いフレキシブル配送管及びその接続方法並びにサイロの入口側パイプを提供する。
【解決手段】上流側アダプタと下流側アダプタからなる配管継手において、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように下流側アダプタの係止部17が設置されている場合に、その端縁17aにおいて最も高い位置と最も低い位置の2箇所に上流側アダプタの2つのフックの先端を係合させるようにして上流側アダプタを下流側アダプタに連結させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状をなす下流側アダプタが粉粒体貯蔵庫の入口側パイプの先端に取り付けられた気流搬送設備において、
前記下流側アダプタは、粉粒体運搬車のタンクに接続されたフレキシブル配送管の先端に取り付けられた上流側アダプタとともに配管継手を構成するとともに、前記上流側アダプタの外周面に設けられた第1のフック及び第2のフックを係合可能に、側面視略椀状をなす係止部が端縁を下流側に向けた状態で開口端近傍の外周面に設けられており、
前記係止部を前記開口端側から見た場合に前記端縁の左右の側部に対し、前記第1のフック及び前記第2のフックを係合不能に切り欠きが形成されていることを特徴とする気流搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体運搬車によって運搬された粉粒体を気流搬送設備に供給するフレキシブル配送管とその接続方法に係り、特に、気流搬送設備の入口側パイプとの接続箇所に隙間が生じ難いフレキシブル配送管とその接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントなどの粉粒体は、粉粒体運搬車のタンク内に収容された状態で工場等に運ばれる。工場等の敷地内には、サイロと呼ばれる粉粒体貯蔵庫が設置されており、粉粒体運搬車のタンク内に収容されたセメントは、柔軟性を有する排出ホース(以下、フレキシブル配送管という。)を用いてサイロ内に移送される。
タンクが搭載された車両には、タンクの前側を持ち上げるための昇降装置が設置されているものがある。この場合、タンクを傾けることでタンクの後部に設けられた排出口からタンク内の収容物を外に排出することができる。
しかしながら、このようにタンク内の収容物を排出する際にその自重を利用する機構は、タンク内の収容物が液体である場合には有効であるが、タンク内の収容物がセメントなどの粉粒体である場合には、その自重を利用する機構のみでは、これを短時間で効率よくタンクの外に排出することは容易でない。
【0003】
そこで、セメントなどの粉粒体を運搬する車両には、例えば、特許文献1に記載されているように、タンク内に圧縮空気を供給する装置が設置されている場合が多い。このような構造であれば、タンク内の粉粒体を圧縮空気の圧力によってタンクの外に排出し、さらに、タンクに接続されたフレキシブル配送管を通して容易にサイロへ供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉粒体運搬車のフレキシブル配送管は、セメントなどの粉粒体を圧縮空気の圧力によってサイロ内に送り込む際に脈動し易いが、フレキシブル配送管が脈動すると、サイロの入口側パイプとの接続部分がずれてしまうおそれがある。そして、フレキシブル配送管とサイロの入口側パイプの接続部分のずれによって隙間が生ると、粉粒体が噴出するという事故を招くことになる。
特許文献1に開示された発明は、サイロの入口側パイプやフレキシブル配送管の内部にフィルタが設置されていることから、タンク内の異物がサイロ内に送り込まれることを阻止できるという効果を有している。しかしながら、この発明では、フレキシブル配送管が脈動した場合にサイロの入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分に対して隙間を生じさせ難い構造となっていないため、当該接続部分に隙間が生じてしまい、そこから粉粒体が噴出するという事故を引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、粉粒体運搬車のタンク内に収容された粉粒体をサイロ内に移送する際に、サイロの入口側パイプとの接続部分に隙間が生じ難いフレキシブル配送管及びその接続方法並びにサイロの入口側パイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、略円筒形をなし開口端近傍の外周面に、第1のフックと第2のフックの基端側がそれぞれ回動自在に連結されており、粉粒体運搬車のタンクに接続されたフレキシブル配送管の先端に取り付けられる上流側アダプタと、略円筒形をなし開口端近傍の外周面に、側面視略椀状をなす係止部がその端縁を下流側に向けた状態で設けられており、粉粒体貯蔵庫の入口側パイプの先端に取り付けられる下流側アダプタと、を備え、開口端同士を接触させるとともに第1のフックと第2のフックを係止部の端縁に係合させることで上流側アダプタと下流側アダプタが連結されるように構成された配管継手を介して、入口側パイプに対してフレキシブル配送管を接続する方法であって、下流側アダプタの開口端側から見た場合に輪郭線が円形をなす端縁が鉛直平面と平行に設置されている係止部において、輪郭線の中心を通る鉛直線と45度よりも小さい角度で交差する輪郭線の直径の両端に相当する第1の箇所と第2の箇所に対して第1のフックと第2のフックをそれぞれ係合させるようにして上流側アダプタを下流側アダプタに連結させることを特徴とするものである。
【0008】
上流側アダプタが接続されたフレキシブル配送管の先端部分は、かなりの重量があるため、係止部を下流側アダプタの開口端側から見た場合に輪郭線が円形をなす端縁の水平方向の2箇所に対し、上流側アダプタの2つのフックを係合させると、上流側アダプタは先端側が上を向くような状態になり易い。そして、係止部に係合している2つのフックによって上流側アダプタと下流側アダプタのずれが抑制される作用は、係止部にフックが係合している2箇所を結んだ直線方向において最も効果的に発揮されるため、上述の方法では、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を圧縮空気の圧力によって粉粒体貯蔵庫の内部に供給する際にフレキシブル配送管に脈動が発生した場合、上流側アダプタに対する脈動の影響のうち、水平方向については抑制されるものの、上下方向については抑制されない。
【0009】
これに対し、第1の発明に係るフレキシブル配送管の接続方法によれば、係止部に係合している2つのフックが上流側アダプタと下流側アダプタのずれを抑制する力が鉛直方向の成分と水平方向の成分に分解されることから、粉粒体運搬車のタンクから粉粒体貯蔵庫に粉粒体を供給する際にフレキシブル配送管に発生した脈動が上流側アダプタに与える影響は、上下方向だけでなく水平方向についても抑制されるという作用を有する。
また、第1のフックと第2のフックを係合させる2箇所を結ぶ直線が鉛直方向となす角度が45度よりも小さく、上述の鉛直方向の成分が水平方向の成分よりも大きくなることから、フレキシブル配送管に発生した脈動が上流側アダプタの上下方向に与える影響を抑制する作用が効率よく発揮される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、輪郭線の中心を通る鉛直線に対して45度よりも小さい上記角度が0度であることを特徴とするものである。
このようなフレキシブル配送管の接続方法においては、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を粉粒体貯蔵庫の内部に供給する際に、フレキシブル配送管に発生する脈動が上流側アダプタの上下方向に対して与える影響を抑制する作用が第1の発明の場合よりもさらに効率よく発揮される。なお、当該影響のうち、水平方向については抑制されないが、粉粒体貯蔵庫の入口側パイプにフレキシブル配送管を接続した時点では上流側アダプタと下流側アダプタの接続部分にずれが生じ難いため、その後にフレキシブル配送管に脈動が発生した場合でも下流側アダプタに対して上流側アダプタが水平方向にずれることによって当該接続部分に隙間が生じる可能性は低い。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、第1のフック及び第2のフックとともに第3のフックを用いて上流側アダプタを下流側アダプタに連結させるフレキシブル配送管の接続方法であって、輪郭線の中心を通る鉛直線に対して45度よりも小さい角度をなす輪郭線の半径と輪郭線の交点のうち、第1の箇所及び第2の箇所のいずれとも重複しない第3の箇所に第3のフックを係合させることを特徴とするものである。
このようなフレキシブル配送管の接続方法においては、上流側アダプタと下流側アダプタの上下方向のずれを抑制する作用が第1の発明や第2の発明の場合に比べてより一層発揮される。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、第1の箇所乃至第3の箇所のうちのいずれかを輪郭線の最も高い位置又は最も低い位置にある箇所に設定することを特徴とするものである。
このようなフレキシブル配送管の接続方法においては、上流側アダプタと下流側アダプタの上下方向のずれを抑制する作用が第3の発明の場合よりもさらに効果的に発揮される。
【0013】
第5の発明は、略円筒形をなし開口端近傍の外周面に、第1のフックと第2のフックの基端側がそれぞれ回動自在に連結されており、粉粒体運搬車のタンクに接続されたフレキシブル配送管の先端に取り付けられる上流側アダプタと、略円筒形をなし開口端近傍の外周面に、側面視略椀状をなす係止部がその端縁を下流側に向けた状態で設けられており、粉粒体貯蔵庫の入口側パイプの先端に取り付けられる下流側アダプタと、を備え、開口端同士を接触させた状態で第1のフックと第2のフックとともに第3のフックを係止部の端縁に係合させることで上流側アダプタと下流側アダプタが連結されるように構成された配管継手を介して、入口側パイプに対してフレキシブル配送管を接続する方法であって、係止部を下流側アダプタの開口端側から見た場合に輪郭線が円形をなす前記端縁が鉛直平面と平行に設置されている状態で、係止部の端縁において、最も高い位置又は最も低い位置にある箇所を第1の箇所として第1のフックを係合させるとともに、第1の箇所を頂点とし、かつ、頂角が45度よりも小さい二等辺三角形の底辺の両端に相当する箇所を第2の箇所及び第3の箇所として、この第2の箇所及び第3の箇所に第2のフックと第3のフックをそれぞれ係合させるようにして上流側アダプタを下流側アダプタに連結させることを特徴とするものである。
このようなフレキシブル配送管の接続方法によれば、フレキシブル配送管と粉粒体貯蔵庫の入口側パイプに対して、それらの水平方向のずれを抑えようとする力が左右から均等に作用するため、入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分が第3の発明の場合よりもさらにずれ難いという作用を有する。
【0014】
第6の発明は、側面視略椀状をなす係止部が端縁を下流側に向けた状態で開口端近傍の外周面に設けられた略円筒状の下流側アダプタとともに配管継手を構成する略円筒状の上流側アダプタが先端に取り付けられたフレキシブル配送管において、上流側アダプタは、その開口端近傍の外周面に、第1のフック、第2のフック及びレバーハンドルの各基端側が第1の支軸、第2の支軸及び第3の支軸を介してそれぞれ回動自在に連結されるとともに、レバーハンドルの先端と第3の支軸との間に設けられた第4の支軸を介して回動自在に第3のフックの基端側がレバーハンドルに連結され、第1の支軸、第2の支軸及び第3の支軸の各軸方向が上流側アダプタの外周面の接線方向と平行をなすとともに、第3の支軸と第4の支軸の軸方向が互いに平行をなし、第1のフック、第2のフック及び第3のフックは、上流側アダプタの開口端を下流側アダプタの開口端に接触させた状態で係止部の端縁に対して係合可能に形成されていることを特徴とするものである。
上記構造のフレキシブル配送管においては、第3のフックとして脱着式フック等を用いなくとも第3の発明乃至第5の発明を実施できるため、作業性が良いという作用を有する。
【0015】
第7の発明は、略円筒状をなす下流側アダプタが粉粒体貯蔵庫の入口側パイプの先端に取り付けられた気流搬送設備において、下流側アダプタは、粉粒体運搬車のタンクに接続されたフレキシブル配送管の先端に取り付けられた上流側アダプタとともに配管継手を構成するとともに、上流側アダプタの外周面に設けられた第1のフック及び第2のフックを係合可能に、側面視略椀状をなす係止部が端縁を下流側に向けた状態で開口端近傍の外周面に設けられており、係止部を開口端側から見た場合に端縁の左右の側部に対し、第1のフック及び第2のフックを係合不能に切り欠きが形成されていることを特徴とするものである。
このような構造の気流搬送設備においては、下流側アダプタの係止部に対して上流側アダプタのフックを水平方向の2箇所に係合させることができないため、当該フックを下流側アダプタの係止部に係合させる際に、誤って係止部の水平方向の2箇所に係合させてしまうおそれがないという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明であるフレキシブル配送管の接続方法によれば、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を粉粒体貯蔵庫に移送する際に、粉粒体貯蔵庫の入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分が上下方向だけでなく、水平方向にもずれ難いため、フレキシブル配送管に水平方向に力が加わった場合でも粉粒体貯蔵庫の入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分に隙間が生じ難いため、当該接続部分から粉粒体が噴出するという事態を防ぐことができる。
【0017】
第2の発明によれば、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を粉粒体貯蔵庫に移送する際に、フレキシブル配送管に発生する脈動が上流側アダプタの上下方向に対して特に強い影響を与えるような場合でも粉粒体貯蔵庫の入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分から粉粒体が噴出することをより確実に防止することができる。
【0018】
第3の発明によれば、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を粉粒体貯蔵庫に移送する際に、粉粒体貯蔵庫の入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分から粉粒体が噴出するという事態を防ぐことができるという効果が第1の発明や第2の発明の場合に比べてより一層発揮される。
【0019】
第4の発明によれば、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を粉粒体貯蔵庫に移送する際に、フレキシブル配送管に発生する脈動が上流側アダプタの上下方向に対して特に強い影響を与えるような場合でも粉粒体貯蔵庫の入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分から粉粒体が噴出することを第3の発明の場合よりもさらに確実に防止できるという効果が発揮される。
【0020】
第5の発明によれば、粉粒体運搬車のタンクに収容された粉粒体を粉粒体貯蔵庫に移送する際に、粉粒体貯蔵庫の入口側パイプとフレキシブル配送管の接続部分から粉粒体が噴出するという事態を防ぐことができるという効果が第1の発明の場合よりもさらに確実に発揮される。
【0021】
第6の発明であるフレキシブル配送管によれば、第3の発明乃至第5の発明を実施する作業を効率よく行うことができる。
【0022】
第7の発明である気流搬送設備によれば、下流側アダプタの係止部に上流側アダプタのフックを係合させる際に作業ミスが発生し難いため、当該作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】サイロにフレキシブル配送管を介して粉粒体運搬車が接続された状態を示した図である。
【
図2】(a)は
図1に示した配管継手の拡大図であり、(b)及び(c)はそれぞれ同図(a)に示した配管継手の上流側アダプタ及び下流側アダプタの断面図である。
【
図3】(a)は
図2(b)においてレバーハンドルを開いた状態を示した図であり、(b)は
図2(a)におけるA方向矢視図である。
【
図4】(a)はフレキシブル配送管のサイロの入口側パイプに対する従来の接続方法を示した図であり、(b)及び(c)は本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法を示した図である。
【
図5】(a)は脱着式フックの外観斜視図であり、(b)及び(c)は本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法を示した図である。
【
図6】(a)は本発明の実施の形態に係るフレキシブル配送管の先端に取り付けられた配管継手の上流側アダプタの外観斜視図であり、(b)は本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法を示した図である。
【
図7】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る気流搬送設備を構成する配管継手の下流側アダプタの背面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法について
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
図1はサイロにフレキシブル配送管を介して粉粒体運搬車が接続された状態を示した図である。
図2(a)は
図1に示した配管継手の拡大図であり、
図2(b)及び
図2(c)はそれぞれ
図2(a)に示した配管継手の上流側アダプタ及び下流側アダプタの断面図である。また、
図3(a)は
図2(b)においてレバーハンドルを開いた状態を示した図であり、
図3(b)は
図2(a)におけるA方向矢視図である。さらに、
図4(a)は従来のフレキシブル配送管の接続方法を示した図であり、
図4(b)及び
図4(c)は本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法を示した図である。
なお、
図2(a)は
図1においてフレキシブル配送管とサイロの入口側パイプの接続箇所を上方から見た図に相当する。また、
図2(b)及び
図2(c)は
図2(a)を管の中心を通り、かつ、紙面に平行な断面で切断した状態を表している。
【0025】
図1に示すように、粉粒体運搬車1のタンク2に収容された状態で客先に運搬されたセメントは、客先の工場等の敷地内に設置されているサイロ(セメント貯蔵庫)3の入口側パイプ4に供給される。粉粒体運搬車1には、タンク2の内部に圧縮空気を供給するためのコンプレッサ(図示せず)が設置されており、入口側パイプ4には、その内部に送り込まれた粉粒体をサイロ3に導く気流を発生させるためのブロワ(図示せず)が設置されている。すなわち、サイロ3と入口側パイプ4はブロワとともに気流搬送設備を構成している。
【0026】
粉粒体運搬車1のタンク2に接続されたフレキシブル配送管5は、配管継手6を介してサイロ3の入口側パイプ4に接続されている。したがって、タンク2に収容されているセメントは、コンプレッサからタンク2に送り込まれた圧縮空気の圧力によって、タンク2の外に排出された後、フレキシブル配送管5と入口側パイプ4の内部を通って、サイロ3に供給される。
なお、配管継手6は、フレキシブル配送管5の先端に取り付けられる上流側アダプタ7と、サイロ3の入口側パイプ4の先端に取り付けられる下流側アダプタ8からなる。
【0027】
図2(a)乃至
図2(c)に示すように、上流側アダプタ7には、リング状部材9が外挿された状態で固定されており、このリング状部材9には、フック10、フック11及びレバーハンドル12が取り付けられている。
リング状部材9に対し、フック10とレバーハンドル12の基端10a,12aは支軸13a,13cを介してそれぞれ回動自在に連結されており、フック11の基端11aは、レバーハンドル12に対し、リング状部材9に連結された箇所の近くに支軸13bを介して回動自在に連結されている。また、上流アダプタ7の側面には、フック10の回動範囲を制限するために略門型をなす回動抑止部材14が設置されている。
【0028】
支軸13a~13cは、リング状部材9の中心軸を通る同一平面に対して直交するように配置されており、フック10、フック11及びレバーハンドル12はいずれも同一平面内でそれぞれ支軸13a~13cを中心として回動可能に設置されている。また、支軸13bは支軸13cとレバーハンドル12の先端12bの間に設けられている。
さらに、フック11とレバーハンドル12には、
図2(a)又は
図2(b)に示すようにレバーハンドル12を閉じた状態において安全ピン(図示せず)を連通可能に貫通孔15a,15bがそれぞれ設けられている。すなわち、フック11とレバーハンドル12は、貫通孔15a,15bに安全ピンを差し込むことで、回動が抑制される一方、貫通孔15a,15bから安全ピンを抜き出すと、再び回動可能となるように構成されている。
【0029】
上流側アダプタ7の開口端7aの近傍の内周面には、Oリング16が設置されており、下流側アダプタ8の開口端8aの外周面には、側面視略椀状をなす係止部17が端縁17aを下流側に向けた状態で設けられている。なお、フック10とフック11は、上流側アダプタ7の開口端7aの中に下流側アダプタ8の開口端8aの一部を差し込んだ状態において、係止部17の端縁17aに対して先端10b,11bを係合可能に形成されている。
【0030】
図2(a)に示すように、レバーハンドル12が閉じた状態であって、かつ、貫通孔15a,15bに安全ピンが差し込まれている場合、前述のとおり、フック10とフック11は回動不能であるため、フック10及びフック11の係止部17に対する係合状態が維持される。
これに対し、上述の状態において貫通孔15a,15bから安全ピンを抜き出すと、フック10とフック11は支軸13a,13bを中心としてそれぞれ回動可能となる。そこで、レバーハンドル12を
図3(a)に矢印Bで示すように支軸13bを中心として回動させると、フック11は支軸13bを介してレバーハンドル12に連結された基端11aが支軸13cを中心として時計回りに回転するため、先端11bは前方へ押しやられるようにして係止部17の端縁17aに対する係合状態が解消される。
このとき、フック10の先端10bは係止部17の端縁17aから外れ易い状態になっている。そこで、支軸13aを中心としてフック10を回動させると、フック10の先端10bの係止部17の端縁17aに対する係合状態も解消される。
【0031】
このように、配管継手6では、フック10の先端10bとフック11の先端11bを係止部17の端縁17aに係合させることにより、上流側アダプタ7と下流側アダプタ8の連結状態が維持される。そして、レバーハンドル12を操作することにより、フック10の先端10bとフック11の先端11bの係止部17の端縁17aに対する係合状態が解消される。
さらに、配管継手6では、上流側アダプタ7と下流側アダプタ8を接続する際に、下流側アダプタ8の開口端8aに設けられ、側面視略椀状をなす係止部17の側面に上流側アダプタ7の開口端7aが接触する構造となっているため、
図3(b)に示すように上流側アダプタ7の中心軸18aに対して下流側アダプタ8の中心軸18bが傾斜している状態でも係止部17の側面に上流側アダプタ7の開口端7aが接触する箇所に隙間が生じ難いという効果を有している。なお、中心軸18a,18bは、それぞれ上流側アダプタ7と下流側アダプタ8において蛇腹状に形成されていない部分(円筒体7b,8b)の円筒軸に相当する。
【0032】
係止部17を下流側アダプタ8の開口端8a側から見た場合、端縁17aの輪郭線は円形をなしているが、配管継手6において、フック10の先端10bとフック11の先端11bが係止部17に係合する箇所は、上述の円の直径の両端に相当する2か所である。そのため、配管継手6では、当該直径に直交する方向から上流側アダプタ7に力が作用した場合、上流側アダプタ7の中心軸18aと下流側アダプタ8の中心軸18bが端縁17aの中心軸に対して傾いた状態になり易い。
【0033】
図4(a)乃至
図4(c)は、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17を下流側アダプタ8の開口端8a側から見た状態に相当し、太い破線の丸印は、係止部17の端縁17aに対してフック10の先端10bとフック11の先端11bを係合させる箇所を示している。
従来、フック10の先端10bとフック11の先端11bは、
図4(a)に示すように輪郭線が円形をなす端縁17aに対し、水平方向と平行な直径の両端に相当する2箇所にそれぞれ係合させることが一般的であった。しかしながら、上流側アダプタ7が接続されたフレキシブル配送管5の先端部分は、かなりの重量があるため、このようにして上流側アダプタ7と下流側アダプタ8を連結した場合、
図3(b)に示したように上流側アダプタ7は先端側が上を向くような状態になり易い。
そして、係止部17に係合しているフック10,11によって上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれが抑制される作用は、係止部17にフック10,11が係合している2箇所を結んだ直線方向において最も効果的に発揮される。そのため、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17に対しフック10,11が水平方向の2箇所に係合している状態では、粉粒体運搬車1のタンク2に収容されたセメントを圧縮空気の圧力によってサイロ3の内部に供給する際にフレキシブル配送管5に脈動が発生した場合、上流側アダプタ7に対する脈動の影響のうち、水平方向については抑制されるものの、上下方向については抑制されない。
すなわち、
図4(a)に示したように、フック10の先端10bとフック11の先端11bを端縁17aにおいて水平方向と平行な直径の両端に相当する2箇所にそれぞれ係合させる方法では、上流側アダプタ7と下流側アダプタ8の接続部分のずれがさらに大きくなり、最終的には当該接続部分に隙間が生じる可能性が高い。
【0034】
図4(b)に示すように、鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17の端縁17aにおいて最も高い位置に対し、フック10の先端10bとフック11の先端11bのいずれか一方を係合させるとともに、他方を最も低い位置に係合させるようにして上流側アダプタ7を下流側アダプタ8に連結させた場合、
図3(b)に示したように上流側アダプタ7は先端側が上を向くような状態になり難い。
なお、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17に対してフック10,11が上下方向の2箇所に係合している場合、粉粒体運搬車1のタンク2に収容されたセメントをサイロ3の内部に供給する際にフレキシブル配送管5に発生する脈動が上流側アダプタ7に与える影響のうち、上下方向については抑制されるものの、水平方向については抑制されない。しかしながら、上述したように入口側パイプ4にフレキシブル配送管5を接続した場合、サイロ3へのセメントの供給を開始する前の時点で上流側アダプタ7と下流側アダプタ8の接続部分にずれが生じ難いため、サイロ3へのセメントの供給を開始した後に、フレキシブル配送管5に脈動が発生した場合でも下流側アダプタ8に対して上流側アダプタ7が水平方向にずれることによって当該接続部分に隙間が生じる可能性は低い。
したがって、
図4(b)に示したように端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17に対してフック10,11を最も高い位置にある箇所と最も低い位置にある箇所にそれぞれ係合させると、粉粒体運搬車1のタンク2に収容されたセメントをサイロ3に移送する際に、サイロ3の入口側パイプ4とフレキシブル配送管5の接続部分に隙間が生じ難いため、当該接続部分からセメントが噴出するという事態を防ぐことができる。
【0035】
図4(c)に示すように、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17において、端縁17aの輪郭線によって形成される円の中心Oを通る鉛直線Lに対して傾斜した状態で交差する直径Dの両端に相当する2箇所に対してフック10の先端10bとフック11の先端11bをそれぞれ係合させるようにして上流側アダプタ7を下流側アダプタ8に連結させた場合、係止部17に係合しているフック10,11が上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれを抑制する力が鉛直方向の成分と水平方向の成分に分解されることから、粉粒体運搬車1のタンク2からサイロ3にセメントを供給する際にフレキシブル配送管5に発生した脈動が上流側アダプタ7に与える影響は、上下方向だけでなく水平方向についても抑制される。
【0036】
ここで、係止部17に係合しているフック10,11が上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれを抑制する力をF、鉛直線Lと直径Dがなす角度をαとすると、上述の鉛直方向の成分と水平方向の成分は、それぞれFcosαおよびFsinαとなる。この場合、αが45度より小さいと、上述の鉛直方向の成分が水平方向の成分よりも大きくなる。
図3(b)を用いて既に説明したように上流側アダプタ7と下流側アダプタ8が連結されている場合、上流側アダプタ7は先端側が上を向くような状態になり易いため、フック10,11は上述の鉛直方向の成分が水平方向の成分よりも大きくなるような状態(すなわち、上述の角度αが45度よりも小さい状態)で係止部17に係合していることが望ましい。
【0037】
フレキシブル配送管5に発生する脈動が上流側アダプタ7の上下方向に対して特に強い影響を与えるような場合には、上述のとおり、係止部17の端縁17aに対し、直径Dの両端に相当する2箇所にフック10,11を係合させる際に、直径Dと鉛直線Lのなす角度αを45度より小さくすると良いが、45度よりは30度、30度よりは10度というように角度αは小さいほど良い。そして、角度αが0の場合、すなわち、係止部17の端縁17aの円形状の輪郭線の最も高い位置にフック10,11の一方を係合させるとともに、他方のフックを上記輪郭線の最も低い位置に係合させた場合、上流側アダプタ7の上下方向に対する上記脈動の影響が抑制されるという作用が最も効率よく発揮される。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法について
図5を参照しながら説明する。
図5(a)は脱着式フックの外観斜視図であり、
図5(b)及び
図5(c)は本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法を示した図である。なお、
図1乃至
図4に示した構成要素及びそれらの図に関して符号を用いて説明した用語については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、
図5(b)及び
図5(c)では、下流側アダプタ8の係止部17の端縁17aにおいて円形状の輪郭線の最も高い位置にある箇所に対して、フック10,11や着脱式フック19(後述の第3のフック)が係合される状態を示しているが、上記輪郭線の最も低い位置にある箇所に対して、フック10,11や着脱式フック19(後述の第3のフック)が係合される場合にも、
図5(b)及び
図5(c)を用いて以下に説明する本発明の作用及び効果は同様に発揮される。
図5(a)に示すように、脱着式フック19は、外周面に雄ネジが形成された本体20と、上記雄ネジと螺合する雌ネジ部が内周面に形成されるとともに側面に設けられた鉤状部21aを互いに向かい合わせるようにして本体20の両端に取り付けられた一対の係止具21,21からなる。
このように、脱着式フック19は、一対の係止具21,21をそれぞれ所定の方向へ回動させることによって、互いの間隔が変化する構造であるため、上流側アダプタ7のリング状部材9と下流側アダプタ8の係止部17の端縁17aに鉤状部21a,21aがそれぞれ係合するように一対の係止具21,21の間隔を調節することによれば、フック10,11に次ぐ第3のフックとして用いることができる。
【0039】
フック10,11に加えて、脱着式フック19を第3のフックとして用いると、例えば、
図5(b)に示すように、鉛直平面と平行に設置された係止部17の端縁17aにおいて最も高い位置に対し、フック10の先端10bとフック11の先端11bのいずれか一方を係合させるとともに、係止部17の端縁17aの輪郭線によって形成される円の中心Oを通る鉛直線Lに平行な直径Dとなす角度がβである半径Rと上記円の交点に相当する箇所に脱着式フック19を係合させることができる。
この場合、係止部17に係合している脱着式フック19が上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれを抑制する力が鉛直方向の成分と水平方向の成分に分解されることから、粉粒体運搬車1のタンク2からサイロ3にセメントを供給する際にフレキシブル配送管5に発生した脈動が上流側アダプタ7に与える影響は、上下方向だけでなく水平方向についても抑制される。
【0040】
すなわち、端縁17aが鉛直平面と平行に設置された係止部17に対し、
図5(b)に示した3箇所にフック10,11と脱着式フック11を係合させると、
図4(b)を用いて既に説明した場合に比べて、上流側アダプタ7と下流側アダプタ8の上下方向のずれを抑制する作用が増すとともに、上流側アダプタ7と下流側アダプタ8の水平方向のずれを抑制する作用も発揮される。
したがって、
図5(b)に示したフレキシブル配送管5の接続方法によれば、粉粒体運搬車1のタンク2に収容されたセメントをサイロ3に移送する際に、サイロ3の入口側パイプ4とフレキシブル配送管5の接続部分に隙間が
図4(b)に示した場合よりもさらに生じ難いため、当該接続部分からセメントが噴出するという事態をより確実に防ぐことができる。
【0041】
なお、端縁17aが鉛直平面と平行に設置された係止部17に係合している着脱式フック19が上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれを抑制する力Fの鉛直方向の成分と水平方向の成分は、それぞれFcosβおよびFsinβとなる。したがって、
図4(c)を用いて説明した場合と同様の理由から、着脱式フック19は上述の鉛直方向の成分が水平方向の成分よりも大きくなるような状態(すなわち、上述の角度βが45度よりも小さい状態)で係止部17に係合していることが望ましい。
【0042】
また、
図5(c)に示すように、鉛直平面と平行に設置された係止部17の端縁17aにおいて最も高い位置に着脱式フック19を係合させるとともに、前述の半径Rと角度βをなす直径Dの両端に相当する2箇所に対してフック10の先端10bとフック11の先端11bをそれぞれ係合させるようにして上流側アダプタ7を下流側アダプタ8に連結させることもできる。
この場合、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17に係合しているフック10,11が上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれを抑制する力が鉛直方向の成分と水平方向の成分に分解されることから、粉粒体運搬車1のタンク2からサイロ3にセメントを供給する際にフレキシブル配送管5に発生した脈動が上流側アダプタ7に与える影響は、上下方向だけでなく水平方向についても抑制される。
【0043】
すなわち、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17において、
図5(c)に示した3箇所にフック10,11と脱着式フック19を係合させると、
図4(c)を用いて既に説明した場合に比べて、上流側アダプタ7と下流側アダプタ8の上下方向のずれを抑制する作用がより一層発揮される。
そのため、
図5(c)に示したフレキシブル配送管5の接続方法によれば、粉粒体運搬車1のタンク2に収容されたセメントをサイロ3に移送する際に、サイロ3の入口側パイプ4とフレキシブル配送管5の接続部分に隙間が
図4(c)に示した場合よりもさらに生じ難いため、当該接続部分からセメントが噴出するという事態をより確実に防ぐことができる。
【0044】
なお、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17に係合しているフック10,11が上流側アダプタ7と下流側アダプタ8のずれを抑制する力Fの鉛直方向の成分と水平方向の成分は、それぞれFcosβおよびFsinβとなる。したがって、
図4(c)を用いて説明した場合と同様の理由から、フック10,11は上述の鉛直方向の成分が水平方向の成分よりも大きくなるような状態(すなわち、上述の角度βが45度よりも小さい状態)で係止部17に係合していることが望ましい。
【0045】
フレキシブル配送管5に発生する脈動が上流側アダプタ7の上下方向に対して特に強い影響を与えるような場合には、フック10,11に加えて、脱着式フック19を第3のフックとして用いる際に、
図4(c)を用いて既に説明したように、輪郭線の直径Dと鉛直線Lのなす角度αは45度より小さい方が良いが、同様の理由から、半径Rと鉛直線Lのなす角度βも45度より小さい方が良い。すなわち、鉛直線Lに対して45度よりも小さい角度をなす半径Rと輪郭線の交点のうち、フック10,11が係合される箇所と重複しない箇所に第3のフックを係合させることが望ましい。
なお、角度α又は角度βが0の場合、すなわち、係止部17の端縁17aの円形状の輪郭線の最も高い位置又は最も低い位置にある箇所にフック10,11及び第3のフックのいずれかを係合させた場合、上流側アダプタ7の上下方向に対する上記脈動の影響が抑制されるという作用が最も効率よく発揮される。
【0046】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法とそれに用いられるフレキシブル配送管について
図6を参照しながら説明する。
図6(a)は本発明の実施の形態に係るフレキシブル配送管の先端に取り付けられた配管継手の上流側アダプタの外観斜視図であり、
図6(b)は本発明の第3の実施の形態に係るフレキシブル配送管の接続方法を示した図である。なお、
図1乃至
図5に示した構成要素及びそれらの図に関して符号を用いて説明した用語については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本発明のフレキシブル配送管は、フレキシブル配送管5の先端に取り付けられた配管継手6が上流側アダプタ7の代わりに、
図6(a)に示す上流側アダプタ22を備えていることを特徴とする。
図6(a)に示すように、上流側アダプタ22は、上流側アダプタ7においてリング状部材9に対し、フック23の基端23aが支軸13dを介して回動自在に連結された構造となっている。そして、支軸13dは、軸方向が上流側アダプタ22の外周面の接線方向と平行をなすとともに、フック23は、上流側アダプタ22の開口端7aを下流側アダプタ8の開口端8aに接触させた状態で係止部17の端縁17aに対して係合可能に形成されている。
この上流側アダプタ22を用いることによれば、上流側アダプタ7と脱着式フック19を用いずとも、
図5(b)及び
図5(c)に示したようにフレキシブル配送管5を接続することができる。
【0048】
なお、
図6(a)では、フック10,11が上流側アダプタ22の中心軸18cを挟んで対称に設けられているが、本発明のフレキシブル配送管の先端に設けられる配管継手の上流側アダプタは、このような構造に限定されるものではない。すなわち、フック10,11は中心軸18cを挟んで対称に設けられていなくとも良い。
この場合、例えば、
図6(b)に示すように、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17を下流側アダプタ8の開口端8a側から見た場合に輪郭線が円形をなす係止部17の端縁17aにおいて、最も高い位置にある箇所を第1の箇所P1とするとともに、この第1の箇所を二等辺三角形の頂点とし、かつ、その二等辺三角形の底辺の両端に相当する箇所を第2の箇所P2及び第3の箇所P3として、この3箇所にフック10、フック11及びフック23のフックをそれぞれ係合させることができる。
【0049】
このとき、係止部17の端縁17aの輪郭線によって形成される円の中心Oと第1の箇所P1を結ぶ直線は前述の鉛直線Lと平行になるため、第1の箇所P1に係合するフックによって、上流側アダプタ22と下流側アダプタ8の上下方向のずれを抑制する作用が発揮される。一方、第2の箇所P2又は第3の箇所P3と係止部17の端縁17aの輪郭線によって形成される円の中心Oをそれぞれ結ぶ直線は鉛直線Lに対して傾斜しているため、上流側アダプタ22と下流側アダプタ8のずれを抑制する力が鉛直方向の成分と水平方向の成分に分解される。これにより、粉粒体運搬車1のタンク2からサイロ3にセメントを供給する際にフレキシブル配送管5に発生した脈動が上流側アダプタ7に与える影響は、上下方向だけでなく水平方向についても抑制される。したがって、
図6(b)に示した方法によれば、粉粒体運搬車1のタンク2に収容されたセメントをサイロ3に移送する際に、サイロ3の入口側パイプ4とフレキシブル配送管5の接続部分に隙間が
図4(b)に示した場合よりもさらに生じ難いため、当該接続部分からセメントが噴出するという事態をより確実に防ぐことができる。
なお、第2の箇所P2又は第3の箇所P3と係止部17の端縁17aの輪郭線によって形成される円の中心Oをそれぞれ結ぶ直線と鉛直線Lがなす角度は等しいため、上述の水平方向の成分も等しくなる。したがって、
図6(b)に示した方法によれば、フレキシブル配送管5と入口側パイプ4に対して、それらの水平方向のずれを抑えようとする力が左右から均等に作用するため、
図5(b)や
図5(c)に示した場合よりもサイロ3の入口側パイプ4とフレキシブル配送管5の接続部分がさらにずれ難い。
【0050】
ここで、第2の箇所P2又は第3の箇所P3と係止部17の端縁17aの輪郭線によって形成される円の中心Oをそれぞれ結ぶ直線と鉛直線Lがなす角度をγとすると、第1の箇所P1を頂点とする二等辺三角形の頂角もγとなり、第2の箇所P2又は第3の箇所P3において係止部17に係合しているフックが上流側アダプタ22と下流側アダプタ8のずれを抑制する力Fの鉛直方向の成分と水平方向の成分は、それぞれFcosγおよびFsinγとなる。
したがって、
図4(c)を用いて説明した場合と同様の理由から、第2の箇所P2又は第3の箇所P3に取り付けられたフックは上述の鉛直方向の成分が水平方向の成分よりも大きくなるような状態(すなわち、上記二等辺三角形の頂角γが45度よりも小さい状態)で係止部17に係合していることが望ましい。なお、第1の箇所P1、第2の箇所P2及び第3の箇所P3は、上下が反転した状態、すなわち、
図6(b)においてP1~P3が中心Oの周りに180度回転した状態であっても、上述の作用及び効果は同様に発揮される。
【0051】
次に、本発明の実施の形態に係る気流搬送設備について
図7を参照しながら説明する。
図7(a)及び
図7(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る気流搬送設備を構成する配管継手の下流側アダプタの背面図及び側面図である。なお、
図7(a)は下流側アダプタをサイロの入口側パイプに接続される側から見た状態を示している。また、
図1及び
図2に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、下流側アダプタ24は、下流側アダプタ8において、端縁17aが鉛直平面に対して平行となるように設置された係止部17を下流側アダプタ24がサイロ3の入口側パイプ4に接続される側から見た場合に端縁17aの左右の側部に、フック10,11を係合不能な切り欠き17b,17bが形成されるとともに、切り欠き17bが形成されている箇所と形成されていない箇所の境界部に堰17cが設けられていることを特徴とする。
このような構造の下流側アダプタ24を用いた場合、下流側アダプタ24の係止部17に対して上流側アダプタ7のフック10,11を水平方向の2箇所に係合させることができないため、これらのフックを下流側アダプタ24の係止部17に係合させる際に、誤って係止部17の水平方向の2箇所に係合させてしまうおそれがない。また、係止部17の端縁17aにおいて切り欠き17bが形成されていない箇所に係合させたフック10,11は、端縁17aの円周方向への移動が堰17cによって阻止されるため、フレキシブル配送管5の脈動などの影響によって振動したフック10,11が切り欠き17bの形成されている箇所に移動して、端縁17aから外れてしまうという事故も起こらない。したがって、下流側アダプタ24を備えた気流搬送設備によれば、下流側アダプタ24の係止部17に上流側アダプタ7のフック10,11を係合させる作業を効率よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載された発明は、粉粒体運搬車のタンク内に収容された粉粒体を工場等の敷地内に設置されたサイロへ気流搬送によって供給する場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…粉粒体運搬車 2…タンク 3…サイロ 4…入口側パイプ 5…フレキシブル配送管 6…配管継手 7…上流側アダプタ 7a…開口端 7b…円筒体 8…下流側アダプタ 8a…開口端 8b…円筒体 9…リング状部材 10…フック 10a…基端 10b…先端 11…フック 11a…基端 11b…先端 12…レバーハンドル 12a…基端 12b…先端 13a~13d…支軸 14…回動抑止部材 15a,15b…貫通孔 16…Oリング 17…係止部 17a…端縁 17b…切り欠き 17c…堰 18a~18c…中心軸 19…脱着式フック 20…本体 21…係止具 21a…鉤状部 22…上流側アダプタ 23…フック 23a…基端 24…下流側アダプタ