(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181437
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N35/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187644
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2022505885の分割
【原出願日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2020041724
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 洸幾
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】磯島 宣之
(57)【要約】
【課題】試薬保冷庫内での結露の発生を抑制するとともに、外気を導入することで発生した結露水を直ちに排水できる自動分析装置を提供する。
【解決手段】複数の試薬容器を保冷しながら格納する試薬保冷庫を備える自動分析装置において、前記試薬保冷庫は、前記試薬保冷庫内部に発生した結露水を排出するドレインと、前記試薬保冷庫外部の空気を内部に導く外気導入路と、前記試薬保冷庫の内壁底面の下方に設けられた複数の冷却器と、を有し、最下流側の前記外気導入路の下方に位置する前記冷却器が、他の前記冷却器よりも低い温度に設定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を保冷しながら格納する試薬保冷庫を備える自動分析装置において、前記試薬保冷庫は、前記試薬保冷庫内部に発生した結露水を排出するドレインと、前記試薬保冷庫外部の空気を内部に導く外気導入路と、前記試薬保冷庫の内壁底面の下方に設けられた複数の冷却器と、を有し、最下流側の前記外気導入路の下方に位置する前記冷却器が、他の前記冷却器よりも低い温度に設定される、自動分析装置。
【請求項2】
複数の試薬容器を保冷しながら格納する試薬保冷庫を備える自動分析装置において、前記試薬保冷庫は、前記試薬保冷庫内部に発生した結露水を排出するドレインと、前記試薬保冷庫外部の空気を内部に導く外気導入路と、を有し、前記ドレインの上方開口部の1点に向かって、前記試薬保冷庫の内壁壁面が傾斜している、自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、前記外気導入路は、前記ドレインの内径側に位置する、自動分析装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、前記外気導入路は、上流側が、前記試薬保冷庫の外部から内部へ導くパイプで形成され、下流側が、前記試薬保冷庫の内壁底面と、その上方に設けられたカバーと、で形成され、その外気吐出口は、前記カバーの開口端に形成される、自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動分析装置において、前記カバーの下方に位置する前記内壁底面には、他の前記内壁底面よりも低くなる排水溝が設けられている、自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液や尿などの検体(サンプル)を、生化学的あるいは免疫学的に分析する自動分析装置が知られている。分析は一般的に検体と試薬を反応させて行い、試薬と検体の間で生じた反応を光学的、電気的に検出する。
【0003】
このような自動分析装置では反応に用いる試薬が、試薬毎に容器に入れられ、この容器は、試薬保冷庫内の試薬設置部に配置される。さらに、試薬保冷庫の内部は試薬を安定して保管するため、例えば5~12℃程度に保冷される。
【0004】
自動分析装置では、一般的に、試薬保冷庫内に設置された試薬容器内から試薬を吸引するために、試薬保冷庫には試薬吸引用の貫通孔が設けられている。この貫通孔から保冷庫内に高温多湿の外気が侵入すると、試薬保冷庫内の温度が上昇したり、流入した外気が露点以下に冷やされることにより保冷庫内に結露が生じたり、といった問題が発生する。保冷庫内の温度上昇は試薬の安定保管には望ましくなく、さらに試薬保冷庫内に生じた結露は、結露水が試薬容器内に侵入することにより試薬の状態を変化させる恐れがある。また、試薬容器には試薬判別用のタグが取り付けられることがあり、タグに結露水が付着することによるタグの損傷などの問題も生じる
これらの問題に対して、特許文献1には、冷却した空気を直接試薬保冷庫の内部に導入することで、試薬保冷庫内を大気圧以上にすることにより、試薬吸引用孔から冷気が噴き出し、この試薬吸引用孔から外気が流入することを防いで試薬保冷庫内での結露発生を抑制する自動分析装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の試薬保冷庫では、冷気導入経路から試薬保冷庫内部に導入された空気に水分が含まれていた場合、試薬保冷庫内部で結露が発生し、発生した結露水が試薬保冷庫の内壁底面に滞留してしまう可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、試薬保冷庫内での結露の発生を抑制するとともに、外気を導入することで発生した結露水を直ちに排水できる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の試薬容器を保冷しながら格納する試薬保冷庫を備える自動分析装置において、前記試薬保冷庫は、前記試薬保冷庫内部に発生した結露水を排出するドレインと、前記試薬保冷庫外部の空気を内部に導く外気導入路と、前記試薬保冷庫の内壁底面の下方に設けられた複数の冷却器と、を有し、最下流側の前記外気導入路の下方に位置する前記冷却器が、他の前記冷却器よりも低い温度に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試薬保冷庫内での結露の発生を抑制するとともに、外気を導入することで発生した結露水を直ちに排水できる自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る自動分析装置の全体構成を示す平面図。
【
図2】
図1の試薬保冷庫を矢印A方向より眺めた概略構成を示す鉛直断面図。
【
図3】
図2の試薬保冷庫の矢印B方向より眺めた概略構成を示す水平断面図。
【
図4】比較例における、結露の発生の様子と結露水の流れを模式的に示す水平断面図。
【
図5】実施例1における、結露の発生の様子と結露水の流れ模式的に示す水平断面図。
【
図6】実施例2に係る試薬保冷庫の概略構成を示す水平断面図。
【
図7】実施例3に係る試薬保冷庫の概略構成を示す水平断面図。
【
図8】
図7の試薬保冷庫の矢印C方向から眺めた概略構成を示す鉛直断面図。
【
図9】実施例3における、結露の発生の様子と結露水の流れを模式的に示す水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<実施例1>
本実施例の自動分析装置について、
図1乃至
図5を用いて説明する。まず、
図1乃至
図3を用いて、本実施例に係る自動分析装置の全体構成について概略を説明する。
図1は、本実施例の自動分析装置の全体構成を示す平面図である。
図2は、
図1の試薬保冷庫を矢印A方向より眺めた概略構成を示す鉛直断面図である。
図3は、
図2の試薬保冷庫の矢印B方向より眺めた概略構成を示す水平断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施例における自動分析装置100は、検体と試薬を反応させ、この反応させた反応液を測定する装置である。自動分析装置100は、試薬保冷庫1と、試薬容器3と、検体分注ノズル303と、反応テーブル305と、反応容器搬送機構306と、検体分注チップ・反応容器保持部材307と、試薬ディスク2と、試薬分注ノズル314と、処理部315と、検出部316と、ラック搬送ライン317と、制御装置319と、を備えている。
【0014】
ここで、ラック搬送ライン317は、検体を収容した検体容器302を複数載置可能なラック301を検体分注位置等へ搬送するためのラインである。検体分注ノズル303は、検体容器302に収容された検体を吸引し、反応容器304に対して吐出するためのノズルである。反応テーブル305は、検体と試薬の反応を恒温で行うためのディスクであり、その温度がヒータ(図示省略)によって所定の温度に保たれており、検体と試薬との反応を促進させている。反応容器304は、反応テーブル305に複数保持されており、検体と試薬を混合して反応させる場となる。反応容器搬送機構306は、反応容器304を搬送する。検体分注チップ・反応容器保持部材307は、検体分注に用いる使い捨ての検体分注チップや反応容器304を保管する。試薬ディスク2は、試薬容器3を保管するディスクであり、試薬を安定して保管するために試薬保冷庫1により保冷されている。試薬容器3は蓋4に配置されている開閉蓋5を開けることでユーザもしくは試薬容器搬送機構(図示なし)などによりアクセス可能となる。また、蓋4の一部には、試薬吸引用の貫通孔である試薬吸引用孔6が設けられている。試薬分注ノズル314は、試薬ディスク2内の試薬容器3に保管された試薬を、試薬吸引用孔6を通して吸引し、反応容器304に対して吐出するためのノズルである。なお、この試薬ディスク2内の各試薬容器3には、検体の分析に用いる種々のアッセイ試薬(第1の試薬)が収容されている。処理部315は、検出部316による検体の分析前の処理を行う。検出部316は、反応容器304内で反応が完了した液体を用いて検出を行う。制御装置319は、上記の各部材の様々な動作を制御するとともに、検出部316で行われた検出結果から、検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。この制御装置319には、試薬保冷庫1の温度制御を実行する温度制御部318が設けられている。
【0015】
次に、本実施例の自動分析装置における全体的な分析の流れについて概略を説明する。なお、分析に先立ち、ユーザは分析に必要な試薬容器3、検体分注チップや反応容器304などの消耗品を分析装置内の試薬ディスク2や検体分注チップ・反応容器保持部材307にそれぞれ設置しておく。
【0016】
まず、ユーザは分析対象の血液や尿等の検体を検体容器302に入れた状態で、ラック301を自動分析装置に投入する。ここで、分析装置の反応容器搬送機構306により、未使用の反応容器304や検体分注チップが反応テーブル305および検体分注チップ装着位置に搬送される。
【0017】
その後、試薬分注ノズル314は回転と上下移動が可能なように取り付けられており、試薬保冷庫1の蓋4に設けられた試薬吸引用孔6の上方に回転移動した後に下降し、試薬吸引用孔6を通過する。その後、試薬吸引用孔6を通った試薬分注ノズル314の先端を所定の試薬容器3内の試薬に挿入して、所定量の試薬を吸引する。その後、試薬分注ノズル314は上昇した後に、反応テーブル305の所定位置の上方に回転移動して、反応テーブル305に設置された反応容器304内に試薬を吐出する。
【0018】
続いて、ラック301がラック搬送ライン317を通過して検体分注位置に到達すると、検体分注ノズル303が検体分注チップを装着し、検体容器302より検体を反応容器304へ分注し、検体とアッセイ試薬の反応が開始する。ここでいう反応とは、例えば、検体の特定抗原のみと反応する発光標識化抗体をアッセイ試薬として、抗原抗体反応により検体と発光標識物質を結合することをいう。この際、検体とアッセイ試薬の混合物を検体分注チップ内で吸引吐出することにより、検体とアッセイ試薬の撹拌が行われる。この動作が完了した後、使用済みの検体分注チップは検体分注チップ廃棄口320に廃棄される。
【0019】
撹拌により検体とアッセイ試薬の反応が開始した後に、更に特定のタイミングで別の試薬を加えて反応を行う場合がある。例えば、抗体を表面に結合させた磁性ビーズを上述の抗原にさらに結合するプロセスがある。そのために、所定時間だけ反応テーブル305に置かれた反応容器304が、第一の搬送機構308によって、処理部315に搬送される。処理部315において検体の検出前処理として検体の磁気分離および攪拌が行われる。
【0020】
前処理プロセス終了後、第一の搬送機構308により、反応容器304が再び反応テーブル305に搬送される。
【0021】
磁気分離の有無にかかわらず、反応テーブル305に置かれた状態で所定時間経過した反応容器304は、第二の搬送機構309により検出部316に導かれる。検出部316において反応液からの信号の検出が行われ、分析結果はユーザに通知されるとともに、記憶装置に記録される。
【0022】
検出動作が完了した後、反応容器304は、第二の搬送機構309および反応容器搬送機構306により反応容器廃棄口321に搬送され、廃棄される。
【0023】
次に、試薬保冷庫1の構造の詳細について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0024】
自動分析装置100の試薬保冷庫1には、その内部に試薬ディスク2が配置されており、試薬ディスク2には試薬容器3が複数個設置される。試薬保冷庫1は、その形状は任意であるが、同一円上の試薬保冷庫1の内壁7からの距離が均等になるように円筒状に形成されている。また、試薬ディスク2は、平面視が円形になるように形成されており、円筒状の試薬保冷庫1の内部において試薬容器3が放射状に円を描くように配置されている。したがって、
図2に示すように、試薬保冷庫1の外部に設けられたモータ8が回転することにより、試薬保冷庫1の内部で試薬ディスク2が回転する。
【0025】
これにより、試薬ディスク2上に配置された所定の試薬容器3は、試薬吸引用孔6の直下まで運ばれ、この状態で
図1に示す試薬分注ノズル314が試薬吸引用孔6を介して試薬容器3から試薬を吸引する。なお、
図2に示すように、試薬吸引用孔6は蓋4に形成されており、外気と試薬保冷庫1の内部は試薬吸引用孔6を介して連通している。すなわち、蓋4には、試薬容器3から試薬を吸引する試薬分注ノズル314が通過可能な試薬吸引用孔6が形成されており、試薬保冷庫1の内部と外部とがこの試薬吸引用孔6を介して連通している。
【0026】
試薬容器3は、基本的に冷却された内壁7の冷熱が、空気を介した対流または輻射によって伝熱することで、保冷される。
【0027】
また、内壁7の冷却は、内壁7の外側に取り付けられた冷却器9により直接冷却されることで行われる。冷却器9は例えばペルチェ素子に代表される、電流を印加することで片面から吸熱しもう片面から放熱するものを使用する。これにより、試薬保冷庫1内の熱を吸熱し、試薬保冷庫1外部へ放熱することが可能となる。冷却器9の放熱側はヒートシンク10による拡大伝熱面となっている。ヒートシンク10はファン11で送風することで強制対流により空冷され、排熱ダクト12内に排熱される。排熱ダクト12は自動分析装置外へ通じる空気流路である。冷却器9の放熱はヒートシンク10およびファン11を使用せず、例えば冷却水により熱を輸送する水冷ヒートシンク等を使用することも可能である。
【0028】
本実施例の試薬保冷庫1は、内壁7の底面の下側に、周方向に複数の冷却器9a~9dが配置されている。なお、
図2では、右側だけに冷却器9が存在しているが、左側は試薬保冷庫内部に発生した結露水を排水するドレイン18等の構造を説明するために、便宜上、冷却器9が省略されている。パイプ15は、試薬保冷庫1外から試薬保冷庫1内に引き込んでいる箇所から、ドレイン18までを繋ぐ外気導入路を形成するように配置される。また、このパイプ15は、
図3に示すように、冷却器9のない部分から内壁7の底面を貫通して試薬保冷庫1内に引き込まれ、複数の冷却器のうち冷却器9aの上方を経由するように配置されている。特に、パイプ15が試薬保冷庫1内へ引き込まれる際、ドレイン18の内径側を通ることにより、内壁7に別の貫通孔を設けずに済む利点がある。
【0029】
複数の冷却器9の温度は、それぞれの冷却器9の近傍に取り付けられた温度センサ14により測定されている。測定した温度を使用し、それぞれの冷却器9の温度が予め設定された温度となるよう、温度制御部318により調節している。このとき、パイプ吐出口15aに最も近い冷却器9aの温度は、他の冷却器9b、9c、9dの温度よりも低く設定される。
【0030】
試薬保冷庫1を冷却器9により直接冷却する場合、内壁7の温度が鉛直方向および水平方向において均一であることにより、試薬温度分布を抑制することが可能である。そのため、内壁7の材質は例えば銅やアルミに代表される熱伝導率の高い材料を使用することが望ましい。なお、内壁7の冷却は冷却器9による直接冷却ではなく、内壁7内部に冷却流体経路が構成され、その内部を冷却水が流れることによって内壁7が冷却され、試薬保冷庫1の内部の空気および試薬容器3が冷やされる方式であることも可能である。この場合は、内壁7の温度分布は冷却水の温度分布に依存するため、ステンレスや樹脂等の比較的熱伝導率の低い材料を使用することも可能である。
【0031】
試薬保冷庫1の温度は、試薬保冷庫1内もしくは内壁7に取り付けられた温度センサ14により測定されている。測定した温度を使用し温度制御部318により冷却器9の温度を調節し、試薬容器3を適切な温度で保冷している。
【0032】
試薬保冷庫1はその外側に取り付けられた断熱材13により断熱され、試薬保冷庫内の熱が外部に逃げにくく、試薬容器3を効率よく保冷できる構造となっている。断熱材13は例えば発泡ポリスチレンや発泡ポリウレタンに代表される熱伝導率の低い材料で構成されることが望ましい。
【0033】
外気が高温多湿の場合は、試薬吸引用孔6から侵入した外気が試薬ディスク2や試薬容器3上で結露することがある。そこで、試薬保冷庫1内部に外気を導入し、試薬保冷庫1内を大気圧より高くすることで、試薬分注用孔からの外気の侵入を防止することが可能ある。また、導入する外気の温度を試薬容器3や試薬ディスク2の表面温度より下げることで、試薬容器3および試薬ディスク2上での結露発生を防ぐことが可能となる。
【0034】
試薬保冷庫1内に導入される空気はパイプ15上で冷却され、パイプ吐出口15aより吹き出される。その際、パイプ15内で発生した結露水もパイプ吐出口15aより排水される。パイプ15は内壁7に直接取り付けられることで冷却される。なお、本実施例では、パイプ吐出口15aがそのまま外気吐出口を形成しているが、パイプ吐出口15aの先端に風向板などの別の部材を接続した場合は、その部材の先端が外気吐出口となる。
【0035】
またパイプ15内を流れる外気の流路が長いほどパイプ15と外気の接触時間・面積が増えるため、試薬保冷庫1内に導入する外気の到達温度が低下する。すなわち、試薬容器3や試薬ディスク2上での結露を防ぐためには、パイプ15の流路長さは、パイプ吐出口15aより放出される空気の温度が試薬ディスクおよび試薬容器3の温度より低くなるよう設計されることが望ましい。
【0036】
パイプ15の流路が長くなることで圧力損失が高まるため、送風に使用する送風機16は圧力損失が高い環境で送風可能であることが望ましく、例えばダイヤフラムポンプ、遠心ファン、ピエゾファン等が使用可能である。また、試薬保冷庫1内に埃や菌が侵入することを防ぐために外気導入前にフィルタ等を設けることが望ましい。
【0037】
試薬保冷庫1内に導入する外気の風量は、試薬吸引孔を介し試薬保冷庫1内に侵入し、試薬保冷庫1外へリークする空気量以上であることが望ましい。ただし、外気の導入により損失する熱量を低減し、冷却効率を上げるためにも、外気の導入量を必要以上に増やさない事が望ましい。
【0038】
次に、本実施例における結露水の排水について詳細に説明する。
【0039】
前述のとおり、試薬容器3および試薬ディスク2上で結露が発生することで、試薬容器内に結露水が混入し分析性能に影響を及ぼす可能性があるため、抑制する必要がある。また、試薬保冷庫1内の壁面で発生した結露が内壁7表面に長期間付着することで結露水が変質する原因となる。
【0040】
しかしながら、試薬保冷庫1には試薬吸引用孔6を介し、試薬分注ノズルが間欠的にアクセスする構造であり、また、開閉蓋5を開けて試薬容器3を取出・設置する際の外気侵入も存在するため、試薬保冷庫1内部の結露を抑制することはできても完全に無くすことは難しい。すなわち、試薬容器3および試薬ディスク2への結露発生を防止した上で、試薬保冷庫1およびパイプ15内で発生した結露水を試薬保冷庫1内で滞留させること無く直ちに排水することが望ましい。
【0041】
そこで、本実施例では、パイプ吐出口15aがドレイン18の上方開口部18a近傍に配置され、試薬保冷庫1の内壁7の底面は水平方向に対し所定角度傾斜するよう配置され、ドレイン18は傾斜した試薬保冷庫1の内壁7の底面の鉛直方向下側に配置される。
【0042】
以下、試薬保冷庫1底面とドレイン18、パイプ吐出口15aおよびパイプ15の構成について詳細に説明する。
【0043】
パイプ15は試薬保冷庫1の断熱材および内壁7を貫通し、試薬保冷庫1外から試薬保冷庫1内に導入され、試薬保冷庫1の内壁7の底面に沿って配管される。パイプ15の先端に位置するパイプ吐出口15aは、ドレイン18の上方開口部18aに向かって形成されている。また、パイプ吐出口15aの鉛直投影が、ドレイン18の上方開口部18aの範囲内に存在するような配置であっても良い。
【0044】
パイプ15の断面形状は変形可能であり、例えば矩形、円形、台形形状でも可とする。パイプ15およびパイプ吐出口15aは1本である必要はなく、例えばパイプ15およびパイプ吐出口15aがそれぞれ2本ある場合、もしくはパイプ15が1本に対しパイプ吐出口15aが2ヶ所存在しても良い。なお、パイプの材質は、例えば銅やアルミに代表される熱伝導率の高い材料とし、内壁7を介して冷却器で直接冷却し易くすることが望ましい。
【0045】
内壁7の底面は、内壁7を水平面に対し傾斜して配置、もしくは内壁7の底面のみを水面に対し傾斜する配置とする。内壁7の底面はドレイン18の上方開口部18aの1点のみが最下部となるように傾斜している。内壁7の底面が水平方向に対し傾斜しているのに対し、試薬ディスクの回転軸は垂直である。これにより、試薬容器3および試薬分注ノズルを傾斜する必要は無い。
【0046】
内壁7の底面の形状に制約は無く、溝もしくは突起形状が存在していてもよい。但し、溝もしくは突起形状の表面においては、水平方向およびドレイン18の設置方向に対し傾斜していることが望ましい。なお、ドレイン18の上端側であって、内壁7の底面に接続される箇所は、ドレイン18の本体の孔径より大きな孔径となる上方開口部18aを有している。そして、この上方開口部18aから徐々に孔径が小さくなるような傾斜面が形成され、ドレイン18本体へと接続されている。このため、内壁7の底面上であってドレイン18の近傍にある結露水が、ドレイン18へ導かれ易くなっている。
【0047】
本実施例に係る自動分析装置の効果について説明する。
【0048】
送風機16より導入された外気は、パイプ15を通過する際に冷却される。パイプ15は試薬保冷庫1の底面に沿って取り付けられているため、外気を試薬保冷庫1の温度と近い温度まで冷却することが可能である。このとき、外気が高温多湿である場合、外気は冷却されることで露点以下となり、パイプ15内に結露が発生する。発生した結露水は送風機16により押し出され、冷却された外気と共にパイプ吐出口15aより排水される。パイプ吐出口15aは、ドレイン18の上方開口部18aに向かって形成されているので、排水された水は、ドレイン18の上部開口部18aに流れ込み、他の内壁7の底面を流れること無く直ちに排水される。
【0049】
また、内壁7表面において、試薬保冷庫1内部に吐出された外気より温度が低い箇所の表面や、試薬容器3の交換に伴い開閉蓋を開閉した際に侵入した外気が露点以下となることで結露が発生する。この結露は試薬保冷庫1の内壁7の底面の傾斜によりドレイン18の上方開口部18aへ導かれる。ここで、結露水は、内壁7の底面の最下部となるドレイン18の上方開口部18aの1点に集まるよう排水される。そのため、試薬保冷庫を上から見た場合、鉛直方向最下部が円環状である試薬保冷庫と比較し、結露水が表面張力により円環上に一定量貯留されることが無い。
【0050】
さらに、パイプ15が内壁7の底面に当接または近接して設けられているので、パイプ15の外周側であって内壁7の底面上に結露した結露水は、パイプ15と内壁7底面との隙間による毛細管力により、パイプ15の外周表面に吸引される。こうして吸引された結露水は、パイプ15の外周に沿って、ドレイン18の上方開口部18aへ導かれる。
【0051】
これにより、結露水が試薬保冷庫底面に滞留することなく、発生した結露は常にドレイン18に排水されることで、試薬保冷庫1内を衛生的に保つことが可能である。
【0052】
また、本実施例では、複数の冷却器9のうち、パイプ15が這わせられた部分の下に位置する冷却器9aの温度が、他の冷却器9b~9dより低く設定される。これによる効果について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0053】
図4は、比較例として、各冷却器9a~9bの温度を一定とした場合における結露状態を模式的に示す水平断面図である。
図5は、本実施例のように、冷却器9aの温度を他の冷却器9b~9dよりも低くした場合における結露状態を模式的に示す水平断面図である。
【0054】
図4において、パイプ15内で発生した結露は、パイプ吐出口15a近傍に位置するドレイン18の上方開口部18aに直接流入し排水される。ここで、冷却器9bや9cの温度がパイプ吐出口15aから吐出される外気よりも低い場合、冷却器9bおよび9cの上部で結露が発生する。ただし、内壁7の底面がドレイン18の上方開口部18aを最下部として傾斜している場合は、上方開口部18aの1点に集まるよう、冷却器9bおよび9c上部で発生した結露は排水される。
【0055】
一方、本実施例では、吐出される外気の温度は冷却器9b、9c、9d上の内壁7表面温度よりも低く露点以下となりにくいため、
図5に示すように、冷却器9b、9c、9d上での結露を抑制できる。これにより、結露の発生範囲を冷却器9aおよびドレイン18の上方開口部18a周囲に狭めることが可能となり、試薬保冷庫1内の多くの領域をより衛生的に保ち易い。
【0056】
なお、本実施例では、複数の冷却器を設ける構成としたが、パイプ15が這わされる部分のみに冷却器を1つ設ける構成であっても良い。
【0057】
<実施例2>
実施例2について、
図6を参照して説明する。
図6は、実施例2に係る試薬保冷庫の概略構成を示す水平断面図である。
【0058】
実施例2では、パイプ15の経路が、
図6のように、試薬ディスクの回転中心軸を囲んで一周させる配置となっている。したがって、本実施例のパイプ15は、すべての冷却器9a~9dの上方を経由する。ただし、パイプ吐出口15aに最も近いパイプ15の経路、すなわち最下流側のパイプ15の経路、の下方に位置する冷却器9aの温度が、パイプ15の上流側の経路の下方に位置する冷却器、すなわち冷却器8b~9dと比較し、低く設定される。
【0059】
本実施例に係る自動分析装置の効果について説明する。本実施例では、内壁7の底面上を這うパイプ15の経路を長く確保できるので、送風機16より導入された外気が、パイプ15を通過する際に十分に冷却される。このため、パイプ吐出口15aから試薬保冷庫1内へ吐出されるときの外気の温度を、試薬保冷庫1の温度と近い温度とするのが容易となり、試薬容器3および試薬ディスク2上での結露発生を防ぐことが可能となる。
【0060】
<実施例3>
図7は、実施例3に係る試薬保冷庫の概略構成を示す水平断面図である。また、
図8は、
図7の試薬保冷庫の矢印C方向から眺めた概略構成を示す鉛直断面図である。
【0061】
本実施例では、試薬保冷庫1においてパイプ吐出口15aが冷却器9a近傍に位置しており、冷却器9a上部に排水溝20およびカバー21が存在する場合を説明する。したがって、ここでは実施の形態の試薬保冷庫1と異なっている部分について説明し、重複している部分についての説明は省略する。
【0062】
本実施例の試薬保冷庫1は、パイプ吐出口15aが冷却器9近傍に位置しており、パイプ吐出口15aからドレイン18の上方開口部18aまでを繋ぐ流路を形成するよう、内壁7の底面と、その上方のカバー21と、が存在している。そして、カバー開口端21aと内壁7底面とにより、外気吐出口が形成される。このように、本実施例では、外気導入路が、上流側ではパイプ15により形成され、下流側ではカバー21及び内壁7底面により形成される。なお、このカバー21が設けられる箇所の内壁7底面には、他の内壁7底面よりも低くなる排水溝20が設けられている。
【0063】
排水溝20は、ドレイン18の上方開口部18aが最下部となるよう傾斜される。排水溝20の形状は、上方開口部18aが最下部となるよう傾斜していれば制約は無く、例えば排水溝20上に外気と内壁7の接触面積を拡大するためのフィン形状が存在してもよい。また、排水溝20とカバー21を使用し外気と内壁7の接触長さが長くなるようラビリンス状の流路を形成してもよい。
【0064】
本実施例の自動分析装置の効果について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施例における結露状態を模式的に示す水平断面図である。
【0065】
パイプ15より導入された外気は、パイプ吐出口15aからカバー21内に入り、排水溝20とカバー21との隙間で構成される外気導入路を経由し、カバー21の先端の外気吐出口から、上方開口部18aに向けて試薬保冷庫1内に吐出される。発生した結露水は排水溝20を経由しドレイン18の上方開口部18aに排水される。ここで、排水溝20表面と冷却器9aとの厚さ方向の距離は、他の冷却器9b、9c、9d設置部と比較し狭くなっていることから、冷却器9a上部の排水溝20上の表面温度は、冷却器9b、9c、9dと比較し低くなる。これによりドレイン18付近から試薬保冷庫1へ吐出される外気の温度は、冷却器9b、9c、9d上の内壁7の表面温度より冷却されるため、実施例1,2と比較しより試薬保冷庫1内部での結露の発生を抑制することが可能となる。また、最も温度が低く結露が発生しやすい冷却器9aの上部で、内壁7底面との接触面積が拡大し外気の冷却効率が高くなるため、この部分に結露箇所を集中でき、内壁7底面の他の箇所での結露を抑制できる。
【0066】
本実施例において、冷却器9aの温度を他の冷却器9b、9c、9dと比較し低くすることでも、同様の効果が得られる。
【0067】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 試薬保冷庫、2 試薬ディスク、3 試薬容器、4 蓋、5 開閉蓋、6 試薬吸引用孔、7 内壁、8 モータ、9 冷却器、10 ヒートシンク、11 ファン、12 排熱ダクト、13 断熱材、14 温度センサ、15 パイプ、15a パイプ吐出口、16 送風機、18 ドレイン、18a ドレインの上方開口部、20 排水溝、21 カバー、21a カバー開口端、100 自動分析装置、301 ラック、302 検体容器、303 検体分注ノズル、304 反応容器、305 反応テーブル、306 反応容器搬送機構、307 検体分注チップ・反応容器保持部材、308 第一の搬送機構、309 第二の搬送機構、314 試薬分注ノズル、315 処理部、316 検出部、317 ラック搬送ライン、318 温度制御部、319 制御装置、320 検体分注チップ廃棄口、321 反応容器廃棄口