(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181442
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 11/30 20060101AFI20231214BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20231214BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20231214BHJP
G01D 11/24 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01D11/30 S
G08C17/00 A
G08C15/00 D
G01D11/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187737
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2021554455の分割
【原出願日】2019-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓
(72)【発明者】
【氏名】登倉 明雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆子
(72)【発明者】
【氏名】和田 敏輝
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優生
(72)【発明者】
【氏名】都甲 浩芳
(57)【要約】
【課題】生体近傍の環境情報を簡便かつ安定して正確に計測する。
【解決手段】ウェアラブルセンサ装置100は、生体の近傍の環境情報を計測する温湿度センサ2と、ウェアラブルセンサ装置100をウェア101に装着するために筐体の第1の外壁面に設けられた第1の結合部材を備える。ウェア101は、生体と向かい合う面と反対側の面に、第1の結合部材と嵌合する第2の結合部材が設けられたインナーウェアであり、生体が立位姿勢のときにウェアラブルセンサ装置100の筐体の第2の外壁面が生体の左右または斜め下を向くように、ウェアラブルセンサ装置100がウェア101に装着される。温湿度センサ2は、第2の外壁面に設置されるか、第2の外壁面から離間して設置される。第1、第2の結合部材がそれぞれ複数設けられ、ウェアラブルセンサ装置100の筐体は非対称形状である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルセンサ装置と、
生体が着用するウェアとから構成され、
前記ウェアラブルセンサ装置は、
前記生体の近傍の環境情報を計測するように構成された環境センサと、
前記ウェアラブルセンサ装置を前記ウェアに装着するために前記ウェアラブルセンサ装置の筐体の第1の外壁面に設けられた第1の結合部材とを備え、
前記ウェアは、前記生体と向かい合う面と反対側の面に、前記第1の結合部材と嵌合する第2の結合部材が設けられたインナーウェアであり、
前記生体が立位姿勢のときに前記ウェアラブルセンサ装置の筐体の第2の外壁面が前記生体の左右または斜め下を向くように、前記ウェアラブルセンサ装置が前記ウェアに装着され、
前記環境センサは、前記第2の外壁面に設置されるか、または前記第2の外壁面から離間して設置され、
前記第1、第2の結合部材がそれぞれ複数設けられ、前記ウェアラブルセンサ装置の筐体が非対称形状であることを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項2】
請求項1記載のモニタリングシステムにおいて、
前記ウェアラブルセンサ装置の筐体は、前記生体が立位姿勢の状態で前記第2の外壁面が前記生体の左右または斜め下を向くときに、上から下に向かって窄まる形状であることを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項3】
請求項1または2記載のモニタリングシステムにおいて、
前記ウェアラブルセンサ装置は、前記環境情報を外部の装置に無線送信するように構成された無線通信部をさらに備え、
前記無線通信部は、密閉された前記筐体内に設置されることを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記ウェアラブルセンサ装置は、前記環境センサの周囲に、通気孔を備えた保護部材をさらに備えることを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記環境センサは、前記ウェアラブルセンサ装置が前記ウェアに装着され、前記生体が立位姿勢のときに鉛直下向きから30°~60°の範囲の角度の前記第2の外壁面に設置されるか、またはこの第2の外壁面から離間して設置されることを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記第1の結合部材と前記環境センサとは、それぞれ前記筐体の互いに略直交する前記第1、第2の外壁面に設置され、
前記環境センサは、前記ウェアラブルセンサ装置が前記ウェアに装着されたときに、前記生体の体表面と略直交する前記筐体の第2の外壁面に設置されるか、またはこの第2の外壁面から離間して設置されることを特徴とするモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体近傍の環境情報を計測するモニタリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
暑熱下における熱中症の予防などの体調管理のためには、環境情報をモニタリングすることが重要である。
例えば、熱中症を予防するために従来用いられている暑さ指数計では、黒球温度、湿球温度、乾球温度を計測して暑さ指数を求めている(非特許文献1参照)。非特許文献1には、暑さ指数が比較的高い場合には外出や激しい作業を避けるなど、暑さ指数を行動の指針とする手法が開示されている。
【0003】
従来の暑さ指数計は、一般に、比較的大きな装置で構成され、任意の場所に配置することは困難である。例えば、環境省によって公表される暑さ指数は広い地域を代表する値である。
ところが、実際に個々人が受ける暑熱負荷は、局所的な環境によって大きく左右される。例えば、屋外と屋内、日向と日陰、芝生の上とコンクリートの上など、それぞれの人のいる場所によって環境は大きく異なる。また、同じ場所であっても、背の高い大人と背の低い子供とでは例えば地面からの輻射の影響は大きく異なる。さらに、着ている衣服や、運動状態、発汗状態などによっても人体近傍の環境は大きく変化する。
【0004】
そこで、体調を管理したい人が環境センサを携帯したり、身に着けたりして人体近傍の環境をモニタリングする方法が考えられる。しかしながら、従来の環境センサは、持ち運びが不便であったり、汗がセンサに付着すると正確な計測ができなくなったり、環境センサの装着によって通気が阻害されると人体近傍の本来の環境情報を正確に計測できなくなったりするなどの課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JuYoun Kwon,Ken Parsons,“Evaluation of the Wet Bulb Globe Temperature (WBGT) Index for Digital Fashion Application in Outdoor Environments”,Journal of the Ergonomics Society of Korea,36(1),pp.23-36,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、生体近傍の環境情報を簡便かつ安定して正確に計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモニタリングシステムは、ウェアラブルセンサ装置と、生体が着用するウェアとから構成され、前記ウェアラブルセンサ装置は、前記生体の近傍の環境情報を計測するように構成された環境センサと、前記ウェアラブルセンサ装置を前記ウェアに装着するために前記ウェアラブルセンサ装置の筐体の第1の外壁面に設けられた第1の結合部材とを備え、前記ウェアは、前記生体と向かい合う面と反対側の面に、前記第1の結合部材と嵌合する第2の結合部材が設けられたインナーウェアであり、前記生体が立位姿勢のときに前記ウェアラブルセンサ装置の筐体の第2の外壁面が前記生体の左右または斜め下を向くように、前記ウェアラブルセンサ装置が前記ウェアに装着され、前記環境センサは、前記第2の外壁面に設置されるか、または前記第2の外壁面から離間して設置され、前記第1、第2の結合部材がそれぞれ複数設けられ、前記ウェアラブルセンサ装置の筐体が非対称形状であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体が立位姿勢のときに生体の左右または斜め下を向く筐体の外壁面に環境センサを設置するか、または外壁面から離間して設置することにより、生体近傍の局所的な環境情報を簡便かつ安定して計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の正面斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の第1の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の背面斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の内部構造を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例において着用者がウェアラブルセンサ装置を装着した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、着用者がウェアラブルセンサ装置を装着していない状態におけるウェアの拡大図である。
【
図5】
図5は、着用者がウェアラブルセンサ装置を装着した状態におけるウェアラブルセンサ装置とウェアの拡大図である。
【
図6】
図6は、着用者がウェアラブルセンサ装置を装着した状態におけるウェアラブルセンサ装置とウェアの拡大図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の回路構成を示すブロック図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第2の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の正面図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の第2の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の背面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1、第2の実施例に係る温湿度センサの別の固定方法を説明する図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1、第2の実施例に係るウェアラブルセンサ装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施例について、図を参照して詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施例]
図1Aは本発明の第1の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の正面斜視図、
図1Bはウェアラブルセンサ装置の背面斜視図である。ここでは、着用者が着ているインナーウェアと向かい合うウェアラブルセンサ装置100の面を背面、背面と反対側の面をウェアラブルセンサ装置100の正面とする。
【0012】
ウェアラブルセンサ装置100は、密閉された筐体1の外壁側面に温湿度センサ2(環境センサ)を備えている。また、後述のようにインナーウェアと向かい合う筐体1の外壁背面には、ウェアラブルセンサ装置100をインナーウェアに装着するためのスナップボタン3a,3b,3c(第1の結合部材)が3つ設けられている。
【0013】
図2はウェアラブルセンサ装置100の内部構造を示す図である。ウェアラブルセンサ装置100は、密閉された筐体1の中に、リジッド基板4aと、リジッド基板4a上に搭載された回路と温湿度センサ2とを接続するフレキシブル基板4cとを備えている。
【0014】
リジッド基板4a上には、温湿度センサ2によって計測された環境情報を処理するための情報取得部5と、環境情報を外部の装置に無線送信する無線通信部6と、電池7と、電池7の電圧を入力として、リジッド基板4a上の回路および温湿度センサ2に電源電圧を供給する電源回路8とが搭載されている。
【0015】
筐体1は、外部から汗や雨等の液体が侵入しないように密閉されており、防水性を備えている。筐体1は、例えば樹脂製の上蓋1aと、同じく樹脂製の下蓋1bとから構成される。筐体1の防水性を確保するためには、周知の方法として、上蓋1aと下蓋1bとの間にOリングを入れた状態で上蓋1aを下蓋1bにねじ止めする方法や、上蓋1aと下蓋1bとを接着剤で固着する方法、上蓋1aと下蓋1bとを超音波接合する方法などを用いればよい。
【0016】
温湿度センサ2は、リジッド基板4b上に搭載されている。リジッド基板4bは、筐体1の外壁側面に固定されている。温湿度センサ2は、例えば半導体チップにより構成される。この半導体チップの中には、温度によって抵抗が変化する温度センサと、周囲の気体の水分を吸湿して、容量や抵抗が変化する湿度センサとが備えられている。リジッド基板4b上に搭載された温湿度センサ2は、可撓性の配線とリジッド基板4a上の配線とを介して、筐体1内部の情報取得部5および電源回路8と電気的に接続されている。可撓性の配線としては、例えばフレキシブル基板4cを用いることができる。
【0017】
リジッド基板4a,4bとフレキシブル基板4cとが一体化され、リジッドフレキシブル基板を構成している。上記のとおり、リジッド基板4aには情報取得部5と無線通信部6と電池7と電源回路8とが搭載され、リジッド基板4bには温湿度センサ2が搭載され、リジッド基板4aとリジッド基板4bとの間がフレキシブル基板4cによって電気的に接続されている。
【0018】
リジッド基板4aは、下蓋1bの内壁面に固定されている。リジッド基板4bは、下蓋1bの外壁側面に固定されている。リジッド基板4a,4bが下蓋1bに固定された状態で、フレキシブル基板4cの上下を上蓋1aと下蓋1bで挟むようにし、上記のとおり上蓋1aと下蓋1bとをねじ止め、接着、超音波接合などの方法で接合する。
【0019】
また、
図2に示すように、温湿度センサ2の周囲に例えば樹脂製の保護部材9を設けるようにしてもよい。保護部材9は、温湿度センサ2が外部の物体と衝突して破損したり、人の指などが温湿度センサ2の表面に接触して、センサ表面が汚れたりすることを防ぐ役割を果たす。保護部材9は、筐体1の外壁側面に固定されている。保護部材9には通気孔90が設けられている。温湿度センサ2は、通気孔90を通して外気と接触することができるので、周辺の空気の温度と湿度とを計測することができる。
こうして、温湿度センサ2によって計測された温湿度データ(環境情報)を、筐体1内部の情報取得部5に伝達し処理することが可能となる。
【0020】
本実施例においては、AD変換器を内蔵した温湿度センサ2を用いており、温湿度の計測値をAD変換器によってデジタルデータに変換して、情報取得部5に送信するようにしている。温湿度センサ2の構成は本実施例に限るものではなく、アナログ出力の温湿度センサを用いてもよい。この場合には、リジッド基板4a上にアナログ信号処理部やAD変換器を搭載し、温湿度センサ2から出力されたアナログ信号に対してアナログ信号処理部によって増幅等の処理をした後に、AD変換器によってデジタルデータに変換して情報取得部5に渡すようにすればよい。
【0021】
金属製のスナップボタン3a,3b,3cは、それぞれ個別部品として予め機械加工される。そして、スナップボタン3a,3b,3cは、樹脂製の下蓋1bを作製する際に凸部200a,200b,200cが下蓋1bの外壁下面から突出し、残りの部分が下蓋1bに取り囲まれるように、例えばインサート成型法によって下蓋1bと一体化されている。こうして、スナップボタン3a,3b,3cを固定する箇所の防水性を確保しつつ、スナップボタン3a,3b,3cを下蓋1bに固定することができる。
【0022】
図3は着用者がウェアラブルセンサ装置100を装着した状態を示す図である。
図4は着用者がウェアラブルセンサ装置100を装着していない状態におけるウェアの拡大図、
図5,
図6は着用者がウェアラブルセンサ装置100を装着した状態におけるウェアラブルセンサ装置100とウェアの拡大図である。
図3~
図6では、着用者の体の左右方向をX方向、前後方向をY方向、鉛直方向をZ方向としている。
【0023】
図3、
図5、
図6は、着用者がウェアラブルセンサ装置100をTシャツ等のインナーウェア101に装着し、インナーウェア101の上にアウターウェア102を着用した状態を示している。
図5はアウターウェア102とインナーウェア101との間を着用者の頭部から見た状態を示している。
図6はアウターウェア102とインナーウェア101との間を着用者の体の左側から見た状態を示している。なお、
図3、
図5、
図6では、保護部材9の記載を省略している。
【0024】
インナーウェア101には、着用者の皮膚103と接する面と反対側の面に凹部201a,201b,201cが露出するように設置されたスナップボタン104a,104b,104c(第2の結合部材)が設けられている。
図5、
図6に示すように、ウェアラブルセンサ装置100に設けられたオス型のスナップボタン3a,3b,3cの凸部とインナーウェア101に設けられたメス型のスナップボタン104a,104b,104cの凹部とを嵌合させることにより、ウェアラブルセンサ装置100をインナーウェア101に簡便に装着することが可能となっている。ウェアラブルセンサ装置100をインナーウェア101に装着することにより、ウェアラブルセンサ装置100とインナーウェア101とは、着用者の近傍の環境情報を計測するモニタリングシステムとなる。
【0025】
ウェアラブルセンサ装置100は例えば5mm~10mm程度の厚さなので、着用者の動作を妨げることなく、人体近傍の温度や湿度などの環境情報を計測することが可能となる。また、スナップボタン3a,3b,3cは、スナップボタン104a,104b,104cと着脱自在に接続可能なので、インナーウェア101を洗濯する場合には、ウェアラブルセンサ装置100を外して、インナーウェア101のみを洗濯することができる。
【0026】
図3、
図5、
図6に示すように着用者がインナーウェア101の上にアウターウェア102を着用すると、ウェアラブルセンサ装置100は、インナーウェア101とアウターウェア102との間に設置される。
【0027】
インナーウェア101とアウターウェア102との間には、ウェア101,102の撓みや、ウェアラブルセンサ装置100の厚みによって間隙が形成されている。上記のとおり、温湿度センサ2は、ウェアラブルセンサ装置100の外壁側面に設けられている。ウェアラブルセンサ装置100のスナップボタン3a,3b,3cが設けられた外壁背面と、温湿度センサ2が設けられた外壁側面とは互いに略直交しているため、ウェアラブルセンサ装置100をインナーウェア101に装着した際には、着用者の体表面近傍の、体表面と略直交する面に温湿度センサ2が配置されることになる。
【0028】
したがって、温湿度センサ2は、インナーウェア101とアウターウェア102との間に形成される空間と面することになり、この空間の環境情報を計測することができる。
仮に、温湿度センサ2がウェアラブルセンサ装置100のスナップボタン3a,3b,3cと同じ面または反対側の面に配置されていると、ウェアラブルセンサ装置100をインナーウェア101に装着したときに、温湿度センサ2の周辺の通気性が低下する。その結果、温湿度センサ2は、着用者近傍の本来の環境情報とは異なる情報を計測してしまうこととなる。本実施例のように、着用者の体表面と略直交する面に温湿度センサ2を配置すれば、通気性の低下の問題を解消することができる。
【0029】
図3、
図5、
図6に示すように、温湿度センサ2は、着用者が立位姿勢のときに着用者の体の左右方向を向く筐体1の面に配置されている。
仮に、着用者が立位姿勢のときに温湿度センサ2が上方向を向く筐体1の面に配置されていると、温湿度センサ2やその周辺に汗が付着して、湿度が高く計測されるケースが生じ易くなる。そのため、着用者が立位姿勢のときに上向き以外の筐体1の面に温湿度センサ2を配置することによって、汗等の付着により計測が不正確となる問題を回避することが可能となる。
【0030】
また、インナーウェア101とアウターウェア102との間の空気は、アウターウェア102の下側の開口部と上側の開口部とによって外気と通気している。インナーウェア101とアウターウェア102との間には、主に上下方向の気流が生じて空気が換気される。
図6の矢印105は、このインナーウェア101とアウターウェア102との間の気流を示している。
【0031】
着用者が立位姿勢のときに下向きとなる筐体1の面においては、インナーウェア101とアウターウェア102との間の気流がウェアラブルセンサ装置100によって遮られて空気が停滞する。このため、着用者が立位姿勢のときに下向きとなる筐体1の面に温湿度センサ2を配置すると、着用者近傍の本来の環境情報とは異なる情報を計測してしまうこととなる。
【0032】
本実施例のように、着用者が立位姿勢のときに着用者の体の左を向く筐体1の面に温湿度センサ2を配置することによって、温湿度センサ2周辺では、インナーウェア101とアウターウェア102との間を気流が遮られることなく流れる。これにより、温湿度センサ2は、着用者近傍の本来の環境情報を計測することが可能となる。
【0033】
図3、
図5、
図6では、着用者が立位姿勢のときに着用者の体の左を向く筐体1の面に温湿度センサ2を配置しているが、着用者の体の右を向く筐体1の面に温湿度センサ2を配置してもよいことは言うまでもない。
【0034】
次に、
図7を用いて、ウェアラブルセンサ装置100の回路構成について説明する。本実施例において、温湿度センサ2は情報取得部5に接続される。情報取得部5は、情報記憶のためのメモリ50を備えている。
情報取得部5は、温湿度センサ2によって計測された温湿度データを無線通信部6に渡す。このとき、情報取得部5は、温湿度データを一旦メモリ50に格納し、温湿度データの送信タイミングになったときに無線通信部6に渡すようにしてもよいことは言うまでもない。
【0035】
無線通信部6は、温湿度センサ2によって計測された温湿度データを、アンテナ60から外部の装置に無線送信する。送信先の外部の装置としては、例えば着用者が所持するスマートフォンがある。
図7においては情報取得部5と無線通信部6とを別のブロックとして記載しているが、情報取得部5と無線通信部6の機能を備えた1つの半導体チップを用いるようにしてもよい。
【0036】
なお、スナップボタン3a,3b,3cは、これらが設けられる筐体1の面に関して非点対称(筐体1の面上に対称点が存在しない)に配置される。特に、本実施例では、平面視二等辺三角形(正三角形を除く)の各頂点の位置にスナップボタン3a,3b,3cを1つずつ配置している。したがって、スナップボタン3a,3b,3cと嵌合するスナップボタン104a,104b,104cも、インナーウェア101の面上の平面視二等辺三角形(正三角形を除く)の各頂点の位置に1つずつ配置されることになる。このような配置により、スナップボタン3a,3b,3cとスナップボタン104a,104b,104cとの正しい嵌合を実現することができ、温湿度センサ2が誤った方向に向いて装着されることを防ぐことができる。
【0037】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図8Aは本発明の第2の実施例に係るウェアラブルセンサ装置の正面図、
図8Bはウェアラブルセンサ装置の背面図である。
図8A、
図8Bでは、第1の実施例と同様に、着用者の体の左右方向をX方向、前後方向をY方向、鉛直方向をZ方向としている。
【0038】
ウェアラブルセンサ装置100aの回路構成は第1の実施例と同じである。本実施例では、温湿度センサ2は、着用者が着ているウェアにウェアラブルセンサ装置100aが装着され、着用者が立位姿勢のときに着用者の体の斜め下を向く筐体10の面に配置されている。このような配置により、本実施例では、第1の実施例のように着用者の体の左または右を向く筐体10の面に温湿度センサ2を配置する場合よりも、温湿度センサ2やその周辺に汗が付着する可能性を低減することができる。また、本実施例では、着用者が立位姿勢のときに下向きとなる筐体10の面に温湿度センサ2が配置される場合のように、温湿度センサ2周辺の気流が遮られて停滞することも回避することができる。
【0039】
温湿度センサ2への汗の付着の防止と気流の停滞の防止とを両立させるためには、着用者が着ているウェアにウェアラブルセンサ装置100aが装着され、着用者が立位姿勢のときに、温湿度センサ2が配置される筐体10の面を、鉛直下向き(0°)から例えばθ=20°~90°の範囲の角度θの面とするのがよい。より好適には、θ=30°~60°の範囲とすることで、温湿度センサ2への汗の付着と気流の停滞とをより確実に防止することが可能となる。
【0040】
本実施例では、ウェアラブルセンサ装置100aの背面には2つのスナップボタン3a,3bが配置されている。スナップボタン3a,3bが2つの場合、ウェアラブルセンサ装置100aが上下反転した状態でウェアに装着される可能性がある。このような問題に対して、本実施例では、筐体10を非対称形状としている。具体的には、上から下に向かって筐体10が窄まる形状となっている。このように筐体10を非対称形状とすることにより、ウェアラブルセンサ装置100aが誤った向きに装着されることを防止し、温湿度センサ2が着用者の体の斜め下を向くように装着されることを促すことが容易になる。
【0041】
また、ウェアラブルセンサ装置100aが上下反転した状態でウェアに装着されることを防止するために、ウェアラブルセンサ装置100aの上下方向を示すマークを筐体表面に設けるようにしてもよい。
また、ウェアラブルセンサ装置100aが装着されるウェアに、装着の向きを示すマーク等を設けるようにしてもよい。
【0042】
第1、第2の実施例においては、ウェアラブルセンサ装置100,100aのウェアへの結合部材としてスナップボタンを用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、マグネット、クリップ、マジックテープ(登録商標)などの結合部材を用いるようにしてもよい。これらの結合部材を用いて、ウェアラブルセンサ装置100,100aをウェアに装着することができる。また、ウェアラブルセンサ装置自体には結合部材を設けずに、ウェア側にポケットを設けるなどしてウェアラブルセンサ装置を装着できるようにしてもよい。
【0043】
また、ウェアラブルセンサ装置100,100aの背面に皮膚に接着可能なパッチなどを設けて、ウェアではなく着用者の体表面にウェアラブルセンサ装置100,100aを直接装着できるようにしてもよい。また、ウェアラブルセンサ装置100,100aを着脱可能な形態とせずに、ウェアと一体化してもよい。
【0044】
また、ウェアラブルセンサ装置100,100aは、Tシャツ、タンクトップ、腹巻、胸部に巻くベルト、ズボン、下着、上着など様々なウェアに装着することができる。また、靴下、帽子、ヘルメットなどに装着するようにしてもよい。
また、ウェアラブルセンサ装置100,100aは、生体近傍の環境情報をモニタリング対象としているので、人に限らず、動物等に装着するようにしてもよい。
【0045】
また、第1、第2の実施例においては、環境センサとして温湿度センサの例を示したが、これに限定されるものではなく、温度センサ単体や湿度センサ単体、気圧センサ、ガスセンサなどの環境センサを用いるようにしてもよい。また、これら複数のセンサを組み合わせた複合センサを環境センサとしてもよい。
【0046】
また、第1、第2の実施例では、環境情報を無線通信部6により外部の装置に送信する例を示したが、これに限定されるものではない。
情報取得部5は、計測された環境情報をメモリ50に蓄積するようにしてもよい。この場合には、計測後にウェアラブルセンサ装置をウェアから取り外して、メモリ50に蓄積された環境情報を有線で読み出すことができる。有線で読み出す場合には、情報取得部5と電気的に接続された読み出し用のコネクタを筐体に設ける必要があることは言うまでもない。
【0047】
また、第1、第2の実施例では、リジッド基板4aとフレキシブル基板4bとを箱状の筐体1により覆って密閉する構造を例として示したが、これに限定されるものではない。例えばリジッド基板4aとフレキシブル基板4bとスナップボタン3a,3b,3cの周囲に樹脂等を流し込んで、樹脂を硬化させ封止するようにしてもよい。
【0048】
また、第1、第2の実施例では、温湿度センサ2をリジッド基板4b上に搭載し、リジッド基板4bを筐体1,10の外壁面に固定しているが、これに限定されるものではない。
図9に示すように温湿度センサ2のセンサ表面20が筐体1,10の外壁面と平行になるように、温湿度センサ2を外壁面から離間して設置してもよい。
【0049】
具体的には、温湿度センサ2を搭載したリジッド基板4bが筐体1,10の外壁面の上に離間して設置されるように、リジッド基板4bを支える支持部材11a,11bを筐体1,10の外壁面に設けるようにすればよい。こうして、支持部材11a,11bによって温湿度センサ2を外壁面から離間して設置することができる。
【0050】
第1、第2の実施例で説明したウェアラブルセンサ装置100,100aの構成のうち情報取得部5と無線通信部6のソフトウェアの機能とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図10に示す。
【0051】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。インタフェース装置302には、温湿度センサ2と無線通信部6のハードウェア等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明のモニタリング方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、環境情報を計測する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,10…筐体、1a…上蓋、1b…下蓋、2…温湿度センサ、3a~3c,104a~104c…スナップボタン、4a,4b…リジッド基板、4c…フレキシブル基板、5…情報取得部、6…無線通信部、7…電池、8…電源回路、9…保護部材、11a,11b…支持部材、50…メモリ、90…通気孔、100,100a…ウェアラブルセンサ装置、101…インナーウェア、102…アウターウェア。