(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181466
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】導電性積層体、タッチパネル、導電性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231214BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G06F3/041 400
G06F3/041 660
G06F3/044 122
G06F3/041 495
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188104
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2021508272の分割
【原出願日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2019059120
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(57)【要約】
【課題】高温環境下に静置した際に、金属細線の断線が抑制された導電性積層体、タッチパネル、および、導電性積層体の製造方法を提供。
【解決手段】第1有機膜と、第1有機膜上に配置された金属細線と、金属細線を覆うように配置された第2有機膜と、を含み、金属細線が、第1有機膜側から、黒化層、密着層、および、金属導電層をこの順で含み、第1有機膜および第2有機膜の含水率が3.00%未満である、導電性積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有機膜と、
前記第1有機膜上に配置された金属細線と、
前記金属細線を覆うように配置された第2有機膜と、を含み、
前記金属細線が、前記第1有機膜側から、黒化層、密着層、および、金属導電層をこの順で含み、
前記第1有機膜および前記第2有機膜の含水率が3.00%未満である、導電性積層体。
【請求項2】
前記含水率が1.00%未満である、請求項1に記載の導電性積層体。
【請求項3】
前記黒化層と前記密着層とが同一の金属原子を含む、請求項1または2に記載の導電性積層体。
【請求項4】
前記第1有機膜と前記第2有機膜とが同一の材料で構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項5】
前記金属細線の線幅が第1有機膜側から第2有機膜側に向かって漸次小さくなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項6】
前記金属細線と前記第2有機膜との間に、前記金属細線を覆うように、Si、Al、および、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む無機膜が配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項7】
前記無機膜が、SiO2、SiON、SiN、Al2O3、および、TiO2からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載の導電性積層体。
【請求項8】
前記金属導電層が、Cu、Al、および、Agからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項9】
前記黒化層が、Mo、Nb、Cr、Ti、および、Wからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項10】
さらに、前記第1有機膜の第2有機膜側とは反対側に支持体を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性積層体。
【請求項11】
前記支持体がガラス基板である、請求項10に記載の導電性積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の導電性積層体を含む、タッチパネル。
【請求項13】
第1有機膜を形成する工程と、
前記第1有機膜上に金属細線を形成する工程と、
前記金属細線を覆うように第2有機膜を形成する工程と、を有し、
前記金属細線が、前記第1有機膜側から、黒化層、密着層、および、金属導電層をこの順で含み、
前記第1有機膜および前記第2有機膜の含水率が3.00%未満である、導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性積層体、タッチパネル、および、導電性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属細線を有する導電性基板は、タッチパネル、太陽電池、および、EL(エレクトロルミネッセンス)素子など種々の用途に幅広く利用されている。特に、近年、携帯電話および携帯ゲーム機器へのタッチパネルの搭載率が上昇しており、多点検出が可能な静電容量方式のタッチパネル用の導電性基板の需要が急速に拡大している。
例えば、特許文献1においては、基板上に黒化層および銅配線が配置されたタッチパネルセンサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、金属細線の保護の目的で、有機膜上に配置された金属細線を覆うように有機膜が配置される場合がある。
本発明者らは、黒化層と金属導電層との密着性の向上を目的として、黒化層および金属導電層の間に密着層を配置して、得られた金属細線上に有機膜をさらに配置して得られる導電性積層体の特性について検討を行ったところ、導電性積層体を高温環境下に静置すると、金属細線の断線が生じる場合があることを知見した。この金属細線の断線は、細線の幅に依存するものではなかった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、高温環境下に静置した際に、金属細線の断線が抑制された導電性積層体を提供することを課題とする。
また、本発明は、タッチパネル、および、導電性積層体の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 第1有機膜と、
第1有機膜上に配置された金属細線と、
金属細線を覆うように配置された第2有機膜と、を含み、
金属細線が、第1有機膜側から、黒化層、密着層、および、金属導電層をこの順で含み、
第1有機膜および第2有機膜の含水率が3.00%未満である、導電性積層体。
(2) 含水率が1.00%未満である、(1)に記載の導電性積層体。
(3) 黒化層と密着層とが同一の金属原子を含む、(1)または(2)に記載の導電性積層体。
(4) 第1有機膜と第2有機膜とが同一の材料で構成されている、(1)~(3)のいずれかに記載の導電性積層体。
(5) 金属細線の線幅が第1有機膜側から第2有機膜側に向かって漸次小さくなる、(1)~(4)のいずれかに記載の導電性積層体。
(6) 金属細線と第2有機膜との間に、金属細線を覆うように、Si、Al、および、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む無機膜が配置されている、(1)~(5)のいずれかに記載の導電性積層体。
(7) 無機膜が、SiO2、SiON、SiN、Al2O3、および、TiO2からなる群から選択される少なくとも1種を含む、(6)に記載の導電性積層体。
(8) 金属導電層が、Cu、Al、および、Agからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む、(1)~(7)のいずれかに記載の導電性積層体。
(9) 黒化層が、Mo、Nb、Cr、Ti、および、Wからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む、(1)~(8)のいずれかに記載の導電性積層体。
(10) さらに、第1有機膜の第2有機膜側とは反対側に支持体を含む、(1)~(9)のいずれかに記載の導電性積層体。
(11) 支持体がガラス基板である、(10)に記載の導電性積層体。
(12) (1)~(11)のいずれかに記載の導電性積層体を含む、タッチパネル。
(13) 第1有機膜を形成する工程と、
第1有機膜上に金属細線を形成する工程と、
金属細線を覆うように第2有機膜を形成する工程と、を有し、
金属細線が、第1有機膜側から、黒化層、密着層、および、金属導電層をこの順で含み、
第1有機膜および第2有機膜の含水率が3.00%未満である、導電性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温環境下に静置した際に、金属細線の断線が抑制された導電性積層体を提供できる。
また、本発明によれば、タッチパネル、および、導電性積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】導電性積層体の第1実施形態の断面図である。
【
図2】交差する金属細線により構成されるメッシュパターンを示す一部平面図である。
【
図3】導電性積層体の第2実施形態の断面図である。
【
図4】導電性積層体の第3実施形態の断面図である。
【
図5】実施例において形成される金属配線パターンの概略図である。
【
図6】実施例において形成される金属配線パターンの概略図である。
【
図7】実施例において形成される金属配線パターンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適態様について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において「有機膜」(後述する第1有機膜~第3有機膜)とは、炭素原子を含む膜を意味し、炭素原子以外のヘテロ原子(例えば、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子など)が含まれていてもよい。
本発明の導電性積層体の特徴点としては、含水率の低い有機膜を用いている点が挙げられる。本発明においては、密着層および金属導電層を含む金属細線を含水率の低い有機膜で囲むことにより、密着層と金属導電層との剥離が抑制され、断線が抑制されている。
【0011】
<第1実施形態>
以下に、本発明の導電性積層体の第1の実施態様について図面を参照して説明する。
図1に、本発明の導電性積層体の第1の実施態様の断面図を示す。
導電性積層体10Aは、第1有機膜12と、金属細線14Aと、第2有機膜16とを含む。金属細線14Aは、第1有機膜12側から、黒化層20、密着層22、および、金属導電層24をこの順で含む。第1有機膜12上に配置された金属細線14Aは、第2有機膜16によって覆われている。つまり、金属細線14Aは、第1有機膜12および第2有機膜16によって囲まれている。なお、導電性積層体10Aをタッチパネルに適用する場合には、金属細線14A中の黒化層20が金属導電層24よりも視認側に配置されるように、導電性積層体10Aをタッチパネル中において配置することが好ましい。
以下、導電性積層体10Aに含まれる各部材について詳述する。
【0012】
(第1有機膜)
第1有機膜は、金属細線を支持する部材の一つである。
第1有機膜の含水率は、3.00%未満である。なかでも、導電性積層体を高温環境下に静置した際に、金属細線の断線がより抑制される点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、1.00%未満が好ましく、0.40%以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0.001%以上の場合が多い。
上記含水率の測定方法としては、温度25℃、湿度50%の環境下において測定対象物を24時間調湿し、カールフィッシャー法(150℃、気化法)によって含水率を測定する方法が挙げられる。
なお、本明細書において、「カールフィッシャー法(150℃、気化法)」とは、JIS K0113の記載に従い、カールフィッシャー水分計を用いて、気化温度150℃にて水分気化法で水分量を測定したことを意味する。
【0013】
第1有機膜の厚みは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~5.0μmが好ましく、1.0~3.0μmがより好ましい。
【0014】
第1有機膜を構成する材料は特に制限されず、上述した含水率を満たす材料であればよく、樹脂が好ましい。例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、および、ケイ素含有樹脂が挙げられ、(メタ)アクリル樹脂またはケイ素含有樹脂が好ましい。
なお、(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂およびメタアクリル樹脂の両方を含む文言である。
また、ケイ素含有樹脂とは、ケイ素原子を含む有機樹脂を意味する。ケイ素含有樹脂としては、例えば、有機基を有するポリシラザン、および、シルセスキオキサン構造を含む有機樹脂が挙げられる。
【0015】
有機膜中の含水率がより低くなる点から、(メタ)アクリル樹脂は、炭素環を有することが好ましい。炭素環としては、シクロヘキサン環などの脂肪族環、並びに、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、および、フェナンスレン環などの芳香族環が挙げられる。
炭素環は、単環であってもよいし、複環であってもよい。
炭素環としては、ベンゼン環またはフルオレン環が好ましく、フルオレン環がより好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル樹脂に含まれる繰り返し単位を構成し得るモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、および、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、ならびに、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、および、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸の誘導体1種の単重合体であっても、(メタ)アクリル酸の誘導体2種以上の共重合体であっても、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、本発明の効果がより優れる点で、20,000以上が好ましく、25,000以上がより好ましく、600,000以下が好ましく、350,0000以下がより好ましい。
上記重量平均分子量(以下Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値とする。GPCの具体的な測定条件としては、以下の測定条件が挙げられる。
GPC装置:HLC-8320(東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHZM-H、TSK gel SuperHZ4000、TSK gel SuperHZ2000併用、(東ソー社製、4.6mmID(内径)×15.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0017】
(メタ)アクリル樹脂としては、公知の方法によって製造したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR80、BR83、BR85、BR88、BR95、BR110、BR113(三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。
【0018】
第1有機膜を構成する材料が樹脂である場合、樹脂は架橋構造を有していてもよい。
架橋構造を有する樹脂を形成する方法としては、多官能モノマーを硬化させて樹脂を得る方法が挙げられる。
多官能モノマーが有する重合性基の種類は特に制限されないが、ラジカル重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)およびカチオン重合性基が挙げられる。
多官能モノマーが有する重合性基の数は特に制限されないが、2以上が好ましく、3~6がより好ましい。
【0019】
第1有機膜を製造する際にモノマーを用いる場合には、必要に応じて、重合開始剤を合わせて用いてもよい。重合開始剤としては、重合形式に応じて最適な開始剤が選択され、例えば、ラジカル重合開始剤、および、カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0020】
第1有機膜の形成方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、所定のモノマーを含む組成物を用いて塗膜を形成して、塗膜を硬化させて第1有機膜を形成する方法、所定の樹脂を含む組成物を塗布して、必要に応じて乾燥処理を施して、第1有機膜を形成する方法、および、樹脂を溶融させてフィルム状に成形する方法が挙げられる。
【0021】
(金属細線)
金属細線は、黒化層、密着層、および、金属導電層を含む。以下、各層について詳述する。
黒化層は、光の反射を抑制し、金属細線の視認性を低下させるための層である。
黒化層を構成する材料は特に制限されず、公知の材料を適用できる。なかでも、黒化層は、Mo、Nb、Cr、Ti、W、Ni、Ta、V、Fe、Co、Cu、Sn、および、Mnからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Mo、Nb、Cr、Ti、および、Wからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。
黒化層は、上記金属の原子以外の他の原子(例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、および、水素原子)を含んでいてもよい。
黒化層は、上述した金属原子からなる金属単体、または、2種以上の金属原子からなる金属合金を含んでいてもよい。また、黒化層は、上述した金属原子の酸化物、窒化物、または、酸窒化物を含んでいてもよい。
【0022】
黒化層の厚みは特に制限されないが、光の反射を十分に抑制でき、工業性に優れる点から、1~100nmが好ましく、3~30nmがより好ましい。
【0023】
密着層は、黒化層と金属導電層との間の密着性を担保するための層である。
密着層を構成する材料は特に制限されず、公知の材料を適用できる。なかでも、密着層は、Mo、Nb、Cr、Ti、W、Ni、Ta、V、Fe、Co、Cu、Sn、および、Mnからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Mo、Nb、Cr、Ti、および、Wからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。
密着層は、上記金属の原子以外の他の原子(例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、および、水素原子)を含んでいてもよい。
密着層は、上述した金属原子からなる金属単体、または、2種以上の金属原子からなる金属合金を含んでいてもよい。また、密着層は、上述した金属原子の酸化物、窒化物、または、酸窒化物を含んでいてもよい。
【0024】
密着層と黒化層の密着性がより良好となる点から、黒化層と密着層とは同一の金属原子を含むことが好ましい。
また、密着層と黒化層とは構成成分が同じであった場合でも、密度が異なることによって機能が異なる場合もある。なお、密着層および黒化層の密度は、形成される際の条件(例えば、スパッタリング法の条件)によって変化する場合がある。
【0025】
密着層の厚みは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~100nmが好ましく、20~60nmがより好ましい。
【0026】
金属導電層は、導電性積層体に対して導電性を付与し得る部材である。
金属導電層を構成する材料は特に制限されず、公知の材料を適用できる。なかでも、金属導電層は、Cu、Al、Ag、Pt、Ni、および、Pdからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましく、Cu、Al、および、Agからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことがより好ましい。
金属導電層は、上述した金属原子からなる金属単体、または、2種以上の金属原子からなる金属合金を含んでいてもよい。
【0027】
金属導電層の厚みは特に制限されないが、導電性の点から、10~700nmが好ましく、100~600nmがより好ましい。
【0028】
なお、金属細線は、上記黒化層、密着層、および、金属導電層以外の層を含んでいてもよい。
例えば、金属細線は、金属導電層の密着層側とは反対側の表面上に、密着層および保護層を含んでいてもよい。
金属導電層と保護層との間に配置される密着層は、両者の密着を担保するための層である。密着層の構成としては、上述した黒化層と金属導電層との間に配置される密着層の構成が挙げられる。
【0029】
保護層は、金属導電層を保護する役割を有する層である。
保護層の構成としては、上述した黒化層と同様の構成が挙げられる。
【0030】
金属細線の形状は特に制限されないが、金属細線の線幅が第1有機膜側から第2有機膜側に向かって漸次小さくなる形状が好ましい(
図1参照)。つまり、金属細線は、テーパ状の断面形状を有することが好ましい。金属細線が上記形状を有する場合、金属細線がより視認しづらくなる。
テーパ状の断面形状を有する金属細線の傾斜面と、第1有機膜表面とのなす角度(
図1中のθ1。以後、テーパ角度ともいう。)は特に制限されないが、60~80°が好ましい。
また、黒化層の第1有機膜側の線幅と、金属導電層の第1有機膜側の線幅とは異なっていてもよく、黒化層の第1有機膜側の線幅W1に対する、金属導電層の第1有機膜側の線幅W2の割合{(W2/W1)×100(%)}(
図1参照)は、90~99.9%が好ましい。上記範囲内であれば、金属細線がより視認しづらくなる。
【0031】
金属細線の線幅は特に制限されず、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、9μm以下が特に好ましく、7μm以下が最も好ましく、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。上記範囲であれば、低抵抗で、視認しづらい電極を形成できる。
なお、上記金属細線の線幅とは金属細線のうち最も大きい線幅を意味し、
図1のようにテーパ状の断面形状を有する金属細線の場合、黒化層の第1有機膜側の線幅が金属細線の線幅に該当する。
【0032】
金属細線の厚みは特に制限されず、0.01~20μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.01~5μmがさらに好ましい。上記範囲であれば、低抵抗で、視認しづらい電極を形成できる。
【0033】
金属細線はパターンを形成していてもよく、例えば、そのパターンは特に制限されず、正三角形、二等辺三角形、および、直角三角形などの三角形、四角形(例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、および、台形など)、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形、ならびに、これらを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、メッシュ状(メッシュパターン)であることがより好ましい。
【0034】
メッシュ状とは、
図2に示すように、交差する金属細線14により構成される複数の開口部18を含んでいる形状が挙げられる。開口部18の一辺の長さLは特に制限されないが、1500μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましく、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。
開口部の一辺の長さが上記範囲である場合には、導電性積層体の透明性がより良好となる。
【0035】
図2において、開口部18は、ひし形の形状を有しているが、他の形状であってもよい。例えば、多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、および、ランダムな多角形)としてもよい。また、一辺の形状を直線状の他、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する二辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する二辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。
【0036】
可視光透過率の点から、金属細線より形成されるメッシュパターンの開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。開口率とは、金属細線がある領域を除いた第1有機膜上の領域が全体に占める割合に相当する。
【0037】
金属細線の形成方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられ、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、および、蒸着法が挙げられる。
また、金属細線を所定の位置に形成する方法に関しても、公知の方法が挙げられる。一例として、スパッタリング法によって第1有機膜の全面に黒化層、密着層、および、金属導電層を形成した後、金属導電層上にパターン化されたレジスト膜を形成して、レジスト膜の開口部の黒化層、密着層、および、金属導電層を除去することにより、所定の位置に金蔵細線を配置する方法が挙げられる。
なお、不要な層を除去する方法としては、ウェットエッチング(例えば、エッチング液を用いたエッチング)、および、ドライエッチングのいずれの方法でもよい。
【0038】
(第2有機膜)
第2有機膜は、上述した第1有機膜と共に、金属細線を支持する部材の一つである。
第2有機膜の構成は、上述した第1有機膜の構成と同じである。例えば、第2有機膜の含水率の範囲は、上述した第1有機膜の含水率の範囲と同じである。
第2有機膜の厚みは、金属細線を覆い、かつ、第2有機膜の表面が平滑になる点で、0.5~5.0μmが好ましく、1.0~3.0μmがより好ましい。
さらに、第2有機膜を構成する材料の好適態様は、第1有機膜を構成する材料の好適態様と同じである。
第2有機膜の形成方法は、上述した第1有機膜の形成方法と同じである。
【0039】
本発明の効果がより優れる点で、第1有機膜と第2有機膜とが同一の材料で構成されていることが好ましい。同一の材料で構成されることにより、第1有機膜と第2有機膜との密着性も向上する。
【0040】
上記導電性積層体は、公知の方法により製造できる。
なかでも、第1有機膜を形成する工程と、第1有機膜上に金属細線を形成する工程と、金属細線を覆うように第2有機膜を形成する工程とを有する方法により製造することが好ましい。
なお、各部材(第1有機膜、金属細線、第2有機膜)の具体的な製造方法は、上述した通りである。
【0041】
なお、上記導電性積層体においては、上述した以外の部材を含んでいてもよい。
例えば、第1有機膜と第2有機膜との間には、金属細線以外の他の導電部(例えば、金属細線からなるメッシュパターンの両端に配置された導電性端子部)が配置されていてもよい。
【0042】
<第2実施形態>
以下に、本発明の導電性積層体の第2の実施態様について図面を参照して説明する。
図3に、本発明の導電性積層体の第2の実施態様の断面図を示す。
導電性積層体10Bは、第1有機膜12と、金属細線14Aと、無機膜26と、第2有機膜16とを含む。金属細線14Aは、第1有機膜12側から、黒化層20、密着層22、および、金属導電層24をこの順で含む。
導電性積層体10Bは、無機膜26の点を除いて、導電性積層体10Aと同様の構成を有するものであって、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
以下では、無機膜26について詳述する。
【0043】
(無機膜)
無機膜は、金属細線を覆うように第1有機膜と第2有機膜との間に配置される膜である。無機膜が配置されることにより、本発明の効果がより優れる。
無機膜を構成する材料は特に制限されず、Si、Al、および、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含むことが好ましい。
無機膜は、上記金属の原子以外の他の原子(例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、および、水素原子)を含んでいてもよい。
無機膜は、上述した金属原子の酸化物、窒化物、または、酸窒化物を含んでいてもよく、SiO2、SiON、SiN、Al2O3、および、TiO2からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
無機膜の厚みは特に制限されず、10~1000nmが好ましく、20~200nmがより好ましい。
【0045】
図3に示すように、無機膜は第1有機膜および金属細線を覆うように配置されていてもよいし、金属細線のみを覆うように配置されていてもよい。
無機膜の形成方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられ、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学的気相成長法(CVD)、ならびに、めっき法およびゾルゲル法などの液相成長法が挙げられる。
【0046】
<第3実施形態>
以下に、本発明の導電性積層体の第3の実施態様について図面を参照して説明する。
図4に、本発明の導電性積層体の第3の実施態様の断面図を示す。
導電性積層体10Cは、支持体28、第1有機膜12と、金属細線14Aと、第2有機膜16と、金属細線14Bと、無機膜26と、第3有機膜30とを含む。金属細線14Aおよび金属細線14Bは、第1有機膜12側から、黒化層20、密着層22、および、金属導電層24をこの順で含む。
なお、導電性積層体10Cをタッチパネルに適用する場合には、金属細線14A中の黒化層20が金属導電層24よりも視認側に配置されるように、導電性積層体10Cをタッチパネル中において配置することが好ましい。つまり、タッチパネル中において、支持体28が視認側に配置されることが好ましい。この場合、支持体28は、タッチパネルにおいてタッチ面を構成していてもよい。
導電性積層体10C中の第1有機膜12と、金属細線14Aと、第2有機膜16とは、導電性積層体10Aの第1有機膜12と、金属細線14Aと、第2有機膜16とにそれぞれ該当し、その説明を省略する。
以下では、導電性積層体10Cに含まれる支持体28、金属細線14B(以下、「第2金属細線」ともいう)、無機膜26、および、第3有機膜30について詳述する。
【0047】
(支持体)
支持体は、他の部材を支持するための部材である。より具体的には、第1有機膜を形成する際の部材として機能する。
支持体の種類は特に制限されず、例えば、ガラス基板、および、樹脂基板が挙げられ、透明性および耐光性の点から、ガラス基板が好ましい。
なお、樹脂基板を構成する材料としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、および、フルオレン環変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
支持体の厚みは特に制限されず、25~500μmの場合が多い。
支持体の全光線透過率は、85~100%が好ましい。
【0048】
なお、支持体としては、仮支持体(剥離性支持体)を用いることもできる。支持体として仮支持体を用いる場合は、仮支持体上に配置されている部材を他の被貼合物へ転写することができる。その場合、仮支持体と第1有機膜との間で剥離が生じ、仮支持体を分離できる。
【0049】
(第2金属細線)
第2金属細線は、第2有機膜と第3有機膜との間に配置される細線である。
第2金属細線の構成は、上述した第1実施態様で説明した金属細線の構成と同様である。
【0050】
(無機膜)
無機膜は、第2金属細線を覆うように第2有機膜と第3有機膜との間に配置される膜である。無機膜が配置されることにより、本発明の効果がより優れる。
無機膜の構成は、上述した第2実施形態で説明した無機膜の構成と同じである。
【0051】
(第3有機膜)
第3有機膜は、第2金属細線を覆うように配置される膜である。
第3有機膜の構成は、上述した第1実施形態で説明した第1有機膜の構成と同じである。例えば、第3有機膜の含水率の範囲は、上述した第1有機膜の含水率の範囲と同じである。
また、第3有機膜の厚みの好適範囲は、上述した第1有機膜の厚みの好適範囲と同じである。
さらに、第3有機膜を構成する材料の好適態様は、第1有機膜を構成する材料の好適態様と同じである。
第3有機膜の形成方法は、上述した第1有機膜の形成方法と同じである。
【0052】
本発明の導電性積層体は、タッチパネルに好適に用いることができる。
本発明の導電性積層体を有するタッチパネルの種類は特に制限されず、目的に応じて適宜選択でき、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投影型静電容量方式タッチパネル、および、抵抗膜式タッチパネルが挙げられる。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサおよびタッチパッドを含むものとする。
上記タッチパネルは、各種表示装置(液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置など)に適用される。
【実施例0053】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
(支持体の準備)
10cm角のガラス基板(コーニング社製、イーグルXGガラス)の表面に対して、UV(紫外線)オゾン処理を5分間施した。その後、得られたガラス基板を、アズワン社製のクリーンエースを30質量%に希釈した水溶液に浸漬し、アイオン社製ベルクリンを用いてガラス基板の表面を擦り洗った。その後、得られたガラス基板を純水に浸漬し、上記同様にベルクリンを用いて、ガラス基板の表面を擦り洗った。その後、得られたガラス基板をエアブローし、200℃にて30分間で乾燥した。
【0055】
(第1有機膜形成)
トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製)と光重合開始剤(ランベルティ社製ESACURE KTO46)とを95.5質量%:4.5質量%で混合した後、メチルエチルケトン中に固形分濃度10質量%となるよう溶解させて、有機膜形成用組成物を得た。
次に、テスター産業製自動塗布機PI1210にてアプリケーターバー(有効幅20mm)を用いて、上記で洗浄処理されたガラス基板上に有機膜形成用組成物を塗布して、その後120℃で3分間乾燥させて、塗膜を形成した。なお、塗工速度は100mm/secとした。
次に、日本電池社製メタルハライドランプMAL625NLを用いて、酸素濃度200体積ppm、温度80℃の条件下にて、塗膜に対してUV照射(600mJ/cm2)して硬化膜を得た。その後、真空下にて、80℃で12時間にわたって硬化膜を乾燥し、第1有機膜(厚み:1.5μm)を得た。
【0056】
(第1金属細線形成)
マグネトロンスパッタリング法にて、得られた第1有機膜上に膜厚10nmのMoNb膜(Mo含有量:80質量%、Nb含有量:20質量%)を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10
-2Pa、電力7kW、成膜速度0.8nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、MoNb膜上に膜厚40nmのMoNb膜(Mo含有量:80質量%、Nb含有量:20質量%)を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10
-2Pa、電力8kW、成膜速度0.6nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、MoNb膜上に膜厚200nmのCu膜を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10
-2Pa、電力5kW、成膜速度0.4nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、Cu膜上に膜厚80nmのCuNi膜(Cu含有量:75質量%、Ni含有量:25質量%)を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10
-2Pa、電力6kW、成膜速度0.8nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、CuNi膜上に膜厚100nmのMoNb膜(Mo含有量:80質量%、Nb含有量:20質量%)を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10
-2Pa、電力4kW、成膜速度0.5nm/minであった。
なお、上記マグネトロンスパッタリング法においては、不活性ガスとしてアルゴンを用いた。
次に、形成された上記積層膜上に、東京応化製OAPを塗布した。次に、パターニング用レジストとして、東京応化製ノボラックOFPR800をさらに塗布した。上記塗布は、ミカサ社製スピンコータ1H-D7を用いた。上記塗布後に、90℃にて3分間乾燥し、膜厚1μmのレジスト膜を得た。
次に、メッシュフォトマスクを用い、ミカサ社製マスクアライナーMA-20(水銀光源)にて10秒間にわたって、レジスト膜を光照射した。その後、東京応化製NMD-W2.38%水溶液に5分間浸漬し、次に、純水に1分間浸漬し、120℃で3分間乾燥して、パターン状のレジスト膜を得た。
パターン状のレジスト膜を有するガラス基板を50℃に保温したエッチング液(東亞合成社製:塩化第二鉄液)に1分間浸漬し、次に、純水に5分間浸漬し、エアブローを行い、120℃で3分間乾燥し、
図2に示すようなメッシュ状の金属細線を得た。
形成された金属細線は、MoNb膜(黒化層)、MoNb膜(密着層)、Cu膜(金属導電層)、CuNi膜(密着層)、および、MoNb膜(保護層)をこの順で含んでいた。また、金属細線は
図1に示すようにテーパ状の断面形状を有し、金属細線の線幅(黒化層の第1有機膜側の線幅に該当)は4.0μmであり、テーパ角度θ1は70°であり、黒化層の第1有機膜側の線幅W1に対する、金属導電層の第1有機膜側の線幅W2の割合は97%であった。
また、
図5に示すように、第1有機膜上には、上記メッシュ状の第1金属細線から形成されるメッシュパターン40と、メッシュパターン40を挟む2つの抵抗値測定用端子42とからなるユニット44を20個配置した。また、メッシュパターンのメッシュ状の開口部の一辺の長さは500μmであり、ひし形状の開口部の一つの角度(
図2中の角度θ2)は65°であった。抵抗値用測定用端子42の大きさは2mm×1mmであり、各ユニット44の間隔は2mmであった。
【0057】
(第2有機膜形成)
金属細線が形成された第1有機膜上に、上記(第1有機膜形成)と同様の手順に従って、厚み2.5μmの第2有機膜を形成した。
【0058】
(第2金属細線形成)
第2有機膜上に、上記(第1金属細線)と同様の手順に従って、メッシュ状の第2金属細線を形成した。ただし、第1金属細線によって形成されるメッシュパターンの交点が、第2金属細線によって形成されるメッシュパターンの開口部に位置するように、メッシュ状の第2金属細線を形成した。
また、
図6に示すように、第2有機膜上には、上記メッシュ状の第2金属細線から形成されるメッシュパターン40と、メッシュパターン40を挟む2つの抵抗値測定用端子42とからなるユニット44を20個配置した。抵抗値用測定用端子42の大きさは2mm×1mmであり、各ユニット44の間隔は2mmであった。なお、
図5および
図6とでは、ユニットの配列方向が異なっており、第2金属細線のユニットの配列方向と第1金属細線のユニットの配列方向は直交するようにした。
【0059】
(無機膜形成)
プラズマCVD法によって、第2金属細線が配置された第2有機膜上に厚み50nmのSiO2膜を形成した。
プラズマCVD法において、原料ガスとしては、シランガス、水素ガス、および、酸素ガスを用いた。シランガスの流量は100sccm、水素ガスの流量は1000sccm、酸素ガスの流量は200sccmとした。真空度は50Pa、基板温度は30℃、電極投入電力は6.5kW、成膜速度は10nm/minとした。
【0060】
(第3有機膜形成)
SiO2膜上に、上記(第1有機膜形成)と同様の手順に従って、厚み2.0μmの第2有機膜を形成した。
【0061】
上記手順によって、
図4に示すような、導電性積層体1を得た。なお、導電性積層体1を上面から観察すると
図7のようにメッシュパターンが配置されていた。
【0062】
<実施例2>
上記(第1金属細線形成)中の各層の製造条件を以下の(製造条件2)のように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性積層体2を得た。
導電性積層体2中の第1金属細線および第2金属細線は、Mo2N膜(黒化層)、Mo膜(密着層)、Al膜(金属導電層)、Mo膜(密着層)、および、Mo2N膜(保護層)をこの順で含んでいた。
【0063】
(製造条件2)
マグネトロンスパッタリング法にて、得られた第1有機膜上に膜厚10nmのMo2N膜を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10-2Pa、電力10kW、成膜速度0.5nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、Mo2N膜上に膜厚40nmのMo膜を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10-2Pa、電力8kW、成膜速度0.6nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、Mo膜上に膜厚200nmのAl膜を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10-2Pa、電力6kW、成膜速度0.4nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、Al膜上に膜厚80nmのMo膜を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10-2Pa、電力4kW、成膜速度0.3nm/minであった。
次に、マグネトロンスパッタリング法にて、Mo膜上に膜厚100nmのMo2N膜を形成した。マグネトロンスパッタリング法の条件としては、磁界強度1000Gauss、基板温度30℃、真空度5.0×10-2Pa、電力7kW、成膜速度0.4nm/minであった。
なお、上記マグネトロンスパッタリング法においては、反応ガスとして窒素、不活性ガスとしてアルゴンを用いた。
【0064】
<実施例3~5>
トリメチロールプロパントリアクリレートの代わりに、表1に記載の材料を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性積層体3~5を得た。
【0065】
<実施例6~7>
上記(第1有機膜形成)の手順を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性積層体6~7を得た。
なお、導電性積層体6~7においては、第1有機膜~第3有機膜のいずれも表1に記載の材料を用いて形成された。また、導電性積層体6~7の第1有機膜~第3有機膜の厚みは、導電性積層体1の第1有機膜~第3有機膜の厚みと同じであった。
【0066】
(第1有機膜形成)
BR113(三菱レイヨン社製)またはBR95(三菱レイヨン社製)をメチルエチルケトン中に固形分濃度10質量%となるよう溶解させて、有機膜形成用組成物を得た。
次に、テスター産業製自動塗布機PI1210にてアプリケーターバー(有効幅20mm)を用いて、上記で洗浄処理されたガラス基板上に有機膜形成用組成物を塗布して、その後、120℃で3分間乾燥させて、第1有機膜を形成した。なお、塗工速度は100mm/secとした。
【0067】
<実施例8>
上記(第1有機膜形成)の手順を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性積層体8を得た。
なお、導電性積層体8においては、第1有機膜~第3有機膜のいずれも表1に記載の材料を用いて形成された。導電性積層体8の第1有機膜~第3有機膜の厚みは、導電性積層体1の第1有機膜~第3有機膜の厚みと同じであった。
【0068】
(第1有機膜形成)
テスター産業製自動塗布機PI1210にてアプリケーターバー(有効幅20mm)を用いて、上記で洗浄処理されたガラス基板上にシルプラスHT100(新日鐵住金化学社製)を塗布して、その後、120℃で3分間乾燥させて、塗膜を形成した。なお、塗工速度は100mm/secとした。
次に、日本電池社製メタルハライドランプMAL625NLを用いて、酸素濃度200体積ppmの条件下にて、塗膜に対してUV照射(1000mJ/cm2)して硬化膜を得た。
【0069】
<実施例9~12>
上記(第1有機膜形成)の手順を以下のように変更し、金属細線の線幅(黒化層の第1有機膜側の線幅に該当)および金属導電層の厚みを表1のように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性積層体9~12を得た。
なお、導電性積層体9~12においては、第1有機膜~第3有機膜のいずれも表1に記載の材料を用いて形成された。導電性積層体9の第1有機膜~第3有機膜の厚みは、導電性積層体1の第1有機膜~第3有機膜の厚みと同じであった。
【0070】
(第1有機膜形成)
20質量%の無触媒のパーヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120-20:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)、および、5質量%(固形分)アミン触媒(N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン)を含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120-20:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を混合して、有機膜形成用組成物を調製した。なお、得られた有機膜形成用組成物中におけるアミン触媒の含有量は、全固形分に対して、1質量%であった。
次に、テスター産業製自動塗布機PI1210にてアプリケーターバー(有効幅20mm)を用いて、上記で洗浄処理されたガラス基板上に有機膜形成用組成物を塗布して、その後、120℃で3分間乾燥させて、塗膜を形成した。なお、塗工速度は100mm/secとした。
次に、日本電池社製メタルハライドランプMAL625NLを用いて、酸素濃度200体積ppm、温度100℃の条件下にて、塗膜に対してUV照射(5000mJ/cm2)して硬化膜を得た。その後、得られた硬化膜を80℃で、12時間乾燥させて、第1有機膜を得た。
【0071】
<実施例13>
上記(第1金属細線形成)中の各層の製造条件を上述した(製造条件2)のように変更した以外は、実施例9と同様の手順に従って、導電性積層体13を得た。
【0072】
<比較例1~3>
トリメチロールプロパントリアクリレートの代わりに、表1に記載のモノマーを用いたい以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性積層体C1~C3を得た。
なお、比較例3では、スチレンとA9300とを質量比1:1で混合した。
【0073】
<評価>
(含水率評価)
ガラス支持体上に、実施例1~13、および、比較例1~3の(第1有機膜形成)の手順に従って、それぞれ有機膜(厚み:1.5μm)を製造した。
得られた有機膜をガラス支持体から削り取り、温度25℃、湿度50%の環境下にて24時間静置して、得られた有機膜を用い、カールフィッシャー法(150℃、気化法)にて、有機膜の含水率を測定した。なお、装置は平沼産業製AQV-2100を使用した。
結果を表1にまとめて示す。
【0074】
(断線評価)
実施例および比較例の導電性積層体をそれぞれ100個作製した。
導電性積層体を50℃の環境下に1週間静置した後、各ユニット両端にある抵抗測定用端子部にそれぞれプローブを当て、抵抗値を抵抗測定機にて測定した。各導電性積層体中の合計40ユニットのうち、1ユニットでも断線していれば断線発生数としてカウントした。
試料100個測定したうち、断線発生した試料数が10個以上を1点、3~9個を2点、1~2個を3点、0個を4点とした。
【0075】
表1中の「材料」欄の各記号は、以下を表す。
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製)
AD-TMP:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学社製)
A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製)
EA-0250P:9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル社製)
BR-113:ダイヤナールBR-113(三菱レイヨン社製)
BR95:ダイヤナールBR-95(三菱レイヨン社製)
シルプラスHT100:シルプラスHT100(新日鐵住金化学社製)
ポリシラザン:パーヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液(アクアミカ NN120-20:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)およびアミン触媒(N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン)を含むジブチルエーテル溶液(アクアミカ NAX120-20:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の混合液
A9300:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学社製)
【0076】
表1中の「含水率」は、各導電性積層体中の有機膜(第1有機膜~第3有機膜)の含水率を表す。
表1中の「金属細線」欄は、形成された金属細線が、MoNb膜(黒化層)、MoNb膜(密着層)、Cu膜(金属導電層)、CuNi膜(密着層)、および、MoNb膜(保護層)を含む場合を「A」、形成された金属細線が、Mo2N膜(黒化層)、Mo膜(密着層)、Al膜(金属導電層)、Mo膜(密着層)、および、Mo2N膜(保護層)を含む場合を「B」を表す。
表1中の「金属細線の線幅(μm)」は、金属細線の線幅(黒化層の第1有機膜側の線幅を表す。
表1中の「金属導電層厚み(nm)」は、金属細線中の金属導電層の厚みを表す。
【0077】
【0078】
表1に示すように、本発明の導電性積層体は、所望の効果を示す。
なかでも、有機膜の含水率が1.00%未満の場合(特に、0.40%以下の場合)、より優れた効果を示すことが確認された。
前記金属細線と前記第2有機膜との間に、前記金属細線を覆うように、Si、Al、および、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む無機膜が配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性積層体。