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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181587
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
G01N21/956 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094797
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌義
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊典
(72)【発明者】
【氏名】福田 光佑
(72)【発明者】
【氏名】新藤 博之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051AC21
2G051EB01
2G051ED11
(57)【要約】
【課題】検査時に設計データを用いることなく、ノイズや製造誤差に対して頑健な、欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置は、試料の撮像画像に基づき、特徴量を算出する特徴量計算部と、前記特徴量の情報量を削減することにより、潜在変数を生成する画像情報削減部と、前記潜在変数にもとづき、正常な画像が取り得る画像統計量を推定する統計量推定部と、前記画像統計量と、試料の検査画像とに基づき、前記検査画像における欠陥を検出する欠陥検出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の撮像画像に基づき、特徴量を算出する特徴量計算部と、
前記特徴量の情報量を削減することにより、潜在変数を生成する画像情報削減部と、
前記潜在変数にもとづき、正常な画像が取り得る画像統計量を推定する統計量推定部と、
前記画像統計量と、試料の検査画像とに基づき、前記検査画像における欠陥を検出する欠陥検出部と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記撮像画像は前記検査画像であることを特徴とする、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記画像情報削減部は、前記特徴量の少なくとも一部を、複数の離散表現のうち少なくとも1つの離散表現で置き換えることにより、前記特徴量の情報量を削減することを特徴とする、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記特徴量計算部、前記画像情報削減部、および前記統計量推定部は、機械学習によってパラメータを学習した学習済みモデルであり、
前記欠陥検査装置は、
試料の撮像画像である第1学習画像に基づいて推定された前記画像統計量と、試料の撮像画像である第2学習画像とに基づき、誤差を評価するモデル評価部と、
前記誤差に基づき、前記特徴量計算部、前記画像情報削減部、前記統計量推定部のモデルパラメータの更新量を計算する、モデルパラメータ更新量計算部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記画像情報削減部は、
前記第1学習画像に係る特徴量に基づいて、複数の離散表現のうちから第1離散表現を選択し、
前記第1学習画像に係る前記特徴量の少なくとも一部を、前記第1離散表現とは異なる第2離散表現で置き換えることにより、前記第1学習画像に係る特徴量の情報量を削減することを特徴とする、請求項4に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記撮像画像に係る前記画像統計量について、前記撮像画像に対して位置合わせするパターン位置適合部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記画像情報削減部は、前記特徴量のうち、画像中のノイズおよび製造誤差に関する情報を削除することを特徴とする、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記画像情報削減部は、前記特徴量のうち、画像中の歪み、輝度むら、またはデフォーカスに関する情報を削除しないことを特徴とする、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項9】
前記第1学習画像および前記第2学習画像は互いに同一の画像であることを特徴とする、請求項4に記載の欠陥検査装置。
【請求項10】
前記第1学習画像は試料の欠陥を含む画像であり、前記第2学習画像は正常な試料の画像であることを特徴とする、請求項4に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は欠陥検査装置に関し、たとえば、欠陥または異物混入について画像を用いて検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体検査には、走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)で撮影したSEM画像が用いられている。従来の検査方法として、半導体回路の設計データとSEM画像との比較により欠陥を検出するDie-to-Database検査がある。しかし、半導体回路パターンの微細化に伴い、設計通りの回路パターンをウエハ上に形成することが困難になりつつあり、回路の製造誤差が生じる。このため、画素比較によるDie-to-Database検査でのノイズや製造誤差により誤検出が発生し、検査性能の向上に限界があった。
【0003】
これに対し特許文献1では、設計データなどの基準画像から正常な回路パターンが取り得る輝度値の確率分布を設計データから予測し、この輝度値の確率分布から外れる輝度値を持つ検査画像の領域を欠陥と判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/250373号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分布比較により、微小な製造誤差やノイズに対して頑健な検査が可能となるが、特許文献1ではこの分布の推定に設計データを必要とする。このため、検査時に設計データを使用できない場合では特許文献1の手法を適用できない。
【0006】
設計データを使用しない検査方法として、検査画像と同一形状で異なる地点の画像である参照画像と、検査画像とを比較して欠陥を検出するDie-to-Die検査がある。しかし、Die-to-Die検査もDie-to-Database検査と同じく画素比較のためノイズに弱く、検査性能の向上に限界がある。未検出の欠陥を含む半導体デバイスは最終テストなどで実施される他の検査で不良品となり、歩留まりが低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、検査時に設計データを用いることなく、ノイズや製造誤差に対して頑健な、欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る欠陥検査装置の一例は、
試料の撮像画像に基づき、特徴量を算出する特徴量計算部と、
前記特徴量の情報量を削減することにより、潜在変数を生成する画像情報削減部と、
前記潜在変数にもとづき、正常な画像が取り得る画像統計量を推定する統計量推定部と、
前記画像統計量と、試料の検査画像とに基づき、前記検査画像における欠陥を検出する欠陥検出部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る欠陥検査装置は、検査時に設計データを用いることなく、ノイズや製造誤差に対して頑健な検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る欠陥検査装置の構成図。
図2】実施例1に係る画像情報削減部の構成図。
図3】実施例1に係るモデルパラメータ学習の構成図。
図4】実施例1に係るモデルパラメータ学習の処理フローを示す図。
図5】実施例1に係るモデルパラメータ学習の各ステップで生成される画像を示す模式図。
図6】本発明の実施例2に係る欠陥検査の構成図。
図7】実施例2に係る推定される輝度値分布を示す模式図。
図8】本発明の実施例3に係るモデルパラメータ学習の構成図。
図9】実施例3に係る疑似欠陥作成用画像情報削減部の構成図。
図10】実施例3に係るモデルパラメータ学習の処理フローを示す図。
図11】実施例3に係るモデルパラメータ学習の各ステップで生成される画像を示す模式図。
図12】本発明の実施例4に係るモデルパラメータ学習の構成図。
図13】本発明の実施例5に係る欠陥検査装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施例1]
本発明の実施例1による欠陥検査装置について、図1を用いて説明する。図1は、実施例1に係る欠陥検査装置の構成図である。欠陥検査装置は、たとえば公知のコンピュータを用いて構成することができ、演算手段および記憶手段を備える。演算手段はたとえばプロセッサを含み、記憶手段はたとえば半導体メモリ装置および磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。記憶媒体の一部または全部が、過渡的でない(non-transitory)記憶媒体であってもよい。
【0012】
また、欠陥検査装置は入出力手段を備えてもよい。入出力手段は、たとえばキーボードおよびマウス等の入力装置と、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置と、ネットワークインタフェース等の通信装置とを含む。
【0013】
記憶手段はプログラムを記憶してもよい。プロセッサがこのプログラムを実行することにより、コンピュータは本実施例において説明される機能を実行してもよい。すなわち、このプログラムは、コンピュータを欠陥検査装置として機能させてもよい。
【0014】
欠陥検査装置の記憶手段は、参照画像1および検査画像2と、検出結果15とを記憶する。参照画像1および検査画像2は、それぞれ試料の特定の地点を撮像した撮像画像である。本実施例では、参照画像1および検査画像2は、同一形状または類似形状を有する異なる地点を撮像したものであることが好ましい。
【0015】
欠陥検査装置の演算手段および記憶手段が協働することにより、特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13、欠陥検出部14が構成される。特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13は、機械学習によってパラメータを学習した学習済みモデルである。パラメータは、欠陥検査装置の記憶手段に、モデルパラメータ10として記憶される。
【0016】
特徴量計算部11は、参照画像1に基づいて特徴量を算出する。特徴量計算部11は、例えばConvolutional Neural Network(CNN)におけるエンコーダを用いることができる。特徴量は複数の成分を含む量であり、具体的な形式は任意に設計可能であるが、本実施例では、特徴量はa×b×cのサイズを有する3階のテンソルとする。特徴量の各成分は、たとえば0以上1以下の実数である。
【0017】
画像情報削減部12は、特徴量計算部11で計算された特徴量の情報量を削減する。画像情報削減部12の構成を図2に示す。画像情報削減部12は、離散表現計算部21および潜在表現計算部22を備え、複数の特徴ベクトル23を記憶する。特徴ベクトル23には、それぞれを識別するインデックスが付与されている。インデックスは離散表現(たとえば整数)によって表される。
【0018】
特徴ベクトル23は、複数の成分を含む量である(ただし特徴ベクトルの成分の個数は特徴量の成分の個数を超えない)。本実施例では、特徴ベクトルはa次元のベクトルであり、すなわちa個の成分を有する。特徴ベクトルの各成分は、たとえば0以上1以下の実数である。
【0019】
離散表現計算部21は、入力された特徴量の少なくとも一部について、特徴ベクトル23の中から値が類似するものを検索し、その特徴ベクトルのインデックスの値で特徴量を置き換える。
【0020】
本実施例では、a×b×cのサイズを有する特徴量を、b×c個のa次元のベクトル部分に分割する。各ベクトル部分について、そのベクトル部分の成分の値に基づき、候補となる複数の特徴ベクトル23のうちから、1つの特徴ベクトル23(たとえば最も類似する特徴ベクトル)を選択する。そして、そのベクトル部分を、選択された特徴ベクトル23のインデックスで置き換える。
【0021】
このようにして特徴量がインデックスの値で置き換えられたものについて、本明細書では以降、「離散化画像」と呼ぶ。離散化画像は、b×c個のインデックスからなる量として表すことができる。
【0022】
潜在表現計算部22は、離散化画像について、各インデックスに対応する特徴ベクトル23を埋め込む。この離散化画像に特徴ベクトル23が埋め込まれたものを、本明細書では以降、「潜在変数」と呼ぶ。潜在変数は、元の特徴量と同一のサイズを有するテンソルとなる。
【0023】
このようにして、画像情報削減部12は、特徴量の情報量を削減することにより、潜在変数を生成する。とくに、画像情報削減部12は、特徴量の少なくとも一部を、複数の特徴ベクトル23のうち少なくとも1つに係るインデックス(離散表現)で置き換えることにより、特徴量の情報量を削減する。このようにして、情報量を削減するための処理が具体的に実現可能となる。なお、情報量を削減するための具体的な処理は、上記した例に限らず、当業者が適宜設計することができる。
【0024】
統計量推定部13は、潜在変数にもとづき、正常な画像が取り得る画像統計量を推定する。統計量推定部13は例えばCNNにおけるデコーダを用いて構成することができる。本実施例では、画像統計量は、各画素についての輝度値の確率分布によって表される。輝度値の確率分布は、たとえばガウス分布によって表すことができ、画素ごとに1つのガウス分布が定義される。ガウス分布は、たとえばそのガウス分布に係る平均値および標準偏差によって特定することができる。以下、本明細書において、この輝度値の確率分布を「輝度値分布」と呼ぶ場合がある。
【0025】
ここで、特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13では、それぞれモデルパラメータ10を用いて上記の処理を実行する。特徴量計算部11および統計量推定部13がそれぞれCNNにおけるエンコーダおよびデコーダである場合には、特徴量計算部11および統計量推定部13に入力されるモデルパラメータ10は、ニューラルネットワークの重みを含む。画像情報削減部12に入力されるモデルパラメータ10は、特徴ベクトル23のインデックスおよび値を含む。
【0026】
欠陥検出部14は、統計量推定部13によって推定された画像統計量と、検査画像2とに基づき、検査画像2における欠陥を検出する。たとえば、検査画像2の各画素について、その画素の輝度値が、統計量推定部13が推定した輝度値分布に係る所定の正常範囲内か否かを判定する。そして、検査画像2のうち、輝度値が正常範囲から外れている画素からなる領域を欠陥として検出し、検出結果15をユーザに出力する。
【0027】
上述したモデルパラメータ10の計算方法について、図3の構成図と併せて、図4の学習フローを用いて説明する。
【0028】
図3において、学習画像3とはウエハ上の任意の場所を撮像した撮像画像(たとえばSEM画像)であり、本実施例では画像中に試料の欠陥があってもなくてもよいものとする。この学習画像3について、特徴量計算部11にて特徴量の計算(S101)、画像情報削減部12にて特徴ベクトル23のインデックスの置き換え(S102)および特徴ベクトルの埋め込み(S103)、統計量推定部13にて輝度値分布の推定(S104)を、図1に関連して上述したように実施する。
【0029】
推定した輝度値分布と学習画像3の誤差をモデル評価部31にて計算する(S105)。すなわち、モデル評価部31は、学習画像3に基づいて推定された画像統計量と、元の学習画像3に基づき、誤差を評価する。たとえば、各画素について、推定された画像統計量から所定の比較対象値(たとえばガウス分布の平均値)を算出し、この比較対象値と、学習画像3における対応する画素の輝度値との差を、画素ごとの誤差として計算することができる。そして、各画素の誤差の絶対値を総和した値、または、各画素の誤差の二乗を総和した値を、推定した輝度値分布と学習画像3の誤差とすることができる。
【0030】
得られた誤差を低減するようなモデルパラメータの更新量をモデルパラメータ更新量計算部32にて計算する(S106)。すなわち、モデルパラメータ更新量計算部32は、得られた誤差に基づき、特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13のモデルパラメータの更新量を計算する。この更新量の計算は、例えば、確率勾配降下法を用いることができる。これらS101からS106までの処理を予め設定した規定回数に到達するまで繰り返す(S107)。
【0031】
この学習処理の各ステップで生成される画像の概略表現を図5に示す。学習画像301において半導体の回路部分を白色で示している。学習画像301は、画像中に製造誤差による回路の歪みや、ノイズを含んでおり、これが欠陥検出の性能低下の原因となる。
【0032】
この学習画像301について特徴量の計算(S101)、特徴ベクトル23のインデックスの置き換え(S102)により、情報量を削減した離散化画像302(概念的に図示する)が生成される。この離散化画像302について、特徴ベクトルの埋め込み(S103)、画像統計量の推定(S104)により画像統計量303を推定する。なお図5の画像統計量303では、推定した各画素の輝度値分布の平均の値を示している。
【0033】
各学習画像301について、画像統計量303と学習画像301との差を小さくするように学習することにより、誤差を最小化するようなモデルパラメータ10を探索することができ、学習画像に含まれる回路パターンに応じた尤もらしい輝度値分布を推定することが可能となる。
【0034】
本実施例の効果について説明する。本実施例は、画像中の特徴量を特徴ベクトルで置き換えて、置き換えられた潜在変数から輝度値分布を推定する手法を説明した。この置き換えでは、特徴ベクトルの候補を複数準備しておき、その候補のうちから選択される1つの特徴ベクトルによって特徴量の一部を置き換える(本実施例では、この置き換え処理がb×c回だけ繰り返される)。準備する特徴ベクトルの候補数を調整することで、輝度値分布の推定に用いられる潜在変数の情報量を制御することができる。
【0035】
たとえば、この特徴ベクトルの候補数を小さく設定することで、画像情報削減部12が、特徴量のうち、図5に示すように画像中のノイズおよび製造誤差に関する情報を削除し、学習画像中に共通する回路パターンの特徴のみを復元することができる。これにより、参照画像から製造誤差やノイズの情報を除外した正常な回路画像が取り得る輝度値の確率分布を画素ごとに推定することができる。この確率分布から外れる輝度値をもつ検査画像の領域を欠陥として判定することで、ノイズや製造誤差に頑健な欠陥検査を可能とする。特徴ベクトルの数は外部から指定するようにしてもよいし、検査性能を最大化するために最適化計算により自動で探索するようにしてもよい。
【0036】
このように、本実施例に係る欠陥検査装置は、検査時に設計データを用いることなく、ノイズや製造誤差に対して頑健な検査を行うことができる。
【0037】
[実施例2]
以下、本発明の実施例2に係る欠陥検査装置について、図6を用いて説明する。以下では、実施例1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0038】
実施例2と実施例1との違いとして、実施例1では参照画像1を使用したが、実施例2では参照画像1を使用せず、検査画像2自身から特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13を介して推定された輝度値分布との比較により、元の検査画像2の欠陥を検知する。すなわち、実施例2では、特徴量を算出する対象となる撮像画像は、検査画像2である。
【0039】
実施例2において、統計量推定部13は、画像情報削減部12で計算された潜在変数を用いて、検査画像2において試料の欠陥がある領域を正常な領域のように復元した輝度値分布を推定する。こうして生成された輝度値分布と、検査画像との比較により、検査画像のみを入力として欠陥を検査する。
【0040】
統計量推定部13が、欠陥のある領域を正常な領域のように復元した輝度値分布を推定する方法を学習する方法の例を以下に説明する。特徴量計算部11および統計量推定部13がそれぞれCNNにおけるエンコーダおよびデコーダである場合には、CNNの層数を多く設計して受容野を広くすることで、輝度値分布の推定に周辺の特徴を使用できるようにすることができる。このような構成は、同じパターンが繰り返し並ぶ回路パターンなどに有効である。
【0041】
本実施例の効果について説明する。本実施例では、検査画像2の自己参照による検査により参照画像が不要となるため、参照画像の撮像に要する時間を削減し、検査のスループットを向上することができる。
【0042】
また、検査画像2の自己参照では、従来のDie-to-Die検査やDie-to-Database検査において性能低下の原因となっていた、像質に関する情報(画像中の歪み、輝度むら、デフォーカスなど)の変動の影響を受けずに欠陥を検査することができる。すなわち、画像情報削減部12は、特徴量のうち、画像中の歪み、輝度むら、またはデフォーカスに関する情報を削除しない。
【0043】
この検査画像と、画像統計量である輝度値分布の概略表現を図7に示す。検査画像401の右上に画像中に輝度むら(一点鎖線で示す領域)があった場合、検査画像401から特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13を介して推定する輝度値分布(平均値の例を画像統計量402として示す)において、ノイズや製造誤差の情報を除外しつつ、像質変動に関する特徴を残すことができる。この輝度値分布と検査画像を比較する検査により、検査画像中の像質変動の影響を受けずに欠陥を検査することができる。
【0044】
[実施例3]
本発明の実施例3に係る欠陥検査装置を、図8を用いて説明する。以下では、実施例1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0045】
実施例3と実施例1との違いとして、実施例1(図3)では学習に使用するSEM画像(学習画像3)が正常画像に限られないが、実施例3では試料の欠陥を含まない正常画像4に限定されている。また、実施例3では、モデルパラメータ学習処理における画像情報削減部12(図2)が疑似欠陥作成用画像情報削減部41に置き換わっている。
【0046】
疑似欠陥作成用画像情報削減部41の構成を図9に示す。疑似欠陥作成用画像情報削減部41は、画像情報削減部12の内部構成に加え、新たに画像情報操作部42を備えている。
【0047】
この図8図9の構成図と併せて、図10の学習フローを用いてモデルパラメータの計算方法を説明する。
【0048】
正常画像4を学習画像として、特徴量計算部11にて特徴量を計算する(S101)。そして、正常画像4に係る特徴量に基づいて、離散表現計算部21にて、複数の特徴ベクトル23のインデックス(離散表現)のうちから、1つの特徴ベクトル23に係るインデックス(第1離散表現)を選択し、これによって離散化画像を生成する(S102)。
【0049】
この離散化画像のインデックスの値を、画像情報操作部42で変更する(S201)。この変更方法としては、あるインデックスの値をランダムに離散化画像中に割り付ける方法、ランダムな領域を特定のインデックスで埋める方法、ある領域を別の領域へコピーする方法などがある。
【0050】
このように、疑似欠陥作成用画像情報削減部41は、正常画像4に係る特徴量の少なくとも一部を、選択されたインデックス(第1離散表現)とは異なるインデックス(第2離散表現)で置き換えることにより、正常画像4に係る特徴量の情報量を削減する。
【0051】
インデックスの値に応じて特徴ベクトルを埋め込み(S103)、このインデックスの値を操作された離散化画像を用いて、図3図4と同様に輝度値分布を推定し(S104)、推定した輝度値分布と正常画像4との誤差をモデル評価部31にて計算する(S105)。得られた誤差を低減するようなモデルパラメータの更新量をモデルパラメータ更新量計算部32にて計算する(S106)。
【0052】
この学習処理の各ステップで生成される画像の概略表現を図11に示す。正常画像501から特徴量を計算し(S101)、特徴ベクトル23のインデックスの置き換え(S102)により、情報量を削減した離散化画像502(概念的に図示する)が生成される。この離散化画像502を、画像情報操作部42で操作する。
【0053】
図11の操作後離散化画像503(概念的に図示する)は、あるインデックスの値をランダムに離散化画像中に割り付ける方法をもちいた例である。この割り付けられたインデックスが半導体の回路パターンについての特徴であった場合、この操作後離散化画像503から推定された輝度値分布は、画像統計量504のように回路パターンの特徴が増幅された疑似欠陥画像となる。この疑似欠陥画像と正常画像501の差を小さくするように学習することにより、誤差を最小化するようなモデルパラメータ10を探索することができる。
【0054】
本実施例の効果について説明する。画像情報操作部42で離散化画像を操作することで、なんらかの欠陥を再現した疑似欠陥画像を生成する。この疑似欠陥画像と正常画像の差を最小化するようなモデルパラメータ10を探索し、このモデルパラメータ10を図1または図6のような検査構成に使用することで、欠陥を含む検査画像から、より高精度に正常回路の撮像画像が取り得る輝度値分布を統計量推定部13で推定することが可能となる。この輝度値分布と検査画像2との比較により欠陥を検知することで、参照画像を不要とし、参照画像の撮像に要する時間を削減することで検査のスループットを向上することができる。
【0055】
[実施例4]
本発明の実施例4に係る欠陥検査装置を、図12を用いて説明する。以下では、実施例1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0056】
実施例4と実施例1との違いとして、実施例1では図3に示すように、統計量の推定およびモデルの評価に同一の学習画像3を用いたが、実施例4では図12に示すように、試料の欠陥を含む欠陥画像5から統計量を推定し、この統計量と、試料の欠陥を含まない正常画像4とを比較する。
【0057】
すなわち、実施例1および実施例4のいずれにおいても、モデル評価部31は、試料の撮像画像である第1学習画像に基づいて推定された画像統計量と、試料の撮像画像である第2学習画像とに基づき、誤差を評価するということができる。ただし、実施例1では、第1学習画像および第2学習画像は互いに同一の画像(すなわち学習画像3)であるが、実施例4では、第1学習画像は試料の欠陥を含む欠陥画像5であり、第2学習画像は正常な試料の正常画像4であるということができる。
【0058】
欠陥画像5から特徴量計算部11、画像情報削減部12、統計量推定部13を介して推定された輝度値分布と、正常画像4との差を小さくするように学習することにより、誤差を最小化するようなモデルパラメータ10を探索し、このモデルパラメータ10を図1または図6のような検査構成に使用することで、欠陥を含む検査画像に基づき、正常回路の撮像画像が取り得る輝度値分布を統計量推定部13で推定して検査することが可能となる。
【0059】
とくに、欠陥画像と、同じパターンをもつ別の地点を撮像した正常画像とのペアが入手可能な場合には、本実施例(図12)の構成によるモデルパラメータ10の探索が好適である。なお、そのようなペアの入手が困難な場合には、実施例1(図3)の構成によるモデルパラメータ10の探索が好適となる場合がある。
【0060】
[実施例5]
本発明の実施例5に係る欠陥検査装置を、図13を用いて説明する。以下では、実施例1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0061】
実施例5と実施例1との違いとして、実施例5では、欠陥検査装置が新たにパターン位置適合部51を備えたことにある。パターン位置適合部51は、参照画像1に係る画像統計量について、参照画像1に対して位置合わせすることにより、統計量推定部13から推定された輝度値分布中の回路位置を、検査画像に合わせて補正する。この補正方法としては一般的な画像処理のパターンマッチングの手法を用いてもよいし、深層学習を用いて回路パターンに応じたずれ量を事前に学習するとしてもよい。位置を補正した後の輝度値分布と検査画像2を比較することで欠陥を検査する。
【0062】
本実施例の効果について説明する。画像情報削減部12において参照画像1の特徴量を離散化することで情報を削減するに際して、半導体回路の位置に関する情報も一部失われる場合がある。パターン位置適合部51でこの位置情報の消失による輝度値分布の位置ずれを補正することで、検査性能を向上することができる。
【0063】
[その他の実施例]
上記各実施例中では、半導体の欠陥検査を例に説明したが、他の産業機器における画像を用いた欠陥検査や異物検知にも、各実施例に係る欠陥検査装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…参照画像(撮像画像)
2…検査画像(撮像画像)
3…学習画像(第1学習画像、第2学習画像)
4…正常画像(第1学習画像、第2学習画像)
5…欠陥画像(第1学習画像)
10…モデルパラメータ
11…特徴量計算部
12…画像情報削減部
13…統計量推定部
14…欠陥検出部
15…検出結果
21…離散表現計算部
22…潜在表現計算部
23…特徴ベクトル
31…モデル評価部
32…モデルパラメータ更新量計算部
41…疑似欠陥作成用画像情報削減部
42…画像情報操作部
51…パターン位置適合部
301…学習画像
302…離散化画像
303…画像統計量
401…検査画像
402…画像統計量
501…正常画像
502…離散化画像
503…操作後離散化画像
504…画像統計量

図1
図2
図3
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図12
図13