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  • 特開-ドレッシング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181618
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20231218BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20231218BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231218BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
B24B27/06 M
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094849
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
(72)【発明者】
【氏名】森 知佳
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C047AA15
3C047AA32
3C047EE11
3C158AA03
3C158AA19
3C158AB04
3C158CB01
3C158DA17
5F063AA22
5F063DD22
(57)【要約】
【課題】切り刃の外周端面を平らに成形する際に、該切り刃の破損を避けながら効率よくドレシングを実施することができるドレッシング方法を提供する。
【解決手段】切削装置を用いたドレッシング方法であって、チャックテーブル22の中央領域にドレッシングボードDを位置付けて保持するドレッシングボード保持工程と、切削手段8に支持された切削ブレード81の切り刃81aの先端をチャックテーブル22の回転軸Aに対応させて位置付ける切削ブレード位置付け工程と、チャックテーブル22を回転させると共に切削ブレード81を回転させてチャックテーブル22に保持されたドレッシングボードDに切り込み送りして切削ブレード81の切り刃81a’の先端PをドレッシングボードDに接触させて切り刃81a’の外周端面を平らに成形するドレッシング工程と、を含み構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面に対して直交する回転軸を備え回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、を含み構成された切削装置を用いたドレッシング方法であって、
該チャックテーブルの中央領域にドレッシングボードを位置付けて保持するドレッシングボード保持工程と、
該切削手段に支持された切削ブレードの切り刃の先端を該チャックテーブルの該回転軸に対応させて位置付ける切削ブレード位置付け工程と、
該チャックテーブルを回転させると共に該切削ブレードを回転させて該チャックテーブルに保持されたドレッシングボードに切り込み送りして該切削ブレードの切り刃の先端をドレッシングボードに接触させて該切り刃の外周端面を平らに成形するドレッシング工程と、
を含み構成されるドレッシング方法。
【請求項2】
該ドレッシング工程において、
該チャックテーブルは、時計回り、反時計回りに回転する請求項1に記載のドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置を用いたドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、切削ブレードは外周に切り刃を備えており、摩耗によって切り刃の形状が変化すると加工品質が安定しないことから、定期的に、又は必要なタイミングで切り刃の形状を整えたり、切り刃を構成するダイヤモンド砥粒を突出させる目立てを行ったりするためのドレッシングが実施される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-000588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献1の切り刃の外周端面を平らに成形するドレッシング方法においては、切削ブレードをドレッシングボードに切り込み、且つ切削ブレードの回転軸の軸心方向に沿って切削ブレードを相対的に移動するため、切り刃に負担が掛かり、切り刃が破損するおそれがあると共に、十分なドレシングを実施するためには、大判のドレッシングボードを用意する必要があるという問題がある。
【0006】
また、切り刃の破損を避けるためには、切削ブレードの回転軸の軸心方向に切削ブレードを相対的に移動する際の移動速度を低速にする必要があるが、そうすると、ドレッシングに時間が掛かってしまい生産性が悪いという問題がある。
【0007】
さらに、切り刃の破損を避けながらドレッシングを適切に行うためには、ドレッシングボードの上面に対して切り刃の切込み量を微調整しなければならず、煩に堪えないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、切り刃の破損を避けながら効率よくドレッシングを実施することができるドレッシング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面に対して直交する回転軸を備え回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、を含み構成された切削装置を用いたドレッシング方法であって、該チャックテーブルの中央領域にドレッシングボードを位置付けて保持するドレッシングボード保持工程と、該切削手段に支持された切削ブレードの切り刃の先端を該チャックテーブルの該回転軸に対応させて位置付ける切削ブレード位置付け工程と、該チャックテーブルを回転させると共に該切削ブレードを回転させて該チャックテーブルに保持されたドレッシングボードに切り込み送りして該切削ブレードの切り刃の先端をドレッシングボードに接触させて該切り刃の外周端面を平らに成形するドレッシング工程と、を含み構成されるドレッシング方法が提供される。
【0010】
該ドレッシング工程において、該チャックテーブルは、時計回り、反時計回りに回転するようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドレッシング方法は、被加工物を保持する保持面に対して直交する回転軸を備え回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、を含み構成された切削装置を用いたドレッシング方法であって、該チャックテーブルの中央領域にドレッシングボードを位置付けて保持するドレッシングボード保持工程と、該切削手段に支持された切削ブレードの切り刃の先端を該チャックテーブルの該回転軸に対応させて位置付ける切削ブレード位置付け工程と、該チャックテーブルを回転させると共に該切削ブレードを回転させて該チャックテーブルに保持されたドレッシングボードに切り込み送りして該切削ブレードの切り刃の先端をドレッシングボードに接触させて該切り刃の外周端面を平らに成形するドレッシング工程と、を含み構成されることから、切削ブレードに負荷が掛かり難く、切り刃が破損するおそれが減少すると共に、ドレッシングボードを小さいもので実現することができる。さらに、従来技術のように、切り刃の破損を避けるために移動速度を低速にすると生産性が悪くなるという問題や、ドレッシングボードの上面に対して、効率よく切削が実施される切り刃の切込み量となるように適切に調整する必要があり、煩に堪えないという問題が解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の切削装置の全体斜視図である。
図2】切削ブレードの摩耗前の状態と、摩耗後の状態を示す一部拡大断面図である。
図3】ドレッシングボード保持工程の実施態様を示す斜視図である。
図4】切削ブレード位置付け工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】ドレッシング工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成されるドレッシング方法、及び該ドレッシング方法を実施するのに好適な切削装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、切削装置1の全体斜視図が示されている。本実施形態の切削装置1によって加工される被加工物は、図示する半導体のウエーハWであり、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面に形成されたものであって、環状のフレームFに粘着テープTを介して支持されている。
【0015】
切削装置1は、略直方体形状のハウジング2を備え、ハウジング2のカセットテーブル4aに載置されるカセット4と、カセット4からフレームFに支持されたウエーハWを仮置きテーブル5に搬出する搬出入手段3と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハWを保持手段20のチャックテーブル22に搬送する旋回アームを有する搬送手段6と、チャックテーブル22に保持されたウエーハWに切削加工を施す切削ブレード81を備えた切削手段8と、上記したチャックテーブル22上に保持されたウエーハWを撮像し、切削手段8よって切削すべき領域を検出するためのアライメント手段10と、図1においてチャックテーブル22が位置付けられた搬出入位置からウエーハWを洗浄装置12(詳細については省略されている)に搬送する洗浄搬出手段14と、が配設されている。さらに、切削装置1には、図示を省略する制御手段、及び表示手段等が配設される。
【0016】
図2には、上記した切削装置1の切削手段8に配設される切削ブレード81の外周に備えられる切り刃の断面図であって、摩耗する前の新品状態(又は適切にドレッシングが施された状態)にある切り刃81a(左側)と、切削加工を繰り返すことにより摩耗状態となった切削ブレード81の切り刃81a’(右側)とが示されている。本実施形態のドレッシング方法を実施することにより、右側に示す切り刃81a’のように摩耗状態となった切削ブレード81をドレッシングして、左側に示す外周端面が平らな切り刃81aに近い状態とする。
【0017】
本実施形態のドレッシング方法を実施する場合、図1に示すウエーハWに替えて、ドレッシングボードDをチャックテーブル22に載置しドレッシングを実施する。図に示すように、本実施形態のドレッシングボードDは、例えば、環状のフレームFに粘着テープTを介して一体とされ、例えば1cm×1cmの矩形状の板部材である。ドレッシングボードDは、砥粒と、砥粒を固定する結合材(ボンド材)とを含む板状部材であり、例えば、グリーンカーボランダム(GC)、ホワイトアランダム(WA)等でなる砥粒を、レジンボンド、ビトリファイドボンド等の結合材で固定することによって形成される。本発明のドレッシングボードDは、特にこれに限定されるものではなく、ドレッシングが施される切削ブレードの材質、摩耗程度に応じて、適宜周知のドレッシングボードから選択することが可能である。なお、該ドレッシングボードDをフレームFによって保持し一体とする際には、該フレームFをチャックテーブル22に載置した際に、後述するチャックテーブル22の中心C(図3を参照)にドレッシングボードDが位置付けられるようにする。
【0018】
図3に示すように、保持手段20を構成するチャックテーブル22は、回転可能に構成され、X軸方向、Y軸方向で規定される保持面23に対して直交する回転軸A(図中一点鎖線で示す)を備え、該回転軸Aは、チャックテーブル22の中心Cを通るように設定されている。チャックテーブル22の保持面23は、通気性を有するポーラス部材によって形成されている。保持面23は、図示を省略する吸引手段に接続されており、該吸引手段を作動することにより、保持面23に負圧を生成する。チャックテーブル22の外周には、複数のクランプ24が均等間隔(本実施形態では4つ)で配設されており、ウエーハW、又はドレッシングボードDを載置し保持する際には、把持部材24aによってフレームFを把持して固定する。また、保持手段20は、図示を省略するX軸送り手段を備えており、チャックテーブル22を、切削装置1におけるX軸方向の任意のX座標位置に移動させることが可能に構成されている。
【0019】
本実施形態では、切削ブレード81が、図2の右側に示すような摩耗状態の切り刃81a’となった場合に本発明のドレッシング方法を実施する。ドレシング方法を実施するタイミングは、任意に定め期間毎に設定したり、切削ブレード81の摩耗状態を実際に検出して実施するようにしたりすることができる。本実施形態のドレッシング方法を実施するに際し、まず、図3に示すように、チャックテーブル22の中央領域(回転軸Aが通る中心Cを含む領域)にドレッシングボードDを位置付けて保持するドレッシングボード保持工程を実施する。具体的には、フレームFと一体とされたドレッシングボードDを上方に、ドレッシングボードDが貼着された粘着テープT側を下方に向けて、チャックテーブル22に載置して吸引保持し、クランプ24の把持手段24aによってフレームFを固定する。該ドレッシングボードDは、作業者による手作業により図1に示す搬出入位置に位置付けられたチャックテーブル22に載置してもよいし、被加工物であるウエーハWと共にカセット4に収容されている場合は、上記した搬出入手段3及び搬送手段6を作動して、チャックテーブル22まで搬送するようにしてもよい。
【0020】
図4に示すように、切削手段8は、スピンドルハウジング82と、スピンドルハウジング82に回転自在に保持されたスピンドル83と、スピンドル83の先端部に固定された切削ブレード81と、切削ブレード81を保護する複数の部材により構成されたブレードカバー84とを備えている。ブレードカバー84には、図示を省略する切削水供給源から供給される切削水を導入する切削水導入路85が配設され、切削ブレード81を挟み隣接するように配設された一対の切削水噴射ノズル86(反対側は見えていない)に切削水が供給される。スピンドルハウジング82の他端側には図示を省略するモータ等の回転駆動源が収容されており、該回転駆動源がスピンドル83を回転駆動させることで、切削ブレード81を矢印R1で示す方向に回転させる。切削手段8は、図示を省略するY軸送り手段、及びZ軸送り手段を備えていることにより、切削手段8の切削ブレード81を、切削装置1におけるY軸方向の任意のY座標位置に移動させることが可能であると共に、切削ブレード81の切り刃81aをZ軸方向の任意のZ座標位置に移動させることが可能である。
【0021】
上記したドレッシングボード保持工程を実施した後、切削手段8に支持された切削ブレード81の切り刃81a’の先端Pをチャックテーブル22の回転軸Aに対応させて位置付ける切削ブレード位置付け工程を実施する。該切削ブレード位置付け工程を実施するに際しては、上記のX軸送り手段、及びY軸送り手段を作動して、図4に示すように、切削ブレード81の切り刃81a’の下端側の先端Pをチャックテーブル22の回転軸Aが通る位置、すなわちチャックテーブル22の中心Cに対応する位置に位置付ける。
【0022】
上記した切削ブレード位置付け工程を実施したならば、以下に説明するドレッシング工程を実施する。具体的には、図5に示すように、チャックテーブル22を矢印R2、又は矢印R3で示す方向に回転させると共に切削ブレード81を矢印R1で示す方向に回転させ、さらに、上記のZ軸送り手段を作動して、チャックテーブル22に保持されたドレッシングボードDの表面Daに、切削ブレード81を所定の加工速度(例えば2.5μm/秒)切り込み送りして、切削ブレード81の切り刃81aの先端PをドレッシングボードDに接触させる。ここで、本実施形態では、チャックテーブル22の該回転方向を、所定時間毎に、平面視で見て時計回りの方向R2、反時計回りR3で切り換える。これにより、切削ブレード81の切り刃81aの外周端面が平らに成形される。
【0023】
なお、上記の切削装置1により実施されるドレッシング方法を実施する際の切削条件は、例えば以下のとおりである。
切削ブレードの直径 :φ50mm
切削ブレードの回転速度 :20,000rpm
切込み速度 :2.5μm/秒
チャックテーブルの回転読度 :90度/秒
チャックテーブル時計回り(方向R2) :5秒
チャックテーブル反時計回り(方向R3):5秒
チャックテーブル回転方向切換回数 :交互に10回ずつ(合計100秒)
切り刃の摩耗量 :50μm
【0024】
本実施形態のドレッシング方法によれば、切削ブレード81の切り刃81aの先端Pは、チャックテーブル22の回転軸Aに対応する所定の位置(中心C)に位置付けられて実行されるため、切削ブレード81に負荷が掛かり難く、切り刃81aが破損するおそれが減少すると共に、チャックテーブル22の中央領域に保持されたドレッシングボードDの回転軸心に対応する領域のみでドレッシングが実行されることから、ドレッシングボードDを小さいもので実現することができる。さらに、切削ブレード81の切り刃81aは所定の位置に位置付けられてドレッシングが実行されることから、従来技術のように、切り刃81aの破損を避けるために移動速度を低速にすると生産性が悪くなるという問題や、ドレッシングボードの上面に対して、効率よく切削が実施される切り刃81aの切込み量となるように適切に調整する必要があり、煩に堪えないという問題が解消する。
【0025】
なお、上記した実施形態では、ドレッシング工程を実施する際に、チャックテーブル22の回転方向を、所定時間毎に、平面視で見て時計回りの方向R2、反時計回りR3で切り換えたが、必ずしも回転方向を切り換えることに限定されず、いずれか一方向に回転させるものであってもよい。ただし、上記実施形態のように回転方向を切り換えるようにすることで、切削ブレード81の切り刃81a’の断面は、より理想的な形状とすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1:切削装置
2:ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット
5:仮置テーブル
6:搬送手段
8:切削手段
81:切削ブレード
81a:切り刃
81a’:切り刃(摩耗状態)
10:アライメント手段
12:洗浄装置
14:洗浄搬送手段
20:保持手段
22:チャックテーブル
23:保持面
24:クランプ
24a:把持部材
D:ドレッシングボード
Da:表面
F:フレーム
T:粘着テープ
W:ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5