(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181683
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】積層体、光学フィルム、偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231218BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231218BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231218BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231218BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231218BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20231218BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20231218BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20231218BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/1337
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094944
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】横田 知瞭
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 顕夫
【テーマコード(参考)】
2H149
2H290
2H291
3K107
4J100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB01
2H149AB11
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA05
2H149EA22
2H149FA02Z
2H149FA34Y
2H149FA58Y
2H149FD34
2H290BA30
2H290BF04
2H290BF06
2H290BF13
2H290BF18
2H290BF23
2H290DA01
2H290DA03
2H291FA22X
2H291FA30X
2H291FA94X
2H291FA95X
2H291FB02
2H291FB05
2H291FC05
2H291FC07
2H291FD12
2H291LA40
2H291PA05
2H291PA44
2H291PA53
2H291PA64
2H291PA84
2H291PA86
2H291PA87
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF00
3K107FF02
4J100AL08P
4J100AL09P
4J100BA03P
4J100BA14P
4J100BA15P
4J100BA32P
4J100BA38P
4J100BA56P
4J100BA64P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100CA03
4J100JA32
4J100JA43
5G435AA17
5G435DD11
5G435FF05
(57)【要約】
【課題】本発明は、基材の剥離性および液晶配向性のいずれにも優れた積層体、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】第1基材と、第1基材に隣接して設けられる第1位相差層と、を有する積層体であって、
第1基材が、転写用の仮支持体であり、
第1位相差層が、光配向性基を有さないポリマーを含有する、水平配向した液晶化合物を固定してなる層であり、
第1位相差層の第1基材側の表面から第1基材と反対側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で第1位相差層中におけるポリマーの二次イオン強度を測定した際に、空気側表層領域におけるポリマー由来の二次イオン強度の平均値IA1よりも、基材側表層領域におけるポリマー由来の二次イオン強度の平均値IB1が大きい、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、前記第1基材に隣接して設けられる第1位相差層と、を有する積層体であって、
前記第1基材が、転写用の仮支持体であり、
前記第1位相差層が、光配向性基を有さないポリマーを含有する、水平配向した液晶化合物を固定してなる層であり、
前記第1位相差層の前記第1基材側の表面から前記第1基材と反対側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で前記第1位相差層中における前記ポリマーの二次イオン強度を測定した際に、
前記第1位相差層における前記第1基材側の表面から前記第1位相差層の全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、
前記第1位相差層における前記第1基材と反対側の表面から前記第1位相差層の全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を空気側表層領域とした場合、
前記空気側表層領域における前記ポリマー由来の二次イオン強度の平均値IA1よりも、前記基材側表層領域における前記ポリマー由来の二次イオン強度の平均値IB1が大きい、積層体。
【請求項2】
前記第1基材と前記第1位相差層との間の剥離力P1が、0.12N/25mm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項1に記載の積層体。
【化1】
前記式(1)中、
R
1は、水素原子またはメチル基を表す。
L
1は、単結合、または、-O-、-CO-、-NR
L-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。R
Lは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
R
2は、炭素数1~20のアルキル基を表す。ただし、炭素数2~20のアルキル基である場合、アルキル基を構成する-CH
2-の1個以上が-COO-または-CO-に置換されていてもよい。
【請求項4】
前記ポリマーが、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する、請求項1に記載の積層体。
【化2】
前記式(2)中、
R
3は、水素原子またはメチル基を表す。
L
3は、単結合または2価の連結基を表す。
X
1は、-OH、-COOH、-PO
3H、{-OP(=O)(OH)
2}、-CO
2M
1、-SO
3M
1、-NT
1T
2、オキサゾリン基、-NG
1G
2G
3E
1、または、ベタイン構造を有する基を表す。
M
1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、または、Q
1Q
2Q
3Q
4N
+を表す。Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
T
1およびT
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数1~20のアルコキシ基を表す。ただし、T
1およびT
2は、互いに結合して窒素原子を含む環構造を形成してもよい。
G
1、G
2およびG
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
E
1は、アニオンを表す。
【請求項5】
前記式(2)中のX1が、-COOH、-PO3H、{-OP(=O)(OH)2}、-CO2M1、-SO3M1、-NT1T2、オキサゾリン基、-NG1G2G3E1、または、ベタイン構造を有する基を表す、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記式(2)中のX1が、-NG1G2G3E1を表す、請求項4に記載の積層体。
【請求項7】
前記式(2)中のX
1が、ベタイン構造を有する基を表し、
前記ベタイン構造を有する基が、下記式(BT1)、(BT2)、(BT3)および(BT4)のいずれかで表される基を表す、請求項4に記載の積層体。
【化3】
前記式(BT1)~(BT4)中、
G
4~G
12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
L
5~L
8は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。
*は、結合位置を表す。
【請求項8】
前記ポリマーが、脂環構造を側鎖に含む繰り返し単位を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記ポリマーが、フッ素原子を側鎖に含む繰り返し単位を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記フッ素原子を側鎖に含む繰り返し単位が、下記式(a)で表される繰り返し単位である、請求項9に記載の積層体。
【化4】
前記式(a)中、
R
a1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
R
a2は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20のアルキル基を表す。
【請求項11】
前記第1位相差層が、光配向化合物を含有する光学異方性層Aであり、
更に、前記光学異方性層Aにおける前記第1基材と反対側に光学異方性層Bを有し、
前記光学異方性層Aの前記第1基材側の表面から前記光学異方性層B側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で前記光学異方性層A中における前記光配向化合物の二次イオン強度を測定した際に、
前記光学異方性層Aにおける前記第1基材側の表面から前記光学異方性層Aの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、
前記光学異方性層Aにおける前記光学異方性層B側の表面から前記光学異方性層Aの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を光学異方性層B側表層領域とした場合、
前記基材側表層領域における前記光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値IB2よりも、前記光学異方性層B側表層領域における前記光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値IA2が大きい、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
前記第1基材と、前記第1位相差層と、第2位相差層と、第2基材とをこの順に有し、
前記第1基材と前記第1位相差層との間の剥離力P1と、前記第2基材と前記第2位相差層との間の剥離力P2とが、下記式(A)の関係を満たす、請求項1に記載の積層体。
式(A) P1<P2
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体から前記第1基材を剥離してなる、光学フィルム。
【請求項14】
請求項12に記載の積層体から前記第1基材および前記第2基材を剥離してなる、光学フィルム。
【請求項15】
請求項13に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
【請求項16】
請求項14に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
【請求項17】
請求項15に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【請求項18】
請求項16に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、光学フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートおよび位相差フィルムなどの光学フィルムは、画像着色解消および視野角拡大などの観点から、様々な画像表示装置で用いられている。
光学フィルムとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、液晶化合物を用いて形成された液晶層(位相差層)を使用することが提案されている。
例えば、特許文献1には、透明基材上に光配向層と液晶層とをこの順に含む液晶フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1などに記載された、基材および液晶層を有する公知の積層体について検討したところ、薄膜化や転写等の観点から基材を剥離しようとすると、剥離力が高く、剥離することが困難となる場合があることを明らかとした。
また、剥離性を調整する観点から液晶層の処方や形成方法を変更すると、液晶配向性が劣る場合があることも明らかとなった。
【0005】
そこで、本発明は、基材の剥離性および液晶配向性のいずれにも優れた積層体、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、第1基材と、第1基材に隣接して設けられる第1位相差層とを有する積層体において、第1基材が、転写用の仮支持体であり、第1位相差層が、光配向性基を有さないポリマーを含有する、水平配向した液晶化合物を固定してなる層であり、かつ、光配向性基を有さないポリマーが第1基材側表面に偏在していることにより、基材の剥離性および液晶配向性がいずれも良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
[1] 第1基材と、第1基材に隣接して設けられる第1位相差層と、を有する積層体であって、
第1基材が、転写用の仮支持体であり、
第1位相差層が、光配向性基を有さないポリマーを含有する、水平配向した液晶化合物を固定してなる層であり、
第1位相差層の第1基材側の表面から第1基材と反対側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で第1位相差層中におけるポリマーの二次イオン強度を測定した際に、
第1位相差層における第1基材側の表面から第1位相差層の全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、
第1位相差層における第1基材と反対側の表面から第1位相差層の全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を空気側表層領域とした場合、
空気側表層領域におけるポリマー由来の二次イオン強度の平均値IA1よりも、基材側表層領域におけるポリマー由来の二次イオン強度の平均値IB1が大きい、積層体。
[2] 第1基材と第1位相差層との間の剥離力P1が、0.12N/25mm以下である、[1]に記載の積層体。
[3] ポリマーが、後述する式(1)で表される繰り返し単位を有する、[1]または[2]に記載の積層体。
[4] ポリマーが、後述する式(2)で表される繰り返し単位を有する、[1]または[2]に記載の積層体。
[5] 後述する式(2)中のX1が、-COOH、-PO3H、{-OP(=O)(OH)2}、-CO2M1、-SO3M1、-NT1T2、オキサゾリン基、-NG1G2G3E1、または、ベタイン構造を有する基を表す、[4]に記載の積層体。
[6] 後述する式(2)中のX1が、-NG1G2G3E1を表す、[4]に記載の積層体。
[7] 後述する式(2)中のX1が、ベタイン構造を有する基を表し、
ベタイン構造を有する基が、後述する式(BT1)、(BT2)、(BT3)および(BT4)のいずれかで表される基を表す、[4]に記載の積層体。
[8] ポリマーが、脂環構造を側鎖に含む繰り返し単位を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9] ポリマーが、フッ素原子を側鎖に含む繰り返し単位を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[10] フッ素原子を側鎖に含む繰り返し単位が、後述する式(a)で表される繰り返し単位である、[9]に記載の積層体。
[11] 第1位相差層が、光配向化合物を含有する光学異方性層Aであり、
更に、光学異方性層Aにおける第1基材と反対側に光学異方性層Bを有し、
光学異方性層Aの第1基材側の表面から光学異方性層B側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で光学異方性層A中における光配向化合物の二次イオン強度を測定した際に、
光学異方性層Aにおける第1基材側の表面から光学異方性層Aの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、
光学異方性層Aにおける光学異方性層B側の表面から光学異方性層Aの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を光学異方性層B側表層領域とした場合、
基材側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値IB2よりも、光学異方性層B側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値IA2が大きい、[1]に記載の積層体。
[12] 第1基材と、第1位相差層と、第2位相差層と、第2基材とをこの順に有し、
第1基材と第1位相差層との間の剥離力P1と、第2基材と第2位相差層との間の剥離力P2とが、下記式(A)の関係を満たす、[1]~[11]のいずれかに記載の積層体。
式(A) P1<P2
[13] [1]~[11]のいずれかに記載の積層体から第1基材を剥離してなる、光学フィルム。
[14] [12]に記載の積層体から第1基材および第2基材を剥離してなる、光学フィルム。
[15] [13]に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
[16] [14]に記載の光学フィルムを有する、偏光板。
[17] [15]に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
[18] [16]に記載の偏光板を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材の剥離性および液晶配向性のいずれにも優れた積層体、光学フィルム、偏光板および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一実施形態の概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の積層体の一実施形態の概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の積層体の一実施形態の概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の積層体中の第1位相差層および第2位相差層を被貼合物に貼合するための手順を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の積層体中の第1位相差層および第2位相差層を被貼合物に貼合するための手順を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の積層体中の第1位相差層および第2位相差層を被貼合物に貼合するための手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記である。
【0011】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、それぞれ、波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。なお、波長λは、特に記載がないときは、550nmとする。
また、本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。
具体的には、AxoScanにて、平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
面内遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0012】
本明細書において、屈折率nx、ny、および、nzは、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0013】
本明細書中における「光」とは、活性光線または放射線を意味し、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、紫外線、および、電子線(EB:Electron Beam)などを意味する。なかでも、紫外線が好ましい。
【0014】
本明細書において表記される2価の基(例えば、-COO-)の結合方向は特に限定されず、例えば、「L1-L2-L3」の結合においてL2が-CO-O-である場合、L1側に結合している位置を*1、L3側に結合している位置を*2とすると、L2は*1-CO-O-*2であってもよく、*1-O-CO-*2であってもよい。
【0015】
[積層体]
本発明の積層体は、第1基材と、第1基材に隣接して設けられる第1位相差層と、を有する。
また、第1基材は、転写用の仮支持体であり、第1位相差層は、光配向性基を有さないポリマー(以下、「特定ポリマー」とも略す。)を含有する、水平配向した液晶化合物を固定してなる層である。
更に、第1位相差層の第1基材側の表面から第1基材と反対側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:TOF-SIMS)で第1位相差層中における特定ポリマーの二次イオン強度を測定した際に、第1位相差層における第1基材側の表面から第1位相差層の全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、第1位相差層における第1基材と反対側の表面から第1位相差層の全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を空気側表層領域とした場合、空気側表層領域における特定ポリマー由来の二次イオン強度の平均値IA1よりも、基材側表層領域における特定ポリマー由来の二次イオン強度の平均値IB1が大きい。
【0016】
ここで、TOF-SIMSで用いるイオンビームの種類としては、アルゴンガスクラスターイオン銃(Ar-GCIB銃)によるイオンビームが挙げられる。
また、TOF-SIMSは、第1位相差層の深さ方向のプロファイルが得られればよく、積層体中の第1基材の表面からイオンビームを照射しながら第1位相差層側に向かって、第1基材および第1位相差層の両方の深さ方向の分析を行ってもよい。
【0017】
以下の説明において、第1位相差層の空気側表層領域における特定ポリマー由来の二次イオン強度の平均値IA1よりも、第1位相差層の基材側表層領域における特定ポリマー由来の二次イオン強度の平均値IB1が大きいことを、単に、「特定ポリマーが第1基材側表面に偏在している」とも略す。
また、第1位相差層が、特定ポリマーを2種以上含有している場合は、少なくとも1種の特定ポリマーが第1基材側表面に偏在していればよい。
【0018】
本発明においては、上述した通り、第1基材と、第1基材に隣接して設けられる第1位相差層とを有する積層体において、第1基材が転写用の仮支持体であり、第1位相差層が、特定ポリマーを少なくとも1種含有する、水平配向した液晶化合物を固定してなる層であり、特定ポリマーが第1基材側表面に偏在していることにより、基材の剥離性および液晶配向性がいずれも良好となる。
これらの効果が発現する理由は、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、特定ポリマーが第1基材側表面に偏在していることにより、第1基材(転写用の支持体)との剥離力が小さくなり、また、特定ポリマーが光配向性基を有していないことにより、第1位相差層の形成時に液晶化合物の配向(水平配向)に影響を与えないため、基材の剥離性および液晶配向性がいずれも良好になったと考えられる。
【0019】
図1~
図3に、本発明の積層体の一例を示す。
図1に示す通り、積層体10Aは、第1基材12と、第1位相差層14とを有する。第1位相差層14は特定ポリマーを含有し、特定ポリマーは第1基材12側の表面に偏在している。
図2に示す通り、積層体10Bは、第1基材12と、第1位相差層14としての光学異方性層Aと、第1位相差層14とは別の光学異方性層B15とを有していてもよい。第1位相差層14(光学異方性層A)は、特定ポリマーだけでなく、後述する光配向化合物を含有してもよい。その場合、特定ポリマーは第1基材12側の表面に偏在しており、光配向化合物は光学異方性層B15側の表面に偏在していることが好ましい。
図3に示すように、積層体10Cは、第1基材12と、第1位相差層14と、第2位相差層16と、第2基材18とをこの順に有する。
図3において、第1基材12と第1位相差層14とは直接接しており、第2位相差層16と第2基材18とも直接接している。
また、
図3において、第1位相差層14と第2位相差層16とは直接接しているが、後述するように、積層体は、第1位相差層と第2位相差層との間に、接着剤層または粘着剤層を有していてもよい。
【0020】
積層体10A~10Cは、位相差層を被貼合物(例えば、偏光子)に貼合するために用いられる。例えば、積層体10Cを用いた貼合の手順としては、まず、
図4に示すように、第1基材12が積層体10Cから剥離される。その際、第2基材18が剥離されないことが好ましい。次に、
図5に示すように、被貼合物20に、第1基材12を剥離して得られた積層体中の第1位相差層14側を貼合する。その後、
図6に示すように、第2基材18を剥離することにより、第1位相差層14および第2位相差層16が被貼合物20に貼合される。
上記手順に示すように、第1基材12はいわゆる軽剥離基材として、第2基材18はいわゆる重剥離基材として機能する。
本発明においては、第1位相差層に含まれる特定ポリマーが第1基材側表面に偏在していることにより、上記
図4~
図6で示すような、基材の剥離を所定の順で、容易に(言い換えれば、剥離性良く)実施できる。
【0021】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、第1基材と第1位相差層との間の剥離力P1が、0.12N/25mm以下であることが好ましく、0.09N/25mm以下であることがより好ましく、0.05N/25mm以下であることが更に好ましい。なお、剥離力P1の下限値は特に限定されないが、0.01N/25mm以上であることが好ましい。
【0022】
ここで、剥離力P1は、いわゆる引っ張り試験機を用いた180°剥離試験により算出できる。
上記剥離力P1の算出方法の一例としては、積層体中の第1基材と第1位相差層との部分からなる評価サンプルを別途用意して、剥離力P1を算出してもよい。より具体的には、積層体中の第1基材と第1位相差層との部分からなる評価サンプルを別途用意して、上記評価サンプルの第1位相差層側の表面をコロナ処理して、コロナ処理された第1位相差層の表面に紫外線硬化型接着剤組成物を塗布して、塗膜を形成する。次に、形成された塗膜と基板(例えば、偏光子)とが接するように、基板と評価サンプルとを貼合し、紫外線を照射して塗膜を硬化する。次に、得られた基板付き評価サンプルの基板側の表面に粘着剤層を配置し、得られた粘着層付き評価サンプルから所定の大きさ(幅25mm×長さ150mm)を切り出し、切り出した評価サンプルの粘着剤層をガラス基板に貼合する。その後、ガラス基板に貼合された評価サンプルの第1基材側の表面に、剥離用テープ(幅25mm×長さ180mm)を貼合する。その後、引っ張り試験機を用いて、剥離用テープの一端を把持して、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下にて、クロスヘッド速度5m/分で、剥離角度180°である剥離試験を行うことにより、第1基材と第1位相差層との間の剥離力P1を算出する。なお、上記剥離力P1は、剥離用テープを引き起こして第1基材が第1位相差層上から剥がし終わるまでの間で、剥離力が定常状態になったときの剥離力に該当する。
なお、上記では、評価サンプルを別途作製する方法について述べたが、積層体の第1基材上に上記手順により剥離用テープを貼合して、上記180°試験を実施することにより、剥離力P1を算出してもよい。
【0023】
以下、積層体を構成する各部材について詳述する。
【0024】
〔第1基材〕
第1基材は、転写用の仮支持体(剥離性支持体)であるが、剥離する前段階においては第1位相差層を支持する部材である。
第1基材は、有機材料で構成されていることが好ましく、樹脂基材がより好ましい。
樹脂基材の材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、および、ラクトン環含有重合体であるアクリル酸エステル重合体などのアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、および、アクリロニトリルスチレン共重合体などのスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、および、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、および、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
なかでも、樹脂基材の材料としては、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、または、脂環式構造を有するポリマーが好ましく、トリアセチルセルロースがより好ましい。
【0025】
第1基材には、種々の添加剤(例えば、光学的異方性調整剤、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、など)が含まれていてもよい。
【0026】
第1基材は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。
第1基材が複層構造である場合、支持体と、配向膜とを有する構造であってもよい。
支持体としては、上述した樹脂基材が挙げられる。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、または、ラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で形成できる。
配向膜としては、光配向膜も挙げられる。
配向膜の厚さは、配向機能を発揮することができれば特に制限されないが、0.01~5.0μmが好ましく、0.05~3.0μmがより好ましく、0.5~1.0μmがさらに好ましい。
配向膜は剥離可能であってもよい。
【0027】
第1基材の厚みは特に限定されず、5~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~90μmがさらに好ましい。
【0028】
〔第1位相差層〕
第1位相差層は、上記第1基材に隣接して設けられる層であり、水平配向した液晶化合物を固定してなる層である。
ここで、「水平配向」とは、液晶化合物が棒状液晶化合物である場合、第1基材の表面と液晶分子のダイレクターとのなす角が平行になる配向(ホモジニアス配向)をいい、液晶化合物が円盤状液晶化合物である場合、第1基材の表面と円盤面とが平行になる配向をいう。なお、厳密に水平(平行)であることを要求するものではなく、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
また、「固定してなる」状態は、液晶化合物の配向(水平配向)が保持された状態である。具体的には、通常、0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、層に流動性がなく、また、外場もしくは外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定された配向形態を安定に保ち続けることができる状態であることが好ましい。なお、液晶化合物が重合性基を有する場合、後述する硬化処理によって、液晶化合物の配向状態を容易に固定化できる。
【0029】
液晶化合物は、一般的に、その形状から、棒状タイプと円盤状タイプとに分類できる。さらに、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物が好ましい。また、モノマーであるか、重合度が100未満の比較的低分子量な液晶化合物が好ましい。
【0030】
液晶化合物は、重合性基を有することが好ましい。つまり、液晶化合物は、重合性液晶化合物であることが好ましい。液晶化合物が有する重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、および、ビニル基が挙げられる。
このような重合性液晶化合物を重合させることにより、液晶化合物の配向を固定することができる。なお、液晶化合物が重合によって固定された後においては、もはや液晶性を示す必要はない。
【0031】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1または特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものが好ましく、円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]または特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものが好ましい。
【0032】
上記液晶化合物として、逆波長分散性の液晶化合物を用いることができる。
ここで、本明細書において「逆波長分散性」の液晶化合物とは、この化合物を用いて作製された位相差フィルムの特定波長(可視光範囲)における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
【0033】
本発明においては、第1位相差層は、水平配向した円盤状液晶化合物を固定してなる層であることが好ましい。なかでも、第1位相差層は、水平配向した、重合性基を有する円盤状液晶化合物が重合によって固定されて形成された層であることがより好ましい。
【0034】
<特定ポリマー>
第1位相差層は、上述した通り、光配向性基を有さないポリマー(特定ポリマー)が第1基材側表面に偏在している層である。
ここで、「光配向性基」とは、異方性を有する光(例えば、平面偏光など)の照射により、再配列や異方的な化学反応が誘起される光配向機能を有する基をいう。
【0035】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、特定ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有していることが好ましい。
【化1】
【0036】
上記式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表す。
L1は、単結合、または、-O-、-CO-、-NRL-、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、置換基を有していてもよい2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表す。RLは、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
R2は、炭素数1~20のアルキル基を表す。ただし、炭素数2~20のアルキル基である場合、アルキル基を構成する-CH2-の1個以上が-COO-または-CO-に置換されていてもよい。
【0037】
L1の一態様が表す2価の脂肪族基としては、アルキレン基が挙げられる。2価の脂肪族基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
L1の一態様が表す2価の芳香族基としては、炭素数6~12のアリーレン基が挙げられる。中でもフェニレン基が好ましい。
L1の一態様が表す上記組み合わせとしては、-COO-、-CONRL-、-COO-置換基を有していてもよい2価の脂肪族基-、および、-CONRL-置換基を有していてもよい2価の脂肪族基-などが挙げられる。
ここで、2価の脂肪族基および2価の芳香族基が有していてもよい置換基(以下、「置換基X」と略す。)としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、および、水酸基が挙げられる。
また、RLの一態様が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0038】
上記式(1)で表される繰り返し単位としては、下記式(1-1)で表される繰り返し単位が好ましい。なお、下記式(1-1)中のR
1は、上記式(1)と同様、水素原子またはメチル基を表す。
【化2】
【0039】
特定ポリマーが、上記式(1)で表される繰り返し単位を有している場合、上記式(1)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、特定ポリマー中の全繰り返し単位に対して、40~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましい。
【0040】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、特定ポリマーが、下記式(2)で表される繰り返し単位を有していることが好ましい。
【化3】
【0041】
上記式(2)中、R3は、水素原子またはメチル基を表す。
L3は、単結合または2価の連結基を表す。
X1は、-OH、-COOH、-PO3H、{-OP(=O)(OH)2}、-CO2M1、-SO3M1、-NT1T2、オキサゾリン基、-NG1G2G3E1、または、ベタイン構造を有する基を表す。
M1は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、または、Q1Q2Q3Q4N+を表す。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
T1およびT2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数1~20のアルコキシ基を表す。ただし、T1およびT2は、互いに結合して窒素原子を含む環構造を形成してもよい。
G1、G2およびG3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
E1は、アニオンを表す。
【0042】
上記式(2)中のL3の一態様が表す2価の連結基は特に限定されないが、例えば、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~20)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20)、-SO-、-SO2-、-NH-、-NR-、および、これらを2つ以上組み合わせてなる2価の連結基が挙げられる。上記Rはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)、または、アリール基(好ましくは炭素数6~20)を表す。
L3が2価の連結基を表す場合、-O-、-COO-、-CONH-、および、アルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つからなる2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基は、炭素数1~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0043】
上記式(2)中のX1は、上述した通り、-OH、-COOH、-PO3H、{-OP(=O)(OH)2}、-CO2M1、-SO3M1、-NT1T2、オキサゾリン基、-NG1G2G3E1、または、ベタイン構造を有する基を表す。
これらのうち、基材の剥離性がより向上する理由から、-COOH、-PO3H、{-OP(=O)(OH)2}、-CO2M1、-SO3M1、-NT1T2、オキサゾリン基、-NG1G2G3E1、または、ベタイン構造を有する基を表すことが好ましい。
また、基材の剥離性が更に向上する理由から、-NG1G2G3E1を表すことがより好ましい。
【0044】
上記式(2)中のX1が-CO2M1を表す場合、塩の状態である-CO2
-・(M1)+となっていることが好ましい。
ここで(M1)+は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Mg2+、Al3+、または、Q1Q2Q3Q4N+を表す。なお、(M1)+がMg2+である場合、1つのMg2+と2つのCO2
-とが塩を形成していることが好ましい。(M1)+がAl3+である場合、1つのAl3+と3つのCO2
-とが塩を形成していることが好ましい。
【0045】
上記式(2)中のX1が-SO3M1を表す場合、塩の状態である-SO3
-・(M1)+となっていることが好ましい。
ここで、(M1)+は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Mg2+、Al3+、または、Q1Q2Q3Q4N+を表す。なお、(M1)+がMg2+である場合、1つのMg2+と2つのSO3
-とが塩を形成していることが好ましい。(M1)+がAl3+である場合、1つのAl3+と3つのSO3
-とが塩を形成していることが好ましい。
【0046】
M1の一態様が表すアルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。
M1の一態様が表すアルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
【0047】
M1の一態様が表すQ1Q2Q3Q4N+(第4級アンモニウム塩)におけるQ1、Q2、Q3およびQ4は、上述した通り、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。Q1、Q2、Q3およびQ4の一態様が表すアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましい。
Q1、Q2、Q3およびQ4が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。なお、置換基としては、上述した置換基Xの例が挙げられる。
【0048】
上記式(2)中のX1が-NT1T2を表す場合、T1およびT2は、上述した通り、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または、炭素数1~20のアルコキシ基を表す。ただし、T1およびT2は、互いに結合して窒素原子を含む環構造を形成してもよい。
T1およびT2の一態様が表すアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましい。
T1およびT2の一態様が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。なお、置換基としては、上述した置換基Xの例が挙げられる。
T1およびT2の一態様が表すアルコキシ基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~7のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましい。
T1およびT2の一態様が表すアルコキシ基は置換基を有していてもよい。なお、置換基としては、上述した置換基Xの例が挙げられる。
T1とT2とが結合する場合、-NT1T2は環状の基になる。このような基としては、例えばモルホリノ基などが挙げられる。
T1およびT2は、水素原子を表すことが最も好ましい。
【0049】
上記式(2)中のX1が-NG1G2G3E1を表す場合、塩の状態である-N+G1G2G3・E1となっていることが好ましい。
E1が表すアニオンは特に限定されず、例えば、フッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)等のハロゲン化物イオン;水酸化物イオン(OH-);シアン化物イオン(CN-);硝酸イオン(NO3
-);炭酸イオン(CO3
2-);硫酸イオン(SO4
2-);メタンスルホネートアニオン(CH3SO3
-)、ベンゼンスルホネートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン等のスルホネートアニオン;パークロレートアニオン;テトラフルオロボレートアニオン、テトラフェニルボレートアニオン等のボレートアニオン;ヘキサフルオロホスフェートアニオン;アセテートアニオンなどが挙げられる。なお、E1が2価のアニオンである場合、1つのE1と2つのNG1G2G3とが塩を形成していることが好ましい。
【0050】
G1、G2およびG3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。G1、G2およびG3が表すアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましい。
G1、G2およびG3が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。なお、置換基としては、上述した置換基Xの例が挙げられる。
【0051】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、上記式(2)中のX
1が、ベタイン構造を有する基を表し、ベタイン構造を有する基が、下記式(BT1)、(BT2)、(BT3)および(BT4)のいずれかで表される基を表すことが好ましい。
【化4】
【0052】
上記式(BT1)~(BT4)中、G4~G12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
L5~L8は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。
*は、結合位置を表す。
【0053】
上記式(BT1)~(BT4)中のG4~G12の一態様が表す炭素数1~20のアルキル基としては、前述のG1、G2およびG3の一態様が表す炭素数1~20のアルキル基について記載したものと同様である。
【0054】
上記式(BT1)~(BT4)中のL5~L8が表す2価の連結基としては、アルキレン基を表すことが好ましい。アルキレン基は、炭素数1~12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましい。
アルキレン基は、置換基を有していてもよい。なお、置換基としては、上述した置換基Xの例が挙げられる。
【0055】
上記式(2)で表される繰り返し単位は、例えば、下記に示す化合物を重合することで形成できる。具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、イソプロペニルオキサゾリン、スチレンボロン酸、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(N-tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド類;N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=クロリド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=ブロミド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=ヨージド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=メタンスルホネート、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム=メタンスルホネート、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N-ブチル-N,N-ジメチルアンモニウム=ヨージド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム=クロリド等の(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム塩類;2-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)アセテート(N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N-ジメチルグリシンともいう)、3-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパノエート、4-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ブタノエート、5-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ペンタノエート等のカルボキシベタイン類;((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)メタンスルホネート、2-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)エタンスルホネート、3-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート等のスルホベタイン類;2-(メタ)アクリロイルオキシエチル=ジビドロゲン=ホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル=ジビドロゲン=ホスフェート等の(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル類;(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン、(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)ホスホリルコリン等のホスホリルコリン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
特定ポリマーが、上記式(2)で表される繰り返し単位を有している場合、上記式(2)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、特定ポリマー中の全繰り返し単位に対して、40~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましい。
【0057】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、特定ポリマーが、脂環構造を側鎖に含む繰り返し単位を有していることが好ましく、下記式(3)で表される繰り返し単位を有していることがより好ましい。
【化5】
【0058】
上記式(3)中、R4は、水素原子またはメチル基を表す。
L4は、2価の連結基を表す。
Y1は、置換基を有していてもよいシクロアルカン環を表す。
【0059】
L4が表す2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR11R12-、-CR13=CR14-、-NR15-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。R11~R15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
L4が表す2価の連結基の中でも、-CO-、-O-、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR11R12-、-CR11R12-CR11R12-、-O-CR11R12-、-CR11R12-O-CR11R12-、-CO-O-CR11R12-、-O-CO-CR11R12-、-CR11R12-O-CO-CR11R12-、-CR11R12-CO-O-CR11R12-、-NR15-CR11R12-、および、-CO-NR15-などが好ましい。
【0060】
Y1が表すシクロアルカン環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環などが挙げられる。これらのうち、シクロヘキサン環が好ましい。
シクロアルカン環が有していてもよい置換基としては、上述した置換基Xの例が挙げられる。
【0061】
特定ポリマーが、脂環構造を側鎖に含む繰り返し単位を有している場合、その含有量は特に制限されないが、特定ポリマー中の全繰り返し単位に対して、5~40質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。
【0062】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、特定ポリマーが、フッ素原子を側鎖に含む繰り返し単位を有していることが好ましく、下記式(a)で表される繰り返し単位を有していることがより好ましい。
【化6】
【0063】
上記式(a)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
Ra2は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1~20のアルキル基を表す。なお、以下では、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を単に「フルオロアルキル基」とも略す。
【0064】
上記式(a)中のRa1の一態様が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0065】
上記式(a)中のRa2が表すフルオロアルキル基としては、炭素数1~18のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数2~15のフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
また、フッ素原子数は、1~25であることが好ましく、3~21であることがより好ましく、5~21であることが最も好ましい。
【0066】
上記式(a)で表される繰返し単位を形成する単量体としては、具体的には、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
特定ポリマーが、フッ素原子を側鎖に含む繰り返し単位を有している場合、その含有量は特に制限されないが、特定ポリマー中の全繰り返し単位に対して、5~20質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
【0068】
本発明においては、基材の剥離性がより向上する理由から、特定ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2000~100000であることが好ましく、3000~50000であることがより好ましく、4000~20000であることがさらに好ましい。
ここで、重量平均分子量は、以下に示す条件でゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):THF(テトラヒドロフラン)
・装置名:TOSOH HLC-8320GPC
・カラム:TOSOH TSKgel Super HZM-H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:1.0ml/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0069】
第1位相差層中における特定ポリマーの含有量は特に制限されないが、第1位相差層の全質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0070】
<光配向化合物>
本発明の積層体は、後述する通り、第1位相差層(光学異方性層A)における第1基材と反対側に、第1位相差層とは別の光学異方性層Bを有しいてもよいが、この場合、第1位相差層である光学異方性層Aは、光配向化合物を含有していることが好ましい。
【0071】
ここで、光配向化合物は、上述した光配向性基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0072】
これらのうち、光配向化合物として、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光配向性基を有する感光性化合物を用いることが好ましい。
また、光配向性基としては、例えば、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、クマリン構造(骨格)を有する基、カルコン構造(骨格)を有する基、ベンゾフェノン構造(骨格)を有する基、および、アントラセン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。なかでも、シンナモイル構造を有する基、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
【0073】
第1位相差層が棒状液晶化合物の場合、第1位相差層の波長550nmにおける面内レタデーションは特に制限されないが、40~280nmが好ましく、60~150nmがより好ましい。
また、第1位相差層の波長550nmにおける厚み方向のレタデーションは特に制限されないが、20~140nmが好ましく、30~75nmがより好ましい。
第1位相差層が円盤液晶化合物の場合、第1位相差層の波長550nmにおける面内レタデーションは特に制限されないが、0~10nmが好ましい。
また、第1位相差層の波長550nmにおける厚み方向のレタデーションは特に制限されないが、10~120nmが好ましく、15~60nmがより好ましい。
【0074】
第1位相差層の平均厚みは特に制限されず、10μm以下が好ましく、0.1~5.0μmがより好ましく、0.3~2.0μmがさらに好ましい。
上記平均厚みは、第1位相差層の任意の5点以上の厚みを測定して、それらを算術平均して求める。
【0075】
〔光学異方性層B〕
本発明の積層体は、
図2に示す通り、上記第1位相差層とは別に、光学異方性層を有していてもよい。具体的には、上述した光配向化合物を含有する第1位相差層を光学異方性層Aとする場合、光学異方性層A(第1位相差層)における上記第1基材と反対側に光学異方性層Bを有していてもよい。
このような光学異方性層Bを有する態様においては、光学異方性層Bの形成時に配向膜が不要となる理由から、光学異方性層Aの第1基材側の表面から光学異方性層B側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で光学異方性層A中における光配向化合物の二次イオン強度を測定した際に、光学異方性層Aにおける第1基材側の表面から光学異方性層Aの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、光学異方性層Aにおける光学異方性層B側の表面から光学異方性層Aの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を光学異方性層B側表層領域とした場合、基材側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値I
B2よりも、光学異方性層B側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値I
A2が大きいことが好ましい。
なお、以下の説明において、光学異方性層Aの基材側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値I
B2よりも、光学異方性層Aの光学異方性層B側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値I
A2が大きいことを、単に、「光配向化合物が光学異方性層B側表面に偏在している」とも略す。
【0076】
上記光学異方性層Bとしては、配向した液晶化合物が固定されてなる層であることが好ましい。液晶化合物が重合性基を有する場合、後述する硬化処理によって、液晶化合物の配向状態を容易に固定化できる。
液晶化合物は、上述した第1位相差層で説明した通りである。
液晶化合物が配向した状態(配向状態)は特に制限されず、公知の配向状態が挙げられる。配向状態としては、例えば、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、コレステリック配向、捩れ配向、および、傾斜配向が挙げられる。なお、上記捩れ配向は、光学異方性層Bの厚み方向を回転軸として、光学異方性層Bの一方の主表面から他方の主表面まで液晶化合物が捩れている配向状態を表す。捩れ配向において、液晶化合物の捩れ角度(液晶化合物の配向方向の捩れ角度)は、通常、0°超360°以下の場合が多い。
【0077】
〔第2基材/第2位相差層〕
本発明の積層体は、
図3に示す通り、上記第1基材と、上記第1位相差層と、第2位相差層と、第2基材とをこの順に有していてもよい。
第2基材および第2位相差層を有する態様においては、第1基材と第1位相差層との間の剥離力P1と、第2基材と第2位相差層との間の剥離力P2とが、下記式(A)の関係を満たしていることが好ましい。
式(A) P1<P2
ここで、剥離力P2に関しても、上述した剥離力P1と同様の手順によって算出できる。より具体的には、積層体中の第2基材と第2位相差層との部分からなる評価サンプルを別途用意して、上述した方法により、剥離力P2を算出できる。
また、上記では、評価サンプルを別途作製する方法について述べたが、積層体中から第1基材を剥離した後の積層体中の第2基材上に上記手順により剥離用テープを貼合して、上記180°試験を実施することにより、剥離力P2を算出してもよい。
【0078】
<第2基材>
第2基材は、上述した第1基材と同様、転写用の仮支持体(剥離性支持体)であることが好ましい。
【0079】
<第2位相差層>
第2位相差層としては、配向した液晶化合物が固定されてなる層であることが好ましい。液晶化合物が重合性基を有する場合、後述する硬化処理によって、液晶化合物の配向状態を容易に固定化できる。
液晶化合物は、上述した第1位相差層で説明した通りである。
液晶化合物が配向した状態(配向状態)は特に制限されず、上述した光学異方性層Bで例示した配向状態が挙げられる。
【0080】
第2位相差層は、垂直配向した棒状液晶化合物を固定してなる層であることが好ましい。なかでも、第2位相差層は、垂直配向した、重合性基を有する棒状液晶化合物が重合によって固定されて形成された層であることがより好ましい。
なお、棒状液晶化合物が垂直配向している状態とは、棒状液晶化合物の長軸と第2位相差層の厚み方向とが平行であることをいう。なお、厳密に平行であることを要求するものではなく、棒状液晶化合物の長軸と第2位相差層の厚み方向とのなす角度が0~20°の範囲であることが好ましく、0~10°の範囲内が好ましい。
【0081】
第2位相差層の波長550nmにおける厚み方向のレタデーションは特に制限されないが、-120~-10nmが好ましく、-100~-30nmがより好ましい。
【0082】
第2位相差層の平均厚みは特に制限されず、10μm以下が好ましく、0.1~5.0μmがより好ましく、0.3~2.0μmがさらに好ましい。
上記平均厚みは、第2位相差層の任意の5点以上の厚みを測定して、それらを算術平均して求める。
【0083】
〔光学異方性層C〕
本発明の積層体は、上記第2位相差層とは別に、光学異方性層を有していてもよい。具体的には、上述した第2位相差層を光学異方性層Dとする場合、光学異方性層D(第2位相差層)における上記第2基材と反対側に光学異方性層Cを有していてもよい。
このような光学異方性層Cを有する態様においては、光学異方性層Cの形成時に配向膜が不要となる理由から、光学異方性層Dが上述した光配向化合物を含有していることが好ましく、光学異方性層Dの第2基材側の表面から光学異方性層C側の表面に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型二次イオン質量分析法で光学異方性層D中における光配向化合物の二次イオン強度を測定した際に、光学異方性層Dにおける第2基材側の表面から光学異方性層Dの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を基材側表層領域とし、光学異方性層Dにおける光学異方性層C側の表面から光学異方性層Dの全厚みの10%に相当する深さ位置までの領域を光学異方性層C側表層領域とした場合、基材側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値IB2よりも、光学異方性層C側表層領域における光配向化合物由来の二次イオン強度の平均値IA2が大きいことがより好ましい。
【0084】
〔接着剤層/粘着剤層〕
本発明の積層体は、上述した第2基材および第2位相差層を有する場合、第1位相差層と第2位相差層との間に接着剤層または粘着剤層を有していてもよい。
接着剤層としては、公知の接着剤層が挙げられる。接着剤層は、例えば、紫外線硬化型接着剤を塗布して塗膜を形成して、紫外線を照射して硬化することにより形成される。
粘着剤層としては、公知の粘着剤層が挙げられる。
【0085】
〔製造方法〕
上述した積層体の製造方法は、上述した特性の積層体を製造できれば特に制限されない。なかでも、積層体の生産性が優れる点で、以下の工程1~3を有する積層体の製造方法が好ましい。なお、以下では、上述した第2基材および第2位相差層を有する積層体の製造方法について説明しているが、上述した第2基材および第2位相差層を有していない積層体については、下記工程1のみで作製することができる。
工程1:重合性基を有する液晶化合物を含む第1位相差層形成用組成物を第1基材上に塗布して第1組成物層を形成し、第1組成物層中の液晶化合物を水平配向させた後、第1組成物層に硬化処理を施し、第1基材と第1位相差層とを含む積層体(以下、「第1フィルム」と略す。)を得る工程
工程2:重合性基を有する液晶化合物およびポリマーを含む第2位相差層形成用組成物を第2基材上に塗布して第2組成物層を形成し、第2組成物層中の液晶化合物を配向させた後、第2組成物層に硬化処理を施し、第2基材と第2位相差層とを含む第2フィルムを得る工程
工程3:第1フィルム中の第1位相差層と第2フィルム中の第2位相差層とが対向するように、第1フィルムおよび第2フィルムを貼合して、積層体を得る工程
以下、工程1~工程3の手順について詳述する。
【0086】
<工程1>
工程1は、第1位相差層形成用組成物を第1基材上に塗布して第1組成物層を形成し、第1組成物層中の液晶化合物を水平配向させた後、第1組成物層に硬化処理を施し、第1基材と第1位相差層とを含む第1フィルムを得る工程である。
【0087】
第1位相差層形成用組成物は、重合性基を有する液晶化合物を含む。液晶化合物の態様は、上述した通りである。
第1位相差層形成用組成物中における重合性基を有する液晶化合物の含有量は、第1位相差層形成用組成物の全固形分に対して、60~99質量%が好ましく、70~98質量%がより好ましい。
なお、固形分とは、溶媒を除去した、第1位相差層を形成し得る成分を意味し、その性状が液体状であっても固形分とする。
【0088】
第1位相差層形成用組成物は、特定ポリマーを含む。特定ポリマーの態様は、上述した第1位相差層中で説明した通りである。
第1位相差層形成用組成物中における特定ポリマーの含有量は、第1位相差層形成用組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0089】
第1位相差層形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、および、光重合開始剤が挙げられる。
第1位相差層形成用組成物中における重合開始剤の含有量は、第1位相差層形成用組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0090】
第1位相差層形成用組成物に含まれていてもよい他の成分としては、上記以外にも、多官能モノマー、水平配向剤、界面活性剤、密着改良剤、可塑剤、および、溶媒が挙げられる。
【0091】
第1位相差層形成用組成物の塗布方法としては、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、および、ワイヤーバー法が挙げられる。
【0092】
第1位相差層形成用組成物を塗布した後、必要に応じて、乾燥処理を実施してもよい。
【0093】
形成された第1組成物中の液晶化合物を水平配向させる処理(配向処理)は特に制限されず、第1組成物層を加熱する方法が好ましい。
第1組成物層を加熱する場合の条件は特に制限されないが、加熱温度としては50~250℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、加熱時間としては10秒間~10分間が好ましい。
また、第1組成物層を加熱した後、後述する硬化処理(光照射処理)の前に、必要に応じて、第1組成物層を冷却してもよい。
【0094】
第1組成物層に対して実施される硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、光照射処理および加熱処理が挙げられる。なかでも、製造適性の点から、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。
光照射処理の照射条件は特に制限されないが、50~1000mJ/cm2の照射量が好ましい。
光照射処理の際の雰囲気は特に制限されないが、窒素雰囲気が好ましい。
【0095】
<工程2>
工程2は、第2位相差層形成用組成物を第2基材上に塗布して第2組成物層を形成し、第2組成物層中の液晶化合物を配向させた後、第2組成物層に硬化処理を施し、第2基材と第2位相差層とを含む第2フィルムを得る工程である。
【0096】
第2位相差層形成用組成物は、重合性基を有する液晶化合物を含む。液晶化合物の態様は、上述した通りである。
第2位相差層形成用組成物中における重合性基を有する液晶化合物の含有量は、第2位相差層形成用組成物の全固形分に対して、60~99質量%が好ましく、70~98質量%がより好ましい。
なお、固形分とは、溶媒を除去した、第2位相差層を形成し得る成分を意味し、その性状が液体状であっても固形分とする。
【0097】
第2位相差層形成用組成物は、重合性基を有する液晶化合物以外の他の化合物を含んでいてもよい。
他の成分は、第1位相差層形成用組成物に含まれていてもよい他の成分が挙げられる。
【0098】
第2位相差層形成用組成物に含まれる溶媒としては、第2基材およびポリマーとの相溶性を考慮して選択されることが好ましい。
例えば、第2基材がセルロースアシレートフィルムである場合、例えば、メチルエチルケトンはセルロースアシレートとの相溶性に優れるため、メチルエチルケトンの含有量を増やすことにより偏在度を高めることができる。
【0099】
第2位相差層形成用組成物を用いた第2位相差層の形成方法の手順は、工程1における第1位相差層形成用組成物を用いた第1位相差層の形成方法の手順と同じであるため、説明を省略する。
【0100】
<工程3>
工程3は、第1フィルム中の第1位相差層と第2フィルム中の第2位相差層とが対向するように、第1フィルムおよび第2フィルムを貼合して、積層体を得る工程である。
第1フィルムと第2フィルムとを貼合する際には、上述した接着剤層または粘着剤層を介して貼合することが好ましい。
接着剤層を用いる場合には、例えば、第1フィルムの第1位相差層側の表面に接着剤を塗布して、接着剤が塗布された表面と第2フィルムの第2位相差層とを接触させて第1フィルムと第2フィルムとを貼合し、硬化処理を施すことにより、所望の積層体が得られる。接着剤が紫外線硬化型接着剤である場合、上記硬化処理としては紫外線照射処理が挙げられる。
また、密着層として粘着剤層を用いる場合には、例えば、第1フィルムの第1位相差層側の表面に粘着剤を塗布して、粘着剤が塗布された表面と第2フィルムの第2位相差層とを接触させて第1フィルムと第2フィルムとを貼合して、所望の積層体が得られる。
【0101】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、上述した本発明の積層体から第1基材(本発明の積層体が第2基材を有する場合には第1基材および第2基材)を剥離してなる光学フィルムであり、第1位相差層(本発明の積層体が第2位相差層を有する場合には第1位相差層および第2位相差層)を有する。
本発明の光学フィルムは、いわゆるλ/4板として機能してもよい。
λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板であり、特定の波長λnmにおける面内レタデーションRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満たす板(光学異方性層)のことをいう。
この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよいが、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)が、110nm≦Re(550)≦180nmの関係を満たすことが好ましい。
【0102】
[偏光板]
本発明の光学フィルムは、偏光子と組み合わせて偏光板として用いてもよく、円偏光板として用いることが好ましい。なお、円偏光板とは、無偏光の光を円偏光に変換する光学素子である。
上記構成を有する本発明の偏光板は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、および、陰極管表示装置(CRT)のような表示装置の反射防止用途に好適に用いられる。
【0103】
偏光子は、自然光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であればよく、例えば、吸収型偏光子が挙げられる。
偏光子の種類は特に制限はなく、通常用いられている偏光子を利用でき、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性物質を利用した染料系偏光子、および、ポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
なお、偏光子の片面または両面には、保護膜が配置されていてもよい。
【0104】
偏光子の吸収軸と光学フィルムとの配置関係は特に制限されず、光学フィルムに含まれる液晶層の種類に応じて最適な配置が選択される。
例えば、光学フィルム中の第1位相差層がネガティブAプレートである場合、偏光子の吸収軸とネガティブAプレートの面内遅相軸とのなす角度は、45~135°の範囲内が好ましい。
【0105】
上記偏光板は、本発明の光学フィルムおよび偏光子以外の他の部材を有していてもよい。
偏光板は、本発明の光学フィルムと偏光子との間に、接着剤層または粘着剤層を有していてもよい。
また、偏光板は、本発明の光学フィルムと偏光子との間に、ポリマーフィルムを有していてもよいが、薄型化の点から、ポリマーフィルムを有さないことが好ましい。ポリマーフィルムとしては、例えば、セルロースアシレートフィルムが挙げられる。
【0106】
上記偏光板の製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、偏光子と、光学フィルムとを接着剤層または粘着剤層を介して貼合する方法が挙げられる。
【0107】
[画像表示装置]
本発明の光学フィルムおよび偏光板は、画像表示装置に好適に適用できる。
本発明の画像表示装置は、表示素子と、上述した光学フィルムまたは偏光板とを有する。
本発明の光学フィルムを画像表示装置に適用する際には、円偏光板として適用することが好ましい。この場合、円偏光板は視認側に配置され、円偏光板中、偏光子が視認側に配置される。
表示素子は特に制限されず、有機エレクトロルミネッセンス表示素子、および、液晶表示素子が挙げられる。
【実施例0108】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0109】
[実施例1]
〔第1基材(セルロースアシレートフィルム)の作製〕
下記組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、さらに90℃で10分間加熱した。その後、得られた組成物を、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過して、ドープを調製した。ドープの固形分濃度は23.5質量%であり、ドープの溶媒は塩化メチレン/メタノール/ブタノール=81/18/1(質量比)である。
【0110】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアシレート
(アセチル置換度2.86、粘度平均重合度310) 100質量部
・糖エステル化合物1(下記式(S4)に示す) 6.0質量部
・糖エステル化合物2(下記式(S5)に示す) 2.0質量部
・シリカ粒子分散液
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 0.1質量部
・溶媒(塩化メチレン/メタノール/ブタノール)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0111】
【0112】
【0113】
上記で作製したドープを、ドラム製膜機を用いて流延した。0℃に冷却された金属支持体上に接するようにドープをダイから流延し、その後、得られたウェブ(フィルム)を剥ぎ取った。なお、ドラムはSUS(ステンレス鋼)製であった。
【0114】
流延されて得られたウェブ(フィルム)を、ドラムから剥離後、フィルム搬送時に30~40℃で、クリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてテンター装置内で20分間乾燥した。引き続き、ウェブをロール搬送しながらゾーン加熱により後乾燥した。得られたウェブにナーリングを施した後、巻き取った。
得られたセルロースアシレートフィルムの膜厚は40μmであった。
【0115】
〔第1位相差層の形成〕
上記の第1基材上にギーサー塗布機を用いて、下記の組成の円盤状液晶化合物を含む光学異方性層形成用組成物(1-1)を塗布して、組成物層を形成した。組成物層の形成されたフィルムを温風にて116℃で1分間加熱し、UV温度78℃にて酸素濃度が100体積ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら365nmのUV-LEDを用いて、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、得られた塗膜に、温風にて115℃で25秒間アニーリングすることで、第1位相差層に該当する光学異方性層(1-1)を形成し、積層体を作製した。
なお、形成した光学異方性層(1-1)の膜厚は2μmであった。波長550nmにおける面内レタデーションReは0nmであり、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションRthは60nmであった。円盤状液晶化合物の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、フィルム面に対して、水平に配向していることを確認した。
【0116】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物(1-1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の円盤状液晶化合物1 4質量部
・下記の円盤状液晶化合物2 1質量部
・下記の円盤状液晶化合物3 95.0質量部
・下記の重合性モノマー1 12.0質量部
・下記の重合開始剤S-1(オキシム型) 3.0質量部
・下記の光酸発生剤D-1 3.0質量部
・下記の空気側偏在ポリマーB-1 0.6質量部
・下記の基材側偏在ポリマーP-1(特定ポリマー) 0.6質量部
・ジイソプロピルエチルアミン 0.2質量部
・メチルイソブチルケトン 360質量部
・プロピオン酸エチル 90質量部
・メチルエチルケトン 25質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
空気側偏在ポリマーB-1(各繰り返し単位中の数値は全繰り返し単位に対する含有量(質量%)を表す。また、重量平均分子量は12500であった。)
【化15】
【0124】
基材側偏在ポリマーP-1(重量平均分子量:7800)
【化16】
【0125】
[比較例1]
基材側偏在ポリマーP-1を用いない以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0126】
[比較例2]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-9を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0127】
基材側偏在ポリマーP-9(重量平均分子量:9000)
【化17】
【0128】
[実施例2]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-2を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0129】
基材側偏在ポリマーP-2(重量平均分子量:6300)
【化18】
【0130】
[実施例3]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-3を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0131】
基材側偏在ポリマーP-3(重量平均分子量:7200)
【化19】
【0132】
[実施例4]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-4を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0133】
基材側偏在ポリマーP-4(重量平均分子量:6800)
【化20】
【0134】
[実施例5]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-5を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0135】
基材側偏在ポリマーP-5(重量平均分子量:8400)
【化21】
【0136】
[実施例6]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-6を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0137】
基材側偏在ポリマーP-6(重量平均分子量:7700)
【化22】
【0138】
[実施例7]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-7を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0139】
基材側偏在ポリマーP-7(重量平均分子量:6700)
【化23】
【0140】
[実施例8]
特定ポリマーとして、基材側偏在ポリマーP-1の代わりに、以下に示す基材側偏在ポリマーP-8を用いた以外は、実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
【0141】
基材側偏在ポリマーP-8(重量平均分子量:6500)
【化24】
【0142】
[実施例9]
空気側偏在ポリマーB-1の代わりに、以下に示す空気側偏在ポリマーB-2を用いた以外は、実施例7と同じ方法で積層体を作製した。
【0143】
空気側偏在ポリマーB-2(各繰り返し単位中に記載のアルファベットは、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(質量%)を表し、左側の繰り返し単位から53質量%、47質量%であった。また、重量平均分子量は183000であった。)
【化25】
【0144】
[実施例10]
実施例9と同様の方法で形成した第1位相差層を光学異方性層Aとし、得られた光学異方性層Aに、室温で、ワイヤーグリッド偏光子を通したUV光(超高圧水銀ランプ;UL750;HOYA製)を7.9mJ/cm2(波長:313nm)照射することで、表面に配向制御能を有する組成物層を形成した。
上記光学異方性層A上にギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む光学異方性層形成用組成物(1-2)を塗布し、95℃の温風で120秒間加熱した。続いて、得られた組成物層に対して95℃にてUV照射(100mJ/cm2)を行い、液晶化合物の配向を固定化して、光学異方性層Bに該当する光学異方性層(1-2)を形成し、積層体を作製した。
光学異方性層(1-2)の厚みは1.5μmであり、波長550nmにおけるΔndは153nmであった。円盤状液晶化合物の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、フィルム面に対して、垂直に配向していることを確認した。
フィルムの幅方向を0°(長手方向は反時計回りを90°、時計回りを-90°)とすると、光学異方性層(1-2)側から見たとき、光学異方性層(1-2)の面内遅相軸方向は-14°であった。
【0145】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物(1-2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記の円盤状液晶化合物1 80質量部
・上記の円盤状液晶化合物2 20質量部
・下記の配向膜界面配向剤1 1.8質量部
・上記の重合性モノマー1 10.0質量部
・上記の重合開始剤S-1(オキシム型) 5.0質量部
・下記の含フッ素化合物A 0.1質量部
・下記の含フッ素化合物B 0.21質量部
・下記の含フッ素化合物C 0.06質量部
・下記の消泡剤1 2.1質量部
・メチルエチルケトン 299質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0146】
【0147】
含フッ素化合物A(下記式中、aおよびbは、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を表し、aは90質量%、bは10質量%を表す。また、重量平均分子量は15000であった。)
【化27】
【0148】
含フッ素化合物D(各繰り返し単位中の数値は全繰り返し単位に対する含有量(質量%)を表す。また、重量平均分子量は12500であった。)
【化28】
【0149】
含フッ素化合物E(左側の繰り返し単位の含有量は36質量%で、右側の繰り返し単位の含有量は64質量%であった。また、重量平均分子量は12500であった。)
【化29】
【0150】
【0151】
[実施例11]
〔第2位相差層の形成〕
第2基材として実施例1に記載のセルロースアシレートフィルムを用い、セルロースアシレートフィルム上に、ギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む光学異方性層形成用組成物(1-4)を塗布して、組成物層を形成した。組成物層の形成されたフィルムを温風にて60℃で1分間加熱し、酸素濃度が100体積ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら365nmのUV-LEDを用いて、照射量100mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、得られた塗膜に、温風にて120℃で1分間アニーリングすることで第2位相差層(光学異方性層D)に該当する光学異方性層(1-4)を形成した。
上記長尺状フィルムを巻き取らずに連続搬送しながら、光学異方性層(1-4)に、ワイヤーグリッド偏光子を通したUV光(超高圧水銀ランプ;UL750;HOYA製)を7.9mJ/cm2(波長:313nm)照射することで、表面に配向制御能を有する組成物層を形成した。
なお、形成した光学異方性層(1-4)の膜厚は0.7μmであった。波長550nmにおける面内レタデーションReは0nmであり、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションRthは-85nmであった。棒状液晶化合物の長軸方向のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、フィルム面に対して、垂直に配向していることを確認した。
【0152】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物(1-4)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の棒状液晶化合物(A) 100質量部
・重合性モノマー(A-400、新中村化学工業社製) 4.2質量部
・上記の重合開始剤S-1(オキシム型) 5.1質量部
・上記の光酸発生剤D-1 3.0質量部
・下記の重合体M-1 5.1質量部
・下記の配向膜界面配向剤2 1.9質量部
・下記の光配向性ポリマーA-2 0.8質量部
・ジイソプロピルエチルアミン 0.2質量部
・メチルエチルケトン 93.8質量部
・メチルイソブチルケトン 372.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0153】
棒状液晶化合物(A)(下記液晶化合物(RA)(RB)(RC)の84:14:2(質量比)の混合物)
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
光配向性ポリマーA-2(下記式中:a~cは、a:b:c=17:64:19であり、ポリマー中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量を示す。
【0158】
上記長尺状フィルムを巻き取らずに連続搬送しながら、光学異方性層(1-4)上にギーサー塗布機を用いて、下記の組成の棒状液晶化合物を含む光学異方性層形成用組成物(1-3)を塗布し、80℃の温風で60秒間加熱した。続いて、得られた組成物層に対して80℃にてUV照射(500mJ/cm2)を行い、液晶化合物の配向を固定化して、光学異方性層Cに該当する光学異方性層(1-3)を形成した。
光学異方性層(1-3)の厚みは1.25μmであり、波長550nmにおけるΔndは170nm、液晶化合物の捩れ角度は85°であった。フィルムの幅方向を0°(長手方向を90°)とすると、光学異方性層(1-3)側から見たとき、面内遅相軸方向(液晶化合物の配向軸角度)は、空気側が10°、光学異方性層(1-4)に接する側が95°であった。
なお、光学異方性層の面内遅相軸方向は、基板の幅方向を基準の0°として、光学異方性層の表面側から基板を観察し、時計回り(右回り)の時を負、反時計回り(左回り)の時を正として表してある。
【0159】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物(1-3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記の棒状液晶化合物(A) 100質量部
・エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4質量部
・光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製) 3質量部
・下記の左捩れキラル剤(L1) 0.60質量部
・上記の含フッ素化合物D 0.08質量部
・メチルエチルケトン 156質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0160】
【0161】
上記手順によって、長尺状のセルロースアシレートフィルム上に、光学異方性層(1-4)と光学異方性層(1-3)とが直接積層されたロール状の積層フィルム(1B)を作製した。
【0162】
含フッ素化合物C(各繰り返し単位中の数値は全繰り返し単位に対する含有量(質量%)を表す。また、重量平均分子量は12800であった。)
【化35】
【0163】
〔光学積層体(1)の作製〕
実施例10で作製した積層体の光学異方性層B(光学異方性層(1-2))側の表面と、光学異方性層C(光学異方性層(1-3))側の表面に、それぞれコロナ処理をした後、フィルムの長手方向が平行となるように下記組成の紫外線硬化型接着剤組成物(1)を用いて、連続機にて貼り合せた。
紫外線硬化型接着剤層の屈折率は1.59、隣接する光学異方性層(1-2)および光学異方性層(1-3)の軸方向で平均した屈折率は、それぞれ1.59、1.63であり、接着剤層との屈折率差は0.05以下であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線硬化型接着剤組成物(1)
――――――――――――――――――――――――――――――――
アロニックス UVX-6282(東亜合成化学) 20質量部
ルミプラス LPK―2000(三菱ガス化学) 80質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0164】
[偏在]
実施例1~11で作製した積層体について、上述した方法で特定ポリマー(基材側偏在ポリマー)の二次イオン強度を測定しところ、いずれの実施例においても、基材側偏在ポリマーが第1基材側表面に偏在していることが確認できた。
また、実施例10で作製した積層体について、上述した方法で光配向化合物(空気側偏在ポリマーB-2)の二次イオン強度を測定しところ、空気側偏在ポリマーB-2が光学異方性層B側表面に偏在していることが確認できた。
【0165】
[測定]
〔剥離力P1およびP2の測定〕
実施例1~11および比較例1~2で作製した積層体について、第1基材上に形成した第1位相差層の表面側を、コロナ処理装置を用いて、出力0.3kWおよび処理速度7.6m/分の条件で1回処理した。
次いで、第1位相差層の表面側に、下記紫外線硬化型接着剤組成物1を塗工し、偏光子と貼合した。得られた積層体を高圧水銀ランプを用いて、照射量600mJ/cm2(波長365nm)の紫外線を照射して、接着剤層を硬化させた。
次いで、偏光子の第1位相差層と貼合した面とは逆の面に粘着剤層を貼合した。この粘着剤層を形成した積層体から、幅25mm×長さ150mmの試験片を裁断し、試験片の粘着剤層の面をガラス板に貼合した。試験片の第1基材側の表面であって、試験片における幅25mmの一辺に剥離用テープ(幅25mm×長さ約180mm)を貼り付けた。引張り試験機を用いて、剥離用テープの一端をつかみ、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下、クロスヘッド速度5m/分で、剥離角度が180°である剥離試験を行い、剥離力P1の測定を行った。剥離力P1は、第1基材を引き起こした後、第1基材を第1位相差層から剥がし終わるまでの間で、力が定常状態になったときの剥離力とした。
また、実施例11で作製した積層体については、第2基材、光学異方性層(1-4)および光学異方性層(1-3)を有する積層体を用いた以外は、上記と同様の手順に従って、第2基材の180°剥離試験を行い、剥離力P2の測定を行った。
これらの結果を下記表1に示す。なお、比較例1については、基材を剥離することができなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線硬化型接着剤組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・セロキサイド2021P((株)ダイセル製) 67.0質量部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル 9.6質量部
・リカレジンDME-100(新日本理化(株)製) 19.1質量部
・CPI-100P(サンアプロ(株)製) 4.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0166】
[評価]
〔剥離性〕
実施例で得た第1位相差層と、実施例11で得た第2位相差層を実施例11に記載の方法で積層体を作製し、この粘着剤層を形成した積層体から、幅25mm×長さ150mmの試験片を裁断し、試験片の粘着剤層の面をガラス板に貼合した。
試験片の第1基材側の表面であって、試験片における幅25mmの一辺に剥離用テープ(幅25mm×長さ約180mm)を貼り付けた。引張り試験機を用いて、剥離用テープの一端をつかみ、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下、クロスヘッド速度5m/分で、剥離角度が180°である剥離試験を5回行い、剥離性の評価を行った。結果を下記表1に示す。
なお、第1基材を剥離する際に、第1基材と第1基材が隣接する層との間、または、第2基材と第2基材が隣接する層との間にて剥離が生じ、第1基材と第1基材が隣接する層との間で剥離できた回数が多いほうが、剥離性が優れる。
また、この剥離性の評価は、上述した剥離力P1と相関があるため、実施例1~11で作製した積層体そのものにおける基材の剥離性については、剥離力P1が0.12N/25mm以下となることから、剥離性に優れていると評価することもできる。
A:5回とも第1基材が剥がれる。
B:5回中4回、第1基材が剥がれる。
C:5回中3回、第1基材が剥がれる。
D:5回中2回、第1基材が剥がれる。
E:5回中1回、第1基材が剥がれる。
F:一度も第1基材が剥がれない。
【0167】
〔液晶配向性〕
実施例1~11および比較例1~2で作製した積層体から一辺の長さが40mmの正方形状のフィルムを切り出した。得られた試料をクロスニコル下の偏光顕微鏡(10倍の対物レンズ使用)で観察し、下記の基準で液晶配向性を評価した。結果を下記表1に示す。
A:観察視野内で光漏れがなかった。
B:観察視野内で光漏れがあった。
【0168】
【0169】
表1に示す結果から、特定ポリマーを用いない場合には、基材の剥離性に劣ることが分かった(比較例1)。
また、基材側偏在ポリマーとして、光配向性基を有するポリマーを用いた場合には、液晶配向性が劣ることが分かった(比較例2)。
【0170】
これに対し、基材側偏在ポリマーとして特定ポリマーを用いた場合には、基材の剥離性および液晶配向性がいずれも良好となることが分かった(実施例1~11)。
特に、実施例1と実施例2との対比から、特定ポリマーが上記式(1)で表される繰り返し単位を有していると、基材の剥離性がより向上することが分かった。
また、実施例1と実施例3との対比から、特定ポリマーが上記式(2)で表される繰り返し単位を有していると、基材の剥離性がより向上することが分かった。
また、実施例3と実施例4との対比から、上記式(2)中のXが、-COOH、-PO3H、{-OP(=O)(OH)2}、-CO2M1、-SO3M1、-NT1T2、オキサゾリン基、-NG1G2G3E1、または、ベタイン構造を有する基を表すと、基材の剥離性が更に向上することが分かった。
また、実施例3と実施例5との対比から、上記式(2)中のXが-NG1G2G3E1であると、基材の剥離性が更に向上することが分かった。
また、実施例3と実施例6との対比から、上記式(2)中のXが、所定のベタイン構造を有する基であると、基材の剥離性が更に向上することが分かった。
また、実施例2と実施例7との対比から、特定ポリマーが、脂環構造を側鎖に含む繰り返し単位を有していると、基材の剥離性が特に向上することが分かった。