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特開2023-181766加熱剥離型粘着剤組成物および粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181766
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】加熱剥離型粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20231218BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20231218BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231218BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J4/00
C09J7/38
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095095
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
(72)【発明者】
【氏名】岡部 年孝
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB05
4J004CA06
4J004DB03
4J004FA04
4J004FA08
4J040DF001
4J040DF021
4J040FA292
4J040GA05
4J040GA07
4J040HB41
4J040HB44
4J040HC14
4J040JA09
4J040JB02
4J040JB09
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA24
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA10
4J040NA19
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】使用時には強粘着性を示し、加熱によって弱粘着に変化する加熱剥離型粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)、エポキシ系架橋剤(C)、および熱重合開始剤(D)を含有する加熱剥離型粘着剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)、エポキシ系架橋剤(C)、および熱重合開始剤(D)を含有する加熱剥離型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂(A)が、カルボキシ基含有モノマーを共重合成分として含有する、請求項1記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記カルボキシ基含有モノマーが、アクリル酸モノマーである、請求項2記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和基を有する化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記熱重合開始剤(D)が、10時間半減期温度が80~130℃のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の加熱剥離型粘着剤組成物を架橋してなる粘着層を備える粘着シート。
【請求項7】
JIS Z0237:2009に記載の方法によりSUS-BA板を被着体として測定される180°ピール強度が、60℃、90%RHで24時間処理した後に10N/25mm以上であり、かつ150℃で2時間処理した後に2N/25mm以下である、請求項6記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常使用の範囲では十分な剥離強度を有し、加熱処理時にのみ剥離強度が低下する加熱剥離型粘着剤組成物と、その粘着剤組成物を架橋してなる粘着層を備える粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品をはじめ、各種プラスチック製品や金属製品等のリサイクル率向上の機運がますます高まっている。これらの製品は、通常、多数の部品を接合もしくは接着して製造されていることから、リサイクル率向上のためには、接合もしくは接着された各部品を、リサイクル時に分離、解体して、材質別に分別することが重要である。
【0003】
これらの部品の接着には、接着工程の簡便化を図るために、粘着シートが多用されている。そして、このような粘着シートとしては、通常、部品接着の信頼性の観点から、強粘着性のものが多く使われるが、このことは、解体時に強い力をかける必要があることを意味し、解体時に、接着部ではなく部品側の破壊を招いたり、部品側に粘着剤が糊残りして部品のリサイクルに支障をきたしたりして、種々の望ましくない挙動をもたらす傾向にある。
【0004】
このような視点から、リサイクル時に特定のトリガーにより易剥離化する粘着剤の提案がなされている。例えば、特許文献1には、光応答性化合物を用いて、UV光での処理で易剥離化する粘着剤の提案がなされており、特許文献2には、分解および再結合可能な構造を有する化合物を用いて、熱により剥離する樹脂の提案がなされている。また、特許文献3にはアミノ基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有する化合物の組み合わせにより、熱により剥離する樹脂の提案がなされている。更に、特許文献4には、アクリル系樹脂およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物の組成物をイソシアネート系架橋剤で架橋させた上で、熱により剥離する樹脂を薬液保護用粘着シートに用いる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-70558号公報
【特許文献2】特表2013-519764号公報
【特許文献3】特開2019-156919号公報
【特許文献4】特開2016-204617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の粘着剤では、着色材料や金属材料などの不透明な部品の接着には対応できず、被着体の制限がある。また、特許文献2の樹脂を用いた粘着剤では、原理上分解物由来の糊残りが生じやすい傾向にあり、リサイクル性に課題がある。更に、特許文献3の樹脂組成物では、通常使用時の粘着性をより上げる必要があったり、解体時の加熱温度や加熱時間の調整が難しかったりするという制限があり、更なる改良が求められている。
【0007】
そして、特許文献4の粘着剤組成物を本発明者らが詳しく検討したところ、粘着剤としての保持力に課題があり、より汎用的な用途に用いるためには、更なる改良が求められることが判明した。
【0008】
そこで、本発明は、このような背景下において、使用時には優れた粘着性を示し、加熱によって弱粘着に変化する加熱剥離型粘着剤組成物と、その粘着剤組成物を架橋してなる粘着層を備える粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の組成の接着剤組成物を用いることで上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記の[1]~[7]を、その要旨とする。
[1] アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)、エポキシ系架橋剤(C)、および熱重合開始剤(D)を含有する加熱剥離型粘着剤組成物。
[2] 前記アクリル系樹脂(A)が、カルボキシ基含有モノマーを共重合成分として含有する、[1]記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
[3] 前記カルボキシ基含有モノマーが、アクリル酸モノマーである、[2]記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
[4] 前記エチレン性不飽和基を有する化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
[5] 前記熱重合開始剤(D)が、10時間半減期温度が80~130℃のものである、[1]~[4]のいずれかに記載の加熱剥離型粘着剤組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の加熱剥離型粘着剤組成物を架橋してなる粘着層を備える粘着シート。
[7] JIS Z0237:2009に記載の方法によりSUS-BA板を被着体として測定される180°ピール強度が、60℃、90%RHで24時間処理した後に10N/25mm以上であり、かつ150℃で2時間処理した後に2N/25mm以下である、[6]記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱剥離型粘着剤組成物によれば、使用時の粘着力や保持力に優れ、加熱によって簡単に剥離することのできる粘着層を得ることができる。そして、この粘着層によれば、複数の部品を接合、接着してなる製品を供給することができ、その製品を回収してリサイクルする際には、所定の加熱条件によって簡単に部品ごとに分離、解体することができる。このため、各種プラスチック製品や金属製品などのリサイクル率の向上に大きく貢献することができる。
【0011】
そして、本発明の粘着シートによれば、上記粘着層を利用した部品同士の接合、接着作業を効率よく行うことができるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらの具体的な記載に限定されるものではない。
【0013】
ここで、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、本発明において、「シート」とは、特に「フィルム」、「テープ」と区別するものではなく、これらも含めた意味として記載するものである。
そして、本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り「X以上Y以下」を意味しており、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
【0014】
<加熱剥離型粘着剤組成物>
まず、本発明の加熱剥離型粘着剤組成物(以下、単に「本粘着剤組成物」ということがある)について説明する。
本粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)、エポキシ系架橋剤(C)、熱重合開始剤(D)を含有するものであり、以下、各成分について説明する。
【0015】
[アクリル系樹脂(A)]
本粘着剤組成物に用いられるアクリル系樹脂(A)としては、重合成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を主成分として含有してなり、好ましくは更に官能基含有モノマー(a2)を共重合成分として含有してなるものであり、必要に応じてカルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)、その他の共重合性モノマー(a4)を共重合成分として含有することもできる。上記アクリル系樹脂(A)は、共重合成分として官能基含有モノマー(a2)を使用したものである場合には、アクリル系樹脂(A)の架橋点となり、基材や被着体との密着性をさらに向上させることができる。また、カルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)を使用したものである場合には、被着体との密着性や粘着力の向上の点で好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、アルキル基の炭素数が、通常1~20、好ましくは1~12、更には1~8、殊には4~8であることが好ましい。炭素数が多すぎると、被着体に対する汚染が生じやすい傾向がある。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i-ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環族の(メタ)アクリル酸エステル等:
が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさおよび原料入手しやすさの点で、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは30~99質量%、特に好ましくは40~98質量%、さらに好ましくは50~95質量%であり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の含有量が少なすぎると、粘着力が低下する傾向にあり、多すぎると粘着力が高くなりすぎる傾向がある。
【0019】
上記官能基含有モノマー(a2)としては、後述のエポキシ系架橋剤(C)と反応することにより架橋点となりうる官能基を含有するモノマーであればよく、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点、さらに本発明においては、耐酸性薬剤と糊残りを少なくする点から水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく用いられる。とりわけ、カルボキシ基含有モノマーが、効果の点からより好ましく用いられる。
【0020】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;
2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;
2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマー:
を挙げることができる。
【0021】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0022】
なお、本発明で水酸基含有モノマーを用いる場合、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5質量%以下のものを用いることが好ましく、さらに0.2質量%以下、殊には0.1質量%以下のものを使用することが好ましく、具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0023】
また、上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN-グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0024】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0026】
上記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0027】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0028】
これら官能基含有モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記官能基含有モノマー(a2)の共重合成分中における含有量は、好ましくは0.1~30質量%、特に好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1~15質量%である。官能基含有モノマー(a2)の含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)の粘度が高くなりすぎたり、貼付直後の粘着力が高くなりすぎたりする傾向があり、含有量が少なすぎると、架橋度が低下し、被着体への汚染が生じやすい傾向がある。
【0030】
前記カルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でも、被着体への密着性や粘着力の点で酢酸ビニルを用いることが好ましい。なお、これらカルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0031】
カルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)の含有量は、共重合成分全体に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%、特に好ましくは0~7質量%である。カルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)の含有量が多すぎるとフッ酸浸漬時に溶出する傾向があることから、薬剤耐性が求められる用途においては、カルボン酸ビニルエステルモノマー(a3)を含有しないことが好ましい。
【0032】
前記その他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン等の1つの芳香環を含有するモノマー;
ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等:
が挙げられる。
【0033】
上記その他の共重合性モノマー(a4)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは0~40質量%、特に好ましくは0~30質量%、さらに好ましくは0~25質量%である。その他の共重合性モノマー(a4)が多すぎると粘着特性が低下しやすい傾向がある。
【0034】
本発明では、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、好ましくは官能基含有モノマー(a2)、必要に応じてその他の共重合性モノマー(a4)等を共重合成分として重合することにより(メタ)アクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる重合にあたっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行うことができ、適宜選択することができるが、中でも溶液ラジカル重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成で(メタ)アクリル系樹脂(A)を製造できる点で好ましい。
【0035】
上記溶液ラジカル重合では、例えば、有機溶媒中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a4)等のモノマー成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは通常50~98℃で0.1~20時間程度重合すればよい。
【0036】
上記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でもしくは2種以上併用することができる。
【0037】
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘接着剤組成物の塗工時の乾燥のしやすさ、安全上の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましく、特には、酢酸エチルを含むことが好ましい。
【0038】
また、かかる溶液ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0039】
このようにして、本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)を得ることができる。
【0040】
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万~300万であることが好ましく、特に好ましくは15万~100万、更に好ましくは20万~80万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘着層の靱性や凝集力が低下する傾向があり、転写性や保持力、硬化後の剪断強度が低下する傾向がある。また、かかる重量平均分子量が大きすぎると、粘度が高くなりすぎて重合時にスケーリングが多くなったり、他の成分との相溶性が低下したり、ハンドリング性が低下したりする傾向がある。
【0041】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、10以下であることが好ましく、特に好ましくは7以下、更に好ましくは5.5以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向がある。なお、分散度の下限は通常1である。
【0042】
上記のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列に接続して用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は、上記重量平均分子量と数平均分子量の測定値より求めることができる。
【0043】
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-70~10℃であることが好ましく、中でも、-60~0℃であることがより好ましく、特に好ましくは-50~-10℃である。上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が低すぎると、加熱後の粘着力が十分に低下しない傾向があり、低すぎると被着部材への汚染性が高くなる傾向がある。
【0044】
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を、下記のFoxの式に当てはめて算出した値である。
ここで、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K 7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0045】
【数1】
【0046】
[エチレン性不飽和基を有する化合物(B)]
本粘着剤組成物に用いられる、エチレン性不飽和基を有する化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」という場合がある)(B)は、エチレン性不飽和基を有するものであれば、特に限定するものではないが、加熱後の剥離特性に優れたものを得るには、通常、エチレン性不飽和基数が、1分子当たり2~15個であることが好ましく、3~12個であることがより好ましい。特に好ましくは4~10個である。かかるエチレン性不飽和基数が多すぎると加熱後の架橋密度が大きくなりすぎて、粘着層にクラックが発生しやすくなる傾向にあり、少なすぎると充分な架橋密度が得られないため、加熱後に剥離しにくくなる傾向にある。
【0047】
そして、上記エチレン性不飽和化合物(B)は、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点で(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)であることがとりわけ好ましい。
【0048】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)は、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b1)と多価イソシアネート系化合物(b2)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(b1*2)であってもよいし、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b1)、多価イソシアネート系化合物(b2)およびポリオール系化合物(b3)の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(b1*2*3)であってもよい。中でも、本発明においては、加熱後の剥離性の点でウレタン(メタ)アクリレート系化合物(b1*2)を用いることが好ましい。
【0049】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)以外のエチレン性不飽和化合物(B2)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等のエチレン性不飽和基を2個有する化合物;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等のエチレン性不飽和基を3個有する化合物;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を4個以上有する化合物;
等が挙げられる。
【0050】
これらのエチレン性不飽和化合物(B)は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。そして、上記エチレン性不飽和化合物(B)の含有量は、通常、アクリル系樹脂(A)100質量部に対して5~100質量部であり、好ましくは10~80質量部、特に好ましくは20~60質量部である。エチレン性不飽和化合物(B)の含有量が少なすぎると加熱後に剥離しにくくなる傾向があり、多すぎると剥離後の被着部材に対する耐汚染性が低下する傾向がある。
【0051】
[エポキシ系架橋剤(C)]
本粘着剤組成物に用いられるエポキシ系架橋剤(C)は、アクリル系樹脂(A)中の官能基と反応し、架橋構造を形成させるものである。
【0052】
上記エポキシ系架橋剤(C)としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、1,3'-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、1,3'-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等の窒素原子を含有するエポキシ系架橋剤であることが、円滑に架橋構造を形成させやすい点で好ましく、1,3'-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンが、特に好ましい。
【0054】
上記エポキシ系架橋剤(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、その含有量は、通常、アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対して、0.001~30質量部であることが好ましく、0.01~20質量部であることがより好ましく、特に好ましくは0.03~15質量部である。エポキシ系架橋剤(C)が少なすぎると、粘着剤組成物から粘着層を形成する際の凝集力が低下し、糊残りの原因となる傾向があり、多すぎると、形成される粘着層の柔軟性および粘着力が低下し、被着部材との間に浮きが生じる傾向がある。
【0055】
[熱重合開始剤(D)]
本粘着剤組成物に用いられる熱重合開始剤(D)は、加熱により硬化反応を開始するものであればよく、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキマロン酸、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α'-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;
2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2'-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;
等が挙げられる。
【0056】
これらのうち、加熱時の発生ガスが少ない点で、有機過酸化物系開始剤を用いることが好ましい。そして、これらの熱重合開始剤(D)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記熱重合開始剤(D)は、その種類によって、加熱による硬化時の反応温度や反応時間が異なることから、通常、10時間半減期温度が70~150℃のものを用いることが好ましく、中でも、80~130℃のものを用いることがより好ましい。すなわち、10時間半減期温度が低すぎるものは、実使用時の安定性に劣るという傾向があり、10時間半減期温度が高すぎるものは、加熱による易剥離化が困難になるという傾向がある。したがって、例えば、1,1'-ジ-(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(87℃)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(91℃)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(95℃)、t-ブチルパーオキシマロン酸(96℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(99℃)、t-ブチルパーオキシアセテート(102℃)、t-ブチルベンゾイルパーオキシド(104℃)、ジクミルパーオキシド(120℃)、ジ-t-ブチルパーオキシド(128℃)、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド(145℃)等を用いることが好適である。なお、括弧内は10時間半減期温度を示している。
【0058】
上記熱重合開始剤(D)の含有量は、通常、エチレン性不飽和化合物(B)100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、特に好ましくは0.2~10質量部である。上記熱重合開始剤(D)が少なすぎると、硬化が不十分になって物性が安定しなくなる傾向がみられ、多すぎてもそれ以上の効果が得られない傾向がみられる。
【0059】
[その他の成分]
本粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、アクリル系樹脂(A)以外の樹脂、の他、光重合開始剤、帯電防止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘着付与剤等の添加剤を更に含有していてもよい。これらの添加剤は1種を単独でまたは2種以上を併せて用いることができる。特に酸化防止剤は、粘着層の安定性を保つのに有効である。酸化防止剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、好ましくは0.01~5質量%である。なお、添加剤の他にも、本粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されていてもよい。
【0060】
このように、本粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、エポキシ系架橋剤(C)、熱重合開始剤(D)と、必要に応じて適宜の任意成分とを混合することにより得ることができる。
【0061】
そして、本着剤組成物を架橋して粘着層とすることにより、本発明の粘着シート(以下、「本粘着シート」ということがある)を得ることができる。本粘着シートは、金属板、プラスチック板、半導体ウエハ等、各種の接着対象部材(被着部材)同士を貼り合わせて使用に供した後に剥離することを前提とする粘着シートとして有用である。また、一時的に、特定の部材の表面を被覆して保護する等の役割を果たす保護シートや、製造段階で特定の部品同士を仮接着(粘着)する場合の仮接着シートとしても有用である。以下、本粘着シートについて説明する。
【0062】
本粘着シートは、通常、基材シートと、本粘着剤組成物からなる粘着層と、離型フィルムとで構成される。
本粘着シートは、例えばつぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、本粘着剤組成物をそのまま、または適当な有機溶剤により濃度調整して流動性を高め、剥離フィルム上または基材シート上に直接塗工する。その後、例えば80~105℃、0.5~10分間加熱処理等により乾燥させ、接着層として基材シートまたは離型フィルムと一体化することにより粘着シートを得ることができる。また、粘着物性のバランスをとるために、乾燥後に更にエージングを行ってもよい。
【0063】
上記エージングの条件としては、温度は通常、常温(23℃)~70℃、時間は通常、1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、23℃で3~10日間、40℃で1~7日間等の条件で行えばよい。
【0064】
上記基材シートの材質としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;
ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;
三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;
ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド:
等の合成樹脂が挙げられる。また、アルミニウム、銅、鉄の金属箔、上質紙、グラシン紙等の紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。
【0065】
これらの基材シートは、単層体としてまたは2種以上が積層された複層体として用いることができる。これらの中でも、軽量化等の点から、合成樹脂シートが好ましい。
【0066】
更に、上記離型フィルムとしては、例えば、上記基材シートで例示した各種合成樹脂シート、紙、織物、不織布等に離型処理したものを使用することができる。
【0067】
また、本粘着剤組成物の塗工方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0068】
本粘着シートの粘着層の厚みは、通常、10~200μmであることが好ましく、更には15~100μmがあることが好ましい。
【0069】
本粘着シートは、加熱により硬化が進行して剥離性を示すものである。上記加熱条件としては、加熱温度が通常100~250℃であり、好ましくは130~200℃である。加熱温度が低すぎると、剥離性が低下する傾向があり、加熱温度が高すぎても剥離性に差は見られない傾向があるため、エネルギーコストの点から好ましくない。また、加熱時間は通常0.25~10時間、好ましくは0.5~5時間である。加熱時間が短すぎると、剥離性が低下する傾向があり、加熱時間が長すぎても剥離性に差は見られない傾向があるため、エネルギーコストの点から好ましくない。
【0070】
上記粘着シートの粘着力は、基材シートの種類、被着部材の種類等によっても異なるが、JIS Z0237:2009に記載の方法によりSUS-BA板を被着体として測定される180°ピール強度が、60℃、90%RHで24時間処理した後に10N/25mm以上であり、かつ150℃で2時間処理した後に2N/25mm以下であることが、加熱剥離性を得る上で好ましい。中でも、上記180°ピール強度が、60℃、90%RHで24時間処理した後に20N/25mm以上であり、かつ150℃で2時間処理した後に1N/25mm以下であることが、効果の上でより好ましい。
【0071】
本粘着シートによれば、優れた加熱剥離性を有する本粘着剤組成物を架橋してなる粘着層を有するため、この粘着シートを被着部材と貼り合わせ、被着部材の表面を一時的に保護したり他の部材と貼り合わせたりした後に、必要に応じて加熱することにより、粘着層を硬化させて粘着力を低下させ、容易に被着部材から剥離することができる。
【0072】
特に、本粘着シートを、リサイクルを前提として、複数の材質の異なる部品を組み合わせて接合一体化した製品の部品同士の接着に用いた場合、この製品のリサイクル時に、その接着部分を加熱するだけで簡単に各部品を分離、解体して、材質別に分別することができるため、リサイクル率の向上に極めて有用である。
【実施例0073】
以下、本発明の実施例について比較例とともに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」、「部」とあるのは、質量基準を意味する。
【0074】
まず、下記のとおり、各配合成分を準備した。
【0075】
[アクリル系樹脂(A-1)の調製]
温度調節機、温度計、撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル68部を仕込み、撹拌しながら昇温し、内温が78℃で安定した段階で、共重合成分としてn-ブチルアクリレート70部、メチルメタクリレート20部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.1部、アクリル酸9.9部、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.035部を混合溶解させた混合物を2時間にわたって滴下し、還流下で反応させた。次いで、反応開始から3時間後に酢酸エチル23部とAIBN0.034部を溶解させた液を添加し、反応開始から5時間後に酢酸エチル7.6部を投入し反応を終了させ、アクリル樹脂(A-1)溶液〔ガラス転移温度-24.2℃、樹脂分35.0%、粘度8,000mPa・s(25℃)〕を得た。
【0076】
[エチレン性不飽和化合物(B-1)]
ウレタンアクリレート系化合物:イソホロンジイソシアネートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの反応物[エチレン性不飽和基:10個、重量平均分子量:2,300]
【0077】
[エポキシ系架橋剤(C-1)]
テトラッドC(三菱ガス化学社製)
【0078】
[熱重合開始剤(D-1)]
パーブチルZ(日油社製、10時間半減期温度104℃)
【0079】
[イソシアネート系架橋剤(E-1)]
コロネートL(東ソー社製)
【0080】
<実施例1>
[粘着剤組成物の調製]
上記アクリル系樹脂(A-1)を固形分換算で67部、エチレン性不飽和化合物(B-1)33部、エポキシ系架橋剤(C-1)0.05部、熱重合開始剤(D-1)1部を混合し、酢酸エチルで希釈して固形分40%とすることにより粘着剤組成物を得た。
【0081】
[粘着シートの作成]
得られた粘着剤組成物を、基材シート(易接着ポリエチレンテレフタレートフイルム、膜厚125μm、東洋紡社製:A4360 コスモシャイン)上に、アプリケーターで塗工した後、100℃で2分間乾燥後、離型フィルム(三井化学東セロ社製:SP-PET 38 01-BU)に貼付し、40℃にて3日間エージングすることにより、粘着シート(粘着層の厚み25μm)を得た。
【0082】
<実施例2>
実施例1における熱重合開始剤(D-1)を2部とした以外は実施例1と同等の方法で粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0083】
<比較例1>
実施例1におけるエポキシ系架橋剤(C1)をイソシアネート系架橋剤(E1)2部とした以外は実施例1と同等の方法で粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0084】
<比較例2>
実施例1において熱重合開始剤(D-1)を配合しなかった。それ以外は実施例1と同等の方法で粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0085】
このようにして得られた実施例1、2と比較例1、2の各粘着シートに対して、下記の手順にしたがって、粘着層の180°ピール剥離試験強度と保持力を測定し、その結果を後記の表1に示した。
【0086】
[180°ピール剥離強度]
(1)粘着シートのSUS-BA板への接着]
得られた粘着シートから25mm×100mmの試験片を作製し、離型フィルムを剥がしたうえで、ステンレス板(SUS304BA板)に23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて質量2kgのゴムローラーを2往復させて加圧貼付し、同雰囲気下で3日エージングしてSUS-BA板に接着した粘着シート(Q)を得た。
(2)剥離試験:23℃
上記粘着シート(Q)について、JIS Z0237:2009に準拠した180°ピール剥離試験を行い、その剥離強度を測定した。
(3)剥離試験:60℃処理
上記粘着シート(Q)について、60℃/90%RHの環境下で1日エージングしたのち、23℃に戻して180°ピール剥離試験を行い、その剥離強度を測定した。
(4)剥離試験:150℃処理
同じく上記粘着シート(Q)について、150℃の環境下で2時間エージングしたのち、23℃に戻して180°ピール剥離試験を行い、その剥離強度を測定した。
なお、各剥離試験において、剥離後のSUS-BA板側に糊残りがないかどうか目視で確認した。
【0087】
[保持力]
上記粘着シート(Q)について、JIS Z0237:2009に準拠した保持力試験を行い(1kg荷重、40℃)、SUS-BA板に対する粘着層の保持力を測定した。
【0088】
【表1】
【0089】
上記の結果から、実施例1、2の粘着シートは、ともに優れた加熱剥離性を示し、また接着状態における接着層は十分な保持力を備えていることがわかる。
一方、エポキシ系架橋剤(C)を含有しない比較例1は、保持力に課題があることがわかる。また、熱重合開始剤(D)を含有しない比較例2は、加熱後の易剥離性を有しないことに課題があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、使用時には強粘着性を示し、加熱によって弱粘着に変化する加熱剥離型粘着剤組成物と、その粘着剤組成物を架橋してなる粘着層を備える粘着シートとして、好適に用いることができる。