(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181778
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】導電粒子評価装置及び導電粒子評価方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/62 20170101AFI20231218BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20231218BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231218BHJP
【FI】
G06T7/62
G01N23/2251
G06T7/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095114
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】松沢 光晴
(72)【発明者】
【氏名】関 英之
(72)【発明者】
【氏名】富坂 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将平
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001CA03
2G001KA01
2G001MA04
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA04
5L096FA32
5L096FA54
5L096FA59
5L096FA77
5L096GA28
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】簡便な測定によって微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を診断すること。
【解決手段】導電粒子評価装置1は、微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を評価する導電粒子評価装置であって、複数の導電粒子を撮像した二次元画像を対象に、導電粒子が含まれる対象領域を特定する領域特定部102と、対象領域の二次元画像上の位置を基準に対象領域の内側の円領域を設定する円領域設定部103と、二次元画像の円領域内における輝度値を基に閾値を決定する閾値決定部104と、閾値を基に円領域内の二次元画像を2つの画素値に二値化して二値化画像を生成する画像生成部105と、二値化画像の円領域内における全体の画素数に対する2つの画素値のいずれかの画素数の比率を算出することにより、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態の評価値を算出する評価値算出部106と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を評価する導電粒子評価装置であって、
複数の前記導電粒子を撮像した二次元画像を対象に、前記導電粒子が含まれる対象領域を特定し、前記対象領域の前記二次元画像上の位置を基準に前記対象領域の内側の円領域を設定する領域特定手段と、
前記二次元画像の前記円領域内における輝度値を基に閾値を決定する閾値決定手段と、
前記閾値を基に前記円領域内の前記二次元画像を2つの画素値に二値化して二値化画像を生成する画像生成手段と、
前記二値化画像の前記円領域内における全体の画素数に対する2つの画素値のいずれかの画素数の比率を算出することにより、前記導電粒子の表面における前記微粒子の被覆状態の評価値を算出する評価値算出手段と、
を備える導電粒子評価装置。
【請求項2】
前記領域特定手段は、前記対象領域の代表座標を基準にした規定円を前記円領域として設定する、
請求項1に記載の導電粒子評価装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、前記円領域内の輝度値の平均値を基準に前記閾値を決定する、
請求項1又は2に記載の導電粒子評価装置。
【請求項4】
前記領域特定手段、前記閾値決定手段、前記画像生成手段、及び前記評価値算出手段は、複数の前記導電粒子毎に特定した複数の前記対象領域を対象に、前記円領域の設定、前記閾値の決定、前記二値化画像の生成、及び前記評価値の算出を繰り返す、
請求項1又は2に記載の導電粒子評価装置。
【請求項5】
微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を評価する導電粒子評価方法であって、
領域特定手段が、複数の前記導電粒子を撮像した二次元画像を対象に、前記導電粒子が含まれる対象領域を特定し、前記対象領域の前記二次元画像上の位置を基準に前記対象領域の内側の円領域を設定する領域特定ステップと、
閾値決定手段が、前記二次元画像の前記円領域内における輝度値を基に閾値を決定する閾値決定ステップと、
画像生成手段が、前記閾値を基に前記円領域内の前記二次元画像を2つの画素値に二値化して二値化画像を生成する画像生成ステップと、
評価値算出手段が、前記二値化画像の前記円領域内における全体の画素数に対する2つの画素値のいずれかの画素数の比率を算出することにより、前記導電粒子の表面における前記微粒子の被覆状態の評価値を算出する評価値算出ステップと、
を備える導電粒子評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電粒子を評価する導電粒子評価装置及び導電粒子評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電粒子の状態を画像を用いて評価する方法が用いられている。下記の特許文献1には、表面に導電性の複数の突起部を備えた導電粒子の表面形状を画像を用いて評価する導電粒子形状評価装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、微粒子で被覆された導電粒子の表面状態の診断を、簡便な方法によって実現することが求められている。
【0005】
そこで、簡便な測定によって微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を診断可能な導電粒子評価装置及び導電粒子評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一側面に係る導電粒子評価装置は、微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を評価する導電粒子評価装置であって、複数の導電粒子を撮像した二次元画像を対象に、導電粒子が含まれる対象領域を特定し、対象領域の二次元画像上の位置を基準に対象領域の内側の円領域を設定する領域特定手段と、二次元画像の円領域内における輝度値を基に閾値を決定する閾値決定手段と、閾値を基に円領域内の二次元画像を2つの画素値に二値化して二値化画像を生成する画像生成手段と、二値化画像の円領域内における全体の画素数に対する2つの画素値のいずれかの画素数の比率を算出することにより、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態の評価値を算出する評価値算出手段と、を備える。
【0007】
実施形態の他の側面に係る導電粒子評価方法は、微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を評価する導電粒子評価方法であって、領域特定手段が、複数の導電粒子を撮像した二次元画像を対象に、導電粒子が含まれる対象領域を特定し、対象領域の二次元画像上の位置を基準に対象領域の内側の円領域を設定する領域特定ステップと、閾値決定手段が、二次元画像の円領域内における輝度値を基に閾値を決定する閾値決定ステップと、画像生成手段が、閾値を基に円領域内の二次元画像を2つの画素値に二値化して二値化画像を生成する画像生成ステップと、評価値算出手段が、二値化画像の円領域内における全体の画素数に対する2つの画素値のいずれかの画素数の比率を算出することにより、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態の評価値を算出する評価値算出ステップと、を備える。
【0008】
上記一側面あるいは上記他の側面においては、不規則な断面形状を有する導電粒子の領域の内側に円領域が設定され、設定された円領域内の画像を基に、簡便な計算方法によって微粒子の存在する画素が二値化画像として検出され、円領域内における二値化画像の画素数の比率を基に、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態の評価値が算出される。これにより、微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を簡便な方法で適切に評価することができる。例えば、このような評価装置或いは評価方法は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等の汎用の情報処理装置によって容易に実現できる。
【0009】
ここで、上記一側面においては、領域特定手段は、対象領域の代表座標を基準にした規定円を円領域として設定してもよい。これにより、二次元画像上で導電粒子の内側の領域を安定して設定することができる。その結果、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態を安定して評価することができる。
【0010】
また、閾値決定手段は、円領域内の輝度値の平均値を基準に閾値を決定してもよい。この場合、円領域内から微粒子の画素を判別するための閾値を適切に設定することができ、導電粒子の表面における被覆状態を精度よく評価することができる。
【0011】
また、領域特定手段、閾値決定手段、画像生成手段、及び評価値算出手段は、複数の導電粒子毎に特定した複数の対象領域を対象に、円領域の設定、閾値の決定、二値化画像の生成、及び評価値の算出を繰り返してよい。この場合、複数の導電粒子が写った二次元画像を対象にした場合に、複数の導電粒子の表面の被覆状態に関する複数の評価値を連続的に得ることができ、導電粒子を含む材料を対象にした効率的な評価方法を実現することができる。
【0012】
本発明の導電粒子評価装置は、[1]「微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を評価する導電粒子評価装置であって、複数の導電粒子を撮像した二次元画像を対象に、導電粒子が含まれる対象領域を特定し、対象領域の二次元画像上の位置を基準に対象領域の内側の円領域を設定する領域特定手段と、二次元画像の円領域内における輝度値を基に閾値を決定する閾値決定手段と、閾値を基に円領域内の二次元画像を2つの画素値に二値化して二値化画像を生成する画像生成手段と、二値化画像の円領域内における全体の画素数に対する2つの画素値のいずれかの画素数の比率を算出することにより、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態の評価値を算出する評価値算出手段と、を備える導電粒子評価装置」である。
【0013】
本発明の導電粒子評価装置は、[2]「領域特定手段は、対象領域の代表座標を基準にした規定円を円領域として設定する、上記[1]に記載の導電粒子評価装置」であってもよい。
【0014】
本発明の導電粒子評価装置は、[3]「閾値決定手段は、円領域内の輝度値の平均値を基準に閾値を決定する、上記[1]又は[2]に記載の導電粒子評価装置」であってもよい。
【0015】
本発明の導電粒子評価装置は、[4]「領域特定手段、閾値決定手段、画像生成手段、及び評価値算出手段は、複数の導電粒子毎に特定した複数の対象領域を対象に、円領域の設定、閾値の決定、二値化画像の生成、及び評価値の算出を繰り返す、上記[1]~[3]のいずれかに記載の導電粒子評価装置」であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
実施形態の一側面によれば、簡便な測定によって微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を診断可能な導電粒子評価装置及び導電粒子評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる導電粒子評価装置1の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の領域特定部102の処理対象の見本の導電粒子の二次元画像データの一例を示す図である。
【
図3】
図1の領域特定部102が取得したテンプレートデータの一例を示す図である。
【
図4】
図1の領域特定部102の評価対象の二次元画像データの一例を示す図である。
【
図5】
図1の領域特定部102の評価対象の二次元画像データの一例を示す図である。
【
図6】
図1の円領域設定部103の処理対象の二次元画像データを拡大して示す図である。
【
図7】
図1の画像生成部105によって円領域毎に生成された二値化画像の一例を示す図である。
【
図8】
図1の導電粒子評価装置1による評価値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態にかかる導電粒子評価装置及び導電粒子評価方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態にかかる導電粒子評価装置1の機能構成を示すブロック図である。本実施形態による導電粒子評価装置1は、表面が微粒子で被覆された導電粒子の被覆状態(表面状態)を評価するための情報処理装置である。
【0020】
評価対象の導電粒子は、例えば、回路接続用接着フィルムの材料として使用される導電性を有する粒子である。導電粒子としては、例えば、金、銀、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、銅、スズ、はんだ等の金属で構成された金属粒子、導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子などを用いることができる。また、導電粒子は、核(コア)粒子と、核粒子を被覆する導電性の被覆層(シェル)とを備えるコアシェル粒子であってもよい。コアシェル粒子の核粒子は、絶縁性のガラス、シリカ、シリコーン、セラミック、プラスチック等を含む粒子であってよく、上述した金属粒子であってもよい。核粒子が金属粒子の場合、コア粒子は、導電性の被覆層と同じ金属で構成されていてもよく、異なる金属で構成されていてもよい。また、核粒子は、好ましくは、絶縁性の有機コア粒子である。有機コア粒子は、有機化合物(例えばプラスチック)によって構成される粒子であり、通常、有機化合物を40質量%以上含む。有機コア粒子を構成する有機化合物としては、アクリルモノマーの重合体であるアクリル樹脂、オレフィンモノマーの重合体であるオレフィン樹脂等が挙げられる。アクリルモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン等が挙げられる。被覆層を構成する材料としては、金属又は導電性カーボンであってよい。被覆層は、金属層(金属を構成材料として含む層)であることが好ましい。金属層は、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム、タングステン、モリブデン等の金属の他、ITO、はんだ等の金属化合物などを含む材料で構成されていてもよい。金属層の構成材料としては、耐腐食性等の観点では、ニッケル、パラジウム又は金を用いることが好ましい。金属層は、金属又は金属化合物を95.0質量%以上含むことが好ましい。金属層は、導電性及び硬さを付与する観点では、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等のカーボン化合物を含んでいてもよい。
【0021】
また、導電粒子としては、金属粒子の表面に導電性を有する金属で構成された複数の突起部が形成されたものが用いられてもよい。金属粒子と突起部とは、別の金属で構成されてもよいし、同一の金属で構成されてもよい。
【0022】
導電粒子の表面に被覆される微粒子としては、例えば、有機化合物を構成材料として含む球状の微粒子(有機微粒子)であってもよく、無機化合物を構成材料として含む微粒子(無機微粒子)であってもよい。好ましくは絶縁性の有機化合物を構成材料として含む球状の微粒子である。微粒子は、有機化合物と無機化合物とを含む微粒子(有機-無機ハイブリッド微粒子)であってもよい。微粒子は、絶縁性の微粒子であることが好ましく、絶縁性の有機微粒子であることがより好ましい。微粒子は、好ましくは、極性基含有モノマーをモノマー単位として含む重合体である。このような重合体は、極性基含有モノマー由来の極性基を有する。該重合体は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。微粒子の形状は、球状であってよく、略球状であってもよい。
【0023】
導電粒子評価装置1は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、サーバ装置等に代表される情報処理装置であり、CPUと、主記憶装置であるRAM及びROMと、ハードディスク装置等の補助記憶装置と、入力デバイスである入力キー、マウス等の入力装置と、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置と、外部のネットワークを経由したデータの送受信を司る通信モジュールとを内蔵する。
【0024】
次に、
図1を参照しながら、導電粒子評価装置1の機能構成について説明する。導電粒子評価装置1は、機能的構成要素として、入力部101、領域特定部(領域特定手段)102、円領域設定部(領域特定手段)103、閾値決定部(閾値決定手段)104、画像生成部(画像生成手段)105、評価値算出部(評価値算出手段)106、及び出力部107を含んで構成される。
【0025】
入力部101は、外部から複数の導電粒子が撮像された二次元画像データの入力を受け付ける。この二次元画像データは、例えば、カーボンテープ上に採取された複数の導電粒子を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて撮像することにより生成された白黒のSEM画像である。なお、二次元画像データは、複数の導電粒子を表す二次元の濃淡像を有する画像データであればよく、SEM画像には限定されず、他の種類の顕微鏡によって取得されたものであってもよい。ここで、入力部101は、二次元画像データを、外部のネットワークを経由して入力を受け付けるように機能してもよいし、フラッシュメモリ、光ディスク等の外部記憶媒体を介して入力を受け付けるように機能してもよい。
【0026】
領域特定部102は、入力部101により受け付けられた二次元画像データを対象に画像解析を行うことにより、1つの導電粒子が含まれる二次元画像データ上の対象領域を特定する。具体的には、領域特定部102は、予め、見本の導電粒子の二次元画像データを対象にぼかし処理を施した後に、ぼかし処理を施した二次元画像データにおける導電粒子の輪郭を抽出し、その輪郭の形状を示す形状データをテンプレートデータとして取得する。また、それに合わせて、領域特定部102は、輪郭の中心等の位置を示すデータをテンプレートデータに付加する。
【0027】
図2は、領域特定部102の処理対象の見本の導電粒子の二次元画像データの一例を示す図、
図3は、領域特定部102が取得したテンプレートデータの一例を示す図である。領域特定部102は、評価対象の複数の導電粒子を撮像した二次元画像データを用いた評価値算出処理の前に、予め、見本の導電粒子の二次元画像データを取得する。この二次元画像データは評価値算出処理の対象の二次元画像データと同じ撮像方法あるいは同じ撮像条件で見本の導電粒子を撮像することで得られたものであってもよいし、異なる撮像方法あるいは異なる撮像条件で得られたものであってもよいし、描画用ソフトウェア、シミュレーション等を用いて作成されたものであってもよい。見本の導電粒子の二次元画像データG
0上には、濃度の高い(黒色に近く暗い)背景像I
Bと背景像I
Bよりも濃度の低い(白色に近く明るい)見本の導電粒子の像I
Sとが写っており、導電粒子の像I
Sには、略球状の導電粒子の本体の像I
S1と、本体と背景との境界に位置する複数の突起部の像I
S2と、本体の上に被覆された複数の略球状の微粒子の像I
S3とが含まれる(
図2)。このような二次元画像データG
0を対象にぼかし処理が施されることにより、導電粒子の像I
Sの背景との間の境界線がぼかされるとともに、微粒子の像I
S3もぼかされる。そして、ぼかし処理が施された二次元画像データG
0を対象にエッジ検出処理が行われることにより、導電粒子の輪郭の像I
E0を表すテンプレートデータが生成され、それとともに輪郭の像I
E0の中心等の代表座礁P
E0を示すデータがテンプレートデータに加えられる(
図3)。
【0028】
さらに、領域特定部102は、評価対象の複数の導電粒子を撮像した二次元画像データを対象に、予め取得したテンプレートデータを用いて、1つの導電粒子が含まれる対象領域を特定する。領域特定部102は、対象領域の特定を、二次元画像データに含まれる複数の導電粒子を対象に繰り返す。
【0029】
図4及び
図5は、領域特定部102の処理対象の評価対象の二次元画像データの一例を示す図である。評価対象の二次元画像データG
1には、複数の導電粒子の像I
STが含まれている(
図4)。このような二次元画像データG
1を対象にぼかし処理が施されることにより、複数の導電粒子の像I
STにおける背景像I
Bとの境界(輪郭)の像I
E1がぼかされ、複数の導電粒子の像I
STの内部の微粒子の像I
ST1の濃淡が目立たなくされた画像データに変換される(
図5)。さらに、ぼかし処理が施された二次元画像データG
1を対象に、予め取得されたテンプレートデータを用いて、テンプレートデータによって特定される輪郭の像I
E0とのマッチング処理が行われることによって、二次元画像データG
1から導電粒子の輪郭の像I
E1が抽出され、抽出された輪郭の像I
E1の内側の範囲が1つの導電粒子が含まれる対象領域として特定される。加えて、特定された対象領域に対して、マッチングされる過程で回転及び縮小された輪郭の像I
E0の代表座礁P
E0に対応する二次元画像データG
1上の座標P
E1が、対象領域の代表座礁として特定される。
【0030】
円領域設定部103は、二次元画像データ上で領域特定部102によって特定された対象領域の位置を基準に対象領域の内側の円領域を設定する。そして、円領域設定部103は、領域特定部102によって特定された複数の対象領域毎に円領域の設定を繰り返す。
【0031】
図6は、円領域設定部103の処理対象の二次元画像データを拡大して示す図である。円領域設定部103によって、領域特定部102によるぼかし処理前の二次元画像データG
1を用いて、その二次元画像データG
1上で、対象領域の代表座標P
E1を中心とした所定半径の円形の範囲内を円領域R
C1として設定する。このようにして、円領域R
C1は二次元画像データG
1上で代表座標P
E1を基準とした規定円として設定され、円領域R
C1の半径がその領域が1つの導電粒子の像I
STの内側になるような値に設定される。
【0032】
閾値決定部104は、円領域設定部103によって設定された二次元画像データG1の円領域RC1内の全画素の輝度値の平均値を基準にして、円領域RC1内の画像を二値化するための閾値を決定する。この閾値は、円領域RC1内の画素を、導電粒子の像ISTの表面と微粒子の像IST1との間の濃淡の差を基に導電粒子の像ISTの表面の画素か微粒子の像IST1の画素かを判別するための値として決定される。例えば、導電粒子の像ISTの表面が微粒子の像IST1よりも輝度値が比較的高くなるという性質に基づいて、閾値は、円領域RC1内の全画素の輝度値の平均値に対して、所定係数を乗算して、所定定数を減算あるいは加算した値に決定される。さらに、閾値決定部104は、領域特定部102によって特定された複数の対象領域毎に閾値の決定を繰り返す。
【0033】
画像生成部105は、領域特定部102によるぼかし処理前の二次元画像データG1を対象にして、円領域設定部103によって設定された円領域RC1毎に、閾値決定部104によって決定された閾値を基に、円領域RC1内の画像データを2つの画素値(例えば、“1”と“0”)に二値化して二値化画像を生成する。そして、画像生成部105は、領域特定部102によって特定された複数の対象領域毎に二値化画像の生成を繰り返す。
【0034】
図7は、画像生成部105によって円領域R
C1毎に生成された二値化画像G
2の一例を示す図である。このように、画像生成部105による二値化処理によって、円領域R
C1内の導電粒子の像I
STの表面の画素の輝度値が2つの画素値(“1”と“0”)のうちの一方の値“1”に変換され、微粒子の像I
ST1の画素が他方の値“0”に変換された二値化画像G
2が生成される。生成された二値化画像G
2を参照することによって、円領域R
C1における、導電粒子の像I
STの表面の黒画像の領域と微粒子の像I
ST1の白画像の領域とを区別することができる。
【0035】
評価値算出部106は、画像生成部105によって二次元画像データG1上の複数の円領域RC1を対象に生成された二値化画像G2を用いて、複数の導電粒子における微粒子の被覆状態を評価する評価値を算出する。評価値算出部106は、この評価値の算出を、領域特定部102によって特定された複数の対象領域毎に繰り返す。詳細には、評価値算出部106は、円領域RC1内における全体の画素数に対する、二値化の2つの画素値のうちのいずれかを有する画素の数、例えば、白画像(画素値“0”)の画素数の比率を算出する。このようにして計算された評価値は、導電粒子の表面における微粒子の被覆率(被覆状態)を意味する。
【0036】
出力部107は、評価値算出部106によって算出された複数の導電粒子に関する被覆率の評価値を出力する。出力する評価値としては、複数の導電粒子の被覆率自体であってもよいし、複数の導電粒子の被覆率の平均値等の代表値であってもよい。例えば、出力部107は、これらの評価値をディスプレイの出力装置に出力することもできるし、通信モジュールを介して外部に送信することもできる。
【0037】
次に、
図8を参照しながら、導電粒子評価装置1による評価値算出処理の手順を説明するとともに、本実施形態にかかる導電粒子評価方法について詳述する。
図8は、
図1の導電粒子評価装置1による評価値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0038】
まず、入力部101により二次元画像データの入力が受け付けられると、領域特定部102によって、予め見本の導電粒子の二次元画像データを用いて取得されたテンプレートデータを用いて、二次元画像データにおける複数の対象領域が繰り返し特定される(ステップS101)。次に、円領域設定部103により、二次元画像データ上で特定された1つの対象領域の位置を基準に対象領域の内側の円領域が設定される(ステップS102)。さらに、閾値決定部104により、二次元画像データの円領域内の全画素の輝度値を基に二次元画像データの二値化のための閾値が決定される(ステップS103)。
【0039】
その後、画像生成部105により、閾値を用いて二次元画像データが対象領域内で二値化されて、二値化画像が生成される(ステップS104)。さらに、評価値算出部106により、二値化画像を利用して円領域内における全画素数に対する白画像の画素数の比率が評価値として算出される(ステップS105)。
【0040】
上記のステップS102~S105の処理は、ステップS101において特定された複数の対象領域毎に繰り返し実行される(ステップS106)。それにより、複数の導電粒子が含まれるロット毎の導電粒子の品質の評価が可能となる。
【0041】
最後に、出力部107により、二次元画像データに含まれる複数の導電粒子に関する被覆率の評価値が出力される(ステップS107)。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る導電粒子評価装置1では、不規則な断面形状を有する導電粒子の領域の内側に円領域RC1が設定され、設定された円領域RC1内の画像を基に、簡便な計算方法によって微粒子の存在する画素が二値化画像G2として検出され、円領域RC1内における二値化画像の画素数の比率を基に、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態の評価値が算出される。これにより、微粒子で被覆された導電粒子の表面状態を簡便な方法で適切に評価することができる。例えば、このような評価装置或いは評価方法は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等の汎用の情報処理装置によって容易に実現できる。
【0043】
ここで、導電粒子評価装置1においては、領域特定部102が、対象領域の代表座標PE1を基準にした規定円を円領域RC1として設定している。これにより、二次元画像上で導電粒子の内側の領域を安定して設定することができる。その結果、導電粒子の表面における微粒子の被覆状態を安定して評価することができる。
【0044】
また、導電粒子評価装置1においては、閾値決定部104が、円領域RC1内の輝度値の平均値を基準に閾値を決定している。この場合、円領域RC1内から微粒子の画素を判別するための閾値を適切に設定することができ、導電粒子の表面における被覆状態を精度よく評価することができる。
【0045】
また、導電粒子評価装置1においては、円領域設定部103、閾値決定部104、画像生成部105、及び評価値算出部106が、二次元画像データ上で複数の導電粒子毎に特定した複数の対象領域を対象に、円領域RC1の設定、閾値の決定、二値化画像G2の生成、及び評価値の算出を繰り返し実行している。この場合、複数の導電粒子が写った二次元画像データを対象にした場合に、複数の導電粒子の表面の被覆状態に関する複数の評価値を連続的に得ることができ、導電粒子を含む材料のロットごとに効率的に評価結果を得ることができる。
【0046】
本開示による導電粒子評価装置及び導電粒子評価方法は、上述した実施形態の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0047】
例えば、上述した実施形態にかかる導電粒子評価装置1による評価値算出処理の手順には、以下のようなステップが付加されていてもよい。
【0048】
すなわち、導電粒子評価装置1において、予め、見本の1つの微粒子の二次元画像データ、あるいは、見本の1つの微粒子の二値化画像が取得される。この二次元画像データあるいは二値化画像は複数取得されてもよい。そして、ステップS104の処理の後に、画像生成部105において、生成した二次元画像と、見本の微粒子の二次元画像データあるいは二値化画像とが比較されることにより、複数の微粒子に対応する真の白画像領域が検出される。その後、ステップS107では、評価値算出部106は、検出した微粒子の白画像領域を基に、上述した方法を用いて被覆状態に関する評価値を算出することもできる。そして、ステップS107において、出力部107によって、評価値が出力されるとともに、評価値の算出対象の二値化画像上に複数の微粒子の領域の位置がマーキングされた画像が出力される。ただし、このマーキングされた画像は出力されなくてもよい。
【0049】
上記変形例によれば、導電粒子の凹凸あるいは突起部を微粒子として誤検出することが防止され、被覆率の評価の精度が向上する。
【符号の説明】
【0050】
1…導電粒子評価装置、102…領域特定部(領域特定手段)、103…円領域設定部(領域特定手段)、104…閾値決定部(閾値決定手段)、105…画像生成部(画像生成手段)、106…評価値算出部(評価値算出手段)、G0…二次元画像データ、G2…二値化画像、IE1…輪郭の像(対象領域)、PE1…代表座標、RC1…円領域。