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特開2023-181789ヒートシンク及びその製造方法、並びに冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181789
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ヒートシンク及びその製造方法、並びに冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095131
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 一夫
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA06
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA31
5F136GA13
(57)【要約】
【課題】鍛造成形に適し、放熱効果が高いヒートシンクを提供することである。
【解決手段】本発明のヒートシンク1は、板状のベース部2と、ベース部2の一方の面に立設された複数のピンフィン3とを有するヒートシンクであって、複数のピンフィン3の少なくとも一部は平面視して、略菱形形状を有し、前記略菱形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部は共通の内接円に接するように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に立設された複数のピンフィンとを有するヒートシンクであって、
前記複数のピンフィンの少なくとも一部は平面視して、略菱形形状を有し、前記略菱形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部は共通の内接円に接するように形成されている、ヒートシンク。
【請求項2】
板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に立設された複数のピンフィンとを有するヒートシンクであって、
前記複数のピンフィンの少なくとも一部は平面視して、略正方形形状であって、前記正方形形状における一対の仮想対角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部は共通の内接円に接するように形成されている、ヒートシンク。
【請求項3】
板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に立設された複数のピンフィンとを有するヒートシンクであって、
前記複数のピンフィンの少なくとも一部は平面視して、略平行四辺形形状を有し、前記略平行四辺形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部はいずれも、同じ半径の内接円に接するように形成されている、ヒートシンク。
【請求項4】
前記内接円の直径が1mm~20mmの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記略菱形形状の一対の仮想鋭角部位のそれぞれに、前記仮想鈍角部位のR形状の曲率半径よりも小さい曲率半径を有するR形状部を有する、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記略平行四辺形形状の一対の仮想鋭角部位のそれぞれに、前記仮想鈍角部位のR形状の曲率半径よりも小さい曲率半径を有するR形状部を有する、請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記複数のピンフィンはそれぞれ、第1方向と、第1方向に対して垂直な第2方向に間隔をあけて配置されていて、
前記第1方向および前記第2方向の少なくとも一つの方向において、中央側に位置する前記ピンフィンの水平断面積よりも、外側に位置する前記ピンフィンの水平断面積が大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記複数のピンフィンはそれぞれ、第1方向と、第1方向に対して垂直な第2方向に間隔をあけて配置されていて、
前記第1方向および前記第2方向の少なくとも一つの方向において、中央側に位置する前記ピンフィンの水平断面積よりも、外側に位置する前記ピンフィンの水平断面積が小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項9】
鍛造で成形された、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシンクを製造する方法であって、前記ピンフィンの内接円のR寸法に対する、ノックピンのR寸法の差が0.5mm以下であるノックピンを用いて鍛造成型の排出を行う、ヒートシンクの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載のヒートシンクを有する冷却装置であって、
前記ピンフィンが、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が冷却媒体の流動方向と平行になるように配置されている、冷却装置。
【請求項12】
請求項2に記載のヒートシンクを有する冷却装置であって、
前記ピンフィンが、他の一対の仮想対角部位を結ぶ方向が冷却媒体の流動方向と平行になるように配置されている、冷却装置。
【請求項13】
請求項3に記載のヒートシンクを有する冷却装置であって、
前記ピンフィンが、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が冷却媒体の流動方向と平行になるように配置されている、冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク及びその製造方法、並びに冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンクとして、板状のベース部と、このベース部の一方の表面に設けられた複数のピンフィンとを含む構造のものが知られている。このような構造のヒートシンクを製造する方法として、鍛造法が知られている。鍛造法としては、複数の孔を有するダイスの上に、ヒートシンクの原料である金属材料を配置し、パンチを用いて金属材料をダイスに向けて加圧することによって、金属材料をダイスの外周方向に延伸させてベース部を形成させると共に、複数の孔のそれぞれに流入させてピンフィンを形成させる方法が知られている。ダイスを用いた鍛造法には、バリ出し工法(半密閉工法ともいう)と密閉工法とが知られている。バリ出し工法は、パンチとダイスとの間に隙間が設けられていて、複数の孔に流入しなかった金属材料をその隙間から外部に流出させる工法である。密閉工法は、パンチとダイスとの間に隙間を設けずに、金属材料をパンチとダイスとの間に密閉する工法である。
【0003】
ヒートシンクのピンフィンの形状として幅方向の断面が略菱形形状で、角部がR形状を有するものが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
特許文献1には、その略菱形形状断面の長手方向を冷却媒体の流動方向に沿うように配置するヒートシンクが開示されている。また、かかるヒートシンクの効果として、冷却媒体への放熱効果が高いこと、ピンフィンが冷却媒体の流動方向に長く延びる形状となるため、冷却媒体の流動方向におけるピンフィンの剛性を十分に確保することができ、また、ピンフィンによる流路抵抗が低減されることにより、冷却媒体がピンフィン群を通過する際の圧力損失の増大を抑制することができること等が記載されている。
【0005】
特許文献2には、略菱形の断面の、それぞれの角部が同じ曲率半径となるようにR面取り加工されたピンフィンが示されており(段落0066、図5参照)、ピンフィンの一例として略菱形の断面のそれぞれの辺の長さLが1.8mmから2.0mmで、それぞれの角部に曲率半径Rが0.1mmから0.2mmの丸みを有するものが記載されている(段落0067)。また、このピンフィンの例の場合、ピンフィンの角部の曲率半径Rが0.2mmのときに半導体チップ-冷却水間の熱抵抗Rth(j-w)[℃/W]が最小になることが示されている(段落0067、図6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-75385号公報
【特許文献2】特開2020-92250号公報
【特許文献3】特開2018-133350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
菱形形状断面を有するピンフィンを備えたヒートシンクの製造方法として切削加工が広く知られているが(例えば、特許文献2、特許文献3参照)、一般に加工時間が長く、材料歩留まりも低いため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
略菱形形状の断面を有し、その角部がR形状であるピンフィンの効果を保持しつつ、非常に短時間で歩留まりよく、鍛造成形によってピンフィンを製造できるのに適したピンフィンの構成を見い出した。さらに、略正方形形状の断面、及び、略平行四辺形形状の断面を有するピンフィンについても同様の効果が得られることに想到して、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、鍛造成形に適し、放熱効果が高いヒートシンク及びその製造方法、並びに冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0011】
本発明の態様1は、板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に立設された複数のピンフィンとを有するヒートシンクであって、前記複数のピンフィンの少なくとも一部は平面視して、略菱形形状を有し、前記略菱形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部は共通の内接円に接するように形成されているヒートシンクである。
【0012】
本発明の態様2は、板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に立設された複数のピンフィンとを有するヒートシンクであって、前記複数のピンフィンの少なくとも一部は平面視して、略正方形形状であって、前記正方形形状における一対の仮想対角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部は共通の内接円に接するように形成されているヒートシンクである。
【0013】
本発明の態様3は、板状のベース部と、前記ベース部の一方の面に立設された複数のピンフィンとを有するヒートシンクであって、前記複数のピンフィンの少なくとも一部は平面視して、略平行四辺形形状を有し、前記略平行四辺形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部を有し、その一対のR形状部はいずれも、同じ半径の内接円に接するように形成されているヒートシンクである。
【0014】
本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか一つのヒートシンクにおいて、前記内接円の直径が1mm~20mmの範囲である。
【0015】
本発明の態様5は、態様1に記載のヒートシンクであって、前記略菱形形状の一対の仮想鋭角部位のそれぞれに、前記仮想鈍角部位のR形状の曲率半径よりも小さい曲率半径を有するR形状部を有する。
【0016】
本発明の態様6は、態様3のヒートシンクであって、前記略平行四辺形形状の一対の仮想鋭角部位のそれぞれに、前記仮想鈍角部位のR形状の曲率半径よりも小さい曲率半径を有するR形状部を有する。
【0017】
本発明の態様7は、態様1~態様3のいずれか一つのヒートシンクにおいて、前記複数のピンフィンはそれぞれ、第1方向と、第1方向に対して垂直な第2方向に間隔をあけて配置されていて、前記第1方向および前記第2方向の少なくとも一つの方向において、中央側に位置する前記ピンフィンの水平断面積よりも、外側に位置する前記ピンフィンの水平断面積が大きい。
【0018】
本発明の態様8は、態様1~態様3のいずれか一つのヒートシンクにおいて、 前記複数のピンフィンはそれぞれ、第1方向と、第1方向に対して垂直な第2方向に間隔をあけて配置されていて、前記第1方向および前記第2方向の少なくとも一つの方向において、中央側に位置する前記ピンフィンの水平断面積よりも、外側に位置する前記ピンフィンの水平断面積が小さい。
【0019】
本発明の態様9は、態様1~態様3のいずれか一つのヒートシンクにおいて、鍛造で成形されたものである。
【0020】
本発明の態様10は、態様1~態様3のいずれか一つのヒートシンクを製造する方法であって、前記ピンフィンの内接円のR寸法に対する、ノックピンのR寸法の差が0.5mm以下であるノックピンを用いて鍛造成型の排出を行う、ヒートシンクの製造方法である。
【0021】
本発明の態様11は、態様1のヒートシンクを有する冷却装置であって、前記ピンフィンが、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が冷却媒体の流動方向と平行になるように配置されている、冷却装置である。
【0022】
本発明の態様12は、態様2のヒートシンクを有する冷却装置であって、前記ピンフィンが、他の一対の仮想対角部位を結ぶ方向が冷却媒体の流動方向と平行になるように配置されている、冷却装置である。
【0023】
本発明の態様13は、態様3のヒートシンクを有する冷却装置であって、前記ピンフィンが、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が冷却媒体の流動方向と平行になるように配置されている、冷却装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のヒートシンクによれば、鍛造成形に適し、放熱効果が高いヒートシンクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るヒートシンクの平面図である。
図2】(a)は、図1に示すヒートシンクが備えるピンフィンの形状を示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX1-X1’で切った縦断面図であり、(b)は、図2(a)で示したピンフィンの変形例の形状を示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX2-X2’で切った縦断面図である。
図3】(a)は、図2(b)で示したピンフィンと縦断面が異なる変形例であり、(b)は、図2(b)で示したピンフィンと縦断面が異なる他の変形例である。
図4図1に示したヒートシンクが備える、他の形状のピンフィンを示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX3-X3’で切った縦断面図である。
図5】(a)は、図4に示したピンフィンと縦断面が異なる変形例であり、(b)は、図4に示したピンフィンと縦断面が異なる他の変形例である。
図6図1に示したヒートシンクが備える、他の形状のピンフィンを示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX4-X4’で切った縦断面図である。
図7】(a)は、図6に示したピンフィンと縦断面が異なる変形例であり、(b)は、図6に示したピンフィンと縦断面が異なる他の変形例である。
図8】本発明の他の実施形態に係るヒートシンクの平面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係るヒートシンクの平面図である。
図10】本実施形態のヒートシンクの製造方法で用いることができる鍛造装置の断面図である。
図11】(a)は、金属材料Mが図2(a)のX1-X1’方向で切った断面を示すような位置で切った断面図であり、(b)は、金属材料Mが図2(a)のY1-Y1’方向で切った断面を示すような位置で切った断面図である。
図12】ピンフィンのR形状部が内接円に接するように形成されていない場合の図11(b)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るヒートシンク及びヒートシンクの製造方法について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0027】
[ヒートシンク]
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートシンクの平面図である。図2(a)は、図1に示すヒートシンクが備えるピンフィンの形状を示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX1-X1’で切った縦断面図である。図2(b)は、図2(a)で示したピンフィンの変形例の形状を示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX2-X2’で切った縦断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のヒートシンク1は、板状のベース部2と、ベース部2の一方の面に設けられた複数のピンフィン3とを含む。
【0029】
ベース部2は、ピンフィン3の土台となる部分である。ベース部2の形状は特に制限はない。ベース部2の平面形状は、例えば、円や楕円形などの丸みを有する形状であってもよいし、四角形(長方形、正方形)、六角形、八角形などの多角形状あってもよい。ベース部2の厚さは、例えば、0.5mm以上20mm以下の範囲内にあってもよい。ベース部2のピンフィン3側の面は平坦であることが好ましい。ベース部2のピンフィン3側と反対側の面は、平坦であってもよいし、段差があってもよい。例えば、ベース部2のピンフィン3側と反対側の面は、中央に凸部あるいは凹部を設けてもよい。
【0030】
複数のピンフィン3はそれぞれ、ベース部2の表面に対して垂直な方向(Z方向)に延びている。複数のピンフィン3はそれぞれ、ベース部2の表面に沿う第1方向(X方向、行方向ともいう)と、第1方向に対して垂直な第2方向(Y方向、列方向ともいう)に間隔をあけて配置されている。複数のピンフィン3は第1方向に交互にずれた千鳥状に配置されている。図1に示すピンフィンの配置は一例であって、これに限定されない。ピンフィンの配置は所定の規則的な配置であることが好ましい。
【0031】
図2(a)に示すように、ピンフィン3(以下、図2(a)に示すピンフィン3は特にピンフィン3Aと称することがある。)は平面視して、略菱形形状を有し、略菱形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部3Aa1、3Aa2を有し、その一対のR形状部(丸みを有する部、丸み形状部)は共通の内接円R(半径:R)に接するように形成されている。従って、R形状部3Aa1、3Aa2の曲率半径はRである。
本明細書において、R形状部が「内接円に接する」とは、1点で接する場合だけではなく、R形状部全体又はR形状部の一部が、内接円の一部に一致する場合を含む。内接円と±0.5mm以内で一致する範囲をR形状部とする。
菱形の場合、2つの対角線の交点に対して2回対称であるため、R形状部3Aa1及びR形状部3Aa2の内接円が共通するものとなる。図2(a)に示すピンフィン3Aは、一対の仮想鈍角部位に直交する、一対の鋭角部位3Ab1、3Ab2は丸みを有さない形状である。
図2(a)に示すピンフィン3Aは縦断面図で示すように、ベース部2から垂直に立設された菱形柱である。
ピンフィン3が平面視して略菱形形状を有するとは、ピンフィン3の上端面(図2の符号3A-a、符号3B-a、図3の符号3B-1a、3B-2aで示す面)の形状が略菱形形状を有することを意味する。
【0032】
略菱形形状において仮想鈍角部位のR形状部が内接円に接する形状に形成されている場合には以下の効果を奏する。
ヒートシンク1のピンフィン3Aを鍛造成形する際、鋭角部位(鋭角側)はダイス孔側壁との摩擦抵抗によって最後に成形される。一方、鋭角部位に比べて鈍角部位(鈍角側)は摩擦抵抗が小さいため、鈍角側は鋭角側よりも早くピンフィンの先端の成形が完了する。鈍角側のR形状部が内接円よりも小さいと、金型(ダイス)の孔とノックピン(例えば、通常用いられる円柱状のノックピン)との間に隙間が発生し、その隙間に鍛造用素材としての金属材料が流動してしまう。すると、ノックピン先端の高さに差が発生し、ノックピン先端の切削加工コストが大きくなってしまう。また、ノックピンで金型から製品を排出する際、ノックピンに金属材料が咥え込むようになるため、製品の取り出しができずに、ノックピンが曲がったり、傷をつけるリスクが高まる。また、ノックピン先端から金属材料が剥がれ落ちる可能性もあり、その金属材料が金型上面に残ってしまうと、次の鍛造において打ち込み不良が発生することになる。
これに対して、仮想鈍角部位のR形状部が内接円に接する形状に形成されている場合には、金型(ダイス)の孔とノックピン(例えば、通常用いられる円柱状のノックピン)との間に隙間がほぼなくなりあるいは非常に小さくなり、隙間への金属材料の差し込みが抑制されるため、製品の排出がスムーズになる。また、先に成形が完了する鈍角側の金属材料が鋭角側へ流動して、ピンフィンを成形しやすくなる。
【0033】
なお、本明細書において、「略菱形形状」、「略平行四辺形形状」、「略正方形形状」とは、R形状部を有すること以外は、菱形形状、平行四辺形形状、正方形形状である形状を意味する。また、本明細書において、「仮想鈍角部位」における“仮想”とは、本来の菱形であれば、鈍角の部位であるが、その鈍角の部位がR形状部となっていて角度を規定できない形状であり、R形状部の位置が本来の菱形の鈍角の部位であることを意味することを意図した語である。「仮想鋭角部位」における“仮想”も同様の意図を込めた語である。
【0034】
図1に示すヒートシンクは、複数のピンフィンがすべて、平面視して、略菱形形状を有する構成であるが、一部のピンフィンだけが平面視して、略菱形形状を有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけが平面視して、略菱形形状を有する構成である場合、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンを平面視して、略菱形形状を有する構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンを平面視して、略菱形形状を有する構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンを平面視して、略菱形形状を有する構成とすることがさらに好ましい。
【0035】
ピンフィン3Aのサイズとして、内接円の直径(2R)が1mm~20mmの範囲とすることができる。R形状部を有する略菱形形状のピンフィン3Aがこの範囲のサイズのときは、略菱形形状のノックピンと円柱状ノックピンの製作費との差が大きいため、R形状部の内接円と同一断面形状を有する円柱状のノックピンを用いることで、略菱形形状のノックピンを用いる場合と比べて、ピンフィン3Aを有するヒートシンクを安価に製造することができる。
【0036】
図1に示すヒートシンクにおいて、複数のピンフィンはすべて、一対の鋭角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置されている。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成されたものとすることができる。
【0037】
図2(b)は、図2(a)で示したピンフィンの変形例である。
図2(b)に示すピンフィン3Bは平面視して、略菱形形状を有し、略菱形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部3Ba1、3Ba2を有し、その一対のR形状部は共通の内接円C(半径:R)に接するように形成されている点は図2(a)に示すピンフィンと同じであるが、一対の仮想鈍角部位と直交する方向にある、一対の仮想鋭角部位もRを有する(丸みを有する)R形状部3Bb1、3Bb2である点が図2(a)に示すピンフィンと異なる。
また、図2(b)に示すピンフィン3Bも縦断面図で示すように、ベース部2から垂直に立設された略菱形柱である。
【0038】
図1に示すヒートシンクが図2(b)に示すピンフィン3Bを備える場合、複数のピンフィンがすべて、図2(b)に示すピンフィン3Bを有する構成としてもよいし、一部のピンフィンだけが図2(b)に示すピンフィン3Bを有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけが図2(b)に示すピンフィン3Bある場合、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンが図2(b)に示すピンフィン3Bである構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンが図2(b)に示すピンフィン3Bである構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンが図2(b)に示すピンフィン3Bである構成とすることがさらに好ましい。
【0039】
図1に示すヒートシンクが図2(b)に示すピンフィン3Bを備える場合、複数のピンフィン3Bがすべて、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0040】
図3(a)、(b)に、図2(b)で示したピンフィンと縦断面が異なる変形例を示す。図3(a)、(b)のそれぞれ、図2と同様に、上に示すのが平面図であり、下に示すのは縦断面図である。
【0041】
図3(a)に示すピンフィン3B-1は上端面3B-1aと下端面3B-1bとその間の側面(傾斜側面)3B-1cによって囲まれ、上端面3B-1aから下方のベース部2に近づくほど、相似形で連続的に横断面(XY面)の面積が拡大する構成である。図3(a)に示すように縦断面は台形状である。
【0042】
図3(b)に示すピンフィン3B-2は上端面3B-2aと下端面3B-2bとその間に上端面3B-2a側から順に、側面(テーパー側面)3B-2d、側面(垂直側面)3B-2cによって囲まれ、上端面3B-2a側から下方に向かって相似形で連続的に横断面(XY面)の面積が拡大する部分(テーパー側面3B-2dを有する部分)と、横断面(XY面)の面積が一定の部分(垂直側面3B-2cを有する部分)とを有する構成である。
【0043】
図1に示したヒートシンクが図3(a)に示すピンフィン3B-1を備える場合、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2を備える場合、複数のピンフィンがすべて、図3(a)に示すピンフィン3B-1を有する構成、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2を有する構成としてもよいし、一部のピンフィンだけが図3(a)に示すピンフィン3B-1を有する構成、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2を有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけが図3(a)に示すピンフィン3B-1である構成である場合、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2を有する構成である場合に、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンが図3(a)に示すピンフィン3B-1である構成、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2である構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンが図3(a)に示すピンフィン3B-1である構成、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2である構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンが図3(a)に示すピンフィン3B-1である構成、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2である構成とすることがさらに好ましい。
【0044】
図1に示したヒートシンクがピンフィン3B-1を有する構成である場合、又は、図3(b)に示すピンフィン3B-2を有する構成である場合、複数のピンフィン3B-1、又は、複数のピンフィン3B-2がすべて、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0045】
ピンフィン形状を上述したような平面視して、略菱形形状を有するものとすることによって、鍛造成形する場合、非常に短時間で、歩留まりよくヒートシンクを製造できる。
菱形形状のピンフィンを有するヒートシンクを製造する際、角部が丸みを有さない、尖ったエッジである場合、鍛造成形時にその部分に応力が集中し、鍛造金型(ダイス)が短寿命となり、安価な製造を困難にする。そのため、ダイス孔(図10の符号113)の角部に応力集中を緩和するためのR形状を付与する。
また、ピンフィンを成形するためのダイス孔に、鍛造成形後に金型から製品を排出するためのノックピン(図10の符号118)がセットされる。ノックピンの形状をダイス孔と同じ菱形形状とすることが望ましいが、菱形形状のノックピンを製造することは難しく、安価な製造を困難にする。そこで、ダイス孔形状の菱形形状の鈍角側のR形状を内接円に接する形状とし、その内接円と同一断面形状を有する円柱状のノックピンとすることで、ノックピンの製造を安価とし、鍛造成形をより安価に行うことができるものとなる。
【0046】
図4は、図1に示したヒートシンクが備える、他の形状のピンフィンを示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX3-X3’で切った縦断面図である。
図4に示すピンフィン3Cは、平面視して、略正方形形状(1辺:L)を有し、略正方形形状における一対の仮想対角部位のそれぞれにR形状部3Ca1、3Ca2を有し、その一対のR形状部は共通の内接円C(半径:R)に接するように形成されている。一対の仮想対角部位に直交する、一対の対角部位3Cb1、3Cb2は丸みを有さない形状である。
また、ピンフィン3Cは縦断面図で示すように、ベース部2から垂直に立設された略直方体である。
【0047】
図1に示したヒートシンクが図4に示すピンフィン3Cを備える場合、複数のピンフィンがすべて、図4に示すピンフィン3Cを有する構成としてもよいし、一部のピンフィンだけが図4に示すピンフィン3Cを有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけがピンフィン3Cを有する構成である場合、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンが図4に示すピンフィン3Cである構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンが図4に示すピンフィン3Cである構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンが図4に示すピンフィン3Cである構成とすることがさらに好ましい。
【0048】
ピンフィン3Cのサイズとして、内接円の直径(2R)が1mm~20mmの範囲とすることができる。R形状部を有する略正方形形状のピンフィン3Cがこの範囲のサイズのときは、略正方形形状のノックピンと円柱状ノックピンの製作費との差が大きいため、R形状部の内接円と同一断面形状を有する円柱状のノックピンを用いることで、略正方形形状のノックピンを用いる場合と比べて、ピンフィン3Cを有するヒートシンクを安価に製造することができる。
【0049】
図1に示したヒートシンクが図4に示すピンフィン3Cを備える場合、複数のピンフィンがすべて、他の一対の仮想対角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0050】
図4に示す略正方形形状のピンフィン3Cについても、図5(a)、(b)に示すように、上述した略菱形形状のピンフィン3Bの変形例(図3(a)、(b))と同様な変形が可能である。
【0051】
図5(a)に示すピンフィン3C-1は上端面3C-1aと下端面3C-1bとその間の側面(傾斜側面)3C-1cによって囲まれ、上端面3C-1aから下方のベース部2に近づくほど、相似形で連続的に横断面(XY面)の面積が拡大する構成である。図5(a)に示すように縦断面は台形状である。
【0052】
図5(b)に示すピンフィン3C-2は上端面3C-2aと下端面3C-2bとその間に上端面3C-2a側から順に、側面(テーパー側面)3C-2d、側面(垂直側面)3C-2cによって囲まれ、上端面3C-2a側から下方に向かって相似形で連続的に横断面(XY面)の面積が拡大する部分(テーパー側面3C-2dを有する部分)と、横断面(XY面)の面積が一定の部分(垂直側面3C-2cを有する部分)とを有する構成である。
【0053】
図1に示したヒートシンクが図5(a)に示すピンフィン3C-1を備える場合、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2を備える場合、複数のピンフィンがすべて、図5(a)に示すピンフィン3C-1を有する構成、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2を有する構成としてもよいし、一部のピンフィンだけが図5(a)に示すピンフィン3C-1を有する構成、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2を有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけが図5(a)に示すピンフィン3C-1である構成である場合、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2を有する構成である場合に、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンが図5(a)に示すピンフィン3C-1である構成、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2である構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンが図5(a)に示すピンフィン3C-1である構成、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2である構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンが図5(a)に示すピンフィン3C-1である構成、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2である構成とすることがさらに好ましい。
【0054】
図1に示したヒートシンクがピンフィン3C-1を有する構成である場合、又は、図5(b)に示すピンフィン3C-2を有する構成である場合、複数のピンフィン3C-1、又は、複数のピンフィン3C-2がすべて、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0055】
ピンフィン形状を上述したような平面視して、略正方形形状を有するものとすることによって、鍛造成形する場合、非常に短時間で、歩留まりよくヒートシンクを製造できる。
正方形形状のピンフィンを有するヒートシンクを製造する際、角部が丸みを有さない、尖ったエッジである場合、鍛造成形時にその部分に応力が集中し、鍛造金型(ダイス)が短寿命となり、安価な製造を困難にする。そのため、ダイス孔の角部に応力集中を緩和するためのR形状を付与する。
また、ノックピンの形状をダイス孔と同じ正方形形状とすることが望ましいが、正方形形状のノックピンを製造することは難しく、安価な製造を困難にする。そこで、ダイス孔形状の正方形形状の一対の対角側のR形状を内接円に接する形状とし、その内接円と同一断面形状を有する円柱状のノックピンとすることで、ノックピンの製造を安価とし、鍛造成形をより安価に行うことができるものとなる。
【0056】
図6は、図1に示したヒートシンクが備える、他の形状のピンフィンを示す図であり、上に示すのが平面図であり、下に示すのはX4-X4’で切った縦断面図である。
図6に示すピンフィン3Dは、平面視して、略平行四辺形形状(短辺:L、長辺:L)を有し、略平行四辺形形状における一対の仮想鈍角部位のそれぞれにR形状部3Da1、3Da2を有し、その一対のR形状部はいずれも、同じ半径の内接円C21、C22(半径:R)に接するように形成されている。また、図6に示すピンフィン3Dは、一対の仮想鈍角部位に直交する、一対の仮想鋭角部位もRを有する(丸みを有する)R形状部3Db1、3Db2を有する構成であるが、一対の鋭角部位が丸みを有さない構成であってもよい。
また、ピンフィン3Dは縦断面図で示すように、ベース部2から垂直に立設された略直方体である。
【0057】
図1に示したヒートシンクが図6に示すピンフィン3Dを備える場合、複数のピンフィンがすべて、図6に示すピンフィン3Dを有する構成としてもよいし、一部のピンフィンだけが図6に示すピンフィン3Dを有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけが図6に示すピンフィン3Dある場合、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンが図6に示すピンフィン3Dである構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンが図6に示すピンフィン3Dである構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンが図6に示すピンフィン3Dである構成とすることがさらに好ましい。
【0058】
ピンフィン3Dのサイズとして、内接円の直径(2R)が1mm~20mmの範囲とすることができる。R形状部を有する略平行四辺形形状のピンフィン3Dがこの範囲のサイズのときは、略平行四辺形形状のノックピンと円柱状ノックピンの製作費との差が大きいため、R形状部の内接円と同一断面形状を有する円柱状のノックピンを用いることで、略平行四辺形形状のノックピンを用いる場合と比べて、ピンフィン3Dを有するヒートシンクを安価に製造することができる。
【0059】
図1に示したヒートシンクが図6に示すピンフィン3Dを備える場合、複数のピンフィン3Dがすべて、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0060】
図7に示す略平行四辺形形状のピンフィン3Dについても、図7(a)、(b)に示すように、上述した略菱形形状のピンフィン3Bの変形例(図3(a)、(b))や略正方形形状のピンフィン3Cの変形例(図5(a)、(b))と同様な変形が可能である。
【0061】
図7(a)に示すピンフィン3D-1は上端面3D-1aと下端面3D-1bとその間の側面(傾斜側面)3D-1cによって囲まれ、上端面3D-1aから下方のベース部2に近づくほど、相似形で連続的に横断面(XY面)の面積が拡大する構成である。図7(a)に示すように縦断面は台形状である。
【0062】
図7(b)に示すピンフィン3D-2は上端面3D-2aと下端面3D-2bとその間に上端面3D-2a側から順に、側面(テーパー側面)3D-2d、側面(垂直側面)3D-2cによって囲まれ、上端面3D-2a側から下方に向かって相似形で連続的に横断面(XY面)の面積が拡大する部分(テーパー側面3D-2dを有する部分)と、横断面(XY面)の面積が一定の部分(垂直側面3D-2cを有する部分)とを有する構成である。
【0063】
図1に示したヒートシンクが図7(a)に示すピンフィン3D-1を備える場合、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2を備える場合、複数のピンフィンがすべて、図7(a)に示すピンフィン3D-1を有する構成、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2を有する構成としてもよいし、一部のピンフィンだけが図7(a)に示すピンフィン3D-1を有する構成、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2を有する構成としてもよい。
一部のピンフィンだけが図7(a)に示すピンフィン3D-1である構成である場合、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2を有する構成である場合に、例えば、全ピンフィンのうち、70%以上のピンフィンが図7(a)に示すピンフィン3D-1である構成、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2である構成とすることが好ましい。本発明の効果をより向上させるためにはその割合を高くすることが好ましく、例えば、80%以上のピンフィンが図7(a)に示すピンフィン3D-1である構成、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2である構成とすることがより好ましく、90%以上のピンフィンが図7(a)に示すピンフィン3D-1である構成、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2である構成とすることがさらに好ましい。
【0064】
図1に示したヒートシンクがピンフィン3D-1を有する構成である場合、又は、図7(b)に示すピンフィン3D-2を有する構成である場合、複数のピンフィン3D-1、又は、複数のピンフィン3D-2がすべて、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0065】
ピンフィン形状を上述したような平面視して、略平行四辺形形状を有するものとすることによって、鍛造成形する場合、非常に短時間で、歩留まりよくヒートシンクを製造できる。
平行四辺形形状のピンフィンを有するヒートシンクを製造する際、角部が丸みを有さない、尖ったエッジである場合、鍛造成形時にその部分に応力が集中し、鍛造金型(ダイス)が短寿命となり、安価な製造を困難にする。そのため、ダイス孔の角部に応力集中を緩和するためのR形状を付与する。
また、ノックピンの形状をダイス孔と同じ平行四辺形形状とすることが望ましいが、平行四辺形形状のノックピンを製造することは難しく、安価な製造を困難にする。そこで、ダイス孔形状の平行四辺形形状の鈍角側にR形状を内接円に接する形状とし、その内接円と同一断面形状を有する円柱状のノックピンとすることで、ノックピンの製造を安価とし、鍛造成形をより安価に行うことができるものとなる。なお、ピンフィンが略平行四辺形形状の場合、略菱形形状や略正方形形状の場合と異なり、円柱状のノックピンで一対の鈍角部位あるいは一対の対角部位に共通する内接円を有するようなダイス孔を形成することはできないが、一対の鈍角部位のうちの一方の鈍角部位のR形状については略菱形形状や略正方形形状の場合と同様な効果を得ることができ、その結果として安価な鍛造成形に繋がる。
【0066】
図8は、本発明の他の実施形態に係るヒートシンクの平面図である。図8に示すピンフィン13は、図2(b)に示す形状を有するものを例示しているが、図2(a)、図3(a)、(b)、図4図5(a)、(b)、図6図7(a)、(b)に示した形状を有するものとしてもよい。
図8に示すヒートシンク10では、ピンフィン13は、第1方向(X方向)および第2方向(Y方向)の二つの方向において、中央側に位置するピンフィン13の水平断面積よりも、外側に位置するピンフィン13の水平断面積が大きくなるように構成されている。この場合の「ピンフィンの水平断面積」とは、ピンフィンの、XY平面に平行な面あるいはベース部2の面に平行な面で切った断面の面積である。ピンフィンがZ方向(高さ方向)で水平断面積が変わる場合には、Z方向の中間における面で切った断面の面積を指すものとする。
図8に示すヒートシンク10は、図2(b)に示す形状を有するピンフィンの相似形の大小のピンフィンからなるものである。
【0067】
図8に示すヒートシンク10では、ピンフィン13は、X方向およびY方向の二つの方向において、中央側に位置するピンフィン13の水平断面積よりも、外側に位置するピンフィン13の水平断面積が大きくなるように構成されているが、X方向およびY方向のうちの一方の方向のピンフィンのみについて、中央側に位置するピンフィン13の水平断面積よりも、外側に位置するピンフィン13の水平断面積が大きくなるように構成されていてもよい。
【0068】
複数のピンフィン13の中で、水平断面積が最大のものは、水平断面積が例えば、1mm以上30mm以下の範囲内にあってもよい。例えば、ピンフィン13の断面形状が略菱形形状、略正方形形状、又は、略平行四辺形形状の場合、水平断面積が最大のピンフィンは、各形状の場合について上記した内接円の直径が1mm以上6mm以下の範囲内にあってもよい。中央側に位置するピンフィン13とその中央側のピンフィン13に隣り合う外側のピンフィン13の水平断面積の比は、外側のピンフィン13の水平断面積に対する中央側のピンフィン13の水平断面積の比として70/100以上90/100以下の範囲内にあってもよい。また、中央側に位置するピンフィン13とその中央側のピンフィン13に隣り合う外側のピンフィン13の直径の比は、外側のピンフィン13の直径に対する中央側のピンフィン13の上記した内接円の直径の比として85/100以上95/100以下の範囲内にあってもよい。
【0069】
ピンフィン13の水平断面積の変化は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。段階的とは、中央側に位置するピンフィン13から外側に向かってピンフィン13が複数個(例えば、2~3個)の間隔で水平断面積が大きくなることを意味する。連続的とは、中央側から外側に向かってピンフィン13の水平断面積が1個ずつ大きくなることを意味する。ピンフィン13の水平断面積は、段階的に変化する部分と連続的に変化する部分とがあってもよい。
【0070】
図8に示すヒートシンク10において、隣り合うピンフィン13は、中心間距離がそれぞれ同一となるように配置されている。中心間距離は、ピンフィン13の断面における中心と中心の間の距離である。中心間距離は、例えば、水平断面積が最大のピンフィンの上記した内接円の直径に対して1.2倍から2倍の範囲内にある。中心間距離は、例えば、1.2mm以上10mm以下の範囲内にあってもよい。
【0071】
図8に示すヒートシンク10において、複数のピンフィン13の断面形状はそれぞれ、相似形であるが、これに限定されない。
【0072】
図8に示すヒートシンク10において、複数のピンフィン13は図2(b)に示す形状を有するピンフィンの相似形であるが、図2(a)、図3(a)、図3(b)、図4図5(a)、図5(b)、図6図7(a)、図7(b)のいずれかに示す形状を有するピンフィンの相似形であってもよい。
【0073】
図8に示すヒートシンク10において、複数のピンフィン13が図2(a)、図2(b)、図3(a)、図3(b)、図4図5(a)、図5(b)、図6図7(a)、図7(b)のいずれかに示す形状を有するピンフィンが相似形の場合、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向、一対の鋭角部位を結ぶ方向、又は、他の一対の仮想対角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0074】
図9は、本発明の他の実施形態に係るヒートシンクの平面図である。図9に示すピンフィン23は、図2(b)に示す形状を有するものである。
図9に示すヒートシンク20では、ピンフィン23は、第1方向(X方向)および第2方向(Y方向)の二つの方向において、外側に位置するピンフィン23の水平断面積よりも、中央側に位置するピンフィン23の水平断面積が大きくなるように構成されている。
図9に示すヒートシンク20は、図2(b)に示す形状を有するピンフィンの相似形の大小のピンフィンからなるものである。
【0075】
図9に示すヒートシンク20では、ピンフィン23は、X方向およびY方向の二つの方向において、外側に位置するピンフィン23の水平断面積よりも、中央側に位置するピンフィン23の水平断面積が大きくなるように構成されているが、X方向およびY方向のうちの一方の方向のピンフィンのみについて、外側に位置するピンフィン23の水平断面積よりも、中央側に位置するピンフィン23の水平断面積が大きくなるように構成されていてもよい。
【0076】
複数のピンフィン23の中で、水平断面積が最大のものは、水平断面積が例えば、1mm以上30mm以下の範囲内にあってもよい。例えば、ピンフィン23の断面形状が略菱形形状、略正方形形状、又は、略平行四辺形形状の場合、水平断面積が最大のピンフィンは、各形状の場合について上記した内接円の直径が1mm以上6mm以下の範囲内にあってもよい。外側に位置するピンフィン23とその外側のピンフィン23に隣り合う中央側のピンフィン23の水平断面積の比は、中央側のピンフィン23の水平断面積に対する外側のピンフィン23の水平断面積の比として70/100以上90/100以下の範囲内にあってもよい。また、外側に位置するピンフィン23とその外側のピンフィン23に隣り合う中央側のピンフィン23の直径の比は、中央側のピンフィン23の直径に対する外側のピンフィン23の上記した内接円の直径の比として85/100以上95/100以下の範囲内にあってもよい。
【0077】
ピンフィン23の水平断面積の変化は、段階的であってもよいし、連続的であってもよい。段階的とは、外側に位置するピンフィン23から中央側に向かってピンフィン23が複数個(例えば、2~3個)の間隔で水平断面積が大きくなることを意味する。連続的とは、外側から中央側に向かってピンフィン23の水平断面積が1個ずつ大きくなることを意味する。ピンフィン23の水平断面積は、段階的に変化する部分と連続的に変化する部分とがあってもよい。
【0078】
図9に示すヒートシンク10において、隣り合うピンフィン23は、中心間距離がそれぞれ同一となるように配置されている。中心間距離は、ピンフィン23の断面における中心と中心の間の距離である。中心間距離は、例えば、水平断面積が最大のピンフィンの上記した内接円の直径に対して1.2倍から2倍の範囲内にある。中心間距離は、例えば、1.2mm以上10mm以下の範囲内にあってもよい。
【0079】
図9に示すヒートシンク10において、複数のピンフィン23の断面形状はそれぞれ、相似形であるが、これに限定されない。
【0080】
図9に示すヒートシンク20において、複数のピンフィン23は図2(b)に示す形状を有するピンフィンの相似形であるが、図2(a)、図3(a)、図3(b)、図4図5(a)、図5(b)、図6図7(a)、図7(b)のいずれかに示す形状を有するピンフィンの相似形であってもよい。
【0081】
図9に示すヒートシンク20において、複数のピンフィン23が図2(a)、図2(b)、図3(a)、図3(b)、図4図5(a)、図5(b)、図6図7(a)、図7(b)のいずれかに示す形状を有するピンフィンの相似形で場合、一対の仮想鋭角部位を結ぶ方向、一対の鋭角部位を結ぶ方向、又は、他の一対の仮想対角部位を結ぶ方向が第1方向(X方向)と平行になるように配置された構成となる。このヒートシンクを備える冷却装置において、冷却媒体の流動方向が第1方向となるように構成することができる。
【0082】
上述のヒートシンク1、ヒートシンク10及びヒートシンク20において、上述のピンフィン3、3A、3B、3B-1、3B-2、3C、3C-1、3C-2、3D、3D-1、3D-2、13、13を備える場合において、それぞれのピンフィンの高さは、同じであってもよい。また、その高さは、例えば、3mm以上10mm以下の範囲内にあってもよい。
【0083】
上述のヒートシンク1、10、20の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、鉄合金などを用いることができる。また、ヒートシンク1、10、20の材料として、2種類以上の金属を貼り合わせたクラッド材(複合材)を用いることができる。ただし、ヒートシンク1、10、20の材料は、これらの金属や合金に限定されるものではなく、ヒートシンクの材料として利用されている各種の金属材料を用いることができる。
【0084】
上述のヒートシンク1、10、20は、鍛造で成形されたものであることが好ましい。
【0085】
[ヒートシンクの製造方法]
本実施形態のヒートシンクの製造方法は、ダイスを準備する準備工程と、金属材料を密閉した状態でダイスに向けて加圧する加圧工程とを有する。加圧工程は鍛造装置を用いて実施することができる。鍛造用素材としての金属材料としては熱伝導性のよい材料を用いることが好ましい。例えば、アルミニウム、銅などを挙げることができるが、これらに限定されない。本実施形態のヒートシンクの製造方法によって、上述した本発明に係るヒートシンクを製造することができる。
以下では、図2(a)に示したピンフィンを有するヒートシンクを製造する場合を例に、本実施形態のヒートシンクの製造方法を説明する。
【0086】
準備工程で準備するダイスは、複数の孔を有する。この複数の孔に金属材料を流入させることによって、ヒートシンクのピンフィンが形成される。よって、ダイスの複数の孔は、製造目的であるヒートシンクのピンフィンに対応する位置に配置されている。すなわち、ダイスの複数の孔は、図2(a)に示したピンフィンの形状に対応する孔形状を有する。図10では、Y方向に孔を4個有する例を示す。
【0087】
図10は、本実施形態のヒートシンクの製造方法で用いることができる鍛造装置の断面図である。
図10に示すように、鍛造装置100は、パンチ111と、ダイス112と、ダイスホルダ114とを有する。ヒートシンクの材料である金属材料Mは、パンチ111とダイス112との間に配置される。
【0088】
パンチ111は、金属材料Mをダイス112に向けて加圧する。ダイス112は、準備工程で準備されたダイスである。ダイス112は、複数の孔113(113a、113b、113c、113d)を有する。パンチ111は、ダイス112の内壁に沿って上下に移動可能とされている。パンチ111とダイス112との間隔は金属材料Mが流出しない間隔とされていて、金属材料Mを密閉した状態で鍛造できるようにされている。
【0089】
ダイスホルダ114は、アンビル115と、円柱状のノックピン118(118a、118b、118c、118d)と、ノックアウトプレート119と、エジェクタ120と、を有する。アンビル115は、底板116と、底板116の周囲に配置された筒状のダイス支持体117とを有する。底板116は中央にエジェクタ120が挿入される開口を有する。ノックピン118a、118b、118c、118dは、ダイス112の複数の孔113a、113b、113c、113dに挿入されている。ノックピン118a、118b、118c、118dはノックアウトプレート119に支持されている。ノックアウトプレート119は底板116とエジェクタ120との上に配置されている。エジェクタ120は上下方向に移動可能とされている。エジェクタ120の上下方向の移動に合わせて、ノックアウトプレート119を介してノックピン118a、118b、118c、118dが上下方向に移動する。
【0090】
円柱状のノックピン118の水平断面の円の半径Rp(図11(b)参照)と、ピンフィンの一対の仮想鈍角部位のR形状部に接する内接円の半径との差は、0.5mm以下である。この差は0.3mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。ピンフィンの一対の仮想鈍角部位のR形状部に接する内接円の直径2R図2(a)参照)は孔113のY方向の直径2Rdに実質的に等しいので、円柱形のノックピン118の水平断面の円の半径Rpと孔113のY方向の半径Rd(図11(b)参照)との差は、0.5mm以下である。この差は0.3mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。この場合、ピンフィンの一対の仮想鈍角部位のR形状部に鍛造でのバリが発生しにくい。
ピンフィンの内接円のR寸法に対する、ノックピンのR寸法の差が0.5mm以下であるノックピンを用いて鍛造成形の排出を行う。
【0091】
鍛造装置100を用いたヒートシンクの製造は次のようにして行われる。
まず、ダイス112を、ダイスホルダ114のダイス支持体117の上に配置する。次いで、ダイス112の孔113a、113b、113c、113dに、ノックピン118a、118b、118c、118dを挿入し、ノックピン118a、118b、118c、118dをノックアウトプレート119の接触するまでに押し込む。次いでノックアウトプレート119の位置を調整して、ノックピン118a、118b、118c、118dの上側端部の位置、すなわち孔113a、113b、113c、113dの深さを設定する。
【0092】
次に、金属材料Mをダイス112の中央(X方向およびY方向の中央)に配置する。金属材料Mは、ダイス112のキャビティに収納可能であれば、その形状に制限はない。金属材料Mの形状は、角板形状(六面体)であってもよいし、丸板形状であってもよいし、異形形状であってもよい。金属材料Mは、ダイス112のキャビティ内での位置ずれを抑えるために、キャビティの形状に近い形状であることが好ましい。また、金属材料Mは面取りがなされていてもよい。金属材料Mは、圧延材からトリミングや機械加工にて切出されたものであってもよい。また、金属材料Mは、フラット形状や丸形状の押出材あるいは角形状や丸形状の連鋳棒を切断あるいは切出して製造したものであってもよい。金属材料Mは、展延性を向上させるために、焼きなまし処理(O処理)が施されていてもよい。また、金属材料Mは表面に潤滑剤を付着させる潤滑処理が施されていてもよい。潤滑処理を行ってから、焼きなまし処理を行ってもよい。
【0093】
次に、パンチ111を用いて、金属材料Mを密閉した状態でダイス112に向けて加圧して鍛造する。鍛造よって金属材料Mをダイス112の外周方向に延伸させると共に、孔113a、113b、113c、113dに流入させる。
【0094】
図11に、図2(a)に示したピンフィン3Aが鍛造成形される経過の模式図を示す。
図11(a)は、金属材料Mが図2(a)のX-X’方向で切った断面を示すような位置で切った断面図であり、図11(b)は、金属材料Mが図2(a)のY1-Y1’方向で切った断面を示すような位置で切った断面図である。図中の矢印は、鍛造成形の初期から成形完了までの時間経過を示すものであり、(a)及び(b)のそれぞれの3個の図は、成形開始初期、成形途中、成形完了の3つの典型的な状態を模式的に示す図である。
円柱状のノックピン118に対して、孔113は図2(a)に示したピンフィン3Aの形状に対応した形状を有するため、図11(a)に示す断面は円柱状のノックピン118と孔113との隙間が最も大きく、金属材料Mとダイス孔内壁との間の摩擦抵抗が大きいためピンフィンの先端の成形が最も遅い側となり、図11(b)に示す断面は円柱状のノックピン118と孔113の隙間が最も小さい側となる。
【0095】
本実施形態においては、孔113のY方向の形状は、ピンフィン3Aの一対のR形状部が共通の内接円に接するように形成された形状に対応して形成されているため、を図11(b)に示すように、円柱状のノックピン118と孔113の隙間が非常に小さい(0.5mm以下)。
これに対して、ピンフィン3AのR形状部が内接円に接するように形成されていない場合には、図12に示すように、この隙間は図11(b)に示すよりも大きくなる。
この場合、図中で矢印によって示すような、金属材料Mがノックピンに食い込む現象が起きやすくなる。そうすると、高さを揃えるための追加の加工工程を要することになる。また、製品の排出時にノックピンを咥え込むため、製品がうまく取り外せないという問題も生じ得る。さらに、製品の排出時にバリが金型上面に残ると、次の製品鍛造時に打ち込み不良が発生することになる。
【0096】
鍛造中、金属材料Mを加熱してもよい。例えば、金属材料Mがアルミニウムあるいはアルミニウム合金の場合、金属材料Mを400℃以上600℃以下の温度で加熱してもよい。また、金属材料Mを加熱せずに鍛造(冷間鍛造)してもよい。
【0097】
鍛造によって、複数のピンフィンを有するヒートシンクが形成された後は、エジェクタ120を上方に移動して、ノックアウトプレート119を介して、ノックピン118a、118b、118c、118dを上方に移動させ、ヒートシンクのピンフィンを押しさせる。これによって、ダイス112からヒートシンクが取り出される。
【0098】
以上、図2(a)に示したピンフィンを有するヒートシンクを製造する場合を例に、本実施形態のヒートシンクの製造方法を説明してきたが、図2(b)、図3(a)、図3(b)、図4図5(a)、図5(b)、図6図7(a)、図7(b)のいずれかに示した形状のピンフィンを有するヒートシンクを製造する場合についても同様に製造できる。
上記のヒートシンクの製造方法においては、円柱状のノックピンを用いる場合について説明したが、円柱状のノックピンを用いる場合に限定されない。例えば、図6に示す略平行四辺形形状のピンフィン(一対のR形状部が同じ半径Rの内接円に接する)を有するヒートシンクを製造する場合には、そのピンフィンの一対のR形状部に対応して、水平断面の一対の対角部位にほぼ曲率半径RのR形状部を有するノックピンを用いてもよい。
【0099】
また、図8に示したようなヒートシンクを製造する場合には、以下のような特徴を有する。
図8に示したヒートシンク10は、第1方向(行方向)および第2方向(列方向)の二つの方向において、中央側に位置するピンフィン13の水平断面積よりも外側に位置するピンフィン13の水平断面積が大きくなる構造とされている。すわなち、単位空間あたりのピンフィン13の体積が中央側よりも外側の方が大きくなる構造とされている。本実施形態のヒートシンク10を、密閉工法を用いて製造する場合は、ダイスの中央側に位置する孔の水平断面積よりも、外側に位置する孔の水平断面積を大きくすることができる。こうすることによって、ダイスの中央側から外側に流れた金属材料がダイスの内壁にあたって中央側に戻った場合には、その戻った金属材料をダイスの外側の孔に流入させることができ、これにより、孔全体に均一に金属材料を充填できるようになる。よって、ヒートシンク10は、背圧機構を用いなくても、ピンフィンの高さが均一となり易くなる。また、ヒートシンク10は、熱の伝導量が多い水平断面積が大きいピンフィン13が外周側に配置されているため、熱を外部に放出させやすい。
【0100】
また、ヒートシンク10は、複数のピンフィン13は、隣り合うピンフィン13の中心間距離がそれぞれ同一となるように配置されているので、中央側に位置するピンフィン13の水平断面積よりも、外周側に位置するピンフィン13の水平断面積を大きくなることよって、単位空間あたりのピンフィン13の体積が、中央側よりも外周側の方が多い構造となる。このため、中央側と比較して外周側の方が、熱の伝導量が多くなるため、熱を外部に放出させやすくなる。
【0101】
ヒートシンク10において、中央側に位置するピンフィン13から外側に位置するピンフィン13に向かって、ピンフィンの水平断面積が段階的に大きくなる場合は、水平断面積が同じピンフィン13が複数あり、ヒートシンク10を製造する鍛造装置100において、ノックピン118を共用できるので鍛造装置100を管理しやすくなる。
【0102】
ヒートシンク10において、中央側に位置するピンフィン13から外側に位置するピンフィン13に向かって、ピンフィンの水平断面積が連続的に大きくなる場合は、ヒートシンク10のピンフィン13を伝導する熱量が、中央側から外側に向かって連続的に多くなるので、熱を外部に放出させやすくなる。
【0103】
複数のピンフィンの断面形状がそれぞれ相似形である場合は、ピンフィン13の間に冷却水を流して冷却する場合、冷却水が均一に流れやすく、また冷却水の流れを調整しやすいため、ピンフィン13をより均一に冷却することができる。
【0104】
本実施形態のヒートシンクの製造方法において使用するダイス112は、複数の孔を有し、中央側に位置する孔が最も水平断面積が小さく、外側に位置する孔が最も水平断面積が大きい構造とされているので、密閉工法を用いても、孔全体に均一に金属材料Mを充填することができる。このため、本実施形態のヒートシンクの製造方法によれば、背圧機構を用いなくても、ピンフィンの高さが均一なヒートシンクを製造することが可能となる。また、ダイス112は表面に凹凸を有しないので、長期間の継続的な使用による摩耗が起こりにくい。このため、本実施形態のヒートシンクの製造方法によれば、ピンフィンの高さが均一なヒートシンクを長期間にわたって継続的に製造することが可能となる。
【0105】
また、図9に示したようなヒートシンクを製造する場合には、以下のような特徴を有する。
図9に示したヒートシンク20は、第1方向(行方向)および第2方向(列方向)の二つの方向において、中央側に位置するピンフィン23の断面積よりも、外側に位置するピンフィン23の断面積が小さくなる構造とされている。すわなち、単位空間あたりのピンフィン23の体積が中央側よりも外側の方が小さい構造とされているこのため、本実施形態のヒートシンク20の製造において、ダイスの外側の孔に充填させる金属材料の量を少なくできる。このため、ダイスの中央側の孔に金属材料が流入しやすく、外側の孔に金属材料が流入しにくい場合でも、孔全体に均一に金属材料を充填でき、ピンフィンの高さが均一となり易くなる。また、ヒートシンク20は、単位空間あたりのピンフィン23の体積が中央側よりも外側の方が小さい構造であるため、ヒートシンク20の中央側の熱を外側に放出させやすい。
【0106】
また、ヒートシンク20は、複数のピンフィン23は、隣り合うピンフィン23の中心間距離がそれぞれ同一となるように配置されているので、中央側に位置するピンフィン23の断面積よりも、外側に位置するピンフィン23の断面積を小さくなることよって、単位空間あたりのピンフィン23の体積が、中央側よりも外側の方が少ない構造とすることができる。
【0107】
ヒートシンク20において、中央側に位置するピンフィン23から外側に位置するピンフィン23に向かって、ピンフィンの断面積が段階的に小さくなる場合は、断面積が同じピンフィン23が複数あり、ノックピン118を共用できるので、鍛造装置100を管理しやすくなる。
【0108】
ヒートシンク20において、中央側に位置するピンフィン23から外側に位置するピンフィン23に向かって、ピンフィンの断面積が連続的に小さくなる場合は、中央側の熱が外側に向かってより均一に放出されやすくなる。
【0109】
複数の前記ピンフィンの断面形状がそれぞれ相似形である場合は、ピンフィン23の間に冷却水を流して冷却する場合、冷却水が均一に流れやすく、また冷却水の流れを調整しやすいため、ピンフィン23をより均一に冷却することができる。
【0110】
本実施形態のヒートシンクの製造方法において使用するダイス112が複数の孔を有し、中央側に位置する孔が最も断面積が大きく、外側に位置する孔が最も断面積が小さい構造とされているので、孔全体に均一に金属材料Mを充填することができる。このため、本実施形態のヒートシンクの製造方法によれば、ピンフィンの高さが均一なヒートシンクを製造することが可能となる。また、ダイス112は表面に凹凸を有しないので、長期間の継続的な使用による摩耗が起こりにくい。このため、本実施形態のヒートシンクの製造方法によれば、ピンフィンの高さが均一なヒートシンクを長期間にわたって継続的に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0111】
1、10、20 ヒートシンク
2 ベース部
3、3A、3B、3C、3D、13、23 ピンフィン
3Aa1、3Aa2、3Ba1、3Ba2、3Ca1、3Ca2、3Da1、3Da2 R形状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12