(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181813
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】伸縮性を有する配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231218BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20231218BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20231218BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 J
H05K1/09 A
H05K3/10 Z
H01B5/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095158
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100171930
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 郁一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 幹司
(72)【発明者】
【氏名】中田 充
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
【テーマコード(参考)】
4E351
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351AA05
4E351AA16
4E351BB01
4E351BB23
4E351BB30
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4E351GG01
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5E338AA01
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5E343DD23
5E343DD25
5E343DD52
5E343FF07
5E343GG04
5E343GG08
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜によって微細な配線への適用を可能とした伸縮性を有する配線基板を提供する。
【解決手段】伸縮自在な伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の面上に伸縮自在に設けられた伸縮層3と、伸縮層3の面上に設けられた導電性薄膜4とを備え、伸縮層3の表面には、不規則性を有する微細な凹凸構造5が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在な伸縮性樹脂基板と、
前記伸縮性樹脂基板の面上に伸縮自在に設けられた伸縮層と、
前記伸縮層の面上に設けられた導電性薄膜とを備え、
前記伸縮層の表面には、不規則性を有する微細な凹凸構造が設けられていることを特徴とする伸縮性を有する配線基板。
【請求項2】
前記伸縮層は、前記伸縮性樹脂基板の伸長によって前記凹凸構造に不規則な網目状の亀裂を生じさせるクラック構造を有し、
前記導電性薄膜は、前記伸縮性樹脂基板の伸長によって前記クラック構造を反映した不規則な亀裂を生じさせつつ、網目状に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項3】
前記凹凸構造の表面粗さは、二乗平均平方根高さ(Sq)で100~1,000nmであることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項4】
前記導電性薄膜の表面粗さは、二乗平均面粗さ(RMS)で、500~10,000nmであることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項5】
前記導電性薄膜の厚みをTkとしたときに、前記凹凸構造の表面粗さ(Sq)に対して、
2・Tk<Sq
の関係を満足することを特徴とする請求項3に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項6】
前記伸縮層は、前記凹凸構造を有するカーボンナノチューブ層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項7】
前記伸縮性樹脂基板は、アクリル系樹脂基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項8】
前記導電性薄膜は、金属薄膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性を有する配線基板。
【請求項9】
伸縮自在な伸縮性樹脂基板の面上に、伸縮自在な伸縮層を形成する工程と、
前記伸縮層の面上に、導電性薄膜を形成する工程とを含み、
前記伸縮層を形成する工程において、前記伸縮性樹脂基板に対して溶解性を有する塗液を前記伸縮性樹脂基板の面上に塗布した後、乾燥させることによって、前記伸縮性樹脂基板の面上に、不規則性を有する微細な凹凸構造が表面に設けられた前記伸縮層を形成することを特徴とする伸縮性を有する配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記伸縮性樹脂基板を伸長する工程を含み、
前記伸縮性樹脂基板を伸長することによって、前記凹凸構造に不規則な網目状の亀裂を生じさせるクラック構造を前記伸縮層に形成すると共に、
前記導電性薄膜が網目状に結合されるように、前記クラック構造を反映した不規則な亀裂を前記導電性薄膜に生じさせることを特徴とする請求項9に記載の伸縮性を有する配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記伸縮層として、カーボンナノチューブを含有した前記塗液を塗布した後、乾燥させることによって、前記凹凸構造を有するカーボンナノチューブ層を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の伸縮性を有する配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、球面や自由曲面などの3次元形状に変形可能な有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイや、人の皮膚などに直接装着可能な感圧センサや温度センサなど、将来に向けた伸縮自在(ストレッチャブル)なデバイスの検討が行われている。
【0003】
このような伸縮自在なデバイスを実現するためには、伸縮性を有する配線基板が必要不可欠であり、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜によって微細な配線への適用が望まれる。
【0004】
例えば、伸縮可能な導電性薄膜には、予め伸長したシリコーンゴム状に金属薄膜を形成することにより得られる波状構造(下記非特許文献1を参照。)や、銀ペーストなどの導電材料と高弾性のバインダー樹脂などのエラストマーとの複合材料が主として報告されている(下記特許文献1を参照。)。
【0005】
また、切り紙のような形でスリットを導電膜上に形成し、変形による伸縮化が報告されている(下記特許文献2を参照。)。さらに、金薄膜の成膜条件を調整し、マイクロクラックを有する金薄膜によって、切り紙のような形で伸縮性のある導電膜などが報告されている(下記非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/114278号
【特許文献2】国際公開第2019/124274号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Whitesides, G. M., Bowden, N., Brittain, S., Evans, A. G. & Hutchinson, J. W. Spontaneous formation of ordered structures in thin films of metals supported on an elastomeric polymer. Nature 393, 146-149, doi:10.1038/30193 (1998)
【非特許文献2】Graudejus, O., Gorrn, P. & Wagner, S. Controlling the morphology of gold films on poly(dimethylsiloxane). ACS Appl Mater Interfaces 2, 1927-1933, doi:10.1021/am1002537 (2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したストレッチャブルデバイスで用いられる伸縮性を有する配線基板では、線幅が数百μm程度の微細な配線への適用が必要である。しかしながら、上述した従来の技術では、配線の微細化や高精細化が困難である。
【0009】
また、上記非特許文献2に示すような金薄膜のマイクロクラックを利用した伸縮可能な導電膜では、金薄膜の成膜条件によって大きく伸縮した場合における電気特性が変化し、安定した特性が得られなくなる。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜によって微細な配線への適用を可能とした伸縮性を有する配線基板、並びにそのような配線基板を製造するのに好適な伸縮性を有する配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 伸縮自在な伸縮性樹脂基板と、
前記伸縮性樹脂基板の面上に伸縮自在に設けられた伸縮層と、
前記伸縮層の面上に設けられた導電性薄膜とを備え、
前記伸縮層の表面には、不規則性を有する微細な凹凸構造が設けられていることを特徴とする伸縮性を有する配線基板。
〔2〕 前記伸縮層は、前記伸縮性樹脂基板の伸長によって前記凹凸構造に不規則な網目状の亀裂を生じさせるクラック構造を有し、
前記導電性薄膜は、前記伸縮性樹脂基板の伸長によって前記クラック構造を反映した不規則な亀裂を生じさせつつ、網目状に結合されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔3〕 前記凹凸構造の表面粗さは、二乗平均平方根高さ(Sq)で、100~1,000nmであることを特徴とすることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔4〕 前記導電性薄膜の表面粗さは、二乗平均面粗さ(RMS)で、500~10,000nmであることを特徴とすることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔5〕 前記導電性薄膜の厚みをTkとしたときに、前記凹凸構造の表面粗さ(Sq)に対して、
2・Tk<Sq
の関係を満足することを特徴とする前記〔3〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔6〕 前記伸縮層は、前記凹凸構造を有するカーボンナノチューブ層であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔7〕 前記伸縮性樹脂基板は、アクリル系樹脂基板であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔8〕 前記導電性薄膜は、金属薄膜であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の伸縮性を有する配線基板。
〔9〕 伸縮自在な伸縮性樹脂基板の面上に、伸縮自在な伸縮層を形成する工程と、
前記伸縮層の面上に、導電性薄膜を形成する工程とを含み、
前記伸縮層を形成する工程において、前記伸縮性樹脂基板に対して溶解性を有する塗液を前記伸縮性樹脂基板の面上に塗布した後、乾燥させることによって、前記伸縮性樹脂基板の面上に、不規則性を有する微細な凹凸構造が表面に設けられた前記伸縮層を形成することを特徴とする伸縮性を有する配線基板の製造方法。
〔10〕 前記伸縮性樹脂基板を伸長する工程を含み、
前記伸縮性樹脂基板を伸長することによって、前記凹凸構造に不規則な網目状の亀裂を生じさせるクラック構造を前記伸縮層に形成すると共に、
前記導電性薄膜が網目状に結合されるように、前記クラック構造を反映した不規則な亀裂を前記導電性薄膜に生じさせることを特徴とする前記〔9〕に記載の伸縮性を有する配線基板の製造方法。
〔11〕 前記伸縮層として、カーボンナノチューブを含有した前記塗液を塗布した後、乾燥させることによって、前記凹凸構造を有するカーボンナノチューブ層を形成することを特徴とする前記〔9〕又は〔10〕に記載の伸縮性を有する配線基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜によって微細な配線への適用を可能とした伸縮性を有する配線基板、並びにそのような配線基板を製造するのに好適な伸縮性を有する配線基板の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る伸縮性を有する配線基板の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す配線基板の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図1に示す配線基板の伸長した状態を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図1に示す配線基板の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図5】
図1に示す配線基板の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る伸縮性を有する配線基板の構成を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図6に示す配線基板の構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図6に示す配線基板の伸長した状態を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図6に示す配線基板の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図10】
図6に示す配線基板の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図11】第1の実施例において、配線基板の伸長率とAu薄膜の表面シート抵抗との関係を測定した結果を示すグラフである。
【
図12】第1の実施例において、配線基板の伸長率が0%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図13】第1の実施例において、配線基板の伸長率が30%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図14】第1の実施例において、配線基板の伸長率が50%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図15】第1の実施例において、配線基板の伸長率が100%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図16】第1の比較例において、配線基板の伸長率とAu薄膜の表面シート抵抗との関係を測定した結果を示すグラフである。
【
図17】第1の比較例において、配線基板の伸長率が0%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図18】第1の比較例において、配線基板の伸長率が30%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図19】第2の実施例において、配線基板の伸長率とAu薄膜の表面シート抵抗との関係を測定した結果を示すグラフである。
【
図20】第2の実施例において、配線基板の伸長率が0%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図21】第2の実施例において、配線基板の伸長率が30%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【
図22】第2の実施例において、配線基板の伸長率が50%のときの配線基板の表面を光学顕微鏡により観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
〔第1の実施形態〕
(伸縮性を有する配線基板)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図3に示す伸縮性を有する配線基板1Aについて説明する。
【0016】
なお、
図1は、配線基板1Aの構成を模式的に示す平面図である。
図2は、配線基板1Aの構成を模式的に示す断面図である。
図3は、配線基板1Aの伸長した状態を模式的に示す平面図である。
【0017】
本実施形態の配線基板1Aは、
図1及び
図2に示すように、伸縮自在な伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の面上に伸縮自在に設けられた伸縮層3と、伸縮層3の面上に設けられた導電性薄膜4とを備えている。
【0018】
伸縮性樹脂基板2は、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂などの伸縮性を有する樹脂材料を用いて、薄板状(フィルム状)に形成されている。その中でも、伸縮性樹脂基板2には、伸縮性に優れたアクリル系樹脂基板を用いることが好ましい。
【0019】
また、伸縮性樹脂基板2の厚みは、0.005~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.05~1mmである。なお、本実施形態では、厚み0.5mmのアクリル系樹脂基板を用いている。
【0020】
伸縮層3は、その表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5が設けられたカーボンナノチューブ(CNT)層である。CNT層は、導電性を有し、且つ、伸縮性樹脂基板2の面上に伸縮性樹脂基板2と共に伸縮自在に設けられている。また、伸縮層3の厚みは、CNT層の場合、5~500nmであることが好ましい。なお、本実施形態では、伸縮層3として、アクリル系樹脂基板の面上に、厚み50nmのCNT層が設けられている。
【0021】
伸縮層3は、伸縮性樹脂基板2の伸長によって凹凸構造5に、
図3に示すような不規則な網目状の亀裂Cを生じさせる微細なクラック構造を有している。
【0022】
凹凸構造5の表面粗さは、二乗平均平方根高さ(Sq)で、100~1,000nmであることが好ましい。これにより、伸縮性樹脂基板2の伸長によって凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせることが可能である。
【0023】
なお、伸縮層3は、上述したCNT層に必ずしも限定されるものではなく、CNT以外の導電材料を含み、且つ、その表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5が設けられた層であってもよい。
【0024】
導電性薄膜4は、導電性の金属薄膜として、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属又はそれらの合金、若しくはそれらの金属を2種類以上積層した金属材料を用いて、薄膜状に形成されている。
【0025】
導電性薄膜4は、伸縮性樹脂基板2の伸長によってクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを生じさせつつ、網目状に結合されている。導電性薄膜4は、網目状に結合されることで、電流パスを確保しながら、伸縮性樹脂基板2の伸長時にも高い導電性を維持することが可能である。
【0026】
導電性薄膜4は、その厚みをTkとしたときに、凹凸構造5の表面粗さ(Sq)に対して下記式(1)の関係を満足することが好ましい。
2・Tk<Sq …(1)
【0027】
上記式(1)の関係を満足することによって、導電性薄膜4が網目状に結合されるように、伸縮性樹脂基板2の伸長によって伸縮層3のクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを導電性薄膜4に生じさせることが可能である。
【0028】
なお、導電性薄膜4の厚みTkは、導電性を維持する上で少なくとも30nm以上とする必要がある。
【0029】
また、伸縮層3の面上に形成された導電性薄膜4には、伸縮層(CNT層)3の凹凸構造5を反映した凹凸構造が形成される。このような凹凸構造を有する導電性薄膜4の表面粗さは、二乗平均面粗さ(RMS)で、500~10,000nmであることが好ましく、より好ましくは1,000~2,000nmである。
【0030】
以上のような構成を有する本実施形態の配線基板1Aは、上述した伸縮層(CNT層)3の表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5を設け、伸縮性樹脂基板2の伸長によって、この凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせる微細なクラック構造を有している。
【0031】
また、本実施形態の配線基板1Aは、伸縮性樹脂基板2の伸長によって、伸縮層(CNT層)3のクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを生じさせつつ、網目状に結合された導電性薄膜4を有している。
【0032】
これにより、本実施形態の配線基板1Aでは、網目状に結合された導電性薄膜4の高い導電性(導電パス)を維持できるため、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜4を実現することが可能である。
【0033】
以上のようにして、本実施形態の配線基板1Aでは、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜4によって微細な配線への適用が可能である。すなわち、本実施形態では、上述した導電性薄膜4を所定の形状にパターニングすることによって、伸縮自在(ストレッチャブル)な配線を形成し、このような伸縮性を有する配線基板1Aを用いて、伸縮自在(ストレッチャブル)なデバイスを実現することが可能である。
【0034】
(伸縮性を有する配線基板の製造方法)
次に、上記配線基板1Aの製造方法について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
なお、
図4及び
図5は、上記配線基板1Aの製造工程を順に説明するための断面図である。
【0035】
上記配線基板1Aを製造する際は、先ず、
図4に示すように、伸縮自在な伸縮性樹脂基板2の面上に、伸縮自在な伸縮層3を形成する。
【0036】
具体的には、先ず、洗浄したガラスなどの支持基板10を用いて、この支持基板10の一面に再剥離可能な両面テープ11を貼り付けた後、この両面テープ11を介して支持基板10の一面に伸縮性樹脂基板2を貼り付ける。なお、本実施形態では、両面テープ11として、シリコーン樹脂製の再剥離用フィルムテープを用いている。
【0037】
次に、伸縮性樹脂基板2に対して溶解性を有する塗液Lを伸縮性樹脂基板2の面上に塗布した後、乾燥させることによって、伸縮性樹脂基板2の面上に、不規則性を有する微細な凹凸構造5が表面に設けられた伸縮層3を形成する。
【0038】
本実施形態では、伸縮層3として、CNTを含有した塗液Lをスプレーにより塗布した後、乾燥させることによって、伸縮性樹脂基板2の面上に、不規則性を有する微細な凹凸構造5が表面に設けられたCNT層を形成している。
【0039】
CNT層では、CNTの表面修飾により分散性を向上させ、このCNTが分散した塗液Lをスプレーにより塗布することで、不規則性を有する微細な凹凸構造5を表面に形成することが可能である。
【0040】
また、伸縮性樹脂基板2にアクリル系樹脂基板を用いた場合、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)やイソプロパノールなどのアルコール系溶媒を用いたCNTの分散液を用いて、スプレーにより塗布することで、スプレー時の溶媒とアクリルポリマーとが相互作用し、上述した不規則性を有する微細な凹凸構造を伸縮層(CNT層)3の表面に形成することができる。
【0041】
次に、
図5に示すように、伸縮層3の面上に、導電性薄膜4を形成する。導電性薄膜4は、一般的な蒸着法や電子線を用いた電子ビーム(EB)蒸着法、スパッタリング法などにより成膜することが可能である。また、伸縮層(CNT層)3との密着性という観点では、スパッタリング法による成膜が伸縮層(CNT層)3に強固に付着することができるという点でより好ましい。
【0042】
次に、支持基板10を両面テープ11と共に伸縮性樹脂基板2から剥離して除去する。これにより、上記配線基板1Aを作製することが可能である。
【0043】
また、作製された配線基板1Aについては、上記
図3に示すように、伸縮性樹脂基板2を伸長することによって、凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせるクラック構造を伸縮層3に形成する。同時に、このクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを導電性薄膜4に生じさせることが可能である。
【0044】
ここで、導電性薄膜4の厚みTkは、上記式(1)の関係を満足することにより、凹凸構造5の表面粗さ(Sq)よりも薄くなるため、クラック構造を反映した不規則な亀裂Cを導電性薄膜4に生じさせることができる。また、導電性薄膜4は、網目状に結合されることで、伸縮性樹脂基板2の伸長時にも高い導電性を維持することが可能である。
【0045】
なお、伸縮性樹脂基板2を伸長する方向については、この伸縮性樹脂基板2を任意の一軸方向に伸長すればよい。また、場合によっては、互いに交差する任意の二軸方向に伸長することも可能である。亀裂Cは、基本的に伸縮性樹脂基板2の伸長方向とは交差する方向に沿って不規則的に生じることになる。
【0046】
以上のように、本実施形態の配線基板1Aの製造方法では、上述した高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜4によって微細な配線への適用を可能とした伸縮性を有する配線基板1Aを好適に製造することが可能である。
【0047】
〔第2の実施形態〕
(伸縮性を有する配線基板)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図6~
図8に示す伸縮性を有する配線基板1Bについて説明する。
【0048】
なお、
図6は、配線基板1Bの構成を模式的に示す平面図である。
図7は、配線基板1Bの構成を模式的に示す断面図である。
図8は、配線基板1Bの伸長した状態を模式的に示す平面図である。また、以下の説明では、上記配線基板1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0049】
本実施形態の配線基板1Bは、
図6及び
図7に示すように、伸縮自在な伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の面上に設けられた導電性薄膜4とを備え、伸縮性樹脂基板の表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5が設けられた構成を有している。
【0050】
すなわち、本実施形態の配線基板1Bは、上記配線基板1Aが備える伸縮層(CNT層)3の代わりに、上述した伸縮性樹脂基板2の表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5が設けられた構成である。
【0051】
また、伸縮性樹脂基板2は、その伸長によって凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせる微細なクラック構造を有している。
【0052】
凹凸構造5の表面粗さは、二乗平均平方根高さ(Sq)で、100~1,000nmであることが好ましい。これにより、伸縮性樹脂基板2の伸長によって凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせることが可能である。
【0053】
導電性薄膜4は、
図8に示すように、伸縮性樹脂基板2の伸長によってクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを生じさせつつ、網目状に結合されている。導電性薄膜4は、網目状に結合されることで、伸縮性樹脂基板2の伸長時にも高い導電性を維持することが可能である。
【0054】
導電性薄膜4の厚みTkは、凹凸構造5の表面粗さ(Sq)に対して上記式(1)の関係を満足することが好ましい。上記式(1)の関係を満足することによって、導電性薄膜4が網目状に結合されるように、伸縮性樹脂基板2の伸長によって伸縮層3のクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを導電性薄膜4に生じさせることが可能である。
【0055】
なお、導電性薄膜4の厚みTkは、導電性を維持する上で少なくとも30nm以上とする必要がある。
【0056】
また、伸縮性樹脂基板2の面上に形成された導電性薄膜4には、伸縮性樹脂基板2の凹凸構造5を反映した凹凸構造が形成される。このような凹凸構造を有する導電性薄膜4の表面粗さは、二乗平均面粗さ(RMS)で、500~10,000nmであることが好ましく、より好ましくは1,000~2,000nmである。
【0057】
以上のような構成を有する本実施形態の配線基板1Bは、上述した伸縮性樹脂基板2の表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5を設け、伸縮性樹脂基板2の伸長によって、この凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせる微細なクラック構造を有している。
【0058】
また、本実施形態の配線基板1Bは、伸縮性樹脂基板2の伸長によって、伸縮性樹脂基板2のクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを生じさせつつ、網目状に結合された導電性薄膜4を有している。
【0059】
これにより、本実施形態の配線基板1Bでは、網目状に結合された導電性薄膜4の高い導電性(導電パス)を維持できるため、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜4を実現することが可能である。
【0060】
以上のようにして、本実施形態の配線基板1Bでは、高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜4によって微細な配線への適用が可能である。すなわち、本実施形態では、上述した導電性薄膜4を所定の形状にパターニングすることによって、伸縮自在(ストレッチャブル)な配線を形成し、このような伸縮性を有する配線基板1Bを用いて、伸縮自在(ストレッチャブル)なデバイスを実現することが可能である。
【0061】
(伸縮性を有する配線基板の製造方法)
次に、上記配線基板1Bの製造方法について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
なお、
図9及び
図10は、上記配線基板1Bの製造工程を順に説明するための断面図である。
【0062】
上記配線基板1Bを製造する際は、先ず、
図9に示すように、伸縮自在な伸縮性樹脂基板2の表面に不規則性を有する微細な凹凸構造5を形成する。
【0063】
具体的には、先ず、洗浄したガラスなどの支持基板10を用いて、この支持基板10の一面に再剥離可能な両面テープ11を貼り付けた後、この両面テープ11を介して支持基板10の一面に伸縮性樹脂基板2を貼り付ける。
【0064】
次に、伸縮性樹脂基板2に対して溶解性を有する塗液Lを伸縮性樹脂基板2の面上にスプレーにより塗布した後、乾燥させることによって、伸縮性樹脂基板2の表面に、不規則性を有する微細な凹凸構造5を形成する。
【0065】
また、伸縮性樹脂基板2にアクリル系樹脂基板を用いた場合、例えば、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒を用いたCNTの分散液を用いて、スプレーにより塗布することで、スプレー時の溶媒とアクリルポリマーとが相互作用し、上述した不規則性を有する微細な凹凸構造を伸縮性樹脂基板2の表面に形成することができる。
【0066】
なお、伸縮性樹脂基板2の表面に凹凸構造5を形成する方法については、上述したスプレーを用いた方法に限らず、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)などの酸素やアルゴン等のガスによるドライエッチングを用いた方法であってもよい。
【0067】
次に、
図10に示すように、伸縮性樹脂基板2の面上に、導電性薄膜4を形成する。導電性薄膜4は、一般的な蒸着法や電子線を用いた電子ビーム(EB)蒸着法、スパッタリング法などにより成膜することが可能である。
【0068】
次に、支持基板10を両面テープ11と共に導電性基板2から剥離して除去する。これにより、上記配線基板1Bを作製することが可能である。
【0069】
また、作製された配線基板1Bについては、上記
図8に示すように、伸縮性樹脂基板2を伸長することによって、凹凸構造5に不規則な網目状の亀裂Cを生じさせるクラック構造を伸縮性樹脂基板2に形成する。同時に、このクラック構造を反映した不規則な亀裂Cを導電性薄膜4に生じさせることが可能である。
【0070】
ここで、導電性薄膜4の厚みは、上記式(1)の関係を満足することにより、凹凸構造5の表面粗さ(Sq)よりも薄くなるため、クラック構造を反映した不規則な亀裂Cを導電性薄膜4に生じさせることができる。また、導電性薄膜4は、網目状に結合されることで、伸縮性樹脂基板2の伸長時にも高い導電性を維持することが可能である。
【0071】
なお、伸縮性樹脂基板2を伸長する方向については、この伸縮性樹脂基板2を任意の一軸方向に伸長すればよい。また、場合によっては、互いに交差する任意の二軸方向に伸長することも可能である。亀裂Cは、基本的に伸縮性樹脂基板2の伸長方向とは交差する方向に沿って不規則的に生じることになる。
【0072】
以上のように、本実施形態の配線基板1Bの製造方法では、上述した高い伸縮性と導電性とを兼ね備えた導電性薄膜4によって微細な配線への適用を可能とした伸縮性を有する配線基板1Bを好適に製造することが可能である。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0074】
(第1の実施例)
第1の実施例では、上記配線基板1Aを実際に作製し、その評価試験を行った。
具体的には、先ず、支持基板であるガラス基板の一面に、両面テープであるシリコーン製の再剥離用フィルムテープを貼り付けた後、この両面テープを介して支持基板の一面に伸縮性樹脂基板であるアクリル系樹脂基板を貼り付けた。
【0075】
次に、イソプロピルアルコール(IPA)中に0.3mg/mlの濃度でカルボン酸により表面修飾されたカーボンナノチューブ(CNT)を分散させた塗液を用意し、この塗液を伸縮性樹脂基板の面上にスプレーにより塗布した。スプレーによる塗布は、成膜温度を80℃とし、スプレーノズルと伸縮性樹脂基板との距離を100mmとし、25ml塗布した。その後、乾燥させることによって、伸縮性樹脂基板の面上に伸縮層となるCNT層を形成した。
【0076】
次に、CNT層の面上に、スパッタリング装置(DC50W)を用いて、厚み100nmの金(Au)薄膜を形成することによって、伸縮性をする配線基板を作製した。
【0077】
作製された配線基板について、Au薄膜の伸長時の抵抗変化を評価するため、4探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学社製)を用いて、室温、大気中にて、配線基板を一軸方向に伸長しながら、Au薄膜の表面シート抵抗[Ω/□]を測定した。その測定結果を
図11に示す。
【0078】
また、配線基板の伸長率を0%、30%、50%、100%としたときに、配線基板の表面に生じる亀裂を光学顕微鏡により観察した。その観察した写真を
図12~
図15に示す。
【0079】
図11に示すように、配線基板の伸長に対してAu薄膜の抵抗変化が低く抑えられていることが分かる。また、
図12~
図15に示すように、Au薄膜は、網目状に結合されることで、電流パス(
図15中の蛇行する矢印を参照。)を確保しながら、配線基板の伸長時にも高い導電性を維持することが可能である。
【0080】
(実施例1-1~実施例1-7)
次に、下記表1に示す条件にて、実施例1-1~実施例1-7の配線基板をそれぞれ作製した。
【0081】
そして、作製した配線基板の伸長率が50%のときの金属薄膜の表面シート抵抗を測定し、その評価を行った。その評価結果を下記表1に示す。
【0082】
【0083】
なお、表1に示す評価基準については、表面シート抵抗が100Ω/□以下である場合を「〇」とし、断線した場合を「×」とした。
【0084】
表1に示すように、実施例1-1~実施例1-7では、何れも良好な評価結果が得られた。また、金属薄膜としてAu薄膜以外にも、アルミニウム(Al)薄膜や銀(Ag)薄膜を用いた場合でも同様に、高い伸縮性と導電性が得られた。また、このときの金属薄膜の表面粗さ(RMS)は、1136nm(標準偏差274nm)であった。
【0085】
(第1の比較例)
第1の比較例では、上記配線基板1Aの構成のうち、伸縮層(CNT層)を省略した配線基板を作製し、その評価試験を行った。
【0086】
具体的には、先ず、支持基板であるガラス基板の一面に、両面テープであるシリコーン製の再剥離用フィルムテープを貼り付けた後、この両面テープを介して支持基板の一面に伸縮性樹脂基板であるアクリル系樹脂基板を貼り付けた。
【0087】
次に、伸縮性樹脂基板の面上に、スパッタリング装置(DC50W)を用いて、厚み100nmの金(Au)薄膜を形成することによって、伸縮性をする配線基板を作製した。
【0088】
作製された配線基板について、Au薄膜の伸長時の抵抗変化を評価するため、4探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学社製)を用いて、室温、大気中にて、配線基板を一軸方向に伸長しながら、Au薄膜の表面シート抵抗[Ω/□]を測定した。その測定結果を
図16に示す。
【0089】
また、配線基板の伸長率を0%、30%としたときに、配線基板の表面に生じる亀裂を光学顕微鏡により観察した。その観察した写真を
図17及び
図18に示す。
【0090】
図16に示すように、配線基板の伸長に対してAu薄膜の抵抗変化が増加し、配線基板の伸長率を30%としたときに断線したことが分かる。
【0091】
(比較例1-1~比較例1-7)
次に、下記表2に示す条件にて、伸縮層(CNT層)を省略した比較例1-1~比較例1-7の配線基板をそれぞれ作製した。
【0092】
そして、作製した配線基板の伸長率が50%のときの金属薄膜の表面シート抵抗を測定し、その評価を行った。その評価結果を下記表2に示す。なお、表2に示す評価基準については、上記表1に示す場合と同様である。
【0093】
【0094】
表2に示すように、比較例1-1~比較例1-8では、何れも断線し、良好な評価結果が得られなかった。
【0095】
(第2の実施例)
第2の実施例では、上記配線基板1Bを実際に作製し、その評価試験を行った。
具体的には、先ず、支持基板であるガラス基板の一面に、両面テープであるシリコーン製の再剥離用フィルムテープを貼り付けた後、この両面テープを介して支持基板の一面に伸縮性樹脂基板であるアクリル系樹脂基板を貼り付けた。
【0096】
次に、イソプロピルアルコール(IPA)からなる塗液を用意し、この塗液を伸縮性樹脂基板の面上にスプレーにより塗布した。スプレーによる塗布は、成膜温度を80℃とし、スプレーノズルと伸縮性樹脂基板との距離を100mmとし、25ml、50ml、100ml塗布した。その後、乾燥させることによって、伸縮性樹脂基板の表面に不規則性を有する微細な凹凸構造を形成した。
【0097】
次に、伸縮性樹脂基板の面上に、スパッタリング装置(DC50W)を用いて、厚み100nmの金(Au)薄膜を形成することによって、伸縮性をする配線基板を作製した。
【0098】
作製された配線基板について、Au薄膜の伸長時の抵抗変化を評価するため、4探針法抵抗率測定装置(ロレスター、三菱化学社製)を用いて、室温、大気中にて、配線基板を一軸方向に伸長しながら、Au薄膜の表面シート抵抗[Ω/□]を測定した。その測定結果を
図19に示す。
【0099】
また、配線基板の伸長率を0%、30%、50%としたときに、配線基板の表面に生じる亀裂を光学顕微鏡により観察した。その観察した写真を
図20~
図22に示す。
【0100】
図19に示すように、IPA(塗液)の塗布量が25ml、50ml、100mlの何れの場合も、配線基板の伸長に対してAu薄膜の抵抗変化が低く抑えられていることが分かる。
【0101】
(実施例2-1~実施例2-5)
次に、下記表3に示す条件にて、実施例2-1~実施例2-5の配線基板をそれぞれ作製した。また、実施例2-1~実施例2-5の配線基板について、凹凸構造の形成後に伸縮性樹脂基板の表面粗さ(Sq)を測定した。Au薄膜の厚みTkについては、何れも上記式(1)の関係を満足している。
【0102】
そして、作製した配線基板の伸長率が50%のときの金属薄膜の表面シート抵抗を測定し、その評価を行った。その評価結果を下記表3に示す。なお、表3に示す評価基準については、上記表1に示す場合と同様である。
【0103】
【0104】
表3に示すように、実施例2-1~実施例2-5では、何れも良好な評価結果が得られた。また、金属薄膜としてAu薄膜以外にも、アルミニウム(Al)薄膜や銀(Ag)薄膜を用いた場合でも同様に、高い伸縮性と導電性が得られた。
(第2の比較例)
第2の比較例については、上記第1の比較例と同様のため、その説明を省略するものとする。すなわち、上記配線基板1Bの構成のうち、凹凸構造5を省略した場合には、上記
図16に示すように、配線基板の伸長に対してAu薄膜の抵抗変化が増加し、配線基板の伸長率を30%としたときに断線した。
【0105】
(比較例2-1~比較例2-2)
次に、下記表4に示す条件にて、凹凸構造を省略した比較例2-1の配線基板と、Au薄膜の厚み(Tk)を350nm、すなわち凹凸構造の表面粗さ(Sq)よりも2倍以上とした比較例2-2の配線基板とをそれぞれ作製した。
【0106】
そして、作製した配線基板の伸長率が50%のときの金属薄膜の表面シート抵抗を測定し、その評価を行った。その評価結果を下記表4に示す。なお、表4に示す評価基準については、上記表1に示す場合と同様である。
【0107】
【0108】
表4に示すように、比較例1-1~比較例2-2では、何れも断線し、良好な評価結果が得られなかった。