(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181853
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20231218BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231218BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20231218BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L21/66 L
H01L21/78 B
B23K26/00 M
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095217
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 篤
【テーマコード(参考)】
4E168
4M106
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA00
4E168CA07
4E168CB07
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
4M106AA01
4M106BA05
4M106CA10
4M106CA22
4M106DH12
4M106DH32
4M106DH39
4M106DJ20
5F063AA02
5F063AA48
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063DD25
5F063DD32
5F063DE01
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE32
5F063DE33
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】板状物を加工することなく板状物の加工性に対応した抵抗率を判断することを可能とすること。
【解決手段】抵抗率の検出方法は、裏面と、裏面の反対側の表面とを有する板状物の抵抗率を検出する抵抗率の検出方法であって、板状物の裏面に対して光源から光を照射し、裏面で反射した光と、裏面を透過し表面で反射した光との干渉波形を取得する干渉波形取得ステップ1005と、干渉波形取得ステップ1005で取得した干渉波形に基づいて板状物の抵抗率を推定する推定ステップ1006と、を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面と、該第一の面の反対側の第二の面とを有する板状物の抵抗率を検出する抵抗率の検出方法であって、
板状物の該第一の面に対して光源から光を照射し、該第一の面で反射した光と、該第一の面を透過し該第二の面で反射した光との干渉波形を取得する干渉波形取得ステップと、
該干渉波形取得ステップで取得した干渉波形に基づいて該板状物の抵抗率を推定する推定ステップと、
を含むことを特徴とする、抵抗率の検出方法。
【請求項2】
該推定ステップでは、該干渉波形取得ステップで取得した干渉波形の最大値に基づいて該板状物の抵抗率を推定することを特徴とする、請求項1に記載の抵抗率の検出方法。
【請求項3】
該干渉波形取得ステップを種々の抵抗率を有する板状物に対して行い、各々の板状物の抵抗率と、該抵抗率に対応する干渉波形の最大値と、を紐付けた抵抗率情報を予め記憶しておく記憶ステップを更に備え、
該推定ステップは、記憶ステップで記憶された該抵抗率情報に基づいて板状物の抵抗率を逆算することを特徴とする、請求項2に記載の抵抗率の検出方法。
【請求項4】
該推定ステップでは、該干渉波形取得ステップで取得した干渉波形をフーリエ変換し、変換後の波形の最大値に基づいて該板状物の抵抗率を推定することを特徴とする、請求項1に記載の抵抗率の検出方法。
【請求項5】
該干渉波形取得ステップを種々の抵抗率を有する板状物に対して行い各々の板状物の抵抗率と、該抵抗率に対応する干渉波形をフーリエ変換した波形の最大値と、を紐付けた抵抗率情報を予め記憶しておく記憶ステップを更に備え、
該推定ステップは、記憶ステップで記憶された該抵抗率情報に基づいて板状物の抵抗率を逆算することを特徴とする、請求項4に記載の抵抗率の検出方法。
【請求項6】
第一の面と、該第一の面の反対側の第二の面とを有する板状物を加工する板状物の加工方法であって、
請求項1乃至請求項5のうちのいずれか一項に記載の抵抗率の検出方法を用いて板状物の抵抗率を検出する抵抗率検出ステップと、
該抵抗率に対応する加工条件を選定する加工条件選定ステップと、
該加工条件選定ステップで選定された加工条件で該板状物に対してレーザービームを照射して加工を施すレーザービーム照射ステップと、
を実施することを特徴とする、板状物の加工方法。
【請求項7】
該抵抗率検出ステップを実施した後、検出した抵抗率を有する板状物に対して該レーザービームの照射による加工が可能か否かを判断する判断ステップを更に含むことを特徴とする、請求項6に記載の板状物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハからチップを生成するために、ウエーハに対して透過性を有するレーザービームを照射して板状物であるウエーハ内部に改質層を形成し、強度等が低下した改質層を起点として分割する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
改質層を形成する際、ウエーハに不純物がドープされていると、ドープされている不純物の量などによってレーザービームの透過率や屈折率が異なる。このため、同じ厚みのウエーハであっても集光点の位置が変化して適正な位置に改質層を形成できなかったり、レーザービームの吸収が増えるので厚み方向の深い位置に改質層を形成できないという問題がある。
【0004】
上記の問題に対して、ウエーハに添加されている不純物に対応して適切な加工条件で改質層を形成することが可能なウエーハの加工方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-192370号公報
【特許文献2】特開2013-258253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の特許文献2に示された方法では事前に外周余剰領域に対して加工を実施しなければならないという課題がある。
【0007】
ウエーハに不純物が添加されていると電気抵抗率が変化することから、抵抗率計等の測定器を用いて予め抵抗率を測定しておく方法も用いられているが、測定した抵抗率毎にウエーハを選別しておく必要があり管理が煩雑になるという課題が存在している。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、板状物を加工することなく板状物の加工性に対応した抵抗率を判断することを可能とする抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の抵抗率の検出方法は、第一の面と、該第一の面の反対側の第二の面とを有する板状物の抵抗率を検出する抵抗率の検出方法であって、板状物の該第一の面に対して光源から光を照射し、該第一の面で反射した光と、該第一の面を透過し該第二の面で反射した光との干渉波形を取得する干渉波形取得ステップと、該干渉波形取得ステップで取得した干渉波形に基づいて該板状物の抵抗率を推定する推定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記抵抗率の検出方法において、該推定ステップでは、該干渉波形取得ステップで取得した干渉波形の最大値に基づいて該板状物の抵抗率を推定しても良い。
【0011】
前記抵抗率の検出方法において、該干渉波形取得ステップを種々の抵抗率を有する板状物に対して行い、各々の板状物の抵抗率と、該抵抗率に対応する干渉波形の最大値と、を紐付けた抵抗率情報を予め記憶しておく記憶ステップを更に備え、該推定ステップは、記憶ステップで記憶された該抵抗率情報に基づいて板状物の抵抗率を逆算しても良い。
【0012】
前記抵抗率の検出方法において、該推定ステップでは、該干渉波形取得ステップで取得した干渉波形をフーリエ変換し、変換後の波形の最大値に基づいて該板状物の抵抗率を推定しても良い。
【0013】
前記抵抗率の検出方法において、該干渉波形取得ステップを種々の抵抗率を有する板状物に対して行い各々の板状物の抵抗率と、該抵抗率に対応する干渉波形をフーリエ変換した波形の最大値と、を紐付けた抵抗率情報を予め記憶しておく記憶ステップを更に備え、該推定ステップは、記憶ステップで記憶された該抵抗率情報に基づいて板状物の抵抗率を逆算しても良い。
【0014】
本発明の板状物の加工方法は、第一の面と、該第一の面の反対側の第二の面とを有する板状物を加工する板状物の加工方法であって、前記抵抗率の検出方法を用いて板状物の抵抗率を検出する抵抗率検出ステップと、該抵抗率に対応する加工条件を選定する加工条件選定ステップと、該加工条件選定ステップで選定された加工条件で該板状物に対してレーザービームを照射して加工を施すレーザービーム照射ステップと、を実施することを特徴とする。
【0015】
前記板状物の加工方法において、該抵抗率検出ステップを実施した後、検出した抵抗率を有する板状物に対して該レーザービームの照射による加工が可能か否かを判断する判断ステップを更に含んでも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、板状物を加工することなく板状物の加工性に対応した抵抗率を判断することを可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る抵抗率の検出方法の検出対象及び板状物の加工方法の加工対象の板状物の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された板状物を裏面側からみた斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示されたレーザー加工装置の分光干渉計の構成を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された分光干渉計が取得した干渉波形の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図3に示されたレーザー加工装置の制御ユニットの記憶部が記憶した抵抗率情報を示す図である。
【
図8】
図8は、
図3に示されたレーザー加工装置の制御ユニットの記憶部が記憶した判断条件を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る板状物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る抵抗率の測定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の制御ユニットの記憶部が記憶した抵抗率情報を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の分光干渉計が取得した干渉波形をフーリエ変換して得られる波形の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る抵抗率の測定方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0019】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る抵抗率の検出方法の検出対象及び板状物の加工方法の加工対象の板状物の斜視図である。
図2は、
図1に示された板状物を裏面側からみた斜視図である。
【0020】
実施形態1に係る抵抗率の検出方法の検出対象及び板状物の加工方法の加工対象の板状物1は、シリコン、ガリウムヒ素、又はSiC(炭化ケイ素)等などを基板2とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。板状物1は、
図1に示すように、第二の面である表面3に互いに交差する分割予定ライン4が複数設定され、分割予定ライン4によって区画された領域にデバイス5が形成されている。
【0021】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、又はメモリ(半導体記憶装置)である。
【0022】
また、実施形態1において、板状物1は、
図1及び
図2に示すように、結晶方位を示すノッチ6が外縁に形成されている。板状物1は、基板2に各種のドープ材が添加される。板状物1は、基板2に添加されるドープ材の量によって電気的抵抗即ち抵抗率が変化する。実施形態1において、板状物1は、表面3の反対側の第一の面である裏面7からレーザービーム21が分割予定ライン4に沿って照射されるなどして、個々のデバイス5に分割される。即ち、板状物1は、第一の面である裏面7と、裏面7の反対側の第二の面である表面3とを有している。
【0023】
(レーザー加工装置)
次に、実施形態1に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置を説明する。
図3は、実施形態1に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図4は、
図3に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
【0024】
図3に示されたレーザー加工装置10は、板状物1の裏面7から板状物1を構成する基板2に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザービーム21の集光点22を基板2の内部に設定して、レーザービーム21を分割予定ライン4に沿って照射して、基板2の内部に分割予定ライン4に沿って改質層8(
図4に示す)を形成する加工装置である。
【0025】
なお、改質層8とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。改質層8の機械的な強度は、他の部分の機械的強度よりも低い。また、改質層8は、板状物1の抵抗率が小さくなるほど、基板2の内部に形成しにくくなり、板状物1の抵抗率が大きくなるほど、基板2の内部に形成しやすくなる。
【0026】
レーザー加工装置10は、
図3に示すように、板状物1を保持する保持テーブル11と、レーザービーム照射ユニット20と、移動ユニット30と、撮像ユニット40と、分光干渉計50と、制御ユニット100とを備える。
【0027】
保持テーブル11は、板状物1を水平方向と平行な保持面12で保持する。保持面12は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル11は、保持面12上に表面3が載置され、保持面12が真空吸引源により吸引されることで、保持面12上に載置された板状物1を吸引保持する。
【0028】
また、保持テーブル11は、移動ユニット30の回転移動ユニット33により保持面12に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。保持テーブル11は、回転移動ユニット33とともに、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向に移動されかつY軸移動ユニット32により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。保持テーブル11は、移動ユニット30によりレーザービーム照射ユニット20の下方の加工領域と、レーザービーム照射ユニット20の下方から離れて板状物1が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0029】
移動ユニット30は、保持テーブル11とレーザービーム照射ユニット20が照射するレーザービーム21の集光点22とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、互いに直交し、かつ保持面12(即ち水平方向)と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との双方と直交する方向である。
【0030】
移動ユニット30は、保持テーブル11をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、保持テーブル11をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、保持テーブル11をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33と、レーザービーム照射ユニット20のレーザービーム21の集光点22をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット34とを備えている。
【0031】
Y軸移動ユニット32は、保持テーブル11と、レーザービーム照射ユニット20のレーザービーム21の集光点22とをY軸方向に相対的に移動する割り出し送りユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット32は、レーザー加工装置10の装置本体13上に設置されている。Y軸移動ユニット32は、X軸移動ユニット31を支持した移動プレート16をY軸方向に移動自在に支持している。
【0032】
X軸移動ユニット31は、保持テーブル11と、レーザービーム照射ユニット20のレーザービーム21の集光点22とをX軸方向に相対的に移動する加工送りユニットである。X軸移動ユニット31は、移動プレート16上に設置されている。X軸移動ユニット31は、保持テーブル11をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33を支持した第2移動プレート17をX軸方向に移動自在に支持している。第2移動プレート17は、回転移動ユニット33、保持テーブル11を支持している。回転移動ユニット33は、保持テーブル11を支持している。
【0033】
Z軸移動ユニット34は、保持テーブル11と、レーザービーム照射ユニット20のレーザービーム21の集光点22とをZ軸方向に相対的に移動する送りユニットである。Z軸移動ユニット34は、装置本体13から立設した立設柱14に設置されている。Z軸移動ユニット34は、レーザービーム照射ユニット20の後述する集光レンズ24等を先端に配置した支持柱15をZ軸方向に移動自在に支持している。
【0034】
X軸移動ユニット31は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると第2移動プレート17をX軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、第2移動プレート17をX軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。Y軸移動ユニット32は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると移動プレート16をY軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート16をY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。Z軸移動ユニット34は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると支持柱15をZ軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、支持柱15をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。回転移動ユニット33は、保持テーブル11を軸心回りに回転するモータ等を備える。
【0035】
また、レーザー加工装置10は、保持テーブル11のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、保持テーブル11のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、支持柱15のZ軸方向の位置を検出するための図示しないZ軸方向位置検出ユニットを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0036】
レーザービーム照射ユニット20は、保持テーブル11の保持面12に保持された板状物1に対してパルス状のレーザービーム21を集光して照射して、板状物1にレーザー加工を施す加工ユニットである。実施形態1では、レーザービーム照射ユニット20の一部は、
図1に示すように、装置本体13から立設した立設柱14に設置されたZ軸移動ユニット34により支持された支持柱15の先端に配置されている。
【0037】
レーザービーム照射ユニット20は、
図4に示すように、パルス状のレーザービーム21を出射するレーザー発振器23と、レーザー発振器23から出射したレーザービーム21を集光して板状物1に照射する集光器である集光レンズ24とを備える。実施形態1では、レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振器23が出射したレーザービーム21を集光レンズ24に向けて反射するミラー25を備える。
【0038】
撮像ユニット40は、保持テーブル11に保持された板状物1を撮像するものである。撮像ユニット40は、対物レンズがZ軸方向に対向するものを撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備えた赤外線カメラである。実施形態1では、撮像ユニット40は、
図1に示すように、支持柱15の先端に配置されて、対物レンズがレーザービーム照射ユニット20の集光レンズ24とX軸方向に沿って並ぶ位置に配置されている。
【0039】
撮像ユニット40は、撮像素子が撮像した画像を取得し、取得した画像を制御ユニット100に出力する。また、撮像ユニット40は、保持テーブル11の保持面12に保持された板状物1を撮像して、板状物1とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を取得し、取得した画像を制御ユニット100に出力する。
【0040】
(分光干渉計)
次に、分光干渉計50を説明する。
図5は、
図3に示されたレーザー加工装置の分光干渉計の構成を模式的に示す図である。
図6は、
図5に示された分光干渉計が取得した干渉波形の一例を示す図である。
【0041】
分光干渉計50は、
図5に示すように、保持テーブル11に保持された板状物1に対して光源51から光52を照射する。分光干渉計50は、裏面7で反射した光52(以下、符号521と記す)と、裏面7を透過し表面3で反射した光52(以下、符号522と記す)との干渉波形60(
図6に例示する)を取得するものである。分光干渉計50は、
図5に示すように、光52を出射する光源51と、保持テーブル11の保持面12に対向するセンサヘッド53と、回折格子54と、ラインセンサ55とを備える。
【0042】
実施形態1では、光源51は、SLD(Super Luminescent Diode)光源であり、波長が1250nm~1350nmの光52を出射する。センサヘッド53は、光源51が出射した光52を透過して、保持テーブル11に保持された板状物1に照射するとともに、板状物1の裏面7で反射した光521と裏面7を透過し表面3で反射した光522との干渉光を回折格子54に導くものである。
【0043】
回折格子54は、光521と光522との干渉光を波長ごとに異なる角度で回折してラインセンサ55に向けて反射して、光521,522を波長毎に分光する。ラインセンサ55は、撮像素子を直線状に配置し、回折格子54により分光された光523を各撮像素子で受光する。ラインセンサ55は、各撮像素子が受光した光523の強度を示す情報を制御ユニット100に向けて出力する。
【0044】
分光干渉計50は、保持テーブル11に保持された板状物1に対して光源51から光52を照射し、裏面7で反射した光521と裏面7を透過し表面3で反射した光522との干渉光を回折格子54で波長毎に分光し、ラインセンサ55の各撮像素子で分光された光523を受光して、
図6に示された干渉波形60を取得し、取得した干渉波形60を制御ユニット100に出力する。なお、
図6の横軸は、各撮像素子の位置を示し、縦軸は、各撮像素子が受光した光523の強度を示している。また、
図6に例示された干渉波形60の光523の強度の最大値61は、分光干渉計50が光52を照射した板状物1の抵抗率に対応した値となっている。
【0045】
次に、制御ユニット100を説明する。
図7は、
図3に示されたレーザー加工装置の制御ユニットの記憶部が記憶した抵抗率情報を示す図である。
図8は、
図3に示されたレーザー加工装置の制御ユニットの記憶部が記憶した判断条件を示す図である。
【0046】
制御ユニット100は、レーザー加工装置10の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、板状物1に対する加工動作をレーザー加工装置10に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置10を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置10の上述した構成要素に出力して、制御ユニット100の機能を実現する。
【0047】
また、レーザー加工装置10は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示手段である表示ユニット110と、オペレータが加工条件などを入力する際に用いる入力手段である入力ユニット120と、図示しない報知ユニット等を備えている。表示ユニット110、入力ユニット120及び報知ユニットは、制御ユニット100に接続している。入力ユニット120は、表示ユニット110に設けられたタッチパネルにより構成される。報知ユニットは、音と光と表示ユニット110上のメッセージとのうち少なくともいずれかを発して、オペレータに報知する。
【0048】
また、制御ユニット100は、
図3に示すように、加工制御部101と、記憶部102とを備える。加工制御部101は、レーザー加工装置10の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、板状物1に対する加工動作をレーザー加工装置10の各構成要素に実施させるものである。
【0049】
記憶部102は、
図7に示された抵抗率情報70と、
図8に示された判断条件80とを記憶している。
【0050】
抵抗率情報70は、同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1の抵抗率と、抵抗率に対応する干渉波形60の最大値61とを紐付けて、これらの関係を示すものである。即ち、抵抗率情報70は、同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1の抵抗率と、抵抗率に対応する干渉波形60の最大値61とを一対一で対応付けたものである。なお、
図7に示された抵抗率情報70は、横軸が同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1の抵抗率を示し、縦軸が干渉波形60の最大値61を示している。
【0051】
抵抗率情報70は、抵抗率が既知の同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1に分光干渉計50が光52を照射して干渉波形60を取得し、既知の抵抗率と干渉波形60の最大値61の実測値72とを最小二乗法等により近似して求められている。記憶部102は、板状物1の材質及び厚み毎に対応した抵抗率情報70を記憶している。このように、抵抗率情報70は、種々の抵抗率の板状物1の干渉波形60を取得し、各々の板状物1の抵抗率と、抵抗率に対応する干渉波形60の最大値61とを紐付けたものである。
【0052】
図8に示された判断条件80は、分光干渉計50が取得した干渉波形60の最大値61と抵抗率情報70とにより求められた加工対象の板状物1の抵抗率に基づいて加工条件を判断するための条件である。実施形態1では、判断条件80は、板状物1の抵抗率が予め定められた第1の値未満である場合に加工不可であること定めている。また、判断条件80は、板状物1の抵抗率が第1の値以上でかつ予め定められた第2の値未満である場合にオペレータが設定した加工条件(
図8には、加工条件81と記載)で加工することを定めている。また、判断条件80は、板状物1の抵抗率が第2の値以上でかつ予め定められた第3の値未満である場合に加工条件82で加工することを定めている。
【0053】
なお、第1の値よりも第2の値が大きく、第2の値よりも第3の値が大きな値である。また、加工条件82は、オペレータが設定した加工条件81よりも改質層8を形成しやすくなる条件である。例えば、加工条件82は、オペレータが設定した加工条件81よりもレーザービーム21の出力を弱くしたり、同一の分割予定ライン4に厚み方向に形成する改質層8の数を減らしたりする。このように、判断条件80は、板状物1に加工が可能な抵抗率の場合、抵抗率が大きくなるのにしたがって改質層8を形成しやすくなるので、抵抗率が大きくなるのにしたがって改質層8を形成しにくくなる加工条件81,82で加工することを定めている。
【0054】
なお、加工制御部101の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施することにより実現される。記憶部102の機能は、前述した記憶装置により実現される。
【0055】
(板状物の加工方法及び抵抗率の測定方法)
次に、実施形態1に係る板状物の加工方法及び抵抗率の測定方法を説明する。
図9は、実施形態1に係る板状物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図10は、実施形態1に係る抵抗率の測定方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る板状物の加工方法は、レーザー加工装置10の加工動作でもある。
【0056】
実施形態1に係る板状物の加工方法は、前述した板状物1を加工する方法である。板状の加工方法は、レーザー加工装置10の制御ユニット100の加工制御部101が、オペレータが入力ユニット120などを操作するなどして入力した加工条件を登録し、板状物1の表面3側が保持テーブル11の保持面12に載置され、制御ユニット100の加工制御部101がオペレータからの加工開始指示を受け付けると開始する。なお、加工条件は、加工対象の板状物1の材質及び厚み等を含む。板状物の加工方法は、
図9に示すように、抵抗率検出ステップ1001と、判断ステップ1002と、加工条件選定ステップ1003と、レーザービーム照射ステップ1004とを実施する。
【0057】
(抵抗率検出ステップ)
抵抗率検出ステップ1001は、実施形態1に係る抵抗率の測定方法を用いて保持テーブル11の保持面12に表面3側が載置された加工対象の板状物1の抵抗率71(
図7に示す)を検出するステップである。抵抗率検出ステップ1001即ち実施形態1に係る抵抗率の測定方法は、保持テーブル11の保持面12に表面3側が載置された板状物1の抵抗率を検出する方法でもある。抵抗率検出ステップ1001即ち実施形態1に係る抵抗率の測定方法は、
図10に示すように、干渉波形取得ステップ1005と、推定ステップ1006とを含む。
【0058】
(干渉波形取得ステップ)
干渉波形取得ステップ1005は、板状物1の裏面7に対して光源51からの光52を照射し、裏面7で反射した光521と、裏面7を透過し表面3で反射した光522との干渉波形60を取得するステップである。干渉波形取得ステップ1005では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が保持テーブル11の保持面12に板状物1の表面3を吸引保持し、移動ユニット30を制御して保持テーブル11を加工領域に向けて移動するとともに、板状物1を分光干渉計50の下方に位置付ける。
【0059】
干渉波形取得ステップ1005では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が分光干渉計50を制御して光源51から光52を出射して板状物1に照射するとともに、裏面7で反射した光521と表面3で反射した光522との干渉光を回折格子54で分光してラインセンサ55で受光する。干渉波形取得ステップ1005では、レーザー加工装置10は、分光干渉計50がラインセンサ55で光521と光522との干渉光を受光して、干渉波形60を取得し、取得した干渉波形60を制御ユニット100に出力する。
【0060】
(推定ステップ)
推定ステップ1006は、干渉波形取得ステップ1005で取得した干渉波形60に基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を推定するステップである。推定ステップ1006では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、干渉波形60から最大値61を抽出し、加工条件で定められた材質及び厚みの板状物1の抵抗率情報70を記憶部102から読み出す。推定ステップ1006では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、例えば、記憶部102から読み出した抵抗率情報70において干渉波形60から抽出した最大値61に対応した抵抗率71を抽出する。こうして、推定ステップ1006では、制御ユニット100の加工制御部101が、干渉波形取得ステップ1005において取得した干渉波形60の最大値61に基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を推定するとともに、推定の際には、記憶部102に記憶された抵抗率情報70に基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を逆算する。
【0061】
(判断ステップ)
判断ステップ1002は、抵抗率検出ステップ1001を実施した後、検出した抵抗率71を有する加工対象の板状物1に対してレーザービーム21の照射による加工が可能か否かを判断するステップである。実施形態1において、判断ステップ1002では、制御ユニット100の加工制御部101が、記憶部102から判断条件80を読み出し、推定ステップ1006で推定した抵抗率71即ち抵抗率検出ステップ1001で検出した抵抗率71が第1の値未満であるか否かを判断して、加工が可能な否かを判断する。
【0062】
実施形態1において、判断ステップ1002では、制御ユニット100の加工制御部101が、推定ステップ1006で推定した抵抗率71即ち抵抗率検出ステップ1001で検出した抵抗率71が第1の値未満であると判断すると、加工対象の板状物1に対してレーザービーム21の照射による加工が可能ではない(判断ステップ1002:No)と判断する。実施形態1において、判断ステップ1002では、制御ユニット100の加工制御部101が、加工対象の板状物1に対してレーザービーム21の照射による加工が可能ではないと判断すると、報知ユニットに報知させ(ステップ1010)、板状物の加工方法を終了する。
【0063】
また、実施形態1において、判断ステップ1002では、制御ユニット100の加工制御部101が、推定ステップ1006で推定した抵抗率71即ち抵抗率検出ステップ1001で検出した抵抗率71が第1の値未満ではないと判断すると、加工対象の板状物1に対してレーザービーム21の照射による加工が可能である(判断ステップ1002:Yes)と判断する。実施形態1において、判断ステップ1002では、制御ユニット100の加工制御部101が、加工対象の板状物1に対してレーザービーム21の照射による加工が可能であると判断すると、加工条件選定ステップ1003に進む。
【0064】
(加工条件選定ステップ)
加工条件選定ステップ1003は、推定ステップ1006で推定した抵抗率に対応する加工条件を選定するステップである。加工条件選定ステップ1003では、制御ユニット100の加工制御部101が、推定ステップ1006で推定した抵抗率71即ち抵抗率検出ステップ1001で検出した抵抗率71が第1の値以上でかつ第2の値未満であるか、又は第2の値以上でかつ第3の値未満であるかを判断する。
【0065】
加工条件選定ステップ1003では、制御ユニット100の加工制御部101が、推定ステップ1006で推定した抵抗率71即ち抵抗率検出ステップ1001で検出した抵抗率71が第1の値以上でかつ第2の値未満であると判断すると、判断条件80を参照して、オペレータが設定した加工条件81を選定する。また、加工条件選定ステップ1003では、制御ユニット100の加工制御部101が、推定ステップ1006で推定した抵抗率71即ち抵抗率検出ステップ1001で検出した抵抗率71が第2の値以上でかつ第3の値未満であると判断すると、判断条件80を参照して、加工条件82を選定する。
【0066】
(レーザービーム照射ステップ)
レーザービーム照射ステップ1004は、加工条件選定ステップ1003で選定された加工条件81,82で加工対象の板状物1に対してレーザービーム21を照射して加工を施すステップである。レーザービーム照射ステップ1004では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、移動ユニット30を制御して、加工対象の板状物1を撮像ユニット40の下方に位置付け、撮像ユニット40で板状物1の裏面7を撮像させる。
【0067】
レーザービーム照射ステップ1004では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が撮像ユニット40が撮像して取得した画像から分割予定ライン4を検出し、分割予定ライン4とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行する。レーザービーム照射ステップ1004では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、加工条件選定ステップ1003で選定された加工条件81,82等に基づいて、
図4に示すように、板状物1に対して透過性を有する波長のレーザービーム21の集光点22を基板2の内部に位置付けて、保持テーブル11とレーザービーム照射ユニット20とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながら板状物1の裏面7側から板状物1に分割予定ライン4に沿ってパルス状のレーザービーム21を照射する。
【0068】
すると、板状物1は、
図4に示すように、レーザービーム21の波長が板状物1に対して透過性を有する波長を有するために、分割予定ライン4に沿って基板2の内部に改質層8が形成される。レーザービーム照射ステップ1004では、レーザー加工装置10は、全ての分割予定ライン4に沿って基板2の内部に改質層8を形成すると、レーザービーム照射ユニット20からのレーザービーム21の照射を停止し、保持テーブル11を搬入出領域まで移動させた後、保持面12の吸引保持を停止して、板状物の加工方法即ち加工動作を終了する。
【0069】
以上説明した実施形態1に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、レーザー加工装置10の記憶部102に板状物1の抵抗率と干渉波形60の最大値61とを紐付けた抵抗率情報70を予め記憶しておき、加工対象の板状物1の干渉波形60を取得し、取得した干渉波形60の最大値61と抵抗率情報70とに基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を推定する。その結果、実施形態1に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、板状物1を加工することなく板状物1の加工性に対応した抵抗率71を判断することが可能になるという効果を奏する。
【0070】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図11は、実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の制御ユニットの記憶部が記憶した抵抗率情報を示す図である。
図12は、実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の分光干渉計が取得した干渉波形をフーリエ変換して得られる波形の一例を示す図である。
【0071】
実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、レーザー加工装置10の制御ユニット100が抵抗率情報70の代わりに
図11に示す抵抗率情報70-1を予め記憶部102に記憶し、推定ステップ1006において、干渉波形取得ステップ1005で取得した干渉波形60をフーリエ変換して得られる
図12に示す波形60-1の最大値61-1と、抵抗率情報70-1とに基づいて、板状物1の抵抗率71を推定する事以外、実施形態1と同じである。
【0072】
抵抗率情報70-1は、同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1の抵抗率と、抵抗率に対応する干渉波形60をフーリエ変換して得られる
図12に例示する波形60-1の最大値61-1とを紐付けて、これらの関係を示すものである。即ち、抵抗率情報70は、同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1の抵抗率と、抵抗率に対応する干渉波形60をフーリエ変換して得られる波形60-1の最大値61-1とを一対一で対応付けたものである。なお、
図11に示された抵抗率情報70-1は、横軸が同一の材質でかつ厚みの複数の板状物1の抵抗率を示し、縦軸が干渉波形60をフーリエ変換した波形60-1の最大値61-1を示している。また、
図12に示された波形60-1は、横軸が板状物1の裏面7の高さを示し、縦軸が信号強度を示している。
【0073】
抵抗率情報70-1は、抵抗率が既知の同一の材質でかつ同一の厚みの複数の板状物1に分光干渉計50が光52を照射して干渉波形60を取得し、既知の抵抗率と干渉波形60をフーリエ変換した波形60-1の最大値61-1の実測値72-1とを最小二乗法により近似して求められている。記憶部102は、実施形態1と同様に、板状物1の材質及び厚み毎に対応した抵抗率情報70-1を記憶している。このように、抵抗率情報70-1は、種々の抵抗率の板状物1から取得した干渉波形60をフーリエ変換し、各々の板状物1の抵抗率と、抵抗率に対応する干渉波形60をフーリエ変換した波形60-1の最大値61-1とを紐付けたものである。
【0074】
実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法において、推定ステップ1006では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、干渉波形取得ステップ1005で加工対象の板状物1から取得した干渉波形60をフーリエ変換する。実施形態1の変形例において、推定ステップ1006では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、フーリエ変換後の波形60-1から最大値61-1を抽出し、加工条件で定められた材質及び厚みの板状物1の抵抗率情報70-1を記憶部102から読み出す。
【0075】
実施形態1の変形例において、推定ステップ1006では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が、記憶部102から読み出した抵抗率情報70-1において波形60-1から抽出した最大値61-1に対応した抵抗率71を抽出する。こうして、推定ステップ1006では、制御ユニット100の加工制御部101が、干渉波形取得ステップ1005において取得した干渉波形60をフーリエ変換し、変換後の波形60-1に基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を推定するとともに、推定の際には、記憶部102に記憶された抵抗率情報70-1に基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を逆算する。
【0076】
実施形態1の変形例に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、レーザー加工装置10の記憶部102に板状物1の抵抗率と干渉波形60をフーリエ変換した波形60-1の最大値61-1とを紐付けた抵抗率情報70-1を予め記憶しておき、加工対象の板状物1の干渉波形60を取得し、取得した干渉波形60のフーリエ変換後の波形60-1の最大値61-1と抵抗率情報70-1とに基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を推定するので、実施形態1と同様に、板状物1を加工することなく板状物1の加工性に対応した抵抗率71を判断することが可能になるという効果を奏する。
【0077】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図13は、実施形態2に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法を実施するレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図14は、実施形態2に係る抵抗率の測定方法の流れを示すフローチャートである。なお、
図13及び
図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
実施形態2に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、レーザー加工装置10の制御ユニット100が情報取得部103を備え、板状物の加工方法の抵抗率検出ステップ1001即ち抵抗率の検出方法が異なること以外、実施形態1及び実施形態1の変形例と同一である。制御ユニット100の情報取得部103は、抵抗率情報70,70-1を取得し、記憶部102に記憶するものである。情報取得部103の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施することにより実現される。
【0079】
実施形態2に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、抵抗率検出ステップ1001即ち抵抗率の検出方法が、
図14に示すように、記憶ステップ1007を更に備える。記憶ステップ1007は、実施形態1の抵抗率検出ステップ1001を種々の抵抗率を有する板状物1に対して行い、抵抗率情報70,70-1を予め記憶部102に記憶するステップである。記憶ステップ1007では、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の情報取得部103が、加工対象の板状物1と同一の材質であり同一の厚みでかつ抵抗率が既知である複数の板状物1を保持テーブル11の保持面12に順に保持し、分光干渉計50で各板状物1の干渉波形60を取得する。
【0080】
実施形態2において、推定ステップ1006において、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が実施形態1及び変形例と同様に、記憶ステップ1007で記憶された抵抗率情報70,70-1に基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を逆算する。また、実施形態2において、推定ステップ1006において、レーザー加工装置10は、制御ユニット100の加工制御部101が実施形態1の変形例と同様に、干渉波形取得ステップ1005で取得した干渉波形60をフーリエ変換し、フーリエ変換後の波形60-1の最大値61-1に基づいて板状物の抵抗率を推定する。
【0081】
実施形態2に係る抵抗率の検出方法及び板状物の加工方法は、抵抗率情報70,70-1を記憶ステップ1007で記憶し、加工対象の板状物1の干渉波形60を取得し、取得した干渉波形60の最大値61又はフーリエ変換後の波形60-1の最大値61-1と抵抗率情報70-1とに基づいて加工対象の板状物1の抵抗率71を推定するので、実施形態1と同様に、板状物1を加工することなく板状物1の加工性に対応した抵抗率71を判断することが可能になるという効果を奏する。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、抵抗率の測定方法即ち干渉波形取得ステップ1005及び推定ステップ1006のみ、又は、記憶ステップ1007、干渉波形取得ステップ1005及び推定ステップ1006のみを実施し、判断ステップ1002、加工条件選定ステップ1003及びレーザービーム照射ステップ1004を必ずしも実施しなくてもよい。また、本発明では、同一の材質であり同一の厚みでかつ抵抗率が既知である複数の板状物1に関する抵抗率情報70,70-1を、異なる厚み毎に取得して、取得した複数の厚みそれぞれの抵抗率情報70,70-1をレーザー加工装置10の記憶部102に記憶しておいても良い。この場合、様々な厚みの板状物1の抵抗率71を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
1 板状物
3 表面(第二の面)
7 裏面(第一の面)
21 レーザービーム
51 光源
52 光
60 干渉波形
60-1 波形
61,61-1 最大値
70,70-1 抵抗率情報
71 抵抗率
81,82 加工条件
521 光(第一の面で反射した光)
522 光(第二の面で反射した光)
1001 抵抗率検出ステップ
1002 判断ステップ
1003 加工条件選定ステップ
1004 レーザービーム照射ステップ
1005 干渉波形取得ステップ
1006 推定ステップ
1007 記憶ステップ