IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

特開2023-181863外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス
<>
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図1
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図2
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図3
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図4
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図5
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図6
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図7
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図8
  • 特開-外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181863
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】外装体形成用板材、外装体および外装体付きワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20231218BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231218BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20231218BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H01B7/00 301
F16L57/00 A
B60R16/02 623T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095232
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】須山 博史
(72)【発明者】
【氏名】押野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
【テーマコード(参考)】
3H024
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB03
3H024AC03
5G309AA11
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE02
5G357DE10
(57)【要約】
【課題】周囲に位置する部材(部品)を傷付けずに、両方向に容易に折り曲げて屈曲部を形成することが可能であり、屈曲部になる部分の引張強度を高めることが可能な外装体形成用板材と、それを用いた外装体および外装体付きワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】外装体形成用板材1は、塑性変形可能な樹脂材料からなり、外装体の屈曲部に相当する両側の表面2、3の対向位置に、それぞれ第1凹部21および第2凹部31を有し、第1凹部21および第2凹部31の横断面形状は、1対の凹部開口端部分22a、22bと凹部底部分23とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成されるとともに、1対の凹部開口端部分32a、32bと凹部底部分33とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成され、全体として滑らかな曲線状をなす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能な樹脂材料からなる外装体形成用板材であって、
前記板材は、外装体の屈曲部に相当する両面の対向位置に、それぞれ第1凹部および第2凹部を有し、
前記第1凹部および前記第2凹部の横断面形状は、それぞれ、1対の凹部開口端部分と凹部底部分とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成され、全体として滑らかな曲線状をなす、外装体形成用板材。
【請求項2】
前記板材の厚さを100%とするとき、前記第1凹部および前記第2凹部が位置する前記板材の薄肉部分の最小厚さが、10%以上70%以下の範囲である、請求項1に記載の外装体形成用板材。
【請求項3】
前記板材の厚さを100%とするとき、前記第1凹部の最大深さが、25%以上85%以下の範囲である、請求項1に記載の外装体形成用板材。
【請求項4】
前記板材の厚さを100%とするとき、前記第2凹部の最大深さが、3%以上40%以下の範囲である、請求項1に記載の外装体形成用板材。
【請求項5】
前記第1凹部および前記第2凹部は、前記第1凹部の最大深さを1.00としたときに、前記第2凹部の最大深さが0.04以上1.00以下である、請求項1に記載の外装体形成用板材。
【請求項6】
前記板材を折り曲げて前記外装体の屈曲部を形成するとき、前記第1凹部および前記第2凹部のうち、内向きに折り曲げる側に位置する凹部は、前記凹部開口端部分同士が当接した状態になる、請求項1に記載の外装体形成用板材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の外装体形成用板材を折り曲げることによって形成される、少なくとも1つの屈曲部と、
前記屈曲部を介して連なる複数の板面部と
を有する、外装体。
【請求項8】
前記外装体は、電線の外周に装着される電線用外装体である、請求項7に記載の外装体。
【請求項9】
請求項7に記載の外装体を備える、外装体付きワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装体形成用板材と、それを用いた外装体および外装体付きワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に配索されるワイヤハーネスの外周に、外力からワイヤハーネスを保護するために外装体が用いられる。このような外装体は、ワイヤハーネスの重量や振動などによって変形したり、内部の保護対象物が露呈したりすることは好ましくなく、適度な強度を有することが望まれる。
【0003】
このようなワイヤハーネスを保護する外装体として、例えば特許文献1には、外装体(プロテクタ)付ワイヤハーネスの外装体として、複数の板状部分の間に中空構造が形成された中空板材によって形成された外装体が記載されている。ここで、外装体としては、中空板材のうち折り曲げられる部分に沿って、表面に切断刃や突起を備えたローラーによって、ミシン目などの折れ容易線が形成されるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/016056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される外装体を構成する板材では、一方向に曲げることを前提にしており、また、表面に形成される切り込みやミシン目などの折れ容易線が、引き裂きなどによる破壊の起点になることで、折り曲げて屈曲部になる部分において、引張強度などの機械的強度が低くなる恐れがあった。
【0006】
また、特許文献1に記載される板材では、折り曲げられる部分の剛性が小さいため、折り曲げ角度が変動しやすく、また、形成された外装体が簡単に押し潰されることで外装体の形状が崩れる恐れがあった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載される板材では、切断面に形成されたエッジが、外装体の外面に現れることで、外装体の周囲に位置する部材(部品)を傷付ける恐れがあった。
【0008】
本発明は、周囲に位置する部材(部品)を傷付けずに、両方向に容易に折り曲げて屈曲部を形成することが可能であり、屈曲部になる部分の引張強度を高めることが可能な外装体形成用板材と、それを用いた外装体および外装体付きワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、外装体形成用板材について、外装体の屈曲部に相当する両面の対向位置に、それぞれ第1凹部および第2凹部を設けることで、外装体形成用板材を両方向に容易に折り曲げることができることを見出した。また、第1凹部と第2凹部の横断面形状を、それぞれ、1対の凹部開口端部分と凹部底部分とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成し、全体として滑らかな曲線状にすることで、屈曲部になる部分の引張強度を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1)塑性変形可能な樹脂材料からなる外装体形成用板材であって、前記板材は、外装体の屈曲部に相当する両面の対向位置に、それぞれ第1凹部および第2凹部を有し、前記第1凹部および前記第2凹部の横断面形状は、それぞれ、1対の凹部開口端部分と凹部底部分とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成され、全体として滑らかな曲線状をなす、外装体形成用板材。
【0011】
(2)前記板材の厚さを100%とするとき、前記第1凹部および前記第2凹部が位置する前記板材の薄肉部分の最小厚さが、10%以上70%以下の範囲である、上記(1)に記載の外装体形成用板材。
【0012】
(3)前記板材の厚さを100%とするとき、前記第1凹部の最大深さが、25%以上85%以下の範囲である、上記(1)または(2)に記載の外装体形成用板材。
【0013】
(4)前記板材の厚さを100%とするとき、前記第2凹部の最大深さが、3%以上40%以下の範囲である、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の外装体形成用板材。
【0014】
(5)前記第1凹部および前記第2凹部は、前記第1凹部の最大深さを1.00としたときに、前記第2凹部の最大深さが0.04以上1.00以下である、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の外装体形成用板材。
【0015】
(6)前記板材を折り曲げて前記外装体の屈曲部を形成するとき、前記第1凹部および前記第2凹部のうち、内向きに折り曲げる側に位置する凹部は、前記凹部開口端部分同士が当接した状態になる、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の外装体形成用板材。
【0016】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の外装体形成用板材を折り曲げることによって形成される、少なくとも1つの屈曲部と、前記屈曲部を介して連なる複数の板面部とを有する、外装体。
【0017】
(8)前記外装体は、電線の外周に装着される電線用外装体である、上記(7)に記載の外装体。
【0018】
(9)上記(7)または(8)に記載の外装体を備える、外装体付きワイヤハーネス。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、周囲に位置する部材(部品)を傷付けずに、両方向に容易に折り曲げて屈曲部を形成することが可能であり、屈曲部になる部分の引張強度を高めることが可能な外装体形成用板材と、それを用いた外装体および外装体付きワイヤハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、外装体形成用板材の、第1凹部および第2凹部を含む要部を示した概略正面図である。
図2図2は、外装体形成用板材の、第1凹部および第2凹部を含む要部を示した概略正面図であり、図2(a)は、屈曲前の状態、図2(b)は、外装体形成用板材を一方の表面を内向きに屈曲させた状態、そして、図2(c)は、外装体形成用板材を他方の表面を内向きに屈曲させた状態である。
図3図3は、外装体形成用板材によって形成される電線用外装体の構造を示した概略斜視図である。
図4図4は、本発明例2の外装体形成用板材について、屈曲前の状態で、第1凹部および第2凹部が延在する方向に対して垂直な、厚さ方向を含む断面で観察した図である。
図5図5は、本発明例1~3、比較例1、2の外装体形成用板材から、引張強度測定用のサンプルを切り出す際の、中心線と第1凹部および第2凹部との位置関係を示す模式図である。
図6図6は、本発明例1~3、比較例1、2の外装体形成用板材について、薄肉部分の最小厚さt[mm]と、引張強度[N/mm]の関係を示すグラフであり、薄肉部分の最小厚さを横軸に、引張強度を縦軸にしたものである。
図7図7は、外装体形成用板材の折り曲げ強さの評価方法を説明するための図である。
図8図8は、本発明例1~3、比較例1の外装体形成用板材について、薄肉部分の最小厚さt[mm]と、折り曲げ強さ[N]の関係を示すグラフであって、薄肉部分の最小厚さを横軸に、折り曲げ強さを縦軸にしたものである。
図9図9は、本発明例2の外装体形成用板材について、屈曲後のものを、第1凹部および第2凹部が延在する方向に対して垂直な、厚さ方向を含む断面で観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明のいくつかの実施形態の外装体形成用板材および外装体について、以下で説明する。
【0022】
1.外装体形成用板材について
図1は、外装体形成用板材1の、第1凹部21および第2凹部31を含む要部を示した概略正面図である。また、図2は、外装体形成用板材1の、第1凹部21および第2凹部31を含む要部を示した概略正面図であり、図2(a)は、屈曲前の状態、図2(b)は、外装体形成用板材1を一方の表面2を内向きに屈曲させた状態、そして、図2(c)は、外装体形成用板材1を他方の表面3を内向きに屈曲させた状態である。また、図3は、外装体形成用板材1によって形成される電線用外装体10の構造を示した概略斜視図である。ここでいう「正面」とは、第1凹部21および第2凹部31が延在する方向に対して垂直な、厚さ方向を含む断面を指す。
【0023】
外装体形成用板材1は、図1に示すように、塑性変形可能な樹脂材料からなり、外装体の屈曲部に相当する両側の表面2、3の対向位置に、それぞれ第1凹部21および第2凹部31を有し、第1凹部21の横断面形状は、1対の凹部開口端部分22a、22bと凹部底部分23とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成され、また、第2凹部31の横断面形状は、1対の凹部開口端部分32a、32bと凹部底部分33とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成され、全体として滑らかな曲線状をなす。なお、図1では、第1凹部21の横断面形状および第2凹部31の横断面形状は、それぞれ左右対称に示されているが、これらが左右対称である態様に限定されない。
【0024】
これにより、外装体形成用板材1が、一方の表面2および他方の表面3の対向する位置に、それぞれ第1凹部21および第2凹部31を有することで、外装体形成用板材1を一方の表面2および他方の表面3の側のいずれの向きにも容易に折り曲げることが可能になるため、外装体形成用板材1を任意の側に折り曲げて屈曲部を形成することができる。また、外装体形成用板材1の第1凹部21が、1対の凹部開口端部分22a、22bと凹部底部分23とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成されるとともに、全体として滑らかな曲線状をなすように形成され、また、外装体形成用板材1の第2凹部31が、1対の凹部開口端部分32a、32bと凹部底部分33とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成されるとともに、全体として滑らかな曲線状をなすように形成されることで、外装体形成用板材1の表面2、3に破壊の起点が生じ難くなるため、引張強度などの機械的強度を高めることができる。さらに、外装体形成用板材1が、全体として滑らかな曲線状をなすように形成されることで、角部などが外装体の表面に現れなくなることで、外装体の周囲に位置する部材(部品)を傷付けることが起こり難くなる。したがって、この外装体形成用板材1によることで、周囲に位置する部材(部品)を傷付けずに、両方向に容易に折り曲げて屈曲部を形成することが可能であり、屈曲部になる部分の引張強度を高めることが可能な外装体形成用板材と、それを用いた外装体および外装体付きワイヤハーネスを提供することができる。
【0025】
ここで、「滑らかな曲線状」とは、角のない曲線の形状をなすことである。そのため、外装体形成用板材1の第1凹部21の輪郭は、第1凹部21の横断面において、凹部開口端部分22aから凹部開口端部分22bにかけて、角のない曲線の形状を有するように形成される。また、外装体形成用板材1の第2凹部31の輪郭は、第2凹部31の横断面において、凹部開口端部分32aから凹部開口端部分32bにかけて、角のない曲線の形状を有するように形成される。
【0026】
(樹脂材料について)
外装体形成用板材1は、塑性変形可能な樹脂材料からなる。
【0027】
外装体形成用板材1を構成する樹脂材料の樹脂種は、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。特に、樹脂材料としては、ポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。
【0028】
ここで、外装体形成用板材1を構成する樹脂材料は、発泡樹脂であることが好ましい。これにより、発泡樹脂からなる板材を部分的に圧縮することで、第1凹部21および第2凹部31を形成することが可能になるため、第1凹部21および第2凹部31を有する外装体形成用板材1を効率よく作製することができる。特に、外装体形成用板材1が発泡樹脂である場合、第1凹部21および第2凹部31が形成されている薄肉部の発泡率(空隙率)は、薄肉部以外の部分の発泡率(空隙率)よりも低いことが好ましい。
【0029】
ここで、発泡樹脂の密度は、特に限定されないが、例えば200kg/m以上1000kg/m以下の範囲にすることができる。特に、電線用外装体や外装体付きワイヤハーネスなどの、外装体形成用板材1を有する応用製品を軽量にし、かつ機械的な衝撃に対する緩衝作用を高める観点では、発泡樹脂の密度は、1000kg/m以下であることが好ましく、700kg/m以下であることがより好ましく、500kg/m以下であることがさらに好ましい。他方で、発泡樹脂の密度は、発泡樹脂の機械的強度をより高める観点では、200kg/m以上としてもよい。
【0030】
他方で、外装体形成用板材1を構成する樹脂材料は、非発泡樹脂であってもよい。非発泡樹脂からなる板材を部分的に圧延することによっても、第1凹部21および第2凹部31を形成することが可能であり、この場合も、第1凹部21および第2凹部31を有する外装体形成用板材1を効率よく作製することができる。
【0031】
外装体形成用板材1を構成する樹脂材料には、用途に応じて通常の樹脂に添加される各種添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、核剤、相溶化剤、透明化剤、帯電防止剤、滑剤などのうち1種以上が挙げられる。
【0032】
外装体形成用板材1は、より製造しやすくする観点では、単一の樹脂板によって構成されていることが好ましいが、複数の樹脂板を組み合わせて構成されていてもよい。
【0033】
(第1凹部および第2凹部について)
外装体形成用板材1は、外装体の屈曲部に相当する両面の対向位置に、それぞれ第1凹部21および第2凹部31を有する。より具体的に、外装体形成用板材1は、一方の表面2に第1凹部21を有するとともに、他方の表面3に第2凹部31を有し、これらの第1凹部21および第2凹部31が、一方の表面2および他方の表面3の対向する位置にそれぞれ設けられる。これにより、第1凹部21および第2凹部31のうち任意の一方を谷にした谷折りが容易になることで、外装体形成用板材1を一方の表面2および他方の表面3の側の両方に容易に折り曲げることが可能になるため、外装体形成用板材1を任意の側に折り曲げて屈曲部を形成することができる。
【0034】
ここで、第1凹部21および第2凹部31の横断面形状は、図1および図2(a)に示すように、それぞれ、1対の凹部開口端部分22a、22bと凹部底部分23とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成されるとともに、1対の凹部開口端部分32a、32bと凹部底部分33とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成され、全体として滑らかな曲線状をなす。これにより、図2(b)に示すように、外装体形成用板材1を一方の表面2が内向きになるように折り曲げた際(第1凹部21を谷にして谷折りにした際)に、対になっている凹部開口端部分22a、22bが閉じて、薄肉の凹部底部分23が屈曲する。それと同様に、図2(c)に示すように、外装体形成用板材1を他方の表面3が内向きになるように折り曲げた際(第2凹部31を谷にして谷折りにした際)に、対になっている凹部開口端部分32a、32bが閉じて、薄肉の凹部底部分33が屈曲する。ここで、外装体形成用板材1を折り曲げて外装体の屈曲部を形成するとき、第1凹部21および第2凹部31のうち、内向きに折り曲げる側に位置する凹部は、凹部開口端部分22a、22b同士(または凹部開口端部分32a、32b同士)が当接した状態になることが好ましい。そして、凹部底部分23または凹部底部分33が屈曲した際に、凹部開口端部分22a、22bまたは凹部開口端部分32a、32bが突き当たることで、折り曲げ角度がその角度で一旦規制されるとともに、その状態で凹部底部分23または凹部底部分33にさらに強く力を加えて折り曲げることで、凹部開口端部分22a、22bまたは凹部開口端部分32a、32bを潰れた状態にすることができる。その結果、薄肉の凹部底部分23や凹部底部分33が屈曲することで、外装体形成用板材1が塑性変形し、それにより所望の屈曲角度で固定された屈曲部を形成することができる。
【0035】
特に、この外装体形成用板材1では、第1凹部21および第2凹部31の横断面形状が円弧によって形成されており、全体として滑らかな曲線状をなすため、角をもって形成された場合と比べて、破壊の起点を生じ難くすることができるため、外装体形成用板材1の引張強度などの機械的強度を高めることもでき、かつ、角部などが外装体の表面に現れなくなることで、外装体の周囲に位置する部材(部品)を傷付けることも起こり難くすることができる。
【0036】
ここで、第1凹部21の凹部底部分23と、第2凹部31の凹部底部分33は、所望の位置に屈曲部を形成しやすくする観点では、一方の表面2および他方の表面3の対向位置にあることが好ましいが、両面の異なる位置にあってもよい。また、第1凹部21の凹部底部分23と、第2凹部31の凹部底部分33は、一方向に沿って直線状に延在していることが好ましいが、少なくとも部分的に湾曲していてもよい。
【0037】
第1凹部21の凹部底部分23は、曲率半径R11が、0.05mm以上0.50mm以下の範囲であることが好ましく、0.08mm以上0.23mm以下の範囲であることがより好ましい。特に、第1凹部21が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定するときの、折り曲げやすさの観点では、凹部底部分23の曲率半径R11は、0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましい。他方で、第1凹部21が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定したときに、折り曲げ部分を堅牢にする観点では、凹部底部分23の曲率半径R11は、0.50mm以下が好ましく、0.23mm以下がより好ましい。ここで、凹部底部分23の曲率半径R11は、凹部底部分23の横断面における曲率半径、すなわち、後述する凹部開口端部分22aおよび凹部開口端部分22bに挟まれた範囲に延在する凹面の最も深い部分の、横断面における曲率半径が上記範囲にあればよく、必ずしも一定の値でなくてもよい。
【0038】
また、第2凹部31の凹部底部分33は、曲率半径R21が、0.05mm以上3.50mm以下の範囲であることが好ましく、0.12mm以上1.50mm以下の範囲であることがより好ましい。特に、第2凹部31が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定するときの、折り曲げやすさの観点では、凹部底部分33の曲率半径R21は、0.05mm以上が好ましく、0.12mm以上がより好ましい。他方で、第2凹部31が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定したときに、折り曲げ部分を堅牢にする観点では、凹部底部分33の曲率半径R21は、3.50mm以下が好ましく、1.50mm以下がより好ましい。ここで、凹部底部分33の曲率半径R21は、凹部底部分33の横断面における曲率半径、すなわち、後述する凹部開口端部分32aおよび凹部開口端部分32bに挟まれた範囲に延在する凹面の最も深い部分の、横断面における曲率半径が上記範囲にあればよく、必ずしも一定の値でなくてもよい。
【0039】
第1凹部21の凹部底部分23の曲率半径R11に対する、第2凹部31の凹部底部分33の曲率半径R21の比率は、特に限定されるものではないが、例えば0.9以上22.0以下の範囲にあってもよく、0.9以上6.0以下の範囲にあってもよい。
【0040】
第1凹部21の凹部開口端部分22a、22bは、それぞれ、曲率半径R12が、0.3mm以上1.5mm以下の範囲であることが好ましく、0.4mm以上0.9mm以下の範囲であることがより好ましい。特に、第1凹部21が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定するときの、折り曲げやすさの観点では、凹部開口端部分22a、22bの曲率半径R12は、それぞれ0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。他方で、第1凹部21が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定したときに、折り曲げ部分を堅牢にする観点では、凹部開口端部分22a、22bの曲率半径R12は、それぞれ1.5mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましい。ここで、凹部開口端部分22a、22bの曲率半径R12は、凹部底部分23と第1凹部21の端部に挟まれた範囲に延在する、上に凸となる曲面の全体の、横断面における曲率半径が上記範囲にあればよく、必ずしも一定の値でなくてもよい。
【0041】
また、第2凹部31の凹部開口端部分32a、32bは、それぞれ、曲率半径R22が、0.5mm以上7.5mm以下の範囲であることが好ましく、0.6mm以上5.8mm以下の範囲であることがより好ましい。特に、第2凹部31が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定するときの、折り曲げやすさの観点では、凹部開口端部分32a、32bの曲率半径R22は、それぞれ0.5mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。他方で、第2凹部31が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定したときに、折り曲げ部分を堅牢にする観点では、凹部開口端部分32a、32bの曲率半径R22は、それぞれ7.5mm以下が好ましく、5.8mm以下がより好ましい。ここで、凹部開口端部分32a、32bの曲率半径R22は、凹部底部分33と第2凹部31の端部に挟まれた範囲に延在する、下に凸となる曲面の全体の、横断面における曲率半径が上記範囲にあればよく、必ずしも一定の値でなくてもよい。
【0042】
第1凹部21の凹部開口端部分22a、22bの曲率半径R12の平均に対する、第2凹部31の凹部開口端部分32a、32bの曲率半径R22の平均の比率は、特に限定されるものではないが、例えば1.0以上14.5以下の範囲にあってもよく、1.2以上9.6以下の範囲にあってもよい。
【0043】
外装体形成用板材1の第1凹部21の最大深さdは、外装体形成用板材1の厚さtを100%とするとき、25%以上85%以下の範囲であることが好ましく、40%以上75%以下の範囲であることがより好ましい。ここで、第1凹部21が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定したときに、折り曲げ部分を堅牢にする観点では、第1凹部21の最大深さdは、外装体形成用板材1の厚さtに対して、25%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。特に、最大深さdを深くすることで、第1凹部21で谷折りにしたときの折り曲げ角度を小さくすることができる。他方で、第1凹部21が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定するときの、折り曲げやすさの観点では、第1凹部21の最大深さdは、外装体形成用板材1の厚さtに対して、85%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。
【0044】
また、第2凹部31の最大深さdは、外装体形成用板材1の厚さtを100%とするとき、3%以上40%以下の範囲であることが好ましく、5%以上15%以下の範囲であることがより好ましい。ここで、第2凹部31が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定したときに、折り曲げ部分を堅牢にする観点では、第2凹部31の最大深さdは、外装体形成用板材1の厚さtに対して、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。特に、最大深さdを深くすることで、第2凹部31で谷折りにしたときの折り曲げ角度を小さくすることができる。他方で、第2凹部31が谷になるように谷折りにして、最も汎用的な折り曲げ角度である90°前後の角度に折り曲げて固定するときの、折り曲げやすさの観点では、第2凹部31の最大深さdは、外装体形成用板材1の厚さtに対して、40%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。
【0045】
このとき、外装体形成用板材1は、外装体形成用板材1の厚さtを100%とするとき、第1凹部21および第2凹部31が位置する、外装体形成用板材1の薄肉部分の最小厚さtは、第1凹部21または第2凹部31が谷になるように谷折りするときの、谷折りの容易さ(折り曲げやすさ)と、谷折りで折り曲げる箇所の機械的強度の確保とを両立する観点では、10%以上70%以下の範囲であることが好ましく、20%以上45%以下の範囲であることがより好ましい。特に、第1凹部21または第2凹部31が谷になるように谷折りしたときの、折り曲げ箇所の機械的強度を高める観点では、薄肉部分の最小厚さtは、外装体形成用板材1の厚さtに対して、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。他方で、第1凹部21または第2凹部31が谷になるように谷折りするときに、谷折りを容易にする観点では、薄肉部分の最小厚さtは、外装体形成用板材1の厚さtに対して、70%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。
【0046】
なお、本明細書における外装体形成用板材1の厚さtは、外装体形成用板材1のうち、第1凹部21や第2凹部31が形成されていない部分である板面部13の厚さを指す。
【0047】
第1凹部21および第2凹部31は、第1凹部21の最大深さdを1.00としたときに、第2凹部31の最大深さdが0.04以上1.00以下であることが好ましく、0.04以上0.85以下であることがより好ましく、0.10以上0.45以下であることがさらに好ましい。特に、外装体形成用板材1を、第1凹部21を谷とする谷折りだけでなく、第2凹部31を谷とする谷折りもできるようにし、さらに、外装体形成用板材1をいずれの方向にも容易に折り曲げられるようにする観点では、第1凹部21の最大深さdに対する第2凹部31の最大深さdの比率は、0.04以上が好ましく、0.10以上がより好ましい。他方で、第1凹部21の最大深さdに対する第2凹部31の最大深さdの比率の上限は、外装体形成用板材1を、特に一方の表面2が内向きになるように屈曲させやすくする観点では、0.85以下が好ましく、0.45以下がより好ましいが、外装体形成用板材1を両方向に折り曲げやすくする観点から、1.00としてもよい。
【0048】
外装体形成用板材1の厚さ寸法tは、特に限定されないが、例えば、容易に折り曲げて屈曲部を形成することと、引張強度などの機械的強度とのバランスをより向上させる点から、それぞれ0.5mm以上5.0mm以下の範囲が好ましく、1.0mm以上2.0mm以下の範囲が特に好ましい。
【0049】
2.外装体について
上述の外装体形成用板材1は、外装体11として、電線4の外周に装着される電線用外装体10を構成することができる。
【0050】
以下、図を用いて具体的に説明する。図3は、外装体11の構造を示した概略斜視図である。この外装体11は、上述の外装体形成用板材1を折り曲げることによって形成される少なくとも1つの屈曲部12a~12dと、屈曲部12a~12dを介して連なる複数の板面部13a~13eとを有する。ここで、外装体11は、電線4の延在方向Xに沿って存在する複数の板面部13a~13eを備えており、この板面部13a~13eに囲まれて形成され、かつ電線4を収容する収容部Sを有している。このように、外装体11が上述の外装体形成用板材1からなることで、外装体形成用板材1を両方向に折り曲げて、容易に外装体11の屈曲部を形成することができるとともに、角部などが外装体11の表面に現れなくなることで、外装体11の周囲に位置する部材(部品)を傷付けることも起こり難くなるため、外装体11を形成する際の作業性も高めながらも、外装体11によって電線4および周囲の部材(部品)を適切に保護することができる。なお、図3においては、電線4を1本の円柱形状で示しているが、電線4は、例えばワイヤハーネスのように、2本以上の電線を束ねた電線束や、必要に応じて分岐させたものであってもよい。
【0051】
外装体11は、図3に示すように、外装体形成用板材1を複数の屈曲部12a~12dで折り曲げることで、電線4を収容する収容部Sを形成する。このとき、外装体11は、電線4の保護を図る観点では、外装体形成用板材1によって、電線4の全周を囲むように構成することが好ましい。他方で、外装体11は、屈曲部12a~12dが変形され難いため、電線4を部分的に囲むように構成してもよい。このとき、外装体11の横断面形状は、開いた断面形状にすることができ、例えばコの字型やL字型などの形状にすることができる。
【0052】
また、外装体11は、1枚の外装体形成用板材1を折り曲げて形成することができ、それにより外装体11の作製をより効率的に行うことができる。
【0053】
なお、外装体11は、第1凹部21または第2凹部31を谷とする谷折りで外装体形成用板材1を折り曲げた部分を、図示しないテープ巻きなどによって固定してもよい。他方で、外装体11を構成する外装体形成用板材1は、第1凹部21または第2凹部31を谷とする谷折りで折り曲げた後、折り曲げ力を開放したときに、元の状態に戻ろうとする力が作用することで、折り曲げた部分が開くことがあるが、テープ巻きなどによる固定は必ずしも必要とされない。
【0054】
3.外装体付きワイヤハーネスについて
上述の外装体11は、外装体11を備える外装体付きワイヤハーネスを構成することができる。ここで、外装体付きワイヤハーネスは、電線4によって構成されるワイヤハーネス40と、上述の外装体11とを備えるものであり、外装体11が、単数または複数の電線4の外周に装着されるものである。これにより、ワイヤハーネス40を構成する電線束や、電線束からさらに分岐させて延在する複数の分割電線束からなる電線集合体の少なくとも一部を、外装体11によって保護することができる。
【0055】
4.外装体形成用板材の製造方法について
外装体形成用板材1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、トムソン型を使った打ち抜き加工や、プレスによる圧縮加工などがあげられる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0057】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、本発明例について説明するが、本発明はこの発明例に限定されるものではない。
【0058】
[1]外装体形成用板材の作製
[本発明例1~3]
密度が480kg/mの発泡ポリプロピレン樹脂からなる、板厚tが1.5mmの発泡樹脂板を用いた。この発泡樹脂板に対して、全切刃と押し罫線刃で構成したトムソン型を使った打ち抜き加工をすることで、両面の対向する位置に第1凹部21および第2凹部31を形成し、外装体形成用板材1を得た。
【0059】
得られた外装体形成用板材1について、第1凹部21および第2凹部31が延在する方向に対して垂直な、厚さ方向を含む断面で観察したところ、図4に示すようになった。より具体的に、得られた外装体形成用板材1は、1対の凹部開口端部分22a、22bと凹部底部分23とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成されるとともに、1対の凹部開口端部分32a、32bと凹部底部分33とが互いに逆向きに凸となる曲率をもつ円弧で形成されており、両面の全体が滑らかな曲線状をなすものとなった。
【0060】
[比較例1]
本発明例1~3に用いたものと同じ発泡樹脂板を用いて、第1凹部21および第2凹部31の代わりに、切断刃を使用してシート厚さの半分まで切り込みを入れる打ち抜き加工により、深さ0.75mmの切り込みからなる折れ容易線を形成して、外装体形成用板材とした。
【0061】
[比較例2]
本発明例1~3に用いたものと同じ発泡樹脂板を用いて、第1凹部21および第2凹部31を形成せずに、そのまま外装体形成用板材とした。
【0062】
[2]外装体形成用板材の形状
得られた外装体形成用板材1の形状について、第1凹部21の凹部底部分23の曲率半径R11[mm]、第1凹部21の凹部開口端部分22a、22bの曲率半径R12とその平均値[mm]、第2凹部31の凹部底部分33の曲率半径R21[mm]、第2凹部31の凹部開口端部分32a、32bの曲率半径R22とその平均値[mm]、第1凹部21の最大深さd[mm]、第2凹部31の最大深さd[mm]、薄肉部分の最小厚さt[mm]は、表1に示すとおりであった。また、これらの数値から求められる、曲率半径R11に対する曲率半径R21の比率、曲率半径R12の平均に対する曲率半径R22の平均の比率、最大深さdに対する最大深さdの比率は、表1に示すとおりであった。なお、得られた外装体形成用板材1の形状に関する各数値は、外装体形成用板材1の薄肉部分の最小厚さtが、外装体形成用板材1の厚さtを100%としたときに10%以上70%以下の範囲となるサンプルをランダムに50個抽出し、これらのサンプルにおいて各数値の測定をそれぞれ行ない、測定箇所ごとに得られる測定値の平均値を、それぞれの値とした。
【0063】
[3]外装体形成用板材の引張強度の測定
得られた外装体形成用板材1について、JIS K6251に沿って、第1凹部21および第2凹部31が形成されている部分の引張強度を測定した。より具体的には、外装体形成用板材1から、第1凹部21および第2凹部31の凹部底部分23、33に対して垂直な方向が中心軸51の延在方向になるように、試験片5であるダンベル状試験片の3号片を切り出して、オートグラフ引張試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、50mm/minの試験速度(引張速度)で、引張強度[N/mm]を測定した。引張強度の測定は5回行ない、5回の測定における平均値を引張強度の測定値とした。結果を表1に示す。
【0064】
さらに、本発明例1~3、比較例1、2の外装体形成用板材について、薄肉部分の最小厚さt[mm]と、引張強度[N/mm]の関係を示すグラフを図6に示す。図6のグラフは、薄肉部分の最小厚さを横軸に、引張強度を縦軸にしたものである。
【0065】
[4]外装体形成用板材の折り曲げ強さの測定
得られた外装体形成用板材1について、図7に示す配置で、外装体形成用板材1の折り曲げ強さを測定した。より具体的には、外装体形成用板材1のうち、第2凹部31の凹部底部分33から一方の側に距離Lだけ離れた位置から、一方の端部までの範囲を治具Jで固定するとともに、第2凹部31の凹部底部分33から他方の側に距離Lだけ離れた位置の上側から、引張試験機のヘッドに取り付けられた治具Jを垂直方向に下降させ、外装体形成用板材1を他方の表面3が内向きになるように折り曲げたとき(第2凹部31を谷にして谷折りにしたとき)の、荷重Fの最大値を測定し、その値を折り曲げ強さ[N]とした。ここで、外装体形成用板材1の第1凹部21および第2凹部31が延在する方向に沿った寸法は30mmとした。また、距離Lは1mm、距離Lは10mmとした。折り曲げ強さの測定は5回行ない、5回の測定における平均値を折り曲げ強さの測定値とした。結果を表1に示す。
【0066】
さらに、本発明例1~3、比較例1の外装体形成用板材について、薄肉部分の最小厚さt[mm]と、折り曲げ強さ[N]の関係を示すグラフを図8に示す。図8のグラフは、薄肉部分の最小厚さを横軸に、折り曲げ強さを縦軸にしたものである。
【0067】
【表1】
【0068】
表1の評価結果から、両面の対向する位置に第1凹部21および第2凹部31を形成した本発明例1~3の外装体形成用板材は、引張強度の測定値が15[N/mm]以上であることが確認された。また、本発明例1~3の外装体形成用板材は、折り曲げ強さの測定値が20[N]以下であり、第1凹部21および第2凹部31が形成されている箇所において、容易に折り曲げられることが確認された。特に、本発明例1~3の外装体形成用板材は、折り曲げ強さの測定値が20[N]以下であることが、図8のグラフからも確認された。
【0069】
これに対し、比較例1の外装体形成用板材では、第1凹部21および第2凹部31の代わりに切り込みからなる折れ容易線を形成したときに、引張強度の測定値が10[N/mm]を下回っていた。図6のグラフからも、比較例1における外装体形成用板材の引張強度の測定値が、本発明例1~3の引張強度の測定値を大きく下回っていることがわかった。この点、比較例1では、折れ容易線として形成した切り込み線の位置における、引張方向に対して垂直な断面の断面積は、切り込み線を形成していない他の位置における断面積の約50%であり、さらに、切り込みの先端部、すなわち切り込みの最深部が切り欠き効果をもたらすことで引き裂かれやすくなっているため、引張強度が低下したものと考えられる。
【0070】
また、比較例2では、第1凹部21および第2凹部31を形成せずに、そのまま外装体形成用板材としたときに、折り曲げようとする位置で折り曲げることができなかったため、本発明例と比較可能な折り曲げ強さを測定することができなかった。
【0071】
さらに、本発明例2と同様の条件で得られた外装体形成用板材1について、第2凹部31を谷にして谷折りにすることで、他方の表面3が内向きになるように屈曲させた。屈曲後の外装体形成用板材1について、第1凹部21および第2凹部31が延在する方向に対して垂直な、厚さ方向を含む断面で観察したところ、図9に示すように、第1凹部21および第2凹部31を破壊することなく、屈曲部において屈曲させることができた。
【0072】
よって、本発明例1~3の外装体形成用板材は、周囲に位置する部材(部品)を傷付けずに、両方向に容易に折り曲げて屈曲部を形成することが可能であり、屈曲部になる部分の引張強度を高めることができるものであった。
【0073】
一方、比較例1の板材は、屈曲部になる部分の表面に形成した切り込み線の位置における、引張方向に対して垂直な断面の断面積が小さく、さらに、切り込みの先端部の切り欠き効果によって引き裂かれやすくなっているため、屈曲部になる部分の引張強度が小さいものであった。また、比較例2の板材は、第1凹部および第2凹部を有しないため、板材を折り曲げて屈曲部を形成することが困難なものであった。
【符号の説明】
【0074】
1 外装体形成用板材
10 電線用外装体
11 外装体
12a~12d 屈曲部
13、13a~13e 板面部
2 外装体形成用板材の一方の表面
21 第1凹部
22a、22b 第1凹部の凹部開口端部分
23 第1凹部の凹部底部分
3 外装体形成用板材の他方の表面
31 第2凹部
32a、32b 第2凹部の凹部開口端部分
33 第2凹部の凹部底部分
4 電線
40 ワイヤハーネス
第1凹部の最大深さ
第2凹部の最大深さ
11 第1凹部の凹部底部分の曲率半径
12 第1凹部の凹部開口端部分の曲率半径
21 第2凹部の凹部底部分の曲率半径
22 第2凹部の凹部開口端部分の曲率半径
外装体形成用板材の薄肉部分の最小厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9