(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181866
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ポンプ運転支援方法、及び、ポンプ運転支援装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20231218BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F04B49/06 321Z
F04D15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095238
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰雅
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 裕太
(72)【発明者】
【氏名】朴 ヒュンウ
【テーマコード(参考)】
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
3H020AA01
3H020BA06
3H020BA18
3H020CA01
3H020CA04
3H020EA03
3H020EA10
3H145AA12
3H145AA23
3H145AA34
3H145BA19
3H145BA28
3H145CA06
3H145EA14
3H145EA36
(57)【要約】
【課題】流量計を用いることなく、ポンプ装置の運転支援を簡易に行うことを可能とするポンプ運転支援方法を提供する。
【解決手段】ポンプ運転支援方法は、ポンプ装置の型番で特定される支援対象装置の性能特性として、定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線及び定格回転速度を取得する性能特性取得工程と、支援対象装置の設置状況として、実揚程を取得する設置状況取得工程と、支援対象装置の運転状況として、運転周波数、吸込み圧力及び吐出し圧力を取得する運転状況取得工程と、支援対象装置が設置状況及び運転状況にて運転されたときの基準運転時の運転条件を算出する第1の運転支援工程とを備え、第1の運転支援工程は、性能特性と、設置状況と、運転状況とに基づいて、基準運転時の流量及び全揚程を算出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて、ポンプ装置の運転を支援するポンプ運転支援方法であって、
前記ポンプ装置の型番(Mn)で特定される支援対象装置の性能特性として、定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))及び定格回転速度(Nrated)を取得する性能特性取得工程と、
前記支援対象装置が設置されたときの設置状況として、実揚程(Hstatic)を取得する設置状況取得工程と、
前記支援対象装置が前記設置状況にて運転されたときの運転状況として、運転周波数(Fout)、吸込み圧力(Psuction)及び吐出し圧力(Pdischarge)を取得する運転状況取得工程と、
前記支援対象装置が前記設置状況及び前記運転状況にて運転されたときの基準運転時の運転条件を算出する第1の運転支援処理を行う第1の運転支援工程とを備え、
前記第1の運転支援工程は、
前記性能特性と、前記設置状況と、前記運転状況とに基づいて、前記基準運転時の流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)を算出する、
ポンプ運転支援方法。
【請求項2】
前記運転状況取得工程は、
前記運転状況として、測点高差(Hdiff)をさらに取得し、
前記第1の運転支援工程は、
前記吸込み圧力(Psuction)、前記吐出し圧力(Pdischarge)及び測点高差(Hdiff)に基づいて、前記基準運転時の全揚程(Hnow)を算出し、
前記流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))から、前記基準運転時の運転周波数(Fout)に応じた運転回転速度(Nnow)と前記定格回転速度(Nrated)との回転速度比(Nratio)に基づいて、前記基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QHnow(Q))を算出し、
前記基準運転時の流量・全揚程性能曲線上において、前記基準運転時の全揚程(Hnow)を満たす点により前記基準運転時の流量(Qnow)を特定する、
請求項1に記載のポンプ運転支援方法。
【請求項3】
前記性能特性取得工程は、
前記性能特性として、前記定格運転時の流量・消費電力代表性能曲線(QWtypical(Q))をさらに取得し、
前記第1の運転支援工程は、
流量及び全揚程の関係において、前記実揚程(Hstatic)により特定される点と、前記基準運転時の流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)により特定される基準運転点とを通過するシステムカーブ(CVsys(Q))を作成し、
前記システムカーブ(CVsys(Q))と、前記流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、前記定格運転時の流量(Qrated)及び全揚程(Hrated)を定格運転点として特定し、
流量及び全揚程の関係において、流量が0及び全揚程が0により特定される点と、前記基準運転点とを通過する基準運転時の仮想システムカーブ(CVvsys(Q))を作成し、
前記基準運転時の仮想システムカーブ(CVvsys(Q))と、前記流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、前記基準運転時の実揚程を0とする仮想状態での前記定格運転時に相当する第1の仮想定格運転時の流量(Qrated0)及び全揚程(Hrated0)を特定し、
前記流量・消費電力代表性能曲線上において、前記定格運転時の流量(Qrated)を満たす点により前記定格運転時の消費電力(Wrated)を特定するとともに、前
記第1の仮想定格運転時の流量(Qrated0)を満たす点により前記第1の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0)を特定し、
前記第1の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0)から、前記基準運転時の運転周波数(Fout)に応じた運転回転速度(Nnow)と前記定格回転速度(Nrated)との回転速度比(Nratio)に基づいて、前記基準運転時の消費電力(Wnow)を算出し、
前記定格運転時の消費電力(Wrated)から前記基準運転時の消費電力(Wnow)を減算することで前記基準運転時の省エネ電力を算出し、前記定格運転時の消費電力(Wrated)に対する前記基準運転時の省エネ電力の比率に基づいて、前記基準運転時の省エネ率(ESR)を算出する、
請求項1に記載のポンプ運転支援方法。
【請求項4】
前記性能特性取得工程は、
前記型番(Mn)を入力可能な型番入力画面情報を生成し、前記型番入力画面情報に基づく型番入力画面に入力された前記型番(Mn)に基づいて前記性能特性を取得し、
前記設置状況取得工程は、
前記設置状況を入力可能な設置状況入力画面情報を生成し、前記設置状況入力画面情報に基づく設置状況入力画面を介して前記設置状況を取得し、
前記運転状況取得工程は、
前記運転状況を入力可能な運転状況入力画面情報を生成し、前記運転状況入力画面情報に基づく運転状況入力画面を介して前記運転状況を取得し、
前記第1の運転支援工程は、
前記第1の運転支援処理により算出した前記基準運転時の運転条件の算出結果を表示する第1の運転支援画面情報を生成する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のポンプ運転支援方法。
【請求項5】
前記支援対象装置が前記設置状況にて運転するときの流量として設定流量(Qset)の入力を受け付けたとき、前記支援対象装置が前記設置状況及び前記設定流量(Qset)にて運転するときの設定流量運転時の運転条件を算出する第2の運転支援処理を行う第2の運転支援工程をさらに備え、
前記第2の運転支援工程は、
流量及び全揚程の関係において、前記実揚程(Hstatic)により特定される点と、前記基準運転時の流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)により特定される基準運転点とを通過するシステムカーブ(CVsys(Q))を作成し、
前記システムカーブ(CVsys(Q))と、前記流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、前記定格運転時の流量(Qrated)及び全揚程(Hrated)を定格運転点として特定し、
前記定格運転時の流量(Qrated)に対する前記設定流量(Qset)の比率と、前記定格回転速度(Nrated)に応じた定格運転周波数(Frated)とに基づいて、前記設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)を算出する、
請求項1に記載のポンプ運転支援方法。
【請求項6】
前記性能特性取得工程は、
前記性能特性として、前記定格運転時の流量・消費電力代表性能曲線(QWtypical(Q))をさらに取得し、
前記第2の運転支援工程は、
前記システムカーブ上において、前記設定流量(Qset)を満たす点により前記設定流量運転時の全揚程(Hset)を特定し、
流量及び全揚程の関係において、流量が0及び全揚程が0により特定される点と、前記設定流量(Qset)及び前記設定流量運転時の全揚程(Hset)により特定される
設定流量運転点とを通過する前記設定流量運転時の仮想システムカーブ(CVvsysset(Q))を作成し、
前記設定流量運転時の仮想システムカーブ(CVvsysset(Q))と、前記流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、前記設定流量運転時の実揚程を0とする仮想状態での前記定格運転時に相当する第2の仮想定格運転時の流量(Qrated0set)及び全揚程(Hrated0set)を特定し、
前記流量・消費電力代表性能曲線上において、前記定格運転時の流量を満たす点により前記定格運転時の消費電力(Wrated)を特定するとともに、前記第2の仮想定格運転時の流量を満たす点により前記第2の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0set)を特定し、
前記第2の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0set)から、前記設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)に応じた運転回転速度(Nset)と前記定格回転速度(Nrated)との回転速度比に基づいて、前記設定流量運転時の消費電力(Wset)を算出し、
前記定格運転時の消費電力(Wrated)から前記設定流量運転時の消費電力(Wset)を減算することで前記設定流量運転時の省エネ電力を算出し、前記定格運転時の消費電力に対する前記設定流量運転時の省エネ電力の比率に基づいて、前記設定流量運転時の省エネ率(ESRset)を算出する、
請求項5に記載のポンプ運転支援方法。
【請求項7】
前記第2の運転支援工程は、
前記設定流量(Qset)を入力可能な設定流量入力部と、前記設定流量入力部により入力された前記設定流量(Qset)に基づいて前記第2の運転支援処理により算出した前記設定流量運転時の運転条件の算出結果を表示する第2の算出結果表示部と、前記第2の運転支援処理により算出した前記設定流量運転時の運転条件として、前記設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)を前記支援対象装置に設定する設定指示を入力可能な指令周波数設定指示部とを有する第2の運転支援画面情報を生成する、
請求項5又は請求項6に記載のポンプ運転支援方法。
【請求項8】
ポンプ装置の型番(Mn)で特定される支援対象装置の性能特性として、定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))及び定格回転速度(Nrated)を取得する性能特性取得部と、
前記支援対象装置が設置されたときの設置状況として、実揚程(Hstatic)を取得する設置状況取得部と、
前記支援対象装置が前記設置状況にて運転されたときの運転状況として、運転周波数(Fout)、吸込み圧力(Psuction)及び吐出し圧力(Pdischarge)を取得する運転状況取得部と、
前記支援対象装置が前記設置状況及び前記運転状況にて運転されたときの基準運転時の運転条件を算出する第1の運転支援処理を行う第1の運転支援部とを備え、
前記第1の運転支援部は、
前記性能特性と、前記設置状況と、前記運転状況とに基づいて、前記基準運転時の流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)を算出する、
ポンプ運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ運転支援方法、及び、ポンプ運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ装置が所定の環境で運転されたときに、実際の流量を流量計を用いて計測することで、ポンプ装置の運転点を確認することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような方法でポンプ装置の運転点を確認するには、高価な流量計を事前に用意し、その流量計をポンプ装置の設置現場に設置する作業も必要となる。そのため、ポンプ装置の設置現場では、ポンプ装置の運転点を簡易に確認する方法が望まれている。また、ポンプ装置の設置現場だけなく、その設置現場から離れた遠隔での管理センサでもポンプ装置の運転点を確認する方法が望まれているとともに、ポンプ装置の設置時のような現在の状況だけでなく、例えば、ポンプ装置が過去に運転されたときの運転点を確認する方法についても望まれている。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑み、流量計を用いることなく、ポンプ装置の運転支援を簡易に行うことを可能とするポンプ運転支援方法、及び、ポンプ運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るポンプ運転支援方法は、
コンピュータを用いて、ポンプ装置の運転を支援するポンプ運転支援方法であって、
前記ポンプ装置の型番(Mn)で特定される支援対象装置の性能特性として、定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))及び定格回転速度(Nrated)を取得する性能特性取得工程と、
前記支援対象装置が設置されたときの設置状況として、実揚程(Hstatic)を取得する設置状況取得工程と、
前記支援対象装置が前記設置状況にて運転されたときの運転状況として、運転周波数(Fout)、吸込み圧力(Psuction)及び吐出し圧力(Pdischarge)を取得する運転状況取得工程と、
前記支援対象装置が前記設置状況及び前記運転状況にて運転されたときの基準運転時の運転条件を算出する第1の運転支援処理を行う第1の運転支援工程とを備え、
前記第1の運転支援工程は、
前記性能特性と、前記設置状況と、前記運転状況とに基づいて、前記基準運転時の流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るポンプ運転支援方法によれば、第1の運転支援工程が、性能特性取得工程にて取得された支援対象装置の性能特性と、設置状況取得工程にて取得された支援対象装置の設置状況と、運転状況取得工程にて取得された支援対象装置の運転状況とに基づいて
、その支援対象装置がその設置状況及びその運転状況にて運転されたときの基準運転時の運転条件として、基準運転時の流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)を算出する。したがって、流量計を用いることなく、ポンプ装置の運転支援を簡易に行うことができる。
【0008】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ポンプ運転支援システム1の一例を示す全体構成図である。
【
図2】ポンプ運転支援装置3の一例を示すブロック図である。
【
図3】運転支援取得データ321及びポンプデータベース40の一例を示すデータ構成図である。
【
図4】運転支援内部データ322の一例を示すデータ構成図である。
【
図5】各装置を構成するコンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。
【
図6】ポンプ運転支援装置3によるポンプ運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】設置用途入力画面11の一例を示す図である。
【
図10】運転周波数入力画面13の一例を示す図である。
【
図12】測点高差入力画面15の一例を示す図である。
【
図13】第1の運転支援部303による第1の運転支援処理(ステップS200)の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第1の運転支援部303による第1の運転支援処理(ステップS200)の一例を示すフローチャート(
図13の続き)である。
【
図15】基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QH
now(Q))と、基準運転時の全揚程(H
now)及び基準運転時の流量(Q
now)の算出例を示すグラフである。
【
図16】システムカーブ(CV
sys(Q))と、定格運転時の流量(Q
rated)及び全揚程(H
rated)との算出例を示すグラフである。
【
図17】基準運運転時の流量及び全揚程の関係と、流量及び消費電力の関係とを示すグラフである。
【
図18】第1の運転支援画面16の一例を示す図である。
【
図19】第2の運転支援部304による第2の運転支援処理(ステップS300)の一例を示すフローチャートである。
【
図20】第2の運転支援部304による第2の運転支援処理(ステップS300)の一例を示すフローチャート(
図19の続き)である。
【
図21】第2の運転支援画面17の一例を示す図である。
【
図22】設定流量運転時の流量及び全揚程の関係と、流量及び消費電力の関係とを示すグラフである。
【
図23】更新後の第2の運転支援画面17aの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0011】
(実施形態)
図1は、ポンプ運転支援システム1の一例を示す全体構成図である。ポンプ運転支援システム1は、支援対象装置としてのポンプ装置2が設置されたときに、ポンプ装置2の運転条件を設定するために、ポンプ装置2のユーザ(ポンプ装置2の保有者、管理者、設置・点検・修理作業者等)を支援するシステムとして機能する。
【0012】
ポンプ運転支援システム1は、その具体的な構成として、支援対象装置としてのポンプ装置2と、ポンプ装置2のユーザが使用するポンプ運転支援装置3と、ポンプ装置2の性能特性に関するデータ等を管理するポンプデータベース装置4とを備える。各装置2~4は、例えば、汎用又は専用のコンピュータ(後述の
図5参照)で構成されるとともに、ネットワーク5を介して各種のデータを相互に送受信可能に構成される。なお、各装置2~4の数は複数でもよく、ネットワーク5の構成は
図1の例に限られない。
【0013】
ポンプ装置2は、水(上水、下水、淡水、海水、工業用水等)、化学液、石油(原油・精製油)等の液体を移送する回転機械である。ポンプ装置2は、例えば、上水道、下水道等の給水設備、石油精製、発電、製造、化学プロセス等のプラント設備で使用されるが、これらの例に限られず、任意の液体を利用したシステムで使用されるものでもよい。なお、本実施形態では、水を移送する給水装置として機能するポンプ装置2が、支援対象装置として適用される場合を中心に説明する。
【0014】
ポンプ装置2は、ポンプ部20と、ポンプ装置2の駆動源となるモータ21と、ポンプ装置2の動作を制御するポンプ制御盤22とを備える。ポンプ部20は、例えば、羽根車、回転軸、軸受、メカニカルシール、グランドパッキン、ケーシング、配管等で構成される。ポンプ制御盤22は、例えば、インバータ、電源回路、通信回路、操作表示部等で構成される。ポンプ制御盤22は、例えば、運転条件として設定指示された指令周波数と、各部に設けられたセンサ類(不図示)の検出値とに基づいて、モータ21の回転動作を制御したり、ポンプ運転支援装置3及びポンプデータベース装置4との間で各種の情報を送受信する際の通信動作を制御したりする。なお、モータ21は、インバータ及び電源回路の少なくとも一方を内蔵したようなモータユニットで構成されていてもよい。
【0015】
ポンプ装置2は、各種の性能特性が異なる複数種類のポンプ装置2が存在し、型番により性能特性が特定される。性能特性としては、例えば、定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線、流量・消費電力代表性能曲線、定格回転速度、モータ極数等が挙げられるが、これらに限られない。型番は、例えば、英数字の文字列で表され、ポンプ装置2の性能特性だけでなく、ポンプ装置2の各種の仕様(構造、材質、口径等)が特定されるものでもよい。
【0016】
ポンプ運転支援装置3は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、ポンプ装置2のユーザにより使用される。ポンプ運転支援装置3は、アプリケーションやブラウザ等のプログラムがインストールされて、各種の入力操作を受け付けるとともに、表示画面や音声を介して各種の情報(画面情報等)を出力する。本実施形態では、ポンプ運転支援装置3は、携帯型コンピュータの一例として、
図1に示すように、スマートフォンで構成される場合を中心に説明する。
【0017】
ポンプデータベース装置4は、例えば、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータで構成される。ポンプデータベース装置4は、ポンプ装置2の型番毎に、各ポンプ装置2の性能特性を示す性能特性データを登録可能なポンプデータベース40(後述の
図3参照)を備える。ポンプデータベース装置4は、ポンプ装置2の型番を含むデータ送信要求をポンプ運転支援装置3から受信したとき、その型番に対応する性能特性データをポンプデータベース40から読み出して、データ送信要求の送信元のポンプ運転支援装置3に送信する。
【0018】
ネットワーク5は、任意の通信規格に従って有線通信又は無線通信、あるいは、有線通信と無線通信の組合せにより構成される。具体的には、例えば、インターネットなどの標準化された通信網、又はローカルネットワークなどの建物内で管理される通信網、あるいは、これらの通信網の組合せを利用することができる。また、無線通信の通信規格としては、典型的には国際規格が用いられる。国際規格の通信手段として、IEEE802.15.4、IEEE802.15.1、IEEE802.15.11a、11b、11g、11n、11ac、11ad、ISO/IEC14513-3-10、IEEE802.15.4g等の方式がある。また、Bluetooth(登録商標)、BluetoothLowEnergy、Wi-Fi、ZigBee(登録商標)、Sub-GHz、EnOcean(登録商標)、LTE等の方式を用いることもできる。
【0019】
図2は、ポンプ運転支援装置3の一例を示すブロック図である。ポンプ運転支援装置3は、その主要な構成要素として、制御部30と、通信部31と、記憶部32と、入力部33と、出力部34とを備える。
【0020】
制御部30は、例えば、記憶部32に記憶されたポンプ運転支援プログラム320を実行することにより、性能特性取得部300、設置状況取得部301、運転状況取得部302、第1の運転支援部303、及び、第2の運転支援部304として機能する。すなわち、制御部30の各部300~304は、ポンプ運転支援方法における各工程(性能特性取得工程、設置状況取得工程、運転状況取得工程、第1の運転支援工程、及び、第2の運転支援工程)を実行する主体として機能する。
【0021】
通信部31は、ネットワーク5に接続され、例えば、ポンプ装置2又はポンプデータベース装置4との間で各種のデータを送受信する通信インターフェースとして機能する。記憶部32は、ポンプ運転支援装置3の動作で使用される各種のプログラム(オペレーティングシステムやポンプ運転支援プログラム320等)やデータ(運転支援取得データ321や運転支援内部データ322等)を記憶する。入力部33は、各種の入力操作を受け付けるとともに、出力部34は、表示画面や音声を介して各種の情報を出力することで、ユーザインターフェースとして機能する。
【0022】
図3は、運転支援取得データ321及びポンプデータベース40の一例を示すデータ構成図である。
図4は、運転支援内部データ322の一例を示すデータ構成図である。
【0023】
ポンプデータベース40には、ポンプ装置2の型番毎に、各ポンプ装置2の性能特性(
図3の例では、流量・全揚程代表性能曲線(QH
typical(Q))、流量・消費電力代表性能曲線(QW
typical(Q))、定格回転速度(N
rated)、モータ極数(PoleCount))を示すデータが登録される。ポンプデータベース40は、例えば、ポンプ装置2の製造メーカ等から提供される情報に基づいて、型番や性能特性の追加、修正、削除等が行われることで適宜更新される。
【0024】
運転支援取得データ321には、ポンプ運転支援装置3が動作する際に、性能特性取得部300が取得した性能特性のデータ、設置状況取得部301が取得した設置状況のデータ、及び、運転状況取得部302が取得した運転状況のデータがそれぞれ格納される。運転支援内部データ322には、ポンプ運転支援装置3が動作する際に、第1の運転支援部303及び第2の運転支援部304が運転支援処理を行ったときの処理結果(途中の算出結果や最終的な算出結果等)のデータがそれぞれ格納される。なお、運転支援取得データ321及び運転支援内部データ322に格納される各種のデータの取得方法や算出方法は後述する。
【0025】
性能特性取得部300は、ポンプ装置2の型番(Mn)で特定される支援対象装置の性能特性として、少なくとも定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線(QH
typical(Q))及び定格回転速度(N
rated)を取得し、さらに、定格運転時の流量・消費電力代表性能曲線(QW
typical(Q))及びモータ極数(PoleCount)を取得してもよい。例えば、性能特性取得部300は、型番(Mn)を入力可能な型番入力画面情報を生成し、型番入力画面情報に基づく型番入力画面(後述の
図7参照)に入力された型番(Mn)に基づいて性能特性を取得する。具体的には、性能特性取得部300は、その型番(Mn)を含むデータ送信要求をポンプデータベース装置4に送信し、その応答としてポンプデータベース装置4から支援対象装置の性能特性を取得してもよい。また、ポンプデータベース40が記憶部32に記憶されている場合には、その型番に基づいてポンプデータベース40を参照することで支援対象装置の性能特性を取得してもよい。なお、支援対象装置の性能特性のデータが、自装置のポンプ制御盤22に記憶されている場合には、性能特性取得部300は、支援対象装置としてのポンプ装置2に性能特性のデータ送信要求を送信し、その応答としてポンプ装置2から支援対象装置の性能特性を取得してもよく、その場合には、型番のユーザ入力を省略してもよい。
【0026】
設置状況取得部301は、支援対象装置が設置されたときの設置状況として、少なくとも実揚程(H
static)を取得し、設置用途(Use)をさらに取得してもよい。例えば、設置状況取得部301は、支援対象装置としてのポンプ装置2の設置状況を入力可能な設置状況入力画面情報を生成し、その設置状況入力画面情報に基づく設置状況入力画面(後述の
図8及び
図9参照)を介してユーザ入力を受け付けることで支援対象装置の設置状況を取得する。なお、支援対象装置の設置状況のデータが、自装置のポンプ制御盤22に記憶されている場合には、設置状況取得部301は、支援対象装置としてのポンプ装置2に設置状況のデータ送信要求を送信し、その応答としてポンプ装置2から支援対象装置の設置状況を取得してもよい。また、支援対象装置の設置状況のデータが、記憶部32又は外部の記憶装置や記憶媒体等に記憶されている場合には、設置状況取得部301は、そのデータを参照することで支援対象装置の設置状況を取得してもよい。
【0027】
運転状況取得部302は、支援対象装置が設置状況にて運転されたときの運転状況として、少なくとも運転周波数(F
out)、吸込み圧力(P
suction)及び吐出し圧力(P
discharge)を取得し、さらに測点高差(H
diff)を取得してもよい。例えば、運転状況取得部302は、支援対象装置としてのポンプ装置2の運転状況を入力可能な運転状況入力画面情報を生成し、その運転状況入力画面情報に基づく運転状況入力画面(後述の
図10乃至
図12参照)を介してユーザ入力を受け付けることで支援対象装置の運転状況を取得する。なお、支援対象装置の運転状況のデータが、自装置のポンプ制御盤22に記憶されている場合には、運転状況取得部302は、支援対象装置としてのポンプ装置2に運転状況のデータ送信要求を送信し、その応答としてポンプ装置2から支援対象装置の運転状況を取得してもよい。また、支援対象装置の運転状況のデータが、記憶部32又は外部の記憶装置や記憶媒体等に記憶されている場合には、運転状況取得部302は、そのデータを参照することで支援対象装置の運転状況を取得してもよい。
【0028】
第1の運転支援部303は、支援対象装置が設置状況及び運転状況にて運転されたときの基準運転時の運転条件を算出する第1の運転支援処理を行う。その際、第1の運転支援部303は、性能特性と、設置状況と、運転状況とに基づいて、基準運転時の運転条件を算出し、各種データの算出結果を運転支援内部データ322として格納する。基準運転時の運転条件には、例えば、基準運転時の流量(Qnow)、全揚程(Hnow)及び省エネ率(ESRnow)等が含まれる。基準運転時は、支援対象装置が設置状況及び運転状況にて運転されたときの時点に相当するが、現在の時点でもよいし、過去の時点でもよい。また、基準運転時は、例えば、ポンプ装置2の設置時、点検時、修理時等における試運転が行われたときの状況でもよいし、通常の運転が行われたときの状況でもよい。
【0029】
また、第1の運転支援部303は、第1の運転支援処理のユーザインターフェースとして機能する。例えば、第1の運転支援部303は、第1の運転支援処理により算出した基準流量運転時の運転条件の算出結果を表示する第1の運転支援画面情報を生成し、その第1の運転支援画面情報に基づく第1の運転支援画面(後述の
図18参照)を表示する。
【0030】
第2の運転支援部304は、支援対象装置が設置状況にて運転するときの流量として設定流量(Qset)の入力を受け付けたとき、支援対象装置が設置状況及び設定流量にて運転するときの設定流量運転時の運転条件を算出する第2の運転支援処理を行い、各種データの算出結果を運転支援内部データ322として格納する。設定流量運転時の運転条件には、例えば、設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)、設定流量運転時の全揚程(Hset)及び省エネ率(ESRset)等が含まれる。
【0031】
また、第2の運転支援部304は、第2の運転支援処理のユーザインターフェースとして機能する。例えば、第2の運転支援部304は、設定流量(Q
set)を入力可能な設定流量入力部と、設定流量入力部により入力された設定流量(Q
set)に基づいて第2の運転支援処理により算出した設定流量運転時の運転条件の算出結果を表示する第2の算出結果表示部と、第2の運転支援処理により算出した設定流量運転時の運転条件として、設定流量運転時の指令周波数(F
cmdset)を支援対象装置に設定する設定指示を入力可能な指令周波数設定指示部とを有する第2の運転支援画面情報を生成し、その第2の運転支援画面情報に基づく第2の運転支援画面(後述の
図21及び
図23参照)を表示する。
【0032】
図5は、各装置を構成するコンピュータ900の一例を示すハードウエア構成図である。
【0033】
ポンプ装置2、ポンプ運転支援装置3、及び、ポンプデータベース装置4の各々は、汎用又は専用のコンピュータ900により構成される。コンピュータ900は、
図3に示すように、その主要な構成要素として、バス910、プロセッサ912、メモリ914、入力デバイス916、出力デバイス917、表示デバイス918、ストレージ装置920、通信I/F(インターフェース)部922、外部機器I/F部924、I/O(入出力)デバイスI/F部926、及び、メディア入出力部928を備える。なお、上記の構成要素は、コンピュータ900が使用される用途に応じて適宜省略されてもよい。
【0034】
プロセッサ912は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、DSP(digital signal processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等)で構成され、コンピュータ900全体を統括する制御部として動作する。メモリ914は、各種のデータ及びプログラム930を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等とで構成される。
【0035】
入力デバイス916は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成され、入力部として機能する。出力デバイス917は、例えば、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成され、出力部として機能する。表示デバイス918は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、プロジェクタ等で構成され、出力部として機能する。入力デバイス916及び表示デバイス918は、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置920は、例えば、HDD、SSD等で構成され、記憶部として機能する。ストレージ装置920は、オペレーティングシステムやプログラム930の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0036】
通信I/F部922は、インターネットやイントラネット等のネットワーク940(
図1のネットワーク5と同じであってもよい)に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う通信部として機能する。外部機器I/F部924は、カメラ、プリンタ、スキャナ、リーダライタ等の外部機器950に有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器950との間でデータの送受信を行う通信部として機能する。I/OデバイスI/F部926は、各種のセンサ、アクチュエータ等のI/Oデバイス960に接続され、I/Oデバイス960との間で、例えば、センサによる検出信号やアクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う通信部として機能する。メディア入出力部928は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ等のドライブ装置、メモリカードスロット、USBコネクタで構成され、DVD、CD、メモリカード、USBメモリ等のメディア(非一時的な記憶媒体)970に対してデータの読み書きを行う。
【0037】
上記構成を有するコンピュータ900において、プロセッサ912は、ストレージ装置920に記憶されたプログラム930をメモリ914に呼び出して実行し、バス910を介してコンピュータ900の各部を制御する。なお、プログラム930は、ストレージ装置920に代えて、メモリ914に記憶されていてもよい。プログラム930は、インストール可能なファイル形式又は実行可能なファイル形式でメディア970に記録され、メディア入出力部928を介してコンピュータ900に提供されてもよい。プログラム930は、通信I/F部922を介してネットワーク940経由でダウンロードすることによりコンピュータ900に提供されてもよい。また、コンピュータ900は、プロセッサ912がプログラム930を実行することで実現する各種の機能を、例えば、FPGA(field-programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)等のハードウエアで実現するものでもよい。
【0038】
コンピュータ900は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータ900は、クライアント型コンピュータでもよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。
【0039】
(ポンプ運転支援方法)
図6は、ポンプ運転支援装置3によるポンプ運転支援方法の一例を示すフローチャートである。以下では、支援対象装置となるポンプ装置2の設置作業者(ユーザ)が、ポンプ装置2の設置後に試運転を行ったときに、そのポンプ装置2の運転条件を確認・設定するために、ポンプ運転支援装置3として機能するスマートフォンにインストール済みのポンプ運転支援プログラム320(スマートフォン用アプリケーション)を起動した場合について説明する。
【0040】
まず、ステップS100にて、性能特性取得部300は、ポンプ運転支援プログラム320の起動に応じて、型番入力画面情報を生成し、その型番入力画面情報に基づいて型番入力画面10を出力部34に表示する。
【0041】
図7は、型番入力画面10の一例を示す図である。型番入力画面10は、例えば、ポンプ装置2の型番(Mn)をリスト形式で表示し、ユーザによる型番(Mn)の入力を受付可能な型番入力部100を有する。型番入力部100に表示される型番(Mn)のリストは、例えば、ポンプデータベース装置4から提供されたものでもよいし、記憶部32に記憶されたものでもよい。なお、型番入力部100は、文字列の入力を受付可能であってもよい。
図7では、ポンプ装置2の型番(Mn)として、「P001-AAA-03」が選
択枠100aにより選択された場合が図示されている。
【0042】
そして、ステップS101にて、性能特性取得部300は、型番入力画面10にて支援対象装置の型番(Mn)(ここでは、「P001-AAA-03」)のユーザ入力を受け付けると、その型番(Mn)を含むデータ送信要求をポンプデータベース装置4に送信し、その応答として、その型番(Mn)で特定される支援対象装置の性能特性を取得する。ここでは、性能特性取得部300は、支援対象装置の性能特性として、定格運転時の流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))、流量・消費電力代表性能曲線(QWtypical(Q))、定格回転速度(Nrated)及びモータ極数(PoleCount)を取得する。
【0043】
次に、ステップS110にて、設置状況取得部301は、設置用途入力画面情報を生成し、その設置用途入力画面情報に基づいて設置用途入力画面11を出力部34に表示する。
【0044】
図8は、設置用途入力画面11の一例を示す図である。設置用途入力画面11は、例えば、ポンプ装置2の設置用途(Use)を模式図でそれぞれ表示し、ユーザによる設置用途(Use)の入力を受付可能な設置用途入力部110を有する。
図8では、ポンプ装置2の設置用途(Use)として、「吸い上げ」、「押し込み」、「密閉回路」及び「循環」の4つを例示したが、これら以外の設置用途(Use)を含むものでもよい。
図8では、ポンプ装置2の設置用途(Use)として、選択枠110aにて「押し込み」が選択された場合が図示されている。
【0045】
そして、ステップS111にて、設置状況取得部301は、設置用途入力画面11にて設置用途(Use)(ここでは、「押し込み」)のユーザ入力を受け付けることで、支援対象装置の設置用途(Use)を取得する。
【0046】
次に、ステップS112にて、設置状況取得部301は、支援対象装置の設置用途(Use)に応じて実揚程入力画面情報を生成し、その実揚程入力画面情報に基づいて実揚程入力画面12を出力部34に表示する。
【0047】
図9は、実揚程入力画面12の一例を示す図である。実揚程入力画面12は、例えば、ポンプ装置2の設置用途(Use)(ここでは、「押し込み」)を表示する設置用途表示部120と、ユーザによる実揚程(H
static)の入力を受付可能な実揚程入力部121とを有する。
図9では、実揚程(H
static)として、「2.5」と入力された場合が図示されている。
【0048】
そして、ステップS113にて、設置状況取得部301は、実揚程入力画面12にて実揚程(Hstatic)のユーザ入力を受け付けることで、支援対象装置の実揚程(Hstatic)を取得する。
【0049】
次に、ステップS120にて、運転状況取得部302は、運転周波数入力画面情報を生成し、その運転周波数入力画面情報に基づいて運転周波数入力画面13を出力部34に表示する。
【0050】
図10は、運転周波数入力画面13の一例を示す図である。運転周波数入力画面13は、例えば、ポンプ装置2の設置用途(Use)(ここでは、「押し込み」)を表示する設置用途表示部130と、ユーザによる運転周波数(F
out)の入力を受付可能な運転周波数入力部131とを有する。ここでは、運転状況取得部302が、運転周波数入力画面情報を生成する際に、運転周波数(F
out)のデータ送信要求を支援対象装置(試運転
が行われたポンプ装置2)に送信し、その応答として、その支援対象装置の運転周波数(F
out)(ここでは、「150.0」)を取得し、その結果を運転周波数入力部131のデフォルト値として入力し、運転周波数入力画面13に表示する場合について説明する。なお、運転周波数入力部131は、数値の入力(変更)を受付可能であってもよい。
【0051】
そして、ステップS121にて、運転状況取得部302は、運転周波数入力画面13にて運転周波数(Fout)(ここでは、支援対象装置から受信した「150.0」)のユーザ入力を受け付けることで、支援対象装置の運転周波数(Fout)を取得する。
【0052】
次に、ステップS122にて、運転状況取得部302は、圧力入力画面情報を生成し、その圧力入力画面情報に基づいて圧力入力画面14を出力部34に表示する。
【0053】
図11は、圧力入力画面14の一例を示す図である。圧力入力画面14は、例えば、ポンプ装置2の設置用途(Use)(ここでは、「押し込み」)を表示する設置用途表示部140と、ユーザによる吸込み圧力(P
suction)及び吐出し圧力(P
discharge)の入力を受付可能な圧力入力部141とを有する。
図11では、吸込み圧力(P
suction)及び吐出し圧力(P
discharge)として、「0.026」及び「0.064」とそれぞれ入力された場合が図示されている。ここでは、ポンプ装置2が試運転により実際に運転しているときに、ユーザが、吸込み側の圧力計が示す圧力値と、吐出し側の圧力計が示す圧力値とを目視で読み取ったときの結果がそれぞれ入力されたものである。
【0054】
そして、ステップS123にて、運転状況取得部302は、圧力入力画面14にて吸込み圧力(Psuction)及び吐出し圧力(Pdischarge)のユーザ入力を受け付けることで、支援対象装置の吸込み圧力(Psuction)及び吐出し圧力(Pdischarge)を取得する。
【0055】
次に、ステップS124にて、運転状況取得部302は、測点高差入力画面情報を生成し、その測点高差入力画面情報に基づいて測点高差入力画面15を出力部34に表示する。
【0056】
図12は、測点高差入力画面15の一例を示す図である。測点高差入力画面15は、例えば、ポンプ装置2の設置用途(Use)(ここでは、「押し込み」)を表示する設置用途表示部150と、ユーザによる測点高差(H
diff)の入力を受付可能な測点高差入力部151とを有する。なお、
図12では、測点高差(H
diff)として、「0.86」とそれぞれ入力された場合が図示されている。
【0057】
そして、ステップS125にて、運転状況取得部302は、測点高差入力画面15にて測点高差(Hdiff)のユーザ入力を受け付けることで、支援対象装置の測点高差(Hdiff)を取得する。なお、運転状況取得部302は、測点高差入力画面15にて吸込み側計器高さ(GHsuction)及び吐出し側計器高さ(GHdischarge)のユーザ入力を受け付けることで、以下の式(1)により、測点高差(Hdiff)を算出するようにしてもよい。
【0058】
[数1]
Hdiff=GHsuction-GHdischarge …(1)
【0059】
次に、ステップS200にて、第1の運転支援部303は、第1の運転支援処理として、ステップS100~S101にて取得された性能特性と、ステップS110~S113にて取得された設置状況と、ステップS120~S125にて取得された運転状況とに基
づいて、後述の
図13及び
図14に示す各ステップを行うことにより、基準運転時の運転条件を算出する。以下に、第1の運転支援処理の詳細を説明する。
【0060】
図13及び
図14は、第1の運転支援部303による第1の運転支援処理(ステップS200)の一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、ステップS210にて、第1の運転支援部303は、定格回転速度(Nrated)及びモータ極数(PoleCount)に基づいて、以下の式(2)により、定格回転速度(Nrated)に応じた定格運転周波数(Frated)を算出する。
【0062】
[数2]
Frated=Nrated・PoleCount/120 …(2)
【0063】
次に、ステップS211にて、基準運転時の運転周波数(Fout)及びモータ極数(PoleCount)に基づいて、以下の式(3)により、基準運転時の運転周波数(Fout)に応じた運転回転速度(Nnow)を算出する。
【0064】
[数3]
Nnow=120・Fout/PoleCount …(3)
【0065】
次に、ステップS212にて、基準運転時の運転回転速度(Nnow)及び定格回転速度(Nrated)に基づいて、以下の式(4)により、基準運転時の回転速度比(Nratio)を算出する。
【0066】
[数4]
Nratio=Nnow/Nrated …(4)
【0067】
次に、ステップS220にて、吸込み圧力(Psuction)、吐出し圧力(Pdischarge)及び測点高差(Hdiff)に基づいて、以下の式(5)により、基準運転時の全揚程(Hnow)を算出する。
【0068】
[数5]
Hnow=k・(Psuction-Pdischarge)+Hdiff …(5)
ただし、kは、圧力の単位[MPa]を揚程の単位「m」に変換するための係数(≒102)である。
【0069】
次に、ステップS230にて、流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))から、基準運転時の運転回転速度(Nnow)と定格回転速度(Nrated)との回転速度比(Nratio)に基づいて、基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QHnow(Q))を算出する。例えば、以下の式(6)で表される流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))を、以下の式(7)に変換し、係数(ahh、bhh、chh)を算出することにより、基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QHnow(Q))を算出する。
【0070】
[数6]
QHtypical(Q)=aht・Q2+bht・Q+cht …(6)
[数7]
QHnow(Q)=aht・Q2・Nratio+bht・Q+cht・・Nratio
2
=ahh・Q2+bhh・Q+chh …(7)
【0071】
そして、ステップS231にて、基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QHnow(Q))上において、基準運転時の全揚程(Hnow)を満たす点により基準運転時の流量(Qnow)を特定する。
【0072】
図15は、基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QH
now(Q))と、基準運転時の全揚程(H
now)及び基準運転時の流量(Q
now)の算出例を示すグラフである。基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QH
now(Q))は、ステップS230にて、流量・全揚程代表性能曲線(QH
typical(Q))から算出される。基準運転時の流量(Q
now)は、ステップS231にて、基準運転時の流量・全揚程性能曲線(QH
now(Q))にステップS220にて算出された基準運転時の全揚程(H
now)を代入することで特定される。
【0073】
次に、ステップS240にて、流量及び全揚程の関係(後述の
図16参照)において、実揚程(H
static)により特定される点(OP
static)と、基準運転時の流量(Q
now)及び全揚程(H
now)により特定される基準運転点(OP
now)とを通過するシステムカーブ(CV
sys(Q))を作成する。システムカーブ(CV
sys(Q))は、例えば、以下の式(8)により、2次曲線として近似される。
【0074】
[数8]
CVsys(Q)=as・Q2・bs …(8)
【0075】
次に、ステップS241にて、システムカーブ(CVsys(Q))と、流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、定格運転時の流量(Qrated)及び全揚程(Hrated)を定格運転点(OPrated)として特定する。
【0076】
図16は、システムカーブ(CV
sys(Q))と、定格運転時の流量(Q
rated)及び全揚程(H
rated)との算出例を示すグラフである。システムカーブ(CV
sys(Q))は、ステップS240にて、点(OP
static)及び基準運転点(OP
now)を通過する2次曲線として作成される。また、定格運転点(OP
rated)は、ステップS241にて、システムカーブ(CV
sys(Q))と、流量・全揚程代表性能曲線(QH
typical(Q))との交点として特定される。
【0077】
次に、ステップS242にて、流量及び全揚程の関係(後述の
図17参照)において、流量が0及び全揚程が0により特定される点(OP
0)と、基準運転点(OP
now)とを通過する基準運転時の仮想システムカーブ(CV
vsys(Q))を作成する。
【0078】
次に、ステップS243にて、基準運転時の仮想システムカーブ(CVvsys(Q))と、流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、基準運転時の実揚程を0とする仮想状態での定格運転時に相当する第1の仮想定格運転時の流量(Qrated0)及び全揚程(Hrated0)を第1の仮想定格運転点(OPrated0)として特定する。
【0079】
次に、ステップS244にて、流量・消費電力代表性能曲線(QWtypical(Q))上において、定格運転時の流量(Qrated)を満たす点により定格運転時の消費電力(Wrated)を特定するとともに、第1の仮想定格運転時の流量(Qrated0)を満たす点により第1の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0)を特定する。
【0080】
次に、ステップS245にて、第1の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0)か
ら、基準運転時の運転回転速度(Nnow)と定格回転速度(Nrated)との回転速度比(Nratio)に基づいて、以下の式(9)により、基準運転時の消費電力(Wnow)を算出する。
【0081】
[数9]
Wnow=Wrated0・(Nratio)3 …(9)
【0082】
次に、ステップS246にて、以下の式(10)により、定格運転時の消費電力(Wrated)から基準運転時の消費電力(Wnow)を減算することで基準運転時の省エネ電力(ESWnow)を算出し、以下の式(11)により、定格運転時の消費電力(Wrated)に対する基準運転時の省エネ電力(ESWnow)の比率に基づいて、基準運転時の省エネ率(ESRnow)を算出する。
【0083】
[数10]
ESWnow=Wrated-Wnow …(10)
[数11]
ESRnow=(ESWnow/Wrated)・100 …(11)
【0084】
図17は、基準運運転時の流量及び全揚程の関係と、流量及び消費電力の関係とを示すグラフである。基準運転時の仮想システムカーブ(CV
vsys(Q))は、ステップS242にて、点(OP
0)と、基準運転点(OP
now)とを通過する2次曲線として作成される。第1の仮想定格運転点(OP
rated0)は、ステップS243にて、基準運転時の仮想システムカーブ(CV
vsys(Q))と、流量・全揚程代表性能曲線(QH
typical(Q))との交点として特定される。定格運転時の消費電力(W
rated)及び第1の仮想定格運転時の消費電力(W
rated0)は、ステップS244にて、流量・消費電力代表性能曲線(QW
typical(Q))に定格運転時の流量(Q
rated)及び第1の仮想定格運転時の流量(Q
rated0)をそれぞれを代入することで特定される。基準運転時の消費電力(W
now)は、ステップS245にて、第1の仮想定格運転時の消費電力(W
rated0)と、回転速度比(N
ratio)の3乗との積により算出される。なお、
図17の破線で示す基準運転時の流量・消費電力性能曲線(QW
now(Q))は、2次曲線として算出されたものではなく、参考のため図示したものである。
【0085】
そして、ステップS250にて、第1の運転支援部303は、上記のように第1の運転支援処理を行った結果として、基準運転時の運転条件の算出結果を表示する第1の運転支援画面情報を生成し、その第1の運転支援画面情報に基づいて第1の運転支援画面16を出力部34に表示する。
【0086】
図18は、第1の運転支援画面16の一例を示す図である。第1の運転支援画面16は、例えば、各画面10~15にて入力された入力内容を表示する入力内容表示部160と、第1の運転支援処理により基準運転時の運転条件を算出したときの算出結果を表示する第1の算出結果表示部161と、支援対象装置の流量を設定するための第2の運転支援画面17(後述の
図21及び
図23参照)の表示指示を入力可能な流量設定ボタン162とを有する。第1の算出結果表示部161には、基準運転時の運転条件として、例えば、流量(Q
now)、全揚程(H
now)、省エネ率(ESR
now)、運転回転速度(N
now)が表示される。なお、第1の算出結果表示部161には、第1の運転支援処理により運転支援内部データ322に格納されたデータであれば、他のデータが表示されるようにしてもよい。
【0087】
以上のように、本実施形態に係るポンプ運転支援装置3及びポンプ運転支援方法によれ
ば、第1の運転支援処理を行うことにより、特定の性能特性を有する支援対象装置が、特定の設置状況及び運転状況にて運転されたときの流量(Qnow)及び全揚程(Hnow)を算出(推定)することができるので、支援対象装置に対して流量計を用いることなく、ポンプ装置2の運転支援を簡易に行うことができる。また、そのときの省エネ率(ESRnow)が算出されるので、支援対象装置に対して、例えば、電力量計等を用いることなく、特定の運転周波数(Fout)にて運転したときの省エネの効果を確認することができる。
【0088】
次に、
図6に戻り、ステップS300にて、第2の運転支援部304は、第1の運転支援画面16の流量設定ボタン162が押下されることに応じて、第2の運転支援画面17(後述の
図21及び
図23参照)を表示し、その第2の運転支援画面17にて支援対象装置が設置状況にて運転するときの流量として設定流量(Q
set)の入力を受け付けるとともに、第2の運転支援処理として、後述の
図19及び
図20に示す各ステップを行うことにより、設定流量運転時の運転条件を算出する。以下に、第2の運転支援処理の詳細を説明する。
【0089】
図19及び
図20は、第2の運転支援部304による第2の運転支援処理(ステップS300)の一例を示すフローチャートである。
【0090】
まず、ステップS310にて、第2の運転支援部304は、第1の運転支援画面16の流量設定ボタン162が押下されることに応じて、第2の運転支援画面情報を生成し、その第2の運転支援画面情報に基づいて第2の運転支援画面17を出力部34に表示する。
【0091】
図21は、第2の運転支援画面17の一例を示す図である。第2の運転支援画面17は、設定流量(Q
set)を段階的又は連続的に変更して入力可能な設定流量入力部170と、設定流量入力部170により入力された設定流量(Q
set)に基づいて、設定流量運転時の運転条件を算出する第2の運転支援処理の実行指示を入力可能な運転条件算出ボタン171と、第2の運転支援処理により設定流量運転時の運転条件を算出したときの算出結果を表示する第2の算出結果表示部172と、第2の運転支援処理により算出された設定流量運転時の運転条件として、設定流量運転時の指令周波数(F
cmdset)を支援対象装置に設定する設定指示を入力可能な指令周波数設定ボタン173とを有する。
【0092】
設定流量入力部170は、円弧170aに沿ってポインタ170bをスライドさせることにより、設定流量(Q
set)を入力するものである。
図23では、基準運転時の流量(Q
now)である「1.010」から変更されて、流量170cに示すように、「0.940」と入力された場合が図示されている。なお、
図21では、第2の運転支援処理の実行前のため、第2の算出結果表示部172には、算出結果が表示されておらず、指令周波数設定ボタン173は、押下不可(グレーアウト)の状態で表示されている。また、運転条件算出ボタン171は省略されてもよく、その場合には、第2の運転支援部304は、設定流量入力部170にて設定流量(Q
set)が入力されたことに応じて、設定流量運転時の運転条件を算出するようにしてもよい。
【0093】
そして、ステップS311にて、第2の運転支援部304は、第2の運転支援画面17の運転条件算出ボタン171が押下されたことに応じて、設定流量入力部170にて設定された設定流量(Qset)(ここでは、「0.940」)のユーザ入力を受け付ける。
【0094】
次に、ステップS320にて、定格運転時の流量(Qrated)に対する設定流量(Qset)の比率と、定格回転速度(Nrated)に応じた定格運転周波数(Frated)とに基づいて、以下の式(12)により、設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)を算出する。その際、第2の運転支援部304は、第1の運転支援部303と同
様にして、定格運転周波数(Frated)の算出、システムカーブ(CVsys(Q))の作成、定格運転時の流量(Qrated)の特定を行うようにしてもよいし、第1の運転支援部303による算出結果として格納された運転支援内部データ322を参照するようにしてもよい。
【0095】
[数12]
Fcmdset=(Qset/Qrated)・Frated …(12)
【0096】
次に、ステップS321にて、設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)及びモータ極数(PoleCount)に基づいて、以下の式(13)により、設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)に応じた運転回転速度(Nset)を算出する。
【0097】
[数13]
Nset=120・Fout/PoleCount …(13)
【0098】
次に、ステップS322にて、設定流量運転時の運転回転速度(Nset)及び定格回転速度(Nrated)に基づいて、以下の式(14)により、設定流量運転時の回転速度比(Nratioset)を算出する。
【0099】
[数14]
Nratioset=Nset/Nrated …(14)
【0100】
次に、ステップS323にて、システムカーブ(CVsys(Q))上において、設定流量(Qset)を満たす点により設定流量運転時の全揚程(Hset)を特定する。
【0101】
次に、ステップS330にて、流量及び全揚程の関係(後述の
図22参照)において、流量が0及び全揚程が0により特定される点(OP
0)と、設定流量(Q
set)及び設定流量運転時の全揚程(H
set)により特定される設定流量運転点(OP
set)とを通過する設定流量運転時の仮想システムカーブ(CV
vsysset(Q))を作成する。
【0102】
次に、ステップS331にて、設定流量運転時の仮想システムカーブ(CVvsysset(Q))と、流量・全揚程代表性能曲線(QHtypical(Q))との交点に基づいて、設定流量運転時の実揚程を0とする仮想状態での定格運転時に相当する第2の仮想定格運転時の流量(Qrated0set)及び全揚程(Hrated0set)を第2の仮想定格運転点(OPrated0set)として特定する。
【0103】
次に、ステップS332にて、流量・消費電力代表性能曲線(QWtypical(Q))上において、定格運転時の流量(Qrated)を満たす点により定格運転時の消費電力(Wrated)を特定するとともに、第2の仮想定格運転時の流量(Qrated0set)を満たす点により第2の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0set)を特定する。
【0104】
次に、ステップS333にて、第2の仮想定格運転時の消費電力(Wrated0set)から、設定流量運転時の運転回転速度(Nset)と定格回転速度(Nrated)との回転速度比(Nratioset)に基づいて、以下の式(15)により、設定流量運転時の消費電力(Wset)を算出する。
【0105】
[数15]
Wset=Wrated0set・(Nratioset)3 …(15)
【0106】
次に、ステップS334にて、以下の式(16)により、定格運転時の消費電力(Wrated)から設定流量運転時の消費電力(Wset)を減算することで設定流量運転時の省エネ電力(ESWset)を算出し、以下の式(17)により、定格運転時の消費電力(Wrated)に対する設定流量運転時の省エネ電力(ESWset)の比率に基づいて、設定流量運転時の省エネ率(ESRset)を算出する。
【0107】
[数16]
ESWset=Wrated-Wset …(16)
[数17]
ESRset=(ESWset/Wrated)・100 …(17)
【0108】
図22は、設定流量運転時の流量及び全揚程の関係と、流量及び消費電力の関係とを示すグラフである。設定流量運転時の仮想システムカーブ(CV
vsysset(Q))は、ステップS330にて、点(OP
0)と、設定流量運転点(OP
set)とを通過する2次曲線として作成される。第2の仮想定格運転点(OP
rated0set)は、ステップS331にて、設定流量運転時の仮想システムカーブ(CV
vsysset(Q))と、流量・全揚程代表性能曲線(QH
typical(Q))との交点として特定される。定格運転時の消費電力(W
rated)及び第2の仮想定格運転時の消費電力(W
rated0set)は、ステップS332にて、流量・消費電力代表性能曲線(QW
typical(Q))に定格運転時の流量(Q
rated)及び第2の仮想定格運転時の流量(Q
rated0set)をそれぞれを代入することで特定される。設定流量運転時の消費電力(W
set)は、ステップS333にて、第2の仮想定格運転時の消費電力(W
rated0set)と、回転速度比(N
ratioset)の3乗との積により算出される。なお、
図22の破線で示す設定流量運転時の流量・消費電力性能曲線(QW
set(Q))は、2次曲線として算出されたものではなく、参考のため図示したものである。
【0109】
そして、ステップS340にて、第2の運転支援部304は、上記のように第2の運転支援処理を行った結果として、設定流量運転時の運転条件の算出結果を表示する第2の運転支援画面情報を生成し、その第2の運転支援画面情報に基づいて第2の運転支援画面17を更新する。
【0110】
図23は、更新後の第2の運転支援画面17aの一例を示す図である。更新後の第2の運転支援画面17aは、
図21に示す第2の運転支援画面17と同様の構成を有し、第2の算出結果表示部172aには、設定流量運転時の運転条件として、例えば、例えば、指令周波数(F
cmdset)、全揚程(H
set)、省エネ率(ESR
set)、運転回転速度(N
set)が表示される。なお、第2の算出結果表示部172aには、第2の運転支援処理により運転支援内部データ322に格納されたデータであれば、他のデータが表示されるようにしてもよい。
【0111】
そして、ステップS350にて、第2の運転支援部304は、第2の運転支援画面17aの指令周波数設定ボタン173aが押下されることに応じて、設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)を含む周波数設定要求を支援対象装置(ここで、試運転が行われたポンプ装置2)に送信することで、その支援対象装置の運転周波数(Fout)が、設定流量運転時の指令周波数(Fcmdset)(ここでは、「135.0」)に設定(変更)される。その結果、支援対象装置は、その運転周波数(Fout)に基づいて、モータ21の回転動作を制御する。なお、指令周波数設定ボタン173aが押下されることなく、例えば、設定流量入力部170により新たな設定流量(Qset)が設定されて、運転条件算出ボタン171が押下された場合には、第2の運転支援部304は、ステップS311にて、その新たな設定流量(Qset)のユーザ入力を受け付けたものとして、ス
テップS320以降の処理を同様に行うようにすればよい。
【0112】
以上のように、本実施形態に係るポンプ運転支援装置3及びポンプ運転支援方法によれば、第2の運転支援処理を行うことにより、特定の性能特性を有し、特定の設置状況にて設置された支援対象装置が、ユーザの目標とする設定流量(Qset)にて運転するための指令周波数(Fcmdset)が算出されるので、支援対象装置に対して流量計を用いることなく、ポンプ装置2の運転支援を簡易に行うことができる。また、そのときの省エネ率(ESRset)が算出されるので、支援対象装置に対して、例えば、電力量計等を用いることなく、設定流量(Qset)にて運転したときの省エネの効果を確認することができる。
【0113】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0114】
上記実施形態では、ポンプ運転支援装置3が、ポンプ運転支援方法を実行する機能を有する場合について説明したが、ポンプ運転支援装置3の機能の一部(特に制御部30の機能)が、ポンプ装置2又はポンプデータベース装置4に組み込まれていてもよい。また、ポンプ運転支援装置3は、必要なデータ(例えば、ポンプデータベース40)を記憶部32に記憶することでスタンドアローン型の装置として機能するものでもよいし、サーバ型、クラウド型、中央監視センター型等の装置として機能し、各種の入力操作を受付可能なクライアント型の装置に対して各種の画面情報を提供するようにしてもよい。
【0115】
上記実施形態では、ポンプ運転支援装置3が、
図6、
図13、
図14、
図19及び
図20に示すフローチャートに従って動作する場合について説明したが、各ステップの実行順序を適宜変更してもよいし、一部のステップを省略してもよい。例えば、ポンプ運転支援装置3は、各画面10~17を表示するステップS100~S125の順序を適宜入れ替えてもよいし、各画面10~17を表示するステップS100~S125のうち一部のステップを省略してもよい。また、ポンプ運転支援装置3は、第2の運転支援処理(ステップS300)を省略し、第1の運転支援処理(ステップS200)だけを行うようにしてもよいし、第1の運転支援処理(ステップS200)を省略し、第2の運転支援処理(ステップS300)だけを行うようにしてもよい。
【0116】
上記実施形態では、ポンプ運転支援装置3が、基準運転時の運転条件の算出結果及び設定流量運転時の運転条件の算出結果を画面表示する場合について説明したが、それらの算出結果を外部の記憶装置や記憶媒体等に記憶してもよいし、ネットワーク5を介して任意の外部装置に送信してもよい。
【0117】
上記実施形態では、ポンプ運転支援装置3が、ポンプ運転支援方法を実行する際に表示される各画面10~17について説明したが、各画面10~17の表示内容、表示形態、表示レイアウト、入力方法等を適宜変更してよい。また、各画面10~17は、複数の画面として表示されてもよく、例えば、第2の運転支援画面17、17aが、設定流量入力部170及び運転条件算出ボタン171を有する第2の運転支援画面17と、第2の算出結果表示部172及び指令周波数設定ボタン173を有する第2の運転支援画面17aとが別々の画面として表示されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…ポンプ運転支援システム、2…ポンプ装置、3…ポンプ運転支援装置、
4…ポンプデータベース装置、5…ネットワーク、
10…型番入力画面、11…設置用途入力画面、12…実揚程入力画面、
13…運転周波数入力画面、14…圧力入力画面、15…測点高差入力画面、
16…第1の運転支援画面、17、17a…第2の運転支援画面、
20…ポンプ部、21…モータ、22…ポンプ制御盤、
30…制御部、31…通信部、32…記憶部、33…入力部、34…出力部、
40…ポンプデータベース、
100…型番入力部、110…設置用途入力部、
120…設置用途表示部、121…実揚程入力部、
130…設置用途表示部、131…運転周波数入力部、
140…設置用途表示部、141…圧力入力部、
150…設置用途表示部、151…測点高差入力部、
160…入力内容表示部、161…第1の算出結果表示部、162…流量設定ボタン、
170…設定流量入力部、171…運転条件算出ボタン、
172、172a…第2の算出結果表示部、
173、173a…指令周波数設定ボタン(指令周波数設定指示部)
300…性能特性取得部、301…設置状況取得部、302…運転状況取得部、
303…第1の運転支援部、304…第2の運転支援部、
320…ポンプ運転支援プログラム、321…運転支援取得データ、
322…運転支援内部データ