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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181911
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/18 20060101AFI20231218BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08G65/18
C08G59/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095298
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰延
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森田 萩乃
【テーマコード(参考)】
4J005
4J036
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005AA07
4J005BA00
4J005BB02
4J036AA01
4J036AA05
4J036AD08
4J036AF06
4J036AJ01
4J036AJ09
4J036FA10
4J036FA13
4J036GA19
4J036GA20
4J036GA21
4J036GA22
4J036GA24
4J036GA25
4J036GA26
4J036HA02
4J036JA01
4J036JA05
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】硬化物の耐熱性と、組成物の硬化性に優れる組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物である。
(A)成分:脂環式エポキシ化合物
(B)成分:三官能以上オキセタン化合物
(C)成分:二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
前記脂環式エポキシ化合物は、2つのシクロアルケンオキサイド構造が直接又はシクロアルカン構造を介して縮合した構造を有する化合物、及び2つのシクロアルケンオキサイド構造が連結基により連結した構造を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物。
(A)成分:脂環式エポキシ化合物
(B)成分:三官能以上オキセタン化合物
(C)成分:二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
【請求項2】
前記脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【化1】
(式(A-1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化2】
(式(A-2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化3】
(式(A-3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化4】
(式(A-4)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。)
【化5】
(式(A-5)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基若しくはこれらが複数連結した基を表す。)
【請求項3】
上記(B)成分が、下記一般式(B1)で表される化合物である、請求項1に記載の組成物。
【化6】
(式(B1)中、Xは、下記一般式(X)で表されるオキセタニル基を表し、
n1は1以上10以下の数を表す。)
【化7】
(式(X)中、*は、Xと隣接する酸素原子との結合位置を表し、
は、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基を表し、アルキレン基のメチレン基の一部が酸素原子で置換されていてもよく、
B1は、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、アルキル基はさらに置換基を有していてもよい。)
【請求項4】
前記(A)成分の含有量が、前記組成物の固形分100質量部中、0.5質量部以上80質量部以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、前記組成物の固形分100質量部中、10質量部以上75質量部以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記(C)成分の含有量が、前記組成物の固形分100質量部中、1質量部以上60質量部以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は優れた熱的、力学的、電気的性質を持ち、電気・電子機器材料、機械材料、土木建築材料、日用品など各種用途への適用が進められている。しかし、エポキシ樹脂の用途が、航空機の構造材料として使用される炭素繊維等との高性能複合材料や、プリント配線板、IC封止剤等の電子材料等、先端技術分野での利用が検討されるに伴い、より高性能な樹脂が要求され、種々の改善が試みられている。求められている性能としては、硬化性や耐熱性等の向上が挙げられる。
このような性能の向上は、エポキシ樹脂の改良のみでは達成することが困難であり、エポキシ樹脂とは異なる樹脂との組み合わせで改良する試みが多数なされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多価アルコールのグリシジル化物、または多価アルコールアルキレンオキサイド付加物のグリシジル化合物と、オキセタン化合物と、特定のラジカル重合性成分と、特定のラジカル重合開始剤を含有する硬化性組成物が提案されている。
特許文献2は、多価アルコールのグリシジル化物と、脂環式エポキシ化合物と、カチオン重合開始剤と、エポキシ基を有するラジカル重合性成分と、ラジカル重合開始剤と、特定のポリマーを含有する硬化性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-26774号公報
【特許文献2】特開2017-179161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2で提案されている硬化性組成物であっても、硬化物の耐熱性や硬化性については、必ずしも満足できるものではない場合があった。
従って、硬化物の耐熱性及び硬化性に優れる組成物が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化物の耐熱性と、組成物の硬化性に優れる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成を有する組成物であれば、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物を提供する。
(A)成分:脂環式エポキシ化合物と、
(B)成分:三官能以上オキセタン化合物と、
(C)成分:二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
【0009】
本発明によれば、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れる組成物を提供することができる。
【0010】
本発明においては、上記(A)成分が、下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物から少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記組成物は、さらに耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0011】
【化1】
【0012】
式(A-1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0013】
【化2】
【0014】
式(A-2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0015】
【化3】
【0016】
式(A-3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0017】
【化4】
【0018】
式(A-4)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0019】
【化5】
【0020】
式(A-5)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基若しくはこれらが複数連結した基を表す。
【0021】
本発明においては、上記(B)成分が、下記一般式(B1)で表される化合物である、ことが好ましい。
上記組成物は、さらに耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0022】
【化6】
【0023】
式(B1)中、Xは、下記一般式(X)で表されるオキセタニル基を表し、
n1は、1以上10以下の数を表す。
【0024】
【化7】
【0025】
式(X)中、*は、Xと隣接する酸素原子との結合位置を表し、
は、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基を表し、アルキレン基のメチレン基の一部が酸素原子で置換されていてもよく、
B1は、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、アルキル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0026】
本発明においては、上記(A)成分の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中、0.5質量部以上80質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0027】
本発明においては、上記(B)成分の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0028】
本発明においては、上記(C)成分の含有量が、上記組成物の固形分100質量部中、1質量部以上60質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0029】
本発明においては、さらに、(D)成分として重合開始剤を含むことが好ましい。上記組成物の硬化反応を促進することができるからである。
【0030】
本発明は、上述の組成物の硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れる組成物を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、組成物及びその硬化物に関するものである。
以下、本発明の組成物及び硬化物について詳細に説明する。
【0033】
本明細書において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、炭素原子数1以上20以下のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1以上20以下とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。また、本明細書において所定の炭素原子数の基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基に係る炭素原子数の規定は、その置換後の基の炭素原子数を規定するものとする。
【0034】
本明細書において、「組成物の固形分」とは、組成物中の溶剤を除く全成分の含有量を表す。
【0035】
A.組成物
まず、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含むものである。
(A)成分:脂環式エポキシ化合物
(B)成分:三官能以上オキセタン化合物
(C)成分:二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
【0036】
以下、本発明の組成物を構成する各成分について説明する。
【0037】
A1.脂環式エポキシ化合物
本発明の組成物は、(A)成分として、脂環式エポキシ化合物を含む。
上記(A)成分は、分子中に少なくとも1つの脂環式エポキシ基を有する化合物、すなわちシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物であり、1分子中に複数の脂環式エポキシ基を有していてもよく、脂環式エポキシ基以外のエポキシ基を有していてもよい。また、上記(A)成分は、2種以上の脂環式エポキシ化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記シクロアルケンオキサイド構造としては、シクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド構造やシクロペンテンオキサイド構造等、脂肪族環とエポキシ環とが環構造の一部を共有する構造を表す。
本発明においては、芳香族環を有する化合物も、脂環式エポキシ基を有するものであれば、上記(A)成分に含むものとする。
【0038】
上記(A)成分のうち、上記シクロアルケンオキサイド構造を1つ有する化合物としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0039】
また、シクロアルケンオキサイド構造を2つ有する化合物としては、2つのシクロアルケンオキサイド構造が直接又はシクロアルカン構造を介して縮合した構造を有する化合物、及び2つのシクロアルケンオキサイド構造が連結基により連結した構造を有する化合物が挙げられる。
2つのシクロアルケンオキサイド構造が直接又はシクロアルカン構造を介して縮合した構造を有する化合物の具体例としては、下記一般式(A-1)~(A-4)で表される化合物が挙げられ、2つのシクロアルケンオキサイド構造が連結基により連結した構造を有する化合物の具体例としては、下記式(A-5)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化8】
【0041】
式(A-1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0042】
【化9】
【0043】
式(A-2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0044】
【化10】
【0045】
式(A-3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0046】
【化11】
【0047】
式(A-4)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0048】
【化12】
【0049】
式(A-5)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基若しくはこれらが複数連結した基を表す。
【0050】
上記「これらが複数連結した基」とは、アルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基及びアミド基から選ばれる基のうち、アルキレン基以外の基同士が、互いに隣接しないように結合した基とすることができる。
また、エステル結合-アルキレン基-エステル結合-アルキレン基のように、同一種類の基を2以上組み合わせてもよい。
【0051】
上記式(A-1)中のR~R10、上記式(A-2)中のR11~R28、上記式(A-3)中のR31~R48、上記式(A-4)中のR51~R68及び上記式(A-5)中のR71~R88で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0052】
上記式(A-1)中のR~R10、上記式(A-2)中のR11~R28、上記式(A-3)中のR31~R48、上記式(A-4)中のR51~R68及び上記式(A-5)中のR71~R88で表される炭素原子数1以上20以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、4-エチルオクチル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、トリデシル基、1-ヘキシルヘプチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基等が挙げられる。
【0053】
上記式(A-1)中のR~R10、上記式(A-2)中のR11~R28、上記式(A-3)中のR31~R48、上記式(A-4)中のR51~R68及び上記式(A-5)中のR71~R88で表される炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、tert-アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、4-エチルオクチルオキシ基、1,3,5,7-テトラメチルオクチルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基等が挙げられる。
【0054】
上記式(A-5)中のZで表される、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基から水素原子を1個除いた基が挙げられ、該アルキル基としては、上記式(1-1)のR~R10で表されるアルキル基として挙げたアルキル基のうち、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。具体的には、メチレン基、メチルメチン基、イソプロピリデン基、ジメチルメチン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。上記アルキレン基の一部又は全ての水素原子が、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0055】
上記Zが、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基及びアミド基から選択される基が複数連結した基である場合、Zの全体の炭素原子数としては、2以上20以下とすることができる。
なお、単結合とは、Zが連結する炭素原子同士が直接結合するものである。このような単結合により、2つのシクロアルケンオキサイド環が結合された化合物としては、例えば、下記式(A-6)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化13】
【0057】
上記式(A-1)~(A-5)で表される化合物の製造方法としては、特開2019-189844号公報に記載の製造方法等が挙げられる。
上記式(A-1)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、THI-DE(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記式(A-2)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DE-102(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記式(A-3)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DE-103(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記式(A-5)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド(登録商標)8000((株)ダイセル製)等が挙げられる。
【0058】
本発明においては、上記(A)成分が、シクロアルケンオキサイド構造を2つ以上有することが好ましく、なかでも2つ有することが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0059】
上記(A)成分のエポキシ基数は、2以上5以下であることが好ましく、なかでも、2以上3以下であることが好ましく、特に、2であることが好ましい。
上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。なお、上記(A)成分のエポキシ基数は、シクロアルケンオキサイド構造以外のエポキシ基の数も含むものとする。
【0060】
本発明においては、上記(A)成分が、2つのシクロアルケンオキサイド構造が直接縮合した構造を有する化合物、又は2つのシクロアルケンオキサイド構造が連結基により連結した構造を有する化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0061】
本発明においては、上記脂環式エポキシ化合物が、上記式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、なかでも、上記式(A-1)、(A-2)及び(A-5)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、上記式(A-1)及び(A-5)で表される化合物のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0062】
上記式(A-1)中のR~R10、上記式(A-2)中のR11~R28、上記式(A-3)中のR31~R48、上記式(A-4)中のR51~R68及び上記式(A-5)中のR71~R88は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0063】
上記式(A-5)中のZは、単結合、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、エステル結合、又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましく、なかでも、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましく、特に、単結合、又は、炭素原子数1以上2以下のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数1以上2以下のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0064】
上記(A)成分としての化合物の分子量は、100以上400以下であることが好ましく、なかでも、120以上300以下であることが好ましく、特に、150以上255以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0065】
上記(A)成分としての化合物のエポキシ当量としては、50g/eq.以上200g/eq.以下であることが好ましく、なかでも、60g/eq.以上150g/eq.以下であることが好ましく、特に、70g/eq.以上130g/eq.以下であることが好ましい。上述の数値範囲にあることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0066】
上記(A)成分の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部中、0.5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、特に、3質量部以上50質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、さらに、8質量部以上35質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0067】
上記(A)成分の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中、0.5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、特に、3質量部以上50質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、さらに、8質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0068】
A2.三官能以上オキセタン化合物
本発明の組成物は、(B)成分として、三官能以上オキセタン化合物を含む。
上記三官能以上オキセタン化合物とは、分子中に、官能基としてのオキセタニル基を3つ以上有する化合物を表す。
上記三官能以上オキセタン化合物は、オキセタニル基以外の官能基を有していてもよい。オキセタニル基以外の官能基としては、例えば、オキセタニル基を除くカチオン重合性基、ラジカル重合性基等の反応性官能基や、アルキル基等の非反応性官能基等が挙げられる。但し、(B)成分は、上記(A)成分に該当するものは含まない。
【0069】
上記オキセタニル基を除くカチオン重合性基としては、カチオンにより重合可能なものであれば制限はなく、例えば、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基、グリシジル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
【0070】
上記ラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合可能なものであれば制限はなく、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和結合基等が挙げられる。
【0071】
本発明においては、上記(B)成分の化合物が有するオキセタニル基の数が、30個以下であることが好ましく、なかでも、25個以下であることが好ましく、特に、16個以下であることが好ましく、なかでも特に、13個以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0072】
上記(B)成分の具体例としては、例えば、ノボラック樹脂類、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサン等の水酸基を3以上有する樹脂をオキセタン化した化合物、オキセタニル基を有する不飽和モノマー(例えば、オキセタニル基含有(メタ)アクリレートを構成単位として含む樹脂)、トリ[(オキセタン-3-イル)メチル]メトキシシラン、トリ[(オキセタン-3-イル)メチル]エトキシシラン及びトリ[(オキセタン-3-イル)メチル]アセトキシシラン等のシロキサン構造(Si-O)を有する化合物が挙げられる。
【0073】
上記(B)成分の市販品としては、例えば、アロンオキセタンOXT-191、OX-SQ(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。
【0074】
本発明においては、上記(B)成分が、シロキサン構造(Si-O)を有する化合物であることが好ましく、なかでも、下記一般式(B1)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0075】
【化14】
【0076】
式(B1)中、Xは、下記一般式(X)で表されるオキセタニル基を表し、
n1は、1以上10以下の数を表す。
【0077】
【化15】
【0078】
式(X)中、*は、Xと隣接する酸素原子との結合位置を表し、
は、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基を表し、アルキレン基のメチレン基の一部が酸素原子で置換されていてもよく、
B1は、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、アルキル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0079】
上記一般式(X)中のLで表される炭素原子数1以上10以下のアルキレン基としては、「A1.脂環式エポキシ化合物」の項においてR等に用いられる炭素原子数1以上20以下のアルキル基から水素原子を1個引き抜いた基のうち、所定の炭素原子数を有する基であるものが挙げられる。アルキレン基のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい。
【0080】
本発明においては、Lが、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基であることが好ましく、特に、炭素原子数1以上2以下のアルキレン基であることが好ましく、なかでも特に、メチレン基が好ましい。
上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0081】
上記一般式(X)中のRB1で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、上記「A1.脂環式エポキシ化合物」の項においてR等に用いられる炭素原子数1以上20以下のアルキル基として挙げたもののうち、所定の炭素原子数を有する基であるものが挙げられる。
上記アルキル基を置換する置換基としては、例えば、アルコキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0082】
本発明においては、n1は、2以上8以下であることが好ましく、なかでも3以上7以下であることが好ましく、特に、4以上6以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
また、本発明においては、RB1が、炭素原子数1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、なかでも炭素原子数2以上4以下のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数2以上3以下のアルキル基であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0083】
本発明においては、上記(B)成分が、下記一般式(B2)で表される化合物であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0084】
【化16】
【0085】
式(B2)中、n2は、1以上10以下の数を表す。
【0086】
本発明においては、n2は、2以上8以下であることが好ましく、なかでも、3以上7以下であることが好ましく、特に、4以上6以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0087】
本発明においては、上記(B)成分の分子量が、600以上4,500以下であることが好ましく、なかでも、1,000以上3,500以下であることが好ましく、特に、1,400以上3,100以下であることが好ましく、なかでも特に、1,800以上2,700以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0088】
本発明においては、上記(B)成分の炭素原子数が、20以上160以下であることが好ましく、なかでも、36以上110以下であることが好ましく、特に、48以上96以下であることが好ましく、なかでも特に、60以上85以下であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0089】
上記(B)成分の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上70質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以上60質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0090】
上記(B)成分の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中、10質量部以上75質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上70質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以上60質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0091】
A3.二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
本発明の組成物は、(C)成分として、二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物を含む。
上記二官能オキセタン化合物は、分子中に、官能基としてのオキセタニル基を2つ有する化合物を表す。上記単官能オキセタン化合物は、分子中に、官能基としてのオキセタニル基を1つ有する化合物を表す。
上記二官能オキセタン化合物及び上記単官能オキセタン化合物は、オキセタニル基以外の官能基を有していてもよい。オキセタニル基以外の官能基は、「A2.三官能以上オキセタン化合物」の項で記載したものと同様の官能基とすることができる。但し、(C)成分は、上記(A)成分に該当するものは含まない。
【0092】
上記二官能オキセタン化合物の具体例としては、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン等のアルカンにオキセタニル基を有する基が2つ結合したアルカン化合物;1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン及びキシリレンビスオキセタン等のオキセタニル基を有する基が2つベンゼン環に結合した化合物;エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等のビスオキセタン化合物等が挙げられる。
【0093】
上記単官能オキセタン化合物の具体例としては、例えば、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン等の3-アルキル-3-(アリールオキシ)オキセタン;3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン及び3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等の3-アルキル-3-(オキシアルキル)オキセタン;3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン等の3-アルキル-3-(ヒドロキシアルキル)オキセタン;並びに3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン等の3-アルキル-3-(ハロゲン化アルキル)オキセタン等が挙げられる。
【0094】
本発明においては、上記(C)成分が、単官能オキセタン化合物であることが好ましく、なかでも、3-アルキル-3-(オキシアルキル)オキセタン、3-アルキル-3-(アリールオキシ)オキセタンであることが好ましく、特に、3-アルキル-3-(オキシアルキル)オキセタンであることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0095】
上記(C)成分が、炭素原子数5以上30以下の化合物であることが好ましく、なかでも炭素原子数8以上20以下の化合物であることが好ましく、特に、炭素原子数10以上15以下の化合物であることが好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成しやすくなるからである。
【0096】
上記(C)成分の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部中、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、15質量部以上55質量部以下であることが好ましく、特に、20質量部以上50質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0097】
上記(C)成分の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中、1質量部以上60質量部以下であることが好ましく、なかでも、15質量部以上55質量部以下であることが好ましく、特に、20質量部以上50質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0098】
A4.重合開始剤
本発明の組成物は、(D)成分として、重合開始剤を含むことができる。
重合開始剤は、光重合開始剤を用いることが好ましく、なかでも、光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。上記組成物の硬化反応が良好になるからである。
上記重合開始剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、上記光重合開始剤の他に、熱カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、熱潜在性硬化剤等のその他の重合開始剤を含有してもよい。
【0099】
(1)光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤は、光酸発生剤とも呼ばれ、紫外線等のエネルギー線の照射により、カチオン重合を開始することができる酸を発生するものである。
上記光カチオン重合開始剤の具体例としては、例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、チアンスレニウム塩、チオキサントニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Feカチオンであって、アニオン部分が、BF 、PF 、SbF 、[BX(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)で構成されるオニウム塩を単独で使用または2種以上を併用したものが挙げられる。
【0100】
上記芳香族スルホニウム塩の具体例としては、例えば、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスファート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスファート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0101】
上記芳香族ヨードニウム塩の具体例としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0102】
上記芳香族ジアゾニウム塩の具体例としては、例えばフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスファート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0103】
上記芳香族アンモニウム塩の具体例としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0104】
上記チアンスレニウム塩の具体例としては、例えば5-メチルチアンスレニウムヘキサフルオロホスファート、5-メチル-10-オキソチアンスレニウムテトラフルオロボレート、5-メチル-10,10-ジオキソチアンスレニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0105】
上記チオキサントニウム塩の具体例としては、例えば、S-ビフェニル2-イソプロピルチオキサントニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0106】
また、その他のカチオン部分としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe塩としては、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)ヘキサフルオロホスファート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチルベンゼン]-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0107】
上記光カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、CPI(R)-100P、CPI(R)-110P、CPI(R)-101A、CPI(R)-200K、CPI(R)-210S(以上、サンアプロ(株)製);サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI-6990、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI-6992、サイラキュア(R)光硬化開始剤UVI-6976(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製);アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、アデカオプトマーSP-300(以上、(株)ADEKA製);CI-5102、CI-2855(以上、日本曹達(株)製);サンエイド(R)SI-60L、サンエイド(R)SI-80L、サンエイド(R)SI-100L、サンエイド(R)SI-110L、サンエイド(R)SI-180L、サンエイド(R)SI-110、サンエイド(R)SI-180(以上、三新化学工業(株)製);エサキュア(R)1064、エサキュア(R)1187(以上、ランベルティ社製);オムニキャット550、オムニキャット250(アイジーエムレジン社製);ロードシルフォトイニシエーター2074(ローディア・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0108】
上記光カチオン重合開始剤の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、なかでも、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、特に、1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0109】
(2)熱カチオン重合開始剤
熱カチオン重合開始剤は、加熱によりカチオン種を含む化合物が励起され、熱分解反応することで熱硬化を進行させる重合開始剤としての機能を発揮するものであり、熱酸発生剤ともいう。
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、ジフェニル-p-フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0110】
上記熱カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物であるAMERICUREシリーズ(アメリカン・スキャン社製);ヨードニウム塩系化合物であるUVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製);FCシリーズ(3M社製);UV9310C(GE東芝シリコーン(株)製);WPIシリーズ、WPAGシリーズ(富士フイルム和光純薬(株)製);スルホニウム塩系化合物であるCYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製);UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製);CDシリーズ(サートマー社製);オプトマーSPシリーズ、オプトマーCPシリーズ((株)ADEKA社製);サンエイドSIシリーズ(三新化学工業(株)製);CIシリーズ(日本曹達(株)製);CPIシリーズ(サンアプロ社製)等が挙げられる。
【0111】
上記熱カチオン重合開始剤の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、なかでも、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0112】
(3)アニオン重合開始剤
本発明の組成物が、後述するアニオン重合性化合物を含有する場合、アニオン重合開始剤を含むことができる。アニオン重合開始剤としては、光塩基発生剤が挙げられる。
上記光塩基発生剤とは、紫外線等のエネルギー線の照射によって塩基を発生する化合物を表す。特に、光に対する感度が良好であることから、ボレートアニオンを含む塩であることが好ましい。
上記光塩基発生剤の市販品としては、例えば、U-CAT5002(サンアプロ(株)製);P3B、BP3B、N3B、MN3B(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0113】
上記アニオン重合開始剤の含有量は、上記組成物の固形分100質量部中、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、なかでも、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0114】
(4)潜在性硬化剤
潜在性硬化剤は、加熱することで熱硬化を進行させるものを表し、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、ポリアミド樹脂、イミダゾール系硬化剤等が挙げられる。
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4-(4-メチル-3-ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0115】
上記アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0116】
上記フェノール系硬化剤としては、例えば、変性フェノール樹脂、パラキシリレン・メタキシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
【0117】
上記ポリアミド樹脂としては、例えば、分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のいずれか一方又は両方を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0118】
上記イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2-フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン等が挙げられる。
【0119】
上記ポリメルカプタン系硬化剤としては、例えば、ポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられ、常温で液状であるものが好ましい。上記組成物の硬化反応が良好になるからである。
【0120】
上記ポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシ基含有ポリエステル等が挙げられる。
【0121】
上記潜在性硬化剤の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部中、0.1質量部以上75質量部以下であることが好ましく、なかでも、5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0122】
A5.その他の重合性成分
本発明の組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分と、必要に応じて上記(D)成分のほかに、上記組成物の硬化物の物性を調整するためにその他の重合性成分を含むことができる。
その他の重合性成分としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0123】
(1)芳香族エポキシ化合物
上記芳香族エポキシ化合物としては、芳香族環を含み、オキセタニル基及び脂環式エポキシ基を含まないエポキシ化合物を表す。上記芳香族環は芳香族性を有する環であれば特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられる。本発明においては、芳香環がベンゼン環であることが好ましい。上記組成物の硬化物が、ガラス転移点が高いものとなるからである。
【0124】
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の一価のフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル化物;少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ化合物;レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノール、ベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル;スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
【0125】
本発明においては、上記芳香族エポキシ化合物は、アルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテルであることが好ましく、なかでも、ビスフェノールA型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型のグリシジルエーテルであることが好ましく、特に、ビスフェノールA型のグリシジルエーテルであることが好ましい。上述の構造にすることで、本発明の組成物の硬化物のガラス転移点が高いものとなるからである。
【0126】
上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、本発明の組成物が耐熱性に優れる硬化物を形成することができ、硬化性に優れるものであればよい。
本発明の組成物において、上記芳香族エポキシ化合物を含む場合、上記芳香族エポキシ化合物の含有量は、上記(A)成分の脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の合計100質量部中、0.1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、5質量部以上75質量部以下であることが好ましく、特に、10質量部以上70質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0127】
(2)脂肪族エポキシ化合物
上記脂肪族エポキシ化合物は、エポキシ基を有し、芳香族環、オキセタニル基及び脂環式エポキシ基を含まないエポキシ化合物を表す。
上記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー;
ジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル等の、多価アルコールのグリシジルエーテル;
プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種、又は、2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、及び脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。
更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、又はこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル及びエポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0128】
本発明において、脂肪族エポキシ化合物は、ジオールのジグリシジルエーテルであることが好ましく、なかでも、分子量80以上200以下のジオールのジグリシジルエーテルが好ましく、特に、分子量90以上150以下のジオールのジグリシジルエーテルが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0129】
上記脂肪族エポキシ化合物の市販品としては、例えば、国際公開2019/177134号、特許第6103653号公報等に記載のものを挙げることができる。
【0130】
上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、本発明の組成物が硬化性に優れガラス転移点の高い硬化物を形成できるのであればよい。
本発明の組成物において、脂肪族エポキシ化合物を含む場合、上記脂肪族エポキシ化合物の含有量は、脂環式エポキシ化合物(A)、芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物の合計100質量部中、0.1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、5質量部以上75質量部以下であることが好ましく、特に、10質量部以上70質量部以下であることが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物の硬化反応が促進しやすくなるからである。
【0131】
A6.溶剤
本発明の組成物は、上記組成物の各成分を分散又は溶解するために最低限度の溶剤を含むことができる。
上記溶剤は、常温(25℃)大気圧下で液状であり、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及びその他の重合性成分と反応しないものであることが好ましい。 従って、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、上記「A1.脂環式エポキシ化合物」の項に記載した脂環式エポキシ化合物、上記「A2.三官能以上オキセタン化合物」の項に記載の三官能以上オキセタン化合物、上記「A3.二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物」の項に記載の二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物、上記「A4.重合開始剤」の項に記載の重合開始剤、上記「A5.その他の重合性成分」に記載の芳香族エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物等は、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、前記溶剤には含まれない。
【0132】
このような溶剤としては、水、有機溶剤のいずれも用いることができるが、有機溶剤を好ましく用いることができる。
【0133】
上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、シクロヘキサノールアセテート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて混合溶剤として使用してもよい。
前記有機溶剤の中でも、ケトン類、アルコール系溶剤、エーテルエステル系溶剤又は芳香族系溶剤等であることが好ましく、ケトン類又は芳香族系溶剤であることがより好ましい。上記組成物は、耐熱性に優れる硬化物を形成することが容易となるからである。
【0134】
上記溶剤の含有量は、上記組成物が、耐熱性に優れる硬化物を形成することができると共に、硬化性に優れるものとなるのであればよく、特に制限されるものではないが、例えば、上記組成物の固形分100質量部中、1,000質量部以下であることが好ましく、なかでも、500質量部以下であることが好ましく、特に、100質量部以下であることが好ましく、なかでも特に、含まないことが好ましい。上述の数値範囲にすることで、上記組成物は、高い耐熱性を持つ硬化物を形成することができ、硬化性に優れるからである。
【0135】
A7.組成物
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記(A)成分と、上記(B)成分と及び上記(C)成分と、必要に応じて上記(D)成分等のその他の成分と、を添加して混合する方法等が挙げられる。なお、混合方法については、公知の混合装置を用いる方法を採用でき、例えば、3本ロール、サンドミル、ボールミル等を用いる方法が挙げられる。
【0136】
上記組成物の用途としては、電気的特性及び接着力のバランスが要求される用途であれば特に限定されるものではないが、例えば、接着剤、プリント配線基板のレジスト材料の他、レジストインキ、カーフィルター用顔料レジストインキ、半導体封止剤、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、フィルムコーティング、ガラスコーティング、飛散防止塗料、家具塗装等の種々のコーティング分野、FRP、ライニング、更にエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層版、プラズマディスプレイパネル、ディスプレイ素子等の表示媒体や、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体、接着剤、絶縁材、構造材、光導波路クラッド等が挙げられる。
【0137】
本発明においては、上記用途が、接着材料、フィルムコーティング、ガラスコーティング、飛散防止塗料、家具塗装等の種々のコーティング材料であることが好ましい。ガラス転移点が高い硬化物と、硬化性に優れる組成物の効果を効果的に発揮することができるからである。
【0138】
B.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上記本発明の組成物の硬化物である。
【0139】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、高いガラス転移点の硬化物を形成することができ、硬化性に優れる組成物を提供することができる。
なお、本発明の組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0140】
本発明の硬化物の用途等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0141】
本発明の硬化物の製造方法としては、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、上述の組成物を硬化する工程が挙げられる。
【0142】
本発明によれば、上述の組成物を用いているため、ガラス転移点の高い硬化物を容易に形成することができる。
【0143】
1.硬化工程
上記硬化工程は、上述の組成物を硬化する工程である。
上記組成物の硬化方法としては、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を重合可能な方法であればよく、上記組成物の塗膜に対して光(エネルギー線)を照射する方法等が挙げられる。上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重合が容易だからである。
【0144】
本工程において、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重合に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2,000オングストローム以上7,000オングストローム以下の波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができる。好ましくは、波長300nm以上450nm以下の光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、発光ダイオード等が用いられる。上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重合が容易だからである。
【0145】
エネルギー線の照射量に特に制限はなく、組成物の組成によって適宜決定することができる。上記照射量は、組成物中の成分の劣化防止の観点から、照射量は365nmにおいて、100mJ/cm以上2,000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0146】
本工程において、上記硬化方法が、エネルギー線を照射する方法及び加熱する方法を併用する方法であることが好ましく、より具体的には、エネルギー線を照射する方法及び加熱する方法をこの順で行うことが好ましい。上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重合を効率的に進めることができるからである。
【0147】
2.その他の工程
上記製造方法は、必要に応じてその他の工程を有するものであっても構わない。
このような工程としては、組成物を硬化する工程の前に、上記組成物を基材に塗布する工程等を挙げることができる。
上記組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
【0148】
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いても構わない。
【0149】
上記製造方法は、組成物を基材に塗布して塗膜を形成後、塗膜を加熱する工程を有していてもよい。本工程における組成物の塗膜を加熱する方法としては、ホットプレート等の熱板や、大気オーブン、イナートガスオーブン、真空オーブン、熱風循環式オーブン等を用いる方法が挙げられる。
【0150】
塗膜を加熱する際の加熱温度としては、特に限定されないが、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重合容易の観点から、70℃以上200℃以下であることが好ましく、なかでも、90℃以上150℃以下であることが好ましい。
塗膜を加熱する際の加熱時間としては、特に限定されないが、生産性向上の点から、1分以上60分以下であることが好ましく、なかでも、1分以上30分以下であることが好ましい。
【0151】
C.その他
本発明においては、以下の態様が挙げられる。
[1] 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物。
(A)成分:脂環式エポキシ化合物
(B)成分:三官能以上オキセタン化合物
(C)成分:二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
【0152】
[2] 前記脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)及び(A-5)で表される化合物から少なくとも1種を含む、[1]に記載の組成物。
【0153】
【化17】
【0154】
式(A-1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0155】
【化18】
【0156】
式(A-2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0157】
【化19】
【0158】
式(A-3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0159】
【化20】
【0160】
式(A-4)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表す。
【0161】
【化21】
【0162】
式(A-5)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基若しくはこれらが複数連結した基を表す。
【0163】
[3] 上記(B)成分が、下記一般式(B1)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の組成物。
【0164】
【化22】
【0165】
式(B1)中、Xは、下記一般式(X)で表されるオキセタニル基を表し、
n1は1以上10以下の数を表す。
【0166】
【化23】
【0167】
式(X)中、*は、Xと隣接する酸素原子との結合位置を表し、
B1は、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、アルキル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0168】
[4] 前記(A)成分の含有量が、前記組成物の固形分100質量部中、0.5質量部以上80質量部以下である、[1]~[3]の何れか一項に記載の組成物。
【0169】
[5] 前記(B)成分の含有量が、前記組成物の固形分100質量部中、10質量部以上75質量部以下である、[1]~[4]の何れか一項に記載の組成物。
【0170】
[6] 前記(C)成分の含有量が、前記組成物の固形分100質量部中、5質量部以上60質量部以下である、[1]~[5]の何れか一項に記載の組成物。
【0171】
[7] [1]~[6]の何れか一項に記載の組成物の硬化物。
【0172】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0173】
以下、本発明の組成物を具体的に示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0174】
〔実施例1~実施例32及び比較例1~比較例7〕
下記表1~表5に従って、各成分を配合して組成物を得た。また、各成分は、以下の材料を用いた。なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0175】
(A)成分 脂環式エポキシ化合物
A1:セロキサイド(登録商標)2021P((株)ダイセル商品、CASNo.2386-87-0,上記式(A-5)で表される化合物、分子量:252.2、エポキシ当量:126.1g/eq.)
A2:エポカリック(登録商標)THI-DE(ENEOS(株)商品、CAS No.2886-89-7、上記式(A-1)で表される化合物、分子量:152.19、エポキシ当量:76.09g/eq.)
【0176】
(B)成分:三官能以上オキセタン化合物
B1:アロンオキセタン(登録商標)OXT-191(東亜合成(株)商品、上記式(B2)中のn2の平均が5である化合物)
【0177】
(C)成分:二官能オキセタン化合物及び/又は単官能オキセタン化合物
C1:アロンオキセタン(登録商標)OXT-211(東亜合成(株)商品、CAS No.3897-65-2、単官能オキセタン化合物)
C2:アロンオキセタン(登録商標)OXT-212(東亜合成(株)商品、CAS No.298695-60-0、単官能オキセタン化合物)
【0178】
(D)成分:重合開始剤
D1-1:下記式(D1a)で表される化合物及び下記式(D1b)で表される化合物を質量比で1:1含む50質量%炭酸プロピレン溶液)
【0179】
【化24】
【0180】
(E)成分:その他の化合物
E1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(芳香族エポキシ化合物)
E2:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(脂肪族エポキシ化合物)
【0181】
得られた各組成物において、即硬化性、深部硬化性、露光時反応率、硬化物Tgを、下記の手順に従って評価した。結果を表1~表5に示す。
【0182】
1.即硬化性
実施例1~実施例32、並びに比較例1~比較例7の組成物を用いて、即硬化性を評価した。
厚み60μmのTACフィルム上に、厚みが1mmとなるように各組成物を塗布して、塗膜を形成し、高圧水銀ランプを用いて、紫外線(365nm)を、100mW、1,400mJ/cmの露光条件で照射することで塗膜を硬化させて硬化物を得た。硬化後、経時で硬化物の表面を触診し、下記の基準で評価した。
なお、即硬化性の評価は、++又は+が好ましく、++が特に好ましい。即硬化性の高い組成物は硬化性に優れるからである。
<評価基準>
++:露光後20秒以内にタックフリーとなった。
+:露光後20秒超60秒以内にタックフリーとなった。
-:露光後60秒経過してもタックフリーにならなかった。
【0183】
2.深部硬化性
孔径3mmのチューブに各組成物を充填し、一方のチューブの端部から、高圧水銀ランプを用いて、紫外線(365nm)を、100mW、1,400mJ/cmの露光条件で照射した。得られた硬化物をチューブから取り出し、露光面から硬化物の先端までの距離を測定し、下記の基準で評価した。
なお、深部硬化性の評価は、++又は+が好ましく、++が特に好ましい。深部硬化性の高い組成物は硬化性に優れるからである。
<評価基準>
++:1mm以上
+:0.5mm以上1mm未満
-:0.5mm未満
【0184】
3.露光時反応率(%)
厚み60μmのTACフィルム上に、厚みが1mmとなるように各組成物を塗布して、塗膜を形成し、光照射装置(DSC7000、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用い、紫外線(365nm)を、1,400mJ/cm照射後、さらに、10,000mJ/cm照射した。1,400mJ/cm照射後の熱量及び10,000mJ/cm照射後の熱量を測定し、下記式により、露光時反応率を算出し、下記の基準で評価した。
露光時反応率=〔1,400mJ/cm照射後の熱量〕/(〔1,400mJ/cm2照射後の熱量〕+〔10,000mJ/cm照射後の熱量〕)×100
なお、露光時反応率の評価は、++又は+が好ましく、++が、特に好ましい。露光時反応率の高い組成物は硬化性に優れるからである。
<評価基準>
++:露光時反応率が90%以上
+:露光時反応率が85%以上90%未満
-:露光時反応率が85%未満
【0185】
4.硬化物Tg(℃)
各組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、硬化物の厚みが1mmとなるようにバーコーター法で塗布して、塗膜を形成し、高圧水銀ランプを用いて、紫外線(365nm)を、100mW、1,400mJ/cmの露光条件で照射することで塗膜を硬化させて硬化物を得た。硬化物を取り出し、(株)日立ハイテクサイエンス製の粘弾性測定装置(DMA7100)を用いて硬化物のガラス転移点(Tg)を測定し、下記の基準で評価した。
なお、硬化物Tgの評価は、++又は+が好ましく、++が、特に好ましい。硬化物Tgの高い組成物は耐熱性に優れるからである。
<評価基準>
++:Tgが200℃以上
+:Tgが150℃以上200℃未満
-:Tgが150℃未満
【0186】
【表1】
【0187】
【表2】
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
上記表1~表5より、本発明の組成物は、即硬化性、深部硬化性及び露光時反応率が全て良好であることから硬化性に優れており、本発明の組成物の硬化物は、高いガラス転移点であることから、耐熱性に優れるものであることが確認できた。