(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181973
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】ラミネート処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20231218BHJP
B65H 5/36 20060101ALI20231218BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20231218BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
B65H5/36
B65H5/06 P
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061817
(22)【出願日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2022095011
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高井直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山恵介
(72)【発明者】
【氏名】加藤裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】下舘一輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田翔太
(72)【発明者】
【氏名】落合恭也
(72)【発明者】
【氏名】西東洋輔
【テーマコード(参考)】
3F049
3F101
3F108
4F211
【Fターム(参考)】
3F049AA04
3F049AA05
3F049DA12
3F049DB13
3F049EA02
3F049EA10
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3F049LB08
3F101FB02
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4F211AA24
4F211AD06
4F211AD08
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4F211AP06
4F211AQ01
4F211AR07
4F211SA08
4F211SC07
4F211SD01
4F211SJ11
4F211SP05
(57)【要約】
【課題】従来よりも構造が簡素であって小型のラミネート処理装置を提供する。
【解決手段】2枚重ねシートSと2枚重ねシートSの間に挿入されたシート状媒体Pをラミネート処理するラミネート処理装置100は、2枚重ねシートSを加熱定着する熱定着部材120と、搬送方向上流から2枚重ねシートSを熱定着部材120に向けて送り込む第1搬送手段144と、第1搬送手段144と熱定着部材120の間で2枚重ねシートSを案内するガイド部材148,149と、を備える。異常停止時に2枚重ねシートSの除去を行う際には、熱定着部材120及び/又は第1搬送手段144を操作することで、2枚重ねシートSが第1搬送手段144と熱定着部材120の間でシート搬送経路外に誘導される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚重ねシートと前記2枚重ねシートの間に挿入されたシート状媒体をラミネート処理するラミネート処理装置であって、
前記2枚重ねシートを加熱定着する熱定着部材と、
搬送方向上流から前記2枚重ねシートを前記熱定着部材に向けて送り込む第1搬送手段と、
前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間で前記2枚重ねシートを案内するガイド部材と、を備え、
異常停止時に前記2枚重ねシートの除去を行う際には、前記熱定着部材及び/又は前記第1搬送手段を操作することで、前記2枚重ねシートが前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間でシート搬送経路外に誘導される、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート処理装置において、
ユーザーが前記熱定着部材及び/又は前記第1搬送手段を手動で回転させるための操作部材をさらに備え、
異常停止時に前記2枚重ねシートを除去する際には、ユーザーが前記操作部材を操作することで、前記2枚重ねシートが前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間でシート搬送経路外に誘導される、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラミネート処理装置において、
前記ガイド部材は、第1ガイド部材とこれに対向して設けられた第2ガイド部材を有し、
前記第1ガイド部材又は前記第2ガイド部材は、前記2枚重ねシートをガイドするガイド位置とシート搬送経路を開放する開放位置の間で移動可能であり、
前記2枚重ねシートのシート搬送経路外への誘導に伴い、前記第1ガイド部材又は第2ガイド部材は、前記2枚重ねシートにより前記ガイド位置から前記開放位置に移動される、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のラミネート処理装置であって、
前記ガイド部材は、第1ガイド部材とこれに対向して設けられた第2ガイド部材を有し、
前記第1搬送手段と前記第1ガイド部材又は前記第2ガイド部材の間に、前記2枚重ねシートをシート搬送経路外に誘導するための隙間が設けられている、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載のラミネート処理装置であって、
前記第1搬送手段が前記操作部材を備え、
前記熱定着部材は離間可能に構成されたローラ対である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項6】
請求項2に記載のラミネート処理装置であって、
前記熱定着部材が前記操作部材を備え、
前記第1搬送手段は離間可能に構成されたローラ対である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載のラミネート処理装置であって、
前記第1搬送手段に備えられた前記操作部材は、前記2枚重ねシートを搬送方向下流側に搬送する方向にのみ操作可能である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載のラミネート処理装置であって、
前記熱定着部材に備えられた前記操作部材は、前記2枚重ねシートを搬送方向上流側に搬送する方向にのみ操作可能である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項9】
前記シート状媒体に画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置と、
請求項1,2,5,6,7,8のいずれか一項に記載のラミネート処理装置と、を備える画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジャム処理装置において、シートなどの搬送物がレジストローラ対と定着ローラ対に挟持された状態でジャムが発生した時に、レジストローラ対を順回転させ、定着ローラを逆回転させて、搬送物を通常の搬送経路から逸らし、搬送物をたわませてジャム紙排紙経路に搬送する技術が知られている。
【0003】
しかし、従来のジャム処理装置では、レジストローラ対と定着ローラ対の間に設けられたガイド板に加えて、ジャムした搬送物を通常の搬送経路外に搬送し、搬送物のたわみをニップし、ジャム紙排紙部へ送るためのガイド板や搬送ローラが必要になる。このため、部品点数が増加して装置の構造が複雑化するとともに装置の小型化が阻害されていた。
【0004】
特許文献1には、レジストローラ対と定着ローラ対の間の領域に途中から搬送経路外に分岐する経路が設けられ、ジャムが発生した時にレジストローラ対を搬送方向に回転させるとともに、定着ローラ対を反搬送方向に回転させて、ジャム紙にたわみを形成しながら排紙経路に案内し、たわみをニップして搬送する排紙用ローラ対を用いてジャム紙排紙部へ搬出するジャム処理装置が開示されている。これにより、レジストローラ対と定着ローラ対の両者に挟持されたジャム紙を自動的に搬送経路から除去することができる。
【0005】
しかし、ジャム紙を取り除くための排紙ガイドや排紙用ローラ対が設けられているため、やはり装置を小型化できず、昨今求められている省スペースの要求に応えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、従来よりも構造が簡素であって小型のラミネート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、2枚重ねシートと前記2枚重ねシートの間に挿入されたシート状媒体をラミネート処理するラミネート処理装置であって、前記2枚重ねシートを加熱定着する熱定着部材と、搬送方向上流から前記2枚重ねシートを前記熱定着部材に向けて送り込む第1搬送手段と、前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間で前記2枚重ねシートを案内するガイド部材と、を備え、異常停止時に前記2枚重ねシートの除去を行う際には、前記熱定着部材及び/又は前記第1搬送手段を操作することで、前記2枚重ねシートが前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間でシート搬送経路外に誘導される、ことを特徴とするラミネート処理装置により解決される。
【発明の効果】
【0008】
従来よりも構造が簡素であって小型のラミネート処理装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るラミネート処理装置の全体構成図である。
【
図2】熱加圧ローラ対120から排紙トレイ104までの部分を示す部分拡大図である。
【
図3】熱加圧ローラ対120から排紙トレイ104までの部分を示す別な部分拡大図である。
【
図4】ラミネート処理装置の排紙動作の実施形態を示すフローチャートである。
【
図5】ラミネート処理装置の排紙動作の別な実施形態を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係るラミネート処理装置を備える画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るラミネート処理装置を備える画像形成システムの一例を示す全体構成図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るラミネート処理装置の要部を示す図である。
【
図9a】ジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図9b】ジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図9c】ジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図9d】ジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図9e】ジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図10】レジストローラ対144と操作ノブ153の位置を示す概略図である。
【
図11a】本発明の別な実施形態に係るラミネート処理装置でのジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図11b】本発明の別な実施形態に係るラミネート処理装置でのジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図11c】本発明の別な実施形態に係るラミネート処理装置でのジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
【
図12】熱加圧ローラ対120を当接・離間させる移動機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るラミネート処理装置の全体構成図である。本実施形態のラミネート処理装置100は、2枚重ねシート(以下、シートSという)を互いに剥離し、その剥離したシートS内にシート状媒体(以下、中紙Pという)を挿入して挟持させるものである。
【0011】
ここで、シートSとは、2枚のシートが重ねられ、その一部(又は一辺)が接合された2枚重ねシートである。2枚重ねシートとしては、例えば、片側を透明ポリエステルシートなどの透過性シートとし、反対側を透明又は不透明シートとして、それらの一辺で接合したものがある。また、2枚重ねシートには、ラミネートフィルムも含まれる。
【0012】
中紙Pは、それら2枚重ねシートに挿入されるシート状媒体の一例である。シート状媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパ、OHPシートなどが含まれる。
【0013】
図1に示すように、ラミネート処理装置100は、シートSを積載する第1積載手段である給紙トレイ102と、給紙トレイ102からシートSを給送するピックアップローラ105と、第1搬送ローラ対107とを備える。また、ラミネート処理装置100の給紙トレイ102には、シートSのサイズを検知する複数のセンサC11が配置されている。
【0014】
中紙挿入が完了したシートSは、第3搬送ローラ対113又はそれ以降に配置されたローラ対等で排紙トレイ104に排出・スタックする。排紙トレイ104は、ラミネート処理装置100の筐体内部に配置されている。これにより、排紙トレイ104に向かうシートSの垂直搬送が容易化される。
【0015】
第1搬送ローラ対107の搬送方向下流には、シートSの搬送位置を検出する搬送センサC1が設けられ、入口ローラ対146の搬送方向下流には、中紙Pの搬送位置を検出する搬送センサC2が設けられている。
【0016】
またラミネート処理装置100は、第1搬送ローラ対107の搬送方向下流に、第2搬送ローラ対108と、回転部材としての巻付けローラ109と、第3搬送ローラ対113と、第1搬送手段としてのレジストローラ対144と、第4搬送ローラ対145と、排出ローラ対121と、排紙トレイ104などを備える。巻付けローラ109と第3搬送ローラ対113の間に、シートSの幅方向に移動可能に設けられた剥離爪116を備える。剥離爪116はシートSを剥離する剥離手段の一例である。
【0017】
第2搬送ローラ対108の搬送方向下流には、シートS及び中紙Pの搬送位置を検出する搬送センサC3が設けられ、巻付けローラ109の搬送方向下流には、シートSの状態を検出する異常状態検出センサC4が設けられている。そして、第3搬送ローラ対113の搬送方向下流には、シートSの搬送位置を検出する搬送センサC5が設けられている。
【0018】
なお、ピックアップローラ105、第1搬送ローラ対107、第2搬送ローラ対108、及び巻付けローラ109は、第1給送手段の一例である。
【0019】
図1において、第2搬送ローラ対108及び第3搬送ローラ対113は、それぞれ、例えば対となった2つのローラであり、駆動手段(モータなど)により回転駆動される。第2搬送ローラ対108は一方向に回転駆動され、第3搬送ローラ対113は正逆方向に回転駆動されることで、シートS及び中紙Pを挟持して搬送する。
【0020】
第2搬送ローラ対108は、シートS及び中紙Pを第3搬送ローラ対113に向けて鉛直下方に搬送する。
【0021】
一方、第3搬送ローラ対113は、その回転を正逆の両方向に切り替え可能である。第3搬送ローラ対113は、挟持したシートSを排紙トレイ104に向けて鉛直下方に搬送できるとともに、その逆方向(引き戻す方向)となる巻付けローラ109に向けてシートSを鉛直上方に搬送することもできる。
【0022】
また、ラミネート処理装置100は、これら第2搬送ローラ対108と第3搬送ローラ対113との間に、回転部材である巻付けローラ109と、剥離爪116とを備える。巻付けローラ109は、駆動手段(モータなど)により正逆方向に回転駆動され、その回転を両方向(時計回り/反時計回り)に切り替え可能である。
【0023】
巻付けローラ109は、ローラ部材111と、ローラ部材111に設けられ、シートSを把持する可動の把持手段110とを有する。可動の把持手段110は、ローラ部材111とともにシートSの先端を把持することを特徴とする。この把持手段110は、ローラ部材111の外周に一体に成形してもよいし、別部品として構成してもよい。
【0024】
続いて、
図1を用いて、ラミネート処理装置100の一連の動作、すなわちシートSの剥離から中紙Pの挿入までの動作を説明する。
【0025】
図1において、給紙トレイ102上のシートSは、2枚のシートの接合された一部が、ピックアップローラ105の給送方向(搬送方向)の下流側に位置するように積載される。そして、ラミネート処理装置100は、給紙トレイ102上のシートSをピックアップローラ105にてピックし、第1搬送ローラ対107に向けて搬送する。
【0026】
次いで、第1搬送ローラ対107の搬送方向下流に配置された第2搬送ローラ対108により、シートSを巻付けローラ109に向けて搬送する。ここでラミネート処理装置100は、シートSの4辺中の一辺である端部が接合された側を鉛直方向(鉛直下方)の下流側として搬送する。
【0027】
続いて、ラミネート処理装置100は、鉛直方向(鉛直下方)におけるシートSの後端部が巻付けローラ109を通過した時点で、その搬送を一時停止する。
【0028】
次に、ラミネート処理装置100は、把持手段110を開口するとともに、第3搬送ローラ対113の回転方向を反転し、把持手段110の開口部に向けて、シートSを鉛直上方に搬送する。
【0029】
続いて、ラミネート処理装置100は、シートSの端部を開口した把持手段110に挿入した時点で搬送を停止し、把持手段110を閉じてシートSの端部を把持する。なお、これら動作は、シートSを指定量搬送することで実施される。
【0030】
次いで、ラミネート処理装置100は巻付けローラ109を時計回りに回転し、シートSを巻付けローラ109に巻き付ける。ここでシートSは、2枚のシートの接合されていない側から巻付けローラ109に巻き付けられる。
【0031】
シートSを巻付けローラ109に巻き付けると、2枚重ねシートの巻き付け周長差(2枚重ねシートを構成する2枚のシートそれぞれの巻き付け量の差)によって、2枚重ねシートを構成する2枚のシートのうち内周側のシートが余り、シートSの接合した端に向けて弛みが生じる。その結果、2枚のシート間に空間が生じる。この生じた空間に剥離爪116をシートSの両側から挿入することで、2枚のシート間の空間を確実に維持することができる。なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0032】
ラミネート処理装置100は、シートSに生じた空間に剥離爪116を挿入した状態で、巻付けローラ109を反時計回りに回転し、シートSの剥離した空間を鉛直方向(
図1における鉛直下方)におけるシートSの後端部まで移動させる。そして、指定量移動した時点で把持手段110を開放し、シートSの後端を上下に分離した状態とする。
【0033】
この状態で、ラミネート処理装置100はシートSの搬送を一時停止し、今度は剥離爪116をシート幅方向へ更に移動することで、シートSの後端の全域を剥離する。なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0034】
次いで、ラミネート処理装置100は今度は第3搬送ローラ対113を逆回転させ、シートSを逆搬送方向(
図1における鉛直上方)に搬送する。シート先端が搬送センサC5を抜けたタイミングで、分岐爪118を切り替えることが可能となる。非定着経路にシートSを搬送する場合、分岐爪118は図示の位置のままとなるが、定着経路128にシートSを搬送する場合は、分岐爪118は定着経路側に切り替えられる。
【0035】
シートSの剥離された2枚のシートは、剥離爪116によりそれぞれ左右方向に案内され、2枚のシート全体が互いに剥離される。そして、ラミネート処理装置100はシートSの搬送を一時停止し、シートSの接合部を第3搬送ローラ対113にて把持(ニップ)した状態とする。したがって、シートSは接合された一辺を端として、大きく開口することになる。
【0036】
なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0037】
次いで、ラミネート処理装置100は、第2搬送ローラ対108を回転し、画像形成装置側から搬送された中紙Pを第3搬送ローラ対113に向けて鉛直下方に搬送する。画像形成装置については
図6を用いて後述する。
【0038】
続いて、ラミネート処理装置100は、第3搬送ローラ対113を回転してシートSと中紙Pを合流させ、開口したシートS内に中紙Pを挿入する。
以上が、シートSの剥離から中紙Pの挿入までの動作である。なお、開口したシートSの様子は
図7に示されている。
【0039】
次いで、ラミネート処理装置100は、第3搬送ローラ対113により、中紙Pが挿入されたシートSを鉛直下方に搬送することで、シートSの2枚のシートを再度重ね、開口を閉じる。そして、中紙Pが挟み込まれたシートSを、第3搬送ローラ対113又はそれ以降に配置されたローラ対等により、熱定着部材としての熱加圧ローラ対120を有する定着部へ搬送する。
【0040】
熱加圧ローラ対120の通過時にシートSが熱加圧され、定着される。シートSは熱加圧ローラ対120の通過後に排紙トレイ104に向かって鉛直下方に搬送され続け、排紙トレイ104に積載される。このように熱加圧ローラ対120の通過後に圧着されたシートSが鉛直下方に排出されるため、熱を帯びたシートSが外力によって湾曲することを抑制しつつシートSを排紙トレイ104に積載することができる。
【0041】
より詳細には、本発明の実施形態に係る垂直搬送によれば、シートSが鉛直下向きに排出されるため、シートSにかかる重力は熱加圧ローラ対120の定着ニップの接線と平行になり、シートSを変形させ得る外力がシートSにかからない。よって、シートSが垂直に排出し続ける限り、シートSの変形は抑制される。また、排紙トレイ104は、シートSの後端が熱加圧ローラ対120及び排出ローラ対121を抜けた後に配置されており、排紙トレイ104に到達するまでにシートSは冷却されるため、排紙トレイ104の積載面の傾斜はシートSが変形し得る外力をシートSに与えない。
【0042】
また、シートSが鉛直下方に搬送されることでシートSの先端が熱加圧ローラ対120に到達し、シートSの後端が熱加圧ローラ対120を抜け切るまで、シートSを鉛直下方に搬送し続ける。これにより、シートSの垂直搬送が確保され、熱加圧後のシートSが外力によって湾曲することを抑制することができる。
【0043】
このラミネート処理装置100は、シートSの給紙、剥離、中紙Pの挿入、及び熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作を1台で実施できる構成である。この一連の動作を、人手を要さずに自動で実施でき、従来技術よりも利便性を向上できる。ラミネート処理装置100が熱加圧ローラ対120を有する定着部を備えており、ラミネート処理を実施できるため、ラミネート処理装置100は狭義にはラミネート処理装置であると言ってもよい。よって、以下では、適宜、ラミネート処理装置100と記載する。
【0044】
図2は、熱加圧ローラ対120から排紙トレイ104までの部分を示す部分拡大図である。
この例では、排紙トレイ104には複数枚のシート(ラミネート処理されたシートSG)が積載されている。そして図示のように、熱加圧ローラ対120の定着ニップから搬送経路延長線上の排紙トレイ104の積載面又は排紙トレイ104に積載されたシートSGの最上面までの距離LがシートSの搬送方向長さよりも長いように構成されている。これにより、シートSの後端が熱加圧ローラ対120を抜け切るまで、シートSの先端が排紙トレイ104の積載面又は積載されたシートSGに触れないため、熱を帯びたシートSの外力による湾曲を防ぐことができる。
【0045】
排紙トレイ104は、例えばシートSを50mmの厚さまで積載することができる。シートSGの満杯を検知するために、積載されたシートSGの最上面を検知する光学センサ160(例えば、レーザー変位計)が排紙トレイ104に配置されている。この場合、少なくともシートSGの50mmの厚さまで、距離LはシートSの搬送方向長さよりも長い。
【0046】
図3は、熱加圧ローラ対120から排紙トレイ104までの部分を示す別な部分拡大図である。
この例では、排紙トレイ104には
図2に示す例よりも多いシート(ラミネート処理されたシートSG)が積載されている。図示のように、排出ローラ対121から排出された排紙中のシートSの先端が、排紙トレイ104内の定着後のシートSGの最上面に接触した場合、シートSは湾曲する。
【0047】
ここで、排紙中のシートSの先端とシートSGの最上面との接触点と、排出ローラ対121のニップを通る鉛直線との距離Dが30mm以下であるように、ラミネート処理装置100は構成される。例えば、距離Dが30mmとなる位置に有る、積載されたシートSまでの距離を検知する光学センサ160(例えば、レーザー変位計)を排紙トレイ104に設置することで、距離Dが30mm以下かどうかを判断することができる。
【0048】
距離Dを30mm以下にすることで、排紙中のシートSの先端がシートSGの最上面に接触したとしても、シートSの湾曲を小さく抑えることができるとともに、スタック性能が向上する。また光学センサ160が、距離Dが30mmを超えたことを検知した場合は、排紙トレイ104が満杯になったと判断し、ラミネート処理装置100は、シートSの定着及び搬送を停止する。このようにして距離Dが30mmより大きくなることを防止することで、排紙中のシートSの先端がシートSGの最上面に接触した際に、シートSが大きく湾曲することを防止できる。ただし、30mmという数値は一例にすぎず、ラミネート処理装置の仕様に依存して使用されるシートSや中紙Pの厚みにより予め評価して決定される数値である。
【0049】
また、
図1乃至
図3に示すように、熱加圧ローラ対120の下流に、排紙トレイ104に向かってシートSを排出する排出ローラ対121が配置されている。排出ローラ対121で排出することによって、熱加圧後のシートSの皺の形成を抑制することができる。排出ローラ対121によりシートSを鉛直方向に排紙することで、熱加圧後のシートSの湾曲を抑制することができる。
【0050】
図4は、ラミネート処理装置の排紙動作の実施形態を示すフローチャートである。
熱加圧ローラ対120を有する定着部での熱加圧動作の開始後、ラミネート処理装置100は、ステップS1にてシートSの後端が熱加圧ローラ対120を抜け切ったかどうか判断する。このために、ラミネート処理装置100はシートSを検出する検出手段を有し、検出手段は、例えば熱加圧ローラ対120の搬送方向下流に配置されたセンサC12(
図3)である。
【0051】
シートSの後端が熱加圧ローラ対120を抜け切ったら(S1,Yes)、ラミネート処理装置100は、シートSの排紙動作を停止し(S2)、排出ローラ対121によってシートSを保持する。次いで、ステップS3において、センサC11により検知されたシートSのサイズに応じて、ラミネート処理装置100に備えられた計時手段が待ち時間Tを設定し、ステップS4において待ち時間Tが経過したかどうか判断する。次いで、待ち時間Tが経過したら(S4,Yes)、ラミネート処理装置100は、ステップS5においてシートSの排紙動作を再開し、排紙する。
【0052】
以上のように、排出ローラ対121を停止させ、排出ローラ対121によってシートSを保持し、待ち時間T(所要時間)が経過するのを待ってから排紙動作を再開する。これにより、熱加圧されたシートSの温度が低下するのを待ってから排紙するので、シートSの湾曲を抑制することができる。
【0053】
図5は、ラミネート処理装置の排紙動作の別な実施形態を示すフローチャートである。
熱加圧ローラ対120を有する定着部での熱加圧動作の開始後、ラミネート処理装置100は、ステップS11にてシートSの後端が熱加圧ローラ対120を抜け切ったかどうか判断する。このために、ラミネート処理装置100はシートSを検出する検出手段を有し、検出手段は、例えば熱加圧ローラ対120の搬送方向下流に配置されたセンサC12(
図3)である。
【0054】
シートSの後端が熱加圧ローラ対120を抜け切ったら(S11,Yes)、ラミネート処理装置100は、ステップS12において排出ローラ対121の回転速度を増加させて、シートSの搬送速度を増加させる。これにより、熱加圧されたシートSの先端が排紙トレイ104の積載面又は積載されたシートSGの最上面に接触する時間が短くなるため、シートSの湾曲を抑制することができる。
【0055】
図6は、本発明の実施形態に係るラミネート処理装置と、画像形成装置を備えた画像形成システムの一例を示す全体構成図である。この画像形成システム500は、中紙Pなどに画像形成を行う画像形成装置300と、ラミネート処理装置部として外部にラミネート処理装置100とを備える。ラミネート処理装置100は、シートSを積載する給紙トレイ102を備えるとともに、中紙Pを画像形成装置300から中継装置310を介してラミネート処理装置100に搬送可能に構成されている。したがって、画像形成装置300(例えば、プリンタ、コピー機など)により、画像が形成されたシートSの中に挿入する中紙Pをインラインで挿入できる。そのため、画像形成システム500は、シートSの給紙から剥離、中紙挿入、熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作を、人手を要さずに実施可能である。
【0056】
画像形成装置300の外装部には、画像形成装置300における情報表示や、操作入力の受付を行う表示操作手段である操作パネル10が設置されている。また、この操作パネル10は、ユーザーに知覚信号を発する報知手段としての役割を兼ねる。なお、代替として、操作パネル10以外の報知手段を、画像形成装置300に別途設ける構成としてもよい。
【0057】
図7は、本発明の実施形態に係るラミネート処理装置と、画像形成装置を備えた画像形成システムの他の一例を示す全体構成図である。画像形成システム500は、画像形成装置300、中継装置310、ラミネート処理装置100及び後処理装置400を有する。画像形成システム500は、中継装置310を介して画像形成装置300で画像が形成された中紙Pを、ラミネート処理装置100へ搬送可能に構成されており、ラミネート処理装置100の下流にさらにラミネート処理装置100とは別の後処理装置400が設置されている。このように、ラミネート処理装置100の下流にさらにラミネート処理装置100とは別の後処理装置400を設置することで、ラミネート処理しない印刷ジョブの場合であって、かつ他の後処理(例えば綴じ処理や折り処理)が必要な印刷ジョブの場合には、画像形成装置300から搬送されたシート(中紙)を、ラミネート処理装置100を単に通過させて、後処理装置400へ搬送し、シート(中紙)に対して後処理装置400による後処理を実行することが可能になる。よって、ユーザーのニーズに合わせて効率を落とすことなく画像形成システム500を使用することが可能となる。
【0058】
以下に、本発明の特徴部を記載する。
図8は、本発明の実施形態に係るラミネート処理装置の要部を示す図である。
ラミネート処理装置100は、シートSとシートSの間に挿入されたシート状媒体Pをラミネート処理する。ラミネート処理装置100は、搬送方向上流からシートSを熱加圧ローラ対120に向けて送り込む第1搬送手段としてのレジストローラ対144と、レジストローラ対出口ガイド151と、シートSを加熱定着する熱定着部材としての熱加圧ローラ対120と、レジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシートSを案内する第1ガイド部材148及びこれに対向して設けられた第2ガイド部材149と、を備える。また、ラミネート処理装置100は、ユーザーがレジストローラ対144を手動で回転させるための操作部材としての操作ノブ153をさらに備える。搬送ジャムなどの異常停止時にシートSを除去する際には、ユーザーが操作ノブ153を回してレジストローラ対144を回転させることでジャムしたシートSにたわみを作り、シートSをレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシート搬送経路外に誘導して、シートSを取り除くことができる。したがって、シートSを取り除くためのガイド板や搬送ローラ対を追加的に備える必要が無いため、構造が簡素であって小型のラミネート処理装置100が得られる。ジャム処理のための操作ノブ153を備えることで、ユーザーは、操作ノブ153を回すことができ、簡易にシートSの除去作業を行うことができる。
【0059】
また、
図8において、第2ガイド部材149は、付勢部材としてのねじりばね157によって第1ガイド部材148に向かって付勢されており、シートSをガイドするガイド位置にある。また、第2ガイド部材が後述する開放位置の状態になったことを検知するガイド検知センサ149aが設けられている。ガイド検知センサは、例えば反射型や透過型の光学センサが考えられるが、特にこれに限定されるものではなく接触型の変位センサであってもよい。
【0060】
図9は、ジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
図9(a)は、ジャム発生時、すなわちシートSがレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120に挟持された状態でジャムした様子を示している。このようなジャムが発生すると、ラミネート処理装置100はアラーム音や操作パネル10における警告表示によってユーザーにジャムの発生を通知し、ジャム処理を促す。次に、
図9(b)では、ユーザーが操作ノブ153を図中矢印方向に回すことで、レジストローラ対144に挟持されたシートSが熱加圧ローラ対120に向かって押し出され、シートSはたわみ始める。すると、シートSの剛性によって第2ガイド部材149も回動支点155を中心に回動し、第1ガイド部材148と第2ガイド部材149の間の空間が広がり始める。
【0061】
次に、
図9(c)では、ユーザーが操作ノブ153を回し続けることにより、シートSがさらに大きくたわみ、それに伴い第2ガイド部材149が完全に開いた状態、つまり第2ガイド部材149は、シート搬送経路を開放する開放位置の状態になる。このように、第2ガイド部材149は、ガイド位置と開放位置の間で移動可能であり、シートSのシート搬送経路外への誘導に伴い、第2ガイド部材149は、シートSによりガイド位置から開放位置に移動される。そして、ガイド検知センサ149aにより第2ガイド部材149が開放位置にあることが検知されると、制御部90は、ガイド検知センサ149aの検知結果に基づいて、後述するカム駆動モータ175を駆動し、可動ブラケット駆動カム173を回転させる。そうすると、第二熱加圧ローラ120bを回転可能に支持する可動ブラケット171が、付勢バネ174の付勢力に抗して可動ブラケット回転支点171aを中心として時計回りに回動する。それにより、
図9(d)に示すように、熱加圧ローラ対120が離間(又は脱圧)され、熱加圧ローラ対120に挟持されていたシートSが解放される。最後に、
図9(e)に示すように、ユーザーが装置右側にシートSを引き出して、取り出すことで、ジャム処理が完了する。以上説明したように、シートSを撓ませることにより、シートS自体の剛性を利用してガイド部材を押し広げてシート搬送経路外に誘導することで、簡易な構成によって搬送路においてジャムしたシートSの除去作業を容易に行うことができる。
【0062】
以上、本実施形態のラミネート処理装置100では、
図9(a)~(e)に示したように、シートSを除去する際には、ユーザーが操作ノブ153を操作してレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシートにたわみを形成し、シートS自身の剛性によってねじりばね157により付勢された第2ガイド部材149を押し広げる。本実施形態では、第2ガイド部材149を押し広げる構成を説明したが、これに代えて、第2ガイド部材149を固定しておき、第1ガイド部材148をねじりばね157により第2ガイド部材149に向かって付勢するとともに回動支点周りに回動可能に構成することもできる。
なお、熱加圧ローラ対120又はレジストローラ対144を当接・離間させる移動機構については、後述する
図12において説明する。
【0063】
図10は、レジストローラ対144と操作ノブ153の位置を示す概略図である。
図10(a)に示す実施形態は、
図8及び
図9の実施形態における操作ノブ153の構成を示している。第2ガイド部材149の付勢力は
図8及び
図9に示したねじりばね157により生成される。通紙可能な最も薄いシートSのたわみの剛性によってもこの付勢力に抗して第2ガイド部材149を押し広げられ、且つ、通紙可能な最も厚いシートSを2つの熱加圧ローラ対120の挟持部である定着ニップへ案内できるように、付勢力は約1N~4Nで設定されている。
【0064】
図10(a)に示す実施形態では、操作ノブ153は駆動されるレジストローラ対144の第二レジストローラ144bの軸144c上に設置されている。また、熱加圧ローラ対120は離間可能に構成されたローラ対である。一方で、
図10(b)に示す実施形態では、駆動伝達ギヤ159aが、駆動される第二レジストローラ144bの軸144c上に設置され、これと噛み合う駆動伝達ギヤ159bが操作ノブ153の軸153a上に固定されている。これにより、ユーザーが操作ノブ153を回転させると、その駆動力が駆動伝達ギヤ159a及び駆動伝達ギヤ159bを介して第二レジストローラ144bの軸144cに伝達され、第二レジストローラ144bが回転する。このように、操作ノブ153は、駆動伝達ギヤ159a,159bを介して間接的に第二レジストローラ144bを回転させるように構成することもできる。
【0065】
なお
図10では、レジストローラ対144を駆動するための操作ノブ153について説明したが、同様に構成された操作ノブ153がレジストローラ対144に代えて熱加圧ローラ対120に設けられてもよい。このとき、レジストローラ対144は離間可能に構成されたローラ対である。この場合、ユーザーは、シートSが搬送方向とは逆方向に送られてたわみが形成されるように、操作ノブ153を回転させる。
さらに、同様に構成された操作ノブ153がレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の両方に設けられてもよい。
【0066】
さらには、ユーザーが操作ノブ153を回した際に、レジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシートSのたわみを確実に作るために、操作ノブ153からローラ対の一方のローラの軸までの間にワンウェイクラッチを設けてもよい。シートSが搬送方向又はその逆方向に送られてたわみが形成されるように操作ノブ153を回さなければ、ワンウェイクラッチによって操作ノブ153は空回りするように構成することもできる。
【0067】
すなわち、操作ノブ153がレジストローラ対144に備えられる場合、操作ノブ153は、シートSを搬送方向下流側に搬送する方向にのみ操作可能である。
一方で、操作ノブ153が熱加圧ローラ対120に備えられる場合、操作ノブ153は、シートSを搬送方向上流側に搬送する方向にのみ操作可能である。従って、熱加圧ローラ対120に備えられた操作ノブ153は、シートSを搬送方向下流側に搬送する方向には回せないので、シートSが熱加圧ローラ対120へ巻付きくことを防止することができる。
【0068】
図11は、本発明の別な実施形態に係るラミネート処理装置でのジャム発生からジャム処理完了までのフローを示す概略図である。
本実施形態に係るラミネート処理装置100は、
図8に示すラミネート処理装置100と同様の構成を有するが、シートSのたわみをガイド部材の隙間Gに誘導して、シート搬送経路の外側に出し、シートSを除去するものである。
図11(a)は、ジャム発生時、すなわちシートSがレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でジャムした様子を示している。レジストローラ対144と第2ガイド部材149の間、特にレジストローラ対出口ガイド151と第2ガイド部材149の間には、シートSをシート搬送経路外に誘導するための隙間Gが形成されている。これに代えて、レジストローラ対144と第1ガイド部材148の間、特にレジストローラ対出口ガイド151と第1ガイド部材148の間に隙間Gが形成され、シートSを隙間Gに誘導して、シート搬送経路の外側に出し、除去することも可能である。
【0069】
次に、
図11(b)では、ユーザーが操作ノブ153を図中矢印方向に回すことで、レジストローラ対144に挟持されたシートSが熱加圧ローラ対120に向かって押し出され、シートSはたわみ始め、シートSのたわみが隙間Gに向かって延びている。
最後に、
図11(c)では、シートSのたわみが隙間Gからシート搬送経路の外側に出てきており、ユーザーが装置右側にシートSを引き出して、取り出すことで、ジャム処理が完了する。
【0070】
本実施形態では、隙間Gは7~9mmに設定されている。また、シートSがシート搬送経路の外側に出る過程としては、操作ノブ153を回すことで
図11(a)⇒
図11(b)⇒
図11(c)の状態に移行する場合もあるし、
図9(a)⇒
図9(b)⇒
図9(c)の状態を経て、
図11(c)の状態に移行することもある。
【0071】
図11に示す実施形態では、操作ノブ153は駆動されるレジストローラ対144の軸144a上に設置されているが(
図10(a)参照)、本実施形態においても、同様に構成された操作ノブ153がレジストローラ対144に代えて熱加圧ローラ対120に設けられてもよい。この場合、ユーザーは、シートSが搬送方向とは逆方向に送られてたわみが形成されるように、操作ノブ153を回転させる。さらに、同様に構成された操作ノブ153がレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の両方に設けられてもよい。また、ユーザーが操作ノブ153を回した際に、レジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシートSのたわみを確実に作るために、操作ノブ153からローラ対の軸までの間にワンウェイクラッチを設けてもよい。すなわち、この場合、シートSが搬送方向又はその逆方向に送られてたわみが形成されるように操作ノブ153を回さなければ、ワンウェイクラッチによって操作ノブ153は空回りする。
【0072】
図12は、熱加圧ローラ対120を当接・離間させる移動機構を示す。
図12(a)は、熱加圧ローラ対120の当接状態を示し、
図12(b)は、熱加圧ローラ対120の離間状態を示す。
熱加圧ローラ対120を当接・離間させる移動機構170は、可動ブラケット171と、可動ブラケット駆動カム173、及び付勢部材としての付勢バネ174を有する。熱加圧ローラ対120の一方の第一熱加圧ローラ120a(図中左側)は固定されており、熱加圧ローラ対120の他方の第二熱加圧ローラ120b(図中右側)は、可動ブラケット171の一端で軸120cにより回転可能に支持されている。可動ブラケット171は、屈曲した形状を有し、その一端には熱加圧ローラ対120の第二熱加圧ローラ120bの軸120cが固定されている。また、可動ブラケット171は、可動ブラケット回転支点171aを中心に回動可能に設けられている。また、可動ブラケット171は、付勢バネ174により、
図12(a)に示すように熱加圧ローラ対120を構成する第一熱加圧ローラ120aと第二熱加圧ローラ120bが当接した状態になるように、可動ブラケット回転支点171aを中心として反時計回りに回動する方向に付勢されている。可動ブラケット駆動カム173は、カム駆動モータ175により回転可能に構成されている。そして、可動ブラケット駆動カム173が、
図12(b)に示す位置に回転したとき、可動ブラケット駆動カム173により力を加えられた可動ブラケット171が付勢バネ174の付勢力に抗して、可動ブラケット回転支点171aを中心として時計回りに回動する。これにより、可動側の第二熱加圧ローラ120bは、固定側の第一熱加圧ローラ120aから離れて、熱加圧ローラ対120が離間状態となる。これにより、大きな面圧で接触している熱加圧ローラ対120を離間させることで、シートSの引き抜き力を低減することができる。
【0073】
図12(a)、
図12(b)では、熱加圧ローラ対120に設けられた移動機構170を説明したが、同様の構成を有する移動機構170をレジストローラ対144に設けてもよい。これにより、大きな面圧で接触しているレジストローラ対144を離間させることで、シートSの引き抜き力を低減することができる。
また、熱加圧ローラ対120やレジストローラ対144が離間するのではなく、一方のローラが脱圧されるだけでもよく、脱圧によってシートSの引き抜き力を低減することもできる。
【0074】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るラミネート処理するラミネート処理装置100は、搬送方向上流からシートSを熱加圧ローラ対120に向けて送り込むレジストローラ対144と、シートSを加熱定着する熱加圧ローラ対120と、レジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシートSを案内するガイド部材と、を有する。そして、搬送ジャムなどの異常停止時にシートSの除去を行う際には、ユーザーが熱加圧ローラ対120及び/又はレジストローラ対144を回転させることで、ジャムしたシートSにたわみを作ることができ、シートSをレジストローラ対144と熱加圧ローラ対120の間でシート搬送経路外に誘導して、ユーザーがジャムしたシートを取り除く作業を効率化することができる。
【0075】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(態様1)
2枚重ねシートと前記2枚重ねシートの間に挿入されたシート状媒体をラミネート処理するラミネート処理装置であって、
前記2枚重ねシートを加熱定着する熱定着部材と、
搬送方向上流から前記2枚重ねシートを前記熱定着部材に向けて送り込む第1搬送手段と、
前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間で前記2枚重ねシートを案内するガイド部材と、を備え、
異常停止時に前記2枚重ねシートの除去を行う際には、前記熱定着部材及び/又は前記第1搬送手段を操作することで、前記2枚重ねシートが前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間でシート搬送経路外に誘導される、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様2)
態様1に記載のラミネート処理装置において、
ユーザーが前記熱定着部材及び/又は前記第1搬送手段を手動で回転させるための操作部材をさらに備え、
異常停止時に前記2枚重ねシートを除去する際には、ユーザーが前記操作部材を操作することで、前記2枚重ねシートが前記第1搬送手段と前記熱定着部材の間でシート搬送経路外に誘導される、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様3)
態様1又は2に記載のラミネート処理装置において、
前記ガイド部材は、第1ガイド部材とこれに対向して設けられた第2ガイド部材を有し、
前記第1ガイド部材又は前記第2ガイド部材は、前記2枚重ねシートをガイドするガイド位置とシート搬送経路を開放する開放位置の間で移動可能であり、
前記2枚重ねシートのシート搬送経路外への誘導に伴い、前記第1ガイド部材又は第2ガイド部材は、前記2枚重ねシートにより前記ガイド位置から前記開放位置に移動される、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様4)
態様1~3のいずれか一つに記載のラミネート処理装置であって、
前記ガイド部材は、第1ガイド部材とこれに対向して設けられた第2ガイド部材を有し、
前記第1搬送手段と前記第1ガイド部材又は前記第2ガイド部材の間に、前記2枚重ねシートをシート搬送経路外に誘導するための隙間が設けられている、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様5)
態様2に記載のラミネート処理装置であって、
前記第1搬送手段が前記操作部材を備え、
前記熱定着部材は離間可能に構成されたローラ対である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様6)
態様2に記載のラミネート処理装置であって、
前記熱定着部材が前記操作部材を備え、
前記第1搬送手段は離間可能に構成されたローラ対である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様7)
態様5に記載のラミネート処理装置であって、
前記第1搬送手段に備えられた前記操作部材は、前記2枚重ねシートを搬送方向下流側に搬送する方向にのみ操作可能である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様8)
態様6に記載のラミネート処理装置であって、
前記熱定着部材に備えられた前記操作部材は、前記2枚重ねシートを搬送方向上流側に搬送する方向にのみ操作可能である、ことを特徴とするラミネート処理装置。
(態様9)
前記シート状媒体に画像を形成する画像形成部を有する画像形成装置と、
態様1~8のいずれか一つに記載のラミネート処理装置と、を備える画像形成システム。
【符号の説明】
【0076】
100 ラミネート処理装置
120 熱加圧ローラ対(熱定着部材)
144 レジストローラ対(第1搬送手段)
148 第1ガイド部材(ガイド部材)
149 第2ガイド部材(ガイド部材)
P 中紙(シート状媒体)
S シート(2枚重ねシート)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】