(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182165
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】音響信号出力装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20231219BHJP
H04R 1/32 20060101ALI20231219BHJP
G10K 11/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H04R1/10 104B
H04R1/32 310Z
G10K11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095621
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522237542
【氏名又は名称】NTTソノリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】加古 達也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大将
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広明
(72)【発明者】
【氏名】小林 和則
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018AF16
(57)【要約】
【課題】周囲への音漏れを抑制可能な外耳道を密閉しない音響信号出力装置を提供する。
【解決手段】音響信号を外部に放出する単数または複数の音孔121aが設けられ、音孔121aの開口端を取り囲む外面領域130の少なくとも一部が凸形状である構造部を有する音響信号出力装置10が提供される。この外面領域130は、領域131と領域131よりも突出した領域132とを含み、音孔121aから放出された音響信号を領域131側に誘導する形状に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音響信号を外部に放出する単数または複数の第1音孔が設けられ、前記第1音孔の開口端を取り囲む外面領域の少なくとも一部が凸形状である構造部を有し、
前記外面領域は、第1領域と前記第1領域よりも突出した第2領域とを含み、前記第1音孔から放出された前記第1音響信号を前記第1領域側に誘導する形状に構成されている、音響信号出力装置。
【請求項2】
請求項1の音響信号出力装置であって、
前記第1音孔の開口端は、前記第2領域で取り囲まれた空間に面しており、
前記第2領域で取り囲まれた空間の前記第1領域側は、前記第2領域で取り囲まれた空間の外周外方に開放されている、音響信号出力装置。
【請求項3】
請求項1の音響信号出力装置であって、
前記構造部が身体に取り付けられた際に、
前記第2領域が前記身体のいずれかの部分に接触して支持され、
前記第1音孔の開口端および前記第1領域の少なくとも一部が前記身体に接触することなく、
前記第1領域が外耳道側に配置される、
ように構成されている、音響信号出力装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの音響信号出力装置であって、
前記構造部には、第2音響信号を外部に放出する単数または複数の第2音孔がさらに設けられており、
前記第2音孔の開口端は、前記第2領域で取り囲まれた空間の外側の空間に面しており、
前記第1音孔から前記第1音響信号が放出され、前記第2音孔から前記第2音響信号が放出された場合における、前記第1音響信号が到達する予め定めた第1地点を基準とした前記第1地点よりも前記音響信号出力装置から遠い第2地点での前記第1音響信号の減衰率が、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰率よりも小さい予め定めた値
以下となるように設計されている、または、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での前記第1音響信号の減衰量が、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰量よりも大きい予め定めた値
以上となるように設計されている、音響信号出力装置。
【請求項5】
第1音響信号を外部に放出する単数または複数の第1音孔が設けられ、前記第1音孔の開口端を取り囲む外面領域を含む構造部を有し、
前記構造部が身体に取り付けられた際に、
前記外面領域の一部が前記身体のいずれかの部分に接触して支持され、
前記第1音孔の開口端の少なくとも一部が前記身体に接触することなく、
前記第1音孔から放出された前記第1音響信号を外耳道側に誘導する形状に構成されている、
音響信号出力装置。
【請求項6】
請求項5の音響信号出力装置であって、
前記構造部が身体に取り付けられた際に、
前記構造部から前記外耳道側に放出される前記第1音響信号の音圧レベルが、前記構造部から前記外耳道側以外に放出される前記第1音響信号の音圧レベルよりも高くなるように設計されている、音響信号出力装置。
【請求項7】
請求項5または6の音響信号出力装置であって、
前記構造部には、第2音響信号を外部に放出する単数または複数の第2音孔がさらに設けられており、
前記第1音孔から前記第1音響信号が放出され、前記第2音孔から前記第2音響信号が放出された場合における、前記第1音響信号が到達する予め定めた第1地点を基準とした前記第1地点よりも前記音響信号出力装置から遠い第2地点での前記第1音響信号の減衰率が、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰率よりも小さい予め定めた値
以下となるように設計されている、または、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での前記第1音響信号の減衰量が、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰量よりも大きい予め定めた値
以上となるように設計されている、音響信号出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響信号出力装置に関し、特に外耳道を密閉しない音響信号出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヤホンやヘッドホンの装着による耳への負担増加が問題となっている。耳への負担を軽減するデバイスとして、外耳道を塞がないオープンイヤー型(開放型)のイヤホンやヘッドホンが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“WHAT ARE OPEN-EAR HEADPHONES?”、[online]、Bose Corporation、[2022年5月16日検索]、インターネット<https://www.bose.com/en_us/better_with_bose/open-ear-headphones.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、オープンイヤー型のイヤホンやヘッドホンは周囲への音漏れが大きいという問題がある。このような問題は、オープンイヤー型のイヤホンやヘッドホンに限られたものではなく、外耳道を密閉しない音響信号出力装置に共通する問題である。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、周囲への音漏れを抑制可能な外耳道を密閉しない音響信号出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1音響信号を外部に放出する単数または複数の第1音孔が設けられ、第1音孔の開口端を取り囲む外面領域の少なくとも一部が凸形状である構造部を有する音響信号出力装置が提供される。この外面領域は、第1領域と第1領域よりも突出した第2領域とを含み、第1音孔から放出された第1音響信号を第1領域側に誘導する形状に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
これにより、外耳道を密閉することなく、周囲への音漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した斜視図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過平面図である。
図2Bは、実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の音響信号出力装置の使用状態を例示するための図である。
【
図6】
図6Aは、実施形態の音響信号出力装置の使用状態を例示するための図である。
図6Bは、実施形態の音響信号出力装置から発せられた音響信号の観測条件を例示するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態の音響信号出力装置を平面上に置いた様子を例示するための図である。
【
図8】
図8Aは、音孔の配置を例示するための正面図である。
図8Bおよび
図8Cは、音孔の配置を例示するための正面図である。
【
図13】
図13は、等ラウドネス曲線(ISO 226:2003 Acoustics - Normal equal-loudness-level contours)を例示したグラフである。
【
図14】
図14Aは、筐体の内部空間の体積と共振周波数との関係を例示するためのグラフである。
図14Bは、LPF(Low-pass filter)を用いる場合(LPF有り)とLPFを用いない場合(LPF無し)の音圧レベルを例示するためのグラフである。
【
図15】
図15は、実施形態の音響信号出力装置を耳介に装着するための構成を例示するための図である。
【
図16】
図16は、実施形態の音響信号出力装置を眼鏡のつる(テンプル)に設けた構成を例示するための図である。
図16Aは実施形態の音響信号出力装置の正面図である。
図16Bは
図16Aの透過拡大図である。
図16Cは実施形態の音響信号出力装置の拡大背面図である。
【
図17】
図17は、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するための正面図である。実施形態
【
図18】
図18Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため斜視図である。
図18Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
【
図19】
図19は、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
【
図20】
図20Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
図20Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため右側面図である。
図20Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図20Dは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
図20Eは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図21】
図21Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため斜視図である。
図21Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため斜視図である。
図21Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため斜視図である。
【
図22】
図22Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図22Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
【
図23】
図23Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図23Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
図23Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図24】
図24Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
図24Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため右側面図である。
図24Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図24Dは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
図24Eは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図25】
図25Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
図25Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図25Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
図25Dは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図26】
図26Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
図26Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図26Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
図26Dは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図27】
図27Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため左側面図である。
図27Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図27Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図28】
図28Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため平面図である。
図28Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため右側面図である。
図28Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図28Dは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
図28Eは、実施形態の音響信号出力装置の変形例の使用状態を例示するため正面図である。
【
図29】
図29Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため概念図である。
図29Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため斜視図である。
【
図30】
図30Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図30Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため左側面図である。
図30Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため右側面図である。
【
図31】
図31Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図31Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため左側面図である。
図31Cは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため右側面図である。
【
図32】
図32Aは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため正面図である。
図32Bは、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため背面図である。
【
図33】
図33は、実施形態の音響信号出力装置の変形例を例示するため概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の音響信号出力装置10は、利用者の外耳道を密閉せずに装着される音響聴取用の装置(例えば、オープンイヤー型(開放型)のイヤホン、ヘッドホンなど)である。
図1、
図2A、
図2B、
図3Aおよび
図3Bに例示するように、本実施形態の音響信号出力装置10は、再生装置から出力された出力信号(音響信号を表す電気信号)を音響信号に変換して出力するドライバーユニット11と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体12(構造部)と、装着時に利用者の耳介に配置されるサポート部13(構造部)とを有する。
【0010】
<ドライバーユニット11>
ドライバーユニット(スピーカードライバーユニット)11は、入力された出力信号に基づく音響信号AC1(第1音響信号)を一方側(D1方向側)へ放出(放音)し、音響信号AC1の逆位相信号(位相反転信号)または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2(第2音響信号)を他方側(D2方向側)に放出する装置(スピーカー機能を持つ装置)である。すなわち、ドライバーユニット11から一方側(D1方向側)へ放出される音響信号を音響信号AC1(第1音響信号)と呼び、ドライバーユニット11から他方側(D2方向側)に放出される音響信号を音響信号AC2(第2音響信号)と呼ぶことにする。音響信号AC1は利用者が音響聴取するために用い、音響信号AC2は周囲への音漏れを抑制するために用いる。例えば、ドライバーユニット11は、振動によって一方の面113aから音響信号AC1をD1方向側に放出し、この振動によって他方の面113bから音響信号AC2をD2方向側に放出する振動板113を含む(
図2B)。この例のドライバーユニット11は、入力された出力信号に基づいて振動板113が振動することで、音響信号AC1を一方側の面111からD1方向側へ放出し、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2を他方側の側112からD2方向側へ放出する。すなわち、音響信号AC2は、音響信号AC1の放出に伴って副次的に放出されるものである。なお、D2方向(他方側)は、例えばD1方向(一方側)の逆方向であるが、D2方向が厳密にD1方向の逆方向である必要はなく、D2方向がD1方向と異なっていればよい。一方側(D1方向)と他方側(D2方向)との関係は、ドライバーユニット11の方式や形状に依存する。また、ドライバーユニット11の方式や形状によって、音響信号AC2が厳密に音響信号AC1の逆位相信号となる場合もあれば、音響信号AC2が音響信号AC1の逆位相信号の近似信号となる場合がある。例えば、音響信号AC1の逆位相信号の近似信号は、(1)音響信号AC1の逆位相信号の位相をシフトして得られる信号であってもよいし、(2)音響信号AC1の逆位相信号の振幅を変化(増幅または減衰)させて得られる信号であってもよいし、(3)音響信号AC1の逆位相信号の位相をシフトし、さらに振幅を変化させて得られる信号であってもよい。音響信号AC1の逆位相信号とその近似信号との位相差は、δ
1(rad)以下であることが望ましい。δ
1の例はπ/36, π/12, π/6, π/3などである。また、音響信号AC1の逆位相信号の振幅に対するその近似信号の振幅の比は、δ
2以下であることが望ましい。δ
2の例は0.1, 0.5, 1.0, 2.0などである。例えば、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC1と音響信号AC2とを加算して得られる和信号の振幅が、この音響信号AC1の振幅よりも小さくなればよい。例えば、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC1に含まれる各周波数の正弦波をAe^jωtとし、ライバーユニット11から放出される音響信号AC2に含まれる各周波数の正弦波をδ
2Ae^j(-ωt+δ
1)とする。ただし、tは時間を表し、ωは角周波数を表し、A(A>0)は振幅を表し、jは虚数単位を表し、eはネイピア数を表す。また、δ
1は音響信号AC1の逆位相信号と音響信号AC2との位相差(rad)を表し、δ
2(δ
2>0)は音響信号AC1の逆位相信号と音響信号AC2との振幅比を表す。両信号を加算して得られる和信号は以下のようになる。
(Ae^jωt)+{δ
2Ae^j(-ωt+δ
1)}=(1-δ
2e^jδ
1)Ae^jωt
この和信号の振幅の絶対値は|(1-δ
2e^jδ
1)A|であるので、和信号の振幅を音響信号AC1の振幅よりも小さくするには、|(1-δ
2e^jδ
1)|<1にする必要がある。すなわち、以下を満たせばよい。
【数1】
つまり、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC2は、0<δ
2<2cosδ
1を満たす精度で音響信号AC1の逆位相信号に近似できればよい。これは、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC1と音響信号AC2の振幅が同じ(δ
2=1)であれば、音響信号AC1の逆位相信号と音響信号AC2との位相差δ
1(rad)の絶対値がπ/3未満であればよいことを表す。また、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC1の逆位相信号と音響信号AC2との位相差がない(δ
1=0)のであれば、音響信号AC1の逆位相信号と音響信号AC2との振幅比δ
2が2未満であればよいことを表す。なお、ドライバーユニット11の方式としては、ダイナミック型、バランスドアーマチェア型、ダイナミック型とバランスドアーマチュア型のハイブリッド型、コンデンサー型などを例示できる。また、ドライバーユニット11や振動板113の形状に限定はない。本実施形態では、説明の簡略化のため、ドライバーユニット11の外形が両端面を持つ略円筒形状であり、振動板113が略円盤形状である例を示すが、これは本発明を限定するものではない。例えば、ドライバーユニット11の外形が直方体形状などであってもよいし、振動板113がドーム形状やホーン形状などであってもよい。また、音響信号の例は、音楽、音声、効果音、環境音などの音である。
【0011】
<筐体12>
筐体12は、外側に壁部を持つ中空の部材であり、内部にドライバーユニット11を収納している。例えば、ドライバーユニット11は、筐体12内部のD1方向側の端部に固定されている。しかし、これは本発明を限定するものではない。筐体12の形状にも限定はないが、例えば、筐体12の形状が、D1方向に沿って伸びる軸線A1を中心とした回転対称(線対称)または略回転対称であってもよい。なお、軸線A1は、筐体12の中央領域を通ってD1方向に延びる軸線である。例えば、筐体12は、ドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121と、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に配置された壁部122と、壁部121と壁部122とで挟まれた空間を、壁部121と壁部122とを通る軸線A1を中心に取り囲む壁部123(側面)とを有する(
図2B,
図3B)。本実施形態では、説明の簡略化のため、筐体12が両端面を持つ略円筒形状である例を示す。しかし、これらは一例であって本発明を限定するものではない。例えば、筐体12が、端部に壁部を持つ略ドーム型形状であってもよいし、中空の略立方体形状であってもよい、その他の立体形状であってもよい。また、筐体12を構成する材質にも限定はない。筐体12が合成樹脂や金属などの剛体によって構成されていてもよいし、ゴムなどの弾性体によって構成されていてもよい。
【0012】
<音孔121a,123a>
筐体12の壁部には、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を外部に放出(導出)する音孔121a(第1音孔)と、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC2(第2音響信号)を外部に放出(導出)する音孔123a(第2音孔)とが設けられている。音孔121aおよび音孔123aは、例えば、筐体12の壁部を貫通する貫通孔であるが、これは本発明を限定するものではない。音響信号AC1および音響信号AC2をそれぞれ外部に放出できるのであれば、音孔121aおよび音孔123aが貫通孔でなくてもよい。
【0013】
本実施形態の音孔121a(第1音孔)は、ドライバーユニット11の一方側(音響信号AC1が放出される側であるD1方向側)に配置された壁部121の領域AR1(第1領域)に設けられている(
図2B,
図3B)。本実施形態の音孔121aは、軸線A1(構造部の中心軸)からB1方向(第1方向)にずれた偏心位置に配置され、D1方向を向いて開口している。B1方向は、軸線A1を中心とする特定の放射方向である。本実施形態では、説明の簡略化のため、音孔121aの開放端の縁部の形状が楕円形である(開放端が楕円形である)例を示す。しかし、これは本発明を限定しない。例えば、音孔121aの縁部の形状が円、四角形、三角形などその他の形状であってもよい。また、音孔121aの端部が網目状になっていてもよい。言い換えると、音孔121aの端部が複数の孔によって構成されていてもよい。また本実施形態では、説明の簡略化のため、筐体12の壁部121の領域AR1(第1領域)に1個の音孔121aが設けられている例を示す。しかし、これは本発明を限定しない。例えば、筐体12の壁部121の領域AR1(第1領域)に2個以上の音孔121aが設けられていてもよい。
【0014】
本実施形態の音孔123a(第2音孔)は、筐体12の壁部121の領域AR1とドライバーユニット11のD2方向側(音響信号AC2が放出される側である他方側)に配置された壁部122の領域AR2との間の領域ARに接する壁部123の領域AR3に設けられている。すなわち、筐体12の中央を基準とし、D1方向とD1方向の逆方向との間の方向をD12方向とすると(
図3B)、音孔123a(第2音孔)は、筐体12のD12方向側に設けられている。例えば、筐体12が、ドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121と、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に配置された壁部122と、壁部121と壁部122とで挟まれた空間を、壁部121と壁部122とを通る音響信号AC1の放出方向(D1方向)に沿った軸線A1を中心に取り囲む壁部123(側面)とを有する場合(
図2B,
図3B)、音孔123a(第2音孔)は壁部123(側面)に設けられている。
【0015】
また、本実施形態の音孔123a(第2音孔)は、B2方向(第2方向)側に偏って配置されている。B2方向(第2方向)は、B1方向(第1方向)の逆方向成分を含む方向である。例えば、音孔123a(第2音孔)は、軸線A1のB1方向(第1方向)側には設けられていない。
図4Aおよび
図4Bに例示するように、このように音孔123a(第2音孔)を配置した場合、空間SP1(第1空間)に面している音孔123a(第2音孔)の開口端の総面積は、空間SP2(第2空間)に面している音孔123a(第2音孔)の開口端の総面積よりも小さくなる。その結果、音孔123a(第2音孔)から空間SP1(第1空間)に放出される音響信号AC2(第2音響信号)の音圧レベルは、音孔123a(第2音孔)から空間SP2(第2空間)に放出される音響信号AC2(第2音響信号)の音圧レベルよりも低くなる。なお、空間SP1(第1空間)は、音孔121a(第1音孔)に対してB1方向(第1方向)側に位置する空間であり、空間SP2(第2空間)は、音孔121a(第1音孔)に対してB2方向(第2方向)側に位置する空間である。つまり、例えば、筐体12上の音孔121aの位置から遠いほど配置される音孔123aが多く、筐体12上の音孔121aの位置から近いほど配置される音孔123aが少なくなるように設計することが好ましい。
【0016】
なお、筐体12の壁部122側には音孔を設けないことが望ましい。筐体12の壁部122側に音孔を設けると、筐体12から放出される音響信号AC2の音圧レベルが音響信号AC1の音漏れ成分を相殺するために必要なレベルを超えてしまい、その過剰分が音漏れとして知覚されてしまうからである。
【0017】
<サポート部13>
図1、
図2B、および
図3Bに例示するように、サポート部13は筐体12のD1方向側の壁部121の外方の面に設けられた凸形状部である。サポート部13には、音孔121aの開放端131bが設けられており、音孔121aから放出された音響信号AC1は開放端131bから外部に放出される。例えば、開放端131bは貫通孔であり、音孔121aから放出された音響信号AC1を外部に放出する。
【0018】
サポート部13の外面領域130の少なくとも一部は凸形状となっている。外面領域130は、音孔121a(第1音孔)の開口端131bを取り囲む外面側の領域であり、例えば、サポート部13のD1方向側の外面側に位置する環状の領域である。外面領域130は、領域131(第1領域)と、領域131(第1領域)よりも突出した領域132(第2領域)とを含み、音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を領域131(第1領域)側に誘導する形状に構成されている。この例の領域131(第1領域)は、領域132(第2領域)のB1方向(第1方向)側に配置されており、外面領域130は、音孔121aから放出された音響信号AC1をB1方向側に誘導する。例えば、音孔121a(第1音孔)の開口端131bは、領域132(第2領域)で取り囲まれた空間SPに面しており、空間SPの領域131(第1領域)側は当該空間SPの外周外方(B1方向側の外方)に開放されている。つまり、例えば、領域132は、その表面132aが領域131の表面131aよりも外方(D1方向)に突出した凸形状の領域であり、開口端131bの周囲の領域のうち領域131(第1領域)側(B1方向側)以外の領域を取り囲んでいる。言い換えると、例えば、領域131は領域132よりも窪み、領域132は領域131の開口端131bの周囲を部分的に囲うように湾曲している。つまり、この例の領域131は、音孔121aの開口端131bのB1方向(第1方向)側に配置されており、領域132は、開口端131bを中心とした360度の放射方向のうち、B1方向側の一部の範囲を除いて取り囲むように膨らみを持つ領域である。例えば、領域132は、1か所以上のいずれかの箇所に極大部を有する山形の形状である。また、この例の領域132の表面132aは、領域132の傾斜部132cを介して領域131の表面131aにつながっている。すなわち、この例の傾斜部132cは、表面131aから表面132aにかけて広がるテーパー形状である。この場合、音響信号出力装置10の装着時に領域131側(B1方向側)に配置される利用者の外耳道側に、音孔121aから放出された音響信号AC1を効率よく誘導できる。しかし、領域132の開口端131b側がテーパー形状でなくてもよい。また、音孔123a(第2音孔)の開口端は、領域132(第2領域)で取り囲まれた空間SPの外側の空間に面している。より具体的には、本実施形態の音孔123a(第2音孔)の開口端は、外面領域130で取り囲まれた空間の外側の空間に面している。これに加え、前述の通り、音孔123a(第2音孔)は、B2方向(第2方向)側に偏って配置されている。これらにより、音孔123aから放出された音響信号AC2は、音孔121aから放出された音響信号AC1に比べて利用者の外耳道側に届きにくい。
【0019】
なお、例示したサポート部13の形状は一例であって本発明を限定するものではない。例えば、領域132の表面132aが領域131の表面131aよりもD1方向に突出しているのであれば、領域131の表面131aおよび領域132の表面132aは、凸形状であってもよいし、凹形状であってもよいし、凹凸形状であってもよいし、平坦であってもよい。ただし、領域132の表面132aが曲面の凸形状である方が、装着時のフィット感がよい。また、サポート部13を構成する材質にも限定はない。サポート部13が合成樹脂などの剛体によって構成されていてもよいし、ゴムやウレタンなどの弾性体によって構成されていてもよい。ただし、領域132が弾性体である方が装着時のフィット感がよい。
【0020】
<装着状態>
図5を用いて音響信号出力装置10の装着状態を例示する。本実施形態の音響信号出力装置10は、サポート部13側が利用者1000の耳介1010側を向くように耳介1010(身体)に装着される。このように筐体12およびサポート部13(構造部)が利用者1000の耳介1010に取り付けられた際、サポート部13の領域132(第2領域)が耳介1010(身体)のいずれかの部分に接触して支持され、音孔121a(第1音孔)の開口端131bおよびサポート部13の領域131(第1領域)が耳介1010(身体)の少なくとも一部に接触することなく、領域131(第1領域)が外耳道1011側に配置される。例えば、音響信号出力装置10の装着時、領域132が耳介1010の上側に配置され、領域132の表面132aが耳介1010の上側部分(例えば、三角窩や舟状窩など)に接触して支持される。これにより、音孔121aが利用者1000の耳介1010のいずれかの部分に接触して塞がれてしまうことを防ぐことができる。また、領域131が耳介1010に接触して支えとして働くので装着時の安定感が高い。特に領域131が凸形状となっている場合、領域131がこの耳介1010の凹形状にフィットし、支えとして働くことで装着時の安定感を増す。この効果は、領域131が剛体であるよりも弾性体である方が高い。音響信号出力装置10の装着時、例えば、領域131は領域132よりも下側(外耳道1011側)に配置される。前述のように、サポート部13の外面領域130は、音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を領域131(第1領域)側(B1方向側)に誘導する形状に構成されている。そのため、音孔121aから放出された音響信号AC1は外耳道1011側(耳介1010の下方側)に誘導され、放出される。耳介1010に支持される領域132は領域131よりも突出しているため、開口端131bおよび領域131の少なくとも一部は耳介1010に接触しない。好ましくは、開口端131bおよび領域131は耳介1010に接触しない。また、サポート部13が外耳道1011を塞ぐこともない。これにより、音孔121aから放出された音響信号AC1は効率よく外耳道1011に届く。また前述のように、サポート部13の傾斜部132cが、表面131aから表面132aにかけて広がるテーパー形状である場合、音孔121aから放出された音響信号AC1がより効率よく外耳道1011に届く。一方、音孔121aの開口端131bのB2方向側は領域132によって取り囲まれているため、音孔121aから放出された音響信号AC1がB2方向側に漏洩すること(音漏れ)を抑制できる。すなわち、筐体12およびサポート部13(構造部)が耳介1010(身体)に取り付けられた際、外耳道1011から外耳道1011側に放出される音響信号AC1(第1音響信号)の音圧レベルが、外耳道以外1011から外耳道1011側以外に放出される音響信号AC1(第1音響信号)の音圧レベルよりも高くなる。
【0021】
さらに、本実施形態の音孔123a(第2音孔)の開口端は、領域132(第2領域)で取り囲まれた空間SPの外側の空間に面している。また、音孔123a(第2音孔)は、B2方向(第2方向)側に偏って配置されている。これにより、音孔123aから放出された音響信号AC2は、音孔121aから放出された音響信号AC1に比べて利用者1000の外耳道1011側に届きにくい。さらに、この音響信号AC2は外部に漏洩した音響信号AC1を相殺し、音漏れを抑制する働きを持つ。
図6Aおよび
図6Bを用い、このことを説明する。
図6Aの例では、利用者1000の右耳の耳介1010と左耳の耳介1020とに音響信号出力装置10が1個ずつ装着されている。耳への音響信号出力装置10の装着には任意の装着機構が用いられる。上述のように、音響信号出力装置10は、それぞれD1方向側が利用者1000側に向けられる。再生装置100から出力された出力信号はそれぞれの音響信号出力装置10のドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11は、D1方向側へ音響信号AC1を放出し、他方側へ音響信号AC2を放出する。音孔121aからは音響信号AC1が放出され、放出された音響信号AC1は右耳と左耳の外耳道1011に入り、利用者1000に聴取される。一方、音孔123aからは、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2が放出される。この音響信号AC2の一部は、音孔121aから放出された音響信号AC1の一部(音漏れ成分)を相殺する。すなわち、音孔121a(第1音孔)から音響信号AC1(第1音響信号)が放出され、音孔123a(第2音孔)から音響信号AC2(第2音響信号)が放出されることで、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での音響信号AC1(第1音響信号)の減衰率η
11を予め定めた値η
th以下とすることができたり、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での音響信号AC1(第1音響信号)の減衰量η
12を予め定めた値ω
th以上とできたりする。ここで、位置P1(第1地点)は、音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)が到達する予め定められた地点である。一方、位置P2(第2地点)は、音響信号出力装置10からの距離が位置P1(第1地点)よりも遠い予め定められた地点である。位置P1,P2はどの地点でもよいが、例えば、位置P1,P2は音響信号出力装置10のB1方向以外の方向の位置であり、例えば、音響信号出力装置10のB2方向やD2の位置である。予め定めた値η
thは、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での任意または特定の音響信号(音)の空気伝搬による減衰率η
21よりも小さい値(低い値)である。また、予め定めた値ω
thは、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での任意または特定の音響信号(音)の空気伝搬による減衰量η
22よりも大きい値である。すなわち、本実施形態の音響信号出力装置10は、減衰率η
11が、減衰率η
21よりも小さい予め定めた値η
th以下となるように設計されているか、または、減衰量η
12が、減衰量η
22よりも大きい予め定めた値ω
th以上となるように設計されている。なお、音響信号AC1は位置P1から位置P2まで空気伝搬され、この空気伝搬と音響信号AC2とに起因して減衰する。減衰率η
11は、位置P1での音響信号AC1の大きさAMP
1(AC1)に対する、空気伝搬と音響信号AC2とに起因して減衰した位置P2での音響信号AC1の大きさAMP
2(AC1)の比率(AMP
2(AC1)/AMP
1(AC1))である。また、減衰量η
12は、大きさAMP
1(AC1)と大きさAMP
2(AC1)との差分(|AMP
1(AC1)-AMP
2(AC1)|)である。一方、音響信号AC2を想定しない場合、位置P1から位置P2まで空気伝搬される任意または特定の音響信号AC
arは、音響信号AC2に起因することなく、空気伝搬に起因して減衰する。減衰率η
21は、位置P1での音響信号AC
arの大きさAMP
1(AC
ar)に対する、空気伝搬に起因して減衰(音響信号AC2に起因することなく減衰)した位置P2での音響信号AC
arの大きさAMP
2(AC
ar)の比率(AMP
2(AC
ar)/AMP
1(AC
ar))である。また、減衰量η
22は、大きさAMP
1(AC
ar)と大きさAMP
2(AC
ar)との差分(|AMP
1(AC
ar)-AMP
2(AC
ar)|)である。なお、音響信号の大きさの例は、音響信号の音圧または音響信号のエネルギーなどである。また「音漏れ成分」とは、例えば、音孔121aから放出された音響信号AC1のうち、音響信号出力装置10を装着した利用者1000以外の領域(例えば、音響信号出力装置10を装着した利用者1000以外のヒト)に到来する可能性が高い成分を意味する。例えば、「音漏れ成分」は、音響信号AC1のうち、D1方向以外の方向に伝搬する成分を意味する。例えば、音孔121aからは主に音響信号AC1の直接波が放出され、第2音孔からは主に第2音響信号の直接波が放出される。音孔121aから放出された音響信号AC1の直接波の一部(音漏れ成分)は、音孔123aから放出された音響信号AC2の直接波の少なくとも一部と干渉することで相殺される。ただし、これは本発明を限定するものではなく、この相殺は直接波以外でも生じ得る。すなわち、音孔121aから放出された音響信号AC1の直接波および反射波の少なくとも一方である音漏れ成分が、音孔123aから放出された音響信号AC2の直接波および反射波の少なくとも一方によって相殺されることがある。これにより、音漏れを抑制できる。
【0022】
また、音孔123a(第2音孔)は、B2方向(第2方向)側に偏って配置されているため、音孔123aから放出された音響信号AC2は外耳道1011側に届きにくい。そのため、外耳道1011側では、音響信号AC1が音響信号AC2によって相殺されにくい。すなわち、音孔123aが外耳道1011から離れているため、音孔123aから放出された音響信号AC2は、音孔121aから外耳道1011側に放出された音響信号AC1を相殺しにくい。言い換えると、音響信号AC2は、外耳道1011側に放出された音響信号AC1をさほど抑圧することなく、外耳道1011側以外に漏洩した音響信号AC1の音漏れを抑圧できる。例えば、音響信号出力装置10が耳介1010に装着された際、外耳道1011から音孔121aまでの距離が2cm以上3cm以下であり、音孔121aから音孔123aまでの距離が2cm以上となることが望ましい。しかし、これは本発明を限定するものではない。
【0023】
<放置状態>
図7に例示するように、音響信号出力装置10を机などの平面1100上に放置した状態を説明する。
図7では、サポート部13側が平面1100上に配置されている。このような場合であっても、領域132は領域131よりも突出しているため、音孔121aの開口端131bおよび領域131の少なくとも一部は平面1100に接触しない。そのため、音孔121aの開口端131bから放出された音響信号AC1と音孔123aから放出された音響信号AC2とが上述のように相殺し合い、音漏れを抑制できる。すなわち、本実施形態では、このように音孔121aの開口端131bおよび領域131の少なくとも一部が平面1100に接触しないように、領域132の位置、大きさ、および領域132の表面132aの形状や角度等が設定されている。
【0024】
このような効果は、筐体12側が平面1100上に配置されている場合にも得ることができる。すなわち、本実施形態の音響信号出力装置10をどのような向きに平面1100上に配置したとしても、音孔121aの開口端131bから放出された音響信号AC1と音孔123aから放出された音響信号AC2とが上述のように相殺し合い、音漏れを抑制できる。
【0025】
[第1実施形態の変形例]
音孔121aおよび音孔123aの形状、大きさ、配置は、第1実施形態で例示したものに限定されない。例えば、第1実施形態では、筐体12の領域AR1に1個の音孔121aが設けられ、サポート部13に1個の音孔121aの開口端131bが設けられる例を示した。しかし、
図8Aに例示するように、筐体12の領域AR1に複数個の音孔121aが設けられ、サポート部13に複数個の音孔121aの開口端131bが設けられていてもよい。この場合、これらの複数個の音孔121aおよび開口端131bが、軸線A1からB1方向にずれた偏心位置に偏っていてもよい。
【0026】
第1実施形態では、同一形状および同一サイズの音孔123aが筐体12の壁部123の同一円周上に配置される例を示した。しかしながら、音孔123aの開口端が、領域132で取り囲まれた空間SPの外側の空間に面しており、音孔123aがB2方向側に偏って配置されているのであれば、音孔123aの形状およびサイズはどのようなものであってもよい。すなわち、音孔123aから空間SP1に放出される音響信号AC2の音圧レベルが、音孔123aから空間SP2に放出される音響信号AC2の音圧レベルよりも低くなればよい。前述のように、空間SP1は、音孔121aに対してB1方向側に位置する空間であり、空間SP2は、音孔121aに対してB2方向側に位置する空間である。
【0027】
例えば、
図8Bに例示するように、大きさの異なる複数の音孔123a(第2音孔)が設けられてもよいし、
図8Cに例示するように、形状の異なる複数の音孔123a(第2音孔)が設けられてもよいし、複数の音孔123aが同一円周上に配置されなくてもよい。
【0028】
例えば、
図9Aおよび
図9Bに例示するように、軸線A1のB1方向側にも音孔123aが設けられていてもよい。この場合であっても、軸線A1のB1方向側に配置されている音孔123aの開口面積がB2方向側に偏って配置されている音孔123aの開口面積よりも小さいか、または、軸線A1のB1方向側に配置されている音孔123aの単位面積当たりの開口面積(つまり、開口面積の密度)がB2方向側に偏って配置されている音孔123aの単位面積当たりの開口面積よりも小さければよい。これによって、空間SP1に面している音孔123aの開口端の総面積が、空間SP2に面している音孔123aの開口端の総面積よりも小さくなり、音孔123aから空間SP1に放出される音響信号AC2の音圧レベルが、音孔123aから空間SP2に放出される音響信号AC2の音圧レベルよりも低くなるからである。例えば、音孔121aの開口端131bからの距離がα
1である音孔123aの開口端の開口面積が、音孔121aの開口端131bからの距離がα
2である音孔123aの開口端の開口面積よりも小さくなるよう設計されていてもよい。ただし、α
1<α
2である。例えば、音孔121aの開口端131bからの距離が近い音孔123aほど、開口端の開口面積が小さくなるよう構成されていてもよい。
【0029】
また、例えば、
図10Aおよび
図10Bに例示するように、軸線A1のB1方向側に音孔123aが設けられていても、そこから放出される音響信号AC2の音圧レベルが、B2方向側に偏って配置されている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧レベルよりも小さければよい。例えば、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC2が指向性を持っており、それによって軸線A1のB1方向側に配置されている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧レベルが、B2方向側に偏って配置されている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧レベルよりも小さくなっていてもよい。あるいは、筐体12の内部に、出力パワーの異なる複数のドライバーユニット11が収容され、それによって軸線A1のB1方向側に配置されている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧レベルが、B2方向側に偏って配置されている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧レベルよりも小さくなっていてもよい。あるいは、軸線A1のB1方向側に設けられている音孔123aの開口部に音響信号を減衰させる素材を配置してもよいし、軸線A1のB1方向側に設けられている音孔123aの開口部が音響信号を減衰させるメッシュ構造などの形状になっていてもよい。すなわち、筐体12に複数の音孔123a(第2音孔)が設けられており、音孔123a(第2音孔)の開口端のうち空間SP1(第1空間)に面している開口端から放出される音響信号AC2(第2音響信号)の音圧レベルが、音孔123a(第2音孔)の開口端のうち空間SP2(第2空間)に面している開口端から放出される音響信号AC2(第2音響信号)の音圧レベルよりも低ければよい。音孔121aの開口端131bからの距離がα
1である音孔123aの開口端から放出される音響信号AC2の音圧レベルが、音孔121aの開口端131bからの距離がα
2である音孔123aの開口端から放出される音響信号AC2の音圧レベルよりも小さくなるよう設計されていてもよい。ただし、α
1<α
2である。例えば、音孔121aの開口端131bからの距離が近い音孔123aほど、放出される音響信号AC2の音圧レベルが小さくなるように設計されていてもよい。
【0030】
また、第1実施形態では、筐体12に複数個の音孔123aが設けられている例を示したが、筐体12に1個の音孔123aが設けられていてもよい。この場合、音孔123aの開口端が音孔121aからできるだけ離れていることが望ましい。好ましくは、音孔123aの開口端と音孔121aとの距離が最大となるように音孔123aが設けられることが望ましい。
【0031】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は第1実施形態およびその変形例のさらなる変形例である。以下では、これまで説明した事項との相違点を中心に説明し、既に説明した事項については説明を簡略化する。
【0032】
第1実施形態で例示した音響信号出力装置10は、音孔123aから音響信号AC2を放出することで、音孔121aから放出されて外部に漏洩した音響信号AC1を相殺し、音漏れを抑制している。これは理想的には音響信号AC2が音響信号AC1の逆位相であることに基づいている。しかし、音響信号AC1の伝搬経路と音響信号AC2の伝搬経路とは異なるため、音響信号AC1と音響信号AC2との間に位相差が生じ、音漏れを抑制しようとする位置で音響信号AC2が音響信号AC1の逆位相とならない場合もある。このような影響は音響信号AC1,AC2の周波数が高いほど大きくなるため、周波数が高くなると音漏れの抑制が困難になる。場合によっては音響信号AC2が音響信号AC1を相殺せず、逆に音響信号AC2も音漏れ成分として知覚されてしまう。例えば、音響信号AC2によって音響信号AC1の音漏れを抑制できるのは、音響信号AC1,AC2の周波数が3kHz程度までの場合であり、それ以上の周波数帯域では音響信号AC2も音漏れ成分となってしまう。
【0033】
また、人間の耳は3kHz-6kHzの帯域に敏感であり、この帯域では他の帯域に比べて小さい音でも大きな音がなっていると知覚する。このような人間の聴覚特性は等ラウドネス曲線として表される。この等ラウドネス曲線は様々な周波数の音が感覚的に同じ大きさに聞こえる音圧レベルを結んだものである。
図13に等ラウドネス曲線を示す。
図13の横軸は周波数[Hz]を表し、縦軸は音圧レベル[dB]を表す。
図13に示すように、4kHz付近で等ラウドネス曲線が極小となっており、この周波数で人間の聴覚感度が高いことが分かる。そのため、人間の聴覚感度が高い3kHz-6kHzの帯域で音響信号AC2の音圧レベルを下げることが望ましい。
【0034】
また、前述のように、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC2は、筐体12(エンクロージャー)の内部空間である領域ARに放出され、さらに音孔123aから外部に放出されるが、この領域ARの共振周波数において音響信号AC2の音圧レベルは極大となる。そのため、高域側での音漏れを抑制するためには、この共振周波数を人間の聴覚感度が高い帯域以上(例えば、6kHz以上)とすることが望ましい。
図14Aに領域ARの体積と音孔123aから外部に放出される音響信号AC2との関係を例示する。
図14Aに例示するように、領域ARの体積の体積が小さいほど共振周波数frが高いことが分かる。そのため、領域ARの体積(容積)を小さくして領域ARの共振周波数を人間の聴覚感度が高い帯域以上(例えば、6kHz以上)すれば、音漏れの影響を小さくできると考えられる。
【0035】
しかし、領域ARの共振周波数を人間の聴覚感度が高い帯域以上にすると、この共振周波数の周辺の帯域でも音圧レベルが高くなり、人間の聴覚感度が高い帯域での音圧レベルも高くなってしまう。そのため、本実施形態ではさらに音孔123aから外部に放出される音響信号AC2の高域側を低減させる工夫を行う。これにより、人間の聴覚感度が高い帯域(例えば、3kHz-6kHzの帯域)での音漏れを低減できる。
【0036】
本実施形態の音響信号出力装置20は、ドライバーユニット11と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体12(構造部)と、装着時に利用者の耳介に配置されるサポート部13(構造部)とを有する。筐体12(構造部)には、音響信号AC1(第1音響信号)を外部に放出する単数または複数の音孔121a(第1音孔)と、領域AR(内部空間)に音響信号AC2(第2音響信号)が放出される中空部と、中空部の領域AR(内部空間)に放出された音響信号AC2(第2音響信号)を外部に放出する単数または複数の音孔123a(第2音孔)が設けられている。ここで、この中空部の共振周波数が所定周波数以上(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域以上。例えば、6kHz以上)となるように設計され、かつ、当該所定周波数を含む周波数帯域成分(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域成分。例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)が抑えられた音響信号AC2(第2音響信号)が音孔123a(第2音孔)から外部に放出されるように設計される。これにより、人間の聴覚感度が高い帯域(例えば、3kHz-6kHzの帯域)での音漏れを低減できる。以下にこのような設計を例示する。
【0037】
<設計例1>
図11Aに例示するように、音響信号出力装置20の筐体12(構造部)が、その中空部220の領域AR(内部空間)に配置された内部中空部241を有していてもよい。内部中空部241の内部空間ISPは、内部中空部241の外部に位置する中空部220の領域AR(内部空間)から空間的に仕切られている。すなわち、内部中空部241は、外側が壁部242である中空の部材であり、その壁部242によって、その内部空間ISPが領域ARから空間的に仕切られている。このような内部空間ISPを持つものであれば、内部中空部241の形状はどのようなものであってもよい。壁部242を構成する材質にも限定はない。壁部242が合成樹脂や金属などの剛体によって構成されていてもよいし、ゴムなどの弾性体によって構成されていてもよい。また、内部中空部241の内部空間ISPは、領域ARから空間的に仕切られていればよく、完全に密封されていてもよいし、完全に密封されていなくてもよい。内部空間ISPは空気で満たされていてもよいし、その他の気体で満たされていてもよいし、さらに弾性体などの物質が配置されていてもよい。ただし、内部空間ISPに配置される物質は、壁部242よりも柔らかい物質であることが望ましい。この例の内部中空部241の壁部242の底面部242aは、中空部220の内部の領域AR2に固定されている。しかし、これは一例であって、内部中空部241の壁部242のどの領域が、中空部220の内部のどの領域に固定されていてもよい。このような中空部220の領域ARに内部中空部241が配置し、中空部220と内部中空部241による二重構造とすることで、領域ARの容積を小さくでき、中空部220の共振周波数を高くできる。そのため、内部中空部241の容積を適切に設計することで、中空部220の共振周波数を人間の聴覚感度が高い帯域以上(例えば、6kHz以上)とすることもできる。特に、内部中空部241は設計の自由度が高く、領域ARの容積が十分小さくなるように内部中空部241の形状や大きさを設定ことができる。例えば、ドライバーユニット11に触れず、かつ、ドライバーユニット11からの距離ができるだけ近くなるような内部中空部241を設計することも可能であり、これにより中空部220の共振周波数を十分大きくすることができる。さらに、内部中空部241の内部空間ISPの空気等がダンパとして働き、中空部220の振動を軽減するため、音孔123a(第2音孔)から外部に放出される音響信号AC2(第2音響信号)の高域側の周波数帯域成分を抑えることができる。
【0038】
<設計例2>
図11Bに例示するように、内部中空部241の底面部242a(外側)と中空部220の領域AR2(内側)との間に緩衝材25が配置され、内部中空部241の底面部242a(外側)が、緩衝材25を介して中空部220の領域AR2(内側)に固定されていてもよい。なお、この例では、内部中空部241の底面部242aに緩衝材25が配置されているが、内部中空部241の他の壁部242と中空部220の内側との間に緩衝材25が配置され、内部中空部241の他の壁部242が、緩衝材25を介して中空部220の内側に固定されていてもよい。緩衝材25は、筐体12の壁部122や内部中空部241の壁部242よりも柔らかく、これによって中空部220の振動をさらに軽減できる。これにより、音孔123aから外部に放出される音響信号AC2の高域側の周波数帯域成分を抑えることができる。緩衝材25の材質の例は、紙、ウレタン、ゴムなどであり、例えば、紙製の両面テープを緩衝材25として用いてもよい。しかし、これは本発明を限定するものではない。また、このような緩衝材25が設けられるのであれば、内部中空部241に代え、内部が充填された中実部材が用いられてもよい。
【0039】
<設計例3>
図12Aに例示するように、ドライバーユニット11を駆動するための電子部材26の少なくとも一部が、内部中空部241の内部空間ISPに収容されていてもよい。これにより、ダンパとして働く内部空間ISPの内部空間を電子部材26の配置空間として流用でき、筐体12を小型化できる。なお、電子部材26の例は、配線ケーブル、電子部品、電子基板などである。ダンパとしての機能を考慮すると、電子部材26は、配線ケーブルなど、壁部242よりも柔らかい素材であることが望ましい。またさらに、設計例2で説明したように、内部中空部241の底面部242a(外側)と中空部220の領域AR2(内側)との間に緩衝材25が配置され、内部中空部241の底面部242a(外側)が、緩衝材25を介して中空部220の領域AR2(内側)に固定されていてもよい。
【0040】
<設計例4>
設計例1から3で説明した構成に加え、さらにドライバーユニット11が、前述の所定周波数(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域。例えば、6kHz)を含む周波数帯域成分(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域成分。例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)が抑えられた音響信号AC2(第2音響信号)を、中空部220の領域AR(内部空間)に放出してもよい。例えば、
図12Bに例示するように、ドライバーユニット11を駆動するための出力信号を出力する再生装置100とドライバーユニット11との間にLPF(ローパスフィルタ)部200を設けてもよい。このローパスフィルタは、前述の所定周波数(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域)を含む周波数帯域成分を抑圧するもの(減衰させるもの、または平坦化するもの)である。例えば、このローパスフィルタのカットオフ周波数を3kHzとする。再生装置100から出力された出力信号はLPF部200に入力され、LPF部200はこの出力信号の高域側を減衰させたローパス出力信号を出力する。ローパス出力信号はドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11はローパス出力信号に基づいて駆動する。これにより、ドライバーユニット11は、前述の所定周波数(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域。例えば、6kHz)を含む周波数帯域成分(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域成分。例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)が抑えられた音響信号AC2(第2音響信号)を中空部220の領域AR(内部空間)に放出する。中空部220の領域AR(内部空間)に放出された音響信号AC2(第2音響信号)は、さらに音孔123aから外部に放出される。なお、LPF部200は、コイルやコンデンサーなどの電子部品で実現されてもよいし、デジタル処理で実現されてもよい。抵抗やコンデンサーなどの電子部品でLPF部200を構成した場合には、LPF部200を駆動するための電源が不要となる。この場合には、電源が不要な有線型の音響信号出力装置20とすることもできる。なお、LPF部200は筐体12の外部に設けられてもよいし、筐体12自体に設けられてもよい。
【0041】
<設計例5>
図12Bに例示するように、ドライバーユニット11が前述の所定周波数(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域。例えば、6kHz)を含む周波数帯域成分(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域成分。例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)を抑えた音響信号AC2(第2音響信号)を中空部220の領域AR(内部空間)に放出するか、ドライバーユニット11がこの所定周波数を含む周波数帯域成分を抑えていない音響信号AC2(第2音響信号)中空部220の領域AR(内部空間)に放出するか、を切り替える切り替え部210がさらに設けられてもよい。例えば、切り替え部210は、設計例4のLPF部200を用いるか否かを切り替えるものである。LPF部200を用いるように切り替えられた場合には、設計例4で説明したように、LPF部200を経由したローパス出力信号がドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11はこのローパス出力信号に基づいて駆動する。一方、LPF部200を用いないように切り替えられた場合には、再生装置100から出力された出力信号はそのままドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11はこの出力信号に基づいて駆動する。利用者がこのような切り替え部210を手元で操作することで、音漏れを気にする必要がある環境では上述の周波数帯域成分を抑えた音響信号AC1,AC2を放出して高域での音漏れを抑制し、外部の騒音が大きく音漏れを気にする必要のない環境では上述の周波数帯域成分を抑えることなく、音響信号AC1,AC2を放出させることができる。後者の場合、上述の周波数帯域成分(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域成分。例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)が抑圧されないので、高騒音下でも音楽や音声を聴取することができる。なお、切り替え部210は筐体12の外部に設けられてもよいし、筐体12自体に設けられてもよい。
【0042】
<設計例6>
設計例4でLPF部200を用いることに代え、ドライバーユニット11の構造に基づき、ドライバーユニット11から放出される音響信号AC2(第2音響信号)の高域側の成分(前述の所定周波数を含む周波数帯域成分)が抑えられてもよい。例えば、ドライバーユニット11の振動板がコーン紙を有するダイナミック型である場合、コーン紙の高域再生限界周波数fhが人間の聴覚感度が高い帯域(例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)の上限(例えば、6kHzまたはその近傍)となるようにコーン紙のネックのスティフネスshを設計すればよい。なお、高域再生限界周波数fhとスティフネスshは以下の関係を満たす。
fh=(1/(2π))×√(sh/M)
ただし、Mはコーン紙を含む振動系の質量である。すなわち、ドライバーユニット11の振動板の素材を柔らかくするほど高域再生限界周波数fhを低くできる。また、このようなドライバーユニット11と設計例4のLPF部200とを組み合わせてもよい。
【0043】
<実験結果>
図14Bに、LPF部200を用いる場合(LPF有り)とLPF部200を用いない場合(LPF無し)の音圧レベルを例示する。
図14Bに例示するように、LPF部200を用いることによって人間の聴覚感度が高い帯域(例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)の音圧レベルが抑圧され、音漏れが低減できることが分かる。
【0044】
[第3実施形態]
第3実施形態では、これまで説明した音響信号出力装置の装着方式を例示する。
【0045】
<装着方式1>
図15の例では、筐体12の外側に、湾曲した棒状の耳掛け部310の一端311が固定されている。この耳掛け部310を耳介に装着することで、音響信号出力装置10(20)を
図5のように装着できる。なお、この例では、耳掛け部310の一端311が領域131(第1領域)側ではなく、領域132(第2領域)側に固定されている。これにより、領域131側に放出された音響信号AC1(第1音響信号)が、耳掛け部310に遮られることなく、外耳道1011に放出される。
【0046】
<装着方式2>
図16Aから
図16Cに例示する音響信号出力装置30は、前述した音響信号出力装置10(20)のサポート部13を眼鏡のつる(テンプル)33に一体化したものである。この例では、サポート部13の領域131(第1領域)が耳介1020に装着されるつる33の耳掛け部33a側(B1方向側)に配置され、領域131(第1領域)よりも突出した領域132(第2領域)がレンズ34側(B2方向側)に配置されている。領域131(第1領域)はつる33の内側に方向(D1方向)に突出しており、前述のように、音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を領域131(第1領域)側(B1方向側)に誘導する形状に構成されている。このような眼鏡を装着すると、サポート部13の領域132(第2領域)が頭部(身体)のいずれかの部分に接触して支持され、音孔121a(第1音孔)の開口端131bおよびサポート部13の領域131(第1領域)が頭部(身体)の少なくとも一部に接触することなく、領域131(第1領域)が外耳道1011側に配置される。音孔121aから放出された音響信号AC1は外耳道1021側(耳介1020の下方側)に誘導され、放出される。
【0047】
<装着方式3>
図17に例示するように、装着方式3の音響信号出力装置3100は、筐体およびサポート部を含む構造部2112と、構造部2112を保持して耳介1020の中間部分1023に装着されるように構成されている装着部2122と、を有する。なお、中間部分1023は、耳介1020の上側部分1022(耳輪側)と下側部分1024(耳垂側)との間の中間部分である。構造部2112は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。
【0048】
<装着方式4>
図18Aに例示するように、装着方式4の音響信号出力装置4100は、筐体およびサポート部を含む構造部2112と、構造部2112を保持して耳介1020の一部である耳介1020の上側部分1022に装着されるように構成されている装着部2224とを有する。
【0049】
<装着方式5>
図18Bに例示するように、装着方式5の音響信号出力装置4100’は、筐体およびサポート部を含む構造部2112と、構造部2112を保持して耳介1020の一部である耳介1020の上側部分1022に装着されるように構成されている装着部2224と、耳介1020の耳甲介腔1025に接するように構成された装着部4421とを有する。
【0050】
<装着方式6>
図19に例示する音響信号出力装置4200は、構造部2112と、構造部2112を保持して、装着時に耳介1020の付け根側に配置されるように構成された柱状の装着部4210と、装着部4210の両端に保持され、耳介1020の上側部分1022の裏側から下側部分1024までの領域に装着される円弧状の装着部4220とを有する。
【0051】
<装着方式7>
図20Aから
図20Eに例示する装着方式7の音響信号出力装置5110は、音響信号を放出する構造部5111と、構造部5111を保持して、装着時に耳介1020の上側部分1022の裏側に引っ掛けられるタイプの装着部5112とを有している。構造部5112は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。装着部5112は屈曲した棒状の部材であり、その一端に構造部5111がR5方向に回動可能に取り付けられている。耳介1020は構造部5111と装着部5112との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5110が耳介1020に固定される。また、構造部5111が装着部5112の一端に対してR5方向に回動可能であるため、個々の耳介1020の大きさや形状に合わせて装着位置や音孔の位置を調整できる。
【0052】
<装着方式8>
図21Aから
図21Cに例示する装着方式8の音響信号出力装置5120は、音響信号を放出する構造部5121と、構造部5121を保持して、装着時に耳介1020の上側部分1022の裏側に引っ掛けられるタイプの装着部5122とを有している。構造部5121は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。装着方式7と異なり、構造部5121は装着部5122に回動可能ではない。耳介1020は構造部5121と装着部5122との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5120が耳介1020に固定される。
【0053】
<装着方式9>
図22Aおよび
図22Bに例示する装着方式9の音響信号出力装置5130,5140は、それぞれ、音響信号を放出する構造部5131,5141と、構造部5131,5141を保持して、装着時に耳介1020の上側部分1022の裏側に引っ掛けられるタイプの装着部5132,5142とを有している。構造部5131,5141は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。さらに、
図22Bに例示する音響信号出力装置5140には、装着時に耳介1020の耳甲介腔1025に接するように構成された装着部5143が設けられている。これにより、より安定した装着が可能となる。
【0054】
<装着方式10>
図23A,
図23B,
図23Cに例示する音響信号出力装置5150は、音響信号を放出する構造部5151と、構造部5151を保持して、装着時に耳介1020の上側部分1022の裏側に引っ掛けられるタイプの棒状の装着部5152と、一端で構造部5151を保持し、他端で装着部5152を保持する柱状の支持部5154と、装着時に耳介102の中間部分1023および上側部分1022の裏側に中間部分1023側から引っ掛けられるタイプの棒状の装着部5153と、一端で構造部5151を保持し、他端で装着部5153を保持する柱状の支持部5155と、を有する。構造部5151は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。耳介1020は構造部5151と装着部5152,5153との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5150が耳介1020に固定される。
【0055】
<装着方式12>
図24Aから
図24Eに例示する音響信号出力装置5160は、音響信号を放出する構造部5161と、構造部5161を保持して、装着時に耳介1020の付け根側に配置されるように構成された柱状の装着部5164と、装着部5164の一端に保持されており、装着時に耳介1020の上側部分1022の裏側に引っ掛けられるタイプの棒状の装着部5162と、装着部5164の他端に保持されており、装着時に耳介1020の下側部分1024の裏側に引っ掛けられるタイプの棒状の装着部5163と、を有する。構造部5161は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。耳介1020は構造部5161および装着部5164と装着部5152,5153との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5160が耳介1020に固定される。
【0056】
<装着方式13>
図25Aから
図25Dおよび
図26Aから
図26Dに例示する音響信号出力装置5170,5180は、それぞれ、音響信号を放出する構造部5171,5181と、装着時に装着時に耳介102の中間部分1023の裏側に配置されるように構成された柱状の装着部5172,5182と、一端が構造部5171,5181を保持して、他端が装着部5172,5182を保持している湾曲した帯状の支持部5173,5183とを有する。構造部5171,5181は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。耳介1020は構造部5171,5181と装着部5172,5182との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5170,5180が耳介1020に固定される。
【0057】
<装着方式14>
図27Aから
図27Cに例示する音響信号出力装置5190は、音響信号を放出する構造部5191と、構造部5191を保持して、装着時に耳介102の裏側に配置されるように構成された棒状の装着部5192と、を有する。構造部5191は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。装着部5192は、装着時に耳介1020の下側部分1024側に配置される側の一端で構造部5191を保持している。耳介1020は構造部5191と装着部5192との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5190が耳介1020に固定される。
【0058】
<装着方式15>
図28Aから
図28Eに例示する音響信号出力装置5200は、音響信号を放出する構造部5201と、構造部5021を保持している環状の装着部5202とを有する。構造部5201は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。装着時、耳介1020は環状の装着部5202に挿入され、装着部5202は耳介1020の上側部分1022、中間部分1023、下側部分1024の裏側に配置される。この際、耳介1020が構造部5201と装着部5202との間に挟み込まれ、これによって音響信号出力装置5200が耳介1020に固定される。
【0059】
<装着方式16>
図29Aに例示する音響信号出力装置5250のように、利用者1000の後頭部および耳介1020に装着されるような形状に湾曲した棒状の装着部5352に構造部5251が固定されていてもよい。構造部5251は、第1実施形態、その変形例、または第2実施形態で例示した筐体12およびサポート部13である。この装着部5352が利用者1000の後頭部および耳介1020に装着され、筐体12およびサポート部13が前述のように配置される。
【0060】
<装着方式17>
図29Bに例示する音響信号出力装置5600は、前述のドライバーユニット11(図せず)と、ドライバーユニット11を内部に収容している略球体の筐体5612(構造部)と、装着時に耳介に配置される略球体の装着部5601と、筐体5612と装着部5601とをつなぐ弾性体である湾曲部5602とを有する。筐体5612には、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を外部に放出(導出)する音孔121a(第1音孔)と、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC2(第2音響信号)を外部に放出(導出)する音孔123a(第2音孔)とが設けられている。ここで、音孔121aからの距離が遠い空間ほど、音孔123aから外部に放出される音響信号AC2の音圧レベルが高くなるように設計されていてもよい。音響信号出力装置5600の装着時、筐体5312は音孔121aを外耳道側に向けた状態で耳介の表側(外耳道側)に配置され、装着部5601は耳介の裏側(外耳道が存在しない側)に配置され、これらの筐体5312と装着部5601とで耳介が挟み込まれる。
【0061】
[第4実施形態]
本実施形態では、一部が外耳道の中に装着されるが外耳道を完全には密閉しないタイプの音響信号出力装置を例示する。
【0062】
<例4-1>
図30Aから
図30Cに例示するように、この例の音響信号出力装置5300は、前述したドライバーユニット11と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体5312(構造部)と、装着時に利用者の外耳道に配置されるサポート部5313(構造部)とを有する。
【0063】
<筐体5312>
筐体5312は、外側に壁部を持つ中空の部材であり、内部にドライバーユニット11を収納している。例えば、ドライバーユニット11は、筐体5312内部のD1方向側の端部に固定されている。しかし、これは本発明を限定するものではない。筐体5312の形状にも限定はない。
【0064】
<音孔121a,123a>
筐体5312の壁部には、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を外部に放出(導出)する音孔121a(第1音孔)と、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC2(第2音響信号)を外部に放出(導出)する音孔123a(第2音孔)とが設けられている。
【0065】
この例の音孔121a(第1音孔)は、ドライバーユニット11の一方側(音響信号AC1が放出される側であるD1方向側)に配置された壁部の領域AR1(第1領域)に設けられている。この例の音孔121aは、軸線A1(構造部の中心軸)からB1方向(第1方向)にずれた偏心位置に配置され、D1方向を向いて開口している。なお、軸線A1は、筐体5312の中央領域を通ってD1方向に延びる軸線であり、B1方向は、軸線A1を中心とする特定の放射方向である。この例では、説明の簡略化のため、音孔121aの開放端の縁部の形状が楕円形である(開放端が楕円形である)例を示す。しかし、これは本発明を限定しない。例えば、音孔121aの縁部の形状が円、四角形、三角形などその他の形状であってもよい。また、音孔121aの端部が網目状になっていてもよい。言い換えると、音孔121aの端部が複数の孔によって構成されていてもよい。またこの例では、説明の簡略化のため、筐体5312の壁部の領域AR1(第1領域)に1個の音孔121aが設けられている例を示す。しかし、これは本発明を限定しない。例えば、筐体5312の壁部の領域AR1(第1領域)に2個以上の音孔121aが設けられていてもよい。
【0066】
この例の音孔123a(第2音孔)は、筐体5312の壁部の領域AR1とドライバーユニット11のD2方向側(音響信号AC2が放出される側である他方側)に配置された壁部の領域AR2との間の領域に接する壁部123の領域AR3に設けられている。また、この例の音孔123a(第2音孔)は、B2方向(第2方向)側に偏って配置されている。B2方向(第2方向)は、B1方向(第1方向)の逆方向成分を含む方向である。このような配置構成の具体例は、上述の各実施形態およびその変形例で例示した通りである。また、音孔121aからの距離が遠い空間ほど、音孔123aから外部に放出される音響信号AC2の音圧レベルが高くなるように設計されている。このような配置構成の具体例も、上述の各実施形態およびその変形例で例示した通りである。
【0067】
<サポート部5313>
サポート部5313は、筐体5312のD1方向側の壁部の外方の面に設けられた凸形状部である。サポート部5313の外面領域の少なくとも一部は凸形状となっている。サポート部5313の外面領域は、音孔121a(第1音孔)の開口端131bを取り囲む外面側の領域である。サポート部5313の外面領域は、領域53131(第1領域)と、領域53131(第1領域)よりも突出した領域53132(第2領域)とを含む。ここで、サポート部5313の外面領域が音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を領域53131(第1領域)側に誘導する形状に構成されていてもよい。この例の領域53131および領域53132を含むサポート部5313はB1方向側に設けられており、その逆方向成分を含むB2方向側の領域5314にはサポート部5313は設けられていない。
【0068】
<装着状態>
第1実施形態との相違点は、音響信号出力装置5300の装着時に筐体5312のサポート部5313側の先端部分が利用者の外耳道に挿入される点である。筐体5312の先端部分が外耳道に挿入されると、サポート部5313が設けられていないB2方向側の領域5314がこの外耳道の内側に接触する。また、サポート部の領域53132(第2領域)もこの外耳道の内側に接触する。一方、サポート部の領域53131(第1領域)は外耳道の内側に接触しない。そのため、領域53131と外耳道の内側との間には隙間ができ、これによって外耳道は密閉されない。そのため、利用者が外部の音を聞き取りやすいという利点がある。反面、音孔121aの開放端131bから放出された音響信号AC1の一部は、領域53131と外耳道の内側との間の隙間から外部に放出される。このように外部に放出された音響信号AC1は音漏れとして知覚されるが、第1実施形態で説明したように、この音響信号AC1は音孔123aから放出された音響信号AC2によって相殺され、これにより音漏れが抑制される。また、この例の音孔123aは、B2方向側に偏って配置されているため、音孔123aから放出された音響信号AC2が領域53131と外耳道の内側との間の隙間から外耳道の内部に侵入しにくい。そのため、外耳道の中では音響信号AC1がさほど相殺されず、利用者は十分な音質の音響信号AC1を聴取することができる。音響信号出力装置5300を格納し充電するためのバッテリーケースを用意してもよい。この場合、サポート部に設けられた凸形状に応じて設計されてもよい。例えば、音響信号出力装置5300がバッテリーケースに格納された際に凸形状が接触される領域のみ、サポート部の他の領域が接触される領域よりも深く設計されてもよい。凸形状が形状の変更を可能とする素材で構成されている場合、バッテリーケースに音響信号出力装置5300が格納された際に、凸形状により音響信号出力装置5300がバッテリーケースに保持されるよう、例えば凸形状を含めた大きさよりも所定の大きさだけ小さく設計されていてもよい。
【0069】
<例4-2>
例4-1では、筐体5312のD1方向側の壁部の外方の面のB1方向側にサポート部5313が設けられ、その逆方向成分を含むB2方向側の領域5314にはサポート部が設けられていなかった(
図30A)。しかしながら、この領域5314に、音孔121aの開口端131bを取り囲む突出した領域が設けられていてもよい。この開口端131bを取り囲む突出した領域は、例えば、開口端131bのB2方向側を取り囲む環状の凸領域である。好ましくは、音響信号出力装置5300装着時に、この開口端131bのB2方向側を取り囲む環状の凸領域の大部分または全体が外耳道の内側に接触し、音孔121aの開放端131bから放出された音響信号AC1がB2方向側にできるだけ漏洩しないことが望ましい。
【0070】
<例4-3>
例4-1のサポート部5313が設けられることに代え、
図31Aから
図31Cに例示する音響信号出力装置5400のように、筐体5312のD1方向側の壁部の外方の面に音孔53123b(例えば、貫通孔)が設けられてもよい。音孔53123bは、外部の音を外耳道に取り込むとともに、筐体5312の内部に放出された音響信号AC1を外部に放出する。また、この例の音孔53123bはB1方向側に設けられており、その逆方向成分を含むB2方向側の領域5314には音孔53123bは設けられていない。
【0071】
音響信号出力装置5400の装着時に、筐体5312の先端部分が外耳道に挿入されると、その筐体5312の先端部分がこの外耳道の内側に接触する。また、音孔53123bは外耳道の外部側に配置され、これによって外耳道は密閉されない。そのため、利用者が外部の音を聞き取りやすいという利点がある。反面、音孔121aの開放端131bから放出された音響信号AC1の一部は、音孔53123bから外部に放出される。このように外部に放出された音響信号AC1は音漏れとして知覚されるが、第1実施形態で説明したように、この音響信号AC1は音孔123aから放出された音響信号AC2によって相殺され、これにより音漏れが抑制される。また、この例の音孔123aは、B2方向側に偏って配置されているため、音孔123aから放出された音響信号AC2が音孔53123bから外耳道の内部に侵入しにくい。そのため、外耳道の中では音響信号AC1がさほど相殺されず、利用者は十分な音質の音響信号AC1を聴取することができる。
【0072】
<例4-4>
図32Aおよび
図32Bに例示するように、この例の音響信号出力装置5500は、前述したドライバーユニット11と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体5512(構造部)とを有する。筐体5512は、装着時に外耳道に挿入される挿入部5512aと、耳介のいずれかの部位に配置される外部配置部5512bとを有する。挿入部5512aには挿入部5512aを貫通する貫通孔55121が設けられている。これにより、挿入部5512aが外耳道に挿入された場合でも、貫通孔55121を通じて外耳道が外部に開放され、密閉されない。なお、
図32Aおよび
図32Bの挿入部5512aの外観形状は貫通孔55121を持つドーナツ形状であるが、挿入部5512aの外観形状が貫通孔55121を持つその他の形状(例えば、貫通孔55121を持つ角柱形状、三角柱形状など)であってもよい。挿入部5512aの一方側(装着時に外耳道に挿入される側:D1方向側)には単数または複数の音孔121a(第1音孔)が設けられている。また、挿入部5512aの他方側(D2方向側)には単数または複数の音孔123a(第2音孔)が設けられている。前述のように、音孔121aはドライバーユニット11から放出された音響信号AC1を外部に放出し、音孔123aはドライバーユニット11から放出された音響信号AC2を外部に放出する。また、音孔121aからの距離が遠い空間ほど、音孔123aから外部に放出される音響信号AC2の音圧レベルが高くなるように設計されていてもよい。このような配置構成の具体例は、上述の各実施形態およびその変形例で例示した通りである。
【0073】
音響信号出力装置5500の装着時には、筐体5512の挿入部5512aが外耳道に挿入され、外部配置部5512bが耳介のいずれかの部位に配置される。挿入部5512aの貫通孔55121により、外耳道は密閉されない。そのため、利用者が外部の音を聞き取りやすいという利点がある。反面、音孔121aの開放端131bから放出された音響信号AC1の一部は、貫通孔55121から外部に放出される。このように外部に放出された音響信号AC1は音漏れとして知覚されるが、第1実施形態で説明したように、この音響信号AC1は音孔123aから放出された音響信号AC2によって相殺され、これにより音漏れが抑制される。
【0074】
<例4-5>
例4-1から例4-4のいずれかと、第2実施形態の設計例1から設計例6が組み合わされてもよい。すなわち、例4-1から例4-4のいずれかにおいて、筐体5312,5512の中空部の共振周波数が所定周波数以上(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域以上。例えば、6kHz以上)となるように設計され、かつ、当該所定周波数を含む周波数帯域成分(例えば、人間の聴覚感度が高い帯域成分。例えば、3kHz-6kHzの帯域成分)が抑えられた音響信号AC2(第2音響信号)が音孔123a(第2音孔)から外部に放出されるように設計されてもよい。
【0075】
<例4-6>
図33に例示する音響信号出力装置5780のように、利用者1000の肩や首に装着されるような形状に湾曲した棒状の装着部5782に構造部5781が固定されていてもよい。構造部5781は、例えば、例4-1から例4-5の音響信号出力装置5300,5400,5500のいずれかである。
【0076】
[その他の変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の各実施形態では、筐体12とサポート部13とが別体であったが、筐体12とサポート部13が一体に構成されていてもよい。
【0077】
第1実施形態において、筐体12に音孔123aが設けられていなくてもよい。このような場合でも、筐体12およびサポート部13(構造部)が利用者1000の耳介1010に取り付けられた際、サポート部13の領域132(第2領域)が耳介1010(身体)のいずれかの部分に接触して支持され、音孔121a(第1音孔)の開口端131bおよびサポート部13の領域131(第1領域)が耳介1010(身体)の少なくとも一部に接触することなく、領域131(第1領域)が外耳道1011側に配置される。この際、領域131が耳介1010に接触して支えとして働くので装着時の安定感が高い。また、音孔121aの開口端131bのB2方向側は領域132によって取り囲まれているため、音孔121aから放出された音響信号AC1がB2方向側に漏洩すること(音漏れ)を抑制できる。また、第2実施形態において、サポート部13が設けられていなくてもよい。
【0078】
また、上述の各実施形態では、筐体12の内部にドライバーユニット11が収容されていた。しかし、ドライバーユニット11が筐体12の外部に配置され、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC1,AC2が導波管を通じて筐体12内に導入されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10,20,30,3100,4100,4200,5110,5120,5130,5140,5150,5160,5170,5190,5200-5600 音響信号出力装置
5021,5111,5112,5121,5131,5151,5171,5191,5201,5781 構造部
121a,123a 音孔
11 ドライバーユニット
210 切り替え部
220 中空部
241 内部中空部
1000 利用者
1010,1020 耳介
1011,1021 外耳道