(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182332
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】めっき装置用抵抗体、及び、めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
C25D17/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095869
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 良輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
(57)【要約】
【課題】対象物に形成されるめっき膜の均一性を向上させることができる抵抗体等を提供する。
【解決手段】めっき装置において、アノードとめっきする対象物を保持するホルダとの間に配置される、電場調整用のめっき装置用抵抗体が提供される。このめっき装置用抵抗体には、第1面を有し、前記第1面に開口する第1貫通孔が形成された第1抵抗部材と、第2面を有し、前記第2面に開口する第2貫通孔が形成された第2抵抗部材とを備え、前記第1面と前記第2面との間の距離が可変であるように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき装置において、アノードとめっきする対象物を保持するホルダとの間に配置される、電場調整用のめっき装置用抵抗体であって、
第1面を有し、前記第1面に開口する第1貫通孔が形成された第1抵抗部材と、
第2面を有し、前記第2面に開口する第2貫通孔が形成された第2抵抗部材とを備え、
前記第1面と前記第2面との間の距離が可変であるように構成されている、めっき装置用抵抗体。
【請求項2】
機械的な力により、流体が収容された収容部の形状を変化させる際に生じる力により、または、前記収容部内の流体の量を調節することにより、前記第1抵抗部材および前記第2抵抗部材の一方に対して他方が移動する、請求項1に記載のめっき装置用抵抗体。
【請求項3】
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔は連通しており、前記第1面から前記第2面まで前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が接続された第3貫通孔の長さが可変であるように構成されている、請求項1または2に記載のめっき装置用抵抗体。
【請求項4】
前記第1抵抗部材は、前記第1貫通孔を画定する第1筒状部材を含み、
前記第2抵抗部材は、前記第2貫通孔を画定する第2筒状部材を含み、
前記第3貫通孔に沿って移動可能に、前記第1筒状部材および前記第2筒状部材の一方が他方に挿入されている、請求項3に記載のめっき装置用抵抗体。
【請求項5】
前記第1面と前記第2面とが向かい合うように、前記距離だけ離れて前記第1抵抗部材および前記第2抵抗部材が配置されている、請求項1または2に記載のめっき装置用抵抗体。
【請求項6】
めっき槽と、
前記めっき槽に配置されるアノードと、
めっきを行う対象物を保持するホルダと、
請求項1または2に記載のめっき装置用抵抗体と、を備える、めっき装置。
【請求項7】
前記第1抵抗部材および前記第2抵抗部材の一方を他方に対して移動させる駆動機構をさらに備える、請求項6に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置用抵抗体、及び、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハやプリント基板等である対象物の表面に配線、バンプ(突起状電極)等を形成することが行われている。この配線及びバンプ等を形成する方法として、電解めっき法が知られている。
【0003】
対象物に形成されるめっきの厚さの均一性を高めるため、電解めっき法によるめっき装置では、ウェハ等の基板とアノードとの間に電場調整用の抵抗体を配置することが知られている。また、電場調整をより広く自由にするため、抵抗体の孔の大きさ又は形状を可変とするめっき装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のめっき装置では、抵抗体中央部の孔の大きさを変えることができる絞り機構が記載されているが、構造上、孔の大きさ又は形状を変化させられる範囲に制約がある。抵抗体により電解めっきの際の電場を調整するため、さらなる提案があることが望ましい。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、新たな方法により抵抗体の抵抗を調整し、対象物に形成されるめっきの厚さの均一性を向上させることができるめっき装置用抵抗体、及び、めっき装置を提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態によれば、めっき装置において、アノードとめっきする対象物を保持するホルダとの間に配置される、電場調整用のめっき装置用抵抗体が提案される。めっき装置用抵抗体は、第1面を有し、前記第1面に開口する第1貫通孔が形成された第1抵抗部材と、第2面を有し、前記第2面に開口する第2貫通孔が形成された第2抵抗部材とを備え、前記第1面と前記第2面との間の距離が可変であるように構成されている。
【0008】
本発明の他の一形態によれば、めっき装置が提供される。このめっき装置は、めっき槽と、前記めっき槽に配置されるアノードと、めっきを行う対象を保持するホルダと、上記めっき装置用抵抗体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のめっきモジュールの構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の状態よりも軸方向に伸びた状態の、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す底面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の抵抗体に含まれる第1抵抗部材を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第1抵抗部材を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、第1抵抗部材を模式的に示す底面図である。
【
図12】
図12は、第1抵抗部材を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の抵抗体に含まれる第2抵抗部材を模式的に示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2抵抗部材を模式的に示す平面図である。
【
図15】
図15は、第2抵抗部材を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、
図16の状態よりも軸方向に伸びた状態の、第1実施形態の抵抗体を模式的に示す断面図である。
【
図18】
図18は、第1面と第2面の間の距離が異なる複数の状態の抵抗体について、基板の中心からの距離と基板に形成されためっき膜の厚さとの関係を示すグラフである。
【
図21】
図21は、変形例1-2のめっきモジュールの構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図22】
図22は、変形例1-2の抵抗体に含まれる第1抵抗部材を模式的に示す斜視図である。
【
図23】
図23は、第1抵抗部材を模式的に示す斜視図である。
【
図24】
図24は、第1抵抗部材を模式的に示す平面図である。
【
図25】
図25は、第1抵抗部材を模式的に示す底面図である。
【
図26】
図26は、変形例1-2の抵抗体を模式的に示す断面図である。
【
図27】
図27は、
図26の状態よりも軸方向に伸びた状態の、変形例1-2の抵抗体を模式的に示す断面図である。
【
図28】
図28は、第2実施形態の抵抗体を模式的に示す斜視図である。
【
図29】
図29は、第2実施形態の抵抗体に含まれる第1抵抗部材を模式的に示す平面図である。
【
図30】
図30は、第1抵抗部材を模式的に示す底面図である。
【
図31】
図31は、第2実施形態の抵抗体を模式的に示す側面図である。
【
図32】
図32は、
図31の状態よりも軸方向に伸びた状態の、第2実施形態の抵抗体を模式的に示す断面図である。
【
図33】
図33は、第1面と第2面の間の距離が異なる複数の状態の抵抗体について、基板の中心からの距離と基板に形成されためっき膜の厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
第1実施形態
<めっき装置の全体構成>
図1は、第1実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、めっき装置1000の全体構成を示す平面図である。
図1および
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
【0012】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収納された、めっきする対象物である基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、および搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0013】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液(プリウェット液)で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。
【0014】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
【0015】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤの数および配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0016】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート1
00にカセットに収納された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0017】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0018】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収納したカセットが搬出される。
【0019】
<めっきモジュールの構成>
次に、めっきモジュール400の構成を説明する。本実施形態における24台のめっきモジュール400は同一の構成であるので、1台のめっきモジュール400のみを説明する。
図3は、本実施形態のめっきモジュール400の構成を概略的に示す縦断面図である。
図3に示すように、めっきモジュール400は、めっき液を収容するためのめっき槽410を備える。めっき槽410は、上面が開口した円筒形の内槽412と、内槽412の上縁からオーバーフローしためっき液を溜められるように内槽412の周囲に設けられた外槽414と、を含んで構成される。
【0020】
めっきモジュール400は、被めっき面Wf-aを下方に向けた状態で基板Wfを保持するためのホルダ440を備える。また、ホルダ440は、図示していない電源から基板Wfに給電するための給電接点を備える。めっきモジュール400は、ホルダ440を昇降させるための昇降機構442を備える。また、一実施形態では、めっきモジュール400は、ホルダ440を鉛直軸まわりに回転させる回転機構448を備える。昇降機構442および回転機構448は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。
【0021】
本実施形態のめっきモジュール400は、被めっき面Wf-aを下方に向けてホルダ440に保持された基板Wf(例えば半導体ウェハ)をめっき液に浸漬させ、基板Wfとアノード430との間に電圧を印加することによって、基板Wfの表面に導電膜を析出させる、カップ式の電解めっき装置である。めっきモジュール400が回転機構448を備える場合、基板Wfを回転させながらめっき処理を施すことにより、基板Wfに形成されるめっきの厚さがより均一になる。
【0022】
めっきモジュール400は、内槽412の内部を上下方向に隔てるメンブレン420を備える。内槽412の内部はメンブレン420によってカソード領域422とアノード領域424に仕切られる。カソード領域422とアノード領域424にはそれぞれめっき液が充填される。なお、本実施形態ではメンブレン420が設けられる一例を示したが、メンブレン420は設けられなくてもよい。
【0023】
アノード領域424の内槽412の底面にはアノード430が設けられる。また、アノード領域424には、アノード430と基板Wfとの間の電解を調整するためのアノードマスク426が配置される。アノードマスク426は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノード430の前面(上方)に設けられる。アノードマスク426は、アノード430と基板Wfとの間に流れる電流が通過する開口を有する。なお、本実施形態では、アノードマスク426が設けられる一例を示したが、アノードマスク426は設けられなくてもよい。さらに、上記したメンブレン420は、アノードマスク426の開口に設けられてもよい。
【0024】
めっき装置1000は、センサ460を備えてもよい。センサ460は、基板Wfに形成されためっきの厚さを測定する膜厚センサである。めっき槽410には、センサ460を支持するセンサ支持体468が設置されている。本変形例では、回転機構448の回転軸からそれぞれ異なる距離に複数のセンサ460が配置されており、複数のセンサ460に対して基板Wfが回転することにより基板Wfの広い範囲にわたって膜厚を測定する構成となっている。しかし、センサ460の配置は特に限定されず、センサ460は1つでも、2以上の任意の個数でもよい。センサ460が移動または走査可能としてもよい。センサ460は、基板Wfに形成されためっきの厚さを計測することができればその種類等は特に限定されない。具体的には、センサ460としては、例えば、白色共焦点式などの光学センサ、電位センサ、磁場センサ、または渦電流式センサを用いることができる。センサ460は、めっき液における電気抵抗の変化を利用するものでないことが好ましい。センサ460により得られた検出信号またはデータは、制御モジュール800に入力され、処理される。
【0025】
カソード領域422には、アノード430とホルダ440の間に抵抗体450が配置される。本実施形態の例では、抵抗体450は、メンブレン420に対向する。抵抗体450は、めっき液における電場を調整し、基板Wfの被めっき面Wf-aにおけるめっき処理の均一化を図るための部材である。
【0026】
図4は、本実施形態の第1状態の抵抗体450を模式的に示す斜視図である。
図5は、第2状態の抵抗体450を模式的に示す斜視図である。
図6は、抵抗体450を模式的に示す平面図である。
図7は、抵抗体450を模式的に示す底面図である。
図8は、抵抗体450を模式的に示す側面図である。抵抗体450は、めっき装置1000において、アノード430とめっきする対象物である基板Wfを保持するホルダ440との間に配置される、電場調整用のめっき装置用抵抗体である。
【0027】
抵抗体450は、第1抵抗部材10と、第2抵抗部材20とを備える。第1抵抗部材10および第2抵抗部材20は、めっき液よりも電気抵抗率が高い部材であり、誘電体であることが好ましい。第1抵抗部材10および第2抵抗部材20は、めっき液及びめっき液中のイオンを実質的に通過させないことが好ましい。第1抵抗部材10および第2抵抗部材20は、金属または樹脂で形成され得る。
【0028】
以下では、抵抗体450の中心軸Axに沿った方向を軸方向と呼ぶ。第1抵抗部材10および第2抵抗部材20は、軸方向に並んで配置されている。
図5で示される抵抗体450の第2状態は、
図4で示される抵抗体450の第1状態よりも、抵抗体450が軸方向に伸びた状態となっている。図示の第1状態および第2状態は一例であり、抵抗体450が、その長さが連続的または段階的に変化する複数の状態を取ることができれば、伸縮の程度等は特に限定されない。
【0029】
抵抗体450は、第1抵抗部材10が第2抵抗部材20に対して軸方向に移動可能に構
成されている。以下では、単に相対移動と呼ぶときは、この移動を指す。言い換えれば、抵抗体450は、第1抵抗部材10の第1面S1と、第2抵抗部材20の第2面S2(
図8)との間の距離が可変であるように構成されている。本実施形態では、この距離を、第1距離D1と呼ぶ。図示の例では、第2抵抗部材20が第1抵抗部材10に嵌合している。本実施形態の抵抗体450は、第1抵抗部材10と第2抵抗部材20が接触したまま、軸方向に移動可能に構成されている。あるいは、抵抗体450は、軸方向のある位置において、径方向に見たときに、第1抵抗部材10と第2抵抗部材20が重なったまま、軸方向に移動可能である。以下では、特に断りのない限り、径方向とは、中心軸Axを軸とした回転座標系の径方向を指す。
【0030】
抵抗体450において、第1抵抗部材10が内槽412に固定され、第2抵抗部材20が移動する構成としてもよいし、第2抵抗部材20が内槽412に固定され、第1抵抗部材10が移動する構成としてもよい。いずれの場合においても、内槽412において、第1抵抗部材10を第2抵抗部材20よりもアノード側に配置してもよいし、第2抵抗部材20を第1抵抗部材10よりもアノード側に配置してもよい。
【0031】
以下では、抵抗体450について、第1抵抗部材10が配置されている側を第1の側、第2抵抗部材20が配置されている側を第2の側と呼ぶ。抵抗体450には、抵抗体450を貫通する抵抗体貫通孔900が形成されている。図示の例では、抵抗体450に3つの抵抗体貫通孔900(900A,900B,900C)が形成されている。抵抗体450における抵抗体貫通孔900の個数は、1個でも2個でも4個以上でもよい。相対移動により抵抗体貫通孔900の抵抗が変化することで、めっき液中の電場が調整される。基板Wfに所望の程度に均一なめっきを形成することができれば、抵抗体貫通孔900の個数、位置および形状等は特に限定されない。なお、抵抗体貫通孔900は、一例として、同心であり且つ径が異なる3以上の仮想的な基準円上に配置されることが好ましく、基準円上に周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。
【0032】
図6及び7に示すように、第1貫通孔910は、第1抵抗部材10の第1面S1に形成されており、第2貫通孔920は、第2抵抗部材20の第2面S2に形成されている。抵抗体貫通孔900は、第1貫通孔910(910A,910B,910C)と、第2貫通孔920(920A,920B,920C)とが、めっき液およびめっき液中のイオンが移動可能に接続されて形成されている。したがって、第1貫通孔910と第2貫通孔920とは抵抗体450の内部で連通している。抵抗体貫通孔900は、第1面S1から第2面S2まで延び、第1貫通孔910と第2貫通孔920が接続されて形成されている。
【0033】
図示の例では、第1貫通孔910Aが第2貫通孔920Aと連通し、第1貫通孔910Aと第2貫通孔920Aとが接続された抵抗体貫通孔900Aが抵抗体450に形成されている。第1貫通孔910Bが第2貫通孔920Bと連通し、第1貫通孔910Bと第2貫通孔920Bとが接続された抵抗体貫通孔900Bが抵抗体450に形成されている。第1貫通孔910Cが第2貫通孔920Cと連通し、第1貫通孔910Cと第2貫通孔920Cとが接続された抵抗体貫通孔900Cが抵抗体450に形成されている。所望の抵抗体貫通孔900のパターンを構成することができれば、第1貫通孔910および第2貫通孔920の個数、位置および形状等は特に限定されない。
【0034】
図9-12は、それぞれ、抵抗体450の第1抵抗部材10を模式的に示す斜視図、平面図、底面図および断面図である。
図12は、
図10のB-B断面図となっている。第1抵抗部材10は、第1筒状部材11と、第1板状部材12と、第1側壁13とを備える。
【0035】
図示の例では、第1板状部材12は円盤状であり、第1板状部材12の周縁部から、円筒状の第1側壁13が軸方向に延びている。第1板状部材12は、第1の側に第1面S1
が形成されており、第1面S1の裏側の第1内壁面S10から第1筒状部材11が軸方向に延びている。第1筒状部材11は、第1貫通孔910を画定する。第1筒状部材11の内側面が第1貫通孔910の側面を構成する。図示の例では、第1筒状部材11は円筒状であり、第1筒状部材11Aが第1貫通孔910Aを画定し、第1筒状部材11Bが第1貫通孔910Bを画定し、第1筒状部材11Cが第1貫通孔910Cを画定する。
【0036】
図13-15は、それぞれ、抵抗体450の第2抵抗部材20を模式的に示す斜視図、平面図および断面図である。
図15は、
図14のC-C断面図となっている。第2抵抗部材20を模式的に示す底面図は、
図7と同様である。第2抵抗部材20は、第2筒状部材21と、第2板状部材22と、第2側壁23とを備える。
【0037】
図示の例では、第2板状部材22は円盤状であり、第2板状部材22の周縁部から、円筒状の第2側壁23が軸方向に延びている。第2板状部材22は、第2の側に第2面S2が形成されており、第2面S2の裏側の第2内壁面S20から第2筒状部材21が軸方向に延びている。第2筒状部材21は、第2貫通孔920を画定する。第2筒状部材21の内側面が第2貫通孔920の側面を構成する。図示の例では、第2筒状部材21は円筒状であり、第2筒状部材21Aが第2貫通孔920Aを画定し、第2筒状部材21Bが第2貫通孔920Bを画定し、第2筒状部材21Cが第2貫通孔920Cを画定する。
【0038】
相対移動の際に抵抗体貫通孔900の長さが変化するように、第1貫通孔910と第2貫通孔920が連通すれば、第1筒状部材11および第2筒状部材21の形状は特に限定されない。また、抵抗体450を内槽412に設置でき、所望の程度に均一なめっきを形成することができれば、第1抵抗部材10および第2抵抗部材20の形状は特に限定されない。例えば、基板Wfが角型基板の場合には、第1抵抗部材10および第2抵抗部材20は、上面視で長方形のような形状でもよい。
【0039】
図16は、第1状態の抵抗体450を模式的に示す断面図である。
図17は、第2状態の抵抗体450を模式的に示す断面図である。
図16および
図17は、
図6のA-A断面に対応し得る。抵抗体450は、第1抵抗部材10を第2抵抗部材20に対して移動させる駆動機構30を備える。なお、図示の例では、2つの駆動機構30が示されているが、駆動機構30の個数は特に限定されず、1または3以上とすることができる。
【0040】
図示の例では、駆動機構30は、機械的に第1抵抗部材10および第2抵抗部材20を押す又は引っ張ることにより、第1抵抗部材10を第2抵抗部材20に対して移動させる。一例として、駆動機構30は、軸方向に延びる第1部材31および第2部材32を備え、第1部材31がねじ部により回転可能に第2部材32に支持されていてもよい。この場合、第1部材31を中心軸Axに平行な軸の周りに回転させることで、第1部材31を軸方向に駆動でき、第1部材31が第1抵抗部材10を押圧して移動させることができる。第2状態から第1状態に戻る際は、第1部材31を逆向きに回転させればよい。抵抗体450において、第1抵抗部材10および第2抵抗部材20により囲まれる部分の容積が変化するが、容積の変化に合わせてめっき液が抵抗体450の内部に入ったり外部へ出たりする構成としてもよい。また、抵抗体450は、第1抵抗部材10と第2抵抗部材20との距離にかかわらず、めっき液が内部に入らないように構成されてもよい。なお、駆動機構30の態様は、第1抵抗部材10を第2抵抗部材20に対して移動させることができれば特に限定されない。例えば、駆動機構30は、モータによる回転、油圧および空気圧、ならびに、電磁石による誘引等の少なくとも一つを利用することができる。
【0041】
このように、本実施形態の抵抗体450は、機械的な力により、第1抵抗部材10および第2抵抗部材20の一方に対して他方が移動することができる。これにより、めっき装置1000のユーザが抵抗体450に触れることなく、簡便に抵抗体450の抵抗を調整
でき、めっき中に抵抗を調整することも可能である。
【0042】
図示のように、第1筒状部材11Aの内側に第2筒状部材21Aが挿入されている。同様に、第1筒状部材11Bの内側に第2筒状部材21Bが挿入されており、第1筒状部材11Cの内側に第2筒状部材21Cが挿入されている。第2筒状部材21のそれぞれは、第1筒状部材11に、軸方向に移動可能に挿入されている。これにより、相対移動の際に、第1貫通孔910と第2貫通孔920とが連通したまま、抵抗体貫通孔900の長さが変化する。なお、第1筒状部材11のそれぞれが、第2筒状部材21に、軸方向に移動可能に挿入されていてもよい。
【0043】
図18は、貫通孔が形成された、異なる複数の厚さの抵抗体についてのめっきのシミュレーションの結果を示す図である。
図18に示す例では、抵抗体を異なる3つの厚さda1~da3とした結果を示している。
図18のグラフは、基板の中心からの距離(横軸)と基板に形成されためっき膜の厚さ(縦軸)との関係を示す。貫通孔が形成された抵抗体の厚さを変えることで、基板におけるめっきの形成速度の分布を変化させられるという結果が得られた。
【0044】
本実施形態の抵抗体450は、第1面S1を有し、第1面S1に開口する第1貫通孔910が形成された第1抵抗部材10と、第2面S2を有し、第2面S2に開口する第2貫通孔920が形成された第2抵抗部材20とを備え、第1面S1と第2面S2との間の第1距離D1が可変であるように構成されている。これにより、抵抗体450の抵抗を調整し、基板Wfに形成されるめっきの厚さの均一性を向上させることができる。本実施形態の抵抗体450による抵抗の調整方法と他の抵抗の調整方法と組み合わせることにより、さらに精密に抵抗の調整を行うことができる。
【0045】
抵抗体貫通孔900を第3貫通孔と呼ぶとする。この場合、抵抗体450は、第1面S1から第2面S2まで第1貫通孔910と第2貫通孔920が接続された第3貫通孔の長さが可変であるように構成されている。これにより、抵抗体450の貫通孔の抵抗を調整し、基板Wfに形成されるめっきの厚さの均一性を効率よく向上させることができる。
【0046】
また、抵抗体450では、第3貫通孔に沿って移動可能に、第1筒状部材11および第2筒状部材21の一方が他方に挿入されている。これにより、第1抵抗部材10と第2抵抗部材20の相対移動を利用して、より確実に、抵抗体450の貫通孔の抵抗を調整することができる。
【0047】
次のような変形も本発明の範囲内であり、上述の実施形態または他の変形と組み合わせることが可能である。以下の変形例において、上述の実施形態と同様の構造、機能を示す部位等に関しては、同一の符号で参照し、適宜説明を省略する。
【0048】
(変形例1-1)
上述の実施形態において、駆動機構は、流体が収容された収容部を備え、収容部の形状を変化させる際に生じる力により相対移動を引き起こしてもよい。
【0049】
図19Aは、本変形例の第1状態の抵抗体450Aを模式的に示す断面図である。
図19Bは、第2状態の抵抗体450Aを模式的に示す断面図である。抵抗体450Aは、上述の実施形態の抵抗体450と同様の構成を有しているが、上述の実施形態の駆動機構30の代わりに駆動機構30Aを内部に備える点で抵抗体450とは異なっている。
【0050】
駆動機構30Aは、収容部33と、可動膜330とを備える。収容部33は、軸方向に伸縮可能な室であり、流体Fdを収容する。流体Fdの種類は、流体Fdの流動により第
2抵抗部材20に対して第1抵抗部材10を移動させることができれば特に限定されない。可動膜330は、可動膜330の移動により流体Fdを押圧する。可動膜330を構成する材料は、収容部33に流体Fdを密封しながら移動できれば特に限定されない。図示の例では、径方向内向きに可動膜330が移動することで流体Fdが第1抵抗部材10を押す力が生じ、収容部33が軸方向に伸びながら第1抵抗部材10が軸方向に移動する構成となっている。第2状態から第1状態に戻る際は、径方向外向きに可動膜330が移動することで流体Fdが第1抵抗部材10を押す力が減少し、第1抵抗部材10が第2抵抗部材20側に移動する。流体により第1抵抗部材10または第2抵抗部材20を押圧して移動させることができれば、収容部33および可動膜330の個数、位置および形状等は特に限定されない。
【0051】
本変形例の抵抗体450Aでは、流体Fdが収容された収容部33の形状を変化させる際に生じる力により、第1抵抗部材10および第2抵抗部材20の一方に対して他方が移動するように構成されている。これにより、ユーザが抵抗体450Aに触れることなく、簡便に抵抗体450Aの抵抗を調整でき、めっき中に抵抗を調整することも可能である。
【0052】
(変形例1-1A)
上述の実施形態において、駆動機構は、抵抗体内に画定された収容部に収容される流体の量を調節することにより相対移動を引き起こしてもよい。
【0053】
図20Aは、本変形例の第1状態の抵抗体450AAを模式的に示す断面図である。
図20Bは、第2状態の抵抗体450AAを模式的に示す断面図である。抵抗体450AAは、上述した抵抗体450,450Aと同様の構成を有しているが、上述の実施形態の駆動機構30,30Aの代わりに駆動機構30AAを備える点で抵抗体450,450Aとは異なっている。
【0054】
駆動機構30AAは、流体量調節機構34を備える。流体量調節機構34は、抵抗体450AA内に画定される収容部33Aに接続され、収容部33Aに流体Fdを送出できると共に収容部33Aから流体Fdを吸引できるように構成されている。収容部33Aは、軸方向に伸縮可能な室であり、内部に収容される流体Fdの量に応じて軸方向に伸縮する。図示の例では、収容部33Aは、第1抵抗部材10の内壁面と第2抵抗体部材20との内壁面とで構成されている。しかしながら、こうした例に限定されず、収容部33Aは、軸方向に伸縮可能な空間であって、収容部33Aの軸方向に伸縮に伴って第1抵抗部材10と第2抵抗部材20との相対移動がなされるように構成されていればよい。一例として、収容部33Aは、第1抵抗部材10と第2抵抗部材20との間に設けられて軸方向に伸縮可能な可動膜などの可動部材によって形成されてもよい。第1状態において流体量調節機構34によって収容部33A内に流体Fdが送出されることで、収容部33Aが軸方向に伸びて第1抵抗部材10が軸方向に移動して第2状態になる。第2状態から第1状態に戻る際は、流体量調節機構34によって収容部33Aから流体Fdが吸引されることで、収容部33Aが軸方向に縮んで第1抵抗部材10が軸方向に移動して第1状態になる。
【0055】
本変形例の抵抗体450AAでは、収容部33内の流体Fdの量を調節することにより、第1抵抗部材10および第2抵抗部材20の一方に対して他方が移動するように構成されている。これにより、ユーザが抵抗体450AAに触れることなく、簡便に抵抗体450AAの抵抗を調整でき、めっき中に抵抗を調整することも可能である。
【0056】
(変形例1-2)
上述の実施形態において、第1抵抗部材10または第2抵抗部材20を、箱型の構造にしてもよい。
【0057】
図21は、本変形例のめっきモジュール400Aの構成を模式的に示す縦断面図である。めっきモジュール400Aは、めっきモジュール400と同様の構成を有しているが、上述の実施形態の抵抗体450の代わりに抵抗体450Bを備え、駆動機構452を抵抗体450Bの外部に有する点でめっきモジュール400Aとは異なっている。抵抗体450Bは、上述の実施形態の抵抗体450と同様の構成を有しているが、第1抵抗部材10の代わりに第1抵抗部材10Aを備える点で抵抗体450とは異なっている。
【0058】
図22は、本変形例の第1抵抗部材10Aの第1面S1(上面)を模式的に示す斜視図である。
図23は、第1抵抗部材10Aの底面を模式的に示す斜視図である。
図24は、第1抵抗部材10Aを模式的に示す平面図である。
図25は、第1抵抗部材10Aを模式的に示す底面図である。
【0059】
第1抵抗部材10Aは、第1板状部材12と対向する第3板状部材14を備える。第3板状部材14の周縁部には軸方向に延びる第1側壁13が接続されている。第3板状部材14の外側の第3面S3は、第1抵抗部材10Aにおいて第1面S1の反対側の表面となる。第1面S1および第3面S3には、第1貫通孔911が開口しており、第1貫通孔911は第1面S1から第3面S3まで貫通している。第1抵抗部材10Aは、第1面S1を上面、第3面S3を底面、第1側壁13の外面を側面とする円柱状の構造を有しており、その内部は適宜密封してもよい。図示の例では、抵抗体450Bに、第1貫通孔911として、第1貫通孔911A、911Bおよび911Cが形成されている。しかし、基板Wfに対して所望の程度に均一にめっきを形成することができれば、第1貫通孔911の個数および位置は特に限定されない。
【0060】
図26は、本変形例の抵抗体450Bの第1状態を模式的に示す断面図である。
図27は、抵抗体450Bの第2状態を模式的に示す断面図である。
図26および27は、第1抵抗部材10Aでは
図24のD-Dの位置の断面に対応する。抵抗体450Bでは、第1抵抗部材10Aの第3面S3の開口から第2筒状部材21Aが第1貫通孔911Aに挿入されている。これにより、第2筒状部材21Aに形成されている第2貫通孔920Aと第1貫通孔911Aが連通し、第1面S1から第2面S2まで貫通する抵抗体貫通孔901Aが形成される。他の第1貫通孔911Bおよび911Cについても同様に抵抗体貫通孔901Bおよび901Cが形成される。
【0061】
抵抗体貫通孔901Aは、第1貫通孔911Aと第2貫通孔920Aとがめっき液及びめっき液中のイオンが移動可能に接続されたまま、軸方向に沿って第1筒状部材11Aと第2筒状部材21Aとが移動可能に構成されている。本変形例では、抵抗体450Bの外部に配置された駆動機構452(
図21)により第2抵抗部材20に対する第1抵抗部材10Aの相対移動が駆動される。駆動機構452は、基板Wfの板面に垂直な方向から見たときに基板Wfと重ならない位置に配置されるとよい。第2抵抗部材20に対して第1抵抗部材10Aが移動できれば駆動機構452の態様は特に限定されず、モータまたは電磁石等を利用することができる。例えば、内槽412に配置された支持部材が、第1抵抗部材10Aの外側面を支持しつつ、軸方向に移動する構成とすることができる。
【0062】
本変形例のめっき装置は、第1抵抗部材10Aおよび第2抵抗部材20の一方を他方に対して移動させる駆動機構452を抵抗体450Bの外部に備えることができる。これにより、抵抗体450Bをコンパクトにしつつ、ユーザが抵抗体450Bに触れることなく、簡便に抵抗体450Bの抵抗を調整でき、めっき中に抵抗を調整することも可能である。なお、他の実施形態および変形例においても、抵抗体の内部に駆動機構を設けず、または抵抗体の内部の駆動機構に加えて、抵抗体の外部に駆動機構452を設けてもよい。
【0063】
(変形例1-3)
上述の実施形態において、特許文献1のように、めっき装置において、基板Wf、抵抗体、およびアノードのそれぞれを鉛直方向に沿って配置してもよい。本変形例でも、上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
第2実施形態
第2実施形態のめっき装置は、上述の第1実施形態のめっき装置1000と同様の構成を有しているが、抵抗体450の代わりに、抵抗体2450を備える点でめっき装置1000とは異なっている。以下において、上述の実施形態と同様の構造、機能を示す部位等に関しては、同一の符号で参照し、適宜説明を省略する。
【0065】
図28は、本実施形態の抵抗体2450を模式的に示す斜視図である。抵抗体2450は、第1抵抗部材2010と、第2抵抗部材2020とを備える。第1抵抗部材2010および第2抵抗部材2020は、それぞれ、抵抗体2450の中心軸Axを軸とした円盤状である。図示の例では、第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020は、軸方向に離れて配置されている。したがって、第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020は接触しない。また、図示の例では、第1抵抗部材2010と第2抵抗部材とは、径方向に重なっていない。第1抵抗部材2010および第2抵抗部材2020は、不図示の接続部材により物理的に接続されていてもよい。第1抵抗部材2010は、第1の側に第1側面S2010が形成されている。第2抵抗部材2020は、第2の側に第2側面S2020(
図31)が形成されている。なお、第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020とは、接触するまで互いに近づくことができるものとしてもよい。
【0066】
図29は、第1抵抗部材2010を模式的に示す平面図である。
図30は、第1抵抗部材2020を模式的に示す底面図である。第1抵抗部材2010には、複数の第1貫通孔2910が形成されている。複数の第1貫通孔2910のそれぞれは、第1側面S2010から第1側面S2010の裏面である第1面S2001(
図31)まで、第1抵抗部材2010を貫通している。図示の例では、第2抵抗部材2020は、第1抵抗部材2010と同じ形状とするが、第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020は互いに異なる形状を有してもよい。第2抵抗部材2020には、複数の第2貫通孔2920が形成されている。複数の第2貫通孔2920のそれぞれは、第2側面S2020から第2側面S2020の裏面である第2面S2002(
図31)まで、第2抵抗部材2020を貫通している。
【0067】
基板Wfに所望の程度に均一なめっきを形成することができれば、第1貫通孔2910および第2貫通孔2920の個数、位置および形状は特に限定されない。第1貫通孔2910および第2貫通孔2920は、一例として、同心であり且つ径が異なる3以上の仮想的な基準円上に配置されることが好ましく、基準円上に周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。なお、第1抵抗部材2010における第1貫通孔2910の個数、位置および形状のそれぞれは、第2抵抗部材2020における第2貫通孔2920の個数、位置および形状と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
図31は、抵抗体2450の第1状態を模式的に示す側面図である。
図32は、抵抗体2450の第2状態を模式的に示す側面図である。第2状態の抵抗体2450は、第1状態の抵抗体2450よりも軸方向に長い構成となっている。抵抗体2450では、第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020との間の距離が可変であるように構成されている。具体的には、向かい合う第1面S2001と第2面S2002との間の距離が可変である。この距離を第2距離D2と呼ぶ。第2距離D2を変化させることで、抵抗体2450の抵抗を変化させ、基板Wfに形成されるめっきの厚さの分布を変化させることができる。したがって、基板Wfに形成されるめっきの厚さの均一性を向上させることができる。
【0069】
第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020の相対移動を駆動する方法は特に限定されない。上述の駆動機構30または30Aを第1抵抗部材2010と第2抵抗部材2020の間に設けてもよいし、上述の駆動機構452を抵抗体2450の外部に配置してもよい。
【0070】
図33は、それぞれ複数の貫通孔が形成された板状の第1抵抗部材および第2抵抗部材からなる抵抗体についてのめっきのシミュレーションの結果を示す図である。
図33に示す例では、抵抗体を異なる2つの厚さdb1,db2とした結果を示している。貫通孔が形成された抵抗部材の間の距離を変えることで、基板におけるめっきの形成速度の分布を変化させられるという結果が得られた。
【0071】
本変形例の抵抗体2450では、第1面S1と第2面S2とが向かい合うように、第2距離D2だけ離れて第1抵抗部材2010および第2抵抗部材2020が配置されている。この場合、第2距離D2を変化させることにより、基板Wfに形成されるめっきの厚さの均一性を向上させることができる。この際、複雑な形状の抵抗部材の作成等の必要がなく、簡便に抵抗体2450の抵抗の調整を行うことができる。
【0072】
本発明は、以下の形態としても記載することができる。[形態1]形態1によれば、めっき装置において、アノードとめっきする対象物を保持するホルダとの間に配置される、電場調整用のめっき装置用抵抗体が提案され、第1面を有し、前記第1面に開口する第1貫通孔が形成された第1抵抗部材と、第2面を有し、前記第2面に開口する第2貫通孔が形成された第2抵抗部材とを備え、前記第1面と前記第2面との間の距離が可変であるように構成されている。形態1によれば、めっき装置用抵抗体の抵抗を調整し、対象物に形成されるめっきの厚さの均一性を向上させることができる。
【0073】
[形態2]形態2によれば、形態1において、機械的な力により、流体が収容された収容部の形状を変化させる際に生じる力により、または、前記収容部内の流体の量を調節することにより、前記第1抵抗部材および前記第2抵抗部材の一方に対して他方が移動する。形態2によれば、ユーザがめっき装置用抵抗体に触れることなく、簡便にめっき装置用抵抗体の抵抗を調整でき、また、めっき中に抵抗を調整することも可能である。
【0074】
[形態3]形態3によれば、形態1または2において、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔は連通しており、前記第1面から前記第2面まで前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が接続された第3貫通孔の長さが可変であるように構成されている。形態3によれば、めっき装置用抵抗体の貫通孔の抵抗を調整し、対象物に形成されるめっきの厚さの均一性を効率よく向上させることができる。
【0075】
[形態4]形態4によれば、形態1から3において、前記第1抵抗部材は、前記第1貫通孔を画定する第1筒状部材を含み、前記第2抵抗部材は、前記第2貫通孔を画定する第2筒状部材を含み、前記第3貫通孔に沿って移動可能に、前記第1筒状部材および前記第2筒状部材の一方が他方に挿入されている。形態4によれば、第1抵抗部材と第2抵抗部材の相対移動を利用して、より確実に、めっき装置用抵抗体の貫通孔の抵抗を調整することができる。
【0076】
[形態5]形態5によれば、形態1または2において、前記第1面と前記第2面とが向かい合うように、前記距離だけ離れて前記第1抵抗部材および前記第2抵抗部材が配置されている。形態5によれば、複雑な形状の抵抗部材の作成等の必要がなく、簡便にめっき装置用抵抗体の抵抗の調整を行うことができる。
【0077】
[形態6]形態6によれば、めっき槽と、前記めっき槽に配置されるアノードと、めっき
する対象を保持するホルダと、形態1から5のいずれかのめっき装置用抵抗体と、を備えるめっき装置が提案される。形態6によれば、めっき装置用抵抗体の抵抗を調整し、対象物に形成されるめっきの厚さの均一性を向上させることができるめっき装置を提供することができる。
【0078】
[形態7]形態7によれば、形態7において、前記第1抵抗部材および前記第2抵抗部材の一方を他方に対して移動させる駆動機構をさらに備える。形態7によれば、より簡便にめっき装置用抵抗体の抵抗を調整することができ、まためっき処理中の調整も容易である。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10,10A,2010…第1抵抗部材
11,11A,11B,11C…第1筒状部材
12…第1板状部材
20,2020…第2抵抗部材
21,21A,21B,21C…第2筒状部材
22…第2板状部材
30,30A,30AA,452…駆動機構
33…収容部
400,400A…めっきモジュール
410…めっき槽
420…メンブレン
422…カソード領域
424…アノード領域
430…アノード
440…ホルダ
442…昇降機構
448…回転機構
450,450A,450AA,450B,2450…抵抗体
800…制御モジュール
900,900A,900B,900C,901,901A,901B,901C…抵抗体貫通孔
910,910A,910B,910C,911,911A,911B,911C,2910…第1貫通孔
920,920A,920B,920C,2920…第2貫通孔
1000…めっき装置
Ax…中心軸
D1…第1距離
D2…第2距離
S1,S2001…第1面
S2,S2002…第2面
S3…第3面
S10…第1内壁面
S20…第2内壁面
S2010…第1側面
S2020…第2側面
Fd…流体
Wf…基板